説明

緑内障を処置するためのフリッツルド関連蛋白質―1のRNAI媒介性阻害

フリッツルド(Frizzled)関連蛋白質−1 mRNA発現の阻害のための、特に、緑内障を有する、または緑内障を発症する危険性のある患者を治療するためのRNA干渉が提供される。一態様において、本発明の方法は、FRP−1 mRNAの発現をサイレントとする干渉性RNAを投与し、かくして、Wntシグナリング経路に干渉し、緑内障およびプレ−緑内障細胞活性に関連する事象のカスケードを予防することによって、緑内障を有する、または緑内障を発症する危険性がある被験体を治療することを含む。フリッツルド関連蛋白質−1 mRNAの発現はそれにより減衰される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、フリッツルド関連蛋白質―1(FRP−1)の発現の阻害による緑内障の治療のための干渉性RNA組成物の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
緑内障は、ある種の臨床的特長を共有する視神経障害の不均一な群である。緑内障における視覚の喪失は、視野における特徴的変化によって臨床的に診断される神経網膜中の網膜神経節細胞の選択的死滅、神経繊維層欠陥、および視神経頭部(ONH)の進行性杯形成によるものである。緑内障の発生についての主な危険因子の1つは眼高血圧(上昇した眼内圧力、IOP)の存在である。適切な眼内圧は眼の形状を維持するのに、および圧力勾配を供して、水性液の無血管角膜およびレンズへの流動を可能とするのに必要である。IOPレベルは、IOP降下性投薬から利益を受ける患者によって証明されるように、通常張力緑内障(NTG)の病因にも関連付けることができる。一旦、中枢角膜の厚みについての調整がNTG患者におけるIOPの読みに対してなされると、これらの多くの患者は眼高血圧であることが判明し得る。
【0003】
緑内障に伴う上昇したIOPは、小柱網(TM)、前眼房の虹彩−角膜角度に位置する小さな特殊化された組織における上昇した水性液流出抵抗によるものである。TMに対する緑内障の変化はTM細胞における喪失、および蛋白質性プラーク−様物質を含めた細胞外デブリスの沈積および蓄積を含む。加えて、緑内障のONHにおいて起こる変化もある。緑内障の眼においては、ONH神経膠細胞における形態学的および移動性変化がある。上昇したIOPおよび/または一過性虚血性傷害に応答して、ONH細胞外マトリックスの組成の変化、および神経膠細胞および網膜神経節細胞軸策形態の変化がある。
【0004】
原発性緑内障は、解剖学的または生理学的ベースを有する眼内流体の流動における乱れに由来する。二次的緑内障は、眼に対する負傷または外傷あるいは既に存在する病気の結果として起こる。慢性または単純緑内障としても知られる原発性開放角緑内障(POAG)は、全ての原発性緑内障の90%を表す。POAGは小柱網の変性によって特徴付けられ、その結果、眼からの流体の排出に対して異常に高い抵抗が生じる。そのような抵抗の結果は、増大した抵抗にわたって眼によって通常生じる流体を駆動するのに必要なIOPの増大である。
【0005】
現在の抗−緑内障療法は、水性液形成の抑制剤、またはブドウ膜強膜流出を促進する剤の使用、排出を改良するための濾過処置であるレーザー線維柱帯形成術またはトラベクレクトミンによるIOPの降下を含む。医薬的な抗−緑内障アプローチは、種々の望ましくない副作用を呈した。例えば、ピロカルピンのような縮瞳薬は、視覚の汚れおよび他の負の視覚的副作用を引き起こしかねない。全身投与される炭酸脱水酵素阻害剤(CAI)もまた嘔吐、消化不良、疲労および代謝アシドーシスを引き起こしかねない。さらに、ある種のベータ−ブロッカーは、益々、肺組織におけるベータ−2受容体に対するそれらの効果に帰される深刻な肺副作用に関連付けられるようになった。シンパトミメティックスは頻脈、不整脈および高血圧を引き起こす。そのような負の副作用は減少した患者のコンプライアンスまたは治療の停止に至りかねない。加えて、現在のIOP降下療法の効果は比較的短く、毎日の間における反復した投与を必要とし、ある場合には、効率は経時的に減少する。
【0006】
緑内障の重要性、および治療の従来の方法の不適切性に鑑み、改良された治療方法を有するのは望ましいであろう。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
本発明は、緑内障およびプレ−緑内障関連疾患のかなり優れたかつ効果的な治療、予防または介入を提供することによって先行技術のこれらのおよび他の欠陥を克服する。一態様において、本発明の方法は、FRP−1 mRNAの発現をサイレントとする干渉性RNAを投与し、かくして、Wntシグナリング経路に干渉し、緑内障およびプレ−緑内障細胞活性に関連する事象のカスケードを予防することによって、緑内障を有する、または緑内障を発症する危険性がある被験体を治療することを含む。フリッツルド関連蛋白質−1 mRNAの発現はそれにより減衰される。
【0008】
本明細書中で用いられる用語「緑内障」は、高血圧および眼の緑内障疾患のような眼のプレ−緑内障疾患を含む、緑内障および緑内障−関連疾患に直接的にまたは間接的に至るFRP−1−mRNAの発現に由来する細胞変化を含む。本明細書中において提供される干渉性RNAは、非特異的剤による毒性副作用を介ししつつそのようなサイレンシングを提供する。
【0009】
本発明は、FRP−1 mRNAを標的とし、それにより、FRP−1 mRNA発現に干渉する干渉性RNAに向けられる。本発明の干渉性RNAは緑内障を持つ、または緑内障を発症する危険性がある患者を治療するのに有用である。
【0010】
本発明の実施形態は、被験体のフリッツルド関連蛋白質−1 mRNAの発現を減衰させる方法であり、該方法は、被験体に、19ないし49ヌクレオチドの長さを有する有効量の干渉性RNAおよび医薬上許容される担体を含む組成物を投与することを含む。
【0011】
本発明のもう1つの実施形態は、それを必要とする被験体において緑内障を治療する方法である。該方法は、被験体の眼に、19ないし49ヌクレオチドの長さを有する有効量の干渉性RNAおよび医薬上許容される担体を含む組成物を投与することを含む。緑内障はそれにより治療される。被験体はヒトであり、該ヒトは、本発明の一実施形態においては緑内障を有する。もう1つの実施形態において、被験体はヒトであり、該ヒトは緑内障を発症する危険性がある。
【0012】
前記した実施形態では、干渉性RNAは、配列番号2、配列番号8ないし配列番号190および配列番号192のいずれか1つに対応するmRNAの3’末端の終わりから2番目の13ヌクレオチドに対して少なくとも90%の配列相補性、または少なくとも90%の配列同一性を有する少なくとも13の連続するヌクレオチドの領域を含む。
【0013】
前記方法のさらなる実施形態において、組成物は、さらに、19ないし49ヌクレオチドの長さを有し、かつ配列番号2、配列番号8ないし配列番号190および配列番号192のいずれか1つに対応する第二のmRNAの3’末端の終わりから2番目の13ヌクレオチドに対して少なくとも90%の配列相補性、または少なくとも90%の配列同一性を有する少なくとも13の連続するヌクレオチドの領域を含む第二の干渉性RNAを含む。
【0014】
本発明のなおもう1つの実施形態において、被験体のフリッツルド関連蛋白質−1 mRNAの発現を減衰させる方法は、被験体に、19ないし49ヌクレオチドの長さを有する有効量の干渉性RNA、および医薬上許容される担体を含む組成物を投与することを含み、該干渉性RNAはセンスヌクレオチド鎖、アンチセンスヌクレオチド鎖、および少なくとも19ヌクレオチドの少なくとも殆ど完全な連続相補性の領域を含み、ここに、該アンチセンス鎖が生理学的条件下で配列番号1または配列番号191に対応するmRNAの部分にハイブリダイズし、各々、配列番号1または配列番号191に対応するmRNAのハイブリダイズする部分に対して少なくとも19ヌクレオチドの少なくとも殆ど完全な連続相補性の領域を有する。フリッツルド関連蛋白質−1 mRNAの発現はそれにより減衰される。
【0015】
それを必要とする被験体において緑内障を治療する方法は本発明の実施形態であり、該方法は、被験体の眼に、19ないし49ヌクレオチドの長さを有する有効量の干渉性RNA、および医薬上許容される担体を含む組成物を投与することを含み、該干渉性RNAはセンスヌクレオチド鎖、アンチセンスヌクレオチド鎖、および少なくとも19ヌクレオチドの少なくとも殆ど完全な連続相補性の領域を含み;ここに、該アンチセンス鎖は、生理学的条件下で、配列番号1または配列番号191に対応するmRNAの部分にハイブリダイズし、各々、配列番号1または配列番号191に対応するmRNAのハイブリダイズする部分に対して少なくとも19ヌクレオチドの少なくとも殆ど完全な連続相補性の領域を有する。緑内障はそれにより治療される。
【0016】
前記した方法では、干渉性RNAのアンチセンス鎖は、ヌクレオチド
【0017】
【化4】

を含む配列番号1に対応するmRNAを標的とするように設計される。さらなる実施形態において、干渉性RNAのアンチセンス鎖は、ヌクレオチド3352を含む配列番号191に対応するmRNAを標的とするように設計される。
【0018】
19ないし49ヌクレオチドの長さを有する第二の干渉性RNAもまた被験体に投与することができる;第二の干渉性RNAはセンスヌクレオチド鎖、アンチセンスヌクレオチド鎖、および少なくとも19ヌクレオチドの少なくとも殆ど完全な相補性の領域を含み、ここに、該第二の干渉性RNAのアンチセンス鎖は、生理条件下で、配列番号1または配列番号191に対応するmRNAの第二の部分にハイブリダイズし、該アンチセンス鎖は、各々、配列番号1または配列番号191に対応するmRNAの第二のハイブリダイズする部分に対して少なくとも19ヌクレオチドの少なくとも殆ど完全な連続相補性の領域を有する。
【0019】
被験体のフリッツルド関連蛋白質−1 mRNAの発現を減衰させる方法は、被験体に、19ないし49ヌクレオチドの長さを有する有効量の一本鎖干渉性RNA、および医薬上許容される担体を含む組成物を投与することを含み、ここに、該一本鎖干渉性RNAは、生理学的条件下で、前記で確認されたヌクレオチドを含む配列番号1または配列番号191に対応するmRNAの部分にハイブリダイズすることが、本発明のさらなる実施形態である。
【0020】
本発明は、さらなる実施形態として、19ないし49ヌクレオチドの長さを有し、かつ配列番号2、配列番号8ないし配列番号190および配列番号192のいずれか1つに対応するヌクレオチド配列、またはその相補体を含む干渉性RNA、および医薬上許容される担体を含む組成物を含む。
【0021】
本明細書中に記載されたFRP−1 mRNAの発現を減衰させるための医薬の調製における本明細書中に記載された実施形態のいずれかの使用もまた本発明の実施形態である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(発明の詳細な説明)
RNAで干渉(RNAi)は、二本鎖RNA(dsRNA)を用いて遺伝子発現をサイレントとするプロセスである。議論に拘束されるつもりはないが、RNAiはRNaseIII−様酵素、ダイサーによるより長いdsRNAの小さな干渉性RNA(siRNA)の切断で開始される。SiRNAは、長さが通常は約19ないし28ヌクレオチド、または20ないし25ヌクレオチド、または21ないし22ヌクレオチドであり、しばしば、2−ヌクレオチド3’突出、および5’リン酸および3’ヒドロキシル末端を含有する。siRNAの1つの鎖は、RNA−誘導サイレンシング複合体(RISC)として知られたリボヌクレオ蛋白質複合体に取り込まれる。RISCはこのsiRNA鎖を用いて、取り込まれたsiRNA鎖に対して少なくとも部分的に相補的なmRNA分子を同定し、次いで、これらの標的mRNAを切断し、またはそれらの翻訳を阻害する。従って、RISCに一体化されるsiRNA鎖はガイド鎖またはアンチセンス鎖として知られている。パッセンジャー鎖またはセンス鎖として知られた他のsiRNA鎖がsiRNAから排除され、標的mRNAに対して少なくとも部分的に相同である。当業者であれば、原理的には、siRNAのいずれかの鎖はRISCに取り込まれ、ガイド鎖として機能することができる。しかしながら、siRNA設計(例えば、アンチセンス鎖の5’末端における減少したsiRNA二重鎖安定性)は、アンチセンス鎖のRISCへの取込に好都合となり得る。
【0023】
ガイド鎖に対して少なくとも部分的に相補性である配列を有するmRNAのRISC−媒介切断は、そのmRNAの、およびこのmRNAによってコードされる対応する蛋白質の定常レベルの減少に導く。別法として、RISCは、標的mRNAの切断無くして、翻訳抑制を介して対応する蛋白質の発現を減少させることができる。他のRNA分子およびRNA−様分子もまたRISCと相互作用し、遺伝子発現をサイレントとすることができる。RISCと相互作用できる他のRNA分子の例は短いヘアピンRNA(shRNA)、一本鎖siRNA、ミクロRNA(miRNA)、ダイサー−基質27マー二重鎖を含む。本明細書中で用いられる用語「siRNA」とは、他に断りのない限り二本鎖干渉性RNAをいう。RISCと相互作用することができるRNA−様分子の例は、1以上の化学的に修飾されたヌクレオチド、1以上のデオキシリボヌクレオチド、および/または1以上の非−ホスホジエステル結合を含む。本議論の目的では、RISCと相互作用でき、遺伝子発現のRISC−媒介変化に参画することができる全てのRNAまたはRNA−様分子は、「干渉性RNA」、siRNA、shRNA、miRNAをいい、およびダイサー−基質27マー二重鎖は、従って、「干渉性RNA」のサブセットである。
【0024】
本発明の実施形態の干渉性RNAは標的mRNAの切断に対して触媒方式で作用するように見え、すなわち、干渉性RNAは化学量論的量の標的mRNAの阻害を行うことができる。アンチセンス療法と比較して、有意に低い干渉性のRNAは、そのような切断条件下で治療効果を供するのに必要である。
【0025】
本発明は、フリッツルド関連蛋白質−1(FRP−1)mRNAの発現を阻害し、それにより、Wndシグナリング経路に干渉し、緑内障およびプレ−緑内障細胞活性に関連する事象のカスケードを予防するための干渉性RNAの使用に関する。本発明によると、外因的に供された、または内因的に発現された干渉性RNAは、他の組織において、フリッツルド関連蛋白質−1(FRP−1)mRNAをサイレントとするにおいて特に効果的である。
【0026】
フリッツルド関連蛋白質(FRP)は、細胞外Wntに結合し、それが膜−結合フリッツルド蛋白質受容体と相互作用するのを妨げることによって、あるいはフリッツルド受容体(Bafico,et al.J.Biol.Chem.,274(23):16180−16187(1999))とで非機能的複合体を形成し、それにより、1つの細胞のもう1つの細胞への、ならびに細胞外マトリックスへの異なる接着に関連する事象のカスケードを妨げることによって、Wntシグナリング経路に拮抗する分泌蛋白質のファミリーである。
【0027】
本発明者らは、他の者と一緒になって、(ここに引用してその全体を一体化させる)Hellgerg,et al.,に対する米国公開特許出願第2004/0186159号、出願第10/488,496号によって記載されているように、フリッツルド関連蛋白質(FRP)は多数の緑内障小柱網細胞系において異なって発現されると判断した。培養に維持された灌流されたヒトの前眼セグメントを介するFRP−1の灌流の結果、流速の減少、および毛様体および小柱網(TM)におけるβ−カテニン蛋白質レベルの対応する減少をもたらした。培養された前方セグメントにおける減少した流速は、無傷眼における流失に対する抵抗(眼内圧の増大)における増加をモデル化する。
【0028】
さらに、本発明者らは、他の者と一緒になって、FER−1の発現が緑内障小柱組織および細胞においてアップレギュレートされることを示した(ここに引用してその全体を援用する、2001年2月28日に出願された「Diagnostics and Therapeutics for Glaucoma」と題された米国公開特許第2002/0049177号、出願第09/796,008号)。
【0029】
これらの結果は、小柱眼網および毛様体において活動的なWntシグナリング経路があることを示し、この経路は、TMを介する流動を維持し、それにより、IOPを制御するための少なくとも部分的に応答可能であることを示唆する。
【0030】
本明細書中に引用された核酸配列は、他に断りのない限り、5’ないし3’方法で書かれる。本明細書中で用いる用語「核酸」とは、DNA(アデニン「A」、シトシン「C」、グアニン「G」、チニン「T」)、またはRNA(アデニン「A」、シトシン「C」、グアニン「G」、ウラシル「U」)に存在するプリンまたはピリミジン塩基を含むDNAまたはRNAいずれかをいう。本明細書中で提供される干渉性RNAは、特に3’末端において、「T」塩基を含むことができるが、「T」塩基はRNAにおいては天然に起こらない。「核酸」は用語「オリゴヌクレオチド」、「ポリヌクレオチド」を含み、一本鎖分子または二本鎖分子をいうことができる。二本鎖分子は、AおよびT塩基、CおよびG塩基の間の、およびAおよびU塩基の間のワトソン−クリック塩基対合によって形成される。二本鎖分子の鎖は相互に対して部分的、実質的または十分な相補性を有することができ、二重鎖ハイブリッドを形成し、その結合の強さは塩基の配列の相補性の性質および程度に依存する。
【0031】
mRNA配列は対応するDNA配列の配列から容易に推定される。例えば、配列番号1は、FRP−1についてのmRNAに対応するDNAのセンス鎖配列を提供する。該mRNA配列は「T」塩基が「U」塩基で置き換えられたDNAセンス鎖配列と同一である。
【0032】
従って、FRP−1のmRNA配列は配列番号1から知られ、FRP−1の同等体のmRNA配列は配列番号191から知られる。
【0033】
フリッツルド関連蛋白質(FRP−1) mRNA:GenBankデータは、配列番号1として「配列表」に掲げられているアクセション番号AF056087としてFRP−1に対するDNAを提供する。配列番号1は、(「U」塩基の代わりの「T」塩基を例外として)FRP−1をコードするmRNAに対応するDNAのセンス鎖配列を提供する。FRP−1についてのコーディング配列はヌクレオチド303ないし1244からのものである。
【0034】
先に引用したFRP−1 mRNA配列の同等物は代替スプライス形態、対立遺伝子形態イソ酵素、またはその同族体である。同族体は、配列番号1に対して相同であるもう1つの哺乳動物種からのフリッツルド関連蛋白質−1 mRNAである(すなわち、オルソログ)。配列番号1に関連するFRP−1核酸配列は、GenBankアクセション番号NM_003012(前記で引用)、BC036503、AF001900、BC004466、AF017987、およびBT019677を有するものを含む。
【0035】
GenBankデータベースは、配列番号191として「配列表」に掲げられ、配列番号1と同等であると考えられるアクセション番号NM_003012としてFRP−1に対してさらなるDNA配列を提供する。配列番号191は、(「U」塩基の代わりの「T」塩基を例外として)FRP−1をコードするmRNAに対応するDNAのセンス鎖配列を提供する。分泌されたFRP−1についてのコーディング配列はヌクレオチド303ないし1247からのものである。
【0036】
mRNAの発現の減衰:本明細書中で用いられるフレーズ「mRNAの発現の減衰」は、ある量の干渉性RNA(例えば、siRNA)を投与し、または発現させて、mRNA切断を介して、または翻訳の直接的阻害を介して標的mRNAの蛋白質への翻訳を低下させることを意味する。標的mRNAまたは対応する蛋白質の発現の低下が、通常は「ノック−ダウン」といわれ、非−標的化対照RNA(例えば、非−標的化対照siRNAの投与または発現に続いて存在するレベルに対して報告される。50%および100%を含めたおよびそれらの間の量の発現のノック−ダウンが本明細書中における実施形態によって考えられる。しかしながら、そのようなノック−ダウンレベルは本発明の目的で達成する必要ない。一実施形態において、単一の干渉性RNA標的化FRP−1 mRNAを投与する。他の実施形態において、2以上の干渉性RNA標的化FRP−1 mRNAを投与する。
【0037】
ノック−ダウンは、定量的ポリメラーゼ鎖反応(qPCR)増幅を用いてmRNAレベルを測定することによってあるいはウェスタンブロットまたは酵素−結合免疫吸着検定法(ELISA)により蛋白質レベルを測定することによって通常は評価される。蛋白質レベルの分析は、mRNA切断ならびに翻訳阻害双方の評価を供する。ノック−ダウンを測定するためのさらなる技術はRNA溶液ハイブリダイゼーション、ヌクレアーゼ保護、ノーザンハイブリダイゼーション、マイクロアレイでの遺伝子発現モニタリング、抗体結合、ラジオイムノアッセイ、および蛍光活性化細胞分析を含む。
【0038】
また、FRP−1の阻害は、ここに引用して先に一体化させた米国公開特許出願2004/0186159号に記載されたように、FRP−1レベル、β−カテニンレベルまたはヒトの目の灌流された前方セグメントにおける流出速度を調べることによってイン・ビトロで決定することもできる。簡単に述べれば、目前方セグメントに11mm Hgの一定圧力でダルベッコウの修飾イーグル培地(DMEM)を灌流する。各目の流出速度は、特定の期間においてその貯蔵庫の重量を測定することによって測定される。安定化期間の後、目にビークル対照、スクランブルドsiRNA配列対照、またはFRP−1を減衰させるための本明細書中に記載されたsiRNAいずれかを灌流し、目の流出速度を2ないし5日間モニターした。水性液流出速度は、特異的期間においてその貯蔵庫の重量を測定することによって測定される。対照値と比較した流出の増加は、siRNAがFRP−1を減衰するにおいて効果的であることを示す。
【0039】
また、FRP−1の阻害は、例えば、眼内圧力の改良、視野の喪失の改良、または視神経頭部変化の改良のような緑内障徴候の改良を観察することによってヒトまたは哺乳動物で推定される。
【0040】
干渉性RNA:本発明の一実施形態において、干渉性RNA(例えば、siRNA)はセンス鎖およびアンチセンス鎖を有し、センスおよびアンチセンス鎖は少なくとも19ヌクレオチドの少なくとも殆ど完全な連続相補性の領域を含む。本発明のさらなる実施形態において、干渉性RNAは、mRNA内の対応する標的配列の3’末端の、各々、最後から2番目の13、14、15、16、17、または18ヌクレオチドに対して配列相補性のパーセンテージを有し、またはそれに対して配列同一性のパーセンテージを有する少なくとも13、14、15、16、17、または18連続するヌクレオチドの領域を含む。
【0041】
干渉性RNAの各鎖の長さは19ないし49ヌクレオチドを含み、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、または49ヌクレオチドの長さを含むことができる。
【0042】
siRNAのアンチセンス鎖は、アンチセンス鎖がRISCに取り込まれ、かくして、RISCが、切断または翻訳抑制のためにアンチセンスsiRNA鎖に対して少なくとも部分的相補性を持つ標的mRNAを同定するのを可能とする、siRNAの活性ガイディング剤である。
【0043】
本発明の実施形態において、標的mRNA配列内の干渉性RNA標的配列(例えば、siRNAで標的配列)は利用可能な設計ツールを用いて選択される。次いで、標的mRNAを発現する細胞のトランスフェクション、続いての前記したようなノックダウンの評価によって、FRP−1標的配列に対応する干渉性RNAをテストする。
【0044】
siRNAについての標的配列を選択するための技術は、the Rockefeller Universityウェブサイトで利用可能な2004年5月6日に改正されたTuschl,T.et al.,”The siRNA User Guide”によって;AmdionウェブサイトにおけるTechnical Bulletin ♯506、siRNA Design Guidelines Ambion Inc.によって;および、例えば、the Invitrogen,Dharmacon,Integrated DNA Technologies,Genscript,またはProligoウェブサイトにおける他のウェブ−ベースの設計ツールによって供される。初期のサーチパラメータは35%および55%の間のG/C含有量、および19および27ヌクレオチドの間のsiRNA長さを含むことができる。標的配列はコーディング領域において、あるいはmRNAの5’または3’非−翻訳領域において位置させることができる。
【0045】
FRP−1 mRNAについての19−ヌクレオチドDNA標的配列の実施形態は、配列番号1のヌクレオチド509ないし527に存在する。
【0046】
【化5】

配列番号2の対応するmRNA配列を標的化するための、かつ21−ヌクレオチド鎖および2−ヌクレオチド3’突出を有する本発明のsiRNAは:
【0047】
【化6】

である。各「N」残基はいずれのヌクレオチド(A、C、G、U、T)とすることもでき、あるいは修飾されたヌクレオチドとすることができる。3’末端は1、2、3、4、5、および6の間のおよびそれらを含めた多数の「N」残基を有することができる。いずれかの鎖の「N」残基は同一の残基、例えば、(UU、AA、CC、GG、またはTT)とすることができ、あるいは、それらは異なるもの(例えば、AC、AG、AU、CA、CG、CU、GA、GC、GU、UA,UC、またはUG)とすることができる。3’突出は同一のものとすることができ、あるいは、異なるものとすることができる。一実施形態において、双方の鎖は3’UU突出を有する。
【0048】
配列番号2の対応するmRNA配列を標的とするための、かつ21−ヌクレオチド鎖および各鎖上の3’UU突出を有する本発明のsiRNAは
【0049】
【化7】

である。
【0050】
干渉性RNAはヌクレオチドの5’突出を有してもよく、あるいは、それは平滑末端を有してもよい。配列番号2の対応するmRNA配列を標的化するための、かつ19−ヌクレオチド鎖および平滑末端を有する本発明のsiRNAは
【0051】
【化8】

である。
【0052】
二本鎖干渉性RNA(例えば、siRNA)の鎖を連結させてヘアピンまたはステム−ループ構造を形成してもよい(例えば、shRNA)配列番号2の対応するmRNA配列を標的化し、かつ19bpの二本鎖ステム領域および3’UU突出を有する本発明のshRNAは
【0053】
【化9】

である。NはヌクレオチドA、T、C、G、U、あるいは当業者に知られた修飾された形態である。ループ中のヌクレオチドNの数は3ないし23または5ないし15または7ないし13、または4ないし9、または9ないし11、またはヌクレオチドの数が9の間のそれらを含む数である。ループ中のヌクレオチドのいくつかは、ループ中の他のヌクレオチドとの塩基−対相互作用に関与することができる。ループを形成するのに用いることができるオリゴヌクレオチド配列の例は5’−UUCAAGAGA−3’(Brummelkamp,T.R.et al.(2002)Science 296: 550)および5’−UUUGUGUAG−3’(Castanotto,D.et al.(2002)RNA 8:1454)を含む。得られた単一鎖オリゴヌクレオチドは、RNAiマシーナリーと相互作用できる二本鎖領域を含むステム−ループまたはヘアピン構造を形成することは当業者によって認識されるであろう。
【0054】
前記で確認されたsiRNA標的配列は3’末端で延長してダイサ−基質27マー二重鎖設計を容易とすることができる。FRP−1 DNA配列(配列番号1)で確認された19−ヌクレオチドDNA標的配列(配列番号2)の6ヌクレオチドだけの延長は、配列番号1のヌクレオチド509ないし533:
【0055】
【化10】

に存在する25−ヌクレオチドDNA標的配列を生じる。配列番号195の対応するmRNA配列を標的化するための本発明ダイサ−基質27マー二重鎖
【0056】
【化11】

である。センス鎖(すなわち配列番号196のUGヌクレオチド)の3’末端における2つのヌクレオチドは、増強されたプロセッシングのためのデオキシヌクレオチド(すなわち、TG)であってよい。本明細書中で提供されるような19ないし21ヌクレオチド標的配列からのダイサ−基質27マー二重鎖の設計は、Integrated DNA Technologies(IDT)ウェブサイトによって、およびKim,D.−H.et al.,(2005年2月) Nature Biotechnology 23:2;222−226によってさらに議論されている。
【0057】
干渉性RNAが化学合成によって生産される場合、一方または(存在する場合)双方の鎖の5’末端におけるヌクレオチドの5’位置でのリン酸化はsiRNA有効性および結合されたRISC複合体の特異性を増強させることができるが、それは要求されるものではない、というのは、リン酸化は細胞内で起こり得るからである。
【0058】
表1は、それから本発明のsiRNAが前記したように設計される配列番号1および配列番号191のFRP1 DNA標的配列の例をリストする。FRP1は前記したようにフリッツルド関連蛋白質―1をコードする。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
【表3】

【0062】
【表4】

【0063】
【表5】

前記実施例で引用したように、当業者は表1に掲げられた標的配列情報を用いて、配列番号1または配列番号191中の配列の位置に言及し、および、各々、配列番号1または配列番号191に対して相互的な、または殆ど相互的なヌクレオチドを加え、欠失することによって、表1に掲げられた配列よりも短いまたは長い配列を有する干渉性RNAを設計することができる。
【0064】
siRNAおよび干渉性RNAの他の形態によってガイドされる標的RNA切断は高度に配列特異的である。一般に、標的mRNAの一部に対する配列において同一であるセンスヌクレオチド、および標的mRNAの部分に対して性格に相互性であるアンチセンスヌクレオチド鎖を含有するsiRNAは、本明細書中で引用したmRNAの阻害のためのsiRNAである。しかしながら、アンチセンスsiRNA鎖および標的mRNAの間の、あるいはアンチセンスsiRNA鎖およびセンスsiRNA鎖の間の100%の配列相同性は、本発明を実施するのに必要ではない。かくして、例えば、本発明は、遺伝子突然変異、株多形または進化の発散により期待されるであろう配列変異を可能とする。
【0065】
本発明の一実施形態において、siRNAのアンチセンス鎖は、標的mRNAとの少なくとも19のヌクレオチドの少なくとも殆ど完全な連続相補性を有する。本明細書中で用いる「殆ど完全な」は、siRNAのアンチセンスは標的mRNAの少なくとも一部に対して「実質的に相補性」であり、siRNAのセンス鎖は標的mRNAの少なくとも部分に対して「実質的に同一である」を意味する。当業者によって知られた「同一性」は、配列の間のヌクレオチドの順序および同一性をマッチングされることによって決定されるヌクレオチド配列の間の配列関連性の程度である。一実施形態において、標的mRNA配列に対して80%および80%ないし100%の間の相補性、例えば、85%、90%または95%相補性を有するsiRNAのアンチセンス鎖は殆ど完全な相補性と考えられ、本発明で用いてもよい。「完全な」連続的相補性は隣接塩基対の標準ワトソン−クリック塩基対合である。「少なくとも殆ど完全な」連続的相補性は本明細書中で用いる「完全な」相補性を含む。同一性または相補性を決定するためのコンピューター方法は、最大程度のヌクレオチド配列のマッチングを同定するように設計される。例えば、BLASTN(Altschul,S.F.,et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403−410)。
【0066】
用語「パーセント同一性」は、第二の核酸分子における同一長さの連続するヌクレオチドの組におけるように同一である、第一の核酸分子における連続するヌクレオチドのパーセンテージを記載する。用語「パーセント相互性」は、第二の核酸分子における連続するヌクレオチドの組とワトソン−クリックの意味で塩基対合できる第一の核酸分子における連続するヌクレオチドのパーセンテージを記載する。
【0067】
標的mRNA(センス鎖)およびsiRNAの1つの鎖(センス鎖)の間の関係は同一性のそれである。siRNAのセンス鎖は、もし存在すれば、パッセンジャー鎖と呼ばれる。標的mRNA(センス鎖)およびsiRNAの他の鎖(アンチセンス鎖)の間の関係は相補性のそれである。siRNAのアンチセンス鎖はガイド鎖とも呼ばれる。
【0068】
5’ないし3’方向に書かれる核酸配列中の最後から二番の塩基は最後の塩基の次、すなわち、3’塩基の次の塩基である。5’ないし3’方向に書かれる核酸配列の最後から二番目の13塩基は3’塩基の次の配列の最後の13塩基であって、3’塩基を含まない。同様に、5’ないし3’方向に書かれる核酸配列の最後から二番の14、15、16、17、または18塩基は、各々、3’塩基の次の3’塩基を含まない配列の最後の14、15、16、17、または18塩基である。
【0069】
フレーズ「(配列アイデンティファイヤー)のいずれか1つに対応するmRNAの3’末端の最後から二番の13ヌクレオチドに対して少なくとも90%の配列相補性または少なくとも90%の配列同一性を有する少なくとも13の連続するヌクレオチドの領域」は1つのヌクレオチド置換を可能とする。二つのヌクレオチド置換(すなわち、11/13=85%同一性−相補性)はそのようなフレーズに含まれない。
【0070】
本発明の一実施形態において、連続するヌクレオチドの領域は、各配列アイデンティファイヤーによって確認される配列に対応するmRNAの3’末端の最後から二番の14ヌクレオチドに対して少なくとも80%の配列相同性、または少なくとも80%の配列同一性を有する少なくとも14の連続するヌクレオチドの領域である。2つのヌクレオチド置換(すなわち、12/14=86%同一性−相補性)はそのようなフレーズに含まれる。
【0071】
本発明のさらなる実施形態において、連続するヌクレオチドの領域は、配列アイデンティファイヤーの配列に対応するmRNAの3’末端の最後から二番の14ヌクレオチドに対して、少なくとも80%の配列相同性または少なくとも80%の配列同一性を有する少なくとも15、16、17または18連続するヌクレオチドの領域である。3つのヌクレオチドの置換がそのようなフレーズに含まれる。
【0072】
配列番号1または配列番号191に対応するmRNA中の標的配列はmRNAの5’または3’非翻訳領域に、ならびにmRNAのコーディング領域にあってよい。
【0073】
二本鎖干渉性RNAの鎖の一方又は双方は、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドまたはその混合物を含んでもよい、1ないし6ヌクレオチドの3’突出を有してもよい。突出のヌクレオチドは塩基−対合していない。本発明の一実施形態において、干渉性RNAはTTまたはUUの3’突出を含む。本発明の他の実施形態において、干渉性RNAは少なくとも1つの平滑末端を含む。末端は、通常、5’リン酸基3’ヒドロキシル基を有する。他の実施形態において、アンチセンス鎖は、5’リン酸基を有し、センス鎖は5’ヒドロキシル基を有する。なお他の実施形態において、末端は、他の分子または機能的基の共有結合付加によってさらに修飾される。
【0074】
二本鎖siRNAのセンスおよびアンチセンス鎖は前記した2つの単一鎖の二重鎖形成におけるものであってもよく、あるいは単一分子であってよく、そこでは、相補性の領域は塩基−対合されており、ヘアピンループによって共有結合されて、単一鎖を形成する。ヘアピンはダイサーと呼ばれる蛋白質によって細胞内で切断されて、2つの個々の塩基−対合RNA分子の干渉性RNAを形成すると考えられている。
【0075】
干渉性RNAは、1以上のヌクレオチドの付加、欠失、置換または修飾によって天然に生じるRNAから異なってもよい。非−ヌクレオチド物質は5’末端において、3’末端において、または内部で干渉性RNAに結合してもよい。そのような修飾は、干渉性RNAのヌクレアーゼ抵抗性を増大させ、細胞の摂取を改良し細胞標的化を増強させ、干渉性RNAを追跡するにおいて助け、安定性をさらに改良し、またはインターフェロン経路の活性化に対する潜在能力を低下させるように設計される。例えば、干渉性RNAは突出の末端においてプリンヌクレオチドを含むことができる。ピロリジンリンカーの手段によってsiRNA分子のセンス鎖の3’末端に対するコレステロールのコンジュゲーションもまた、siRNAに対して安定性を供する。
【0076】
さらなる修飾は、例えば、3’末端ビオチン分子、細胞−貫通特性を有することが知られたポリペプチド、ナノ粒子、ペプチドミメティック、蛍光色素、またはデンドリマーを含む。
【0077】
ヌクレオチドはそれらの塩基部分で、それらの糖部分で、あるいは本発明の実施形態における分子および機能のリン酸部分で修飾してもよい。修飾は、例えば、アルキル、アルコキシ、アミノ、デアザ、ハロ、ヒドロキシル、チオール基またはその組合せでの置換を含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチドでリボヌクレオチドを置き換えるようなより大きな安定性を持つ、あるいは、例えば、2’アミノ基、2’O−メチル基、2’メトキシエチル基、または2’O、4’Cメチレンブリッジによって置き換えられた2’OH基のような糖修飾を有するアナログで置換されていてもよい。ヌクレオチドのプリンまたはピリミジンアナログの例はキサンチン、ヒポキサンチン、アザプリン、メチルチオアデニン、7−デアザ−アデノシンおよびO−およびN−修飾ヌクレオチドを含む。ヌクレオチドのリン酸基は、窒素を持つ、または硫黄を持つ(ホスホロチオエート)リン酸基の酸素の1以上で置き換えることによって修飾することができる。修飾は、例えば、機能を相供するのに、安定性または浸透性を改良するのに、または局所化または標的化を指令するのに有用である。
【0078】
配列番号1または配列番号191の部分に対して相補性でないアンチセンス干渉RNA鎖の領域又は複数領域があってもよい。非−相補性領域は相補性領域の3’、5’または双方の末端におけるものであってよく、あるいは2つの相補性の間であってもよい。
【0079】
干渉性RNAは化学合成によって、イン・ビトロ転写によって、またはダイサーまたは同様な活性を持つもう1つの適当なヌクレアーゼでのより長い二本鎖RNAの切断によって内因的に生じさせることができる。慣用的なDNA/RNAシンセサイザーを用いて保護されたリボヌクレオシドホスホルアミダイトから生じた、化学的に合成された干渉性RNAは、Ambion Inc.(Austin,TX),Invitrogen(Carlsbad,CA),またはDharmacon(Lafayette,CO)のような商業的な供給業者から得ることができる。干渉性RNAは、例えば、溶媒または樹脂での抽出、沈殿、電気泳動、クロマトグラフィーまたはその組合せよって精製される。別法として、干渉性RNAは、試料プロセッシングによる喪失を回避するのに、もしあっても精製で殆ど用いることができない。
【0080】
また、干渉性RNAは、プラスミドまたはウイルス発現ベクターから、あるいは最小発現カセット、例えば、1以上のプロモーターおよび干渉性RNAのための適当な鋳型または複数鋳型を含むPCRで生じた断片から内因的に発現させることもできる。shRNAのための商業的に入手可能なプラスミド−ベースの発現ベクターの例は、pSilencerシリーズ(Ambion,Austin,TX)のメンバーおよびpCpG−siRNA(Invivogen,San Diego,CA)を含む。干渉性RNAの発現のためのウイルスベクターは、アデノウイルス、アデノ−関連ウイルス、レンチウイルス(例えば、HIV、FIV、およびEIAV)およびヘルペスウイルスを含めた種々のウイルスから由来してもよい。shRNA発現のための、商業的に入手可能なウイルスベクターの例はpSilencer adeno(Ambion,Austin,TX)およびpLenti6/BLOCK−iTTM−DEST(Invitrogen,Carlsbad,CA)を含む。ウイルスベクターの選択、ベクターからの干渉性RNAを発現する方法、およびウイルスベクターを送達する方法は当業者の通常の技量内のことである。PCR−生成shRNA発現カセットの生産上のキットの例はSilencer Express(Ambion,Austin,TX)およびsiXpress(Mirus,Madison,WI)を含む。第一の干渉性RNAは第一の干渉性RNAを発現することができる第一の発現ベクターからのイン・ビボ発現を介して投与してもよく、第二の干渉性RNAは第二の干渉性RNAを発現させることができる第二の発現ベクターからのイン・ビボ発現を介して投与してもよく、あるいは双方の干渉性RNAは、双方の干渉性RNAを発現することができる単一発現ベクターからイン・ビボ発現を介して投与してもよい。
【0081】
干渉性RNAは、U6またはH1プロモーターのようなpol IIIプロモーターまたはサイトメガルウイルスプロモーターのようなpol IIプロモーターを含めた、当業者に知られた種々の真核生物プロモーターから発現させることができる。当業者であれば、これらのプロモーターは干渉性RNAの誘導可能な発現を可能とするのに適合させることもできることを認識するであろう。
【0082】
生理学的条件下でのハイブリダイゼーション:本発明のある実施形態において、干渉性RNAのアンチセンス鎖はRISC複合体の一部としてイン・ビボにてmRNAとハイブリダイズする。
【0083】
「ハイブリダイゼーション」とは、相補的なまたは殆ど相補的な塩基配列と一本鎖核酸が相互作用して、ハイブリッドと呼ばれる水素−結合複合体を形成するプロセスをいう。ハイブリダイゼーション反応は感受性であって、かつ選択的である。イン・ビトロにおいて、ハイブリダイゼーションの特異性(すなわち、ストリンジェンシー)はプレハイブリダイゼーションにおける塩またはホルムアミドの濃度およびハイブリダイゼーション溶液によって、例えば、ハイブリダイゼーション温度によって制御され、そのような手法は当該分野で良く知られている。特に、ストリンジェンシーは、塩の濃度を低下させ、ホルムアミドの濃度を増大させ、またはハイブリダイゼーション温度を上昇させることによって増加する。
【0084】
例えば、高ストリンジェンシー条件は37℃ないし42℃における約50%ホルムアミドで起こり得る。低下してストリンジェンシー条件は30℃ないし35℃における約35%ないし25%ホルムアミドにおいて起こり得る。ハイブリダイゼーションのためのストリンジェンシー条件の例はSambrook,J.,1989,Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.に供される。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件のさらなる例は、400mM NaCl、40mM PIPES pH6.4、1mM EDTA、12ないし16時間の50℃または70℃、続いての、洗浄、あるいは1XSSC中の70℃、または1XSSC中の50℃、50%ホルムアミド、続いての0.3XSSC中での70℃における洗浄でのハイブリダイゼーションまたは4XSSC中での70℃または4XSSC中での50℃、50%ホルムアミド、続いての1XSSC中での67℃における洗浄のハイブリダイゼーションを含む。ハイブリダイゼーションのための温度はハイブリッドの融解温度(T)の5−10℃低く、ここに、Tは以下の計算を用いて、長さが19および49の間の塩基対のハイブリッドについて決定され:T℃=81.5+16.6 (log10[Na+]+0.41(% G+C)−(600/N)、ここに、Nはハイブリッドにおける塩基の数であり、および「Na+」はハイブリダイゼーション干渉液中のナトリウムイオンの濃度である。
【0085】
前記したイン・ビトロハイブリダイゼーションアッセイは、候補siRNAおよび標的の間の結合が特異性を有するか否かを予測する方法を提供する。しかしながら、RISC複合体の関係では、標的の特異的な切断は、イン・ビトロでのハイブリダイゼーションのための高いストリンジェンシーを示さないアンチセンス鎖でも起こり得る。
【0086】
一本鎖干渉性RNA:前記したように干渉性RNAは最後には単一鎖として機能する。一本鎖(ss)干渉性RNAは、二本鎖RNAよりも低い効率にかかわらず、mRNAサイデンシングを行うことが見出された。従って、本発明の実施形態は、生理学的条件下で配列番号1または配列番号191の部分に対してハイブライズしおよび、各々、配列番号1または配列番号191のハイブリダイズする部分との少なくとも19ヌクレオチドの少なくとも殆ど完全な連続的相補性の領域を有するss干渉性RNAの投与を提供する。ss干渉性RNAは、前記したds干渉性RNAに関して19ないし49ヌクレオチドの長さを有する。ss干渉性RNAは5’リン酸を有し、5’位置においてインサイチュウまたはイン・ビボでリン酸化される。用語「5’リン酸化された」は、例えば、ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドの5’末端における糖(例えば、リボース、デオキシリボース、またはそのアナログ)のC5ヒドロキシルへエステル結合を介して結合されたリン酸基を有するポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドを記載する。
【0087】
ss干渉性RNAは化学的に、またはイン・ビトロ転写によって合成され、あるいはds干渉性RNAに関してはベクターまたは発現カセットから内因的に発現される。5’リン酸基はキナーゼを介して付加することができ、あるいは、5’リン酸はRNAのヌクレアーゼ切断の結果であり得る。送達はds干渉性RNAの通りである。一実施形態において、保護された末端およびヌクレアーゼ抵抗性修飾を有するss干渉性RNAはサイリンシングのために投与される。ss干渉性RNAは貯蔵のために乾燥し、あるいは水性溶液に溶解させてもよい。溶液はアニーリングを阻害するための、または安定化のための干渉液または塩を含有することができる。
【0088】
ヘアピン干渉性RNA:ヘアピン干渉性RNAは、ステム−ループまたはヘアピン構造中に干渉性RNAのセンスおよびアンチセンス鎖を共に含む単一分子(例えば、単一オリゴヌクレオチド鎖)である(例えば、shRNA)。例えば、shRNAは、センス干渉性RNA鎖をコードするDNAオリゴヌクレオチドが短いスペーサーによって逆相補性アンチセンス干渉性RNA鎖をコードするDNAオリゴヌクレオチドに連結したDNAベクターから発現させることができる。もし選択された発現ベクターで必要であれば、3’末端Tおよびヌクレオチド形成制限部位を加えてもよい。得られたRNA転写体はそれ自体に折り畳まれて、ステム−ループ構造を形成する。
【0089】
投与の形態:干渉性RNAは、眼周囲、結膜、テノン嚢下(subtenon)、前眼房内、硝子体内、眼内、網膜下、結膜下、眼球後、小管内、または脈絡上板投与のような眼組織投与によって;注射によって、カテーテル、あるいは網膜ペレット、眼内インサート、多孔性、非−多孔性またはゼラチン状物質を含む座薬またはインプラントのような他の代替デバイスを用いる眼への直接的適用によって;局所的な点眼剤または軟膏によって;盲管中の、または強膜に隣接して移植された(経強膜)または眼内の徐放デバイスによって眼へ直接的に送達することができる。前眼房内注射は角膜を通って前房に入れて、剤が小柱網に到達するのを可能とすることができる。小管内注射は静脈コレクターチャネル排出シュレム管またはシュレム管へ行うことができる。全身または非経口投与が考えられ、限定されるものではないが、静脈内、皮下、経皮、および経口送達を含む。
【0090】
被験体:緑内障についての治療を必要とする、または緑内障を発症する危険性がある被験体は緑内障を有する、あるいは本明細書中で言及するFRP−1の望まないまたは不適切な発現または発生に関連する高血圧のような緑内障−関連疾患を発症する危険性があるヒトまたは他の哺乳動物である。そのような障害に関連する眼の構造は、例えば、眼、網膜、脈絡膜、レンズ、角膜、小柱網、虹彩、視神経、視神経頭部、強膜、眼房、硝子房、毛様体または後方セグメントを含むことができる。被験体は眼細胞、細胞培養、器官またはエクス・ビボ器官または組織であってもよい。
【0091】
処方および用量:医薬処方は水、緩衝液、セーライン、グリシン、ヒアルロン酸、マンニトールなどのような生理学上許容される眼科担体媒体と混合された99重量%までの本発明の干渉性RNA、またはその塩を含む。
【0092】
本発明の干渉性RNAは溶液、懸濁液、またはエマルジョンとして投与される。以下に示すのは本発明によって具体化された可能な処方の例である。
【0093】
【表6】

一般に、本明細書中において提供される組合せ組成物の用量は変化するが、有効量内のものであり、これは、重複する時間間隔の間に一緒に作用する干渉性RNAの組合せの量をいい、これは、血管新生または血管形成の退行を効果的に阻害し、または引き起こし、それにより、例えば、ヒト患者において、網膜浮腫、AMD、DR、網膜虚血症に関連する続発症、またはPSNVを予防しまたは治療する。
【0094】
一般に、本発明の実施形態の干渉性RNAの有効量は、100pMないし100nM、または1nMないし50nM、または5nMないし約10nM、または約25nMの標的細胞の表面における細胞外濃度をもたらす。この局所的濃度を達成するのに必要な用量は、送達方法、送達の部位、送達部位および標的細胞または組織の間の細胞層の数、送達が局所的または全身的であるかなどを含めた多数の因子に依存して変化するであろう。送達部位における濃度は、標的細胞または組織の表面におけるよりもかなり高くなり得る。局所組成物は、技量のある臨床家のルーチン的裁量に従って1日当たり1ないし4回、あるいは毎日、毎週、2週間毎に、毎月、またはそれ以上のような延長された送達スケジュールで眼の表面に送達される。処方のpHは約pH4ないし9、またはpH4.5ないしpH7.4である。
【0095】
FRP−1 mRNAに対して向けられたsiRNAをもつ患者の治療的処置は、作用の持続を増加させ、それにより、より少ない頻度の投与、およびより大きな患者のコンプライアンスを可能とすることによって、小分子局所的点眼剤よりも利点があると予測される。
【0096】
正確なレジメンは臨床家の裁量に委ねられるが、干渉性RNAは臨床家によって指令されるように各眼に一滴を入れることによって投与することができる。処方の有効量は、例えば、被験体の年齢、人種および性別、眼高血圧のひどさ、標的遺伝子転写体/蛋白質代謝回転の速度、干渉性RNAの能力、および干渉性RNA安定性のような因子に依存し得る。一実施形態において干渉性RNAは眼に局所送達され、治療用量にて小柱網、網膜または視神経頭部に到達し、それにより、緑内障の病気プロセスを軽減する。
【0097】
許容される担体:眼科的に許容される担体とは、眼の刺激をせいぜいほとんどまたは全く引き起こさず、必要であれば適当な維持を供し、均一用量における本発明の1以上の干渉性RNAを送達する担体をいう。本発明の実施形態の干渉性RNAの投与用の許容される担体はカチオン性脂質−ベースのトランスフェクション試薬TransIT(登録商標)−TKO(Mirus Corporation,Madison,WI)、LIPOPECTIN(登録商標)、リポフェクタミン、OLIGOFECTAMINETM (Invitrogen,Carlsbad,CA)またはDHARMAFECTTM (Dharmacon,Lafayette,CO);ポリエチレンイミンのようなポリカチオン;Tat、ポリアルギニン、またはペネトラチン(Penetratin)(Antpペプチド)のようなカチオン性ペプチド;またはリポソームを含む。リポソームは、標準的な小胞−形成脂質およびコレステロールのようなステロースから形成され、例えば、内皮細胞表面抗原に対して結合親和性を有するモノクローナル抗体のような標的化分子を含んでもよい。さらに、リポソームはPEG化リポソームであってよい。
【0098】
干渉性RNAは溶液中にて、懸濁液中にて、または生体侵食性または非−生体侵食性送達デバイス中にて送達することができる。干渉性RNAは単独で、あるいは規定された共有結合コンジュゲートの成分として送達することができる。干渉性RNAはカチオン性脂質、カチオン性ペプチドまたはカチオン性ポリマーと複合体化させることもでき;蛋白質、融合蛋白質、または核酸結合特性を持つ蛋白質ドメイン(例えば、プロタミン)と複合体化させることもでき;あるいはナノ粒子中にカプセル化することもできる。組織−または細胞−特異的送達は、抗体または抗体断片のような適当な標的化部位を含めることによって達成することができる。
【0099】
眼送達では、干渉性RNAは眼科的に許容される保存剤、共−溶媒、界面活性剤、粘度増強剤、浸透増強剤、緩衝剤、塩化ナトリウムまたは水性、滅菌眼懸濁液もしくは溶液を形成するための水と組み合わせてもよい。眼溶液処方は、干渉性RNAを生理学的に許容される等張水性緩衝液中に溶解させることによって調製することができる。さらに、眼溶液は阻害剤を溶解させるのを助けるための眼科的に許容される界面活性剤を含むことができる。ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどのような粘度形成剤を本発明の組成物に加えて、化合物の滞留性を改良することができる。
【0100】
滅菌眼科軟膏処方を調製するためには、干渉性RNAを、鉱油、液体ラノリン、または白色ペテロラタムのような適当なビークル中にて保存剤と組み合わせる。滅菌眼科ゲル処方は、他の眼科処方について当該分野で知られた方法に従って、干渉性RNAを、例えば、CARBOPOL(登録商標)−940(BF Goodrich,Charlotte,NC)の組合せから調製された親水性基材に懸濁させることによって調製することができる。VISCOAT(登録商標)(Alcon Laboratories,Inc.,Fort Worth,TX)は、例えば、眼内注射のために用いることができる。本発明の他の組成物は、干渉性RNAが眼の中にあまり浸透しない場合、クレメフォールおよびTWEEN(登録商標)80(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、Sigma Aldrich,St.Louis,MO)のような浸透促進剤を含有することができる。
【0101】
キット:本発明の実施形態は、細胞中の本明細書中に記載されたmRNAの発現を減衰させるための試薬を含むキットを提供する。該キットはsiRNAまたはshRNA発現ベクターを含有する。siRNAおよび非−ウイルスshRNA発現ベクターでは、キットはトランスフェクション試薬または他の適当な送達ビークルを含有することもできる。ウイルスshRNA発現ベクターでは、キットはウイルスベクターおよび/またはウイルスベクター生産に必要な成分(例えば、パッケージング細胞系ならびにウイルスベクター鋳型を含むベクターおよびパッケージングのためのさらなるヘルパーベクター)を含有することができる。該キットは陽性および陰性対照siRNAまたはshRNA発現ベクター(例えば、非−標的化対照siRNAまたは無関係なmRNAを標的とするsiRNA)を含有することもできる。該キットは、意図した標的遺伝子のノックダウンを評価するための試薬(例えば、mRNAおよび/またはウェスタンブロット用の対応する蛋白質に対する抗体を検出するための定量的PCRのためのプライマーおよびプローブ)を含有することもできる。別法として、該キットはsiRNA配列またはshRNA配列、およびイン・ビトロ転写によってsiRNAを生じさせるのに、またはshRNA発現ベクターを構築するのに必要な指示書および物質を含むことができる。
【0102】
パッケージされた組合せにて、それと共に密接に封入される容器手段、および干渉性RNA組成物および眼科的に許容される担体を含めた第一の容器手段を受け取るのに適合されたキャリアー手段を含むキット形態の医薬組合せがさらに提供される。そのようなキットは、所望であれば、当業者に容易に明らかなように、例えば、1以上の医薬上許容される担体、さらなる容器などと共に容器のような種々の慣用的な医薬キット成分の1以上をさらに含むことができる。投与すべき成分の量、投与についてのガイドラインおよび/または成分を混合するためのガイドラインを示す添付文書としての、または標識としての印刷された指示書もキットに含めることができる。
【0103】
例えば、ヒト小柱アミン(TM)細胞中の内因性FRP−1発現のレベルをノックダウンするFRP−1干渉性RNAの能力は以下のように行われる。GTM3またはHTM−3(Pang,L.H.et al.,.1994.Curr.Eye Res.13:51−63参照)と命名された形質転換されたヒトTM細胞系のトランスフェクションは、1:1(w/v)比率の本明細書中で記載された標準イン・ビトロ濃度のFRP−1干渉性RNA(100nM)およびLIPOFECTAMINETM 2000(Invitrogen,Carlsbad,California)を用いて達成される。スクランブルドおよびラミンA/C siRNA(Dharmacon)を対照として用いる。QPCR TAQMAN(登録商標)順方向および逆方向プライマー、および標的部位を含むプローブ組を用いて、mRNA切断の程度を評価する。そのようなプライマー/プローブ組は、例えば、ABI(Applied Biosystems,Foster City,CA)によって合成することができる。非−特異的オフ標的効果の機会を低下させるために、FRP−1 mRNA発現のための最低可能siRNA濃度をsiRNAについて決定する。FRP−1 mRNAノックダウンは、適当なプライマー/プローブ組を用いてQPCR増幅によって評価する。GTM3細胞におけるFRP−1 siRNAの用量応答は、例えば、0、1、3、10、30、および100nM用量範囲のsiRNAでの24時間処理後にGTM3細胞で観察される。データは、可変傾き、シグモイド用量応答アルゴリズムおよび100%の頂部拘束にてGraphPad Prism 4ソフトウェア(GraphPad Software,Inc.,San Diego,CA)を用いて適合させる。IC50はテストした特定のsiRNAで得られる。
【実施例】
【0104】
(実施例1)
(FRP1をサイレントとするための干渉性RNA)
本実験は、COS細胞における内因性FRP1 RNAのレベルをノックダウンするFRP1干渉性RNAの能力を調べる。
【0105】
COS−7細胞をトランスフェクションの前日に12−ウェルプレート中にて〜20%密集にて平板培養した。トランスフェクションの時点において、細胞は50ないし70%密集であるように見えた。細胞をトランスフェクションから1および3日後に収穫した。センス鎖配列5’AAGAAGAUUGUCCCCAAGAAG3’(5’AAを加えた配列番号18である配列番号146;Dharmacon,Lafayette,Coloradoから購入)を有する二本鎖FRP1−siRNAのトランスフェクションを、三連での12−ウェルプレートの各ウェルにつき、OLIGOFECTAMINETM(Invitrogen,Carlsbad,CA)および100ナノモルのsiRNAを用いて行った。対照はsiRNAなしである。RNA抽出はPCR(Ambion,Austin,TX)用のRNAqueousTMによるものであり、cDNAをTAQMANTM逆転写剤(PE Biosystems(Applied Biosystems,Foster City,CA))で合成した。QPCRは、TAQMANTMユニバーサルPCRマスターミックスおよび7700 SDS(PE Biosystems)を用いて三連で行った。リボソームRNA(18s、PE Biosystems)を多重QPCRにて正規化対照として用いた。QPCRデータを図1に掲げ、対照と比較して、トランスフェクション後の1日(22%、P=0.04)および3日(32%、P=0.002)においてFRP1 mRNAの有意な阻害を示す。
【0106】
本明細書中で引用した文献は、それらが例示的手法または本明細書中に記載したものを補充する他の詳細を提供する限りにおいて、ここに引用して具体的に一体化させる。
【0107】
当業者であれば、本開示に徴して、本明細書中に開示された実施形態の明白な修飾を、本発明の精神および範囲を逸脱することなく行うことができるのを認識するであろう。本明細書中に開示された実施形態の全ては、本開示に徴して過度な実験なくして行い、実行することができる。本発明の全範囲は該開示およびその同等な実施形態に記載される。明細書は、本発明がその権利を有する保護の全範囲を不当にも狭くすると解釈されるべきではない。
【0108】
本明細書中で用いるように、かつ他に断りがなければ用語「ある」は「1つの」、「少なくとも1つの」、「1以上の」を意味するように取られる。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】図1は、QPCRによって測定して、COS7細胞における内因性FRP1 mRNAのレベルに対する干渉性RNAの効果を示す。FRP1 mRNAの有意な阻害は実施例1に記載されたように対照と比較して、トランスフェクションから1日後に(22%、P=0.04)および3日後に(32%、P=0.002)観察された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体のフリッツルド−関連蛋白質−1 mRNAの発現を減衰させる方法であって、
有効量の、19ないし49ヌクレオチドの長さを有する干渉性RNA、および医薬上許容される担体を含む組成物を被験体に投与することを含み、
該干渉性RNAは、配列番号2、配列番号8ないし配列番号190、および配列番号192のうちのいずれか1つに対応するmRNAの3’末端の最後から2番目の13ヌクレオチドに対して少なくとも90%の配列相補性または90%の配列同一性を有する少なくとも13連続するヌクレオチドの領域を含み、
ここで、フリッツルド−関連蛋白質−1 mRNAの発現は投与により減衰される、
方法。
【請求項2】
前記組成物がさらに、19ないし49ヌクレオチドの長さを有し、かつ配列番号2、配列番号8ないし配列番号190、および配列番号192のいずれか1つに対応する第2のmRNAの3’末端の最後から2番目の13ヌクレオチドに対して、少なくとも90%の配列相補性、または少なくとも90%の配列同一性を有する少なくとも13連続するヌクレオチドの領域を含む第2の干渉性RNAを含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記干渉性RNAが、配列番号2、配列番号8ないし配列番号190、および配列番号192のいずれか1つに対応するmRNAの3’末端の最後から2番目の14ヌクレオチドに対して、少なくとも85%の配列相同性、または少なくとも85%の配列同一性を有する少なくとも14連続するヌクレオチドの領域を含む請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記干渉性RNAが、配列番号2、配列番号8ないし配列番号190、および配列番号192のいずれか1つに対応するmRNAの3’末端の、各々、最後から2番目の15、16、17、または18ヌクレオチドに対して、少なくとも80%の配列相同性、または少なくとも80%同一性を有する少なくとも15、16、17、または18連続するヌクレオチドの請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記干渉性RNAがshRNAである請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記組成物が局所、硝子体内、経強膜、眼周囲、結膜、テノン嚢下、前眼房内、網膜下、結膜下、眼球後、小管内、または脈絡板上経路を介して投与される請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記干渉性RNAが、該干渉性RNAを発現させることができる発現ベクターからイン・ビボ発現を介して投与される請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記干渉性RNAがmiRNAである請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記干渉性RNAがsiRNAである請求項1記載の方法。
【請求項10】
被験体における緑内障の治療用の医薬の調製における、有効量の、19ないし49ヌクレオチドの長さを有する干渉性RNA、および医薬上許容される担体を含む組成物の使用であって、
該干渉性RNAは、配列番号2、配列番号8ないし配列番号190、および配列番号192のいずれか1つに対応するmRNA3’末端の最後から2番目の13ヌクレオチドに対して、少なくとも90%の配列相補性、または少なくとも90%の配列同一性を有する少なくとも13連続するヌクレオチドの領域を含む、
使用。
【請求項11】
前記組成物が、さらに、19ないし49ヌクレオチドの長さを有し、かつ配列番号2、配列番号8ないし配列番号190、および配列番号192のいずれか1つに対応する第2のmRNAの3’末端の最後から2番目の13ヌクレオチドに対して、少なくとも90%の配列相補性、または少なくとも90%同一性を有する少なくとも13連続するヌクレオチドの領域を含む第2の干渉性RNAを含む請求項10記載の使用。
【請求項12】
前記干渉性RNAが、配列番号2、配列番号8ないし配列番号190、および配列番号192のいずれか1つに対応するmRNAの3’末端の最後から2番目の14ヌクレオチドに対して、少なくとも85%の配列相同性、または少なくとも85%同一性を有する少なくとも14連続するヌクレオチドの領域を含む請求項10記載の使用。
【請求項13】
前記干渉性RNAが、配列番号2、配列番号8ないし配列番号190、および配列番号192のうちのいずれか1つに対応するmRNAの3’末端の各々、最後から2番目の15、16、17、または18ヌクレオチドに対して、少なくとも80%の配列相同性、または少なくとも80%の配列同一性を有する少なくとも15、16、17、または18連続するヌクレオチドの領域を含む請求項10記載の使用。
【請求項14】
前記干渉性RNAがshRNAである請求項10記載の使用。
【請求項15】
前記組成物が局所、硝子体内、経強膜、眼周囲、結膜、テノン嚢下、前眼房内、網膜下、結膜下、眼球後、小管内、または脈絡板上投与のために調製される請求項10記載の使用。
【請求項16】
前記組成物が、前記干渉性RNAを発現することができる発現ベクターからイン・ビボ発現を介する投与のために調製される請求項10記載の使用。
【請求項17】
前記干渉性RNAがmiRNAである請求項10記載の使用。
【請求項18】
前記干渉性RNAがsiRNAである請求項10記載の使用。
【請求項19】
前記少なくとも13連続するヌクレオチドの領域が、配列番号2、および配列番号8ないし配列番号190のいずれか1つに対応するmRNAの3’末端の最後から2番目の13ヌクレオチドに対して、少なくとも90%の配列相補性、または少なくとも90%の配列同一性を有する請求項10記載の使用。
【請求項20】
前記少なくとも13連続するヌクレオチドの領域が、配列番号192に対応するmRNAの3’末端の最後から2番目の13ヌクレオチドに対して、少なくとも90%の配列相補性または少なくとも90%の配列同一性を有する請求項10記載の使用。
【請求項21】
被験体のフリッツルド関連蛋白質−1 mRNAの発現を減衰する方法であって
有効量の、19ないし49ヌクレオチドの長さを有する干渉性RNA、および医薬上許容される担体を含む組成物を被験体に投与することを含み、
該干渉性RNAは、センスヌクレオチド鎖、アンチセンスヌクレオチド鎖および少なくとも19ヌクレオチドの少なくともほとんど完全な連続相補性の領域を含み、
ここで、該アンチセンス鎖は生理学的条件下で配列番号1または配列番号191に対応するmRNAの部分に対してハイブリダイズし、かつ、各々、配列番号1または配列番号191に対応するmRNAのハイブリダイズする部分に対して少なくとも19ヌクレオチドの少なくともほとんど完全な連続的相補性の領域を有し、
ここで、フリッツルド関連蛋白質−1 mRNAが投与により減衰される、
方法。
【請求項22】
前記アンチセンス鎖が生理学的条件下で、配列番号1に対応するmRNAの一部に対してハイブリダイズし、かつ配列番号1に対応するmRNAのハイブリダイズする部分に対して少なくとも19ヌクレオチドの少なくともほとんど完全な連続相補性の領域を有する請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記アンチセンス鎖が、生理学的条件下で、配列番号191に対応するmRNAの部分に対してハイブリダイズし、かつ配列番号191に対応するmRNAのハイブリダイズする部分に対して少なくとも19ヌクレオチドの少なくともほとんど完全な連続相補性の領域を有する請求項21記載の方法。
【請求項24】
前記干渉性RNAのアンチセンス鎖が、ヌクレオチド
【化1】

を含む配列番号1に対応するmRNAを標的とするように設計された請求項21記載の方法。
【請求項25】
前記干渉性RNAのアンチセンス鎖が、ヌクレオチド3352を含む配列番号191に対応するmRNAを標的とするように設計された請求項21記載の方法。
【請求項26】
さらに、19ないし49ヌクレオチドの長さを有し、かつセンスヌクレオチド鎖、アンチセンスヌクレオチド鎖、および少なくとも19ヌクレオチドの少なくともほとんど完全な相補性の領域を含む第2の干渉性RNAを前記被験体に投与することを含み、
ここで、該第2の干渉性RNAのアンチセンス鎖は、生理学的条件下で、配列番号1または配列番号191に対応するmRNAの第2の部分に対してハイブリダイズし、および該アンチセンス鎖は、各々、配列番号1または配列番号191に対応するmRNAの第2のハイブリダイズする部分に対して少なくとも19ヌクレオチドの少なくともほとんど完全な連続相補性の領域を有する、
請求項21記載の方法。
【請求項27】
前記センスヌクレオチド鎖および前記アンチセンスヌクレオチド鎖がループヌクレオチド鎖によって連結される請求項21記載の方法。
【請求項28】
前記組成物が局所、硝子体内、経強膜、眼周囲、結膜、テノン嚢下、前眼房内、網膜下、結膜下、眼球後、小管内、または脈絡板上経路を介して投与される請求項21記載の方法。
【請求項29】
前記干渉性RNAが、該干渉性RNAを発現することができる発現ベクターからイン・ビボ発現を介して投与される請求項21記載の方法。
【請求項30】
被験体における緑内障の治療用の医薬の調製における、有効量の、19ないし49ヌクレオチドの長さを有する干渉性RNA、および医薬上許容される担体を含む組成物の使用であって、
該干渉性RNAはセンスヌクレオチド鎖、アンチセンスヌクレオチド鎖、および少なくとも19ヌクレオチドの少なくともほとんど完全な連続相補性の領域を含み、
ここで、該アンチセンス鎖は、生理学的条件下で配列番号1または配列番号191に対応するmRNAの部分に対してハイブリダイズし、かつ各々、配列番号1または配列番号191に対応するmRNAのハイブリダイズする部分に対して少なくとも19ヌクレオチドの少なくともほとんど完全な連続相補性の領域を有する、
使用。
【請求項31】
前記アンチセンス鎖は、生理学的条件下で配列番号1に対応するmRNAの部分に対してハイブリダイズにし、かつ配列番号1に対応するmRNAハイブリダイズする部分に対して少なくとも19ヌクレオチドの少なくともほとんど完全な連続相補性の領域を有する請求項30記載の使用。
【請求項32】
前記アンチセンス鎖は、生理学的条件下で配列番号191に対応するmRNAの部分に対してハイブリダイズにし、かつ配列番号191に対応するmRNAハイブリダイズする部分に対して少なくとも19ヌクレオチドの少なくともほとんど完全な連続相補性の領域を有する請求項30記載の使用。
【請求項33】
前記干渉性RNAのアンチセンス鎖は、ヌクレオチド
【化2】

を含む配列番号1に対応するmRNAを標的とするように設計された請求項30記載の使用。
【請求項34】
前記干渉性RNAのアンチセンス鎖が、ヌクレオチド3352を含む配列番号191に対応するmRNAを標的とするように設計された請求項30記載の使用。
【請求項35】
さらに、19ないし49ヌクレオチドの長さを有し、かつセンスヌクレオチド鎖、アンチセンスヌクレオチド鎖および少なくとも19ヌクレオチドの少なくともほとんど完全な相補性の領域を含む第2の干渉性RNAを前記被験体に投与することを含む、請求項30記載の使用であって、
ここで第2の干渉性RNAのアンチセンス鎖は、生理学的条件下で、配列番号1または配列番号191に対応するmRNAの第2の部分に対してハイブリダイズし、かつ該アンチセンス鎖が、各々、配列番号1または配列番号191に対応するmRNAの第2のハイブリダイズする部分に対して少なくとも19ヌクレオチドの少なくともほとんど完全な連続相補性の領域を有する、
使用。
【請求項36】
前記センスヌクレオチド鎖および該アンチセンスヌクレオチド鎖がループヌクレオチド鎖によって連結された請求項30記載の使用。
【請求項37】
前記組成物が局所、硝子体内、経強膜、眼周囲、結膜、テノン嚢下、前眼房内、網膜下、結膜下、眼球後、小管内、または脈絡板上投与のために調製される請求項30記載の使用。
【請求項38】
前記組成物が、前記干渉性RNAを発現することができる発現ベクターからのイン・ビボ発現を介する投与のために調製される請求項30記載の使用。
【請求項39】
被験体のフリッツルド関連蛋白質−1 miRNAの発現を減衰させる方法であって、
有効量の、19ないし49ヌクレオチドの長さを有する一本鎖干渉性RNA、および医薬上許容される担体を含む組成物を該被験体に投与することを含み、
ここで、該一本鎖干渉性RNAは、生理学的条件下で、ヌクレオチド
【化3】

を含む配列番号1に対応するmRNAの部分にハイブリダイズし、および該干渉性RNAは配列番号1に対応するmRNAのハイブリダイズする部分に対して少なくともほとんど完全な連続相補性の領域を有するか;
あるいは、該一本鎖干渉性RNAは、生理学的条件下で、ヌクレオチド3352を含む配列番号191に対応するmRNAの部分に対してハイブリダイズし、かつ該干渉性RNAは、配列番号191に対応するmRNAのハイブリダイズする部分に対して少なくとも19ヌクレオチドの少なくともほとんど完全な連続相補性の領域を有し;
ここで、フリッツルド関連蛋白質−1 mRNAの発現は投与により減衰される、
方法。
【請求項40】
前記組成物が局所、硝子体内、経強膜、眼周囲、結膜、テノン嚢下、前眼房内、網膜下、結膜下、眼球後、小管内、または脈絡板上経路を介して投与される請求項39記載の方法。
【請求項41】
前記干渉性RNAが、該干渉性RNAを発現させることができる発現ベクターからイン・ビボ発現を介して投与される請求項39記載の方法。
【請求項42】
前記干渉性RNAがmiRNAである請求項39記載の方法。
【請求項43】
前記干渉性RNAがsiRNAである請求項39記載の方法。
【請求項44】
19ないし49ヌクレオチドの長さを有し、かつ配列番号2、配列番号8ないし配列番号190、および配列番号192のいずれか1つに対応するヌクレオチド配列を含む干渉性RNA、またはその相補体;および医薬上許容される担体を含む組成物。
【請求項45】
前記干渉性RNAがshRNAである請求項44記載の組成物。
【請求項46】
前記干渉性RNAがsiRNAである請求項44記載の組成物。
【請求項47】
前記干渉性RNAがmiRNAである請求項44記載の組成物。


【図1】
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【公表番号】特表2008−533050(P2008−533050A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−501049(P2008−501049)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【国際出願番号】PCT/US2006/009000
【国際公開番号】WO2006/099353
【国際公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(399054697)アルコン,インコーポレイテッド (102)
【Fターム(参考)】