説明

緑化舗装とその施工方法

【課題】耐荷重性能の向上のみならず緑化面積比率の上昇をも図ることができる緑化舗装とその施工方法を提供すること。
【解決手段】路床1の上側に積層した複数の路盤材6によって形成され、路盤材6間に空隙9を内包する路盤2と、前記路盤2上に横臥する複数のほぼ板状の荷重分散材3と、二以上の前記荷重分散材3に交差する状態で架け渡された複数の支持材4と、該支持材4に支持された状態で前記路盤2を覆い上面が平面状であるとともに上面側から下面側に通じる複数の貫通孔5aを有する被覆材5とを備え、前記路盤2の空隙9内及び路盤2の上側に形成される空間内に植生基盤材10,12を保持させてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が進入する走行路や駐車場等のエリアにおける緑化舗装の技術に関し、特に重量の大きい車両が進入するエリアでの実施に好適な緑化舗装の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用舗装などアスファルトやコンクリートを使用していた従来の高強度舗装に代替するものとして、舗装部分において芝等の植物の繁茂を積極的に図ることができる緑化舗装があり、斯かる緑化舗装を施した緑化走行路や緑化駐車場等では、その舗装部分における車両の走行・停止に支障を来さないようにしつつ、舗装部分で生育を図る植物が車両に踏まれて枯死するのを防ぐ必要がある。そのため、斯かる舗装緑化を行うに当たっては、その舗装部分に、植物が生育可能な軟らかい地盤と、車両等の荷重に耐えられる強固な地盤を併せ持たせることが肝要であり、この矛盾する条件を同時に解決しなければならない。
【0003】
そこで、従来の緑化舗装として、植物が生育可能な構造を持たせた路盤の表面に、樹脂製でマット状の踏圧防止材を敷設するものがある。すなわち、この踏圧防止材は、上向きに延び均一な高さで先端が平坦な突起と、路盤からの植物が挿通する穴とを多数備え、隣接する前記突起同士の間隔はタイヤ幅に比べて十分小さく、緑化舗装を施したエリアを通過する車両のタイヤの接地は必ず各突起の上端部においてなされるようにし、また、前記穴を挿通する植物の生長点にタイヤが届かないように突起を十分長くしたことをもって植物を保護しようとするものである。
【0004】
しかし、上記緑化舗装では踏圧防止材の強度、耐久性に問題があり、特に、踏圧防止材上で静止したトレーラー等の超大型車のハンドルが切られ、踏圧防止材の一部の突起のみに水平方向の極大荷重が集中した場合に、その荷重に耐えられず踏圧防止材が破壊されてしまうおそれがある。
【0005】
そこで、特許文献1に記載されているように、強度の高い格子枠状のブロックを踏圧防止材として用いる緑化舗装がある。
【0006】
【特許文献1】特許第3238096号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1の緑化舗装では、踏圧防止材の占める面積が大きくなる分、緑化面積が小さくなってしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、上記の問題点を踏まえて成されたものであって、耐荷重性能の向上のみならず緑化面積比率の上昇をも図ることができる緑化舗装とその施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明が講じた技術的手段は、次の通りである。即ち、請求項1に係る発明の緑化舗装は、路床の上側に積層した複数の路盤材によって形成され、路盤材間に空隙を内包する路盤と、前記路盤上に横臥する複数のほぼ板状の荷重分散材と、二以上の前記荷重分散材に交差する状態で架け渡された複数の支持材と、該支持材に支持された状態で前記路盤を覆い上面が平面状であるとともに上面側から下面側に通じる複数の貫通孔を有する被覆材とを備え、前記路盤の空隙内及び路盤の上側に形成される空間内に植生基盤材を保持させてある。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の緑化舗装であって、平面視において前記荷重分散材と支持材とが互いに直交して格子状を呈するようにしてある。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載の緑化舗装であって、前記支持材により水平方向に隔てられた隣接する空間同士をつなぐ貫通孔を該支持材に設けてある。
【0012】
請求項4に係る発明の緑化舗装の施工方法は、請求項1〜3のいずれかに記載の緑化舗装を施工するにあたり、施工対象地に積層した路盤材によって形成され空隙を内包する路盤の上に荷重分散材、支持材、被覆材をこの順に設けるとともに、路盤が内包する空隙及び路盤の上側に形成される空間内に植生基盤材を注入することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1〜4に係る発明により、耐荷重性能の向上のみならず緑化面積比率の上昇をも図ることができる緑化舗装とその施工方法が得られる。
【0014】
すなわち、請求項1〜3に係る発明では、被覆材に掛かる荷重(主に鉛直下向きの荷重)は、被覆材を支持する各支持材に分散し、さらに各支持材と接する荷重分散材によって分散された上で路盤に伝達される。従って、路盤の単位面積当たりに掛かる力が非常に小さくなるので、従来の緑化舗装よりも大きな荷重に耐えることができる緑化舗装が得られる。
【0015】
さらに、前記被覆材の上面から路盤の下層までの間に車両等の荷重が掛からない空間を創出可能であり、この空間内に緑化部分(植生基盤材や、植生基盤材から生育する植物)を配置すれば、緑化部分を車両による踏圧等から保護することができ、植物の生長を良好かつ確実に図ることができる。
【0016】
その上、前記植物は路盤の上側の植物基盤材の層のみならずその下方の路盤内の植生基盤材の層にまで根を伸ばすことができるので、それだけ強く植物を根づかせることができ、長期間にわたる安定した緑化の実現が可能となる。
【0017】
加えて、被覆材の上で静止したトレーラー等の超大型車のハンドルが切られても、被覆材はその際に水平方向の荷重を受けにくい構造(上面がほぼ平面となっている構造)を有しているので、その荷重に耐えられず破壊されてしまうということはない。
【0018】
しかも、被覆材の下方の空間の全体にわたって緑化を図ることができるので、緑化面積比率も大幅に高まることとなる。
【0019】
請求項2に係る発明では、平面視において前記荷重分散材と支持材とが互いに直交して格子状を呈するようにしたことにより、被覆材に掛かる荷重を非常に効率よく分散させることができる。
【0020】
請求項3に係る発明では、前記貫通孔が水分の通り道となり、路盤の上側に注入した植生基盤材の保水状態を全体にわたって均一化することができ、植物の生育により好適な環境を形成することができる。
【0021】
一方、請求項4に係る発明では、上述した緒効果を有する緑化舗装を簡易に施工できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。ここで、図1及び図2は本発明の一実施の形態に係る緑化舗装とその施工方法の構成を概略的に示す説明図及び断面図、図3(A)〜(C)は前記緑化舗装の施工方法における路盤2の形成工程を概略的に示す説明図、図4は前記緑化舗装の施工方法における植生基盤材10の注入工程を概略的に示す説明図である。
【0023】
本実施形態における緑化舗装は、図1及び図2に示すように、施工対象域の地面(路床)1の上側に形成した路盤2と、この路盤2上に横臥する複数のほぼ板状の荷重分散材3と、二以上の前記荷重分散材3に交差する状態で架け渡された複数の支持材4と、該支持材4に支持された状態で前記路盤2を覆う被覆材5とを備えている。尚、図1には、その左側に完成状態の緑化舗装を、中央には完成状態の緑化舗装から被覆材5を取り除いた状態の緑化舗装を、右側には路盤2上に荷重分散材3と支持材4とを設けたのみの状態にある未完成の緑化舗装をそれぞれ示している。
【0024】
以下、前記緑化舗装の詳細な構成の説明も兼ねて、本実施の形態に係る緑化舗装の施工方法について述べる。当該緑化舗装の施工方法は、以下の工程(1)〜(8)よりなる。
【0025】
(1)先ず、前記路盤2を形成するに当たり、図3(A)に示すように、例えば施工対象域の地表を掘り下げて(あるいは施工対象域の周囲に壁を形成して)、緑化舗装形成用のスペースを設け、路床1の整形・転圧を行う。
【0026】
(2)次いで、図3(B)に示すように、路床1に路盤材(本実施形態では砕石)6を所定厚さ(例えば、10〜30cm程度)に敷設して、ロードローラー、タイヤローラー、振動締固め機等の転圧機械で転圧する。
【0027】
前記路盤材6は、10〜100mm(好ましくは30〜50mm)の粒径を有する硬質粒体であり、例えば砕石や砂利(バラスト)の他、一定の強度(施工後の路盤2の状態を保つことができる強度)を有するものであれば、スラグ等の鉱滓を用いることもできる。
【0028】
(3)このようにして、積層した路盤材6の表面を水平にして路盤2を形成した後、図3(C)に示すように、路盤2の上から接着性溶液(本実施形態ではセメントミルク)7を平面視格子状に撒いて流し込む。これにより、接着性溶液7は自然と重力で下に流れて行き、一部の路盤材6同士を格子状且つ3次元的に連結(接合)させ、その結果、路盤2の厚み内で且つ上部側のみに、格子状の荷重分散構造体8を形成する。そして、このとき、図3(C)に示すように、路盤2は連続した空隙9を内包する状態となっており、この空隙9は、前記荷重分散構造体8を形作らない路盤材6間のみならず(図3(C)の左下拡大図参照)、荷重分散構造体8の一部となった路盤材6間にも形成されており(図3(C)の右下拡大図参照)、当然のことながら、両路盤材6間にも形成されている。
【0029】
前記接着性溶液7としては、セメントミルクの他に、水分と反応して硬化するウレタン系樹脂等を採用することができる。
【0030】
(4)しかる後、図4に示すように、路盤2が内包する前記空隙9に植生基盤材10を注入する。尚、図4には、植生基盤材10を水11に混ぜて流動化しておき、これを路盤2の上に撒いて空隙9に流し込む方法を示しているが、前記空隙9に植生基盤材10を注入する方法はこれに限らず、例えば、植生基盤材10に十分な流動性等があれば、水11に混ぜずに植生基盤材10のみを路盤2の上に撒くことも可能である。
【0031】
前記植生基盤材10としては、保水材としての良質土、砂、ピートモス、木材チップ、藁、バーク堆肥、シュロ等の繊維状有機材料、肥沃土、パーライト等の土壌改良剤等、及び、これらの混合物を用いることができる。尚、植生基盤材10は、種子や肥料を含有していてもよい。
【0032】
(5)その後、図1及び図2に示すように、前記路盤2の上に前記荷重分散材3を横臥状態で複数設ける。このとき、荷重分散材3同士が平面視において互いに平行となるように且つ等間隔に配置する。尚、荷重分散材3は、路盤2上に載置するだけでもよいし、適宜の固定具あるいは接着剤を用いて路盤2上に固定してもよい。
【0033】
前記荷重分散材3には、一定の強度があり、変形や腐食をしない材質が適しており、例えば鋼鉄などの金属製、強化樹脂(例えばFRP)などの合成樹脂製、セメント製、木製その他の材質からなる板等を荷重分散材3として用いることができる。尚、図1には長板状の外観を呈する荷重分散材3を示しているが、荷重分散材3の形状はこれに限らず、例えば角柱状や半円柱状等の形状であってもよい。
【0034】
(6)続いて、図1及び図2に示すように、二以上(本実施形態では三以上)の前記荷重分散材3に交差する状態で複数の支持材4を架け渡す。このとき、支持材4同士が平面視において互いに平行となるように且つ等間隔に配置するのであり、本実施形態では荷重分散材3と支持材4とが平面視において互いに直交して格子状を呈するように配置する。尚、支持材4は、荷重分散材3上に載置するだけでもよいし、適宜の固定具あるいは接着剤を用いて荷重分散材3上に固定してもよい。
【0035】
前記支持材4には、一定の強度があり、変形や腐食をしない材質が適しており、例えば鋼鉄などの金属製、強化樹脂(例えばFRP)などの合成樹脂製、セメント製その他の材質からなる板等を支持材4として用いることができる。尚、図1及び図2には、上部及び下部が中間部よりも肉厚である形状(I形鋼)の支持材4を示しているが、支持材4の形状はこれに限らず、例えば角柱状や長板状等の形状であってもよく、支持材4はH形鋼等であってもよい。
【0036】
(7)次いで、図1及び図2に示すように、前記支持材4の上に前記被覆材5を敷設し、支持材4に被覆材5を支持させるとともに、被覆材5により路盤2全体を覆う。尚、図1及び図2には、二つの支持材4に被覆材5を架け渡してその左右縁を支持材4に支持させるようにしているが、これに限らず、例えば一つあるいは三つ以上の支持材4に被覆材5を支持させてもよい。また、被覆材5は、支持材4上に載置するだけでもよいし、適宜の固定具あるいは接着剤を用いて支持材4上に固定してもよい。
【0037】
前記被覆材5には、一定の強度があり、変形や腐食をしない材質が適しており、例えばグレーチング材が適していると考えられるが、その他にも、鋼鉄などの金属製、強化樹脂(例えばFRP)などの合成樹脂製等が被覆材5の材質として考えられる。
【0038】
また、前記被覆材5は、図1に示すように、平面視ほぼ矩形状をしており、上面が平面状であるとともにその上面側から下面側に通じる通水用及び植物生育用の複数の貫通孔5aを有している。すなわち、被覆材5は平面視格子状あるいは網状を呈する形状をしている。ここで、被覆材5の表面(上面)は車両のタイヤ等の接地面となるので、摩擦抵抗の大きい性状をしていることが好ましく、例えば、タイヤの滑り止め作用を発揮するように多数の突起を被覆材5の表面(上面)に設けておいたり、被覆材5の表面側に摩擦抵抗の大きい性状の層を形成しておくことが望ましい。
【0039】
尚、被覆材5の構成は上記のものに限らないが、上述のように被覆材5は車両のタイヤ等の接地面となるので、タイヤが落ち込むような大きな穴や溝等を被覆材5に設けるのは望ましくない。
【0040】
(8)最後に、図1及び図2に示すように、路盤2の上側に形成される空間内に植生基盤材12を客土して植生層を形成する。
【0041】
前記植生基盤材12には前記植生基盤材10と同様のものを用いることができ、植生基盤材12の客土も植生基盤材10の注入と同様に行える他、吹付け等の手段を用いて植生基盤材12の客土を行うこともできる。尚、植生基盤材10,12として、同一のものを用いてもよいし、異なるものを用いてもよい。例えば、植生基盤材10には種子を含ませず、植生基盤材12のみに種子を含ませることも可能である。
【0042】
また、前記植生基盤材12を客土して形成する層(植生層)の高さは、被覆材5の上面と同一高さであってもよく、これより適宜低くしてあってもよい。本実施形態では、植生基盤材10、12から生育する植物の生長点を確実に保護するために、図1及び図2に示すように、植生基盤材12の層の高さを被覆材5の下面よりも下側に設定してある。
【0043】
上記工程(1)〜(8)を行う緑化舗装の施工方法及びこれにより形成される緑化舗装では、以下の効果が得られる。すなわち、まず、被覆材5に掛かる荷重(主に鉛直下向きの荷重)は、被覆材5を支持する各支持材4に分散し、さらに各支持材4と接する荷重分散材3によって分散された上で路盤2に伝達される。従って、路盤の単位面積当たりに掛かる力が非常に小さくなるので、従来の緑化舗装よりも大きな荷重に耐えることができる緑化舗装が得られる。そして、特に前記荷重分散材3は、1本の長さを長くすればするほど面積が増加し、それだけ荷重分散性能が向上することになる。
【0044】
また、路盤2の厚み内に格子状の荷重分散構造体8が形成されているので、これによっても車両等のより大きな荷重に耐えることができる。即ち、路盤材6同士が連結されておらず単に転圧されているだけであれば、荷重は路盤材6同士が接している点と点を繋いでその荷重方向へ伝わっていくため、局所的に荷重が掛かってしまうことになるが、路盤材6同士を格子状且つ3次元的に連結することで、荷重は鉛直方向だけでなく水平方向へも伝達されることとなり、荷重を面で支えることが可能となり、荷重を分散させて単位面積当たりに作用する力を小さくすることができる。また、荷重分散構造体8を形成する路盤材6同士が格子状且つ3次元的に連結されているので、路盤材6同士が擦りあわされて磨耗し、空隙9が小さくなったり、目減りして路盤2が沈下してしまうようなことが極めて起こりにくくなっている。
【0045】
殊に、上記の構成によれば、格子状の荷重分散構造体8を路盤2の上部側だけに形成してあるため、格子状の荷重分散構造体8(路盤材6の固化部)で均一に受けた荷重を荷重分散構造体8の下に存在する固化されていない路盤材6で更に分散させることができ、荷重の集中による路床(地面)1の沈み込みを抑制できる。即ち、路盤2の厚み全てを固化させると、その下の路床(地面)1に荷重が掛かることになり、余りに大きな荷重が伝播してしまうと、地面が沈み込んでしまう恐れがある。この点、固化部を路盤2の上半分程度に抑えることによって、固化部で均一に受けた荷重を固化部の下に存在する路盤材6で更に分散させることができるため、このような不都合を回避でき、より好適である。
【0046】
しかも、連続した空隙9を有する荷重分散構造体8を格子状とすることにより、つまり、路盤材6を格子状に固化させることで、路盤2を上から見た状態で路盤材6の固化箇所と非固化箇所が規則的に混在し、路盤材6の非固化箇所では、固化箇所と比較して空隙9を大きくとることができるため、舗装全面の砕石を固化させる場合に比べて、より多くの植生基盤材10を保持させることが可能であり、これによって植物の生育環境を向上することができる。また、接着性溶液7としてセメントミルクを用いているが、路盤材6の固化箇所と非固化箇所が混在することによって、セメント分によるアルカリ害が生じる恐れをも低減できる。
【0047】
また、前記被覆材5と路盤2の間に車両等の荷重が掛からない空間を創出してあり、この空間内に緑化部分(植生基盤材12や、植生基盤材10,12から生育する植物)を配置してあるので、緑化部分を車両による踏圧等から保護することができ、植物の生長点が傷つくことなく、植物の生長を良好かつ確実に図ることができる。
【0048】
さらに、前記植物は植物基盤材12の層のみならずその下方の植物基盤材10の層にまで根を伸ばすことができるので、それだけ強く植物を根づかせることができ、長期間にわたる安定した緑化の実現が可能となる。
【0049】
その上、被覆材5の上で静止したトレーラー等の超大型車のハンドルが切られても、被覆材5はその際に水平方向の荷重を受けにくい構造(上面がほぼ平面となっている構造)を有しているので、その荷重に耐えられず破壊されてしまうということはない。
【0050】
しかも、被覆材5の下方の空間の全体にわたって緑化を図ることができるので、緑化面積比率も大幅に高まることとなる。
【0051】
また、路盤材6が接着性溶液7でコーティングされる前の段階で、換言すれば、路盤材6のみの状態で転圧できるため(上記工程(2)参照)、形成する路盤2の上面を容易に水平とすることができ、転圧機械への接着性溶液7の付着がない。
【0052】
なお、本発明は、本実施形態に限らず、種々に変形して実施することができる。そこで、以下にその変形例について説明する。もちろん、以下に示す各変形例どうしを適宜組み合わせることができることはいうまでもない。
【0053】
本実施形態の上記工程(1)では、路床1の上に直接路盤材6を積層しているが、路床1と路盤材6との間に別の部材を設けてあってもよい。
【0054】
また、本実施形態の上記工程(2)では転圧しているが、この転圧を省いて次工程(3)を行ってもよく、逆に、上記工程(2)を行って工程(3)を省略してもよく、両工程(2)、(3)を省いてもよい。
【0055】
また、本実施形態の上記工程(3)において形成する荷重分散構造体8の各格子のサイズや非固化部間の間隔は任意に設定できるが、面として荷重を分散させるためには、接着性溶液7を撒く面積を路盤2面積全体の30%以上とすることが望ましい。また、路盤2に流し込む接着性溶液7の粘度を調整することにより、例えば、流し込み初期では、粘度の低い(流動性の高い)接着性溶液7を用い、流し込み終期では接着性溶液7の粘性を高めることによって、下層固化部の空隙9を小さく(強度を大きく)しながらも、上層固化部では空隙9を大きくして、植物の根が生育するスペースが大きくすることができる。接着性溶液7としてセメントミルクを用いる場合には、水セメント比の調整に加えて急結剤などの利用も可能である。
【0056】
加えて、本実施形態の上記工程(3)では、荷重分散構造体8が路盤2の上部側のみに形成されるように接着性溶液7の投入量を調整してあるが、これに限らない。すなわち、接着性溶液7の投入量を増やし、例えば、図5に示すように、路盤2の厚み全てを格子状に固化させ、路盤2の下部側にまで達する荷重分散構造体8を形成したり、或いは、格子状固化部の下端側の一部が繋がった状態に固化させて実施することも可能である。
【0057】
そして、例えば図5に示す荷重分散構造体8を形成する場合、前記工程(3)において、接着性溶液7の投入量を増やすなどして、前記荷重分散構造体8内に、連続した前記空隙9が形成されない部分を設け、図5に示すように、この荷重分散構造体8により仕切られた区画の一部を、前記植生基盤材10を収容しないブランク区画Bとしてもよい。この場合には、路盤2が有する排水性能を格段に向上させることができる。但し、この場合、工程(3)の後に行われる工程(8)において注入する植生基盤材12が前記ブランク区画B内に入らないようにする必要がある。
【0058】
さらに、前記工程(3)において形成する荷重分散構造体8の形状は、格子状に限らず、格子状である場合と同等の機能、作用が得られれば、他の形状であってもよい。
【0059】
また、上記工程(4)の植生基盤材10の注入を、例えば前記工程(7)と(8)の間に行ってもよい。
【0060】
また、上記工程(4)の植生基盤材10の注入の後において、路盤2の上面の凹凸が激しい場合は、図6に示すように、路盤2の上に不陸修正層(砂の層)Hを形成する事が好適である。
【0061】
また、本実施形態の上記工程(6)で用いる支持材4には、前記支持材4により水平方向に隔てられた隣接する空間同士をつなぐ貫通孔、すなわち水平方向の貫通孔(図示していない)を設けておくことが望ましい。これは、前記貫通孔が水分の通り道となり、緑化舗装の完成後に、工程(8)で注入した植生基盤材12の全体にわたって保水状態を均一化することができるからである。そして、強度を維持することができるのであれば、前記貫通孔を大きくしておくことにより、水平方向への植物の生長を妨げる事も回避可能となり、緑化面でより好ましい構造が得られる。
【0062】
また、本実施形態の上記工程(7)において、部分的に被覆材5を設けないようにしてもよく、その場所では草本類のみならず樹木も生育させることが可能となり、この場合、景観性の向上や緑陰による快適空間の創出を図ることができる。
【0063】
さらに、本実施形態の上記工程(7)において、被覆材5に設ける貫通孔5aのサイズを、被覆材5の下方から生長してきた植物が通過できる程度に大きくしておくことにより、前記植物の良好な生育を促すことができるが、植物の通過が不可能な程度に貫通孔5aを小さくしてあってもよい。この場合、被覆材5の下方の空間でのみ植物が生育することになり、被覆材5の上側にまで延びた植物の刈り取り等の手入れが不要になるとともに、被覆材5上に停止させた車両に乗り降りする者の衣服等に植物の葉等が付着してしまい、乗車時に植物の一部が持ち込まれてしまうという不都合を未然に防止することも可能となる。
【0064】
また、本実施形態の上記工程(6)において、荷重分散材3の上に支持材4を固定せずに載置するのみの場合には、支持材4が荷重分散材3上をスライドしてしまうことを防止するために、荷重分散材3にスライド防止部(例えば突起)を設けることが好適である。同様に、本実施形態の上記工程(7)において、支持材4の上に被覆材5を固定せずに載置するのみの場合には、被覆材5が支持材4上をスライドしてしまうことを防止するために、支持材3にスライド防止部(例えば突起)を設けることが好適である。
【0065】
また、荷重分散材3の配置の仕方は上記工程(5)に示すものに限られず、支持材4の配置の仕方も上記工程(6)に示すものに限られない。例えば、複数の荷重分散材3を重ならないように多方向に向けて(互いに平行にせずに)配置してもよく、同様に、支持材4も荷重分散材3の上に、多方向に向けて(互いに平行にせずに)配置してもよい。どのように配置するにしても、支持材4から荷重分散材3へと伝達された荷重が前記荷重分散構造体8にしっかりと掛かるようにしておくことが必要である。
【0066】
また、本実施形態では、植生基盤材12の客土(工程(8))を、被覆材5の設置(工程(7))の後に行っているが、被覆材5の設置の前に行ってもよい。
【0067】
また、緑化舗装の路盤2上を緑化する手法としては、上述したように、注入する植生基盤材10,12に種子・肥料などを含有させる方法の他に、前記植生基盤材12の層と被覆材5との間に、例えば、図7に示すように、張芝体13を敷設してもよく、図8に示すように、植生シート(水溶性シートの裏面に種子や肥料を担持させたもの)14を敷設してもよい。また、他所で生育させた植物(芝やセダムなど)を根茎ごと剥ぎ取って移植させる事も可能であり、この場合は施工直後から緑化がなされる事となり好適である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の一実施の形態に係る緑化舗装とその施工方法の構成を概略的に示す説明図である。
【図2】前記緑化舗装の構成を概略的に示す側面図である。
【図3】(A)〜(C)は前記緑化舗装の施工方法における路盤の形成工程を概略的に示す説明図である。
【図4】前記緑化舗装の施工方法における植生基盤材の注入工程を概略的に示す説明図である。
【図5】前記緑化舗装における荷重分散構造体の変形例の構成を概略的に示す斜視図である。
【図6】前記緑化舗装とその施工方法において不陸修正層を形成する変形例を概略的に示す説明図である。
【図7】前記緑化舗装とその施工方法の変形例を概略的に示す説明図である。
【図8】前記緑化舗装とその施工方法の他の変形例を概略的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0069】
1 路床
2 路盤
3 荷重分散材
4 支持材
5 被覆材
6 路盤材
7 接着性溶液
8 荷重分散構造体
9 空隙
10 植生基盤材
12 植生基盤材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
路床の上側に積層した複数の路盤材によって形成され、路盤材間に空隙を内包する路盤と、前記路盤上に横臥する複数のほぼ板状の荷重分散材と、二以上の前記荷重分散材に交差する状態で架け渡された複数の支持材と、該支持材に支持された状態で前記路盤を覆い上面が平面状であるとともに上面側から下面側に通じる複数の貫通孔を有する被覆材とを備え、前記路盤の空隙内及び路盤の上側に形成される空間内に植生基盤材を保持させてある緑化舗装。
【請求項2】
平面視において前記荷重分散材と支持材とが互いに直交して格子状を呈する請求項1に記載の緑化舗装。
【請求項3】
前記支持材により水平方向に隔てられた隣接する空間同士をつなぐ貫通孔を該支持材に設けてある請求項1または2に記載の緑化舗装。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の緑化舗装を施工するにあたり、施工対象地に積層した路盤材によって形成され空隙を内包する路盤の上に荷重分散材、支持材、被覆材をこの順に設けるとともに、路盤が内包する空隙及び路盤の上側に形成される空間内に植生基盤材を注入することを特徴とする緑化舗装の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−256950(P2009−256950A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−106625(P2008−106625)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【出願人】(000231431)日本植生株式会社 (88)
【Fターム(参考)】