説明

緊急車両報知装置、緊急車両報知方法

【課題】 従来、車両に搭載したマイクロフォンを回転させて車両の周囲のサイレン音を検出し警報音の発生元の方向と、ドップラー効果による変化分を基に発生元が接近中であるか否かを判定することで緊急車両の到来を報知する緊急車両報知装置がある。
しかし、大都市等の周辺の騒音が大きく建物等により警報音が多重反射する地域では、サイレン音の反射、回析、散乱等の発生によりサイレン音の発生方向を判断することは難しいため、誤報知が発生してしまう。
本発明の目的は、運転者に信頼度の高い緊急車両についての情報を報知するための技術を提供することにある。
【解決手段】
本発明の緊急車両報知装置は、指向性を備えたアンテナを用いて緊急車両から発振される電波を検出し、検出結果から緊急車両の方向を算出し、電波の強弱により緊急車両の接近を検知する手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用の緊急車両報知の技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、緊急車両の到来を報知する技術として、特許文献1に記載された緊急車両報知装置がある。特許文献1には、車両に搭載したマイクロフォンを回転させて車両の周囲のサイレン音を検出し警報音の発生元の方向と、ドップラー効果による変化分を基に発生元が接近中であるか否かを判定する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−63995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の緊急車両報知装置では、大都市等の周辺の騒音が大きく建物等により警報音が多重反射する地域では、サイレン音の反射、回析、散乱等の発生によりサイレン音の発生方向を判断することは難しいため、誤報知が発生してしまう。
【0005】
本発明の目的は、運転者に信頼度の高い緊急車両についての情報を報知するための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく、本発明の車載用緊急車両報知装置は、所定の緊急車両が発する電波の到来方向と受信強度を特定する電波受信手段と接続され、前記電波受信手段から前記電波の到来方向と受信強度とを受け付けて、前記緊急車両の位置について、自車からの方向を算出し記録する緊急車両位置算出手段と、前記受信強度の変化を基に前記緊急車両の接近を検知し報知する報知手段と、を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、本発明の一実施形態が適用された車載用ナビゲーション装置の概略構成図である。
【図2】図2は、リンクテーブルの構成例を示す図である。
【図3】図3は、緊急車両検出記録テーブルの構成例を示す図である。
【図4】図4は、演算処理部の機能構成を示す図である。
【図5】図5は、演算処理部のハードウェア構成を示す図である。
【図6】図6は、アダプティブアレーアンテナの原理を示すモデル図である。
【図7】図7は、緊急車両検出処理のフロー図である。
【図8】図8は、報知画面の画面構成例を示す図である。
【図9】図9は、図による報知画面の画面構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0009】
当該実施形態では、車載用ナビゲーション装置を車載用緊急車両報知装置として適用している。
【0010】
図1は、本発明が適用された車載用ナビゲーションシステム20の概略構成図である。図示するように、車載用ナビゲーションシステム20は、車載用ナビゲーション装置100と、アダプティブアレーアンテナ(Adaptive Array Antenna)装置11と、を有する。
【0011】
アダプティブアレーアンテナ装置11は、所定の位置に配置した複数のアンテナを備え、アンテナで検知した受信波の位相差を用いて、受信波の到来角度(方向)を特定する装置である。
【0012】
アダプティブアレーアンテナ装置11は、アンテナの利得を高くする方向とアンテナの利得を低くする方向とを変化させることが可能である。これにより、反射波や回析波等により信号の歪みが発生するマルチパスフェージングの影響下においてもアンテナの受信能力を高く保つことが可能となる。
【0013】
なお、アダプティブアレーアンテナ装置11は、電波を受信すると、受信した電波の周波数と、到来角度と、受信強度と、を出力する。
【0014】
車載用ナビゲーション装置100は、演算処理部1と、ディスプレイ部2と、記憶装置3と、音声入出力装置4と、入力装置5と、ROM装置6と、車速センサ7と、ジャイロセンサ8と、GPS(Global Positioning System)受信装置9と、FM多重放送受信装置10と、を有する。
【0015】
演算処理部1は、様々な処理を行う中心的ユニットである。例えば各種センサ7,8やGPS受信装置9、FM多重放送受信装置10等から出力される情報を基にして現在地を検出する。また、得られた現在地情報に基づいて、表示に必要な地図データを記憶装置3あるいはROM装置6から読み出す。
【0016】
また、演算処理部1は、読み出した地図データをグラフィックス展開し、そこに現在地を示すカーマークを重ねてディスプレイ部2へ表示する。また、記憶装置3あるいはROM装置6に記憶されている地図データ等を用いて、ユーザから指示された出発地(現在地)と目的地とを結ぶ最適な経路(推奨経路)を探索する。また、音声入出力装置4やディスプレイ部2を用いてユーザを誘導する。
【0017】
ディスプレイ部2は、演算処理部1で生成されたグラフィックス情報を表示するユニットである。ディスプレイ部2は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどで構成される。
【0018】
記憶装置3は、HDDや不揮発性メモリカードといった、少なくとも読み書きが可能な記憶媒体で構成される。
【0019】
この記憶媒体には、通常の経路探索装置に必要な地図データ(地図上の道路を構成するリンクのリンクデータを含む)であるリンクテーブル200と、緊急車両検出記録テーブル300と、が記憶されている。
【0020】
図2は、リンクテーブル200の構成を示す図である。リンクテーブル200は、地図上の区画された領域であるメッシュの識別コード(メッシュID)201ごとに、そのメッシュ領域に含まれる道路を構成する各リンクのリンクデータ202を含んでいる。
【0021】
リンクデータ202は、リンクの識別子であるリンクID211ごとに、リンクを構成する2つのノード(開始ノード、終了ノード)の座標情報222、リンクを含む道路の種別を示す道路種別223、リンクの長さを示すリンク長224、予め記憶されたリンク旅行時間225、リンクを通行することができるか否かを示す通行可否226、リンクを含む道路の通称(例えば、「環八通り」等)を示す通称227、リンクを含む道路の路幅228、などを含んでいる。
【0022】
なお、ここでは、リンクを構成する2つのノードについて開始ノードと終了ノードとを区別することで、同じ道路の上り方向と下り方向とを、それぞれ別のリンクとして管理するようにしている。
【0023】
図3は、緊急車両検出記録テーブル300の構成を示す図である。緊急車両検出記録テーブル300は、アダプティブアレーアンテナ装置11から送信された受信情報について、受信した日時や緊急車両の種類、電波の到来角度、電波の受信強度および受信強度等から判断した緊急車両との距離の変化状況を記録するテーブルである。
【0024】
緊急車両検出記録テーブル300は、レコードごとに、日時301と、種類302と、到来角度303と、受信強度304と、状況305と、の情報を含む。
【0025】
日時301は、車載用ナビゲーション装置100がアダプティブアレーアンテナ装置11から情報を受信した日時である。例えば、受信した日時が2008年1月1日午前0時1分15秒であれば、「2008/1/1 00:01:15」と記憶する。
【0026】
種類302は、アダプティブアレーアンテナ装置11から受信した情報のうち、受信した周波数を基に特定した緊急車両の種類である。例えば、「消防」、「救急」等、である。
【0027】
なお、一般に、消防や救急等の緊急車両は、特定の周波数帯の電波を用いてその位置等の情報を発振しているため、アダプティブアレーアンテナ装置11が受信した電波の周波数帯(例えば、150.06MHz等)が明確であれば、緊急車両の種類は明確になる。
【0028】
到来角度303は、アダプティブアレーアンテナ装置11から受信した電波の到来角度(方向)である。例えば、「70°」等の度数法による角度である。なお、到来角度は、車両上空から車両を見下ろした場合に、車両の前方正面方向をゼロ度とし、車両の右側方が90度、後方正面方向が180度、左側方が270度となるように度数法で表示した角度である。
【0029】
具体的には、車両の前方正面から緊急車両の電波を受信した場合には、到来角度は0度となり、右前方から電波を受信した場合には、到来角度は0度〜90度までの値となる。
【0030】
受信強度304は、アダプティブアレーアンテナ装置11から受信した電波の強度を表すものである。例えば、受信した電波の強度を合成波の振幅の強度(「8(dB)」等)で表す。または、「弱」、「中」、「強」等、所定の段階に区分して表すものであっても良い。
【0031】
状況305は、受信した電波の種類ごとに、電波の受信強度を用いて電波の発振元である緊急車両と自己の車両が近づいているのか遠ざかっているのか等の距離に関する状況を記録したものである。例えば、「接近」は、緊急車両と自己の車両が近づいていることを示し、「維持」は距離に大きな変化はないことを示し、「離脱」は緊急車両と自己の車両が遠ざかっていることを示し、「初」は緊急車両の存在は検知したがその距離の変化は不明であることを示す。
【0032】
図1に戻って説明する。音声入出力装置4は、音声入力装置としてマイクロフォン41と、音声出力装置としてスピーカ42と、を備える。マイクロフォン41は、使用者やその他の搭乗者が発した声などの車載用ナビゲーション装置100の外部の音声を取得する。
【0033】
スピーカ42は、演算処理部1で生成された使用者へのメッセージを音声信号として出力する。マイクロフォン41とスピーカ42は、車両の所定の部位に、別個に配されている。ただし、一体の筐体に収納されていても良い。車載用ナビゲーション装置100は、マイクロフォン41及びスピーカ42を、それぞれ複数備えることができる。
【0034】
入力装置5は、使用者からの指示を使用者による操作を介して受け付ける装置である。入力装置5は、タッチパネル51と、ダイヤルスイッチ52と、その他のハードスイッチ(図示しない)であるスクロールキー、縮尺変更キーなどで構成される。
【0035】
タッチパネル51は、ディスプレイ部2の表示面側に搭載され、表示画面を透視可能である。タッチパネル51は、ディスプレイ部2に表示された画像のXY座標と対応したタッチ位置を特定し、タッチ位置を座標に変換して出力する。タッチパネル51は、感圧式または静電式の入力検出素子などにより構成される。
【0036】
ダイヤルスイッチ52は、時計回り及び反時計回りに回転可能に構成され、所定の角度の回転ごとにパルス信号を発生し、演算処理部1に出力する。演算処理部1では、パルス信号の数から、回転角度を求める。
【0037】
ROM装置6は、CD-ROMやDVD-ROM等のROM(Read Only Memory)や、IC(Integrated Circuit)カードといった、少なくとも読み取りが可能な記憶媒体で構成されている。この記憶媒体には、例えば、動画データや、音声データなどが記憶されている。
【0038】
車速センサ7,ジャイロセンサ8およびGPS受信装置9は、車載用ナビゲーション装置100で現在地(自車位置)を検出するために使用されるものである。車速センサ7は、所定の期間内の走行距離を算出し、走行距離を所定の期間で割ることにより車両の走行速度を算出するものである。ジャイロセンサ8は、光ファイバジャイロや振動ジャイロ等で構成され、移動体が回転した角度を検出するものである。
【0039】
GPS受信装置9は、GPS衛星からの信号を受信し移動体とGPS衛星間の距離と距離の変化率を3個以上の衛星に対して測定することで移動体の現在位置、進行速度および進行方位を測定するものである。
【0040】
FM多重放送受信装置10は、FM多重放送信号としてVICS(Vehicle Information Communication System:登録商標)情報などのFM多重放送局から送られてくる概略現況交通情報、規制情報、SA/PA(サービスエリア/パーキングエリア)情報、駐車場情報、天気情報などを受信する。
【0041】
図4は、演算処理部1の機能ブロック図である。
【0042】
図示するように、演算処理部1は、主制御部101と、緊急車両信号検出部102と、緊急車両仮位置記録部103と、報知部104と、表示処理部105と、を有する。
【0043】
主制御部101は、様々な処理を行う中心的な機能部であり、処理内容に応じて、他の処理部を制御する。また、主制御部101は、車載用ナビゲーション装置100の本来の基本動作であるナビゲーション処理(例えば、交通情報の表示、現在位置の表示、経路探索、経路誘導等)を実施する。さらに、各処理部からの要求に応じて、現在時刻を出力する。
【0044】
緊急車両信号検出部102は、アダプティブアレーアンテナ装置11との通信を行い、アダプティブアレーアンテナ装置11から出力された情報を受信して受信した電波の周波数と、到来角度と、受信強度と、を取得する。
【0045】
緊急車両仮位置記録部103は、緊急車両信号検出部102が取得した情報を基に緊急車両検出記録テーブル300に情報を記憶する。
【0046】
具体的には、緊急車両仮位置記録部103は、緊急車両信号検出部102が情報を取得した時刻を日時301に記憶し、受信した電波の周波数を基に緊急車両の種類を特定して種類302として記憶する。
【0047】
そして、緊急車両仮位置記録部103は、緊急車両信号検出部102から取得した到来角度と、受信強度と、をそれぞれ到来角度303と、受信強度304と、に記憶する。
【0048】
緊急車両仮位置記録部103は、緊急車両信号検出部102から取得した受信強度の値と、直前に受信した緊急車両の電波の受信強度304と、を比較する。
【0049】
そして、比較した結果、受信強度が所定値(例えば1dB)以上強まっている場合には、緊急車両仮位置記録部103は、状況305に「接近」を記憶する。緊急車両仮位置記録部103は、受信強度が所定値(例えば1dB)以上弱まった場合には、状況305に「離脱」を記憶する。また、緊急車両仮位置記録部103は、受信強度が所定値(例えば1dB)内の変化であった場合には、「維持」を記憶し、当該種類の電波を受信したのが初めてあるいは最後に受信して以来所定時間(例えば3分)以上経過している場合には、「初」を記録する。
【0050】
報知部104は、緊急車両検出記録テーブル300に記憶された状況305を取得して、「接近」であれば、注意を報知する。また、報知部104は、緊急車両検出記録テーブル300に記憶された状況305を取得して、「離脱」であれば、注意を解除してよい旨を報知する。
【0051】
表示処理部105は、表示させる画面情報を受け取り、ディスプレイ部2等に対して描画するための信号に変換してディスプレイ部2等に対して描画する指示を行う。
【0052】
例えば、表示処理部105は、ディスプレイ部2への表示が要求される領域にある地図のデータを記憶装置3から受け取り、指定された縮尺、描画方式で、道路、その他の地図構成物や、現在地、目的地、推奨経路のための矢印といったマークを描画するように地図描画コマンドを生成する。そして、生成したコマンドを、ディスプレイ部2に送信する。
【0053】
図5は、演算処理部1のハードウェア構成例を示す図である。
【0054】
図示するように、演算処理部1は、各デバイス間をバス32で接続した構成である。演算処理部1は、数値演算及び各デバイスを制御するといった様々な処理を実行するCPU(Central Processing Unit)21と、記憶装置3から読み出した地図データ、演算データなどを格納するRAM(Random Access Memory)22と、プログラムやデータを格納するROM(Read Only Memory)23と、メモリ間およびメモリと各デバイスとの間のデータ転送を実行するDMA(Direct Memory Access)24と、グラフィックス描画を実行し且つ表示制御を行う描画コントローラ25と、グラフィックスイメージデータを蓄えるVRAM(Video Random Access Memory)26と、イメージデータをRGB信号に変換するカラーパレット27と、アナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器28と、シリアル信号をバスに同期したパラレル信号に変換するSCI(Serial Communication Interface)29と、パラレル信号をバスに同期させてバス上にのせるPIO(Parallel Input/Output)30と、パルス信号を積分するカウンタ31と、を有する。
【0055】
なお、主制御部101と、緊急車両信号検出部102と、緊急車両仮位置記録部103と、報知部104と、表示処理部105と、は、CPU21がRAM22やROM23にロードしたプログラムを実行することにより実現される。
【0056】
図6は、アダプティブアレーアンテナ装置11の動作原理を説明する図である。
【0057】
アダプティブアレーアンテナ装置11は、所定の間隔で配置された複数のアンテナを有する。図6においては、アンテナ401と、アンテナ402と、アンテナ403と、の間隔はd(波長λまたはλ/2)である。
【0058】
ここで、電波410が正面方向から角度θで入射した場合には、アンテナ401と、アンテナ402と、アンテナ403では、それぞれ電波410の伝搬路にd×sinθの距離の差が発生するため、電波410を受信する時間に差が生じる。
【0059】
この時間差により、アンテナ401と、アンテナ402と、アンテナ403と、が受信する電波の位相に差が生じるため、移相器等によりこの差を埋めることで、出力を合成することができ、良好な出力を得られる。
【0060】
この原理を利用して、アダプティブアレーアンテナ装置11は、アンテナ401と、アンテナ402と、アンテナ403と、において電波410を受信する時間差から伝搬路の距離(d×sinθ)の差を逆算し、電波が入射した角度θを求めることが可能である。
【0061】
すなわち、電波410の到来方向を特定することが可能となる。
【0062】
次に、上記構成の車載用ナビゲーション装置100の動作について説明する。
【0063】
図7は、緊急車両検出処理の流れを示すフロー図である。
【0064】
主制御部101は、車載用ナビゲーション装置100が起動すると、本フローを開始する。
【0065】
主制御部101は、緊急車両信号検出部102が緊急車両からの電波を受信するまで処処理を待機する(ステップS100)。
【0066】
具体的には、主制御部101は、緊急車両信号検出部102に対して、緊急車両に関する電波を受信したか否かを問い合わせ、受信した場合には緊急車両仮位置記録部103に処理を開始するよう指示する。受信していない場合には主制御部101は所定時間待機した後、緊急車両信号検出部102に対して、緊急車両に関する電波を受信したか否かを問い合わせ、待機する処理を繰り返す。
【0067】
次に、緊急車両仮位置記録部103は、緊急車両信号検出部102から、緊急車両から受信した電波の情報を取得する(ステップS101)。
【0068】
具体的には、緊急車両仮位置記録部103は、緊急車両信号検出部102に対して緊急車両の電波に関する情報を送信するよう依頼する。
【0069】
緊急車両信号検出部102は、アダプティブアレーアンテナ装置11との通信を行い、アダプティブアレーアンテナ装置11から出力された情報を受信して受信した電波の周波数と、到来角度と、受信強度と、を取得し緊急車両仮位置記録部103に出力する。
【0070】
そして、緊急車両仮位置記録部103は、緊急車両信号検出部102から出力された電波の周波数と、到来角度と、受信強度と、を取得する。
【0071】
次に、緊急車両仮位置記録部103は、緊急車両信号検出部102から取得した情報を緊急車両検出記録テーブル300に記憶する(ステップS102)。
【0072】
具体的には、緊急車両仮位置記録部103は、緊急車両信号検出部102が情報を取得した時刻を日時301に記憶し、電波の周波数を基に緊急車両の種類を特定して種類302として記憶する。
【0073】
そして、緊急車両仮位置記録部103は、緊急車両信号検出部102から取得した到来角度と、受信強度と、をそれぞれ到来角度303と、受信強度304と、に記憶する。
【0074】
次に、緊急車両仮位置記録部103は、緊急車両信号検出部102から取得した受信強度の値と、直前に受信した緊急車両の電波の受信強度304の値とから、緊急車両の位置についての状態を算出する(ステップS103)。
【0075】
具体的には、緊急車両仮位置記録部103は、緊急車両信号検出部102から取得した緊急車両の電波の受信強度の値と、直前に受信した緊急車両の電波の受信強度304とを比較する。
【0076】
そして、比較した結果、直前に受信した緊急車両の電波の受信強度よりも所定値(例えば1dB)以上強まっている場合には、緊急車両仮位置記録部103は、状況305に「接近」を記憶する。緊急車両仮位置記録部103は、直前に受信した緊急車両の電波の受信強度よりも所定値(例えば1dB)以上弱まった場合には、状況305に「離脱」を記憶する。また、緊急車両仮位置記録部103は、受信強度が所定値(例えば1dB)内の変化であった場合には、「維持」を記憶し、当該種類の電波を受信したのが初めてである場合、あるいは最後に受信して以来所定時間(例えば3分)以上経過している場合には、「初」を記録する。
【0077】
次に、緊急車両仮位置記録部103は、緊急車両が自車に接近しているか否かを判定する(ステップS104)。
【0078】
具体的には、緊急車両仮位置記録部103は、緊急車両検出記録テーブル300の日時301が最新のレコードを特定し、特定したレコードの状況305を取得する。
【0079】
緊急車両仮位置記録部103は、取得したレコードの状況305が「接近」であるか否かを判定する。
【0080】
緊急車両が自車に接近している場合(ステップS104で「Yes」)、報知部104は注意を報知し、ステップS100に処理を戻す(ステップS105)。
【0081】
具体的には、報知部104は、図8に示すような報知画面700を構成して表示処理部105に表示させる。
【0082】
ここで、報知画面700について図8を用いて説明する。
【0083】
図8は、報知画面700を示す図である。
【0084】
報知画面700は、警告表示領域701と、警告内容表示領域702と、を有する。
【0085】
警告表示領域701は、注意を喚起するための警告表示を表示させる領域である。例えば、「注意 緊急車両」や「NOTICE」などの注意表示であることを端的に示す文字、または「!」などの記号であってもよい。
【0086】
注意内容表示領域702は、注意する内容と、対処法を表示させる領域である。例えば、「救急車が後方から近づいています。道を譲りましょう。」などのメッセージ、「消防車が前方から近づいています。交差点への進入を控えましょう。」または「緊急車両が右前方から近づいています。交差点への進入を控えましょう。」というようなメッセージであってもよい。
【0087】
または、報知部104は、図9に示すとおり、図による報知画面800を構成して表示処理部105に表示させても良い。
【0088】
具体的には、図9に示すように、図による報知画面800は、警告表示領域801と、警告内容表示領域802と、自車マーク803と、緊急車両マーク804と、緊急車両位置方向表示805と、を有する。
【0089】
警告表示領域801は、注意を喚起するための警告表示を表示させる領域であり、図8に示す報知画面700の警告表示領域701と同様の表示領域である。
【0090】
注意内容表示領域802は、注意する内容と、対処法を表示させる領域である。図8に示す報知画面700の注意内容表示領域702と同様の表示領域である。
【0091】
自車マーク803は、自車の位置を示すマークである。
【0092】
緊急車両マーク804は、緊急車両が存在すると予測される方向に表示する緊急車両のマークである。
【0093】
緊急車両位置方向表示805は、緊急車両が存在すると予想される方向を矢印等により指し示すマークである。緊急車両位置方向表示805は、自車位置表示803の周囲を360度に区切った方向の表示である。また、緊急車両位置方向表示805は、所定の角度幅(例えば60度)の方向ごとに前方、右前方、右後方、後方、左後方、左前方、等に区分した方向の表示であっても良い。
【0094】
図7の説明に戻る。
【0095】
ステップS105において、報知部104は、ステップS104において緊急車両仮位置記録部103が特定した緊急車両検出記録テーブル300のレコードの、種類302が「消防」であれば、報知画面700の注意内容表示領域702に消防車が接近している旨のメッセージを表示し、「救急」であれば救急車が接近している旨のメッセージを表示する。
【0096】
また、報知部104は、ステップS104において緊急車両仮位置記録部103が特定した緊急車両検出記録テーブル300のレコードの、到来角度303が「0度〜30度」または「330度〜359度」であれば、報知画面700の注意内容表示領域702に緊急車両は前方から接近している旨のメッセージを表示する。
【0097】
他に、報知部104は、「31度〜90度」であれば緊急車両は右前方から接近している旨のメッセージを表示し、「91度〜149度」であれば緊急車両は右後方から接近している旨のメッセージを表示し、「150度〜210度」であれば緊急車両は後方から接近している旨のメッセージを表示する。
【0098】
そして、報知部104は、「211度〜269度」であれば緊急車両は左後方から接近している旨のメッセージを表示し、「270度〜329度」であれば緊急車両は左前方から接近している旨のメッセージを表示する。
【0099】
または、画像報知画面800を表示する場合、ステップS105において、報知部104は、ステップS104において緊急車両仮位置記録部103が特定した緊急車両検出記録テーブル300のレコードの、種類302が「消防」であれば、画像付き報知画面800の注意内容表示領域802に消防車が接近している旨のメッセージを表示し、「救急」であれば救急車が接近している旨のメッセージを表示する。
【0100】
また、報知部104は、ステップS104において緊急車両仮位置記録部103が特定した緊急車両検出記録テーブル300のレコードの、到来角度303が「0度〜30度」または「330度〜359度」であれば、図による報知画面800の注意内容表示領域802に緊急車両は前方から接近している旨のメッセージを表示する。
【0101】
他に、報知部104は、「31度〜90度」であれば緊急車両は右前方から接近している旨のメッセージを表示し、「91度〜149度」であれば緊急車両は右後方から接近している旨のメッセージを表示し、「150度〜210度」であれば緊急車両は後方から接近している旨のメッセージを表示する。
【0102】
そして、報知部104は、「211度〜269度」であれば緊急車両は左後方から接近している旨のメッセージを表示し、「270度〜329度」であれば緊急車両は左前方から接近している旨のメッセージを表示する。
【0103】
そして、報知部104は、ステップS104において緊急車両仮位置記録部103が特定した緊急車両検出記録テーブル300のレコードの、到来角度303に応じて、自車マーク803と、緊急車両マーク804と、緊急車両位置方向表示805と、を表示させる。
【0104】
具体的には、報知部104は、緊急車両位置方向表示805の矢印の向きが、自車マーク803を始点とし、画面上方向と到来角度303に相当するよう緊急車両位置方向表示805を表示させる。そして、報知部104は、緊急車両位置方向表示805の矢印の先に緊急車両マーク804を表示させる。
【0105】
緊急車両が自車に接近していない場合(ステップS104で「No」)、報知部104は緊急車両が自車から遠ざかっているか否かを判定する(ステップS106)。
【0106】
具体的には、緊急車両仮位置記録部103は、緊急車両検出記録テーブル300の日時301が最新のレコードを特定し、特定したレコードの状況305を取得する。
【0107】
緊急車両仮位置記録部103は、取得したレコードの状況305が「離脱」であるか否かを判定する。
【0108】
緊急車両が自車から遠ざかっている場合(ステップS106で「Yes」)、報知部104は注意の解除を報知し、ステップS100に処理を戻す(ステップS107)。
【0109】
具体的には、報知部104は、緊急車両が遠ざかった旨の報知画面700を構成して表示処理部105に表示させる。
【0110】
緊急車両が自車から遠ざかっているのではない場合(ステップS106で「No」)、報知部104はステップS100に処理を戻す。
【0111】
以上が、緊急車両検出処理の処理内容である。
【0112】
以上、本発明の一実施形態について説明した。
【0113】
本発明の上記一実施形態によると、雑音の多い車内や車両の外部の音を遮音する車内であっても、緊急車両の到来と到来方向を知ることが可能となるため、運転者は対応を取りやすくなり、緊急車両の安全な通行を確保できる。
【0114】
本発明は、上記実施形態に制限されない。上記実施形態は、本発明の技術的思想の範囲内で様々な変形が可能である。
【0115】
例えば、上記実施形態では、報知部104は、報知画面700を表示するが、さらに、音声によって報知することとしてもよい。
【0116】
具体的には、音声入出力装置4を介して、報知内容を音声メッセージとして再生するように指示しても良い。
【0117】
このように、音声による報知を行うことで、運転者に対して聴覚を介して情報を報知することが可能となるため、運転者の注意を喚起する効果が高まる。
【0118】
また、上記実施形態では、アダプティブアレーアンテナ装置11は車載用ナビゲーション装置100とは別の装置としているが、これに限らず、車載用ナビゲーション装置100がアダプティブアレーアンテナ装置11を備えるものであっても良い。
【0119】
また、上記実施形態では、ステップS105において、報知用の画面を作成して表示しているが、これに限らず、通常のナビゲーション表示画面である地図表示画面上に緊急車両が接近している旨の表示を行うようにしてもよい。
【0120】
具体的には、報知部104は、自車が存在する位置を示すカーマークの位置を基準として、図9に示した図による報知画面800の緊急車両マーク804に相当する緊急車両を表示するマークと、緊急車両位置方向表示805に相当する緊急車両位置の方向表示と、を、ナビゲーション表示画面に重畳させて表示する。
【0121】
例えば、報知部104は、カーマークを始点として、緊急車両位置の方向表示の矢印の向きが画面上方の方向に対して到来角度303に相当するよう緊急車両位置の方向表示を表示させる。そして、報知部104は、緊急車両位置の方向表示の矢印の先に緊急車両を表示するマークを表示させる。
【0122】
なお、これらの変形は、上記実施例と組み合わせてもよい。
【0123】
以上が、変形例である。
【0124】
なお、上記の実施形態では、本発明を車載用ナビゲーション装置に適用した例について説明したが、本発明は車載用の他の装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0125】
1・・・演算処理部、2・・・ディスプレイ部、3・・・記憶装置、4・・・音声出入力装置、5・・・入力装置、6・・・ROM装置、7・・・車速センサ、8・・・ジャイロ、9・・・GPS受信機、10・・・FM多重放送受信装置、11・・・アダプティブアレーアンテナ装置、21・・・CPU、22・・・RAM、23・・・ROM、24・・・DMA、25・・・描画コントローラ、26・・・VRAM、27・・・カラーパレット、28・・・A/D変換器、29・・・SCI、30・・・PIO、31・・・カウンタ、41・・・マイクロフォン、42・・・スピーカ、51・・・タッチパネル、52・・・ダイヤルスイッチ、100・・・車載用ナビゲーション装置、101・・・主制御部、102・・・緊急車両信号検出部、103・・・緊急車両仮位置記録部、104・・・報知部、105・・・表示処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載用緊急車両報知装置であって、
所定の緊急車両が発する電波の到来方向と受信強度を特定する電波受信手段と接続され、
前記電波受信手段から前記電波の到来方向と受信強度とを受け付けて、前記緊急車両の位置について、自車からの方向を算出し記録する緊急車両位置算出手段と、
前記受信強度の変化を基に前記緊急車両の接近を検知し報知する報知手段と、
を備えることを特徴とする車載用緊急車両報知装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車載用緊急車両報知装置であって、
前記電波受信手段は、複数のアンテナを備え、アンテナごとに受信した電波の位相の相違とアンテナの配置位置とから電波の到来方向を特定するアンテナ装置である、
ことを特徴とする車載用緊急車両報知装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車載用緊急車両報知装置であって、
前記電波受信手段は、アダプティブアレーアンテナ装置である、
ことを特徴とする車載用緊急車両報知装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の車載用緊急車両報知装置であって、
前記緊急車両位置算出手段は、前記受信強度が強いほど自車から前記緊急車両までの距離を短く算出する、
ことを特徴とする車載用緊急車両報知装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の車載用緊急車両報知装置であって、
前記報知手段は、前記緊急車両と前記との距離が短くなると、前記緊急車両の接近を報知する、
ことを特徴とする車載用緊急車両報知装置。
【請求項6】
車載用緊急車両報知装置の緊急車両報知方法であって、
前記車載用緊急車両報知装置は、
所定の緊急車両が発する電波の到来方向と受信強度を特定する電波受信ステップと、
前記電波受信ステップにて前記電波の到来方向と受信強度とを特定し、前記緊急車両の位置について、自車からの方向と距離とを算出し記録する緊急車両位置算出ステップと、
前記緊急車両の位置を基に前記緊急車両の接近を検知し報知する報知ステップと、
を実行することを特徴とする緊急車両報知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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