線形センサアレイによる高速かつ正確な時間分解分光法
線形センサアレイを使用した分光法を提供する。スペクトルの時間分解分析は、電荷転送デバイス感光性ピクセルセルの1次元アレイを照射し、集積回路に感光性セルと並置されたそれぞれのストレージセル(行ストレージレジスタ)に感光性セルにおける電荷を定期的に非破壊的に複写することによって実行される。ストレージセルの少なくとも一部に格納された電荷に関する情報は、集積回路の外部の構成要素に供給される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、本明細書においてその全内容が引用により組み込まれている2007年2月23日に出願の米国特許仮出願出願番号第60/891、320号からの優先権を請求するものである。
【0002】
本発明は、時間分解分光法と、開始イベントに対して時間的に遅延したスペクトルの取得及び分析とに関し、より具体的には、線形センサアレイを使用したそのような分光法に関する。
【背景技術】
【0003】
励起された材料のサンプルによって生成されるスペクトルの分析は、構成元素の相対濃度を含むサンプルの元素組成に関する情報をもたらすことができる。このような分析は、金属再利用施設における金属の種類の特定及び分離と、工場及び科学捜査作業における品質管理試験とを含む多くの状況において行われている。一部の分光システムでは、直接読み取り光電子増倍管(PMT)システムは、多くの場合にスペクトルの僅かな部分のみ(典型的には、130nmから500nmまでのスペクトルの数パーセント未満)を網羅する解析的に関連のある波長に設定された複数のPMTを使用する。
【0004】
一部の事例においては、スペクトルの時間分解又はスペクトルの時間的結果の分析は、サンプルの組成に関して付加的な又は他の方法で得られると考えられるものよりも正確な情報を提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許仮出願出願番号第60/891、320号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】James G.Mainprize他著「デジタルマモグラフィのためのスロット走査式フォトダイオードアレイ/CCD混成検出器」、2002年6月25日、医学生物物理学部、トロント大学、サニーブルック、及び女子大保健科学センター、トロント、オンタリオ、M4N3M5、カナダ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の2次元電荷結合デバイス(CCD)は、時間分解スペクトルデータを捕捉するのに使用されることがあるが、ある一定の用途での使用を妨げる時間分解の制限を受けやすい。このようなCCDデバイスは、行及び列に配置された感光性ピクセルを含む。1つの作動モードにおいて、ピクセルの1行以外の全ての行を遮蔽することができるので、1つの遮蔽されていない行のみが露出される。各ピクセルがスペクトルの異なる部分に露出されるように、スペクトルは、CCDピクセルの露出された行の上に投影される。光子生成電荷は、露出されたピクセルの1つ又はそれよりも多くの下に蓄積する。全ての行に格納された電荷は、定期的に、それぞれの隣接した行に移動する(シフトされる)。すなわち、露出されたピクセル内の電荷は、第1の遮蔽された行に移動し、第1の遮蔽された行の電荷は、第2の遮蔽された行に移動するなどである。露出された行から電荷を移動させることにより、その行のピクセルから電荷を一掃する。最終行の電荷は、デバイスから読み出される。このアーキテクチャは、いずれかの露出されたピクセルに蓄積された電荷が、電荷を読み取出すことができる前に対応する列の全てのピクセルを通って移動する必要があるので、比較的質が悪い信号対ノイズ特性をもたらし、撮像デバイスの迅速な循環を容易にしない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の好ましい実施形態により、時間分解によって光を分析する方法を提供する。本方法は、(a)各感光性セルがスペクトルの異なる部分によって照射され、それによって1組の感光性セル内に電荷を生成するように、電荷転送デバイス感光性ピクセルセルの1次元アレイをスペクトルで照射する段階、(b)感光性セル内の電荷を、集積回路内に感光性セルと並置されたそれぞれのストレージセルの第1の組に非破壊的に複写する段階、(c)集積回路内のストレージセルの異なる組に対してこの前の段階を定期的に繰り返す段階、及び(d)ストレージセルの少なくとも一部に格納された電荷に関する情報を集積回路の外部の構成要素に供給する段階を有する。
【0009】
本発明の代替的な実施形態により、本方法は、電荷を非破壊的に複写する段階の繰返しの少なくとも一部に対して電荷を感光性セルに蓄積させる更に別の段階を含むことができる。更に、本方法は、感光性セルの部分集合における電荷を一掃する付加的な段階と、更に、電荷が一掃されることになる感光性セルの部分集合を特定する付加的な段階とを有することができる。
【0010】
本方法は、集積回路上の少なくとも2、000の感光性セルと、ピクセルセル当り少なくとも16のストレージセルとを準備する段階を更に含むことができる。本発明の一部の実施形態では、格納された電荷に関する情報は、それ自体、集積回路の外部にあるメモリに格納される。格納された電荷に関する情報は、ストレージセルの全て又は部分集合に関連する場合があり、選択されたストレージセルを識別する情報は、外部の構成要素から受け取ることができる。
【0011】
本方法はまた、格納された電荷に関する提供された情報を分析して、スペクトルを生成するのに使用されるサンプルの少なくとも1つの元素成分を識別する段階を含むことができる。
【0012】
本発明の他の実施形態により、各感光性セルがスペクトルの異なる部分によって照射され、それによって感光性セルのそれぞれに電荷を生成するように、電荷転送デバイス感光性ピクセルセルの1次元アレイをスペクトルで照射する段階、感光性セル内の電荷を、集積回路上にピクセルセルと並置されたそれぞれのストレージセルに定期的に非破壊的に複写する段階、及びストレージセルの少なくとも1つにおける電荷が所定の値を超える場合に電荷に関する情報をメモリに格納する段階を有する方法を提供する。
【0013】
本発明の一部の実施形態では、メモリは、集積回路上にピクセルセルと並置することができる。本方法は、少なくとも1つのストレージセルに対応する少なくとも1つの感光性ピクセルセル内の電荷を一掃する更に別の段階、及び露出時間が所定の値を超える場合に電荷に関する情報をメモリに格納する更に別の段階を含むことができる。特に、少なくとも1つのストレージセルに対応する少なくとも1つの感光性ピクセルセル内の電荷は、一掃することができる。更に、本方法はまた、メモリに格納された情報をピクセル毎の方式で合計する段階を含むことができる。
【0014】
本発明の更に別の実施形態では、所定の時間量が経過した場合に、ストレージセルの少なくとも1つにおける電荷に関する情報は、いずれかの対応する感光性ピクセルセル内の電荷を一掃することなくメモリに格納される。
【0015】
本発明の更に別の実施形態では、電荷転送デバイス感光性ピクセルセルの数は、波長のピクセル番号への動的可変登録を考慮するような方法で、露出された電荷転送デバイス感光性ピクセルセルの特定の数を超える。
【0016】
本発明の別の態様により、電荷転送デバイス感光性ピクセルセルのアレイを有する集積回路を提供する。更に、集積回路は、電荷ストレージセルの複数の組を有し、ストレージセルの各組に対して、その組の各ストレージセルは、電荷を感光性ピクセルセルからストレージセルに複写するために感光性ピクセルセルの異なるセルに結合している。最後に、集積回路は、光子生成電荷をピクセルセルからストレージセルの連続する組に定期的に非破壊的に複写するように作動する第1の制御論理と、ストレージセルの少なくとも1つに格納された電荷に関する情報を集積回路の外部の構成要素に供給するように作動する第2の制御論理とを有する。
【0017】
本発明の他の実施形態により、集積回路はまた、各感光性ピクセルセルに関連する複数のプリアンプを有することができる。感光性ピクセルセルのアレイは、1次元又は2次元とすることができ、具体的には、1次元アレイに配置された少なくとも2、000のピクセルを有することができる。感光性ピクセルセル当り少なくとも16組の電荷ストレージセルがある場合がある。第2の制御論理は、ストレージセルの全てよりも少ないセルに格納された電荷に関する情報を集積回路の外部の構成要素に供給するように作動することができ、ストレージセルに格納された電荷に関する情報は、集積回路の外部の構成要素によってランダムにアドレス可能である。
【0018】
ある一定の実施形態では、全てよりも少ないピクセルセルを識別する情報を受け取り、識別されたピクセルセルに格納された光子生成電荷を一掃するように作動する第3の制御論理を提供することができる。第2の制御論理は、ストレージセルの少なくとも1つに格納された電荷に関する情報を外部の構成要素にアナログ信号又はデジタル信号のいずれかとして供給するように作動することができる。
【0019】
本発明の他の実施形態により、集積回路はまた、各感光性ピクセルセルに関連する複数のプリアンプを有することができる。本発明の別の態様により、波長と基準イベントに続く時間とによって定められる2次元マニホルド上の1つ又はそれよりも多くの関連領域を形成するために使用することができるコンピュータベースのグラフィカルユーザインタフェースを提供する。インタフェースは、関連の波長、時間的ゲート開始時間、及びユーザ入力を受け取るための時間的ゲート継続時間を示すメニューを有する。インタフェースはまた、ユーザ指定の関連波長、ゲート開始時間、及び時間的ゲート継続時間をユーザ指定の関連領域内に集める関連領域モジュールと、ユーザ指定の関連領域を循環ROI待ち行列にグループ分けするためのソフトウエアモジュールとを有する。最後に、インタフェースは、ユーザ指定の関連領域に従ってピクセル問い合わせ及びデータストレージ機能を実行するための執行モジュールを有し、執行モジュールはまた、ユーザ指定の関連領域が特定の最大ピクセル信号を超える信号を含むか否かを判断するための比較器を含むことができる。
【0020】
本発明の他の態様は、1つ又はそれよりも多くのスカラー値を空間{あらゆる次元数}の順序付けされた要素に関連付けるための撮像システムのダイナミックレンジを拡張する方法を提供し、スカラー値は、励起に対する信号応答を特徴付け、空間の順序付けされた要素は、空間の順序付けされた要素の部分集合として定められた少なくとも1つの関連領域を含み、各関連領域は、閾値時間によって特徴付けられ、本方法は、第1の予備露出時間にわたって撮像システムを励起に露出し、閾値時間が指定の持続時間を超える全ての関連領域に対して閾値時間を判断する段階、第1の予備露出時間よりも短い第2の予備露出時間にわたって撮像システムを励起に露出し、閾値時間が指定の持続時間よりも短い関連領域に対する閾値時間を判断する段階、及び判断された閾値時間に基づいて、対応する関連領域に従って空間の順序付けされた要素の値を読み取ってリセットする段階を含む。
【0021】
本発明の特定的な実施形態では、第2の予備露出時間にわたって撮像システムを励起に露出する段階は、第1の予備露出時間にわたって撮像システムを励起に露出する段階に先行する。
【0022】
本発明は、図面と共に以下の「発明を実施するための形態」を参照することによってより完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態により図2のICを使用することができる例示的な環境の概略図である。
【図2】本発明の一実施形態により電荷転送デバイス感光性ピクセルの1次元アレイを有する集積回路(IC)のブロック図である。
【図3A】本発明の実施形態により有効スペクトル分解能を増加するために線形CIDに対して交互に配列されたピクセル構造の2つの実施形態の一方を示す図である。
【図3B】本発明の実施形態により有効スペクトル分解能を増加するために線形CIDに対して交互に配列されたピクセル構造の2つの実施形態の一方を示す図である。
【図4A】線形CIDピクセル内の光子生成電荷蓄積に関するポテンシャル井戸の図である。
【図4B(1)】最初のシーケンスにおいて電荷が感知フォトゲートに転送される線形CIDピクセル読み出しに関するポテンシャル井戸の図である。
【図4B(2)】電荷が感知フォトゲートからストレージフォトゲートに転送される線形CIDピクセル読み出しに関するポテンシャル井戸の図である。
【図4C(1)】電荷が最初にストレージフォトゲートに転送された状態の線形CIDピクセル位置からの電荷の注入(又は一掃)に関するポテンシャル井戸の図である。
【図4C(2)】ストレージフォトゲート及び感知フォトゲートから一掃された電荷を示す図である。
【図5】本発明の実施形態による「行ストレージレジスタ(RSR)」セルの概略図である。
【図6】本発明の実施形態による例示的な「二重線形CID画像制御器」のブロック図である。
【図7】200Hzのスパーク速度での1つの個別のスパーク放電及び第2の放電の開始からの仮想の信号対時間プロフィールを示す図である。
【図8】本発明の好ましい実施形態により線形CIDデバイス上の32行ストレージレジスタ(RSR0〜RSR31)の図式的表現を示す図である。
【図9】本発明の実施形態により線形CIDを使用する時間分解分光法に関する基本的な流れ図である。
【図10A】本発明の実施形態による「時間分解分光法(TRS)」アルゴリズムを使用して同時に得られた2つの関連領域に関する仮想の信号対時間プロフィールの例を示す図である。
【図10B】本発明の実施形態による「時間分解分光法(TRS)」アルゴリズムを使用して同時に得られた2つの関連領域に関する仮想の信号対時間プロフィールの例を示す図である。
【図10C】本発明の実施形態による「時間分解分光法(TRS)」アルゴリズムを使用して同時に得られた2つの関連領域に関する仮想の信号対時間プロフィールの例を示す図である。
【図11】異なる元素種からの信号の出現を示す多数のスパーク放電のTRSアルゴリズムを使用して得られた仮想の信号対時間プロフィールを示す図である。
【図12】本発明の実施形態により「ランダムアクセス積分(RAI)」アルゴリズムに従って実行される段階のフローを示す流れ図である。
【図13】図12のRAIアルゴリズムを使用して質問される3つのROIの場合の時間の関数としての信号を示す図である。
【図14】「極限ダイナミックレンジ(DR)」アルゴリズムを使用して質問される3つのROIの場合の時間の関数としての信号を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の好ましい実施形態により、電荷転送デバイス感光性ピクセルの1次元アレイ(「線形センサアレイ」とも呼ぶ)を使用し、時間分解又は時間積分を用いてスペクトルを分析する方法及び装置を開示する。感光性ピクセルは、電荷結合デバイス(CCD)、電荷注入デバイス(CID)、又は別の適切なタイプの電荷転送デバイス、又はいくつかのタイプの組合せとすることができる。開示する方法及び装置は、発光分光法(OES)、光吸収分光法、光学的蛍光分光法、及び天文学を利用する分析器のような手持ち式の化学組成分析器を含む多くの事例において適用可能である。
【0025】
1つの事例において、図1に概略的に示すようにサンプルの一部を励起することにより(スパーク/アーク、レーザなどにより)、又はそれとは異なり、基準光源の光の吸収などにより生成されたスペクトル10は、回折格子18を通って線形センサアレイ上に投影され、各ピクセル15は、図1に概略的に示すように、スペクトルの異なる部分(すなわち、異なる波長又は波長域)によって照射されるようになる。サンプルからの光12は、入射スリット14を通って、番号11によって全体的に示すような分光計に入る。この照射は、感光性ピクセルの1つ又はそれよりも多くに光子生成の電荷を作る。
【0026】
以下の節は、(1)線形センサアレイの一実施形態の電子アーキテクチャ、(2)線形センサアレイを駆動する電子制御システムのアーキテクチャ、及び(3)線形センサアレイ及び制御システムを適用することができるある一定の化学組成分析用途のために時間積分又は時間分解データを生成するために利用することができるアルゴリズムの説明を提供する。
【0027】
線形センサアレイ
一実施形態では、集積回路(IC)は、図2に概略的に示すように、感光性ピクセルの1次元アレイ16と、電荷ストレージセル(「行ストレージレジスタ」(RSR)とも呼ぶ)の複数の行と、制御論理22とを含む。
【0028】
感光性ピクセルの1次元アレイ16は、図3A及び図3Bに概略的に示すように、1行に配列することができ、又はこれらのピクセルは、2つ又はそれよりも多くの行にわたって交互に配列することができる。感光性ピクセルを交互に配列することにより、より小さい有効ピクセルピッチ及びより高い有効空間分解能がもたらされる。一実施形態(図3A)において、感光性ピクセルは、2行に均一に交互配列された14μm幅のピクセルである。得られる有効ピッチは、7μmであり、飽和容量は、約300、000電子量である。ピクセル高さは、100μmであり、撮像された入射スリットの高さを合わせて最適化することができる。従って、本明細書で使用する用語「1次元の」及び「線形アレイ」は、そのもの自体が特定の線よりも上又は下に中心がある検出器からその値を得る可能性があるとしても、スペクトル成分を表現する単一の値のみがいずれかの変位での分散ビームの強度に関連付けられているということを示している。
【0029】
ピクセル作動
図4A〜図4Cに示すように、線形CIDと呼ぶ実施形態の感光性ピクセルは、「注入ゲート」42及び「注入ドレーン」43と共にピクセル読み出しのために使用される2つのフォトゲート(「ストレージ」フォトゲート40及び「感知」フォトゲート41)を含む。感知フォトゲートは、ソースフォロアー及びリセット回路に電気的に接続される。注入ゲートは、ピクセルからの光子生成電荷の取得及び注入を制御するために設けられる。注入ドレーンは、光子生成電荷の一掃のためのシンクとして機能する。
【0030】
線形センサアレイは、上述の線形CIDにおいて使用されるフォトゲートと接続したソースフォロアーのような各ピクセル上のプリアンプ(プリアンプ−パー−ピクセル又はアクティブピクセル)を含むことができる。2次元プリアンプ−パー−ピクセル又はアクティブピクセルCCD又はCMOSデバイスも使用することができる。
【0031】
図4Cに示すように、ピクセル注入は、ピクセル読み出しの後、又は光子生成電荷の一掃が要求される露出サイクルのいずれかの時間に実行することができる。注入サイクルに間に、感知及びストレージフォトゲートは、それぞれ「Vsto_inj」及び「Vsen_inj」にバイアスされ、注入ドレーン電圧は、「Vdrain_inj」に設定される。注入ゲートは、その時に注入電位「V_in」にバイアスされる。注入は、全体的に(全ピクセル上で同時に)、ピクセルの群で(「セグメント注入」とも呼ぶ)、又はピクセルxピクセルベースで実行することができる。いずれかの感光性ピクセル又は感光性ピクセルの群(連続的又は不連続)内の電荷は、残りの感光性ピクセルとは無関係に一掃することができる。感光性ピクセルは、一掃するためにランダムにアドレス指定することができる。
【0032】
図4Aに示すように、光子生成電荷蓄積は、正の電圧が感知電極41及びストレージ電極40に印加される時に起こる。蓄積時間とは、これら2つのフォトゲートが深い空乏バイアスにある時間量のことである(「深い空乏」とは、移動電荷を奪われた比較的深い領域がMOSデバイスのゲート電極に印加された電圧のために電極の下に形成されるような非平衡状態のことをいう)。電子を伝導帯に上げるのに十分なエネルギを有する光子がピクセルに衝突する時、得られた移動電荷は、ストレージ電極バイアスによって首尾よく生成された電位に引き込まれる。
【0033】
ストレージ電極で集められる光子生成電荷44の総量は、光強度、蓄積時間、及び暗電流からの電荷寄与の関数である。撮像装置設計及び製造工程を最適化することによって暗電流を低減することはできるが、暗電流は、完全に除去することはできない。従って、拡張された蓄積時間を要求する用途では、線形センサアレイは、冷却される。
【0034】
図4Bに示すように、ピクセル読み出しは、最初にストレージフォトゲートから感知フォトゲートへの光子生成電荷の前方転送によって実行され、感知フォトゲートからストレージフォトゲートへの電荷の後方転送が続く。前方転送の間に、感知ゲートは、基準を「Vsen_read」電位に取る一方、ストレージゲートは、基準を「Vsto_rfr」電位に取る。感知ゲートは、次に絶縁され、感知ゲートの最初の電位サンプルCDS1が得られる。CDS1は、ピクセルの光子生成電荷の合計及びノイズ兆候を測定する。
【0035】
ストレージゲートは、次に、感知ゲートからストレージゲートに電荷を後方転送する「Vsto_btrf」に基準を取る。感知ゲートは、この作動の間には絶縁し続ける。次に、第2の感知フォトゲートサンプルCDS2が得られる。CDS2信号は、ピクセルのみのノイズ性質を示している。関連のノイズ補正信号は、この時に2つのCDSコンデンサ上に格納された値の間の差異(CDS1マイナスCDS2)である。この値(CDS1マイナスCDS2)は、ピクセル位置における電荷の量に比例する。ピクセル読み出し処理は、ピクセル位置における光子生成電荷を破壊しない。線形CID上のいずれかのピクセルの光子生成電荷レベルは、非破壊的に問い合わせする(読む)ことができる。非破壊的なピクセル読み出しは、スパークOES及び他の用途に関するダイナミックレンジ及び時間分解性能を改善する。
【0036】
線形CIDデバイス上のいずれかのピクセル位置にランダムにアクセスすることが可能である。ピクセルは、順不同に、かついずれかの方向にアドレス可能である。ランダムにアドレス指定されたいずれかのピクセル内の光子生成電荷を問い合わせする(読む)か、又は一掃するかのいずれかが可能である。ピクセルのランダムなアクセス可能性は、スパークOES及び他の用途に関するダイナミックレンジ及び時間分解性能を改善する。
【0037】
行ストレージレジスタ(RSR)
線形センサアレイは、様々な時点のピクセル信号を格納するための独立したパー−ピクセルコンデンサ(行ストレージレジスタ(RSR)と呼ぶ)20(図2において)を含む。線形センサアレイ上の感光性ピクセルは、スイッチングネットワークを通してRSRに結合される。様々な実施形態では、8又は32又は他のいずれかの数のピクセル当りのRSRをデバイスに実施することができ、異なる用途における異なる数のRSRには様々な利点が生じる。パー−ピクセルコンデンサは、MIMタイプ(金属−絶縁体−金属)、MOSタイプ(金属酸化膜半導体)、又は他の適切なタイプとすることができる。
【0038】
制御論理の制御の下で(図2におけるrW、IRC、及びCDS)、全ての感光性ピクセルにおける光子生成電荷は、当業技術で公知のように、相関二重サンプリング(CDS)によってRSRのいずれかの行の対応するストレージセルに並列に非破壊的に複写することができる。従って、RSRは、効率的にランダムにアクセス可能なアナログメモリデバイスである。
【0039】
一般的なCCDデバイスの作動とは異なり、CIDアレイ内の電荷は、本発明の実施形態によれば、実際に感光性ピクセルから他のセルに移動せず、電荷は、感光性ピクセル位置から全く移動しない。むしろ、各感光性ピクセルに関連するプリアンプ及び他の適切な電気回路により、電荷(現在の感光性セルにおける電荷に等しいか又は比例している)がRSR内に形成されることが可能になり、従って、感光性ピクセル内の電荷の量を低減することなくRSR内に感光性ピクセルの電荷の複写を生成する。従って、感光性ピクセル内の電荷がストレージセルに複写された(すなわち、「書かれた」)後であっても、光子生成電荷は、感光性ピクセルに蓄積し(「積分され」)続けることができる。感光性ピクセル内の光子生成電荷の連続する蓄積は、感光性ピクセルから得られた情報のSN比を改善することができる。
【0040】
従って、電荷を移動させることと電荷を非破壊的に複写することの間の差異が、本発明の事例においては重要である。本明細書において「電荷を非破壊的に複写すること」とは、感光性ピクセルのような第1のセル内にある電荷の複写を第1のセル内の電荷の量を低減することなく、別のセル内に生成することを意味する。非破壊的な複写作動の結果として、2つのほぼ等しい電荷が存在する。すなわち、第1のセル内にあるものと、第2のセル内にある第2のものである。上述のように、CCDデバイスは、時間分解データを捕捉するのに使用される。しかし、このような処理の間に、光子生成電荷は、第1のアクティブCCD位置から除去され、別の位置に移動させられる。その結果、第1の位置は、既に電荷を持たない。このような処理は、「破壊的な移動」と呼ぶ。光子生成電荷は破壊されずに、電荷は、単に別の位置に移動させられるに過ぎないという点において、CCD処理は、電荷を必ずしも破壊するわけではない。しかし、本明細書に説明されているように、破壊的な移動は、非破壊的な複写とは異なる。
【0041】
作動の1つのモードにおいて、感光性ピクセル内の電荷は、ストレージセル(RSR)の連続する行に定期的に複写される。従って、RSRは、感光性ピクセルによって観測されたスペクトルに関する時間分解情報を格納する。RSRの各行は、スペクトルが撮像された異なる期間を表し、1行にある各RSRは、スペクトルの異なる部分(波長又は波長域)に関する情報を表している。以下により詳細に示すように、スペクトルの一部分のみが多くの場合に分析の対象になる。従って、1行の全てのRSRを読むことは、必要ではない場合がある。更に、以下でより詳細に説明するように、特定の期間中に又はいくつかの期間中に収集された情報のみが、多くの場合に分析の対象になる場合がある。関連の期間は、関連のスペクトルの各部分で異なる可能性がある。従って、全てのRSR行からの読み出し情報は、必要でない場合がある。関連のRSRのみを読むことは、全てのRSRを読むのにかかると考えられる時間よりも少ない時間しかかからない。従って、関連のRSRに関する情報が読まれ、線形センサアレイは電荷を一掃され、全てのRSRが読まれると仮定した場合よりも迅速にその後の分光学的イベントからのデータを取得するように線形センサアレイに準備させることができる。
【0042】
ピクセル復号器、RSR復号器、及びRSR読み出しチェーン
2つの復号器を図2に示す実施形態において使用する。すなわち、13ビットピクセル復号器及び5ビットRSR復号器である。13ビットピクセルアドレス復号器(「ピクセル復号器」と呼ぶ)は、読み出されるピクセルを選択することを担当し、5ビットRSRアドレス復号器(「RSR復号器」と呼ぶ)は、読む又は書くためのRSRを選択する。他の実施形態では、当業者には分るであろうが、他の数のアドレスビットが使用される。読み出しチェーンは、各線形CIDピクセルの感知フォトゲートに接続される増幅器及びCDS回路を含む。
【0043】
上述のように、RSRは、効率的にランダムにアクセス可能なアナログメモリデバイスである。単一のRSRセルの結線図を図5に示している。CDS回路から来るアナログ電圧情報は、コンデンサ「C」上の電荷として格納される。この情報は、トランジスタスイッチ「T1」を通してストレージコンデンサに接続することができる垂直バス「Write_M」を通してセルにもたらされる。RSRの行「N」を書くために、「Write_select_N」は、アドレス「N」が5ビットRSR復号器によってラッチされた後に、入力信号「Write_M」を「高」に設定することにより、「高」に設定される。
【0044】
RSRは、ビデオ増幅器の入力をもたらす垂直バス「Read_M」を通して読むことができる。このバスは、トランジスタスイッチ「T2」を通してストレージコンデンサ「C」に接続することができる。行N、ピクセルMのメモリ位置を読むために、3つの条件を達成する必要がある。第1に、アドレス「N」は、5ビットRSR復号器内にラッチする必要がある。第2に、ピクセルアドレス「M」は、13ビットピクセル復号器によってラッチする必要があり、最後に、入力信号「Video_read」は、「高」に設定する必要がある。これらの3つの条件が達成される時、トランジスタのゲート「T2」が「高」に設定され、従って、「T2」スイッチを閉じて、RSRセルの情報がビデオ信号として読み出されるのを可能にする。
【0045】
RSRの全て又は一部における電荷に関する情報は、線形センサアレイから選択的に読むことができる。線形センサアレイは、RSR内の電荷の量をデジタル化し、RSR内の電荷の量に関する情報を線形センサアレイ外部のデバイスに供給するために、1つ又はそれよりも多くのアナログ/デジタル変換器(ADC)を含むことができる。代替的に、ADCは、線形センサアレイの外部に存在することができる。一実施形態では、線形センサアレイは、ADCを含まず、その代わりに1つ又はそれよりも多くの別のIC上に設けられた外部ADC又はADCの組にアナログ信号を供給する。
【0046】
RSRの全て又は選択された部分集合(連続的又は不連続的)は、読むためにランダムにアドレス可能である。選択されたRSRは、残りのRSRを読むことなく読むことができる。従って、関連の時間の関連のピクセルに関する情報が、線形センサアレイから読み出され、次に、感光性ピクセルから電荷を一掃することができる。関連のRSRは、RSRの全てを読むように要求されると考えられる時よりも少ない時間で読むことができ、従って、時間分解分光法に使用される従来の2次元CCDデバイス及び線形CCDデバイスに勝る利点をもたらす。
【0047】
電子制御システムアーキテクチャ
線形センサアレイは、様々な電子制御システムによって制御することができる。線形センサアレイ制御システムの一実施形態は、発光分光法「携帯合金分析計器(PAAI)」に使用することを目的とする「二重線形CID撮像装置制御器(DLIC)」及び「撮像装置専用インタフェース(ISI)」サブシステムである。DLIC−ISIサブシステムはまた、検出器の異なる線形アレイと交わる回折格子の複数の次数を提供するために、プリズムのような次数分類器によって光信号が直交分散されるあらゆる別の計器と共に使用することができると考えられる。例示的なDLICの詳細なブロック図は、図6に提供している。
【0048】
DLIC/ISIサブシステムは、「デジタル信号プロセッサ(DSP)」ベースのコントローラと二重線形CID分光計サブアセンブリとの間のインタフェース及び制御信号を提供する。このようなサブシステムは、特にOES分光計とのインタフェースで接続するのに適している。分光計は、二重の(又は他のいずれかの数の)熱電(TE)冷却線形CID撮像装置を含むことができる。
【0049】
本明細書で説明する線形CIDデバイス及びDLICは、時間遅延積分(TDI)モード(以下に説明)において行ストレージレジスタ(RSR)の読み出しを助け、16ビットビデオ信号デジタル処理又はアナログ信号読み出しを提供し、破壊的読み出し(図4Cに連続的に続く図4Bを参照)、非破壊的読み出し(図4Bを参照)、光子生成電荷の全体的な注入及び光子生成電荷のセグメント注入(図4Cを参照)を助け、実時間一定パターンノイズ(FPN)減算及び直接読み出し極限ダイナミックレンジ(以下に説明)アルゴリズムを助け、並列の撮像装置読み出し(線形CID撮像装置のいずれかの数において)、及びDSPへの実時間画像データ転送を助けることができる。更に、一体型湿度センサをDLICインタフェース内に含むことができる。本発明の好ましい実施形態では、線形CIDデバイスの温度は、暗電流を低減し、かつSN比を改善するために周囲よりも低い温度で安定させる必要がある。
【0050】
時間積分及び時間分解アルゴリズム
結合した線形CID及びDLIC−ISIサブシステムは、関連の時間積分又は時間分解データを生成するために、様々なアルゴリズムと共に使用することができる。以下のアルゴリズム、すなわち、「時間遅延積分(TDI)」アルゴリズム、「時間分解分光法(TRS)」アルゴリズム、「ランダムアクセス積分(RAI)」アルゴリズム、及び「極限ダイナミックレンジ(極限DR)」アルゴリズムを説明する。
【0051】
時間遅延積分(TDI)アルゴリズム
線形CIDとDLIC−ISIサブシステムとを組み合わせたシステム内に含まれる「時間遅延積分(TDI)」アルゴリズムの1つの目的は、スパーク発光分光法(OES)のような一定の繰返し数で起こる個々の分光学的イベントに関する正確な高分解能時間分解データを提供することである。
【0052】
一実施形態では、TDIアルゴリズムは、十分な時間分解能を有し、一定の時間増加単位で個々のスパーク放電からの信号の32のRSRサンプルまでを格納し、次のスパーク放電の前にこれら32のRSRサンプルを読んで線形センサから離れたメモリ(一般的に静的ランダムアクセスメモリ、SRAM)に送る。例えば、スパークが200Hzで行われる時、5ミリ秒(ms)毎にスパーク放電が起こる。図7は、200Hzのスパーク速度における1個のスパーク放電と第2の放電の開始とからできた、各々が時間の関数としてプロットされた、2つの仮想の信号62及び64を示している。太い信号プロフィール62は、中性ニッケルに関する206nm輝線において検出された信号を示すが、細い信号プロフィール64は、Ni206輝線の近くのバックグランド放射による信号を示している。バックグランド信号64は、Ni206nm信号62よりも急激に低下する。最適なSN比(及び従って検出限界)は、信号対バックグランド比が最大化される領域(例えば、図7のRSR2とRSR5との間)に観測窓を開閉することによって達成することができる。
【0053】
最大の信号対バックグランド比の領域におけるこの時間的ゲートを達成するために、一実施形態の線形CIDは、一定のユーザ指定の時間増加単位でスパーク放電の32の時間分解サンプルを格納することができる。図8は、線形CIDデバイス上の32のRSR(RSR0〜RSR31)の図式的表現を提供する。RSRの他の数は、他の実施形態において使用することができる。
【0054】
時間分解分光法の例をこれから図8を参照して提供する。スパーク周波数は、200Hzと仮定する。最適なNi206nm(ピクセルXNi=947、dXNi=11のピクセル)SN比は、スパーク放電後の100μsから200μsの間に起こることを仮定する。最適なCr267nm(ピクセルXCr=1、387、dXCr=13のピクセル)SN比は、スパーク放電後の140μsから280μsの間に起こることを仮定する。この場合に、TDIモードは、32個の20μs時間サンプリングを実行するために32のRSRに設定され、スパーク放電後の合計640μsを取得すると考えられる。640μsが20μsの増加単位で得られると、TDIアルゴリズムは、ピクセル947から959までに関するRSR4からRSR9まで(放電後100μsから200μsの間)のNi206nmデータと、ピクセル1、387から1、400までに関するRSR6からRSR13まで(放電後140μsから280μsの間)のCr267nmデータとを抽出する。5MHzのピクセル速度で個々のピクセルRSRを読むことは可能であるので、これらのNi206nmに関する55のRSR(11のピクセルの各々に関して5のRSR)及びCr267nmに関する91のRSR(13のピクセルの各々に関して7のRSR)の読み出しは、合計29.2μsを必要とする。RSR読み出しが完了した後に、線形CID上の全てのピクセルは、10μsの全体注入を使用して光子生成電荷を一掃される(図4Cを参照)。
【0055】
従って、32個の20μs時間サンプルのTDIサンプリング、146のピクセルRSRの読み出し、及びデバイスの注入の間に、合計679.2μsが経過する。200Hzスパークによってスパーク放電間に5000μsが存在するので、スパーク間にこの例のようなTDI分析を実行する十分な時間がある。
【0056】
上述の場合には、解析的に有用な情報がRSRの小部分集合から得られるという点において比較的簡単な例である。以下の場合には、より複雑である。スパーク周波数が500Hz(放電間2ms)まで増加し、TDIサンプリングが5μsの速度で起こると仮定する(この実施形態の線形CIDにおける最速可能RSR行書込み時間は、約1〜3μsであり、この速度において、信号対ノイズは低下する可能性がある)。時間的制約のために、一実施形態の線形CIDデバイス上にある全4、160のピクセルに関する全32のRSRを読むことは、実行不可能になる。
【0057】
しかし、150nmから800nmの間のスパークOESスペクトルの大部分は、解析的に有用ではない。更に、一般的な分析における解析的に関連の波長においてさえも、ユーザは、通常は僅かのRSRからのデータしか必要としない。関連のRSRが、波長から波長に(すなわち、ピクセル領域からピクセル領域に)変化する場合があるが、関連の全ての波長に関する全32のRSRを読むことは、必要ではない場合がある。表1は、一実施形態の線形CIDにおいて100Hzから1、000Hzまでの範囲のスパーク周波数に対して読むことが可能なRSRの総数の試算を提供する。1、000Hzの最速スパーク周波数においてさえも、スパーク放電間に著しい数のRSR読み出し(約3、300)を達成することが依然として可能であることに注意されたい。
【0058】
【0059】
以下の実施例で理解することができるように、比較的低いスパーク周波数において、RSR行書込時間は、スパーク放電間に達成することができる個々のRSRピクセル読み出しの数に小さい影響しかもたらさない。スパーク周波数が200Hz(放電間5ms)であると仮定し、ユーザが、サンプリング当り10μsで32のTDIサンプルを要求すると仮定する。この場合に、TDIサンプリングのための320μsと線形CIDの注入のための10μsとを減算した後に、RSR読み出しのために4、670μsが残ることになる。5MHzのRSR読み出し速度において、その時間は、23、350個のRSRピクセル読み出しに相当する。その一方、TDIサンプリング増分が1μsまで減少した場合に、TDIサンプリングのための32μsと線形CIDの注入のための10μsとを減算した後に、RSR読み出しのために4、958μsが残ることになる。5MHzのRSR読み出し速度において、その時間は、24、790個のRSRピクセル読み出し、又は10μsのTDIサンプリング速度で達成することができる時よりも約6%だけ多い読み出しに相当する。
【0060】
スパーク周波数(スパーク放電間の時間間隔を決める)、TDIサンプリング速度、及び光子生成電荷を線形CIDデバイスから一掃するのに必要な時間量が与えられる時、次のスパーク放電の前に読むことができるピクセルRSRの数に限界がある。表1に示すように、スパーク周波数が400Hzであり、TDIサンプリング速度が10μsであり、線形CID一掃時間が10μsである時、個々のRSRピクセル読み出しのために2、170μsが利用可能である。5MHzのRSRピクセル読み出し速度は、合計10、850のRSRピクセル読み出しに相当する。全32のRSR行ではなく、ピクセル当り平均5のRSRのみを問い合わせすることが必要な時、2、170ピクセルと同数(又は4、160のピクセルを有する一実施形態の線形CIDデバイスの半分よりも僅かに多く)のTDI試験を実施することができる。
【0061】
スパーク発光間に問い合わせすることができる個々のピクセルRSRの総数は、スパーク周波数、TDIサンプリング速度、及び線形CID注入時間によって制限される。これらの制限内で、ピクセル領域のあらゆる数(Xo、dXによって判断される)を観測することができる。
【0062】
本発明のある一定の実施形態内では、線形CIDアレイ内のピクセルの数は、必要なスペクトルチャンネルの数を超える。スペクトル撮像のために使用されるピクセルのいずれかの側に対する付加的なピクセルは、アラインメント公差を軽減するように機能することができる。更に、垂直ピクセル寸法(すなわち、アレイ方向に対して垂直である)は、画像サイズよりも大きく、また、例えば、分光計の分散要素に対するアレイの配置に関するアラインメント公差を軽減することができる。更に、電荷転送デバイス感光性ピクセルセルの数は、露出された電荷転送デバイス感光性ピクセルセルの特定の数を上回り、極限のスペクトルチャンネルは、アラインメント又は他の作動条件の変動のために変化する可能性がある特定のピクセルに対応することができる。従って、ピクセル番号への波長の登録は、本発明が組み込まれる計器の作動の進行中に動的に変化する場合がある。
【0063】
時間分解分光法アルゴリズム
線形CIDとDLIC−ISIサブシステムとを組み合わせたシステム内に収容された「時間分解分光法(TRS)」アルゴリズムの目的は、線形CIDデバイス上の一連のユーザ指定の「関連領域(ROI)」に対する時間に関する信号をモニタすることである。
【0064】
本発明の範囲は、本発明を適用することができる分光法技術に限定されることはない。このような技術の例には、レーザ誘起絶縁破壊分光法(LIBS)、スパーク発光分光法(OES)、イオンクロマトグラフィー誘導結合プラズマ発光分光法(IC−ICP−OES)、高速液体クロマトグラフィーICP−OES(HPLC−ICP−OES)、及びフローインジェクション分析ICP−OES(FIA−ICP−OES)が含まれる。線形CIDのTRSアルゴリズムはまた、HPLCのための紫外可視吸収検出、時間分解蛍光のような他の時間分解用途に有利に使用することができる。
【0065】
例示的なTRSアルゴリズムの基本的な流れ図を図9に示している。他のアルゴリズムは、本発明の範囲内で使用することができるが、実施例として本明細書で説明するアルゴリズムは、経過時間と現在の信号の両方をモニタすることによって信号データ点を時間ベースで取得する。新しい点が得られる時間又は信号のいずれかに到達すると、線形CIDのROI(Xo及びdXに依存する)が読まれ、データは、DLIC−ISIサブシステムランダムアクセスメモリ(RAM)に格納される。
【0066】
アルゴリズムの詳細を続ける。ユーザは、線形CID上に開始ピクセル(Xo)及び領域サイズ(dX)を含む1つ又はそれよりも多くのROIを判断する。グラフィカルユーザインタフェース(GUI)は、この目的のために使用することができる。アルゴリズムは、その際に、これらのROIを集合させて循環ROI待ち行列にする。
【0067】
アルゴリズムの第1の段階は、循環観測待ち行列の最上部のROIを読むことである。線形CID上で実行される全ての読み出しは、光子生成電荷に関しては非破壊的であることに注意されたい。これは、線形CID上のいずれかのピクセルがそのピクセル位置(又は別のいずれかのピクセル位置)における光子生成電荷に影響を与えることなくいずれかの点において時間ベースで問い合わせすることができることを意味している。ROIを読んだ後に、アルゴリズムは、ROIにおける最大ピクセル信号(Smax)、すなわち、最大の蓄積光子生成電荷を有するROI内のピクセルの信号を判断する。この最大信号(Smax)は、次に、ユーザ指定の信号増分に対して比較され、現在の露出時間は、ユーザ指定の時間増分に対して比較される。ユーザ指定の信号増分又はユーザ指定の時間増分のいずれかに到達すると、ROIピクセルデータは、読み出しのためのタイムスタンプと共にDLICのRAMに格納される。ユーザ指定の信号増分とユーザ指定の時間増分のいずれにも到達しなかった時、ROIは、循環して観測待ち行列の最下部に至り、循環待ち行列内の次のROIが質問される。
【0068】
ユーザ指定の信号増分及びユーザ指定の時間増分は、GUIの全てのROIに関して全体的にユーザによって判断することができる。例えば、信号増分は、線形CIDデバイス飽和容量の百分率として設定することができ、信号増分をより低い値に設定することにより、ユーザは、信号が急速に立ち上がっている間に、より頻繁に時間分解ピクセルデータをアルゴリズムに取得させることができる。このようにして、クロマトグラフィーピークのような過渡現象の時間プロフィールをより正確に判断することができる。
【0069】
一実施形態では、時間増分の値を約1μsと同じ低さに、また約10秒と同じ高さに設定することができる。通常、時間増分は、約0.001秒から約1秒の間の値に設定される。ユーザが一定の時間増分でデータ点を取得することを望む時、信号増分は、飽和容量の100%に設定される。このようにして、時間増分は、いつも信号増分よりも前に達成される。
【0070】
時間分解データ点が得られた後に、アルゴリズムは、閾値信号(通常は、線形CID飽和容量の75%)に対して、すなわち、所定の値又はユーザによって入力された値に対してROIの最大信号(Smax)を検査する(上述のように)。信号が閾値レベルを超えると、信号は、飽和状態に接近している可能性があり、ROIは、光子生成電荷を一掃される。このようにして、ROIに関する信号が線形CIDの飽和レベル(すなわち、飽和容量)を超えるのを防止することができる。アルゴリズムのこの点において、ROIは、循環して観測待ち行列の最下部に至り、待ち行列内の次のROIが質問される。
【0071】
図10A〜図10Cは、信号積分の進行中の個々のROIからの一掃を示すか又は示さないかの2つの場合の例を示している。図10A〜図10Cに示す2つのROIに関する信号対時間のプロフィールは、TRSアルゴリズムを使用して同時に得られる。図10Aにおいて、露出を継続する経路の約60%でプロフィール92によって示したROIの信号においてガウス分布スパイクが発生する。しかし、図10Aに示すように、信号92は、閾値レベルに到達することはなく、従って、ROIを一掃することは必要ではない。単純な積分信号対時間プロフィールのROIのガウス分布ピークが観測される。
【0072】
しかし、図10AのROIプロフィール94によって示した状況は、より複雑である。積分ガウス分布信号スパイクが、露出を継続する経路の約40%でこのROI上に観測される。この信号スパイクは、信号を閾値信号レベル(飽和容量の75%)に到達させるのに十分な強度のものであり、従って、信号スパイクが消えていく時にROIから光子生成電荷を一掃することが必要である。最初のROI一掃の後に、信号は、積分ガウス分布スパイクの残りの間に上がり続ける。スパイクが完全に消えた後に、信号レベルが再び閾値レベルに到達する露出を継続する経路の約70%までは、単純なバックグランド信号のために、信号は、上がり続ける。この点において、ROIは再び一掃される。この一掃の後に、ユーザ指定の露出時間に到達するまでは、バックグランドのために、信号は上がり続ける。
【0073】
TRS露出の完了後に、ROI一掃点は、ROI一掃の前の点で得られた信号をROI一掃後に測定された全ての信号レベルに加えることによって除去される。この信号補正処理の結果は、図10Bに示し、ROI信号92と94の両方に関して連続的な積分信号レベルが観測される。図10BのROI信号の時間微分は、図10Cに示している。所望により、グラフィカルユーザインタフェースは、ユーザが、ROI一掃点の全てを示している生信号モード(図10Aのような)において、積分モード(図10Bのような)において、1次微分モード(図10Cのような)において、及び場合により2次微分モード(図示せず)においてプロット表示するのを可能にする。
【0074】
図11は、TRSアルゴリズムの1つの可能な用途を示している。本発明の実施形態によってもたらされた時間分解のレベルにより、個々のOESスパーク放電を時間ベースで分解することができ、個々のスパーク放電を分解する機能により、元素のスペシエーションを実行することが可能になる。例えば、鋼鉄の分析において、アルミニウムの総含有量を計量するだけでなく、Al2O3含有物(「不溶性」アルミニウム)及び元素金属Al(「可溶性」アルミニウム)を計量することができる点が有用である。図11に示すようなAl308nm発光の仮想の1次微分TRS走査において、より強いピークは、Al2O3含有物に当たる個々のスパークによるものであり、より弱いピークは、元素金属Alを有する位置に当たる個々のスパークによるものである。このようなTRS走査からのデータにより、適切なアルミニウム分析統計値を生成することができ、総アルミニウム量、並びにAl2O3及び金属Al濃度を判断することができる。
【0075】
ランダムアクセス積分
線形CIDとDLIC−ISIサブシステムとを組み合わせたシステム内に収容された「ランダムアクセス積分(RAI)」アルゴリズムの目的は、線形CIDデバイス上の一連のユーザ指定の関連領域(ROI)に対してユーザ指定の期間にわたって全積分信号をモニタすることである。
【0076】
RAIアルゴリズムは、経験的に観測された光子束に基づいてROIからROIまでの有効な露出時間を制御し、従って、可能な時にROI上の線形CID飽和を防止する。このアルゴリズムはまた、可能な時には、SN比を光子発射ノイズ制限ドメインに押し込むために、非破壊的読み出し(NDRO)の数を変化させることができる。
【0077】
このアルゴリズムの基本的な流れ図は、図12において示している。ROIは、ROI待ち行列の最上部まで移動し、ROIは非破壊的に読まれる。次に、アルゴリズムは、通常は飽和信号の約75%(又は別の適切な値)に設定されている閾値信号に対してROIの最大ピクセル信号を検査する。最大ピクセル信号が閾値信号を上回らない時、ROIは、循環してROI待ち行列の最下部に至る。ROI上の最大信号が閾値信号を超える時、ROI読み出しからのピクセルデータ及びタイムスタンプは、RAMに格納され、セグメント注入命令を使用して、ROIは光子生成電荷を一掃される。この点において、ROIは、循環してROI待ち行列の最下部に至り、この処理は、待ち行列内の次のROIにおいて繰り返される。この処理の結果は、図13に示している。
【0078】
いずれかの所定のROI上の信号がユーザ指定の露出時間(通常5〜60秒)の間に閾値信号に達する時、単一の非破壊的読み出しだけが、SN比を光子発射ノイズ制限ドメインに押し込むように要求される。しかし、所定のROI上の信号がユーザ指定の露出時間にわたって閾値に達しない時、SN比を光子発射ノイズ制限ドメインに押し込むために、最後の読み出しに複数の非破壊的読み出しを使用することができる。
【0079】
図13は、誘導結合プラズマ(ICP)が使用される場合のように、定常状態光源(すなわち、光子束がデータ取得の時間スケールにおいて時間と共に高々ゆっくりと変化するような光源)がある時の3つのROIに関する仮想の信号対露出時間プロフィールを示している。プロフィール130によって示したROIは、強く照射される。3つの均等に離間した間隔において、ROI上の信号は、閾値信号レベルに達する。これらの点において、ROIに関するピクセルデータは、タイムスタンプを押され、かつ格納する必要があり、ROIは、次のサイクルを見越して一掃する必要がある。ユーザ指定の露出期間(露出時間)の最後に、3つの積分注入サイクルからのデータと露出時間において得られた最後の読み出しからのデータとが合計され、ROIに関する時間積分信号データを生成する。プロフィール132によって示したROIは、強くは照射されていない。このプロフィールは、ユーザ指定の露出時間が終了する前に1つの積分注入サイクルのみを有し、最後の時間にわたって読み出される。線134によって示したROIは、弱く照射される。ROI上の信号は、ユーザ指定の露出時間の間には閾値に到達しない。ROIに関するピクセルデータは、露出時間が終了した後に一度かつ一度だけ格納される。ROIを読むのに使用される非破壊的読み出し(NDRO)の数は、可能な時には、SN比を光子発射ノイズ制限ドメインに押し込むように設定される。3つ全てのROIは、信号強度に関係なく同じ時間間隔の間に観測されることに注意されたい。このようにして、線形CIDシステムの線形ダイナミックレンジは、光源の線形ダイナミックレンジに合うように拡張することができる(約6桁から8桁の間のように)。
【0080】
極限ダイナミックレンジアルゴリズム
線形CIDとDLIC−ISIサブシステムとを組み合わせたシステム内に収容された「極限ダイナミックレンジ(極限DR)」アルゴリズムの目的は、拡張されたダイナミックレンジを用いて線形CIDデバイス上の全てのピクセルにわたり、ユーザ指定の期間にわたって全積分信号をモニタすることである。「極限DR」アルゴリズムは、経験的に観測された光子束に基づいてROIからROIまでの有効な露出時間を制御し、従って、可能な時には、全ての線形CIDピクセル上の飽和を防止する。
【0081】
「極限DR」アルゴリズムは、以下のように実行する。線形CIDは、短い「予備露出」期間にわたって光源に露出される。予備露出の時間は、通常はユーザ指定の露出期間の0.4%から1%の間である。予備露出及びユーザ指定の露出期間からの線形CIDピクセル信号に基づいて、ユーザ指定の露出期間において又はその前に飽和信号レベル(飽和容量又は別の適切な値)に達する線形CID上のこれらのピクセル(ROI)が識別される。線形CIDデバイスは、次に、全体的に光子生成電荷を一掃され、ユーザ指定時間の露出が開始される。露出中に、予備露出ルーチンによって識別されたROIは、図14に示すように、アルゴリズム指定の間隔で読まれて光子生成電荷を一掃される。
【0082】
図14は、予備露出ルーチンによって識別された3つのROIに関する仮想の信号対露出時間のプロフィールを示している。プロフィール150によって示したROIは、強く照射される。9つの均等に離間した間隔において、ROIは読まれ、ピクセルデータは、タイムスタンプを押されて格納され、ROIは、次のサイクルを見越して一掃する必要がある。ユーザ指定の露出期間の最後に、9つの積分注入サイクルからのデータとユーザ指定の露出時間に得られた最後の読み出しからのデータとが合計され、ROIに関する時間積分信号データを生成する。プロフィール152によって示したROIは、強くは照射されていない。このプロフィールは、ユーザ指定の露出時間が終了する前に3つの積分注入サイクルのみを有し、最後の時間にわたって読まれる。線154によって示したROIは、弱く照射される。このプロフィールは、ユーザ指定の露出時間が終了する前に1つの積分注入サイクルのみを有し、最後の時間にわたって読み出される。
【0083】
線形CIDピクセルの並列CDSサンプリングに関するオーバヘッドを最小限にするために、予備露出アルゴリズムによって識別された全てのROIは、同じ並列CDSサンプリングを使用して読まれる。図14に示す実施例において、プロフィール150によって示したROIは、2秒間隔でCDSサンプリングによって読まれる。第3の2秒CDSサンプリング毎に、プロフィール152によって示したROIも読まれ、第9番目の2秒CDSサンプリング毎に、プロフィール154によって示したROIも読まれる。
【0084】
予備露出ルーチンによって識別された全てのROIは、信号強度に関係なく同じユーザ指定の露出期間にわたって観測されることに注意されたい。このようにして、線形CIDシステムの線形ダイナミックレンジは、光源の線形ダイナミックレンジに合うように拡張することができる(約6桁から9桁の間のように)。
【0085】
ユーザ指定の露出期間が終了した後に、予備露出によって識別されたROI内に存在しなかった全ての線形CIDピクセルが読まれる。このようにして、線形CID上の全てのピクセルに関する信号データが得られる。図14のプロフィール150、152、及び154によって示したデータのように、より強く照射されたピクセルに関するピクセルデータが、ユーザ指定の露出期間にわたって得られ、より弱く照射されたピクセルに関するピクセルデータは、ユーザ指定の露出期間の後に得られる。
【0086】
従って、ランダムピクセルアドレス指定と、非破壊的読み出しと、線形CID及びDLIC−ISIサブシステムの選択的なピクセル一掃の特徴とを利用して、極限DR露出モードは、経験的に観測された光子束によって判断された周波数で、強く照射されたピクセル領域を読み取ってリセットする。このモードにおいて、ダイナミックレンジは、飽和容量によって制限されない。代替的に、ダイナミックレンジは、ROIを読み、かつ一掃することができる最大周波数によって制限される。この周波数は、300〜10、000Hzの範囲(0.1〜3.3ミリ秒のサイクル)にあることができる。
【0087】
「極限DR」アルゴリズムの一実施形態では、ROIを読み、かつ一掃することができる最大周波数、従って、達成することができる最大ダイナミックレンジは、予備露出の時間によって制限される。例えば、ユーザ指定の露出時間が60秒で、予備露出時間が0.30秒である時、ROIを読み、かつ一掃することができる最大周波数は、約300Hzに制限される場合がある。この場合及び他の同様の場合には、ダイナミックレンジは、より短い時間の第2の予備露出を実行することにより、更に拡張することができる。本明細書に記載した実施例では、0.03秒時間の第2の予備露出を実行することができる。第2の0.03秒予備露出からの線形CIDピクセルデータは、0.0から0.3秒の間の露出時間(第1の予備露出の時間)において線形CIDピクセルを飽和させるROIを識別するのに使用され、第1の0.3秒予備露出は、0.3秒からユーザ指定の全露出時間の間の露出時間において線形CIDピクセルを飽和させるROIを識別するのに使用されると考えられる。この結果は、ROIを読み、かつ一掃することができる最大周波数においては約3000Hzまでの増加になり、ダイナミックレンジにおいては1桁の増加になるであろう。一部の実施形態では、これらの予備露出の順序は、反対になる場合がある。一部の実施形態では、2つの予備露出の一方又は両方の時間は、自動的に計算することができる。一実施形態では、より短い予備露出の時間は、既定の又はユーザ指定のより長い予備露出の分割量とすることができる。
【0088】
概略的に説明すると、ダイナミックレンジは、1つ又はそれよりも多くのスカラー値をあらゆる数の次元の空間の順序付けされた要素に関連付けるあらゆる撮像システムに対して拡張することができる。スカラー値は、励起に対する信号応答を特徴付ける値、例えば、特定の検出器要素上の検出強度である。空間の順序付けされた要素には、空間の順序付けされた要素の部分集合として定められた少なくとも1つの関連領域が含まれる。関連の各領域は、関連領域の要素の1つにおいて電荷が飽和する時間に対応する閾値時間によって特徴付けられる。撮像に対して撮像システムを設定するために、撮像システムは、第1の予備露出時間にわたって最初に励起に露出され、閾値時間が指定の持続時間を超えるような全ての関連領域に関する閾値時間を判断する。次に、撮像システムは、第1の予備露出時間よりも短い第2の予備露出時間にわたって励起に露出され、閾値時間が指定の持続時間よりも短い関連領域に関する閾値時間を判断する。判断された閾値時間に基づいて、空間の順序付けされた要素の値は、対応する関連領域に関して判断された閾値時間に応じて読まれ、かつリセットされる。
【0089】
本明細書では、4、160の感光性ピクセルを有する集積回路を説明してきたが、他の数の感光性ピクセルを含むことができる。具体的には、アラインメント公差を軽減するために、かつピクセル番号への動的に変化する波長の登録に備えるために、設けられる感光性ピクセルの数は、実際に使用されるスペクトルチャンネルの数を超えることが望ましい。
【0090】
更に、感光性ピクセルの1次元アレイを有する集積回路を説明してきたが、感光性ピクセルの2次元アレイを含むことができる。このような場合には、感光性ピクセルの各行に個別の組のRSRを設けることができる。一実施形態では、RSRの各組は、別々の平面として実施される。別の態様では、2次元デバイスが、上述の方法と同様の方法で作動し、すなわち、全ての感光性ピクセルセル内の電荷の複写が、選択されたRSRの組に並行して複写される。このようなデバイスは、スペクトル及び他の種類の画像を含む時間分解2次元画像を供給するために使用することができる。
【0091】
線形CIDセンサのアーキテクチャに適用することができる例示的な原理は、図2に示すブロック図を参照して本明細書で説明し、ピクセル及び/又はRSRの特定の数に言及したが、これらの数は一例を示すためだけである。それと同様に、これらの原理は、感光性ピクセルが1つの基板上に形成され、行ストレージレジスタが別の基板上に形成され、これら2つの基板は、インジウムバンプ結合などによって結合される回路のような混成集積回路に適用することができる。(このような結合は、James G.Mainprize他著「デジタルマモグラフィのためのスロット走査式フォトダイオードアレイ/CCD混成検出器」、2002年6月25日、医学生物物理学部、トロント大学、サニーブルック、及び女子大保健科学センター、トロント、オンタリオ、M4N3M5、カナダに記載されており、その内容は、引用により本明細書に組み込まれている。)これらの原理は、センサを有する基板又は集積回路とストレージセルを有する基板又は集積回路との他の組合せにも適用することができる。
【0092】
スペクトル分析器は、メモリに格納された命令によって制御されるプロセッサを含むものとして説明した。メモリは、制御ソフトウエア又は他の命令及びデータを格納するのに適するランダムアクセスメモリ(RAM)、読取専用メモリ(ROM)、フラッシュメモリ、又はいずれかの他のメモリ、又はその組合せとすることができる。スペクトル分析器によって実行される機能の一部は、流れ図を参照して説明した。流れ図の各ブロックの全て又は一部分又はブロックの組合せの機能、作動、判断などは、コンピュータプログラム命令、ソフトウエア、ハードウエア、ファームウエア、又はその組合せとして実施することができることを当業者は容易に認めるはずである。本発明の機能を判断する命令又はプログラムは、以下に限定されるものではないが、書込不能ストレージ媒体(例えば、ROMのようなコンピュータ内の読み出し専用メモリデバイス、又はCD−ROM又はDVDディスクのようなコンピュータI/Oアタッチメントによる可読デバイス)に永久に格納される情報、書込可能ストレージ媒体(例えば、フロッピーディスク、着脱式フラッシュメモリ、及びハードドライブ)に変更可能に格納される情報、又はコンピュータネットワークを含む通信媒体を通してコンピュータに伝送される情報を含む多くの形式でプロセッサに供給することができることも当業者は容易に認めるはずである。更に、本発明は、ソフトウエアにおいて実施することができるが、本発明を実施するのに必要な機能は、代替的に、組合せ論理、「特定用途向け集積回路(ASIC)」、「フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)」、又は他のハードウエア、又はハードウエア、ソフトウエア、及び/又はファームウエア構成要素の何らかの組合せのようなファームウエア及び/又はハードウエア構成要素を使用して部分的又は全体的に具現化することができる。
【0093】
本発明は、上述の例示的な実施形態を通して説明したが、例示した実施形態の修正及び変更は、本明細書に開示した発明の精神から離れることなく行うことができることを当業者は理解するであろう。更に、好ましい実施形態を様々な例示的なデータ構造と共に説明したが、本発明のシステムは、様々なデータ構造を使用して実施することができることを当業者は認識するであろう。更に、開示した態様又はこれらの態様の一部分は、上述しなかった方法で組み合わせることができる。従って、本発明は、限定的に見てはならない。
【符号の説明】
【0094】
dX 領域サイズ
ROI 関連領域
Smax 最大ピクセル信号
Xo 開始ピクセル
【技術分野】
【0001】
本出願は、本明細書においてその全内容が引用により組み込まれている2007年2月23日に出願の米国特許仮出願出願番号第60/891、320号からの優先権を請求するものである。
【0002】
本発明は、時間分解分光法と、開始イベントに対して時間的に遅延したスペクトルの取得及び分析とに関し、より具体的には、線形センサアレイを使用したそのような分光法に関する。
【背景技術】
【0003】
励起された材料のサンプルによって生成されるスペクトルの分析は、構成元素の相対濃度を含むサンプルの元素組成に関する情報をもたらすことができる。このような分析は、金属再利用施設における金属の種類の特定及び分離と、工場及び科学捜査作業における品質管理試験とを含む多くの状況において行われている。一部の分光システムでは、直接読み取り光電子増倍管(PMT)システムは、多くの場合にスペクトルの僅かな部分のみ(典型的には、130nmから500nmまでのスペクトルの数パーセント未満)を網羅する解析的に関連のある波長に設定された複数のPMTを使用する。
【0004】
一部の事例においては、スペクトルの時間分解又はスペクトルの時間的結果の分析は、サンプルの組成に関して付加的な又は他の方法で得られると考えられるものよりも正確な情報を提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許仮出願出願番号第60/891、320号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】James G.Mainprize他著「デジタルマモグラフィのためのスロット走査式フォトダイオードアレイ/CCD混成検出器」、2002年6月25日、医学生物物理学部、トロント大学、サニーブルック、及び女子大保健科学センター、トロント、オンタリオ、M4N3M5、カナダ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の2次元電荷結合デバイス(CCD)は、時間分解スペクトルデータを捕捉するのに使用されることがあるが、ある一定の用途での使用を妨げる時間分解の制限を受けやすい。このようなCCDデバイスは、行及び列に配置された感光性ピクセルを含む。1つの作動モードにおいて、ピクセルの1行以外の全ての行を遮蔽することができるので、1つの遮蔽されていない行のみが露出される。各ピクセルがスペクトルの異なる部分に露出されるように、スペクトルは、CCDピクセルの露出された行の上に投影される。光子生成電荷は、露出されたピクセルの1つ又はそれよりも多くの下に蓄積する。全ての行に格納された電荷は、定期的に、それぞれの隣接した行に移動する(シフトされる)。すなわち、露出されたピクセル内の電荷は、第1の遮蔽された行に移動し、第1の遮蔽された行の電荷は、第2の遮蔽された行に移動するなどである。露出された行から電荷を移動させることにより、その行のピクセルから電荷を一掃する。最終行の電荷は、デバイスから読み出される。このアーキテクチャは、いずれかの露出されたピクセルに蓄積された電荷が、電荷を読み取出すことができる前に対応する列の全てのピクセルを通って移動する必要があるので、比較的質が悪い信号対ノイズ特性をもたらし、撮像デバイスの迅速な循環を容易にしない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の好ましい実施形態により、時間分解によって光を分析する方法を提供する。本方法は、(a)各感光性セルがスペクトルの異なる部分によって照射され、それによって1組の感光性セル内に電荷を生成するように、電荷転送デバイス感光性ピクセルセルの1次元アレイをスペクトルで照射する段階、(b)感光性セル内の電荷を、集積回路内に感光性セルと並置されたそれぞれのストレージセルの第1の組に非破壊的に複写する段階、(c)集積回路内のストレージセルの異なる組に対してこの前の段階を定期的に繰り返す段階、及び(d)ストレージセルの少なくとも一部に格納された電荷に関する情報を集積回路の外部の構成要素に供給する段階を有する。
【0009】
本発明の代替的な実施形態により、本方法は、電荷を非破壊的に複写する段階の繰返しの少なくとも一部に対して電荷を感光性セルに蓄積させる更に別の段階を含むことができる。更に、本方法は、感光性セルの部分集合における電荷を一掃する付加的な段階と、更に、電荷が一掃されることになる感光性セルの部分集合を特定する付加的な段階とを有することができる。
【0010】
本方法は、集積回路上の少なくとも2、000の感光性セルと、ピクセルセル当り少なくとも16のストレージセルとを準備する段階を更に含むことができる。本発明の一部の実施形態では、格納された電荷に関する情報は、それ自体、集積回路の外部にあるメモリに格納される。格納された電荷に関する情報は、ストレージセルの全て又は部分集合に関連する場合があり、選択されたストレージセルを識別する情報は、外部の構成要素から受け取ることができる。
【0011】
本方法はまた、格納された電荷に関する提供された情報を分析して、スペクトルを生成するのに使用されるサンプルの少なくとも1つの元素成分を識別する段階を含むことができる。
【0012】
本発明の他の実施形態により、各感光性セルがスペクトルの異なる部分によって照射され、それによって感光性セルのそれぞれに電荷を生成するように、電荷転送デバイス感光性ピクセルセルの1次元アレイをスペクトルで照射する段階、感光性セル内の電荷を、集積回路上にピクセルセルと並置されたそれぞれのストレージセルに定期的に非破壊的に複写する段階、及びストレージセルの少なくとも1つにおける電荷が所定の値を超える場合に電荷に関する情報をメモリに格納する段階を有する方法を提供する。
【0013】
本発明の一部の実施形態では、メモリは、集積回路上にピクセルセルと並置することができる。本方法は、少なくとも1つのストレージセルに対応する少なくとも1つの感光性ピクセルセル内の電荷を一掃する更に別の段階、及び露出時間が所定の値を超える場合に電荷に関する情報をメモリに格納する更に別の段階を含むことができる。特に、少なくとも1つのストレージセルに対応する少なくとも1つの感光性ピクセルセル内の電荷は、一掃することができる。更に、本方法はまた、メモリに格納された情報をピクセル毎の方式で合計する段階を含むことができる。
【0014】
本発明の更に別の実施形態では、所定の時間量が経過した場合に、ストレージセルの少なくとも1つにおける電荷に関する情報は、いずれかの対応する感光性ピクセルセル内の電荷を一掃することなくメモリに格納される。
【0015】
本発明の更に別の実施形態では、電荷転送デバイス感光性ピクセルセルの数は、波長のピクセル番号への動的可変登録を考慮するような方法で、露出された電荷転送デバイス感光性ピクセルセルの特定の数を超える。
【0016】
本発明の別の態様により、電荷転送デバイス感光性ピクセルセルのアレイを有する集積回路を提供する。更に、集積回路は、電荷ストレージセルの複数の組を有し、ストレージセルの各組に対して、その組の各ストレージセルは、電荷を感光性ピクセルセルからストレージセルに複写するために感光性ピクセルセルの異なるセルに結合している。最後に、集積回路は、光子生成電荷をピクセルセルからストレージセルの連続する組に定期的に非破壊的に複写するように作動する第1の制御論理と、ストレージセルの少なくとも1つに格納された電荷に関する情報を集積回路の外部の構成要素に供給するように作動する第2の制御論理とを有する。
【0017】
本発明の他の実施形態により、集積回路はまた、各感光性ピクセルセルに関連する複数のプリアンプを有することができる。感光性ピクセルセルのアレイは、1次元又は2次元とすることができ、具体的には、1次元アレイに配置された少なくとも2、000のピクセルを有することができる。感光性ピクセルセル当り少なくとも16組の電荷ストレージセルがある場合がある。第2の制御論理は、ストレージセルの全てよりも少ないセルに格納された電荷に関する情報を集積回路の外部の構成要素に供給するように作動することができ、ストレージセルに格納された電荷に関する情報は、集積回路の外部の構成要素によってランダムにアドレス可能である。
【0018】
ある一定の実施形態では、全てよりも少ないピクセルセルを識別する情報を受け取り、識別されたピクセルセルに格納された光子生成電荷を一掃するように作動する第3の制御論理を提供することができる。第2の制御論理は、ストレージセルの少なくとも1つに格納された電荷に関する情報を外部の構成要素にアナログ信号又はデジタル信号のいずれかとして供給するように作動することができる。
【0019】
本発明の他の実施形態により、集積回路はまた、各感光性ピクセルセルに関連する複数のプリアンプを有することができる。本発明の別の態様により、波長と基準イベントに続く時間とによって定められる2次元マニホルド上の1つ又はそれよりも多くの関連領域を形成するために使用することができるコンピュータベースのグラフィカルユーザインタフェースを提供する。インタフェースは、関連の波長、時間的ゲート開始時間、及びユーザ入力を受け取るための時間的ゲート継続時間を示すメニューを有する。インタフェースはまた、ユーザ指定の関連波長、ゲート開始時間、及び時間的ゲート継続時間をユーザ指定の関連領域内に集める関連領域モジュールと、ユーザ指定の関連領域を循環ROI待ち行列にグループ分けするためのソフトウエアモジュールとを有する。最後に、インタフェースは、ユーザ指定の関連領域に従ってピクセル問い合わせ及びデータストレージ機能を実行するための執行モジュールを有し、執行モジュールはまた、ユーザ指定の関連領域が特定の最大ピクセル信号を超える信号を含むか否かを判断するための比較器を含むことができる。
【0020】
本発明の他の態様は、1つ又はそれよりも多くのスカラー値を空間{あらゆる次元数}の順序付けされた要素に関連付けるための撮像システムのダイナミックレンジを拡張する方法を提供し、スカラー値は、励起に対する信号応答を特徴付け、空間の順序付けされた要素は、空間の順序付けされた要素の部分集合として定められた少なくとも1つの関連領域を含み、各関連領域は、閾値時間によって特徴付けられ、本方法は、第1の予備露出時間にわたって撮像システムを励起に露出し、閾値時間が指定の持続時間を超える全ての関連領域に対して閾値時間を判断する段階、第1の予備露出時間よりも短い第2の予備露出時間にわたって撮像システムを励起に露出し、閾値時間が指定の持続時間よりも短い関連領域に対する閾値時間を判断する段階、及び判断された閾値時間に基づいて、対応する関連領域に従って空間の順序付けされた要素の値を読み取ってリセットする段階を含む。
【0021】
本発明の特定的な実施形態では、第2の予備露出時間にわたって撮像システムを励起に露出する段階は、第1の予備露出時間にわたって撮像システムを励起に露出する段階に先行する。
【0022】
本発明は、図面と共に以下の「発明を実施するための形態」を参照することによってより完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態により図2のICを使用することができる例示的な環境の概略図である。
【図2】本発明の一実施形態により電荷転送デバイス感光性ピクセルの1次元アレイを有する集積回路(IC)のブロック図である。
【図3A】本発明の実施形態により有効スペクトル分解能を増加するために線形CIDに対して交互に配列されたピクセル構造の2つの実施形態の一方を示す図である。
【図3B】本発明の実施形態により有効スペクトル分解能を増加するために線形CIDに対して交互に配列されたピクセル構造の2つの実施形態の一方を示す図である。
【図4A】線形CIDピクセル内の光子生成電荷蓄積に関するポテンシャル井戸の図である。
【図4B(1)】最初のシーケンスにおいて電荷が感知フォトゲートに転送される線形CIDピクセル読み出しに関するポテンシャル井戸の図である。
【図4B(2)】電荷が感知フォトゲートからストレージフォトゲートに転送される線形CIDピクセル読み出しに関するポテンシャル井戸の図である。
【図4C(1)】電荷が最初にストレージフォトゲートに転送された状態の線形CIDピクセル位置からの電荷の注入(又は一掃)に関するポテンシャル井戸の図である。
【図4C(2)】ストレージフォトゲート及び感知フォトゲートから一掃された電荷を示す図である。
【図5】本発明の実施形態による「行ストレージレジスタ(RSR)」セルの概略図である。
【図6】本発明の実施形態による例示的な「二重線形CID画像制御器」のブロック図である。
【図7】200Hzのスパーク速度での1つの個別のスパーク放電及び第2の放電の開始からの仮想の信号対時間プロフィールを示す図である。
【図8】本発明の好ましい実施形態により線形CIDデバイス上の32行ストレージレジスタ(RSR0〜RSR31)の図式的表現を示す図である。
【図9】本発明の実施形態により線形CIDを使用する時間分解分光法に関する基本的な流れ図である。
【図10A】本発明の実施形態による「時間分解分光法(TRS)」アルゴリズムを使用して同時に得られた2つの関連領域に関する仮想の信号対時間プロフィールの例を示す図である。
【図10B】本発明の実施形態による「時間分解分光法(TRS)」アルゴリズムを使用して同時に得られた2つの関連領域に関する仮想の信号対時間プロフィールの例を示す図である。
【図10C】本発明の実施形態による「時間分解分光法(TRS)」アルゴリズムを使用して同時に得られた2つの関連領域に関する仮想の信号対時間プロフィールの例を示す図である。
【図11】異なる元素種からの信号の出現を示す多数のスパーク放電のTRSアルゴリズムを使用して得られた仮想の信号対時間プロフィールを示す図である。
【図12】本発明の実施形態により「ランダムアクセス積分(RAI)」アルゴリズムに従って実行される段階のフローを示す流れ図である。
【図13】図12のRAIアルゴリズムを使用して質問される3つのROIの場合の時間の関数としての信号を示す図である。
【図14】「極限ダイナミックレンジ(DR)」アルゴリズムを使用して質問される3つのROIの場合の時間の関数としての信号を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の好ましい実施形態により、電荷転送デバイス感光性ピクセルの1次元アレイ(「線形センサアレイ」とも呼ぶ)を使用し、時間分解又は時間積分を用いてスペクトルを分析する方法及び装置を開示する。感光性ピクセルは、電荷結合デバイス(CCD)、電荷注入デバイス(CID)、又は別の適切なタイプの電荷転送デバイス、又はいくつかのタイプの組合せとすることができる。開示する方法及び装置は、発光分光法(OES)、光吸収分光法、光学的蛍光分光法、及び天文学を利用する分析器のような手持ち式の化学組成分析器を含む多くの事例において適用可能である。
【0025】
1つの事例において、図1に概略的に示すようにサンプルの一部を励起することにより(スパーク/アーク、レーザなどにより)、又はそれとは異なり、基準光源の光の吸収などにより生成されたスペクトル10は、回折格子18を通って線形センサアレイ上に投影され、各ピクセル15は、図1に概略的に示すように、スペクトルの異なる部分(すなわち、異なる波長又は波長域)によって照射されるようになる。サンプルからの光12は、入射スリット14を通って、番号11によって全体的に示すような分光計に入る。この照射は、感光性ピクセルの1つ又はそれよりも多くに光子生成の電荷を作る。
【0026】
以下の節は、(1)線形センサアレイの一実施形態の電子アーキテクチャ、(2)線形センサアレイを駆動する電子制御システムのアーキテクチャ、及び(3)線形センサアレイ及び制御システムを適用することができるある一定の化学組成分析用途のために時間積分又は時間分解データを生成するために利用することができるアルゴリズムの説明を提供する。
【0027】
線形センサアレイ
一実施形態では、集積回路(IC)は、図2に概略的に示すように、感光性ピクセルの1次元アレイ16と、電荷ストレージセル(「行ストレージレジスタ」(RSR)とも呼ぶ)の複数の行と、制御論理22とを含む。
【0028】
感光性ピクセルの1次元アレイ16は、図3A及び図3Bに概略的に示すように、1行に配列することができ、又はこれらのピクセルは、2つ又はそれよりも多くの行にわたって交互に配列することができる。感光性ピクセルを交互に配列することにより、より小さい有効ピクセルピッチ及びより高い有効空間分解能がもたらされる。一実施形態(図3A)において、感光性ピクセルは、2行に均一に交互配列された14μm幅のピクセルである。得られる有効ピッチは、7μmであり、飽和容量は、約300、000電子量である。ピクセル高さは、100μmであり、撮像された入射スリットの高さを合わせて最適化することができる。従って、本明細書で使用する用語「1次元の」及び「線形アレイ」は、そのもの自体が特定の線よりも上又は下に中心がある検出器からその値を得る可能性があるとしても、スペクトル成分を表現する単一の値のみがいずれかの変位での分散ビームの強度に関連付けられているということを示している。
【0029】
ピクセル作動
図4A〜図4Cに示すように、線形CIDと呼ぶ実施形態の感光性ピクセルは、「注入ゲート」42及び「注入ドレーン」43と共にピクセル読み出しのために使用される2つのフォトゲート(「ストレージ」フォトゲート40及び「感知」フォトゲート41)を含む。感知フォトゲートは、ソースフォロアー及びリセット回路に電気的に接続される。注入ゲートは、ピクセルからの光子生成電荷の取得及び注入を制御するために設けられる。注入ドレーンは、光子生成電荷の一掃のためのシンクとして機能する。
【0030】
線形センサアレイは、上述の線形CIDにおいて使用されるフォトゲートと接続したソースフォロアーのような各ピクセル上のプリアンプ(プリアンプ−パー−ピクセル又はアクティブピクセル)を含むことができる。2次元プリアンプ−パー−ピクセル又はアクティブピクセルCCD又はCMOSデバイスも使用することができる。
【0031】
図4Cに示すように、ピクセル注入は、ピクセル読み出しの後、又は光子生成電荷の一掃が要求される露出サイクルのいずれかの時間に実行することができる。注入サイクルに間に、感知及びストレージフォトゲートは、それぞれ「Vsto_inj」及び「Vsen_inj」にバイアスされ、注入ドレーン電圧は、「Vdrain_inj」に設定される。注入ゲートは、その時に注入電位「V_in」にバイアスされる。注入は、全体的に(全ピクセル上で同時に)、ピクセルの群で(「セグメント注入」とも呼ぶ)、又はピクセルxピクセルベースで実行することができる。いずれかの感光性ピクセル又は感光性ピクセルの群(連続的又は不連続)内の電荷は、残りの感光性ピクセルとは無関係に一掃することができる。感光性ピクセルは、一掃するためにランダムにアドレス指定することができる。
【0032】
図4Aに示すように、光子生成電荷蓄積は、正の電圧が感知電極41及びストレージ電極40に印加される時に起こる。蓄積時間とは、これら2つのフォトゲートが深い空乏バイアスにある時間量のことである(「深い空乏」とは、移動電荷を奪われた比較的深い領域がMOSデバイスのゲート電極に印加された電圧のために電極の下に形成されるような非平衡状態のことをいう)。電子を伝導帯に上げるのに十分なエネルギを有する光子がピクセルに衝突する時、得られた移動電荷は、ストレージ電極バイアスによって首尾よく生成された電位に引き込まれる。
【0033】
ストレージ電極で集められる光子生成電荷44の総量は、光強度、蓄積時間、及び暗電流からの電荷寄与の関数である。撮像装置設計及び製造工程を最適化することによって暗電流を低減することはできるが、暗電流は、完全に除去することはできない。従って、拡張された蓄積時間を要求する用途では、線形センサアレイは、冷却される。
【0034】
図4Bに示すように、ピクセル読み出しは、最初にストレージフォトゲートから感知フォトゲートへの光子生成電荷の前方転送によって実行され、感知フォトゲートからストレージフォトゲートへの電荷の後方転送が続く。前方転送の間に、感知ゲートは、基準を「Vsen_read」電位に取る一方、ストレージゲートは、基準を「Vsto_rfr」電位に取る。感知ゲートは、次に絶縁され、感知ゲートの最初の電位サンプルCDS1が得られる。CDS1は、ピクセルの光子生成電荷の合計及びノイズ兆候を測定する。
【0035】
ストレージゲートは、次に、感知ゲートからストレージゲートに電荷を後方転送する「Vsto_btrf」に基準を取る。感知ゲートは、この作動の間には絶縁し続ける。次に、第2の感知フォトゲートサンプルCDS2が得られる。CDS2信号は、ピクセルのみのノイズ性質を示している。関連のノイズ補正信号は、この時に2つのCDSコンデンサ上に格納された値の間の差異(CDS1マイナスCDS2)である。この値(CDS1マイナスCDS2)は、ピクセル位置における電荷の量に比例する。ピクセル読み出し処理は、ピクセル位置における光子生成電荷を破壊しない。線形CID上のいずれかのピクセルの光子生成電荷レベルは、非破壊的に問い合わせする(読む)ことができる。非破壊的なピクセル読み出しは、スパークOES及び他の用途に関するダイナミックレンジ及び時間分解性能を改善する。
【0036】
線形CIDデバイス上のいずれかのピクセル位置にランダムにアクセスすることが可能である。ピクセルは、順不同に、かついずれかの方向にアドレス可能である。ランダムにアドレス指定されたいずれかのピクセル内の光子生成電荷を問い合わせする(読む)か、又は一掃するかのいずれかが可能である。ピクセルのランダムなアクセス可能性は、スパークOES及び他の用途に関するダイナミックレンジ及び時間分解性能を改善する。
【0037】
行ストレージレジスタ(RSR)
線形センサアレイは、様々な時点のピクセル信号を格納するための独立したパー−ピクセルコンデンサ(行ストレージレジスタ(RSR)と呼ぶ)20(図2において)を含む。線形センサアレイ上の感光性ピクセルは、スイッチングネットワークを通してRSRに結合される。様々な実施形態では、8又は32又は他のいずれかの数のピクセル当りのRSRをデバイスに実施することができ、異なる用途における異なる数のRSRには様々な利点が生じる。パー−ピクセルコンデンサは、MIMタイプ(金属−絶縁体−金属)、MOSタイプ(金属酸化膜半導体)、又は他の適切なタイプとすることができる。
【0038】
制御論理の制御の下で(図2におけるrW、IRC、及びCDS)、全ての感光性ピクセルにおける光子生成電荷は、当業技術で公知のように、相関二重サンプリング(CDS)によってRSRのいずれかの行の対応するストレージセルに並列に非破壊的に複写することができる。従って、RSRは、効率的にランダムにアクセス可能なアナログメモリデバイスである。
【0039】
一般的なCCDデバイスの作動とは異なり、CIDアレイ内の電荷は、本発明の実施形態によれば、実際に感光性ピクセルから他のセルに移動せず、電荷は、感光性ピクセル位置から全く移動しない。むしろ、各感光性ピクセルに関連するプリアンプ及び他の適切な電気回路により、電荷(現在の感光性セルにおける電荷に等しいか又は比例している)がRSR内に形成されることが可能になり、従って、感光性ピクセル内の電荷の量を低減することなくRSR内に感光性ピクセルの電荷の複写を生成する。従って、感光性ピクセル内の電荷がストレージセルに複写された(すなわち、「書かれた」)後であっても、光子生成電荷は、感光性ピクセルに蓄積し(「積分され」)続けることができる。感光性ピクセル内の光子生成電荷の連続する蓄積は、感光性ピクセルから得られた情報のSN比を改善することができる。
【0040】
従って、電荷を移動させることと電荷を非破壊的に複写することの間の差異が、本発明の事例においては重要である。本明細書において「電荷を非破壊的に複写すること」とは、感光性ピクセルのような第1のセル内にある電荷の複写を第1のセル内の電荷の量を低減することなく、別のセル内に生成することを意味する。非破壊的な複写作動の結果として、2つのほぼ等しい電荷が存在する。すなわち、第1のセル内にあるものと、第2のセル内にある第2のものである。上述のように、CCDデバイスは、時間分解データを捕捉するのに使用される。しかし、このような処理の間に、光子生成電荷は、第1のアクティブCCD位置から除去され、別の位置に移動させられる。その結果、第1の位置は、既に電荷を持たない。このような処理は、「破壊的な移動」と呼ぶ。光子生成電荷は破壊されずに、電荷は、単に別の位置に移動させられるに過ぎないという点において、CCD処理は、電荷を必ずしも破壊するわけではない。しかし、本明細書に説明されているように、破壊的な移動は、非破壊的な複写とは異なる。
【0041】
作動の1つのモードにおいて、感光性ピクセル内の電荷は、ストレージセル(RSR)の連続する行に定期的に複写される。従って、RSRは、感光性ピクセルによって観測されたスペクトルに関する時間分解情報を格納する。RSRの各行は、スペクトルが撮像された異なる期間を表し、1行にある各RSRは、スペクトルの異なる部分(波長又は波長域)に関する情報を表している。以下により詳細に示すように、スペクトルの一部分のみが多くの場合に分析の対象になる。従って、1行の全てのRSRを読むことは、必要ではない場合がある。更に、以下でより詳細に説明するように、特定の期間中に又はいくつかの期間中に収集された情報のみが、多くの場合に分析の対象になる場合がある。関連の期間は、関連のスペクトルの各部分で異なる可能性がある。従って、全てのRSR行からの読み出し情報は、必要でない場合がある。関連のRSRのみを読むことは、全てのRSRを読むのにかかると考えられる時間よりも少ない時間しかかからない。従って、関連のRSRに関する情報が読まれ、線形センサアレイは電荷を一掃され、全てのRSRが読まれると仮定した場合よりも迅速にその後の分光学的イベントからのデータを取得するように線形センサアレイに準備させることができる。
【0042】
ピクセル復号器、RSR復号器、及びRSR読み出しチェーン
2つの復号器を図2に示す実施形態において使用する。すなわち、13ビットピクセル復号器及び5ビットRSR復号器である。13ビットピクセルアドレス復号器(「ピクセル復号器」と呼ぶ)は、読み出されるピクセルを選択することを担当し、5ビットRSRアドレス復号器(「RSR復号器」と呼ぶ)は、読む又は書くためのRSRを選択する。他の実施形態では、当業者には分るであろうが、他の数のアドレスビットが使用される。読み出しチェーンは、各線形CIDピクセルの感知フォトゲートに接続される増幅器及びCDS回路を含む。
【0043】
上述のように、RSRは、効率的にランダムにアクセス可能なアナログメモリデバイスである。単一のRSRセルの結線図を図5に示している。CDS回路から来るアナログ電圧情報は、コンデンサ「C」上の電荷として格納される。この情報は、トランジスタスイッチ「T1」を通してストレージコンデンサに接続することができる垂直バス「Write_M」を通してセルにもたらされる。RSRの行「N」を書くために、「Write_select_N」は、アドレス「N」が5ビットRSR復号器によってラッチされた後に、入力信号「Write_M」を「高」に設定することにより、「高」に設定される。
【0044】
RSRは、ビデオ増幅器の入力をもたらす垂直バス「Read_M」を通して読むことができる。このバスは、トランジスタスイッチ「T2」を通してストレージコンデンサ「C」に接続することができる。行N、ピクセルMのメモリ位置を読むために、3つの条件を達成する必要がある。第1に、アドレス「N」は、5ビットRSR復号器内にラッチする必要がある。第2に、ピクセルアドレス「M」は、13ビットピクセル復号器によってラッチする必要があり、最後に、入力信号「Video_read」は、「高」に設定する必要がある。これらの3つの条件が達成される時、トランジスタのゲート「T2」が「高」に設定され、従って、「T2」スイッチを閉じて、RSRセルの情報がビデオ信号として読み出されるのを可能にする。
【0045】
RSRの全て又は一部における電荷に関する情報は、線形センサアレイから選択的に読むことができる。線形センサアレイは、RSR内の電荷の量をデジタル化し、RSR内の電荷の量に関する情報を線形センサアレイ外部のデバイスに供給するために、1つ又はそれよりも多くのアナログ/デジタル変換器(ADC)を含むことができる。代替的に、ADCは、線形センサアレイの外部に存在することができる。一実施形態では、線形センサアレイは、ADCを含まず、その代わりに1つ又はそれよりも多くの別のIC上に設けられた外部ADC又はADCの組にアナログ信号を供給する。
【0046】
RSRの全て又は選択された部分集合(連続的又は不連続的)は、読むためにランダムにアドレス可能である。選択されたRSRは、残りのRSRを読むことなく読むことができる。従って、関連の時間の関連のピクセルに関する情報が、線形センサアレイから読み出され、次に、感光性ピクセルから電荷を一掃することができる。関連のRSRは、RSRの全てを読むように要求されると考えられる時よりも少ない時間で読むことができ、従って、時間分解分光法に使用される従来の2次元CCDデバイス及び線形CCDデバイスに勝る利点をもたらす。
【0047】
電子制御システムアーキテクチャ
線形センサアレイは、様々な電子制御システムによって制御することができる。線形センサアレイ制御システムの一実施形態は、発光分光法「携帯合金分析計器(PAAI)」に使用することを目的とする「二重線形CID撮像装置制御器(DLIC)」及び「撮像装置専用インタフェース(ISI)」サブシステムである。DLIC−ISIサブシステムはまた、検出器の異なる線形アレイと交わる回折格子の複数の次数を提供するために、プリズムのような次数分類器によって光信号が直交分散されるあらゆる別の計器と共に使用することができると考えられる。例示的なDLICの詳細なブロック図は、図6に提供している。
【0048】
DLIC/ISIサブシステムは、「デジタル信号プロセッサ(DSP)」ベースのコントローラと二重線形CID分光計サブアセンブリとの間のインタフェース及び制御信号を提供する。このようなサブシステムは、特にOES分光計とのインタフェースで接続するのに適している。分光計は、二重の(又は他のいずれかの数の)熱電(TE)冷却線形CID撮像装置を含むことができる。
【0049】
本明細書で説明する線形CIDデバイス及びDLICは、時間遅延積分(TDI)モード(以下に説明)において行ストレージレジスタ(RSR)の読み出しを助け、16ビットビデオ信号デジタル処理又はアナログ信号読み出しを提供し、破壊的読み出し(図4Cに連続的に続く図4Bを参照)、非破壊的読み出し(図4Bを参照)、光子生成電荷の全体的な注入及び光子生成電荷のセグメント注入(図4Cを参照)を助け、実時間一定パターンノイズ(FPN)減算及び直接読み出し極限ダイナミックレンジ(以下に説明)アルゴリズムを助け、並列の撮像装置読み出し(線形CID撮像装置のいずれかの数において)、及びDSPへの実時間画像データ転送を助けることができる。更に、一体型湿度センサをDLICインタフェース内に含むことができる。本発明の好ましい実施形態では、線形CIDデバイスの温度は、暗電流を低減し、かつSN比を改善するために周囲よりも低い温度で安定させる必要がある。
【0050】
時間積分及び時間分解アルゴリズム
結合した線形CID及びDLIC−ISIサブシステムは、関連の時間積分又は時間分解データを生成するために、様々なアルゴリズムと共に使用することができる。以下のアルゴリズム、すなわち、「時間遅延積分(TDI)」アルゴリズム、「時間分解分光法(TRS)」アルゴリズム、「ランダムアクセス積分(RAI)」アルゴリズム、及び「極限ダイナミックレンジ(極限DR)」アルゴリズムを説明する。
【0051】
時間遅延積分(TDI)アルゴリズム
線形CIDとDLIC−ISIサブシステムとを組み合わせたシステム内に含まれる「時間遅延積分(TDI)」アルゴリズムの1つの目的は、スパーク発光分光法(OES)のような一定の繰返し数で起こる個々の分光学的イベントに関する正確な高分解能時間分解データを提供することである。
【0052】
一実施形態では、TDIアルゴリズムは、十分な時間分解能を有し、一定の時間増加単位で個々のスパーク放電からの信号の32のRSRサンプルまでを格納し、次のスパーク放電の前にこれら32のRSRサンプルを読んで線形センサから離れたメモリ(一般的に静的ランダムアクセスメモリ、SRAM)に送る。例えば、スパークが200Hzで行われる時、5ミリ秒(ms)毎にスパーク放電が起こる。図7は、200Hzのスパーク速度における1個のスパーク放電と第2の放電の開始とからできた、各々が時間の関数としてプロットされた、2つの仮想の信号62及び64を示している。太い信号プロフィール62は、中性ニッケルに関する206nm輝線において検出された信号を示すが、細い信号プロフィール64は、Ni206輝線の近くのバックグランド放射による信号を示している。バックグランド信号64は、Ni206nm信号62よりも急激に低下する。最適なSN比(及び従って検出限界)は、信号対バックグランド比が最大化される領域(例えば、図7のRSR2とRSR5との間)に観測窓を開閉することによって達成することができる。
【0053】
最大の信号対バックグランド比の領域におけるこの時間的ゲートを達成するために、一実施形態の線形CIDは、一定のユーザ指定の時間増加単位でスパーク放電の32の時間分解サンプルを格納することができる。図8は、線形CIDデバイス上の32のRSR(RSR0〜RSR31)の図式的表現を提供する。RSRの他の数は、他の実施形態において使用することができる。
【0054】
時間分解分光法の例をこれから図8を参照して提供する。スパーク周波数は、200Hzと仮定する。最適なNi206nm(ピクセルXNi=947、dXNi=11のピクセル)SN比は、スパーク放電後の100μsから200μsの間に起こることを仮定する。最適なCr267nm(ピクセルXCr=1、387、dXCr=13のピクセル)SN比は、スパーク放電後の140μsから280μsの間に起こることを仮定する。この場合に、TDIモードは、32個の20μs時間サンプリングを実行するために32のRSRに設定され、スパーク放電後の合計640μsを取得すると考えられる。640μsが20μsの増加単位で得られると、TDIアルゴリズムは、ピクセル947から959までに関するRSR4からRSR9まで(放電後100μsから200μsの間)のNi206nmデータと、ピクセル1、387から1、400までに関するRSR6からRSR13まで(放電後140μsから280μsの間)のCr267nmデータとを抽出する。5MHzのピクセル速度で個々のピクセルRSRを読むことは可能であるので、これらのNi206nmに関する55のRSR(11のピクセルの各々に関して5のRSR)及びCr267nmに関する91のRSR(13のピクセルの各々に関して7のRSR)の読み出しは、合計29.2μsを必要とする。RSR読み出しが完了した後に、線形CID上の全てのピクセルは、10μsの全体注入を使用して光子生成電荷を一掃される(図4Cを参照)。
【0055】
従って、32個の20μs時間サンプルのTDIサンプリング、146のピクセルRSRの読み出し、及びデバイスの注入の間に、合計679.2μsが経過する。200Hzスパークによってスパーク放電間に5000μsが存在するので、スパーク間にこの例のようなTDI分析を実行する十分な時間がある。
【0056】
上述の場合には、解析的に有用な情報がRSRの小部分集合から得られるという点において比較的簡単な例である。以下の場合には、より複雑である。スパーク周波数が500Hz(放電間2ms)まで増加し、TDIサンプリングが5μsの速度で起こると仮定する(この実施形態の線形CIDにおける最速可能RSR行書込み時間は、約1〜3μsであり、この速度において、信号対ノイズは低下する可能性がある)。時間的制約のために、一実施形態の線形CIDデバイス上にある全4、160のピクセルに関する全32のRSRを読むことは、実行不可能になる。
【0057】
しかし、150nmから800nmの間のスパークOESスペクトルの大部分は、解析的に有用ではない。更に、一般的な分析における解析的に関連の波長においてさえも、ユーザは、通常は僅かのRSRからのデータしか必要としない。関連のRSRが、波長から波長に(すなわち、ピクセル領域からピクセル領域に)変化する場合があるが、関連の全ての波長に関する全32のRSRを読むことは、必要ではない場合がある。表1は、一実施形態の線形CIDにおいて100Hzから1、000Hzまでの範囲のスパーク周波数に対して読むことが可能なRSRの総数の試算を提供する。1、000Hzの最速スパーク周波数においてさえも、スパーク放電間に著しい数のRSR読み出し(約3、300)を達成することが依然として可能であることに注意されたい。
【0058】
【0059】
以下の実施例で理解することができるように、比較的低いスパーク周波数において、RSR行書込時間は、スパーク放電間に達成することができる個々のRSRピクセル読み出しの数に小さい影響しかもたらさない。スパーク周波数が200Hz(放電間5ms)であると仮定し、ユーザが、サンプリング当り10μsで32のTDIサンプルを要求すると仮定する。この場合に、TDIサンプリングのための320μsと線形CIDの注入のための10μsとを減算した後に、RSR読み出しのために4、670μsが残ることになる。5MHzのRSR読み出し速度において、その時間は、23、350個のRSRピクセル読み出しに相当する。その一方、TDIサンプリング増分が1μsまで減少した場合に、TDIサンプリングのための32μsと線形CIDの注入のための10μsとを減算した後に、RSR読み出しのために4、958μsが残ることになる。5MHzのRSR読み出し速度において、その時間は、24、790個のRSRピクセル読み出し、又は10μsのTDIサンプリング速度で達成することができる時よりも約6%だけ多い読み出しに相当する。
【0060】
スパーク周波数(スパーク放電間の時間間隔を決める)、TDIサンプリング速度、及び光子生成電荷を線形CIDデバイスから一掃するのに必要な時間量が与えられる時、次のスパーク放電の前に読むことができるピクセルRSRの数に限界がある。表1に示すように、スパーク周波数が400Hzであり、TDIサンプリング速度が10μsであり、線形CID一掃時間が10μsである時、個々のRSRピクセル読み出しのために2、170μsが利用可能である。5MHzのRSRピクセル読み出し速度は、合計10、850のRSRピクセル読み出しに相当する。全32のRSR行ではなく、ピクセル当り平均5のRSRのみを問い合わせすることが必要な時、2、170ピクセルと同数(又は4、160のピクセルを有する一実施形態の線形CIDデバイスの半分よりも僅かに多く)のTDI試験を実施することができる。
【0061】
スパーク発光間に問い合わせすることができる個々のピクセルRSRの総数は、スパーク周波数、TDIサンプリング速度、及び線形CID注入時間によって制限される。これらの制限内で、ピクセル領域のあらゆる数(Xo、dXによって判断される)を観測することができる。
【0062】
本発明のある一定の実施形態内では、線形CIDアレイ内のピクセルの数は、必要なスペクトルチャンネルの数を超える。スペクトル撮像のために使用されるピクセルのいずれかの側に対する付加的なピクセルは、アラインメント公差を軽減するように機能することができる。更に、垂直ピクセル寸法(すなわち、アレイ方向に対して垂直である)は、画像サイズよりも大きく、また、例えば、分光計の分散要素に対するアレイの配置に関するアラインメント公差を軽減することができる。更に、電荷転送デバイス感光性ピクセルセルの数は、露出された電荷転送デバイス感光性ピクセルセルの特定の数を上回り、極限のスペクトルチャンネルは、アラインメント又は他の作動条件の変動のために変化する可能性がある特定のピクセルに対応することができる。従って、ピクセル番号への波長の登録は、本発明が組み込まれる計器の作動の進行中に動的に変化する場合がある。
【0063】
時間分解分光法アルゴリズム
線形CIDとDLIC−ISIサブシステムとを組み合わせたシステム内に収容された「時間分解分光法(TRS)」アルゴリズムの目的は、線形CIDデバイス上の一連のユーザ指定の「関連領域(ROI)」に対する時間に関する信号をモニタすることである。
【0064】
本発明の範囲は、本発明を適用することができる分光法技術に限定されることはない。このような技術の例には、レーザ誘起絶縁破壊分光法(LIBS)、スパーク発光分光法(OES)、イオンクロマトグラフィー誘導結合プラズマ発光分光法(IC−ICP−OES)、高速液体クロマトグラフィーICP−OES(HPLC−ICP−OES)、及びフローインジェクション分析ICP−OES(FIA−ICP−OES)が含まれる。線形CIDのTRSアルゴリズムはまた、HPLCのための紫外可視吸収検出、時間分解蛍光のような他の時間分解用途に有利に使用することができる。
【0065】
例示的なTRSアルゴリズムの基本的な流れ図を図9に示している。他のアルゴリズムは、本発明の範囲内で使用することができるが、実施例として本明細書で説明するアルゴリズムは、経過時間と現在の信号の両方をモニタすることによって信号データ点を時間ベースで取得する。新しい点が得られる時間又は信号のいずれかに到達すると、線形CIDのROI(Xo及びdXに依存する)が読まれ、データは、DLIC−ISIサブシステムランダムアクセスメモリ(RAM)に格納される。
【0066】
アルゴリズムの詳細を続ける。ユーザは、線形CID上に開始ピクセル(Xo)及び領域サイズ(dX)を含む1つ又はそれよりも多くのROIを判断する。グラフィカルユーザインタフェース(GUI)は、この目的のために使用することができる。アルゴリズムは、その際に、これらのROIを集合させて循環ROI待ち行列にする。
【0067】
アルゴリズムの第1の段階は、循環観測待ち行列の最上部のROIを読むことである。線形CID上で実行される全ての読み出しは、光子生成電荷に関しては非破壊的であることに注意されたい。これは、線形CID上のいずれかのピクセルがそのピクセル位置(又は別のいずれかのピクセル位置)における光子生成電荷に影響を与えることなくいずれかの点において時間ベースで問い合わせすることができることを意味している。ROIを読んだ後に、アルゴリズムは、ROIにおける最大ピクセル信号(Smax)、すなわち、最大の蓄積光子生成電荷を有するROI内のピクセルの信号を判断する。この最大信号(Smax)は、次に、ユーザ指定の信号増分に対して比較され、現在の露出時間は、ユーザ指定の時間増分に対して比較される。ユーザ指定の信号増分又はユーザ指定の時間増分のいずれかに到達すると、ROIピクセルデータは、読み出しのためのタイムスタンプと共にDLICのRAMに格納される。ユーザ指定の信号増分とユーザ指定の時間増分のいずれにも到達しなかった時、ROIは、循環して観測待ち行列の最下部に至り、循環待ち行列内の次のROIが質問される。
【0068】
ユーザ指定の信号増分及びユーザ指定の時間増分は、GUIの全てのROIに関して全体的にユーザによって判断することができる。例えば、信号増分は、線形CIDデバイス飽和容量の百分率として設定することができ、信号増分をより低い値に設定することにより、ユーザは、信号が急速に立ち上がっている間に、より頻繁に時間分解ピクセルデータをアルゴリズムに取得させることができる。このようにして、クロマトグラフィーピークのような過渡現象の時間プロフィールをより正確に判断することができる。
【0069】
一実施形態では、時間増分の値を約1μsと同じ低さに、また約10秒と同じ高さに設定することができる。通常、時間増分は、約0.001秒から約1秒の間の値に設定される。ユーザが一定の時間増分でデータ点を取得することを望む時、信号増分は、飽和容量の100%に設定される。このようにして、時間増分は、いつも信号増分よりも前に達成される。
【0070】
時間分解データ点が得られた後に、アルゴリズムは、閾値信号(通常は、線形CID飽和容量の75%)に対して、すなわち、所定の値又はユーザによって入力された値に対してROIの最大信号(Smax)を検査する(上述のように)。信号が閾値レベルを超えると、信号は、飽和状態に接近している可能性があり、ROIは、光子生成電荷を一掃される。このようにして、ROIに関する信号が線形CIDの飽和レベル(すなわち、飽和容量)を超えるのを防止することができる。アルゴリズムのこの点において、ROIは、循環して観測待ち行列の最下部に至り、待ち行列内の次のROIが質問される。
【0071】
図10A〜図10Cは、信号積分の進行中の個々のROIからの一掃を示すか又は示さないかの2つの場合の例を示している。図10A〜図10Cに示す2つのROIに関する信号対時間のプロフィールは、TRSアルゴリズムを使用して同時に得られる。図10Aにおいて、露出を継続する経路の約60%でプロフィール92によって示したROIの信号においてガウス分布スパイクが発生する。しかし、図10Aに示すように、信号92は、閾値レベルに到達することはなく、従って、ROIを一掃することは必要ではない。単純な積分信号対時間プロフィールのROIのガウス分布ピークが観測される。
【0072】
しかし、図10AのROIプロフィール94によって示した状況は、より複雑である。積分ガウス分布信号スパイクが、露出を継続する経路の約40%でこのROI上に観測される。この信号スパイクは、信号を閾値信号レベル(飽和容量の75%)に到達させるのに十分な強度のものであり、従って、信号スパイクが消えていく時にROIから光子生成電荷を一掃することが必要である。最初のROI一掃の後に、信号は、積分ガウス分布スパイクの残りの間に上がり続ける。スパイクが完全に消えた後に、信号レベルが再び閾値レベルに到達する露出を継続する経路の約70%までは、単純なバックグランド信号のために、信号は、上がり続ける。この点において、ROIは再び一掃される。この一掃の後に、ユーザ指定の露出時間に到達するまでは、バックグランドのために、信号は上がり続ける。
【0073】
TRS露出の完了後に、ROI一掃点は、ROI一掃の前の点で得られた信号をROI一掃後に測定された全ての信号レベルに加えることによって除去される。この信号補正処理の結果は、図10Bに示し、ROI信号92と94の両方に関して連続的な積分信号レベルが観測される。図10BのROI信号の時間微分は、図10Cに示している。所望により、グラフィカルユーザインタフェースは、ユーザが、ROI一掃点の全てを示している生信号モード(図10Aのような)において、積分モード(図10Bのような)において、1次微分モード(図10Cのような)において、及び場合により2次微分モード(図示せず)においてプロット表示するのを可能にする。
【0074】
図11は、TRSアルゴリズムの1つの可能な用途を示している。本発明の実施形態によってもたらされた時間分解のレベルにより、個々のOESスパーク放電を時間ベースで分解することができ、個々のスパーク放電を分解する機能により、元素のスペシエーションを実行することが可能になる。例えば、鋼鉄の分析において、アルミニウムの総含有量を計量するだけでなく、Al2O3含有物(「不溶性」アルミニウム)及び元素金属Al(「可溶性」アルミニウム)を計量することができる点が有用である。図11に示すようなAl308nm発光の仮想の1次微分TRS走査において、より強いピークは、Al2O3含有物に当たる個々のスパークによるものであり、より弱いピークは、元素金属Alを有する位置に当たる個々のスパークによるものである。このようなTRS走査からのデータにより、適切なアルミニウム分析統計値を生成することができ、総アルミニウム量、並びにAl2O3及び金属Al濃度を判断することができる。
【0075】
ランダムアクセス積分
線形CIDとDLIC−ISIサブシステムとを組み合わせたシステム内に収容された「ランダムアクセス積分(RAI)」アルゴリズムの目的は、線形CIDデバイス上の一連のユーザ指定の関連領域(ROI)に対してユーザ指定の期間にわたって全積分信号をモニタすることである。
【0076】
RAIアルゴリズムは、経験的に観測された光子束に基づいてROIからROIまでの有効な露出時間を制御し、従って、可能な時にROI上の線形CID飽和を防止する。このアルゴリズムはまた、可能な時には、SN比を光子発射ノイズ制限ドメインに押し込むために、非破壊的読み出し(NDRO)の数を変化させることができる。
【0077】
このアルゴリズムの基本的な流れ図は、図12において示している。ROIは、ROI待ち行列の最上部まで移動し、ROIは非破壊的に読まれる。次に、アルゴリズムは、通常は飽和信号の約75%(又は別の適切な値)に設定されている閾値信号に対してROIの最大ピクセル信号を検査する。最大ピクセル信号が閾値信号を上回らない時、ROIは、循環してROI待ち行列の最下部に至る。ROI上の最大信号が閾値信号を超える時、ROI読み出しからのピクセルデータ及びタイムスタンプは、RAMに格納され、セグメント注入命令を使用して、ROIは光子生成電荷を一掃される。この点において、ROIは、循環してROI待ち行列の最下部に至り、この処理は、待ち行列内の次のROIにおいて繰り返される。この処理の結果は、図13に示している。
【0078】
いずれかの所定のROI上の信号がユーザ指定の露出時間(通常5〜60秒)の間に閾値信号に達する時、単一の非破壊的読み出しだけが、SN比を光子発射ノイズ制限ドメインに押し込むように要求される。しかし、所定のROI上の信号がユーザ指定の露出時間にわたって閾値に達しない時、SN比を光子発射ノイズ制限ドメインに押し込むために、最後の読み出しに複数の非破壊的読み出しを使用することができる。
【0079】
図13は、誘導結合プラズマ(ICP)が使用される場合のように、定常状態光源(すなわち、光子束がデータ取得の時間スケールにおいて時間と共に高々ゆっくりと変化するような光源)がある時の3つのROIに関する仮想の信号対露出時間プロフィールを示している。プロフィール130によって示したROIは、強く照射される。3つの均等に離間した間隔において、ROI上の信号は、閾値信号レベルに達する。これらの点において、ROIに関するピクセルデータは、タイムスタンプを押され、かつ格納する必要があり、ROIは、次のサイクルを見越して一掃する必要がある。ユーザ指定の露出期間(露出時間)の最後に、3つの積分注入サイクルからのデータと露出時間において得られた最後の読み出しからのデータとが合計され、ROIに関する時間積分信号データを生成する。プロフィール132によって示したROIは、強くは照射されていない。このプロフィールは、ユーザ指定の露出時間が終了する前に1つの積分注入サイクルのみを有し、最後の時間にわたって読み出される。線134によって示したROIは、弱く照射される。ROI上の信号は、ユーザ指定の露出時間の間には閾値に到達しない。ROIに関するピクセルデータは、露出時間が終了した後に一度かつ一度だけ格納される。ROIを読むのに使用される非破壊的読み出し(NDRO)の数は、可能な時には、SN比を光子発射ノイズ制限ドメインに押し込むように設定される。3つ全てのROIは、信号強度に関係なく同じ時間間隔の間に観測されることに注意されたい。このようにして、線形CIDシステムの線形ダイナミックレンジは、光源の線形ダイナミックレンジに合うように拡張することができる(約6桁から8桁の間のように)。
【0080】
極限ダイナミックレンジアルゴリズム
線形CIDとDLIC−ISIサブシステムとを組み合わせたシステム内に収容された「極限ダイナミックレンジ(極限DR)」アルゴリズムの目的は、拡張されたダイナミックレンジを用いて線形CIDデバイス上の全てのピクセルにわたり、ユーザ指定の期間にわたって全積分信号をモニタすることである。「極限DR」アルゴリズムは、経験的に観測された光子束に基づいてROIからROIまでの有効な露出時間を制御し、従って、可能な時には、全ての線形CIDピクセル上の飽和を防止する。
【0081】
「極限DR」アルゴリズムは、以下のように実行する。線形CIDは、短い「予備露出」期間にわたって光源に露出される。予備露出の時間は、通常はユーザ指定の露出期間の0.4%から1%の間である。予備露出及びユーザ指定の露出期間からの線形CIDピクセル信号に基づいて、ユーザ指定の露出期間において又はその前に飽和信号レベル(飽和容量又は別の適切な値)に達する線形CID上のこれらのピクセル(ROI)が識別される。線形CIDデバイスは、次に、全体的に光子生成電荷を一掃され、ユーザ指定時間の露出が開始される。露出中に、予備露出ルーチンによって識別されたROIは、図14に示すように、アルゴリズム指定の間隔で読まれて光子生成電荷を一掃される。
【0082】
図14は、予備露出ルーチンによって識別された3つのROIに関する仮想の信号対露出時間のプロフィールを示している。プロフィール150によって示したROIは、強く照射される。9つの均等に離間した間隔において、ROIは読まれ、ピクセルデータは、タイムスタンプを押されて格納され、ROIは、次のサイクルを見越して一掃する必要がある。ユーザ指定の露出期間の最後に、9つの積分注入サイクルからのデータとユーザ指定の露出時間に得られた最後の読み出しからのデータとが合計され、ROIに関する時間積分信号データを生成する。プロフィール152によって示したROIは、強くは照射されていない。このプロフィールは、ユーザ指定の露出時間が終了する前に3つの積分注入サイクルのみを有し、最後の時間にわたって読まれる。線154によって示したROIは、弱く照射される。このプロフィールは、ユーザ指定の露出時間が終了する前に1つの積分注入サイクルのみを有し、最後の時間にわたって読み出される。
【0083】
線形CIDピクセルの並列CDSサンプリングに関するオーバヘッドを最小限にするために、予備露出アルゴリズムによって識別された全てのROIは、同じ並列CDSサンプリングを使用して読まれる。図14に示す実施例において、プロフィール150によって示したROIは、2秒間隔でCDSサンプリングによって読まれる。第3の2秒CDSサンプリング毎に、プロフィール152によって示したROIも読まれ、第9番目の2秒CDSサンプリング毎に、プロフィール154によって示したROIも読まれる。
【0084】
予備露出ルーチンによって識別された全てのROIは、信号強度に関係なく同じユーザ指定の露出期間にわたって観測されることに注意されたい。このようにして、線形CIDシステムの線形ダイナミックレンジは、光源の線形ダイナミックレンジに合うように拡張することができる(約6桁から9桁の間のように)。
【0085】
ユーザ指定の露出期間が終了した後に、予備露出によって識別されたROI内に存在しなかった全ての線形CIDピクセルが読まれる。このようにして、線形CID上の全てのピクセルに関する信号データが得られる。図14のプロフィール150、152、及び154によって示したデータのように、より強く照射されたピクセルに関するピクセルデータが、ユーザ指定の露出期間にわたって得られ、より弱く照射されたピクセルに関するピクセルデータは、ユーザ指定の露出期間の後に得られる。
【0086】
従って、ランダムピクセルアドレス指定と、非破壊的読み出しと、線形CID及びDLIC−ISIサブシステムの選択的なピクセル一掃の特徴とを利用して、極限DR露出モードは、経験的に観測された光子束によって判断された周波数で、強く照射されたピクセル領域を読み取ってリセットする。このモードにおいて、ダイナミックレンジは、飽和容量によって制限されない。代替的に、ダイナミックレンジは、ROIを読み、かつ一掃することができる最大周波数によって制限される。この周波数は、300〜10、000Hzの範囲(0.1〜3.3ミリ秒のサイクル)にあることができる。
【0087】
「極限DR」アルゴリズムの一実施形態では、ROIを読み、かつ一掃することができる最大周波数、従って、達成することができる最大ダイナミックレンジは、予備露出の時間によって制限される。例えば、ユーザ指定の露出時間が60秒で、予備露出時間が0.30秒である時、ROIを読み、かつ一掃することができる最大周波数は、約300Hzに制限される場合がある。この場合及び他の同様の場合には、ダイナミックレンジは、より短い時間の第2の予備露出を実行することにより、更に拡張することができる。本明細書に記載した実施例では、0.03秒時間の第2の予備露出を実行することができる。第2の0.03秒予備露出からの線形CIDピクセルデータは、0.0から0.3秒の間の露出時間(第1の予備露出の時間)において線形CIDピクセルを飽和させるROIを識別するのに使用され、第1の0.3秒予備露出は、0.3秒からユーザ指定の全露出時間の間の露出時間において線形CIDピクセルを飽和させるROIを識別するのに使用されると考えられる。この結果は、ROIを読み、かつ一掃することができる最大周波数においては約3000Hzまでの増加になり、ダイナミックレンジにおいては1桁の増加になるであろう。一部の実施形態では、これらの予備露出の順序は、反対になる場合がある。一部の実施形態では、2つの予備露出の一方又は両方の時間は、自動的に計算することができる。一実施形態では、より短い予備露出の時間は、既定の又はユーザ指定のより長い予備露出の分割量とすることができる。
【0088】
概略的に説明すると、ダイナミックレンジは、1つ又はそれよりも多くのスカラー値をあらゆる数の次元の空間の順序付けされた要素に関連付けるあらゆる撮像システムに対して拡張することができる。スカラー値は、励起に対する信号応答を特徴付ける値、例えば、特定の検出器要素上の検出強度である。空間の順序付けされた要素には、空間の順序付けされた要素の部分集合として定められた少なくとも1つの関連領域が含まれる。関連の各領域は、関連領域の要素の1つにおいて電荷が飽和する時間に対応する閾値時間によって特徴付けられる。撮像に対して撮像システムを設定するために、撮像システムは、第1の予備露出時間にわたって最初に励起に露出され、閾値時間が指定の持続時間を超えるような全ての関連領域に関する閾値時間を判断する。次に、撮像システムは、第1の予備露出時間よりも短い第2の予備露出時間にわたって励起に露出され、閾値時間が指定の持続時間よりも短い関連領域に関する閾値時間を判断する。判断された閾値時間に基づいて、空間の順序付けされた要素の値は、対応する関連領域に関して判断された閾値時間に応じて読まれ、かつリセットされる。
【0089】
本明細書では、4、160の感光性ピクセルを有する集積回路を説明してきたが、他の数の感光性ピクセルを含むことができる。具体的には、アラインメント公差を軽減するために、かつピクセル番号への動的に変化する波長の登録に備えるために、設けられる感光性ピクセルの数は、実際に使用されるスペクトルチャンネルの数を超えることが望ましい。
【0090】
更に、感光性ピクセルの1次元アレイを有する集積回路を説明してきたが、感光性ピクセルの2次元アレイを含むことができる。このような場合には、感光性ピクセルの各行に個別の組のRSRを設けることができる。一実施形態では、RSRの各組は、別々の平面として実施される。別の態様では、2次元デバイスが、上述の方法と同様の方法で作動し、すなわち、全ての感光性ピクセルセル内の電荷の複写が、選択されたRSRの組に並行して複写される。このようなデバイスは、スペクトル及び他の種類の画像を含む時間分解2次元画像を供給するために使用することができる。
【0091】
線形CIDセンサのアーキテクチャに適用することができる例示的な原理は、図2に示すブロック図を参照して本明細書で説明し、ピクセル及び/又はRSRの特定の数に言及したが、これらの数は一例を示すためだけである。それと同様に、これらの原理は、感光性ピクセルが1つの基板上に形成され、行ストレージレジスタが別の基板上に形成され、これら2つの基板は、インジウムバンプ結合などによって結合される回路のような混成集積回路に適用することができる。(このような結合は、James G.Mainprize他著「デジタルマモグラフィのためのスロット走査式フォトダイオードアレイ/CCD混成検出器」、2002年6月25日、医学生物物理学部、トロント大学、サニーブルック、及び女子大保健科学センター、トロント、オンタリオ、M4N3M5、カナダに記載されており、その内容は、引用により本明細書に組み込まれている。)これらの原理は、センサを有する基板又は集積回路とストレージセルを有する基板又は集積回路との他の組合せにも適用することができる。
【0092】
スペクトル分析器は、メモリに格納された命令によって制御されるプロセッサを含むものとして説明した。メモリは、制御ソフトウエア又は他の命令及びデータを格納するのに適するランダムアクセスメモリ(RAM)、読取専用メモリ(ROM)、フラッシュメモリ、又はいずれかの他のメモリ、又はその組合せとすることができる。スペクトル分析器によって実行される機能の一部は、流れ図を参照して説明した。流れ図の各ブロックの全て又は一部分又はブロックの組合せの機能、作動、判断などは、コンピュータプログラム命令、ソフトウエア、ハードウエア、ファームウエア、又はその組合せとして実施することができることを当業者は容易に認めるはずである。本発明の機能を判断する命令又はプログラムは、以下に限定されるものではないが、書込不能ストレージ媒体(例えば、ROMのようなコンピュータ内の読み出し専用メモリデバイス、又はCD−ROM又はDVDディスクのようなコンピュータI/Oアタッチメントによる可読デバイス)に永久に格納される情報、書込可能ストレージ媒体(例えば、フロッピーディスク、着脱式フラッシュメモリ、及びハードドライブ)に変更可能に格納される情報、又はコンピュータネットワークを含む通信媒体を通してコンピュータに伝送される情報を含む多くの形式でプロセッサに供給することができることも当業者は容易に認めるはずである。更に、本発明は、ソフトウエアにおいて実施することができるが、本発明を実施するのに必要な機能は、代替的に、組合せ論理、「特定用途向け集積回路(ASIC)」、「フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)」、又は他のハードウエア、又はハードウエア、ソフトウエア、及び/又はファームウエア構成要素の何らかの組合せのようなファームウエア及び/又はハードウエア構成要素を使用して部分的又は全体的に具現化することができる。
【0093】
本発明は、上述の例示的な実施形態を通して説明したが、例示した実施形態の修正及び変更は、本明細書に開示した発明の精神から離れることなく行うことができることを当業者は理解するであろう。更に、好ましい実施形態を様々な例示的なデータ構造と共に説明したが、本発明のシステムは、様々なデータ構造を使用して実施することができることを当業者は認識するであろう。更に、開示した態様又はこれらの態様の一部分は、上述しなかった方法で組み合わせることができる。従って、本発明は、限定的に見てはならない。
【符号の説明】
【0094】
dX 領域サイズ
ROI 関連領域
Smax 最大ピクセル信号
Xo 開始ピクセル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時間分解によってスペクトルにより特徴付けられた光を分析する方法であって、
(a)各感光性セルがスペクトルの異なる部分によって照射され、それによって1組の該感光性セルに電荷を生成するように、電荷転送デバイス感光性ピクセルセルの1次元アレイをスペクトルで照射する段階、
(b)集積回路に前記感光性セルと並置されたそれぞれのストレージセルの第1の組に該感光性セルにおける前記電荷を非破壊的に複写する段階、
(c)前記集積回路のストレージセルの異なる組に対して(b)を定期的に繰り返す段階、及び
(d)前記ストレージセルの少なくとも一部に格納された前記電荷に関する情報を前記集積回路の外部の構成要素に供給する段階、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
(b)の前記繰返しの少なくとも一部にわたって電荷を前記感光性セルに蓄積させる段階を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(b)を少なくとも1回実行した後に前記感光性セルの部分集合における前記電荷を一掃する段階を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
電荷が一掃されることになる前記感光性セルの前記部分集合を特定する段階を更に含むことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記集積回路上に少なくとも2、000の感光性セルを設ける段階を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
各ピクセルセルに対して前記集積回路上に少なくとも16のストレージセルを設ける段階を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記供給された情報を前記集積回路の外部のメモリに格納する段階を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記情報を供給する段階は、前記ストレージセルの全てに格納された前記電荷に関する情報を前記集積回路の外部の前記構成要素に供給する段階を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記情報を供給する段階は、前記ストレージセルの選択されたもの、かつ全てよりも少ないものに格納された前記電荷に関する情報を前記集積回路の外部の前記構成要素に供給する段階を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ストレージセルの前記選択されたものを識別する情報を前記集積回路の外部の構成要素から受け取る段階を更に含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記スペクトルを生成するのに使用されるサンプルの少なくとも1つの元素成分を識別するために前記格納された電荷に関して前記供給された情報を分析する段階を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
スペクトルを時間積分する方法であって、
(a)各感光性ピクセルセルがスペクトルの異なる部分によって照射され、それによって該感光性セルのそれぞれに電荷を生成するように、電荷転送デバイス感光性ピクセルセルの1次元アレイをスペクトルで照射する段階、
(b)集積回路上に前記ピクセルセルと並置されたそれぞれのストレージセルに該感光性セルにおける前記電荷を定期的に非破壊的に複写する段階、及び
(c)前記ストレージセルの少なくとも1つにおける電荷が所定の値を超える場合に、該電荷に関する情報をメモリに格納する段階、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
前記電荷転送デバイス感光性ピクセルセルの1次元アレイを準備する段階を更に含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記メモリは、前記集積回路上に前記ピクセルセルと並置されていることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つのストレージセルに対応する少なくとも1つの感光性ピクセルセルにおける電荷を一掃する段階を更に含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項16】
露出時間が所定の値を超える場合に、前記電荷に関する情報をメモリに格納する段階を更に含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つのストレージセルに対応する少なくとも1つの感光性ピクセルセルにおける電荷を一掃する段階を更に含むことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記ストレージセルの少なくとも1つにおける電荷が所定の値を超える場合に、該少なくとも1つのストレージセルに対応する少なくとも1つの感光性ピクセルセルにおける電荷を一掃する段階を更に含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記ストレージセルの少なくとも1つにおける電荷が所定の値を超える場合に、該少なくとも1つのストレージセルに対応する少なくとも1つの感光性ピクセルセルにおける電荷を一掃する段階を更に含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記メモリに前記情報を格納する段階は、該格納された情報に関連するタイムスタンプを格納する段階を含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項21】
前記メモリに格納された前記情報をピクセル毎の方式で合計する段階を更に含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項22】
所定の時間量が経過した場合に、前記ストレージセルの少なくとも1つにおける電荷に関する情報を少なくとも1つの対応する感光性ピクセルセルにおける電荷を一掃することなくメモリに格納する段階を更に含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項23】
電荷転送デバイス感光性ピクセルセルの数が、ピクセル番号への波長の動的可変登録を考慮するような方法で、露出された電荷転送デバイス感光性ピクセルセルの指定数を超えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項24】
電荷転送デバイス感光性ピクセルセルのアレイと、
ストレージセルの各組に対して、組における各ストレージセルが、電荷を前記感光性ピクセルセルからストレージセルに複写するために該感光性ピクセルセルの異なるものに結合している、電荷ストレージセルの複数の組と、
光子生成電荷を前記ピクセルセルから前記ストレージセルの連続する組に定期的に非破壊的に複写するように作動する第1の制御論理と、
前記ストレージセルの少なくとも1つに格納された前記電荷に関する情報を集積回路の外部の構成要素に供給するように作動する第2の制御論理と、
を含むことを特徴とする集積回路。
【請求項25】
各感光性ピクセルセルに関連する複数のプリアンプを更に含むことを特徴とする請求項24に記載の集積回路。
【請求項26】
前記感光性ピクセルセルのアレイは、1次元アレイであることを特徴とする請求項24に記載の集積回路。
【請求項27】
前記ピクセルセルのアレイは、2次元アレイであることを特徴とする請求項24に記載の集積回路。
【請求項28】
前記感光性ピクセルセルのアレイは、1次元アレイに配置された少なくとも2、000のピクセルを含むことを特徴とする請求項24に記載の集積回路。
【請求項29】
電荷ストレージセルの前記複数の組は、少なくとも16組のストレージセルを含むことを特徴とする請求項24に記載の集積回路。
【請求項30】
前記第2の制御論理は、前記ストレージセルの全てよりも少ないものに格納された前記電荷に関する前記情報を集積回路の外部の前記構成要素に供給するように作動することを特徴とする請求項24に記載の集積回路。
【請求項31】
前記ストレージセルに格納された前記電荷に関する前記情報は、集積回路の外部の構成要素によってランダムにアドレス可能であることを特徴とする請求項24に記載の集積回路。
【請求項32】
前記ピクセルセルの全てよりも少ないものを識別する情報を受け取り、かつ該識別されたピクセルセルに格納された前記光子生成電荷を一掃するように作動する第3の制御論理を更に含むことを特徴とする請求項24に記載の集積回路。
【請求項33】
ストレージセルの各組は、前記アレイ内のピクセルセルと少なくとも同じほど多くのストレージセルを含むことを特徴とする請求項24に記載の集積回路。
【請求項34】
前記第2の制御論理は、前記ストレージセルの前記少なくとも1つに格納された前記電荷に関する前記情報を前記外部構成要素にアナログ信号として供給するように作動することを特徴とする請求項24に記載の集積回路。
【請求項35】
前記ストレージセルに結合した少なくとも1つのアナログ/デジタル変換器、
を更に含み、
前記第2の制御論理は、前記ストレージセルの前記少なくとも1つに格納された前記電荷に関する前記情報を前記外部構成要素にデジタル信号として供給するように作動する、
ことを特徴とする請求項24に記載の集積回路。
【請求項36】
電荷転送デバイス感光性ピクセルセルの1次元アレイと、
組における各ストレージセルが電荷を前記ピクセルセルからストレージセルに複写するために該ピクセルセルの異なるものに結合している、1組の電荷ストレージセルと、
前記ピクセルセルの少なくとも一部から前記ストレージセルの前記組に光子生成電荷を非破壊的に複写するように作動する第1の制御論理と、
前記ストレージセルの少なくとも一部に格納された前記電荷に関する情報を集積回路の外部の構成要素に供給するように作動する第2の制御論理と、
を含むことを特徴とする集積回路。
【請求項37】
波長と基準イベントに続く時間とによって定められる2次元マニホルド上の1つ又はそれよりも多くの関連領域を形成するために使用されるコンピュータベースのグラフィカルユーザインタフェースであって、
関連の波長と、時間的ゲート開始時間と、ユーザ入力を受け取るための時間的ゲート継続時間とを示すメニューインタフェースと、
ユーザ指定の関連波長と、ゲート開始時間と、時間的ゲート継続時間とをユーザ指定関連領域内に集めるための関連領域モジュールと、
前記ユーザ指定関連領域を循環ROI待ち行列にグループ分けするためのソフトウエアモジュールと、
前記ユーザ指定関連領域に従ってピクセル問い合わせ機能及びデータストレージ機能を実行するための執行モジュールと、
を含むことを特徴とするグラフィカルユーザインタフェース。
【請求項38】
前記執行モジュールは、ユーザ指定関連領域が指定の最大ピクセル信号を超える信号を含むか否かを判断するための比較器を含むことを特徴とする請求項37に記載のコンピュータベースのグラフィカルユーザインタフェース。
【請求項39】
1つ又はそれよりも多くのスカラー値を空間の順序付けされた要素に関連付けるための撮像システムのダイナミックレンジを拡張する方法であって、
スカラー値が、励起に対する信号応答を特徴付け、
空間の順序付けされた要素が、該空間の該順序付けされた要素の部分集合として形成された少なくとも1つの関連領域を含み、
各関連領域が、閾値時間によって特徴付けられ、
第1の予備露出時間にわたって撮像システムを前記励起に露出し、領域の閾値時間が指定持続時間を超える全ての関連領域に対して前記閾値時間を判断する段階と、
前記第1の予備露出時間よりも短い第2の予備露出時間にわたって前記撮像システムを前記励起に露出し、領域の閾値時間が前記指定の持続時間よりも短い関連領域に対して前記閾値時間を判断する段階と、
前記判断された閾値時間に基づいて、対応する関連領域に従って前記空間の順序付けされた要素の値を読み取ってリセットする段階と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項40】
第2の予備露出時間にわたって前記撮像システムを前記励起に露出する前記段階は、第1の予備露出時間にわたって該撮像システムを該励起に露出する前記段階に先行することを特徴とする請求項39に記載の方法。
【請求項1】
時間分解によってスペクトルにより特徴付けられた光を分析する方法であって、
(a)各感光性セルがスペクトルの異なる部分によって照射され、それによって1組の該感光性セルに電荷を生成するように、電荷転送デバイス感光性ピクセルセルの1次元アレイをスペクトルで照射する段階、
(b)集積回路に前記感光性セルと並置されたそれぞれのストレージセルの第1の組に該感光性セルにおける前記電荷を非破壊的に複写する段階、
(c)前記集積回路のストレージセルの異なる組に対して(b)を定期的に繰り返す段階、及び
(d)前記ストレージセルの少なくとも一部に格納された前記電荷に関する情報を前記集積回路の外部の構成要素に供給する段階、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
(b)の前記繰返しの少なくとも一部にわたって電荷を前記感光性セルに蓄積させる段階を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(b)を少なくとも1回実行した後に前記感光性セルの部分集合における前記電荷を一掃する段階を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
電荷が一掃されることになる前記感光性セルの前記部分集合を特定する段階を更に含むことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記集積回路上に少なくとも2、000の感光性セルを設ける段階を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
各ピクセルセルに対して前記集積回路上に少なくとも16のストレージセルを設ける段階を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記供給された情報を前記集積回路の外部のメモリに格納する段階を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記情報を供給する段階は、前記ストレージセルの全てに格納された前記電荷に関する情報を前記集積回路の外部の前記構成要素に供給する段階を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記情報を供給する段階は、前記ストレージセルの選択されたもの、かつ全てよりも少ないものに格納された前記電荷に関する情報を前記集積回路の外部の前記構成要素に供給する段階を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ストレージセルの前記選択されたものを識別する情報を前記集積回路の外部の構成要素から受け取る段階を更に含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記スペクトルを生成するのに使用されるサンプルの少なくとも1つの元素成分を識別するために前記格納された電荷に関して前記供給された情報を分析する段階を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
スペクトルを時間積分する方法であって、
(a)各感光性ピクセルセルがスペクトルの異なる部分によって照射され、それによって該感光性セルのそれぞれに電荷を生成するように、電荷転送デバイス感光性ピクセルセルの1次元アレイをスペクトルで照射する段階、
(b)集積回路上に前記ピクセルセルと並置されたそれぞれのストレージセルに該感光性セルにおける前記電荷を定期的に非破壊的に複写する段階、及び
(c)前記ストレージセルの少なくとも1つにおける電荷が所定の値を超える場合に、該電荷に関する情報をメモリに格納する段階、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
前記電荷転送デバイス感光性ピクセルセルの1次元アレイを準備する段階を更に含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記メモリは、前記集積回路上に前記ピクセルセルと並置されていることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つのストレージセルに対応する少なくとも1つの感光性ピクセルセルにおける電荷を一掃する段階を更に含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項16】
露出時間が所定の値を超える場合に、前記電荷に関する情報をメモリに格納する段階を更に含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つのストレージセルに対応する少なくとも1つの感光性ピクセルセルにおける電荷を一掃する段階を更に含むことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記ストレージセルの少なくとも1つにおける電荷が所定の値を超える場合に、該少なくとも1つのストレージセルに対応する少なくとも1つの感光性ピクセルセルにおける電荷を一掃する段階を更に含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記ストレージセルの少なくとも1つにおける電荷が所定の値を超える場合に、該少なくとも1つのストレージセルに対応する少なくとも1つの感光性ピクセルセルにおける電荷を一掃する段階を更に含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記メモリに前記情報を格納する段階は、該格納された情報に関連するタイムスタンプを格納する段階を含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項21】
前記メモリに格納された前記情報をピクセル毎の方式で合計する段階を更に含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項22】
所定の時間量が経過した場合に、前記ストレージセルの少なくとも1つにおける電荷に関する情報を少なくとも1つの対応する感光性ピクセルセルにおける電荷を一掃することなくメモリに格納する段階を更に含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項23】
電荷転送デバイス感光性ピクセルセルの数が、ピクセル番号への波長の動的可変登録を考慮するような方法で、露出された電荷転送デバイス感光性ピクセルセルの指定数を超えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項24】
電荷転送デバイス感光性ピクセルセルのアレイと、
ストレージセルの各組に対して、組における各ストレージセルが、電荷を前記感光性ピクセルセルからストレージセルに複写するために該感光性ピクセルセルの異なるものに結合している、電荷ストレージセルの複数の組と、
光子生成電荷を前記ピクセルセルから前記ストレージセルの連続する組に定期的に非破壊的に複写するように作動する第1の制御論理と、
前記ストレージセルの少なくとも1つに格納された前記電荷に関する情報を集積回路の外部の構成要素に供給するように作動する第2の制御論理と、
を含むことを特徴とする集積回路。
【請求項25】
各感光性ピクセルセルに関連する複数のプリアンプを更に含むことを特徴とする請求項24に記載の集積回路。
【請求項26】
前記感光性ピクセルセルのアレイは、1次元アレイであることを特徴とする請求項24に記載の集積回路。
【請求項27】
前記ピクセルセルのアレイは、2次元アレイであることを特徴とする請求項24に記載の集積回路。
【請求項28】
前記感光性ピクセルセルのアレイは、1次元アレイに配置された少なくとも2、000のピクセルを含むことを特徴とする請求項24に記載の集積回路。
【請求項29】
電荷ストレージセルの前記複数の組は、少なくとも16組のストレージセルを含むことを特徴とする請求項24に記載の集積回路。
【請求項30】
前記第2の制御論理は、前記ストレージセルの全てよりも少ないものに格納された前記電荷に関する前記情報を集積回路の外部の前記構成要素に供給するように作動することを特徴とする請求項24に記載の集積回路。
【請求項31】
前記ストレージセルに格納された前記電荷に関する前記情報は、集積回路の外部の構成要素によってランダムにアドレス可能であることを特徴とする請求項24に記載の集積回路。
【請求項32】
前記ピクセルセルの全てよりも少ないものを識別する情報を受け取り、かつ該識別されたピクセルセルに格納された前記光子生成電荷を一掃するように作動する第3の制御論理を更に含むことを特徴とする請求項24に記載の集積回路。
【請求項33】
ストレージセルの各組は、前記アレイ内のピクセルセルと少なくとも同じほど多くのストレージセルを含むことを特徴とする請求項24に記載の集積回路。
【請求項34】
前記第2の制御論理は、前記ストレージセルの前記少なくとも1つに格納された前記電荷に関する前記情報を前記外部構成要素にアナログ信号として供給するように作動することを特徴とする請求項24に記載の集積回路。
【請求項35】
前記ストレージセルに結合した少なくとも1つのアナログ/デジタル変換器、
を更に含み、
前記第2の制御論理は、前記ストレージセルの前記少なくとも1つに格納された前記電荷に関する前記情報を前記外部構成要素にデジタル信号として供給するように作動する、
ことを特徴とする請求項24に記載の集積回路。
【請求項36】
電荷転送デバイス感光性ピクセルセルの1次元アレイと、
組における各ストレージセルが電荷を前記ピクセルセルからストレージセルに複写するために該ピクセルセルの異なるものに結合している、1組の電荷ストレージセルと、
前記ピクセルセルの少なくとも一部から前記ストレージセルの前記組に光子生成電荷を非破壊的に複写するように作動する第1の制御論理と、
前記ストレージセルの少なくとも一部に格納された前記電荷に関する情報を集積回路の外部の構成要素に供給するように作動する第2の制御論理と、
を含むことを特徴とする集積回路。
【請求項37】
波長と基準イベントに続く時間とによって定められる2次元マニホルド上の1つ又はそれよりも多くの関連領域を形成するために使用されるコンピュータベースのグラフィカルユーザインタフェースであって、
関連の波長と、時間的ゲート開始時間と、ユーザ入力を受け取るための時間的ゲート継続時間とを示すメニューインタフェースと、
ユーザ指定の関連波長と、ゲート開始時間と、時間的ゲート継続時間とをユーザ指定関連領域内に集めるための関連領域モジュールと、
前記ユーザ指定関連領域を循環ROI待ち行列にグループ分けするためのソフトウエアモジュールと、
前記ユーザ指定関連領域に従ってピクセル問い合わせ機能及びデータストレージ機能を実行するための執行モジュールと、
を含むことを特徴とするグラフィカルユーザインタフェース。
【請求項38】
前記執行モジュールは、ユーザ指定関連領域が指定の最大ピクセル信号を超える信号を含むか否かを判断するための比較器を含むことを特徴とする請求項37に記載のコンピュータベースのグラフィカルユーザインタフェース。
【請求項39】
1つ又はそれよりも多くのスカラー値を空間の順序付けされた要素に関連付けるための撮像システムのダイナミックレンジを拡張する方法であって、
スカラー値が、励起に対する信号応答を特徴付け、
空間の順序付けされた要素が、該空間の該順序付けされた要素の部分集合として形成された少なくとも1つの関連領域を含み、
各関連領域が、閾値時間によって特徴付けられ、
第1の予備露出時間にわたって撮像システムを前記励起に露出し、領域の閾値時間が指定持続時間を超える全ての関連領域に対して前記閾値時間を判断する段階と、
前記第1の予備露出時間よりも短い第2の予備露出時間にわたって前記撮像システムを前記励起に露出し、領域の閾値時間が前記指定の持続時間よりも短い関連領域に対して前記閾値時間を判断する段階と、
前記判断された閾値時間に基づいて、対応する関連領域に従って前記空間の順序付けされた要素の値を読み取ってリセットする段階と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項40】
第2の予備露出時間にわたって前記撮像システムを前記励起に露出する前記段階は、第1の予備露出時間にわたって該撮像システムを該励起に露出する前記段階に先行することを特徴とする請求項39に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3A−3B】
【図4A】
【図4B(1)】
【図4B(2)】
【図4C(1)】
【図4C(2)】
【図5】
【図6】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3A−3B】
【図4A】
【図4B(1)】
【図4B(2)】
【図4C(1)】
【図4C(2)】
【図5】
【図6】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2010−519551(P2010−519551A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−551022(P2009−551022)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【国際出願番号】PCT/US2008/054643
【国際公開番号】WO2008/103865
【国際公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(508019894)サーモ ニトン アナライザーズ リミテッド ライアビリティ カンパニー (12)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【国際出願番号】PCT/US2008/054643
【国際公開番号】WO2008/103865
【国際公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(508019894)サーモ ニトン アナライザーズ リミテッド ライアビリティ カンパニー (12)
【Fターム(参考)】
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