説明

継手およびその締結方法

【課題】鋼材使用量が少なく、トンネル施工時のトータルコストを最小化可能なトンネル用セグメントを開発するため、従来の継手に比べて高い剛性を持つセグメント間の継手を開発する。
【解決手段】コンクリート35より締結ボックス17内に、セグメント2bのネジ鉄筋19を露出させる。カプラ29と両ネジ31を用いることで、ネジ鉄筋19と隣接するセグメント2aのカプラ12およびネジ鉄筋インサート11を一体化する。そのため、セグメント間に働く応力は、ネジ鉄筋インサート11およびネジ鉄筋19を通じて、コンクリート35と内側スキンプレート3および外側スキンプレート5に伝達され、従来のボルトのみの継手に比べて高い剛性を持つ継手となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールドトンネル用のセグメントなどに利用可能な継手などに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セグメント間およびリング間の継手としては、継手板を挟んでボルトとナットで締結するものがあった(例えば、特許文献1の図5参照)。セグメント間に働く応力により、ボルトに引張力が働くと、その引張力は、継手板への曲げ力やせん断力として働き、ボルトボックスを介して最終的にはスキンプレートにかかる。その際、継手板−ボルトボックス間およびボルトボックス−スキンプレート間の溶接部に大きな力がかかる。
【0003】
【特許文献1】特開2004−204545号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の継手では、(1)ボルトボックス−スキンプレート間の溶接部によって、スキンプレートの厚さが決定され不経済となる、(2)継手鋼板の厚さがボルトの仕様によって厚くなる、(3)継手鋼板−ボルトボックス−スキンプレート間の溶接品質の確保が重要となり、全体の精度確保と合わせて製作コストが上昇する等の問題点があった。また、側板はシール溝を設置した状態で曲げ加工する必要があるため、桁高の増大に対して板厚が大きくなるといった、問題点があった。
【0005】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、その目的とすることは、スキンプレートや継手板の板厚を薄くし、低コストのセグメントに利用できる高い剛性を持った継手などを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、第1の発明は、第1のネジと、第2のネジとの間を継ぐ継手であって、前記第2のネジは、両端にネジを有する両ネジの一方のネジに螺合され、前記両ネジの他方のネジは、前記第1のネジとカプラで締結されることを特徴とする継手である。また、前記第1のネジと前記第2のネジは夫々別のセグメントに固定されてもよく、前記第1のネジが雄ネジを有する鉄筋であり、前記第2のネジが鉄筋の内部に設けられた雌ネジであってもよい。
【0007】
第2の発明は、第1のネジと第2のネジとの間を継ぐ締結方法であって、前記第2のネジに両ネジの一方のネジを螺合する工程と、前記両ネジの他方のネジと第1のネジをカプラで締結する工程と、を具備することを特徴とする締結方法である。また、前記第1のネジと前記第2のネジは夫々別のセグメントに設けられてもよく、前記第1のネジが雄ネジを有する鉄筋であり、前記第2のネジが鉄筋の内部に設けられた雌ネジであってもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の継手によれば、高い剛性でセグメント間を締結可能なため、スキンプレートや継手板などの部材は、構造上必要となる板厚に対して、必要以上に厚くならない。その結果、鋼材使用量の削減が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下図面に基づいて、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0010】
図1は、本実施の形態に係る6面鋼殻用の継手1の斜視図である。セグメント2aとセグメント2bは同じ構造を持つセグメントであり、セグメント2aのもう一方の端部(図1に描かれていない)は、図1に描かれているセグメント2bと同じ構造を持ち、セグメント2bのもう一方の端部は、セグメント2aと同じ構造を持つ。
【0011】
セグメント2aは、外側スキンプレート5を有し、外側スキンプレート5と垂直な2枚の側板7が向かい合わされて設けられる。また、外側スキンプレート5とほぼ垂直に、2枚の側板7と垂直な継手鋼板14、23が設けられる。外側スキンプレート5と向かい合うように、側板7および継手鋼板14、23とほぼ垂直になるように、内側スキンプレート3が設けられる。セグメント2aは、内側スキンプレート3および外側スキンプレート5、一対の側板7、継手鋼板14、23により箱状を形成している。
【0012】
なお、後述するように継手鋼板14は、セグメント2aの側面の上下に設けられ、継手鋼板14の間には図2(a)に示すような継手面コンクリート13が露出している。側板7および継手鋼板14、23のセグメント2aの外周側に、シール溝9が設けられている。また、セグメント2aには、コンクリートが充填されており、継手鋼板14の隙間より、継手面コンクリート13が露出している。セグメント2aの継手面中央部付近にネジ鉄筋インサート11とそれに螺合したカプラ12が、セグメント2aの継手面端部にボルト用インサート15が、セグメント2aの長軸方向に沿ってコンクリート中に埋設されている。継手面コンクリート13にはカプラ12およびボルト用インサート15が露出している。継手鋼板14と継手面コンクリート13の構造は、図2(a)に詳細に示されている。
【0013】
また、セグメント2bの継手部においては、継手面コンクリート25と内側スキンプレート3に開口した直方体型の締結ボックス17を有している。締結ボックス17中には、セグメント2bの長軸方向に沿ってコンクリート中に埋設されたネジ鉄筋19が突出している。セグメント2bの継手鋼板23の隙間より継手面コンクリート25が露出し、継手鋼板23の端部にはボルト孔21が設けられている。継手鋼板23と継手コンクリート25の構造は、図3(a)に詳細に示されている。
【0014】
図2(a)は、セグメント2aの図1のA方向矢視図であり、図2(b)は図2(a)のa-a断面図、図2(c)は図2(a)のb-b断面図、図2(d)は図2(a)のc-c断面図である。継手鋼板14はシール溝9を有し、継手鋼板14と継手鋼板14の間に継手面コンクリート13が露出している。継手面コンクリート13には、端部にカプラ12が、端部以外の場所にボルト用インサート15が露出している。横桁27はセグメント2aが応力により変形しないように支えている。図2(b)に示すように、ボルト用インサート15は、内部に雌ネジ16を有している。また、内側スキンプレート3と外側スキンプレート5はジベル37を有しており、コンクリート35と一体化している。図2(c)に示すように、セグメント2aには、カプラ12と螺合したネジ鉄筋インサート11が設けられており、カプラ12がセグメント2aの表面に露出している。図2(d)に示すように、内側スキンプレート3と外側スキンプレート5の間をつなぐように横桁27が設けられている。
【0015】
横桁27は、孔あき鋼板であることが好ましい。
【0016】
図3(a)は、セグメント2bの図1のB方向矢視図であり、図3(b)は図3(a)のd-d断面図、図3(c)は図3(a)のe-e断面図、図3(d)は図3(a)のf-f断面図、図3(e)は図3(a)のg-g断面図である。セグメント2bには締結ボックス17が設けられ、締結ボックス17内で締結作業を行うことができる。また、締結ボックス17内には、内部のコンクリート35から突出したネジ鉄筋19が設けられる。継手鋼板23には、ボルト孔21が設けられている。図3(b)、図3(c)に示すように、締結ボックス17からボルト孔21およびネジ鉄筋19にアクセス可能である。図3(d)に示すように、内側スキンプレート3と外側スキンプレート5を横桁27で連結している。図3(e)で示すように、セグメント2b内にはコンクリート35が充填されている。
【0017】
次に、継手1を用いてセグメント2aとセグメント2bを締結する手順について説明する。
図4(a)は、図2(b)に示したセグメント2aの継手面と、図3(b)に示したセグメント2bの継手面が接した状態を示す図であり、図4(b)は、セグメント2aとセグメント2bを仮締結した状態を示す図である。図4(a)に示すように、セグメント2aの継手面と隣接するセグメント2bの継手面を位置合わせし、図4(b)に示すように、ボルト33をボルト用インサート15に螺合させ、図5に示す、継手1の締結中のセグメント間のずれを防止する。このようにしてセグメント2a、セグメント2bを仮締結する。
【0018】
次に継手1によりセグメント間を締結する。その詳細は以下のとおりである。
図5(a)、図5(b)、図5(d)は、図2(c)に示したセグメント2aの継手面と、図3(c)に示したセグメント2bの継手面とが接して、継手1によってセグメント2aとセグメント2bを締結する説明図である。図5(c)は両ネジ31の構造を示す図である。
【0019】
図5(a)に示すように、カプラ29がC方向に移動するようにカプラ29とネジ鉄筋19とを螺合させる。図5(b)に示すように、カプラ12がD方向に移動するように、両ネジ31とカプラ12とを螺合させ、さらにはカプラ29がE方向に移動するようにカプラ29と両ネジ31とを羅号させる。
【0020】
図5(c)に示すように、両ネジ31は両ネジ頭39から定着側雄ネジ43と、反対方向に突出した締結ボックス側雄ネジ41を有する。定着側雄ネジ43と締結ボックス側雄ネジ41は互いに逆ネジになっており、両ネジ頭39を回転すると、定着側雄ネジ43に螺合した物と、締結ボックス側オスネジ41に螺合した物が、近づくか遠ざかる。図5(d)に示すように、両ネジ31を締めることで、カプラ12とカプラ29は引き寄せられ、セグメント間は締結される。さらに締結作業を進めると、図6に示すようになる。
【0021】
図6aは、ネジ鉄筋19の両方が締結された継手の状態を示す図である。また、図6bは、締結が完了した継手の平面図である。
【0022】
なお、締結が完了した後に、締結ボックス17をモルタルなどで充填してもよい。
【0023】
なお、本実施の形態においてはセグメント間の締結に継手1を用いたが、リング間の締結に継手1を用いてもよい。
【0024】
本実施の形態によれば、セグメント間に応力が働いた場合、その力は両ネジ31、カプラ29、ネジ鉄筋19を通して、コンクリート35と内側スキンプレート3および外側スキンプレート5に伝達される。通常の継手のように、継手板にボルトを取り付けただけの構造では、ボルト−継手板−スキンプレートの経路で力がかかり、溶接強度が必要となるが、本実施の形態に係る継手1においては、力がセグメント全体にかかり、剛性が高まる。
【0025】
その結果、セグメント製作上の理由でセグメント2のスキンプレート3、5や継手鋼板14,23などの部材の板厚を増やす必要がなくなり、構造上の必要板厚と同じ厚さの部材を用いることができ、鋼材使用量の削減が可能になり、ひいてはセグメント製作コストの削減も可能になる。
【0026】
以上、添付図面を参照しながら、本発明にかかる継手の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しえることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】締結前の本発明の継手の斜視図。
【図2】(a)セグメントの定着側継手面の正面図、(b)図2(a)におけるa−a断面図、(c)同じくb−b断面図、(d)同じくc−c断面図
【図3】(a)セグメントの締結ボックス側継手面の正面図、(b)図3(a)におけるa−a断面図、(c)同じくb−b断面図、(d)同じくc−c断面図、(e)同じくd−d断面図
【図4】(a)〜(b)本実施の形態のボルトの締結工程を示す図。
【図5】(a)〜(d)本実施の形態の継手の締結工程を示す図。
【図6a】締結後の本発明の継手の正面図
【図6b】締結後の本発明の継手の平面図。
【符号の説明】
【0028】
1………継手
2………セグメント
3………内側スキンプレート
5………外側スキンプレート
7………側板
9………シール溝
11………ネジ鉄筋インサート
12………カプラ
13………継手面コンクリート
14………継手鋼板
15………ボルト用インサート
16………雌ネジ
17………締結ボックス
19………ネジ鉄筋
21………ボルト孔
23………継手鋼板
25………継手面コンクリート
27………横桁
29………カプラ
31………両ネジ
33………ボルト
35………コンクリート
37………ジベル
39………両ネジ頭
41………締結ボックス側雄ネジ
43………定着側雄ネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のネジと、第2のネジとの間を継ぐ継手であって、
前記第2のネジは、両端にネジを有する両ネジの一方のネジに螺合され、前記両ネジの他方のネジは、前記第1のネジとカプラで締結されることを特徴とする継手。
【請求項2】
前記第1のネジと前記第2のネジは夫々別のセグメントに固定されることを特徴とする請求項1記載の継手。
【請求項3】
前記第1のネジが雄ネジを有する鉄筋であり、前記第2のネジが鉄筋の内部に設けられた雌ネジであることを特徴とする請求項1記載の継手。
【請求項4】
第1のネジと第2のネジとの間を継ぐ締結方法であって、
前記第2のネジに両ネジの一方のネジを螺合する工程と、
前記両ネジの他方のネジと第1のネジをカプラで締結する工程と、
を具備することを特徴とする締結方法。
【請求項5】
前記第1のネジと前記第2のネジは夫々別のセグメントに設けられることを特徴とする請求項4記載の締結方法。
【請求項6】
前記第1のネジが雄ネジを有する鉄筋であり、前記第2のネジが鉄筋の内部に設けられた雌ネジであることを特徴とする請求項4記載の締結方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6a】
image rotate

【図6b】
image rotate