緑化用植枡
【課題】強度が高く長期間に亘って使用することができる上、高い保水性を発現させることが可能である反面、通気性にも優れており、広い範囲を低コストで緑化することが可能な緑化用植枡を提供する。
【解決手段】緑化用植枡1は、横長で中空の四角柱状に形成された外枠体6の底部に、帯状板材および棒状体からなる桟体7を格子状に張り巡らせることによって形成された金属製のトレイ2と、金属製の網状体3と、合成樹脂製の不織布に水苔を密生させた保水シート4と、再生セラミックスを主材料とする客土5とによって構成されている。
【解決手段】緑化用植枡1は、横長で中空の四角柱状に形成された外枠体6の底部に、帯状板材および棒状体からなる桟体7を格子状に張り巡らせることによって形成された金属製のトレイ2と、金属製の網状体3と、合成樹脂製の不織布に水苔を密生させた保水シート4と、再生セラミックスを主材料とする客土5とによって構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の屋上等を緑化する際に用いる機材(植枡)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ヒートアイランド現象等を緩和する目的や、潤いのある空間を形成する目的で、屋上の緑化が広く行われるようになってきている。そのような屋上を緑化する方法としては、人工の土壌を屋上のフロアに直接的に敷設し、その人工土壌に樹木を植栽する方法が利用されることもあるが、特許文献1の如く、客土を収納した合成樹脂製のトレイが用いられ、そのトレイ内で樹木を栽培する方法が採用されることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−325038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した合成樹脂製のトレイは、もともと強度が低い上、耐候性が悪く劣化しやすいため、長期間に亘って使用することが困難である。また、通気性が悪く、熱が籠もり易いため、建物の温度低下には貢献し難い。さらに、合成樹脂製のトレイは、大きなサイズのものを製作しにくいため、広範囲に亘って緑化したい場合には、多数用意する必要があるので、コスト高になってしまう。
【0005】
本発明の目的は、上記従来の緑化用の機材が有する問題点を解消し、強度が高く長期間に亘って使用することができる上、高い保水性を発現させることが可能である反面、通気性にも優れており、広い範囲を低コストで緑化することが可能な緑化用植枡を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の内、請求項1に記載された発明は、植物を栽培するための緑化用の植枡であって、扁平で中空な四角柱状の外枠体の底部に、複数の帯状板材を平行に配置するとともに、それらの帯状板材に交差するように棒状体を懸架することによって、格子状に桟体を張り巡らせてなる金属製のトレイと、そのトレイの内部の前記桟体の上側に敷設される透水性の網状体あるいは不織布と、その網状体あるいは不織布の上方に積層される水分を保持するための保水シートとを有することを特徴とするものである。
【0007】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記トレイが、格子状の桟体の下端を外枠体の底面よりも上方に位置させたものであることを特徴とするものである。
【0008】
請求項3に記載された発明は、請求項1、または請求項2に記載された発明において、前記保水シートが、シート状に植生させた水苔からなるものであることを特徴とするものである。
【0009】
請求項4に記載された発明は、請求項1〜3のいずれかに記載された発明において、前記外枠体の対向する一対の板材の上縁に、それぞれ、帯状の連結片が、異なる高さ位置で外向きに突出するように設けられていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項5に記載された発明は、請求項1〜4のいずれかに記載された発明において、前記保水シートの上側に、再生セラミックスを主材料とする客土が積層されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の緑化用植枡は、客土等を収納するためのトレイの強度が非常に高く、耐久性に優れているので、損傷しにくく、きわめて長期間に亘って使用することができる。さらに、非常に軽量であり、運搬、設置等の作業をきわめて容易に行うことができる。加えて、トレイが金属製のものであり、大きいサイズのものの製作が容易であるため、広範囲に亘る緑化に用いる場合には、合成樹脂製のものに比べて、コストを低く抑えることができる。また、水分の保持性が良好である上、通気性に優れており、熱を発散させることができるため、屋上等に設置した場合には、建物の温度の低減に寄与することができる。加えて、外枠体の高さを容易に変更できるため、保水シート上に積層する客土の材料に応じたフィルターを設置することができるので、客土が流出して屋根や屋上フロアを汚したり、雨水管を詰まらせたりする事態を生じさせない。
【0012】
さらに、金属製のトレイの外枠体、桟体(帯状板材)の少なくとも一部を、所謂、ハイテン鋼(鉄へのマンガン、シリコン、ニッケル、モリブデン等の合金元素の添加、あるいは焼入れ等によって得られる高張力鋼あるいは超高張力鋼で、490MPa〜1GPaの引張強度を有するSS490,SS1000等)によって形成すると、外枠体、帯状板材の厚みを低減させることが可能となるため、緑化用植枡を、より軽量なもの(あるいは一段と強度の高いもの)とすることができる。
【0013】
請求項2の緑化用植枡は、設置したフロアの表面と格子状の桟体の下端との間に隙間が形成されるため、より高い通気性および良好な排水性を発現させることができる。
【0014】
請求項3の緑化用植枡は、保水シートがきわめて良好な保水性を発現させるので、頻繁に水分を供給しなくても、長期間に亘って植物を生育させることが可能である。
【0015】
請求項4に記載の緑化用植枡は、外枠体の対向する板材に突設された連結片を利用して、他の緑化用植枡と容易に連結することができるため、暴風によって転覆する等の事態の発生を効果的に防止することができる。
【0016】
請求項5に記載の緑化用植枡は、瓦礫等を客土として再利用することが可能であるため、環境負荷を低く抑えることができる上、水分の保持性がきわめて良好である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】緑化用植枡を分解して示す説明図(斜視図)である。
【図2】緑化用植枡を分解して示す説明図(側面図)である。
【図3】トレイの側面図である。
【図4】トレイの平面図である。
【図5】トレイの背面図である。
【図6】トレイの断面を示す説明図である(aはA−A断面であり、bはB−B断面であり、cはC−C断面である)。
【図7】帯状板材を示す説明図(側面図)である。
【図8】棒状体を示す説明図である(aは側面図であり、bはaにおけるD−D線断面図である)。
【図9】複数の緑化用植枡を組み付けた状態を示す説明図(斜視図)である。
【図10】緑化用植枡同士の連結部分(連結片設置部分)を示す説明図(緑化用植枡の長手方向に沿った鉛直断面図)である。
【図11】連結部材を示す説明図(斜視図)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[緑化用植枡の構造]
以下、本発明に係る緑化用植枡について、図面に基づいて詳細に説明する。図1、図2は、本発明に係る緑化用植枡を示したものであり、緑化用植枡1は、トレイ2の内部に、網状体3、保水シート4、客土5を、下から順に積層することによって構成されている。
【0019】
図3〜5は、トレイ2を示したものであり、図6は、トレイ2の各部分の鉛直断面を示したものである。トレイ2は、金属(鋼鉄、所謂、ハイテン鋼(SS490))によって横長で中空の四角柱状に形成された外枠体6と、その外枠体6の内部(底部)に格子状に張り巡らされた金属(鋼鉄、所謂、ハイテン鋼(SS490))製の桟体7とによって構成されている。
【0020】
外枠体6は、側板材8a,8b、前板材9、および後板材10を溶接することによって形成されている。側板材8a,8bは、高さ×長さ×厚み=60mm×1,000mm×1.6mmの大きさを有しており、図6(a)の如く、下端に、幅約10mmの帯状の支持片11が、内向きに突出するように折り曲げ形成されている。
【0021】
また、前板材9は、高さ×長さ×厚み=58.4mm×500mm×1.6mmの大きさを有しており、厚み分(1.6mm)だけ側板材8a,8bよりも高さが低くなっている(すなわち、図6(b)の如く、下端が、側板材8a,8bの下端より1.6mm上方に位置した状態になっている)。そして、上端に、幅約30mmの帯状の連結片12aが、外向きに突出するように折り曲げ形成されている。さらに、当該連結片12aには、2つのボルト挿通孔19,19が穿設されている。
【0022】
一方、後板材10は、高さ×長さ×厚み=56.8mm×500mm×1.6mmの大きさを有しており、前板材9と同一の長さおよび厚みを有しているが、高さが1.6mmだけ(すなわち、厚み分だけ)前板材9よりも低くなっている(すなわち、図6(c)の如く、上端が、側板材8a,8bの上端より1.6mm下方に位置した状態になっている)。そして、前板材9と同様に、上端に、幅約30mmの帯状の連結片12bが、外向きに突出するように折り曲げ形成されており、当該連結片12bには、2つのボルト挿通孔19,19が穿設されている。
【0023】
そして、外枠体6においては、図6(a)〜(c)の如く、前板材9の上端の位置が、各側板材8a,8bの上端の位置と一致し、前板材9および後板材10の下端の位置は、各側板材8a,8bの支持片11の上面の位置と一致した状態になっている。加えて、上記の如く、後板材10の上端が、各側板材8a,8bの上端より、1.6mmだけ下方に位置した状態になっている。すなわち、外枠体6においては、後板材10の連結片12bの上面の位置が、前板材9の連結片12aの下面の位置と一致し、前板材9および後板材10の下端と、各側板材8a,8bの下端との間に、所定の長さ(約1.6mm)の隙間が形成された状態になっている。それゆえ、外枠体6の外径は、縦(奥行き)×横×高さ=500mm×1,060mm×60mmとなっている。
【0024】
一方、桟体7は、7枚の横長な帯状板材13,13・・と、9本の棒状体(ツイストバー)14,14・・とによって構成されている。図7は、帯状板材13を示したものであり、各帯状板材13,13・・は、高さ×長さ×厚み=19mm×1,000mm×1.6mmの大きさを有しており、上端際には、約100mmの間隔で、嵌合溝15,15・・が刻設されている。また、図8は、棒状体14を示したものであり、各棒状体14,14・・は、所謂、ツイストバーであり、約6mm径の長尺な六角柱状体を所定の間隔で捻った形状(62mm間隔で60度捻った形状)を有している。
【0025】
各帯状板材13,13・・は、約62mmの間隔で長手方向に沿って平行に(板面が鉛直方向を向くように)並べられた状態で、それぞれの両端縁が、外枠体6の前板材9、後板材10の内面に溶接されている。なお、各帯状板材13,13・・の下端の位置は、外枠体6の前板材9、後板材10の下端の位置と一致している(すなわち、各帯状板材13,13・・の下端と、各側板材8a,8bの下端との間に、所定の長さ(約1.6mm)の隙間が形成された状態になっている)。さらに、それらの帯状板材13,13・・には、棒状体14,14・・が、嵌合溝15,15・・を挿通した状態で、約100mmの間隔で幅方向に平行に懸架されており、各帯状板材13,13・・と各棒状体14,14・・との交点が溶接されている。さらに、各棒状体14,14・・の両端縁が、外枠体6の側板材8a,8bの内面に溶接されている。なお、上記したように、桟体7においては、平行に配置された帯状板材13,13・・に、捻り六角鋼である棒状体14,14・・が直交するように懸架されているので、帯状板材13,13・・が棒状体14,14・・に対して垂直かつ平行に保持され、バックリングの発生が防止される。
【0026】
上記の如く構成されたトレイ2においては、内部の上側(桟体7の上方)に、縦(奥行き)×横×高さ=496.8mm×1,000mm×41mmの扁平な直方体状の収納スペースが形成された状態になっている。
【0027】
また、網状体3は、ステンレス製の針金を所定の目付(ピッチ)で平織りしてなる金網(たとえば、線径0.45mmの針金を14メッシュの目付で平織りしてなる金網)であり、縦(奥行き)×横(幅)=490mm×990mmの大きさを有している。
【0028】
一方、保水シート4は、網状体と略同一の大きさ(490mm×990mm)に裁断した合成樹脂(ポリエステル)製の不織布の上面に、水苔を密生させたものである。
【0029】
さらに、客土5は、再生セラミックス30〜80重量部と、ピートモス10〜40重量部と、ゼオライト5〜40重量部と、化成肥料5〜10重量部とを混合してなるものであり、保水シート4の上に、約25mmの厚みとなるように敷き詰められている。なお、再生セラミックスは、瓦を粉砕した後に、その粉をバインダーにより平均粒径1〜10mm程度の球状に固化させてなるポーラスな球状体である。
【0030】
上記した客土5には、各種の植物(図1,2におけるP)を植生させることが可能であるが、たとえば、メキシコマンネングサ、ヨーロッパマンネン、コッシニウム、サカサマンネン、キリンソウ、タイトゴメ、モリムラマンネングサ、マルバマンネングサ等のセダム類の多年草の一種類あるいは複数種類を植生させるのが好ましい。また、それらのセダム類の多年草に、クローバ,シロツメグサ等のマメ科の植物や、ミント,ラベンダー等のハーブ類の植物を適宜組み合わせて植生させるのも好ましい。
【0031】
[緑化用植枡の使用方法・作用]
上記した緑化用植枡1は、屋上等の緑化したい場所に、1個あるいは複数個を敷設し、隣り合うもの同士(前後左右のもの同士)を連結して使用する。図9は、4個の緑化用植枡1,1・・(トレイ2,2・・)を連結させた状態を示したものであり、図10は、緑化用植枡1,1同士の連結部分を拡大して示したものである。前後に隣り合う緑化用植枡1,1同士を連結する際には、片方のトレイ2の後板材10の後方に、他方のトレイ2の前板材9を配置させて、前方のトレイ2の後板材10の連結片12bを、後方のトレイ2の前板板9の連結片12aと重ね合わせて、ボルト挿通孔19,19を利用して、ボルト16とナット17とで両者を締着する。上記の如く、各緑化用植枡1,1は、前板材9の連結片12aの高さと後板材10の連結片12bの高さとが異なっているため、前後の向きを合わせて、前側の緑化用植枡1の後板材10の連結片12bを、後側の緑化用植枡1の前板材9の連結片12aと重ね合わせた場合には、トレイ2(外枠体6)の下面が浮き上がってしまう等の事態が生じない。
【0032】
また、左右の緑化用植枡同士1,1を連結する際には、片方の緑化用植枡1のトレイ2の側板材8b(あるいは側板材8a)を、他方の緑化用植枡1のトレイ2の側板材8a(あるいは側板材8b)と接合させて、図11の如き、合成樹脂等によって形成された逆U字状の連結部材18等を利用して、それらの側板材8a,8bを挟持させる。
【0033】
そして、緑化用植枡1は、トレイ2(単独のもの、あるいは上記の如く他と連結したもの)の内部に、網状体3、保水シート4、客土5を、下から順に積層し、客土5に植物Pを植え付けて使用する。かかる緑化用植枡1,1・・は、客土5および保水シート4によって雨や供給された水分を長期間に亘って保持することができるので、植物の生育に適している。また、トレイ2の内部を帯状板材13の長手方向に沿って空気が流通可能である上、側板材8a,8bの支持片11の厚み分だけ、前板材9、後板材10および帯状板材13,13・・の下側に隙間が形成されており、当該隙間が空気を流入、排出させるため、きわめて良好な通気性を発現させることができる。加えて、栽培された植物に過剰な水分が供給された場合には、前板材9、後板材10の下側の隙間により、その過剰な水分を、速やかにトレイ2(外枠体6)の外部へ流下させることができる。
【0034】
[緑化用植枡の効果]
緑化用植枡1は、上記の如く、扁平で中空な四角柱状の外枠体6の底部に、複数の帯状板材13,13・・を平行に配置するとともに、それらの帯状板材13,13・・に直交するように棒状体14,14・・を懸架することによって、格子状に桟体7を張り巡らせてなる金属製のトレイ2と、そのトレイ2の内部の桟体7の上側に敷設される網状体3と、その網状体3の上方に積層される水分を保持するための保水シート4とを有するものである。したがって、緑化用植枡1は、トレイ2の強度が非常に高く、耐久性に優れているので、損傷しにくく、きわめて長期間に亘って使用することができる。さらに、非常に軽量であり、運搬、設置等の作業をきわめて容易に行うことができる。加えて、トレイ2が金属製のものであり、大きいサイズのものの製作が容易であるため、広範囲に亘る緑化に用いる場合には、合成樹脂製のものに比べて、コストを低く抑えることができる。また、水分の保持性が良好である上、通気性に優れており、熱を発散させることができるため、屋上等に設置した場合には、建物の温度の低減に寄与することができる。加えて、外枠体6の高さを容易に変更できるため、客土5の材料に応じたフィルターを設置することができるので、客土5が流出して屋根や屋上フロアを汚したり、雨水管を詰まらせたりする事態を生じさせない。
【0035】
また、緑化用植枡1は、トレイ2が格子状の桟体7の下端(すなわち、帯状板材13,13・・の下端)を外枠体6の底面(すなわち、支持片11,11の下面)よりも上方に位置させたものであるので、設置したフロアの表面と桟体7の下端との間に隙間が形成されるため、より高い通気性および良好な排水性を発現させることができる。
【0036】
加えて、緑化用植枡1は、保水シート4がシート状に植生させた水苔からなるものであり、保水シート4がきわめて良好な保水性を発現させるので、頻繁に水分を供給しなくても、長期間に亘って植物を生育させることが可能である。
【0037】
また、緑化用植枡1は、外枠体6の対向する一対の板材(前板材9および後板材10)の上縁に、それぞれ、連結用の帯状片(連結片12a,12b)が、異なる高さ位置で外向きに突出するように設けられているので、当該連結片12a,12bを利用して、他の緑化用植枡1と容易に連結することができるため、暴風によって転覆する等の事態の発生を効果的に防止することができる。
【0038】
さらに、緑化用植枡1は、保水シート4の上側に、再生セラミックスを主材料とする(すなわち、再生セラミックスの配合量が他の材料より多い)客土5を積層したものであるため、瓦礫等を客土5として再利用することが可能であるので、環境負荷を低く抑えることができる上、水分の保持性がきわめて良好である。
【0039】
[緑化用植枡の変更例]
なお、本発明に係る緑化用植枡の構成は、上記実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、トレイ、網状体(不織布)、保水シート、客土の材質、形状、構造等の構成を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。
【0040】
たとえば、トレイは、上記実施形態の如く、帯状板材と棒状体とによって格子状の桟体を構成したものに限定されず、複数の切り込みを長手方向に対して直交するように所定の間隔毎に設けた複数の帯状板材を、切り込み同士を噛み合わせるように組み付けることによって格子状の桟体を形成したものや、棒状体を格子状に溶接することにより桟体を形成したもの等に変更することも可能である。
【0041】
また、網状体は、上記実施形態の如く、金属製のものに限定されず、合成樹脂によって形成されたもの等に変更することも可能である。加えて、網状体の線径やピッチは、客土の種類等に応じて、適宜変更することができる。また、本発明に係る緑化用植枡には、上記実施形態の如き網状体の代わりに、合成樹脂等によって形成された不織布を用いることも可能である。
【0042】
さらに、保水シートは、上記実施形態の如く、ポリエステル製の不織布の上に水苔等の保水性を有する植物を密生させたものに限定されず、天然繊維や合成繊維からなる織布の上に保水性を有する植物を密生させたものでも良いし、シート状に密生させた水苔のみからなるものでも良い。
【0043】
一方、客土は、上記実施形態の如く、化成肥料を加えたものに限定されず、化成肥料が含まれていないものでも良いし、他の成分を加えたものでも良い。さらに、再生セラミックス、ピートモス、ゼオライトの混合比率も、上記実施形態の態様に限定されず、必要に応じて適宜変更することが可能であるし、再生セラミックス、ピートモス、ゼオライト等を単独であるいは2種のみを混合して用いることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の緑化用植枡は、上記の如く優れた効果を奏するものであるから、建物の屋上等を緑化するための機材として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0045】
1・・緑化用植枡
2・・トレイ
3・・網状体(不織布)
4・・保水シート
5・・客土
6・・外枠体
7・・桟体
12a,12b・・連結片
13・・帯状板材
14・・棒状体
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の屋上等を緑化する際に用いる機材(植枡)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ヒートアイランド現象等を緩和する目的や、潤いのある空間を形成する目的で、屋上の緑化が広く行われるようになってきている。そのような屋上を緑化する方法としては、人工の土壌を屋上のフロアに直接的に敷設し、その人工土壌に樹木を植栽する方法が利用されることもあるが、特許文献1の如く、客土を収納した合成樹脂製のトレイが用いられ、そのトレイ内で樹木を栽培する方法が採用されることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−325038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した合成樹脂製のトレイは、もともと強度が低い上、耐候性が悪く劣化しやすいため、長期間に亘って使用することが困難である。また、通気性が悪く、熱が籠もり易いため、建物の温度低下には貢献し難い。さらに、合成樹脂製のトレイは、大きなサイズのものを製作しにくいため、広範囲に亘って緑化したい場合には、多数用意する必要があるので、コスト高になってしまう。
【0005】
本発明の目的は、上記従来の緑化用の機材が有する問題点を解消し、強度が高く長期間に亘って使用することができる上、高い保水性を発現させることが可能である反面、通気性にも優れており、広い範囲を低コストで緑化することが可能な緑化用植枡を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の内、請求項1に記載された発明は、植物を栽培するための緑化用の植枡であって、扁平で中空な四角柱状の外枠体の底部に、複数の帯状板材を平行に配置するとともに、それらの帯状板材に交差するように棒状体を懸架することによって、格子状に桟体を張り巡らせてなる金属製のトレイと、そのトレイの内部の前記桟体の上側に敷設される透水性の網状体あるいは不織布と、その網状体あるいは不織布の上方に積層される水分を保持するための保水シートとを有することを特徴とするものである。
【0007】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記トレイが、格子状の桟体の下端を外枠体の底面よりも上方に位置させたものであることを特徴とするものである。
【0008】
請求項3に記載された発明は、請求項1、または請求項2に記載された発明において、前記保水シートが、シート状に植生させた水苔からなるものであることを特徴とするものである。
【0009】
請求項4に記載された発明は、請求項1〜3のいずれかに記載された発明において、前記外枠体の対向する一対の板材の上縁に、それぞれ、帯状の連結片が、異なる高さ位置で外向きに突出するように設けられていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項5に記載された発明は、請求項1〜4のいずれかに記載された発明において、前記保水シートの上側に、再生セラミックスを主材料とする客土が積層されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の緑化用植枡は、客土等を収納するためのトレイの強度が非常に高く、耐久性に優れているので、損傷しにくく、きわめて長期間に亘って使用することができる。さらに、非常に軽量であり、運搬、設置等の作業をきわめて容易に行うことができる。加えて、トレイが金属製のものであり、大きいサイズのものの製作が容易であるため、広範囲に亘る緑化に用いる場合には、合成樹脂製のものに比べて、コストを低く抑えることができる。また、水分の保持性が良好である上、通気性に優れており、熱を発散させることができるため、屋上等に設置した場合には、建物の温度の低減に寄与することができる。加えて、外枠体の高さを容易に変更できるため、保水シート上に積層する客土の材料に応じたフィルターを設置することができるので、客土が流出して屋根や屋上フロアを汚したり、雨水管を詰まらせたりする事態を生じさせない。
【0012】
さらに、金属製のトレイの外枠体、桟体(帯状板材)の少なくとも一部を、所謂、ハイテン鋼(鉄へのマンガン、シリコン、ニッケル、モリブデン等の合金元素の添加、あるいは焼入れ等によって得られる高張力鋼あるいは超高張力鋼で、490MPa〜1GPaの引張強度を有するSS490,SS1000等)によって形成すると、外枠体、帯状板材の厚みを低減させることが可能となるため、緑化用植枡を、より軽量なもの(あるいは一段と強度の高いもの)とすることができる。
【0013】
請求項2の緑化用植枡は、設置したフロアの表面と格子状の桟体の下端との間に隙間が形成されるため、より高い通気性および良好な排水性を発現させることができる。
【0014】
請求項3の緑化用植枡は、保水シートがきわめて良好な保水性を発現させるので、頻繁に水分を供給しなくても、長期間に亘って植物を生育させることが可能である。
【0015】
請求項4に記載の緑化用植枡は、外枠体の対向する板材に突設された連結片を利用して、他の緑化用植枡と容易に連結することができるため、暴風によって転覆する等の事態の発生を効果的に防止することができる。
【0016】
請求項5に記載の緑化用植枡は、瓦礫等を客土として再利用することが可能であるため、環境負荷を低く抑えることができる上、水分の保持性がきわめて良好である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】緑化用植枡を分解して示す説明図(斜視図)である。
【図2】緑化用植枡を分解して示す説明図(側面図)である。
【図3】トレイの側面図である。
【図4】トレイの平面図である。
【図5】トレイの背面図である。
【図6】トレイの断面を示す説明図である(aはA−A断面であり、bはB−B断面であり、cはC−C断面である)。
【図7】帯状板材を示す説明図(側面図)である。
【図8】棒状体を示す説明図である(aは側面図であり、bはaにおけるD−D線断面図である)。
【図9】複数の緑化用植枡を組み付けた状態を示す説明図(斜視図)である。
【図10】緑化用植枡同士の連結部分(連結片設置部分)を示す説明図(緑化用植枡の長手方向に沿った鉛直断面図)である。
【図11】連結部材を示す説明図(斜視図)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[緑化用植枡の構造]
以下、本発明に係る緑化用植枡について、図面に基づいて詳細に説明する。図1、図2は、本発明に係る緑化用植枡を示したものであり、緑化用植枡1は、トレイ2の内部に、網状体3、保水シート4、客土5を、下から順に積層することによって構成されている。
【0019】
図3〜5は、トレイ2を示したものであり、図6は、トレイ2の各部分の鉛直断面を示したものである。トレイ2は、金属(鋼鉄、所謂、ハイテン鋼(SS490))によって横長で中空の四角柱状に形成された外枠体6と、その外枠体6の内部(底部)に格子状に張り巡らされた金属(鋼鉄、所謂、ハイテン鋼(SS490))製の桟体7とによって構成されている。
【0020】
外枠体6は、側板材8a,8b、前板材9、および後板材10を溶接することによって形成されている。側板材8a,8bは、高さ×長さ×厚み=60mm×1,000mm×1.6mmの大きさを有しており、図6(a)の如く、下端に、幅約10mmの帯状の支持片11が、内向きに突出するように折り曲げ形成されている。
【0021】
また、前板材9は、高さ×長さ×厚み=58.4mm×500mm×1.6mmの大きさを有しており、厚み分(1.6mm)だけ側板材8a,8bよりも高さが低くなっている(すなわち、図6(b)の如く、下端が、側板材8a,8bの下端より1.6mm上方に位置した状態になっている)。そして、上端に、幅約30mmの帯状の連結片12aが、外向きに突出するように折り曲げ形成されている。さらに、当該連結片12aには、2つのボルト挿通孔19,19が穿設されている。
【0022】
一方、後板材10は、高さ×長さ×厚み=56.8mm×500mm×1.6mmの大きさを有しており、前板材9と同一の長さおよび厚みを有しているが、高さが1.6mmだけ(すなわち、厚み分だけ)前板材9よりも低くなっている(すなわち、図6(c)の如く、上端が、側板材8a,8bの上端より1.6mm下方に位置した状態になっている)。そして、前板材9と同様に、上端に、幅約30mmの帯状の連結片12bが、外向きに突出するように折り曲げ形成されており、当該連結片12bには、2つのボルト挿通孔19,19が穿設されている。
【0023】
そして、外枠体6においては、図6(a)〜(c)の如く、前板材9の上端の位置が、各側板材8a,8bの上端の位置と一致し、前板材9および後板材10の下端の位置は、各側板材8a,8bの支持片11の上面の位置と一致した状態になっている。加えて、上記の如く、後板材10の上端が、各側板材8a,8bの上端より、1.6mmだけ下方に位置した状態になっている。すなわち、外枠体6においては、後板材10の連結片12bの上面の位置が、前板材9の連結片12aの下面の位置と一致し、前板材9および後板材10の下端と、各側板材8a,8bの下端との間に、所定の長さ(約1.6mm)の隙間が形成された状態になっている。それゆえ、外枠体6の外径は、縦(奥行き)×横×高さ=500mm×1,060mm×60mmとなっている。
【0024】
一方、桟体7は、7枚の横長な帯状板材13,13・・と、9本の棒状体(ツイストバー)14,14・・とによって構成されている。図7は、帯状板材13を示したものであり、各帯状板材13,13・・は、高さ×長さ×厚み=19mm×1,000mm×1.6mmの大きさを有しており、上端際には、約100mmの間隔で、嵌合溝15,15・・が刻設されている。また、図8は、棒状体14を示したものであり、各棒状体14,14・・は、所謂、ツイストバーであり、約6mm径の長尺な六角柱状体を所定の間隔で捻った形状(62mm間隔で60度捻った形状)を有している。
【0025】
各帯状板材13,13・・は、約62mmの間隔で長手方向に沿って平行に(板面が鉛直方向を向くように)並べられた状態で、それぞれの両端縁が、外枠体6の前板材9、後板材10の内面に溶接されている。なお、各帯状板材13,13・・の下端の位置は、外枠体6の前板材9、後板材10の下端の位置と一致している(すなわち、各帯状板材13,13・・の下端と、各側板材8a,8bの下端との間に、所定の長さ(約1.6mm)の隙間が形成された状態になっている)。さらに、それらの帯状板材13,13・・には、棒状体14,14・・が、嵌合溝15,15・・を挿通した状態で、約100mmの間隔で幅方向に平行に懸架されており、各帯状板材13,13・・と各棒状体14,14・・との交点が溶接されている。さらに、各棒状体14,14・・の両端縁が、外枠体6の側板材8a,8bの内面に溶接されている。なお、上記したように、桟体7においては、平行に配置された帯状板材13,13・・に、捻り六角鋼である棒状体14,14・・が直交するように懸架されているので、帯状板材13,13・・が棒状体14,14・・に対して垂直かつ平行に保持され、バックリングの発生が防止される。
【0026】
上記の如く構成されたトレイ2においては、内部の上側(桟体7の上方)に、縦(奥行き)×横×高さ=496.8mm×1,000mm×41mmの扁平な直方体状の収納スペースが形成された状態になっている。
【0027】
また、網状体3は、ステンレス製の針金を所定の目付(ピッチ)で平織りしてなる金網(たとえば、線径0.45mmの針金を14メッシュの目付で平織りしてなる金網)であり、縦(奥行き)×横(幅)=490mm×990mmの大きさを有している。
【0028】
一方、保水シート4は、網状体と略同一の大きさ(490mm×990mm)に裁断した合成樹脂(ポリエステル)製の不織布の上面に、水苔を密生させたものである。
【0029】
さらに、客土5は、再生セラミックス30〜80重量部と、ピートモス10〜40重量部と、ゼオライト5〜40重量部と、化成肥料5〜10重量部とを混合してなるものであり、保水シート4の上に、約25mmの厚みとなるように敷き詰められている。なお、再生セラミックスは、瓦を粉砕した後に、その粉をバインダーにより平均粒径1〜10mm程度の球状に固化させてなるポーラスな球状体である。
【0030】
上記した客土5には、各種の植物(図1,2におけるP)を植生させることが可能であるが、たとえば、メキシコマンネングサ、ヨーロッパマンネン、コッシニウム、サカサマンネン、キリンソウ、タイトゴメ、モリムラマンネングサ、マルバマンネングサ等のセダム類の多年草の一種類あるいは複数種類を植生させるのが好ましい。また、それらのセダム類の多年草に、クローバ,シロツメグサ等のマメ科の植物や、ミント,ラベンダー等のハーブ類の植物を適宜組み合わせて植生させるのも好ましい。
【0031】
[緑化用植枡の使用方法・作用]
上記した緑化用植枡1は、屋上等の緑化したい場所に、1個あるいは複数個を敷設し、隣り合うもの同士(前後左右のもの同士)を連結して使用する。図9は、4個の緑化用植枡1,1・・(トレイ2,2・・)を連結させた状態を示したものであり、図10は、緑化用植枡1,1同士の連結部分を拡大して示したものである。前後に隣り合う緑化用植枡1,1同士を連結する際には、片方のトレイ2の後板材10の後方に、他方のトレイ2の前板材9を配置させて、前方のトレイ2の後板材10の連結片12bを、後方のトレイ2の前板板9の連結片12aと重ね合わせて、ボルト挿通孔19,19を利用して、ボルト16とナット17とで両者を締着する。上記の如く、各緑化用植枡1,1は、前板材9の連結片12aの高さと後板材10の連結片12bの高さとが異なっているため、前後の向きを合わせて、前側の緑化用植枡1の後板材10の連結片12bを、後側の緑化用植枡1の前板材9の連結片12aと重ね合わせた場合には、トレイ2(外枠体6)の下面が浮き上がってしまう等の事態が生じない。
【0032】
また、左右の緑化用植枡同士1,1を連結する際には、片方の緑化用植枡1のトレイ2の側板材8b(あるいは側板材8a)を、他方の緑化用植枡1のトレイ2の側板材8a(あるいは側板材8b)と接合させて、図11の如き、合成樹脂等によって形成された逆U字状の連結部材18等を利用して、それらの側板材8a,8bを挟持させる。
【0033】
そして、緑化用植枡1は、トレイ2(単独のもの、あるいは上記の如く他と連結したもの)の内部に、網状体3、保水シート4、客土5を、下から順に積層し、客土5に植物Pを植え付けて使用する。かかる緑化用植枡1,1・・は、客土5および保水シート4によって雨や供給された水分を長期間に亘って保持することができるので、植物の生育に適している。また、トレイ2の内部を帯状板材13の長手方向に沿って空気が流通可能である上、側板材8a,8bの支持片11の厚み分だけ、前板材9、後板材10および帯状板材13,13・・の下側に隙間が形成されており、当該隙間が空気を流入、排出させるため、きわめて良好な通気性を発現させることができる。加えて、栽培された植物に過剰な水分が供給された場合には、前板材9、後板材10の下側の隙間により、その過剰な水分を、速やかにトレイ2(外枠体6)の外部へ流下させることができる。
【0034】
[緑化用植枡の効果]
緑化用植枡1は、上記の如く、扁平で中空な四角柱状の外枠体6の底部に、複数の帯状板材13,13・・を平行に配置するとともに、それらの帯状板材13,13・・に直交するように棒状体14,14・・を懸架することによって、格子状に桟体7を張り巡らせてなる金属製のトレイ2と、そのトレイ2の内部の桟体7の上側に敷設される網状体3と、その網状体3の上方に積層される水分を保持するための保水シート4とを有するものである。したがって、緑化用植枡1は、トレイ2の強度が非常に高く、耐久性に優れているので、損傷しにくく、きわめて長期間に亘って使用することができる。さらに、非常に軽量であり、運搬、設置等の作業をきわめて容易に行うことができる。加えて、トレイ2が金属製のものであり、大きいサイズのものの製作が容易であるため、広範囲に亘る緑化に用いる場合には、合成樹脂製のものに比べて、コストを低く抑えることができる。また、水分の保持性が良好である上、通気性に優れており、熱を発散させることができるため、屋上等に設置した場合には、建物の温度の低減に寄与することができる。加えて、外枠体6の高さを容易に変更できるため、客土5の材料に応じたフィルターを設置することができるので、客土5が流出して屋根や屋上フロアを汚したり、雨水管を詰まらせたりする事態を生じさせない。
【0035】
また、緑化用植枡1は、トレイ2が格子状の桟体7の下端(すなわち、帯状板材13,13・・の下端)を外枠体6の底面(すなわち、支持片11,11の下面)よりも上方に位置させたものであるので、設置したフロアの表面と桟体7の下端との間に隙間が形成されるため、より高い通気性および良好な排水性を発現させることができる。
【0036】
加えて、緑化用植枡1は、保水シート4がシート状に植生させた水苔からなるものであり、保水シート4がきわめて良好な保水性を発現させるので、頻繁に水分を供給しなくても、長期間に亘って植物を生育させることが可能である。
【0037】
また、緑化用植枡1は、外枠体6の対向する一対の板材(前板材9および後板材10)の上縁に、それぞれ、連結用の帯状片(連結片12a,12b)が、異なる高さ位置で外向きに突出するように設けられているので、当該連結片12a,12bを利用して、他の緑化用植枡1と容易に連結することができるため、暴風によって転覆する等の事態の発生を効果的に防止することができる。
【0038】
さらに、緑化用植枡1は、保水シート4の上側に、再生セラミックスを主材料とする(すなわち、再生セラミックスの配合量が他の材料より多い)客土5を積層したものであるため、瓦礫等を客土5として再利用することが可能であるので、環境負荷を低く抑えることができる上、水分の保持性がきわめて良好である。
【0039】
[緑化用植枡の変更例]
なお、本発明に係る緑化用植枡の構成は、上記実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、トレイ、網状体(不織布)、保水シート、客土の材質、形状、構造等の構成を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。
【0040】
たとえば、トレイは、上記実施形態の如く、帯状板材と棒状体とによって格子状の桟体を構成したものに限定されず、複数の切り込みを長手方向に対して直交するように所定の間隔毎に設けた複数の帯状板材を、切り込み同士を噛み合わせるように組み付けることによって格子状の桟体を形成したものや、棒状体を格子状に溶接することにより桟体を形成したもの等に変更することも可能である。
【0041】
また、網状体は、上記実施形態の如く、金属製のものに限定されず、合成樹脂によって形成されたもの等に変更することも可能である。加えて、網状体の線径やピッチは、客土の種類等に応じて、適宜変更することができる。また、本発明に係る緑化用植枡には、上記実施形態の如き網状体の代わりに、合成樹脂等によって形成された不織布を用いることも可能である。
【0042】
さらに、保水シートは、上記実施形態の如く、ポリエステル製の不織布の上に水苔等の保水性を有する植物を密生させたものに限定されず、天然繊維や合成繊維からなる織布の上に保水性を有する植物を密生させたものでも良いし、シート状に密生させた水苔のみからなるものでも良い。
【0043】
一方、客土は、上記実施形態の如く、化成肥料を加えたものに限定されず、化成肥料が含まれていないものでも良いし、他の成分を加えたものでも良い。さらに、再生セラミックス、ピートモス、ゼオライトの混合比率も、上記実施形態の態様に限定されず、必要に応じて適宜変更することが可能であるし、再生セラミックス、ピートモス、ゼオライト等を単独であるいは2種のみを混合して用いることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の緑化用植枡は、上記の如く優れた効果を奏するものであるから、建物の屋上等を緑化するための機材として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0045】
1・・緑化用植枡
2・・トレイ
3・・網状体(不織布)
4・・保水シート
5・・客土
6・・外枠体
7・・桟体
12a,12b・・連結片
13・・帯状板材
14・・棒状体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物を栽培するための緑化用の植枡であって、
扁平で中空な四角柱状の外枠体の底部に、複数の帯状板材を平行に配置するとともに、それらの帯状板材に交差するように棒状体を懸架することによって、格子状に桟体を張り巡らせてなる金属製のトレイと、
そのトレイの内部の前記桟体の上側に敷設される透水性の網状体あるいは不織布と、
その網状体あるいは不織布の上方に積層される水分を保持するための保水シートとを有することを特徴とする緑化用植枡。
【請求項2】
前記トレイが、格子状の桟体の下端を外枠体の底面よりも上方に位置させたものであることを特徴とする請求項1に記載の緑化用植枡。
【請求項3】
前記保水シートが、シート状に植生させた水苔からなるものであることを特徴とする請求項1、または請求項2に記載の緑化用植枡。
【請求項4】
前記外枠体の対向する一対の板材の上縁に、それぞれ、帯状の連結片が、異なる高さ位置で外向きに突出するように設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の緑化用植枡。
【請求項5】
前記保水シートの上側に、再生セラミックスを主材料とする客土が積層されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに緑化用植枡。
【請求項1】
植物を栽培するための緑化用の植枡であって、
扁平で中空な四角柱状の外枠体の底部に、複数の帯状板材を平行に配置するとともに、それらの帯状板材に交差するように棒状体を懸架することによって、格子状に桟体を張り巡らせてなる金属製のトレイと、
そのトレイの内部の前記桟体の上側に敷設される透水性の網状体あるいは不織布と、
その網状体あるいは不織布の上方に積層される水分を保持するための保水シートとを有することを特徴とする緑化用植枡。
【請求項2】
前記トレイが、格子状の桟体の下端を外枠体の底面よりも上方に位置させたものであることを特徴とする請求項1に記載の緑化用植枡。
【請求項3】
前記保水シートが、シート状に植生させた水苔からなるものであることを特徴とする請求項1、または請求項2に記載の緑化用植枡。
【請求項4】
前記外枠体の対向する一対の板材の上縁に、それぞれ、帯状の連結片が、異なる高さ位置で外向きに突出するように設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の緑化用植枡。
【請求項5】
前記保水シートの上側に、再生セラミックスを主材料とする客土が積層されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに緑化用植枡。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−70672(P2012−70672A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218194(P2010−218194)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(392012238)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(392012238)
【Fターム(参考)】
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