説明

網戸用害虫防除剤

【課題】網戸に施用される組成物であって、高い害虫防除効果を奏するとともに、優れた防汚作用をも備えた網戸用害虫防除剤の提供。
【課題の解決手段】(a)害虫防除成分と、(b)帯電防止成分を含有する網戸用害虫防除剤。好ましくは、(a)害虫防除成分がピレスロイド系及び有機ケイ素系殺虫成分から選ばれる1種又は2種以上で、(b)帯電防止成分がアニオン系界面活性剤であり、加えてアニオン系可溶化剤と水を含有する網戸用害虫防除剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、網戸用害虫防除剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
家屋等に使用されている網戸には室内の光に誘引されたりして種々の害虫が飛来し、戸や窓が開いている場合には網戸を通って室内に侵入してくることも多々あった。その対策として、網戸に殺虫剤や防虫剤を処理して害虫の侵入を防ぐ方法が、例えば、特許文献1や特許文献2に開示されている。
特許文献1には、粉末状の蚊取線香を液状の接着剤に溶かしてこれを網戸の網に塗りつけるような方法が記載されているが、抽象的な提案に留まっている。一方、特許文献2は、施用時に薬剤が網戸に効率よく付着し、網戸の網目を通過する比率が減少するような組成物を提供することを目的としたものであるが、防除効果が必ずしも十分でなく、また、網戸に塗布された組成物が埃りなどの汚れの付着を招き、逆に不快感を与えたり、防除効果が低下してしまうという問題があった。
かかる状況から、本発明者らは、網戸用害虫防除剤の開発にあたっては、高い害虫防除効果を奏するとともに、優れた防汚作用も兼備すべきと結論し、鋭意検討を進め、本発明を完成するに至ったものである。
【特許文献1】特開昭61−36487号公報
【特許文献2】特開平11−315002号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、網戸に施用される組成物であって、高い害虫防除効果を奏するとともに、優れた防汚作用をも備えた網戸用害虫防除剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するため、本発明は以下の構成を採用する。
(1)(a)害虫防除成分と、(b)帯電防止成分を含有する網戸用害虫防除剤。
(2)(b)帯電防止成分が、アニオン系界面活性剤である(1)に記載の網戸用害虫防除剤。
(3)(a)害虫防除成分と、(b)帯電防止成分に加えて、(c)可溶化剤、ならびに(d)水を含有する(1)又は(2)に記載の網戸用害虫防除剤。
(4)(a)害虫防除成分がピレスロイド系及び有機ケイ素系殺虫成分から選ばれる1種又は2種以上で、(c)可溶化剤がアニオン系可溶化剤である(1)ないし(3)のいずれかに記載の網戸用害虫防除剤。
【発明の効果】
【0005】
本発明の網戸用害虫防除剤は、高い害虫防除効果を奏するとともに、優れた防汚作用をも備えるので極めて実用的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
(a)害虫防除成分としては、フタルスリン、フェノトリン、ぺルメトリン、シフェノトリン、シペルメトリン、トラロメトリン、レスメトリン、アレスリン、プラレトリン、フラメトリン、イミプロトリン、エムペントリン、トランスフルトリン、メトフルトリン、プロフルトリン、エトフェンプロックス等のピレスロイド系殺虫成分、シラフルオフェン等の有機ケイ素系殺虫成分、ジクロルボス、フェニトロチオン等の有機リン系殺虫成分、プロポクスル等のカーバメート系殺虫成分、イミダクロプリド、ジノテフラン、クロチアニジン等のネオニコチノイド系殺虫成分などがあげられる。このうち、速効性と安全性の点からピレスロイド系及び有機ケイ素系殺虫成分から選ばれる1種又は2種以上を選択するのが好ましい。
なお、上記殺虫成分のなかには、その不斉炭素や二重結合に基づく光学異性体や幾何異性体が存在するが、これらの各々やそれらの任意の混合物の使用も本発明に含まれるのは勿論である。
【0007】
かかる害虫防除成分は施用後網戸に残存し、飛来した害虫が触れると殺虫効果を奏するが、揮散性の高い成分を配合すれば、施用面から徐々に揮散して環境空間に殺虫成分バリヤーを形成し、害虫の予防的防除を期待することも可能である。
網戸用害虫防除剤中に配合される殺虫成分の含有量は、使用目的や使用期間等を考慮して適宜決定すればよいが、害虫防除剤中0.01〜3.0w/v%程度が適当である。0.01w/v%未満であると所望の効果が得られないし、一方、3.0w/v%を超えると製剤の安定性の点で困難を伴う。
【0008】
害虫防除剤の剤型としては、スプレーの形態で用いられる乳剤、水溶剤、マイクロエマルジョン等が一般的であるが、もちろん噴射剤を配合してエアゾール形態に適用してもよい。なお、エアゾール形態の場合、各成分の含有量はエアゾール原液中の濃度で示す。
【0009】
本発明の網戸用害虫防除剤は、(a)害虫防除成分とともに、(b)帯電防止成分を含有することを特徴とする。
(b)帯電防止成分としては、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン系界面活性剤、シリコン系界面活性剤などがあげられるが、アニオン系界面活性剤が好ましく、なかでもポリオキシエチレン(POE)アルキルエーテルリン酸塩が本発明の趣旨に好適に合致する。POEのモル数は5〜30程度、アルキル基の炭素数は10〜20程度が適当であり、リン酸塩としては、ナトリウム塩やカリウム塩があげられる。
帯電防止成分の配合は、埃などの汚れが網戸に付着するのを低減し、防除効果の低下防止に効果的であるとともに、当然のことながら、汚れによる不快感を軽減し、網戸の清掃の省力化にも役立つものである。
帯電防止成分の配合量は、0.05〜2.0w/v%程度で十分であり、2.0w/v%を越えると、製剤の安定性に影響を及ぼす場合がある。
【0010】
本発明では、(a)害虫防除成分と、(b)帯電防止成分に加えて、(c)可溶化剤、ならびに(d)水などが配合される。
(c)可溶化剤は、(a)害虫防除成分を水に可溶化するために配合され、アニオン系可溶化剤が好適である。例えば、ポリオキシエチレン(POE)スチリルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレン(POE)アルキルエーテル硫酸塩、ドデシルベンゼン硫酸塩などがあげられる。上記POEのモル数は5〜30程度、アルキル基の炭素数は10〜20程度が適当であり、硫酸塩としてはナトリウム塩やカリウム塩が一般的である。
(c)可溶化剤の配合量は、(a)害虫防除成分の物理化学的性状によっても左右されるが、2.0〜15w/v%程度が適当である。
【0011】
本発明は、帯電防止成分としてアニオン系界面活性剤を好適に使用し、これとの適合性からアニオン系可溶化剤を好適に選択する。特許文献2(特開平11−315002号公報)に開示されているように、一般に非イオン系可溶化剤の方が製剤化が容易なのであるが、非イオン系可溶化剤を主体に用いた場合、アニオン系帯電防止成分との適合性が劣り、満足のいく防汚効果が得られず、害虫防除効果の低下防止に有効でないことが認められた。
【0012】
本発明の網戸用害虫防除剤には、(d)水のほか、必要に応じて、有機溶剤、例えば、エタノール、イソプロパノールなどの低級アルコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコールなどの炭素数3〜6のグリコール、これらのグリコールエーテル、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、灯油などの炭化水素系溶剤などを配合することができる。
【0013】
また、本発明の効果に支障を来たさない限りにおいて、若干量の非イオン系界面活性剤を添加しても構わない。
非イオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアミノエーテル類などのエーテル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類などの脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンスチレン化フェノール、脂肪酸のポリアルカロールアミドなどがあげられる。
【0014】
本発明では、所望の作用・効果を得るために、トリエタノールアミンなどのpH調整剤を配合し、液剤中のpHを5〜7に調整するのが好ましい。pHがこの範囲を外れると害虫防除成分の安定性に影響を及ぼす懸念を生じる。
【0015】
更に、殺ダニ剤、カビ類、菌類等を対象とした防カビ剤、抗菌剤や殺菌剤、あるいは、安定剤、消臭剤、消泡剤、香料、賦形剤等を適宜配合してもよい。殺ダニ剤としては、5−クロロ−2−トリフルオロメタンスルホンアミド安息香酸メチル、サリチル酸フェニル、3−ヨード−2−プロピニルブチルカーバメート等があり、一方、防カビ剤、抗菌剤や殺菌剤としては、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−(4−チアゾリル)ベンツイミダゾール、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、トリホリン、3−メチル−4−イソプロピルフェノール、オルト−フェニルフェノール等を例示できる。
【0016】
本発明の網戸用害虫防除剤をエアゾール形態に適用する場合、噴射剤が配合される。噴射剤としては、ジメチルエーテル、液化石油ガス(LPG)、圧縮ガス(窒素ガス、炭酸ガス、亜酸化窒素、圧縮空気等)があげられる。
【0017】
網戸用害虫防除剤が充填される容器は、その用途、使用目的、対象害虫等に応じて、適宜バルブ、噴口、ノズル等の形状を選択すればよい。
例えば、広角ノズル付きのトリガースプレータイプを用いれば、一度の操作で網戸の広い範囲を処理することが可能となり便利である。
【0018】
こうして得られた本発明の網戸用害虫防除剤は、所定量を所望の網戸に処理すればよく、目安として5〜50mL/m2程度が適当である。そして、本発明によれば、帯電防止成分の作用によって埃などの汚れが網戸に付着しにくくなり、汚れに起因する害虫防除効果の低下が防止される結果、残効性が向上し害虫防除効果は数ケ月にわたって持続する。更に、汚れによる不快感が軽減され、網戸の清掃の省力化にも役立つので極めて実用的である。
【0019】
本発明の対象となる害虫としては、飛来して網戸に集まり、人に被害や不快感を与える昆虫全てがあげられる。例えば、アカイエカ、ネッタイシマカ、ユスリカ類、イエバエ類、チョウバエ、ショウジョウバエ等のコバエ類、ブユ類、アブ類等の双翅目、ハチ類、アリ類等の膜翅目、ハムシ、カナブン等の鞘翅目、ガ類等の鱗翅目、ウンカ、アブラムシ等の半翅目等があげられるが、これらの害虫に限定されるものではない。
【0020】
次に具体的な実施例に基づき、本発明の網戸用害虫防除剤について更に詳細に説明する。
【実施例1】
【0021】
害虫防除成分としてのシフルトリンを0.3w/v%、帯電防止成分としてのポリオキシエチレン(POE:5モル)アルキル(C15)エーテルリン酸ナトリウムを0.5w/v%、可溶化剤としてのポリオキシエチレン(POE:10モル)スチリルフェニルエーテル硫酸ナトリウムを8.0w/v%、イソプロパノールを3.0w/v%、pH調整剤としてのトリエタノールアミンを0.12w/v%、防腐剤としての5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンを0.02w/v%、及び水88.06w/v%からなる組成物(120mL)をトリガー付きボトルに充填して、スプレー式の網戸用害虫防除剤を調製した。
この網戸用害虫防除剤の20mLを、一戸建て家屋の網戸2m2に処理した。2ケ月にわたり網戸に止まっている虫は観察されず、高い害虫駆除効果を示した。
【実施例2】
【0022】
実施例1に準じて表1に示す各種網戸用害虫防除剤を調製し、下記に示す試験を行った。
(1)害虫の防除効果
6面体の1面を網で構成した試験箱(20×20×20cm)を用意し、あらかじめ供試害虫防除剤を10mL/m2の割合でそれぞれ処理した網を取り付けた。試験箱を埃がたつ屋外に並べ、試験開始時、1ケ月後、及び2ケ月後に、試験箱内にヒトスジシマカ20匹を放虫した。放虫してから60分間にわたり一定の時間毎に網に止まっている虫数を数え、合計数を記録した。
(2)防汚効果
試験2ケ月後に網を手で触り、汚れの程度を感触で調べた。結果は、汚れの少ないもの(○)、中程度のもの(△)、多いもの(×)で示した。
【0023】
【表1】



【0024】
試験の結果、害虫防除成分とともに帯電防止成分を含有する本発明の網戸用害虫防除剤は、網戸に長期間にわたり優れた害虫防除効果を付与した。これは帯電防止成分を配合することによって、埃などの汚れが網戸に付着しにくくなり、その結果、残効性の低下防止に寄与したものと判断された。なお、帯電防止成分としてはアニオン系界面活性剤が、また可溶化剤としてはアニオン系可溶化剤が好ましく、本発明1及び本発明2のように、両者の組み合わせが最適であった。
これに対し、比較例1及び比較例2のように、帯電防止成分を配合しない場合、汚れの付着による不快感と害虫防除効果の低下が否めず、網戸用害虫防除剤として効果的でないことが認められた。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の網戸用害虫防除剤は、網戸用だけでなく広範な害虫駆除を目的として利用することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)害虫防除成分と、(b)帯電防止成分を含有することを特徴とする網戸用害虫防除剤。
【請求項2】
(b)帯電防止成分が、アニオン系界面活性剤であることを特徴とする請求項1に記載の網戸用害虫防除剤。
【請求項3】
(a)害虫防除成分と、(b)帯電防止成分に加えて、(c)可溶化剤、ならびに(d)水を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の網戸用害虫防除剤。
【請求項4】
(a)害虫防除成分がピレスロイド系及び有機ケイ素系殺虫成分から選ばれる1種又は2種以上で、(c)可溶化剤がアニオン系可溶化剤であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の網戸用害虫防除剤。

【公開番号】特開2009−126805(P2009−126805A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−301731(P2007−301731)
【出願日】平成19年11月21日(2007.11.21)
【出願人】(000207584)大日本除蟲菊株式会社 (184)
【Fターム(参考)】