説明

緑化システムおよび緑化パネルの取付方法

【課題】特定構造の金属屋根や金属壁において、漏水の心配もほとんどなくその緑化を簡易に実現することができる緑化システムおよび緑化パネルの取付方法を提供する。
【解決手段】ガルバリウム鋼板などの金属薄板材を、瓦棒(12)部分でその側端をはぜ継ぎにより連結したはぜ葺き構造の屋根や壁を緑化するために、L字型断面の取付金具(26)の一片を金属屋根等のはぜ継ぎ部分(24)に下側から挿嵌して固定し、蘇苔類植物が貼着された緑化面(18)を有する緑化パネル(22)を、固定した取付金具の他片に固定することで緑化パネルの緑化面が金属屋根等から浮いた状態で支持して屋根面等に緑化パネルを配設してやる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家屋、工場、ビル等の建築物の屋根や壁面などに適用することで、容易にその緑化を図ることができる緑化システムおよび緑化パネルの取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の地球温暖化現象により、夏季の電力需要の増大などが社会問題となっている。特に都市部ではヒートアイランド現象、すなわち日中太陽光によって熱せられたコンクリート建造物やアスファルト舗装等が夜間になっても冷えずに温度が高い状態で維持する現象が深刻な社会問題化している。
【0003】
そのため二酸化炭素の増加を食い止めて地球温暖化を抑制し、また、建物内部の温度を低下させる等の目的で、近年では家屋やビル等の建築物の屋根や屋上、壁面などの緑化が推し進められている。
しかしながら芝生や樹木等の植物をビルの屋上等に導入して緑化を図ろうとする場合、土壌の重量と漏水が大きな障害となっている。すなわち植物を育てるためには多くの土壌が必要であり、建物がその重量を十分支えられない場合には緑化を図ることができない。また土壌に植物を植えた場合には、その根が伸びることで建物の防水を破ってしまうことがあるため、十分な漏水防止対策が必要となるが、そのためのコストが緑化促進の障害となっている実情があった。また壁面の緑化を図る場合においては、植栽枡や灌漑設備などを設けることが必要となることも多く、その導入コストやメンテナンスが壁面緑化促進の障害となっていた。
【0004】
これらの問題を解決するために、近年では蘇苔類植物を用いて緑化を行う提案がなされている。すなわち蘇苔類植物は樹木や芝生と異なり、土壌がなくとも生育させることができ、またその保水性も高いため、保持した水分やその蒸発により、建物の温度を下げてヒートアイランド現象の軽減を図ることができる。なお蘇苔類植物は、乾燥状態が続いたとしても枯死することなく仮死状態となるだけで、再度水が与えられると再生することができ、また光合成も樹木や芝生と大差ない効率で行うため、炭酸ガスの固定化を効果的に行わせることができるといった優れた特徴も有している。
【0005】
このような特徴を有する蘇苔類植物を建物の緑化に用いるために、シート状やマット状に蘇苔類植物を形成したものが既に開発されており、それを屋上や屋根、壁面に貼り付けることで実際にその緑化が行われている。
【0006】
しかしながらこのような蘇苔類植物のシートやマットを直接屋根や屋上、壁面に敷設すると、雨季などには蘇苔類植物の高い保水力によって屋根等が常に湿った状態となり、屋根材等に悪影響を及ぼすおそれがあった。
【0007】
そのため例えば特許文献1の「蘇苔類植物担持体およびそれを用いた緑化方法」では、蘇苔類植物保持シートを上下に通風性を有する支持体の上面に取り付けた蘇苔類植物担持体やこれを屋根や屋上、壁面等に用いた緑化方法の発明が開示されている。
【特許文献1】特開平2005−229896号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の発明によれば、蘇苔類植物が通風性を有する支持体に取り付けられているため、蘇苔類植物の上下方から新鮮な空気が供給され植物の生育が促進されるだけでなく、蘇苔類植物が支持体によって嵩上げされているため大雨などによって大量の水分が供給された場合でも余分な水分は流れ落ち、適切な量の水を蘇苔類植物に保水させることができる。
【0009】
しかしながら特許文献1には蘇苔類植物担持体を屋上やベランダ、バルコニー、壁面等に設置することができること、担持体が複数連結可能となっていることが記載されているだけで、具体的にどのように設置するのかについては全く記載されていなかった。特に担持体を平面的にただ置くだけでは設置することができない屋根等の傾斜面や、壁などの法面についてはその設置方法が不明であり、例えばネジや釘などを用いてこれを屋根面等に固定するとすると、屋根等の防水層が途切れ雨漏りの原因となるおそれがあった。
【0010】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、近年広く用いられているガルバリウム鋼板などの金属薄板材を用いた金属屋根や金属壁、特に、凸部となるレール状の瓦棒部分でその側端をはぜ継ぎにより連結した構造の金属屋根や金属壁において、漏水の心配もほとんどなくその緑化を簡易に実現することができる緑化システムおよび緑化パネルの取付方法を提供することを目的とする。
なお本発明は、金属屋根等の腐食を防ぐことができるだけでなくこれを保護することでその長寿命化を図ることができるといった副次的効果も有している。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記問題を解決するために本発明は、ガルバリウム鋼板などの金属薄板材を、レール状の凸部となる瓦棒(12)部分でその側端をはぜ継ぎにより連結した構造の金属屋根や金属壁に適用することで、屋根面(14)や壁面の緑化を図るための緑化システムであって、略矩形状の金属薄板の対向する二辺を折り曲げることで形成した二条の脚部(16)と、該脚部によって嵩上げされ、かつ、蘇苔類植物が貼着された緑化面(18)とを有する緑化パネル(22)と、金属屋根等のはぜ継ぎ部分(24)に下側から挿嵌されるとともに、該緑化パネルの四隅を止着するためのL字型断面の取付金具(26)と、からなり、隣り合う瓦棒間の屋根面等に前記緑化パネルを複数枚並べ、これを前記取付金具によって金属屋根等に固定する、ことを特徴とする。
なお金属屋根等とは金属屋根や金属壁のことを、屋根面等とは屋根面や壁面のことを指している。
【0012】
ここで、前記取付金具(26)は隣り合う瓦棒(12)間の屋根面(14)等に並べた前記緑化パネル(22)を連結する、ことが好ましい。
【0013】
また、前記緑化パネル(22)は、隣り合う瓦棒(12)間の屋根面(14)等に並べた際に、隣接する緑化パネル間にスリット状の開口ができるよう形成されている、ことが好ましい。
【0014】
さらに、前記緑化パネル(22)の緑化面(18)には、その一面に多数の小孔(28)が形成されている、ようにすることも好ましい。
【0015】
ここで、前記緑化パネル(22)の緑化面(18)の裏面には、水分を保持するための水分吸収体が取り付けられている、ことも好ましい。
【0016】
また本発明は、ガルバリウム鋼板などの長尺の金属薄板材を、凸部となるレール状の瓦棒(12)部分でその側端をはぜ継ぎにより連結した構造の金属屋根や金属壁に、蘇苔類植物が貼着された緑化面を有する緑化パネル(22)を取り付けるための緑化パネルの取付方法であって、L字型断面の取付金具(26)の一片を金属屋根等のはぜ継ぎ部分(24)に下側から挿嵌して固定し、蘇苔類植物が貼着された緑化面(18)を有する緑化パネルを、取付金具の他片に固定することで緑化パネルの緑化面が金属屋根等から浮いた状態で支持する、ことを特徴とする緑化パネルの取付方法をも提供する。
【0017】
ここで、前記取付金具(26)の一片に接着剤を塗布したのちに金属屋根等のはぜ継ぎ部分(24)に下側から挿嵌するか、前記取付金具(26)の一片を金属屋根等のはぜ継ぎ部分(24)に下側から挿嵌したあと、該取付金具に横方向からネジを挿通して取付金具をはぜ継ぎ部分に固定する、こともできる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ほとんどメンテナンスフリーな蘇苔類植物を緑化パネルに貼着して用いるため土壌を必要とせず、その結果として建物に荷重負担をほとんど与えることがなく、また、植物の根の成長による漏水発生の心配もなく、屋根面や壁面の緑化を簡易に実現することができる。これにより建物の温度変化を抑制して、ヒートアイランド現象の軽減にも貢献することができる。
また本発明では規格化された所定の構造を有する金属屋根や金属壁のはぜ継ぎ部分を利用することにより、屋根等の防水を破ることなく簡易に緑化パネルを取り付けることができ、また、その取り外しも容易に行うことができる。
さらに緑化パネルの緑化面が嵩上げされて屋根面等との間に空隙が形成されているため、余分な水は流れ落ちまた通気性も確保されるため、雨季などにおいても屋根等が常に湿った状態となることを避けることができる。
またこの緑化パネルは屋根面等を覆うように配設されるため屋根面等に直射日光があたることを防いでこれを保護するため、屋根等の長寿命化を図ることができる。
【0019】
ここで、取付金具が並べた緑化パネルを連結することで、簡易かつ整然と緑化パネルを配設することができるだけでなく、緑化パネルの取り付けの安定性を高めることができる。
【0020】
また緑化パネルを、これを並べた際に隣接する緑化パネルとの間にスリット状の開口部ができるように形成してやることで、屋根面等との間の通気性がよくなるとともに、この開口部から雨が屋根面に流れ落ちるため、豪雨の際にも緑化パネルに貼付した蘇苔類植物が大量の水流によって剥がれ落ちてしまうことを防ぐことができる。
【0021】
さらに、緑化パネルの緑化面一面に多数の小孔を形成してやれば、水はけを確保しつつ、通気性の向上を図ることができる。
【0022】
ここで、緑化面一面に多数の小孔を形成した緑化パネルの裏面に、高分子ポリマーなどの水分吸収体を取り付けてやれば、乾季などに乾燥が原因で蘇苔類植物が仮死状態となってしまうことをできるだけ回避することができる。
【0023】
また本発明の緑化パネルの取付方法では、金属屋根や金属壁の瓦棒箇所のはぜ継ぎ部分を利用してここに取付金具を挿嵌し、その取付金具を用いて緑化パネルを固定するため、簡易な方法で、かつ、屋根等の防水を破ることなく、緑化パネルの配設を行うことができる。
【0024】
ここで取付金具の挿嵌に際し接着剤を用い、また、取付金具をはぜ継ぎ部分に挿嵌した後に横方からネジを挿通して固定することで、より確実に取付金具をはぜ継ぎ部分に取り付けてやることができる。なおネジによる固定は、はぜ継部分において行うため、屋根等の防水を破ることにはならず、漏水の心配もほとんどない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明は、近年広く用いられているガルバリウム鋼板などの金属薄板材を用いた金属屋根や金属壁、特に、凸部となるレール状の瓦棒部分でその側端をはぜ継ぎにより連結した構造の金属屋根や金属壁に適用される緑化システムおよび緑化パネルの取付方法である。そのため、以下にまずかかる金属屋根等の構造について詳細に説明した後に、緑化システムを構成する緑化パネルおよびその取付金具について説明し、最後に緑化パネルの取付方法について説明する。
【0026】
図1に本発明の緑化システムを適用することができる金属屋根を斜視図で示した。
この金属屋根31は縦はぜ葺きと呼ばれる構造の金属屋根であり、約0.4〜1.6mm程度のガルバリウム鋼板、表面化粧鋼板、ステンレス鋼板、ラミネート鋼板、溶融亜鉛メッキ鋼板等の防錆処理鋼板、特殊鋼及び非鉄金属、アルミ合金板、鉛板、亜鉛板、チタン合金板、銅板等の金属薄板材をロール成形やプレス成形で長尺の所定形状に形成したものを、凸部となるレール状の瓦棒12部分でその側端を(立て)はぜ継ぎにより横方向に連結した構造となっている。
【0027】
図2に金属屋根を構成する各部材を分解して示した。
この金属屋根は屋根面14を構成することとなる屋根材33と、横方向に並べた隣り合う屋根材を連結するためにこれらの間に配置される凸部となるレール状の瓦棒材35と、瓦棒材の上面を覆い隣接する屋根材の端部および瓦棒材の端部と一体的に結合される瓦棒包み材37から構成されている。
【0028】
屋根材33は、横幅が45cmで対向する長辺側を90°折り曲げて6cm程度立設させてコの字型の断面形状とした長さが360cmの部材である。
瓦棒材35は、横幅が5cmで対向する長辺側を90°折り曲げて6cm程度立設させてコの字型の断面形状とした長さが360cmの部材である。
瓦棒包み材37は、横幅が5cmで対向する長辺側を90°折り曲げて2cm程度立設させ、かつ、折り曲げた長辺側の端部を深さ1cm程度の袋状に形成した略コの字型の断面形状とした長さが360cmの部材である。
この屋根材33、瓦棒材35、瓦棒包み材37は規格化されており、広く一般的に用いられているものである。
【0029】
図3に断面斜視図で示したように、屋根を葺く際には、防水シートを敷いたあとに屋根の傾斜方向を長手方向として屋根材33をコの字型断面が上を向くように横方向に並べる。また隣接する屋根材33の間にはコの字型断面が上を向くように瓦棒材35を配置する。このとき屋根材33の折り曲げて立設させた長辺と瓦棒材35の折り曲げて立設させた長辺とが合わさった状態となっている(図3(a))。
それから瓦棒材35の上側から、合わさった状態の屋根材33の長辺側の端部と瓦棒材の長辺側の端部がその袋状部分37aに差し込まれるように瓦棒包み材37を被せてやる(図3(b))。
その後、専用の工具を用いてその袋状部分37aを、屋根材33の長辺側端部と瓦棒材35の長辺側端部とともにかしめるように二つ折りして(立て)はぜ継ぎする。これによって、屋根材33が瓦棒材35を介して連結される(図3(c)(d))。
【0030】
このとき瓦棒材35は、屋根の傾斜方向にのびる凸部となるレール状をしており、図3(d)にその断面構造を示したように、はぜ継ぎした部分24は、瓦棒12の凸部上面から1cm程度垂直方向に突出した状態となっている。なお防水のためはぜ継ぎの折り返し部分は当然上側となっている。
【0031】
このようなはぜ継ぎ葺きの屋根はローコストに施工可能であるため最も一般的な構造の金属屋根である。なお屋根と同様の部材を用いまたほぼ同様の方法で、金属壁も施工することができる。
【0032】
次に、以上に説明した構造の金属屋根等に適用することで、その緑化を容易に実現するための緑化システムについて実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0033】
本実施例の緑化システムは、緑化面を形成することとなる緑化パネルと、この緑化パネルを金属屋根等に取り付けるための取付金具から構成されている。
【0034】
図4に緑化パネル22を形成する前の型抜きした材料を平面図で、図5にその材料を用いて形成した緑化パネルを、図6に取付金具26を斜視図で示した。
【0035】
この緑化パネル22は、約0.4〜1mm程度のガルバリウム鋼板、表面化粧鋼板、ステンレス鋼板、ラミネート鋼板、溶融亜鉛メッキ鋼板等の防錆処理鋼板、特殊鋼及び非鉄金属、アルミ合金板、鉛板、亜鉛板、チタン合金板、銅板等の金属薄板材を用いて形成されている。
すなわち図に示したような形状の横51cm、縦45cm程度の略矩形形状の金属薄板材を、破線でその横両側を1cm幅で直角に折り曲げてからさらに2cm幅で直角に折り曲げることでかぎ状に形成しており、また、縦両側を1cm幅で直角に折り曲げてある。
この緑化パネル22では、その横両側のかぎ状に折り曲げられた部分が緑化面18を2cmほど嵩上げする脚部16となっている。なお緑化パネル22の縦両側の折り曲げはパネルに強度を持たせるためのもので、緑化面18の四隅を除いた39cm程度の横幅で形成されている。換言すれば、緑化パネル22の緑化面18は、縦×横の幅が45cm×45cmでその縦両側辺にはその両端部を除き39cm程度の横幅で切り欠きが形成されている。
またこの緑化面18の四隅には、ネジを用いて後述する取付金具26と固定するための下穴39が1つづつ形成されている。なお図面に示した通りこの下穴39が形成された緑化面18の四隅の周りには脚部16は形成されていない。
また緑化パネル22の緑化面18には、砂ゴケに代表される蘇苔類植物が厚さ1cm程度のシート状に加工された状態で貼付されている。
【0036】
図6に示した取付金具26は厚さが1mm程度で縦×横が4cm×4cm程度の矩形の鋼板をその真中でL字型に屈曲させたものであり、屈曲させた一片には上記緑化パネル22の四隅に形成した下穴に対応した位置に来る取付穴41が2つ形成されている。この取付穴41は、縦方向に並べた2枚の緑化パネル22を取付金具26によって連結して固定するためのものである。
なお必要に応じて、取付金具26の取付穴のない一片の厚みが、先端側が薄くなるようにテーパー状に形成してやることも好ましい。これははぜ継ぎ部分24にこの取付金具26の一片を挿嵌しやすくしてやるためである。
【0037】
次に、以上に説明した緑化パネル22および取付金具26からなる緑化システムを、縦はぜ葺きの屋根に適用する際の施工手順について図7を用いて説明する。なお図7において緑化面18に貼着する蘇苔類植物は省略している。
[ステップ1]
まず取付金具26の取り付け位置を決定するために、緑化パネル22を仮置きするかメジャーを用いて正確に計ることにより屋根面への緑化パネルの配設位置をマーキングし、これに合わせて取付金具を配置する(図7(a))。
[ステップ2]
マーキングに基づき取付金具26の取付穴41が形成されていない一片を、金属屋根のはぜ継部分に下側から挿嵌する。このとき取付金具26の取付穴41が形成された一片は屋根面から2cm程度離れた位置に突出した状態となっている(図7(b))。
なお必要に応じて、取付金具26の一片に接着剤を塗布したのちに金属屋根のはぜ継ぎ部分24に挿嵌してやってもよい。こうすることでより堅固に取付金具26をはぜ継ぎ部分24に固定してやることができる。
[ステップ3]
緑化パネル22を予め位置決めした位置に置く。このとき緑化パネル22の四隅の下穴39と取付金具26の取付穴との位置は一致している。ここで緑化パネル22の四隅の下穴の周りには脚部16がないため緑化パネル22の緑化面18を取付金具26上に重ねることができる(図7(c))。
[ステップ4]
取付金具26上に重ねた緑化パネル22を、下穴39と取付穴41にネジ43を螺合してやることで屋根に固定する。なお取付金具26は縦方向に並べた2枚の緑化パネル22を連結して固定するが、緑化パネル22を縦方向に並べるとその縦両側の折り曲げが、隣接する緑化パネル22の間にスリット状の開口を形成することとなる(図7(d))。
[その他のステップ]
なお図面は省略するが、必要に応じて[ステップ2]の後で、はぜ継ぎ部分24に挿嵌した取付金具26に横方向からネジを挿通してはぜ継ぎ部分24に取付金具26を固定してやってもよい。こうすることで強固に取付金具26をはぜ継部分に固定してやることができる。なおこのネジ固定ははぜ継部分において行うため、屋根等の防水を破ることにはならず、漏水の心配もない。
【0038】
図8に緑化パネルを配設した金属屋根を有する住宅を斜視図で表した。図からも分かるように傾斜方向に隣接した緑化パネル22の間には、幅2cm程度のスリット上の開口が形成されている。
【0039】
以上に説明した本発明の緑化システムおよび緑化パネルの取付方法によれば、ほとんどメンテナンスフリーで土壌も必要としない蘇苔類植物を緑化パネルに貼着して用いるため、建物に荷重負担を与えることがない。また蘇苔類植物を用いるため植物の根の成長による漏水発生の心配もない。そのため建物の構造補強や防水処理の強化などのコストを要することなく、手軽に屋根面の緑化を実現することができ、ヒートアイランド現象の軽減にも貢献することができる。
また本発明では規格化された所定の構造を有する金属屋根のはぜ継ぎ部分を利用することで、防水を破ることなく簡易な方法によって屋根に緑化パネルを取り付けることができ、その取り外しも容易に行うことができる。
なお緑化パネルの緑化面が嵩上げされて屋根面との間に空隙が形成される構造となっているため、余分な水は流れ落ち、また通気性も確保されるため、屋根が常に湿った状態となることを避け屋根が腐食してしまうことを防ぐことができる。加えて緑化パネルが屋根面を覆うため、直射日光から屋根面を保護してその長寿命化を図ることができる。
【0040】
なお緑化パネルを並べた際に隣接する緑化パネル間にスリット状の開口が形成されるため、屋根面との間の通気性を向上させることができるとともに、この開口から雨を屋根面に流れ落とすことができる。
【実施例2】
【0041】
図9は実施例2の緑化システムに用いられる緑化パネル22を示した斜視図である。この緑化パネル22の構造は後述する点以外は実施例1のものと同じであるため、重複する構造については実施例1と同様の符号を付すことで重複した説明を省略する。
この緑化パネル22の緑化面18の四隅を除く一面には図に示したように直径3mm程度の多数の小孔28が形成されている。この小孔28の大きさは、小孔上をも繊維状の蘇苔類植物で覆うことができる程度の大きさとする。
なお緑化面18一面に多数の小孔28を形成する場合には、実施例1の図7(d)に示したような、隣接する緑化パネル間に形成されるスリット状の開口を設けないようにすることもできる。
【0042】
また図面には表れないがこの緑化面18の裏面にはメッシュ状の高分子吸収体のシートが水分吸収体として貼着されている。なおこのシートがメッシュ状となっているのは小孔28における水の往来を阻害しないためである。
【0043】
このように緑化パネルの緑化面に多数の小孔を形成し、また、その裏面に水分吸収体のシートを貼着することで、緑化面に貼着した蘇苔類植物の水はけを確保し、また、通気性の向上を図ることができ、さらに乾燥により蘇苔類植物が仮死状態となってしまうことを可能な限り回避することができる。
【0044】
なお上述の実施例は、屋根面の緑化をする場合を例として記述したが、屋根面の他にも同様の構造の壁面についても本発明を適用することができることは勿論である。
【実施例3】
【0045】
防音壁など防水処理の必要性があまりない壁面などについてその緑化を図る場合には、実施例1等では巻き込むように折り曲げてかぎ状に形成していた緑化パネル22の脚部16を、図10に示したように、脚部の先端側の屈曲が外側に開くように形成し、また、はぜ継ぎ部分24に挿嵌した際に取付穴41が形成された片の突出が大きくなる取付金具26を用いてやることができる。これにより、取付金具26によって緑化パネル22を壁面等を取り付けることができ、また必要に応じて外側に開くように形成した脚部16先端側の屈曲の下穴39にネジ43を螺合することで、壁面等にネジを用いて確実に緑化パネルを固定してやることができる。
なお脚部16の先端側の屈曲が外側に開くように形成した緑化パネル22を用いれば、はぜ継ぎ構造を有しない壁面等にも、ネジ43を用いて緑化パネルを固定してやることができるのは当然である。
【0046】
このように本発明によれば、特定構造の屋根面の緑化を容易に実現することができ、これにより、二酸化炭素の固定化、建物の温度変化の抑制による省エネ、ヒートアイランド現象の軽減ひいては地球温暖化の防止に貢献することができる。
また本発明の緑化パネルの取り付け・取り外しの容易性を生かして、例えば二酸化炭素排出権などの獲得を目的とする企業等に対し、本発明の緑化システムをリースするニュービジネスを展開することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の緑化システムが適用される金属屋根の斜視図である。
【図2】金属屋根を構成する各部材を斜視図である。
【図3】瓦棒部分ではぜ継ぎを行う際の作業手順を示した拡大図である。
【図4】緑化パネルを形成する前の型抜きした材料を示した図である。
【図5】実施例1の緑化パネルの斜視図である。
【図6】取付金具の斜視図である。
【図7】金属屋根への緑化システムを適用する際の作業手順を示した拡大図である。
【図8】緑化パネルを配設した金属屋根の斜視図である。
【図9】実施例2の緑化パネルの斜視図である。
【図10】実施例3の緑化パネルの斜視図である。
【符号の説明】
【0048】
12 瓦棒
14 屋根面
16 脚部
18 緑化面
22 緑化パネル
24 はぜ継ぎ部分
26 取付金具
28 小孔
31 金属屋根
33 屋根材
35 瓦棒材
37 瓦棒包み材
39 下穴
41 取付穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガルバリウム鋼板などの金属薄板材を、レール状の凸部となる瓦棒(12)部分でその側端をはぜ継ぎにより連結した構造の金属屋根や金属壁に適用することで、屋根面(14)や壁面の緑化を図るための緑化システムであって、
略矩形状の金属薄板の対向する二辺を折り曲げることで形成した二条の脚部(16)と、該脚部によって嵩上げされ、かつ、蘇苔類植物が貼着された緑化面(18)とを有する緑化パネル(22)と、
金属屋根等のはぜ継ぎ部分(24)に下側から挿嵌されるとともに、該緑化パネルの四隅を止着するためのL字型断面の取付金具(26)と、からなり、
隣り合う瓦棒間の屋根面等に前記緑化パネルを複数枚並べ、これを前記取付金具によって金属屋根等に固定する、ことを特徴とする緑化システム。
【請求項2】
前記取付金具(26)は隣り合う瓦棒(12)間の屋根面(14)等に並べた前記緑化パネル(22)を連結する、ことを特徴とする請求項1に記載の緑化システム。
【請求項3】
前記緑化パネル(22)は、隣り合う瓦棒(12)間の屋根面(14)等に並べた際に、隣接する緑化パネル間にスリット状の開口ができるよう形成されている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の緑化システム。
【請求項4】
前記緑化パネル(22)の緑化面(18)には、その一面に多数の小孔(28)が形成されている、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の緑化システム。
【請求項5】
前記緑化パネル(22)の緑化面(18)の裏面には、水分を保持するための水分吸収体が取り付けられている、ことを特徴とする請求項4に記載の緑化システム。
【請求項6】
ガルバリウム鋼板などの長尺の金属薄板材を、凸部となるレール状の瓦棒(12)部分でその側端をはぜ継ぎにより連結した構造の金属屋根や金属壁に、蘇苔類植物が貼着された緑化面を有する緑化パネル(22)を取り付けるための緑化パネルの取付方法であって、
L字型断面の取付金具(26)の一片を金属屋根等のはぜ継ぎ部分(24)に下側から挿嵌して固定し、
蘇苔類植物が貼着された緑化面(18)を有する緑化パネルを、取付金具の他片に固定することで緑化パネルの緑化面が金属屋根等から浮いた状態で支持する、ことを特徴とする緑化パネルの取付方法。
【請求項7】
前記取付金具(26)の一片に接着剤を塗布したのちに金属屋根等のはぜ継ぎ部分(24)に下側から挿嵌する、ことを特徴とする請求項6に記載の緑化パネルの取付方法。
【請求項8】
前記取付金具(26)の一片を金属屋根等のはぜ継ぎ部分(24)に下側から挿嵌したあと、該取付金具に横方向からネジを挿通して取付金具をはぜ継ぎ部分に固定する、ことを特徴とする請求項6又は7に記載の緑化パネルの取付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−110237(P2010−110237A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−283644(P2008−283644)
【出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【出願人】(598157720)株式会社エムビーエス (8)
【Fターム(参考)】