説明

継電器の検査方法及び継電器の検査装置

【課題】より検査に要する労役が少なくて済み、より短時間で行うことが可能な故障区間検出装置を検査する手段を提供すること。
【解決手段】継電器の動作下限電流に対し所定倍率の大きさの複数の試験電流をそれぞれ継電器に入力したときの、その継電器の動作時間を計測し、それぞれの動作時間を規定値と比較して、性能劣化の有無を判断する継電器の検査方法の提供による。この継電器の検査方法は、地中線故障区間検出装置における検出器を構成する継電器の検査に好適に用いられるものであり、その適用により、より容易により短時間で故障区間検出装置の検査が行える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、継電器を検査する方法、及び、継電器の検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電力を送電するための地中送電線に問題が発生すると停電を招来するおそれがあり、社会的な影響が大きい。そこで、一般に、地中送電線系統には、故障個所を迅速に検出することが可能な故障区間検出装置が備えられている。
【0003】
例えば、その一例として、地中送電線を所定長の区間に分け、その区間毎に故障時に流れる地絡電流を検出し、地中送電線の故障を検出する装置が知られている。より具体的には、地中送電線の区間毎に変流器を設置し、変流器の出力を検出器に送り、その出力(電流)を検出器にて検出し判断する、過電流方式による故障区間検出装置が知られている。通常、検出器は継電器で構成される。
【0004】
このような故障区間検出装置は、安定した電力供給、故障からの早期回復等を図る上で大変重要な装置であるが、装置の構成要素が劣化等で正常に稼動しない場合には、誤動作や不動作を引き起こすおそれがある。そこで、通常、装置の定期的な検査を行い、正常動作を担保している。尚、故障区間検出装置につき、例えば、特許文献1が挙げられるが、その検査手段についての先行文献はみられないようである。
【特許文献1】特開平6−294837号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、検査対象となる故障区間検出装置が多数備えられており、従来、1つの装置の検査に、大変な時間と労役を要していたため、効率の観点から、あるいは経済的な面から、改善が求められていた。
【0006】
本発明は、上記した問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、より検査に要する労役が少なくて済み、より短時間で行うことが可能な故障区間検出装置を検査する手段を提供することにある。検討が重ねられた結果、以下に示す継電器の検査手段を適用することにより、上記目的を達成出来ることが見出された。尚、本発明に係る継電器の検査手段は、故障区間検出装置の検査に限らず、あらゆる装置・システムに備わる継電器の検査に、適用することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、本発明によれば、継電器の動作下限電流に対し所定倍率の大きさの複数の試験電流をそれぞれ継電器に入力したときの前記継電器の動作時間を計測し、それぞれの前記動作時間を規定値と比較して、性能劣化の有無を判断する継電器の検査方法が提供される(継電器の第1の検査方法といい、単に第1の検査方法ともいう)。
【0008】
本発明に係る継電器の第1の検査方法において、上記所定倍率の大きさの複数の試験電流が、動作下限電流を100%としたときの150%、200%、300%の試験電流であることが好ましい。尚、限定されるものではなく、120%、250%、350%等の継電器の時限特性に合わせた任意の試験電流を採用することが出来る。
【0009】
本発明に係る継電器の第1の検査方法は、地中送電線に変流器を設け、その変流器の出力が電気信号として検出器に入力されるように構成され、地中送電線に地絡故障が生じたときに、変流器を介して入力される地絡過電流を検出器により検出する地中線故障区間検出装置において、その検出器を構成する継電器を検査するための方法として好適である。
【0010】
上記地中線故障区間検出装置において検出器を構成する継電器を検査する場合には、試験電流は、限定されるものではないが、変流器の2次側から入力されることが好ましい。
【0011】
次に、本発明によれば、継電器の動作下限電流に対し所定倍率(1より大きい)の大きさの試験電流を、不動作保証時間及び動作保証時間だけ、継電器へそれぞれ入力するとともに、継電器の動作下限電流に対し所定倍率(1より小さい)の大きさの試験電流を、動作所要時間だけ、継電器へ入力し、それぞれ継電器の動作状況を確認することにより性能劣化の有無を判断する継電器の検査方法が提供される(継電器の第2の検査方法といい、単に第2の検査方法ともいう)。尚、単に本発明に係る継電器の検査方法というときには、第1の検査方法及び第2の検査方法の両方を指す。又、本明細書において、動作所要時間とは、継電器の動作下限電流以上の電流を入力したときに、継電器が動作するまでの時間をいい、継電器毎に規定される時間である。不動作保証時間及び動作保証時間は、所定の電流を流したときに、動作しないことが保証された時間及び動作することが保証された時間であり、継電器毎に規定される時間である。
【0012】
本発明に係る継電器の第2の検査方法において、上記所定倍率(1より大きい)の大きさの試験電流が、動作下限電流を100%としたときの120%の試験電流であり、上記所定倍率(1より小さい)の大きさの試験電流が、動作下限電流を100%としたときの80%の試験電流であることが好ましい。尚、これらは限定されるものではなく、動作下限電流に対する倍率が1より大きい試験電流として、他に例えば、110%、130%等の試験電流を採用することが出来る。又、動作下限電流に対する倍率が1より小さい試験電流として、他に例えば、90%、85%等の試験電流を採用することが出来る。
【0013】
継電器の動作状況を確認することにより性能劣化の有無を判断するにあたっては、上記不動作保証時間として例えば33.3msec、上記動作保証時間として例えば83.3msec、上記動作所要時間として例えば200msec、を採用出来る。即ち、例えば、継電器の動作下限電流に対し所定倍率(1より大きい)の大きさの試験電流を、上記不動作保証時間として33.3msecだけ、上記動作保証時間として83.3msecだけ、継電器に入力したときに、33.3msecでは継電器が動作せず、83.3msecでは継電器が動作し、且つ、継電器の動作下限電流に対し所定倍率(1より小さい)の大きさの試験電流を、上記動作所要時間として200msecだけ、継電器へ入力したときに、継電器が動作しないことにより、性能劣化がないと判断出来る。
【0014】
本発明に係る継電器の第2の検査方法は、地中送電線に変流器を設け、その変流器の出力が送量器により電気信号から光信号に変換されて検出器に入力されるように構成され、地中送電線に地絡故障が生じたときに、変流器及び送量器を介して入力される地絡過電流を検出器により検出する地中線故障区間検出装置において検出器を構成する継電器を検査するための方法として好適である。
【0015】
上記(光信号変換を行う)地中線故障区間検出装置において検出器を構成する継電器を検査する場合には、限定されるものではないが、試験電流が、変流器の2次側から入力されることが好ましい。
【0016】
次に、本発明によれば、継電器の動作下限電流に対し所定倍率の大きさの試験電流を出力する試験電流出力手段と、試験電流を継電器に入力したときの継電器の動作時間を計測する動作時間計測手段と、動作時間を規定値と比較して性能劣化の有無を判断する性能判断手段と、を具備する継電器の検査装置が提供される。
【0017】
本発明に係る継電器の検査装置においては、上記性能判断手段が、表示器を備え、表示器に一の軸を動作時間とし他の軸を試験電流とするグラフを表すとともに、そのグラフ上に規定値に基づく二の曲線で示される管理幅を表し、試験電流出力手段により出力された試験電流に対する、動作時間計測手段により計測された動作時間が、グラフ上の管理幅に入るか否かを表して、性能劣化の有無を視覚的に判断可能とする手段であることが好ましい。
【0018】
本発明に係る継電器の検査装置は、地中送電線に変流器を設け、その変流器の出力が検出器に入力されるように構成され、地中送電線に地絡故障が生じたときに、変流器を介して入力される地絡過電流を検出器により検出する地中線故障区間検出装置において検出器を構成する継電器を検査するための装置として好適である。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る継電器の第1の検査方法は、検出器の動作下限電流に対し所定倍率の大きさの複数の試験電流をそれぞれ検出器に入力したときの検出器の動作時間を計測し、それぞれの動作時間を規定値と比較して、性能劣化の有無を判断するので、試験電流を流す時間が短時間で済み、検査に要する時間が短縮出来るとともに、試験電流を出力する装置が小型化出来る。
【0020】
本発明に係る継電器の第2の検査方法は、検出器の動作下限電流に対し所定倍率の大きさの試験電流を、送量器へ、不動作保証時間及び動作保証時間だけ、それぞれ入力し、検出器の動作状況を確認することにより性能劣化の有無を判断するので、試験電流を流す時間が短時間で済み、検査に要する時間が短縮出来るとともに、試験電流を出力する装置が小型化出来る。
【0021】
本発明に係る継電器の第1の検査方法は、光信号変換を行わない地中線故障区間検出装置において検出器を構成する継電器を検査する手段として用いられる場合において、又、本発明に係る継電器の第2の検査方法は、光信号変換を行う地中線故障区間検出装置において検出器を構成する継電器を検査する手段として用いられる場合において、それぞれ、好ましくは、試験電流が、変流器の2次側から入力されるので、試験電流の大きさが、より小さくなる。従って、試験電流を出力する装置が小型化出来る。試験電流は、変流器の2次側から、電気信号線乃至光信号線(光ファイバ)を経て、検出器に到達するので、その系統を含む故障区間検出装置全体の検査が、同時に行われることになる。尚、従来の検査方法では、試験電流は変流器の1次側から入力していて、且つ、試験電流を検出器の動作下限電流の大きさで長時間流していたので、試験電流を出力する装置が大きくなり、多くの人手を要していた。
【0022】
試験電流を出力する装置の役割を担うのが、本発明に係る継電器の検査装置であるが、上記本発明に係る継電器の検査方法の効果に基づき、小型化され可搬性が向上している。又、本発明に係る継電器の検査装置は、好ましくは、性能劣化の有無を視覚的に判断可能とするものであるから、その判断が容易で、検査を行う人に熟練した技能を求めない。従って、検査のみの専門家の育成が不要になり、上記可搬性の向上とも相まって、人員の効率化が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、適宜、図面を参酌しながら説明するが、本発明はこれらに限定されて解釈されるべきものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加え得るものである。例えば、図面は、好適な本発明の実施の形態を表すものであるが、本発明は図面に表される態様や図面に示される情報により制限されない。本発明を実施し又は検証する上では、本明細書中に記述されたものと同様の手段若しくは均等な手段が適用され得るが、好適な手段は以下に記述される手段である。
【0024】
先ず、本発明に係る継電器の第1の検査方法について説明する。図1は、その第1の検査方法を説明するための図であり、継電器が検出器として用いられている地中線故障区間検出装置の一例を示す構成図である。地中線故障区間検出装置10は、地中送電線11に変流器12を設け、変流器12の出力が電気信号として検出器13(継電器)に入力されるように構成されている。地中送電線11に地絡故障が生じたときには、変流器12を介して地絡過電流が検出器13に入力され、地絡故障が生じたことが検出される。検出器13は、電気信号(電流)の大きさによって作動する継電器として構成される。
【0025】
図6は検出器13(継電器)の一例を示す回路ブロック図である。例えば、図6に示される回路ブロックの検出器を、検出器13として採用することが可能である。図6中において、A1,A2端子に変流器12の出力(2次側)が接続され、地中送電線地絡故障時に、変流器12の変流比に応じた電流が検出器13に入力される。入力された電流は、補助変流器によって内部回路に適した電流に変換され、次の整流回路で全波整流されて、地絡故障電流に比例した直流電圧となる。その直流電圧は、時限回路により一定時間遅れて故障表示器(30F)及び地絡過電流リレー(17G)を駆動し、地絡故障が検出されたことを表示するとともに外部に出力する。尚、復帰回路は、故障表示器(30F)及び地絡過電流リレー(17G)を復帰させるための回路である。
【0026】
検出器13の検査をすることで、地中線故障区間検出装置10を検査することが出来る。ここで、検出器13の動作下限電流に対し、例えば動作下限電流を100%としたときの150%、200%、300%の試験電流を、変流器12の1次側又は2次側から入力する。限定されるものではないが好ましくは2次側からの入力である。そうすると、試験電流は、電気信号線14を介して検出器13に入力されるが、ここで、各試験電流毎の検出器13の動作時間を計測しておく。そして、計測されたそれぞれの動作時間を、規定値と比較して、性能劣化の有無を判断する。尚、規定値は、設計上の動作時間でもよいし、設計上の動作時間に許容誤差を加味した時間であってもよい。
【0027】
図4は、地中線故障区間検出装置10における検出器13(継電器)の動作時間と試験電流との関係を表すグラフである。上記規定値は、曲線41と曲線42で示される動作範囲の下限値及び不動作範囲の上限値であり、その曲線41,42の間の管理幅に、上記した150%、200%、300%の試験電流と、それぞれに対する検出器の動作時間との関係が入っていれば、換言すれば、各試験電流と各動作時間によって得られるプロット43,44,45が、図4のグラフ上の曲線41,42の間に入っていれば、性能劣化はないものと判断される。反対に、曲線41,42の間の管理幅に、上記した150%、200%、300%の試験電流と、それぞれに対する検出器の動作時間との関係が入っていなければ、換言すれば、各試験電流と各動作時間によって得られるプロット43,44,45が、図4のグラフ上の曲線41,42の間から外れていれば、性能劣化があるものと判断される。従って、各試験電流と各動作時間とが正確に測定されていれば、試験電流を、例えば動作下限電流を100%としたときの150%、200%、300%ではなく、その近傍の任意の値の電流としてもよい。
【0028】
尚、図1に示される例は、過電流方式の地中線故障区間検出装置であるが、本発明に係る継電器の第1の検査方法は、図9に示される差動方式の地中線故障区間検出装置への適用も可能である。地中線故障区間検出装置90は、地中送電線11の検出すべき区間の両端に、それぞれ変流器12を設け、それぞれの変流器12の出力が電気信号として検出器13(継電器)に入力されるように構成されている。検出器が何れか一方の変流器の近傍に設けられる場合には他方の変流器の出力(電気信号)は送量器15を介して送られる。地中送電線11に地絡故障が生じたときには、それぞれの変流器12を介して地絡過電流が検出器13に入力され、その電気信号としての電流値の差の大きさによって地絡故障が生じたことが検出される。
【0029】
次に、本発明に係る継電器の第2の検査方法について説明する。図2は、その第2の検査方法を説明するための図であり、継電器が検出器として用いられている地中線故障区間検出装置の他例を示す構成図である。地中線故障区間検出装置20は、地中送電線11に変流器12が設けられ、その変流器12の出力が電気信号線14を介して送量器25に入力され、送量器25によって電気信号から光信号に変換され、光信号線26(光ファイバ)を介して検出器23(継電器)に入力されるように構成されている。地中送電線11に地絡故障が生じたときには、変流器12及び送量器25を介して地絡過電流が検出器23に入力され、地絡故障が生じたことが検出される。送量器25は、電気信号から光信号へのコンバータとして構成することが出来、限定されるものではない。又、検出器23は、光信号の大きさによって作動するリレーとして構成することが出来、限定されるものではない。
【0030】
図7は、光信号を伝送する方式の地中線故障区間検出装置20における送量器25として採用可能な送量器の一例を示す回路ブロック図であり、変流器(ZCT、図2の変流器12に相当する)を介して入力された地絡電流(電気信号)を、光信号へ変換して検出器に出力するものである。図7において、入力された地絡電流は、補助変流器(Aux.CT)によって内部回路に適した電流に変換され、更に、フィルタによって波形を整形された後に、半波整流(回路)により半波整流される。半波整流された電流波形は、VFC(電圧・周波数変換回路)によって電流の大きさに比例した周波数のパルス信号に変換され、更に、E−O変換(回路)によって光パルス信号へ変換され、FD(地中線故障区間検出装置)信号として、検出器へ出力される。尚、光結合器は、光伝送路(図2の光信号線26に相当)の断線監視のために、検出器から発信した断線監視用光パルス信号を、検出器へ送り返すために、FD信号と結合させるものである。又、補助変流器(Aux.CT)によって変換された電流の一部は、安定化電源(回路)によって、内部回路動作のために必要な電源として、各内部回路へ供給される。
【0031】
図8は、地中線故障区間検出装置20の検出器23(継電器)として採用することが可能な検出器の一例を示す回路ブロック図であり、複数の送量器からの出力(光パルス信号であるFD信号)を入力出来る仕様の検出器である。先ず、入力された光パルス信号は、O−E変換(回路)によって、電気信号に変換され、カウンタ及び断線検出(回路)へ送られる。電気信号に変換された光パルス信号(FD信号)は、カウンタによりカウントされ、その値はCPUへ受け渡される。それを受けたCPUにより、その光パルス信号のカウント値が、予め、電流、位相差検出レベル設定(器)によって設定された電流、位相差検出レベルより大きいときに、地絡故障が発生したと解釈され、送量器からの電流値及びそれらの位相差から、その送量器にかかる判定区間内(地中線区間内)に地絡故障があったと判断される。そして、地絡故障があったと判断された場合には、動作表示(回路)に表示され、リレー接点(X1)によりFD検出の情報が外部へ出力される。CPUからは、断線監視用のパルス信号(電気信号)が発信され、これがE−O変換(回路)により光パルス信号に変換され、更に、光結合器によって送量器へ出力される。送量器から送り返されてくる光パルス信号が一定時間途絶えた場合には、断線検出(回路)及びタイマーにより光伝送路(光信号線)の断線があったと判断され、リレー接点(X2)により断線検出の情報が外部へ出力される。尚、ウォッチドッグタイマは、CPUの動作状況を監視するものであり、異常が発生すればリレー接点(X3)により、システム異常の情報が外部へ出力される。
【0032】
検出器23の検査をすることで、地中線故障区間検出装置20を検査することが出来る。ここで、検出器23の動作下限電流に対し、例えば動作下限電流を100%としたときの120%の試験電流を、不動作保証時間として33.3msecだけ、動作保証時間として83.3msecだけ、変流器12の1次側又は2次側から入力する。限定されるものではないが好ましくは2次側からの入力である。そうすると、試験電流は、電気信号線14を介して送量器25に入力され光信号に変換され、更に光信号線26を介して検出器23に入力される。
【0033】
尚、不動作保証時間としての33.3msec及び動作保証時間として83.3msecは、西日本における電力周波数の2サイクル及び5サイクルに相当する時間である。即ち、西日本地方であれば、周波数は60Hzであるから、1サイクルは1/60=16.66msecより、2サイクルは33.3msec、5サイクルは83.3msecである。勿論、東日本地方であれば、周波数は50Hzであるから、1サイクルは1/50=20msecより、2サイクルは40msec、5サイクルは100msecであり、これらの時間を不動作保証時間及び動作保証時間として採用出来る。
【0034】
又、検出器23の動作下限電流に対し、例えば動作下限電流を100%としたときの80%の試験電流を、検出器23(継電器)の動作所要時間として規定された時間(例えば200msec)だけ、変流器12の1次側又は2次側から入力する。限定されるものではないが好ましくは2次側からの入力である。そうすると、試験電流は、電気信号線14を介して送量器25に入力され光信号に変換され、更に光信号線26を介して検出器23に入力される。
【0035】
図5は、地中線故障区間検出装置20における検出器23(継電器)の動作時間と試験電流との関係を表すグラフである。120%の試験電流を83.3msecの間だけ流したとき(グラフ中のプロット53)に、検出器23が動作して、且つ、120%の試験電流を33.3msecの間だけ流したとき(グラフ中のプロット54)及び80%の試験電流を200msecの間だけ流したとき(グラフ中のプロット55)に、検出器23が動作しない場合に、性能劣化はないものと判断される。この条件に合致しなければ、即ち、120%の試験電流を83.3msecの間だけ流したとき(グラフ中のプロット53)に、検出器23が動作しないか、又は、120%の試験電流を33.3msecの間だけ流したとき(グラフ中のプロット54)若しくは80%の試験電流を200msecの間だけ流したとき(グラフ中のプロット55)の何れかにおいて、検出器23が動作した場合に、性能劣化があるものと判断される。尚、図5において、動作値管理幅とは、連続入力で動作する入力電流の最小値である動作下限電流の管理幅を意味する。又、動作時間管理幅とは、瞬時入力で動作する入力時間の下限値の管理幅を意味する。
【0036】
尚、図2に示される例は、過電流方式の地中線故障区間検出装置であるが、本発明に係る継電器の第2の検査方法は、図10に示される位相比較方式の地中線故障区間検出装置への適用も可能である。地中線故障区間検出装置100は、地中送電線11の検出すべき区間の両端に、それぞれ変流器12を設け、それぞれの変流器12の出力が電気信号線14を介してそれぞれの送量器25に入力され、それぞれの送量器25によって電気信号から光信号に変換され、それぞれ光信号線26(光ファイバ)を介して検出器23(継電器)に入力されるように構成されている。地中送電線11に地絡故障が生じたときには、それぞれの変流器12、送量器25を介して地絡過電流が検出器23に入力され、その光信号に変換された電流の位相差によって、地絡故障が生じたことが検出される。
【0037】
次に、本発明に係る継電器の検査装置について説明する。この検査装置は、地中送電線に変流器を設け、その変流器の出力が、電気信号のままであれ光信号に変換されたものであれ、検出器に入力されるように構成され、地中送電線に地絡故障が生じたときに、変流器を介して入力される地絡過電流を検出器により検出する地中線故障区間検出装置において検出器を構成する継電器を検査する装置として好適なものである。
【0038】
本発明に係る継電器の検査装置は、本発明に係る継電器の検査方法を実現するための装置である。そのために、継電器の動作下限電流に対し所定倍率(例えば動作下限電流を100%としたときに120%、150%、200%、300%等)の大きさの試験電流を出力する試験電流出力手段を備える。既述のように、本発明に係る継電器の検査方法(第1の検査方法)においては、試験電流を、例えば動作下限電流を100%としたときの150%、200%、300%ではなく、その近傍の任意の値の電流としてもよい。従って、試験電流出力手段として、出力する電流値の正確さは必要ではなく、検査装置を、より小型化することが可能である。又、本発明に係る継電器の検査装置は、試験電流を継電器に入力したときの継電器の動作時間を計測する動作時間計測手段を備える。
【0039】
更には、本発明に係る継電器の検査装置は、動作時間を規定値と比較して継電器の性能劣化の有無を判断する性能判断手段を備える。この性能判断手段の好ましい態様は、例えば液晶の表示器を備えたものであり、その表示器に、縦軸を動作時間とし横軸を試験電流とするグラフを表し、そのグラフ上に規定値に基づく二の曲線で示される管理幅を表し、上記試験電流出力手段により出力された試験電流に対する、上記動作時間計測手段により計測された継電器の動作時間が、グラフ上の管理幅に入るか否かを表すことが出来るものである。この視覚的な表現により、性能劣化の有無を判断することが可能になる。
【0040】
図3は、本発明に係る継電器の検査装置の一実施形態を示す回路ブロック図である。各回路の制御は全てCPUにより行われ、CPUは、計測開始、表示切替、モード切替、タップ切替、の各スイッチの操作に応じて、表示器(液晶)への表示情報、DAC(デジタル−アナログ変換回路)への出力電流波形信号を作製し、それぞれに送信する。CPUで作製された出力電流波形のデジタル信号は、DACでアナログ信号へ変換された後に、パワーアンプにより交流定電流に変換され、電流出力(端子)k、lから、試験電流として出力される。その出力された試験電流のピーク値は、ピークホールダによって保持される。保持されたピーク値は、CPU内部のADC(アナログ−デジタル変換回路)によりデジタル信号へ変換され、出力電流値としてCPUに取り込まれる。又、接点入力(端子)B1,B2から入力される検出器の接点入力(情報)は、電気信号に変換されてCPUに取り込まれる。CPUでは、出力した試験電流、及び入力した接点入力(情報)から、継電器(検出器)の時限特性を計算して良否の判定を行う。表示器(液晶)は、CPUの制御により、操作説明、設定内容、出力電流値、時限計測値、等の操作に必要な情報、計測結果を表示する。尚、レギュレータは、各回路動作に必要な安定した電圧を供給する電源回路であり、電流出力のための電圧(AV)と、各回路のための電圧(DV)は、バッテリから供給される。
【0041】
又、例えば液晶の表示器に表示されるグラフの内容及びデザインとして、例えば図11に示されるデザインのグラフを挙げることが出来る。図11は、継電器の検査装置により計測した結果の表示例であり、縦軸は動作時間(ms)、横軸は動作下限電流に対する百分率として示された試験電流(%)を表している。図11中において、実線は、動作下限電流の150%、200%、300%の各試験電流で測定したそれぞれ(3点)の動作時間を結ぶ近似曲線を示し、実線の上下の点線は、試験電流(%)に対する動作時間(ms)の動作下限値及び不動作上限値を示す近似曲線であり管理幅を表している。尚、この点線で示される近似曲線は、継電器(検出器)の時限特性により変わり得るものであり、図11中の右上に示す50msの文字は、この表示例が、例えば動作下限電流の300%の試験電流を入力したときに、動作時間50msとなる時限特性を有する継電器の場合の近似曲線であることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の継電器の検査方法及び継電器の検査装置は、地中送電線の故障区間検出装置にかかる検出器に用いられる継電器の検査手段として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】地中線故障区間検出装置の一例を示す構成図である。
【図2】地中線故障区間検出装置の他例を示す構成図である。
【図3】本発明に係る継電器の検査装置の一実施形態を示す回路ブロック図である。
【図4】本発明に係る継電器の第1の検査方法を説明するための継電器の動作時間と試験電流との関係を表すグラフである。
【図5】本発明に係る継電器の第2の検査方法を説明するための継電器の動作時間と試験電流との関係を表すグラフである。
【図6】継電器の一例を示す回路ブロック図である。
【図7】送量器の一例を示す回路ブロック図である。
【図8】継電器の一例を示す回路ブロック図である。
【図9】地中線故障区間検出装置の他例を示す構成図である。
【図10】地中線故障区間検出装置の他例を示す構成図である。
【図11】本発明に係る継電器の検査装置において性能判断手段を構成する表示器の一実施形態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0044】
10,20,90,100…地中線故障区間検出装置、11…地中送電線、12…変流器、13,23…検出器、14…電気信号線、15,25…送量器、26…光信号線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
継電器の動作下限電流に対し所定倍率の大きさの複数の試験電流をそれぞれ継電器に入力したときの前記継電器の動作時間を計測し、それぞれの前記動作時間を規定値と比較して、性能劣化の有無を判断する継電器の検査方法。
【請求項2】
地中送電線に変流器を設け、その変流器の出力が電気信号として検出器に入力されるように構成され、地中送電線に地絡故障が生じたときに、前記変流器を介して入力される地絡過電流を前記検出器により検出する地中線故障区間検出装置において、前記検出器を構成する継電器を検査するための請求項1に記載の継電器の検査方法。
【請求項3】
継電器の動作下限電流に対し所定倍率(1より大きい)の大きさの試験電流を、不動作保証時間及び動作保証時間だけ、継電器へそれぞれ入力するとともに、
継電器の動作下限電流に対し所定倍率(1より小さい)の大きさの試験電流を、動作所要時間だけ、継電器へ入力し、
それぞれ継電器の動作状況を確認することにより性能劣化の有無を判断する継電器の検査方法。
【請求項4】
地中送電線に変流器を設け、その変流器の出力が送量器により電気信号から光信号に変換されて検出器に入力されるように構成され、地中送電線に地絡故障が生じたときに、前記変流器及び送量器を介して入力される地絡過電流を前記検出器により検出する地中線故障区間検出装置において、前記検出器を構成する継電器を検査するための請求項3に記載の継電器の検査方法。
【請求項5】
継電器の動作下限電流に対し所定倍率の大きさの試験電流を出力する試験電流出力手段と、前記試験電流を前記継電器に入力したときの継電器の動作時間を計測する動作時間計測手段と、前記動作時間を規定値と比較して性能劣化の有無を判断する性能判断手段と、を具備する継電器の検査装置。
【請求項6】
前記性能判断手段が、表示器を備え、
前記表示器に一の軸を動作時間とし他の軸を試験電流とするグラフを表すとともに、前記グラフ上に前記規定値に基づく二の曲線で示される管理幅を表し、
前記試験電流出力手段により出力された試験電流に対する、前記動作時間計測手段により計測された動作時間が、前記グラフ上の前記管理幅に入るか否かを表して、
性能劣化の有無を視覚的に判断可能とする請求項5に記載の継電器の検査装置。
【請求項7】
地中送電線に変流器を設け、その変流器の出力が検出器に入力されるように構成され、地中送電線に地絡故障が生じたときに、前記変流器を介して入力される地絡過電流を前記検出器により検出する地中線故障区間検出装置において、前記検出器を構成する継電器を検査するための請求項5又は6に記載の継電器の検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−53011(P2006−53011A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−234150(P2004−234150)
【出願日】平成16年8月11日(2004.8.11)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【出願人】(000235901)美和電気株式会社 (9)
【Fターム(参考)】