説明

継目を有する多軸四層布

MDヤーンの少なくとも2つの層(12、14)を有する無端の布を提供するステップと、切断される前記無端の布の領域でCDヤーン(16)をほぐすステップと、第1の所定の位置(26)でMDヤーン(14)の少なくとも1つの層を切断するステップと、第2の所定の位置(28)でMDヤーンの少なくとも1つの層を切断するステップとで形成された布、及びこの布を形成する方法である。この方法は、MD方向において無端の布を半分に折り返すステップと、前記の第1及び第2の所定の位置を互いに近接するように載置するステップと、布を折り返す際、MDヤーンの切断されていない少なくとも1つの層から継目ループ(30)を形成するステップと、無端の布を形成するようにループを継ぎ合わせるステップとをも有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抄紙機用布に係り、特に、製紙装置に装着された際に無端(endless)の布を提供するように継ぎ合わされた布に関する。
【背景技術】
【0002】
製紙工程中、セルロース製の繊維ウェブは、繊維スラリー、つまり、セルロース製繊維の水性懸濁液を、抄紙機の形成部において移動する形成布上に堆積することにより、形成される。スラリーから、形成布を介して大量の水が排出され、形成布の表面上にセルロース製の繊維ウェブが残存する。
【0003】
新規に形成されたセルロース製の繊維ウェブは、一連のプレスニップを含むプレス部へと進む。セルロース製の繊維ウェブは、プレス布、又は多くの場合、斯かる2つのプレス布の間に支持されたプレスニップを通過する。プレスニップにおいて、セルロース製の繊維ウェブには、水を絞り出す圧縮力がかけられ、セルロース製の繊維ウェブから紙シートとするように、ウェブにおいてセルロース製の繊維が互いに接着する。水は、プレス布又は各種布に受容され、理想的には、紙シートに戻らない。
【0004】
紙シートは、蒸気で内的に加熱される少なくとも一連の回転可能な乾燥ドラム又はシリンダーを含む乾燥部に最終的に進む。新規に形成された紙シートは、乾燥布によって一連のドラムの周囲に連続して配置されたセルペンタイン路(serpentine path)に向けられ、ドラムの表面に近接して紙シートを保持する。加熱されたドラムは、紙シートの水分含量を、蒸発を介して所望のレベルにまで低減する。
【0005】
当然のことながら、形成布、プレス布及び乾燥布は、抄紙機上で全て、無端ループの形態を取り、コンベアの様式の機能を有する。さらに、当然のことながら、製紙工程は、かなりの速度で進行する連続工程である。つまり、繊維スラリーは、形成部において形成布上に連続して堆積される一方、新規に製造された紙シートは、乾燥部を脱出した後、ロール上に連続して巻き取られる。
【0006】
本発明は、初期的には、プレス布として一般的に知られる、プレス部に使用される布に関するものであるが、形成部及び乾燥部に使用する布の適用されるものであるとともに、例えば、長尺ニッププレスベルトなどのポリマーでコートされた製紙工程用の基礎に使用されてもよい。
【0007】
プレス布は、製紙工程の間、重要な役割を演じる。上記したように、これらの機能のひとつとしては、プレスニップを介して製造される紙製品を支持し運搬することである。
【0008】
プレス布は、紙シートの表面の仕上げにも関与する。つまり、プレス布は、プレスニップを通過する間、平滑でマークのない表面を補完するように、平滑な表面と均一な弾性構造を有するように設計される。
【0009】
おそらく最も重要なことに、プレス布は、プレスニップにおいて、湿潤した紙から抽出された大量の水を受容する。この機能を充足するために、プレス布の内部で水を進行させるボイド容量と一般的に称される空間を文字通り有する必要があり、布は、耐用年数の全ての間、水に対して十分な透過性を有すべきである。最終的に、プレス布は、湿潤した紙から受容した水が、プレスニップを脱出した紙に戻り且つ再湿潤するのを阻止すべきである。
【0010】
現代のプレス布は、製造される紙のグレード用に導入される抄紙機の要件を満たすように設計された広範なスタイルで使用される。一般的に、微細で不織の繊維材料のバッティング(batting)でニードリングされる織成された基礎布を有する。この基礎布は、モノフィラメント、諸よりモノフィラメント、マルチフィラメント又は諸よりマルチフィラメントから織成され、単層、多層又は積層であってもよい。これらのヤーンは、抄紙機用の布技術において当業者がこの目的で使用される、ポリアミドやポリエステル樹脂などの種々の合成ポリマー樹脂のいずれかから典型的に成形される。
【0011】
織成布は、多くの異なる形態をとる。例えば、無端に織成されてもよく、平織りされ、次いで継目を有する無端の形態とされてもよい。また、改変された無端の織成として一般的に知られる工程で製造されてもよく、ここで、基礎布の幅方向の端部には、機械方向(MD)のヤーンを用いて継目ループが設けられる。この工程において、MDヤーンは、布の幅方向の端部間を連続していったりきたりして織成して、個々の端部において引き返し、継目ループを形成する。この様式で製造される基礎布は、抄紙機上に導入する間、無端の形態とされ、このため、機械上で継ぎ合せ可能な布として参照される。斯かる布を無端の形態とするため、この幅方向の2つの端部は、互いに継ぎ合わされる。継ぎ合せを促進するため、多くの現代の布は、布のこの2つの端部の横方向の端部に継目ループを有する。この継目ループ自体は、布の機械方向(MD)のヤーンでしばしば形成される。継目は、プレス布の2つの端部を共に持ちより、この布の2つの端部において、継目ループを互いに噛み合わせ(interdigitating)、且つ布の2つの端部を互いにロック(lock)するように互いに噛み合わされた継目ループで規定される通路を介していわゆるピンやピントルを通すことにより、典型的に形成される。
【0012】
さらに、織成された基礎布は、互いに形成された無端ループ内に2つの基礎布をおき、互いに結合するように両方の基礎布を介して人造繊維バッティングをニードリングすることにより、積層されてもよい。1つ又は両方の織成基礎布は、機械上で継ぎ合せ可能なタイプであってもよい。
【0013】
いずれにしても、織成された基礎布は、無端ループの形態であり、又は長手方向の周囲に測定された特定の長さと、これの横方向に測定した特定の幅とを有する斯かる形態に継ぎ合せ可能である。抄紙機の配置は非常に広範であるので、抄紙機用布の製造者は、使用者の抄紙機において特定の位置に適合するのに必要な寸法に、プレス布及びその他の抄紙機用の布を製造する必要がある。言うまでもなく、各プレス布がオーダーメードで典型的に製造される必要があるため、この要件により、製造工程の合理化が困難となる。
【0014】
近代の抄紙機における布は、5〜33フィート以上の幅、40〜400フィート以上の長さ、及び約100〜3000ポンドの重量を有してもよい。これらの布は、摩耗し、交換をする必要がある。布の交換は、機械の使用を中止し、摩耗した布を除去し、布を導入する設定をし、新規の布を導入することをしばしば含む。多くの布は無端である一方、今日の抄紙機のプレス部に使用する約半数は、機械上で継ぎ合せ可能なものである。いくつかの紙製造工程用ベルト(PIPBs)は、機械上で継ぎ合せ可能性のあるように意図されるものであって、Transbelt(登録商標)として知られるいくつかのトランスファーベルトなどが挙げられる。布の導入は、機械上に布の本体を引っ張り、無端ベルトを形成するように布の端部を結合する。
【0015】
種々の長さと幅とでより早く効率的にプレス布を製造するのに必要な上記の必要性に応えて、プレス布は、一般的に指定されたRexfeltらによる特許文献1に開示の螺旋巻き技術(spiral winding technique)を用いて、近年のヤーンで製造されている。なお、この文献の教示を参照して本願に取り込む。
【0016】
特許文献1は、ニードリングされた人造繊維材料の1つ以上の層を有する基礎布を有するプレス布を示す。この基礎布は、基礎布の幅よりも小さい幅を有する織成布の螺旋巻きストリップから構成される少なくとも1つの層を有する。この基礎布は、長手方向、又は機械方向に無端である。この螺旋巻きのストリップの長手スレッドは、プレス布の長手方向に対して一定の角度をなす。織成布のストリップは、抄紙機用の布の製造に典型的に使用されるものよりも幅の狭い織機上で平織りであってもよい。
【0017】
基礎布は、比較的狭い織成布ストリップの螺旋巻きで結合された複数の巻きを有する。この布ストリップは、長手方向(縦糸)及び横方向(横糸)のヤーンから織成される。螺旋巻きの布ストリップの隣り合う巻きは、互いに接してもよく、このようにして製造された螺旋の連続する継目は、縫い付け、縫い合わせ、溶融、溶接(例えば、超音波)又は接着により閉口(close)されてもよい。また、隣接する螺旋巻きの隣り合う長手方向の端部の一部は、重なり合う領域において厚みが増加しないように、端部が減少された厚みを有する限りは、重なり合うように配列されてもよい。さらにまた、長手方向のヤーン間の空間は、隣接する螺旋巻きが重なり合うように配列される場合に重なり合う領域において長手方向のスレッド間に変化しない空間が存在するように、ストリップの端部において、増加されてもよい。
【0018】
いずれにしても、無端ループの形態であり、内部表面と、長手方向(機械方向)と、横方向(機械を横切る方向)とを有する形態をとる基礎布が得られる。基礎布の外側縁は、長手方向(機械方向)に平行となるように、その後切り取られる。基礎布の機械方向と螺旋巻きの連続する継目との角度は、相対的に小さくてもよく、つまり、10°未満であってもよい。同様とすることにより、布ストリップの長手方向(縦糸)のヤーンは、基礎布の長手方向(機械方向)と、上記と同様の相対的に小さい角度をなす。同様に、長手方向(縦糸)のヤーンに実質的に直角の布ストリップの横方向(横糸)のヤーンは、基礎布の横方向(機械を横切る方向)と、上記と同様の相対的に小さい角度をなす。布ストリップにおける横方向及び長手方向のヤーンは、互いに常に直角とならないように、滑って(slip)もよい。要するに、布ストリップの長手方向(縦糸)又は横方向(横糸)のヤーンのいずれも、基礎布の長手方向(機械方向)又は横方向(機械を横切る方向)のいずれに沿っても、配列しない。
【0019】
斯かる基礎布を有するプレス布は、多軸プレス布と称されてもよい。先行技術の標準的なプレス布は、3つの軸、つまり、機械方向(MD)のもの、機械を横切る方向(CD)のもの及び布の厚みの方向であるz軸方向のものを有する一方、多軸プレス布は、これらの3つの軸だけでなく、螺旋巻きの層におけるヤーン系の方向で定義される少なくとも2つ以上の軸を有する。さらに、多軸プレス布のz方向に多重的な流路を有する。結果として、多軸プレス布は、少なくとも5つの軸を有する。これらの多軸の構造故、1つ以上の層を有する多軸プレス布は、ヤーン系が互いに平行である基礎布層を有するものと比較して、製紙工程中、プレスニップにおける圧縮に応えて、ネスティング(nesting)及び/又は崩壊に優れた耐性を示す。
【0020】
この種の多軸プレス布は、無端の形態にのみ製造される。このように、これらの使用は、無端のプレス布をプレス部の側から導入し得るように、片持ち梁のように作成されたプレスロール及びその他の部材を有するプレス部に限定されてきた。しかしながら、製造が比較的容易であること、及び圧縮に優れた耐性を有することは、興味の増大、及び多軸プレス布への増大する必要性に貢献し、これは、プレス部に導入する間に無端に継ぎ合わされてもよく、これにより、斯かるプレス部を、片持ち梁のように作成された部材を欠く抄紙機に使用するのを可能とする。この必要性を満たすのに開発された、機械上で継ぎ合せ可能な多軸プレス布は、Yookによる特許文献2乃至4に示されており、これらの文献の教示を参照して取り込む。
【0021】
特許文献2は、複数の隣接する巻きで布ストリップを螺旋巻きして構築された基礎布層から製造された、抄紙機のプレス部用の機械上で継ぎ合せ可能な多軸プレス布を示しており、これらの巻きのそれぞれは、隣接するものに互いに接し、結合されるものである。得た無端の基礎布層は、幅方向の端部における折返し部において互いに結合された第1層(ply)及び第2層を製造するように、平坦化される。横方向のヤーンは、長手方向のヤーンの結合されていない部分を製造するように、幅方向の端部における折返し部において、布ストリップの各巻きから取り除かれる。幅方向の端部に沿った継目ループを有する継目要素は、平坦化された基礎布層の2つの幅方向の端部における折返し部のそれぞれにおいて、第1及び第2の布の層間で配置される。継目ループは、この第1及び第2の布の層間から、長手方向のヤーンの結合されていない部分間で外側に伸びる。この第1及び第2の布の層は、これを介して人造繊維バット材料をニードリングすることにより、互いに積層される。このプレス布は、2つの幅方向の端部において継目ループを互いに噛み合わせることにより形成された通路を介してピントルを通すことにより、抄紙機に導入される間、無端の形態に結合される。
【0022】
特許文献3もまた、機械上で継ぎ合せ可能な多軸プレス布を示す。再度記すると、プレス布は、複数の隣接する巻きにおいて布ストリップを螺旋巻きすることにより構築された基礎布層から製造され、これらの巻きのそれぞれは、隣り合うものに接し且つ結合される。得られた2つの無端の布層は、これらの幅方向の端部における折返し部において、互いに結合された第1及び第2の布の層を製造するように、平坦化される。横方向のヤーンは、継目ループを製造するように、幅方向の端部における折返し部において、布ストリップの各巻きから取り除かれる。この第1及び第2の層は、これを介して人造繊維バット材料をニードリングすることにより互いに積層される。プレス布は、2つの幅方向の端部において継目ループを噛み合わせることにより形成された通路を介してピントルを通すことにより、抄紙機上に導入する間、無端の形態に結合される。
【0023】
最終的に、特許文献4において、機械上で継ぎ合せ可能な他の多軸プレス布に示されている。再度記するが、プレス布は、隣接する複数の巻きにおいて布ストリップを螺旋巻きすることにより構築された基礎布層から製造され、巻きのそれぞれは、隣り合うものに接し、且つ結合される。得られる無端の布層は、幅方向の端部における折返し部において、互いに結合された第1及び第2の布の層を製造するように、平坦化される。横方向のヤーンは、長手方向のヤーンの結合していない部分を製造するように、幅方向の端部における折返し部において、布ストリップの各巻きから取り除かれる。その後、幅方向の端部に沿って継目ループを有する機械上で継ぎ合せ可能な基礎布は、平坦化された基礎布層の第1及び第2の布の層間に配置される。継目ループは、この第1及び第2の布の層間から、長手方向のヤーンの結合されていない部分間を外側に伸びる。第1の布の層、機械上で継ぎ合せ可能な基礎布、及び第2の布の層は、これらを介して人造繊維バット材料をニードリングすることにより、互いに積層される。プレス布は、2つの幅方向の端部において継目ループを噛み合わせることにより形成された通路を介してピントルを通すことにより、抄紙機上に導入の間、無端の形態で結合される。
【0024】
一般的に、継目は、均一な紙の質、低いマーキング及び布の優れた走行性が、厚み、構造、強度、透過性などの特徴の点で布の残りの部分を可能な限り同様である継目を必要とするため、継ぎ合された布の重要な部分である。重要なことに、種々の動作可能な布の継目領域は、荷重下で挙動し、布の残りの部分のように水及び空気に対して同様の透過性を有し、これにより、継目領域により、製造される紙製品に周期的なマーキングが回避される。技術的なかなりの障害がこれらの継目の要件により示されるものの、比較的簡単且つ安全に導入され得るが故、継ぎ合せ可能な布が開発されるのが強く望まれている。
【0025】
いくつかの場合、元の織成布のMD方向の長さの半分の長さを有する布を製造するために、従来の工程を用いて無端の布を形成し、その後、半分に折り返すのに望ましく、或いは経済的である。このことの理由のひとつは、例えば4層の一体化された織成布よりも、2層の布を織成するのは、簡便かつ速いものである。元の無端の布を、MD方向で半分に折り返すことにより、2つの層の布は、4層の布となる。しかしながら、折り返された布は、導入するのが比較的容易である一方、布の強度を減少させ、又はマーキングを発生しない継目配列を必要とする。
【特許文献1】米国特許第5,360,656号明細書
【特許文献2】米国特許第5,916,421号明細書
【特許文献3】米国特許第5,939,176号明細書
【特許文献4】米国特許第6,117,274号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
本発明は、これらの問題を解決することに関する。
【0027】
本発明の目的は、向上した継目の特徴を示す抄紙機に使用される多層の抄紙機用布を提供することである。
【0028】
本発明のさらなる目的は、紙シートの継目の効果を最小限とする、螺旋巻き工程により形成された機械上で継ぎ合せ可能な布を提供することである。
【0029】
本発明のさらなる目的は、上記の目的を達成する抄紙機に使用する布の継ぎ合せ方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明の一態様は、少なくとも2つのMDヤーンの層を有する無端の布を提供するステップと、切断される無端の布の領域においてCDヤーンをほぐす(ravel)ステップと、第1の所定の位置においてMDヤーンの少なくとも1つの層を切断するステップと、第2の所定の位置においてMDヤーンの少なくとも1つの層を切断するステップとを含む多層布を形成する方法に関する。この方法は、無端の布を、MD方向において半分に折り返す(fold)ステップと、互いに近接する第1及び第2の所定の位置を配置するステップと、布が折り返された際、MDヤーンの切断されていない少なくとも1つの層からループを形成するステップと、無端の布を形成するようにループを継ぎ合わせるステップとをも有する。
【0031】
本発明の他の態様は、少なくとも2つのMDヤーンの層を有する無端の布を提供するステップと、切断される無端の布の領域においてCDヤーンをほぐすステップと、第1の所定の位置においてMDヤーンの少なくとも1つの層を切断するステップと、第2の所定の位置においてMDヤーンの少なくとも1つの層を切断するステップと、無端の布を、半分に折り返すステップと、第1及び第2の所定の位置を互いに近接するように配置するステップとを有するステップにより形成された多層の布である。この多層の布は、無端の布を形成するように布を半分に折り返した際、少なくとも1つの切断されていないMD層により形成された継目ループのステップによりさらに形成される。
【0032】
本発明のまたさらに態様は、MDヤーンの少なくとも2つの層を有する無端の基礎布と、無端の布の切断領域においてCDヤーンのほぐされた部分と、MDヤーンの少なくとも2つの層の第1層の第1切断部分と、MDヤーンの少なくとも2つの層の第1層の第2切断部分と、MDヤーンの切断されていない層により形成された複数のループとを含む多層の布である。この多層の布は、無端の布がそれ自体MD方向で折り返された際、ループを接続する継目をも含む。
【0033】
本発明のさらに他の態様において、基礎布、又はMDヤーンの少なくとも2つの層を有する無端の布は、螺旋巻きにより形成された多軸の布である。螺旋巻きの布は、最終的な基礎布の幅よりも少ない幅を有するヤーン材料の布ストリップから構築される。この布ストリップは、幅よりも大きな長さを有する材料の切片(piece)として特徴付けられる。基礎布の製造中、ヤーン材料の布ストリップは、螺旋に巻かれ、好ましくは、螺旋に巻かれた基礎布を形成するように、平行な軸を有する少なくとも2つのロール上で巻かれる。この布ストリップは、最終的な布の所望の幅を達成するように、端部が端部に接するように、又はかさなり合うように、ストリップの端部で、ローラー間の周囲で巻かれる。
【0034】
本発明を特徴づける新規な種々の特徴は、添付し本願の開示内容の一部を形成する特許請求の範囲に特に示されている。本発明、得られる作用利点、及び特別な目的を良好に理解するため、本発明の好適実施例を示す添付の記載事項について、述べる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明により、その目的及び利点は、理解され、記載事項は、図面と組み合わせてなされる。
【0036】
本発明は、抄紙機用の布における布本体と比較して、継目において、十分な継目の強度に構造上ほぼ又は全く影響のないものを提供する、新規の継ぎ合せの方法に関する。同様の部材については、図面を通じて、同様の符番を付す。
【0037】
図面に関連して、本発明の少なくともひとつの実施例に従った例示的な継目を形成する方法について、述べる。図1において、2層の布10を示す。布10は、MDヤーンの第1層12と、MDヤーンの第2層14とを含む。このMDヤーンは、布10の構造を通じて、連続して伸びる。つまり、布は、無端織成により、又は多軸布である特許文献1に述べるものなどの方法により、連続して形成される。第1層12及び第2層14は、CDヤーンの少なくとも1つの層16により、織り交ぜられてもよい。図1に示すように、切断装置18により作用される領域におけるCDヤーンは、既に取り除かれ、又はほどかれている(raveled)。
【0038】
本発明のひとつの実施例において、切断装置18は、この例示的な層14において、MDヤーンの層の少なくともひとつを切断するのに使用される。図1に示すように、切断装置18は、切断表面(図示せず)を有するスタンプ(stamp)であって、ヤーン上に配置され且つ圧力が印加された際に、MDヤーンのひとつの層のみを切断する。本発明の範囲内で、他の切断装置も考慮してもよい。
【0039】
図2に示すように、切断装置18を適用する前で、且つ典型的に、所望の数のCDヤーンをほぐした後において、MDヤーンの第1層及び第2層(12及び14)の間に、シールド(shield)20を挿入してもよい。シールド20は、MDの第1層12の所望しない切断を回避する。いくかの適用例において、シールドを使用することで、使用する切断機構の正確性、MDヤーンの耐久性、又はその他の布の特徴故、必要なくなる。
【0040】
図3に示すように、ひとたびシールド20が載置されると、切断装置18は、MDヤーンの第2層14を切断するように、布10に行われてもよい。図4に示すように、切断装置18は、第1のMD層において、ギャップ22を残存させるように、2つの場所でMD層14を切断してもよい。また、図5に示すように、切断装置20は、MDヤーンの層のフラップ24を残存するように、単一の場所でMD層14を切断するのに使用されてもよい。この方法は、MDヤーンの部分が布の全幅について切断されるまで、種々の回数で布の幅に沿って連続する。繰り返しの回数は、カッターの幅及び布の幅により、決定される。図1乃至5において、布10の小さな部分が示されているが、この部分は、大型の布の代表例である。図面に示す部分は、切断工程を明確にするために限定されるものである。
【0041】
切断工程は、第一に切断された布の長さから布の半分の距離に位置する布の第2の部分でその後繰り返される。上記の別の方法で、切断された領域は、布の連続するループに沿って互いに180°の角度で取り除かれる。2つの層の布10は、それ自体を折返し、4層の布11を形成する。切断されていないMDヤーン12は、布の長さを通じて連続して走行するので、図6及び7に示すように、ループ30を形成するのに機能する。布10の切断領域26及び28に形成されたこれらのループ30が共にとられた場合、互いに噛み合わされてもよく、図8に示すように無端の継ぎ合せを有する4層の布を形成するように、図9に示すようにピントル32を載置してもよい。
【0042】
図6は、2つの層の布を示しており、この布は、上記の通り、2つの切断技術の両方を用いて切断されたものであり、4つの層の布11を形成するように、半分に折り返されたものである。切断部分26及び28は、切断されていない、ループ30を形成するMDヤーン12を曝露し、ループは、元の布の半分の長さを有する機械上で継ぎ合せ可能な無端の布を形成するように、共にとられ、2倍の層を有するものである。
【0043】
本発明のこの例に示すように、無端の2つの層の布10は、図4及び5に示す様式で切断されてもよく、図6に示すように、4つの層を有する無端の布11を形成するように、半分に折り返されてもよい。布10のそれぞれで切断された領域26及び28は、折り返された際、切断されていないMDヤーンの層12を含む。折り返されると、これらのMDヤーン12は、継目ループ30を形成する。この継目ループ30は、互いに噛み合わされ、継目34を形成するように、CD方向に、ピントル32を挿入する。ピン又はピントルを使用することにより、布11は、機械上で継ぎ合せ可能なものとされる。
【0044】
図10に示す他の実施例において、1つ以上の継目スパイラル36は、結合される布11のループ30に付され(affix)てもよい。つまり、スパイラル36は、MDヤーン12で形成されたループ30に挿入される。スパイラル36は、その後、互いに噛み合わされ、1つ以上のピントル32をこれに挿入する。継目スパイラル36は、モノフィラメントのスパイラルであり、好ましくは、ポリアミド樹脂で成形されたものである。このモノフィラメントの直径は、0.40mm又は0.50mmであってもよい。抄紙機に布11を導入する間、モノフィラメントであるスパイラル36は、即座に互いに噛み合わされてもよく、噛み合わされたスパイラルで規定された通路を介してピントル32を通すことにより、互いに結合されてもよい。スタッファーヤーン(stuffer yarn)38は、継目領域が布11の残りと同様の特徴を有することを確保するように、継目スパイラル36内に挿入されてもよい。また、接続ヤーン40は、この継ぎ合せ工程に使用されてもよい。接続ヤーン40及びスタッファーヤーン38は、布11のCDヤーン16として使用されるのと同じタイプのヤーンであってもよい。ピントル32は、モノフィラメントの単一のストランド(stand)、互いの周囲にねじられておらず、諸よりされ、ねじられ、蝋着され、又は互いに編まれたモノフィラメントの多重のストランド、又は種々の諸より/ねじられたヤーンの1つ以上のストランドであってもよい。
【0045】
さらに、布の端部は、当業者公知のその他の継ぎ合せ手段により、継ぎ合わされてもよい。
【0046】
本発明の一実施例において、この構造は、製紙工程のプレス部に用いる機械上で継ぎ合せ可能な布としてのものである。斯かる実施例において、バット繊維は、多層の布の上面(シート側)及び底面(機械側)の表面のいずれか一方又は両方に適用される。
【0047】
継目34により無端の布がひとたび形成されると、MDヤーン14のフラップ24は、マーキングの回避を助け、継目に対して圧力の均一性を増大し、所望する布にニードリングされ得るバットなどの層についての固着位置(anchoring point)を提供する。
【0048】
他の好適実施例において、2つの層の布は、特許文献1に述べる方法により、形成され、例えば、2つの層の織成、又は2つの単層を有し、多軸の布である。特許文献1に述べる布の形成方法は、図11に示しており、螺旋巻き(spiral winding)と称される。当業者に明らかなように、布が螺旋巻きされるが故、MDヤーン及びCDヤーンは、上述の通り布を半分に折り返された際、配列しない。MDヤーンの配列、CDヤーンの特定の部分の除去、MDヤーンで形成されたループの噛み合わせ、及び斯かる布の継ぎ合せについては、Yookによる特許文献3に詳細に述べられており、この全体を参照して、本願に取り込む。
【0049】
このように本発明により、その目的及び利点が理解され、好適実施例について、開示し詳細に述べてきたが、本発明の範囲及び目的は、これらに限定されるものではなく、むしろ、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲により定められるべきものである。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一態様による、切断装置に配置された多層布の平面図である。
【図2】本発明の一態様による、布の層間に配置されたシールドを有する切断装置に配置された多層布の平面図である。
【図3】本発明の一態様による、動作中の切断装置に配置された多層布の平面図である。
【図4】切断装置に配置された多層布の平面図であって、本発明の一態様に従って第1層が切断されたものである。
【図5】切断装置に配置された多層布の平面図であって、本発明の一態様に従って第1層が切断されたものである。
【図6】本発明の一態様による、多層布の重なり合う継目領域の横断面図である。
【図7】継ぎ合わされる前の、本発明の一実施例に従って形成された多層布の一部である。
【図8】本発明の一態様に従った継目を有する多層布である。
【図9】本発明の一態様に従った多層布における継目の側面図である。
【図10】本発明のさらなる態様に従った多層布における継目の側面図である。
【図11】多軸布の製造方法の平面図である。
【符号の説明】
【0051】
10 布
11 布
12 第1層
14 第2層
16 層
18 切断装置
20 シールド
22 ギャップ
24 フラップ
26 切断領域
28 切断領域
30 ループ
32 ピントル
34 継目
36 スパイラル
38 スタッファーヤーン
40 接続ヤーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
MDヤーンの少なくとも2つの層を有する無端の布を提供するステップと;
切断される前記無端の布の領域でCDヤーンをほぐすステップと;
第1の所定の位置でMDヤーンの少なくとも1つの層を切断するステップと;
第2の所定の位置でMDヤーンの少なくとも1つの層を切断するステップと;
MD方向において前記の無端の布を半分に折り返すステップと;
前記の第1及び第2の所定の位置を互いに近接するように載置するステップと;
布を折り返す際、MDヤーンの切断されていない少なくとも1つの層から継目ループを形成するステップと;
無端の布を形成するように前記ループを継ぎ合わせるステップと;
を有することを特徴とする多層布の形成方法。
【請求項2】
前記の切断するステップの少なくとも1つは、前記の所定の位置の少なくとも1つの上に切断されていないMDヤーンのフラップを形成することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記の切断するステップの少なくとも1つは、2つの位置で前記のMDヤーンの層を切断し、布からMDヤーンの部分を取り除くことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
切断されていないMDの少なくとも1つの層に形成されたループを互いに噛み合わせるステップをさらに有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
噛み合わされたループにピントルを挿入するステップをさらに有することを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
無端の布は、螺旋巻きにより形成された多軸布であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記の少なくとも1つの切断されていないMDの層により形成されたループに少なくとも1つのスパイラルの継ぎ合せ要素を挿入するステップをさらに有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つの切断されていないMDヤーンの層の第1及び第2の層間にシールド装置を挿入するステップをさらに有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記のシールドは、MDヤーンの少なくとも1つの層の切断を促進し、第2の層の切断を回避することを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
無端の布は、無端の織成で形成されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
無端の布は、螺旋巻きにより形成されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
MDヤーンの少なくとも2つの層を有する無端の布を提供するステップと;
切断される前記無端の布の領域でCDヤーンをほぐすステップと;
第1の所定の位置でMDヤーンの少なくとも1つの層を切断するステップと;
第2の所定の位置でMDヤーンの少なくとも1つの層を切断するステップと;
前記の第1及び第2の所定の位置を近接して前記の無端の布を折り返すステップと;
布を半分に折り返す際、無端の布を形成するように、少なくとも1つの切断されていないMD層により形成されたループを継ぎ合わせるステップと;
を有するステップにより形成されることを特徴とする多層布。
【請求項13】
MDヤーンの少なくとも2つの層を有する無端の基礎布と;
前記の無端の布の切断領域におけるCDヤーンのほぐされた部分と;
MDヤーンの前記の少なくとも2つの層の第1層の第1切断部分と;
MDヤーンの前記の少なくとも2つの層の第1層の第2切断部分と;
MDヤーンの切断されていない層により形成された複数のループと;
MD方向で無端の布をそれ自体折り返す際、ループを接続する継目と;
を有することを特徴とする多層布。
【請求項14】
前記の第1及び第2の切断部分の少なくとも1つは、切断されていないMDヤーンのフラップを含むことを特徴とする請求項13に記載の多層布。
【請求項15】
前記の第1及び第2の切断部分の少なくとも1つは、布から取り除かれたMDヤーンの部分を有することを特徴とする請求項13に記載の多層布。
【請求項16】
切断されていないMD層により形成されたループは、噛み合わされていることを特徴とする請求項13に記載の多層布。
【請求項17】
継目を形成するように、噛み合わされたループに挿入されるピントルをさらに有することを特徴とする請求項16に記載の多層布。
【請求項18】
布は、それ自体で折り返された螺旋巻きにより形成された多軸布であることを特徴とする請求項13に記載の多層布。
【請求項19】
前記の無端の布は、無端織成により形成されることを特徴とする請求項13に記載の多層布。
【請求項20】
前記の少なくとも1つの切断されていないMDヤーンの層により形成されたループに挿入される少なくとも1つのスパイラルの継ぎ合せ要素をさらに有することを特徴とする請求項13に記載の多層布。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2008−537030(P2008−537030A)
【公表日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−507721(P2008−507721)
【出願日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際出願番号】PCT/US2006/013763
【国際公開番号】WO2006/115795
【国際公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(591097414)アルバニー インターナショナル コーポレイション (110)
【氏名又は名称原語表記】ALBANY INTERNATIONAL CORPORATION
【Fターム(参考)】