説明

線材成形機及び線材挟持力制御プログラム

【課題】ローラ駆動用の電力の無駄な消費を削減することが可能な線材成形装置及び線材挟持力制御プログラムを提供する。
【解決手段】本発明の線材成形機10は、1対のローラ41,51にて送給した線材90を成形工具24に衝合して湾曲形状に成形して線材成形品の製造において、線材90の線径をd、引張り強さをσ、ローラ41,51との間の静摩擦係数をμ、ローラ41,51とのスリップを防ぐための安全率をk、ローラ41,51の対の数をn、線材成形品の各部位の曲率半径をD/2、挟持力をNsとした場合に、線材成形品の展開長分の線材のうち成形工具に到達した位置毎の挟持力Nsが、Ns=k・σ・d/(4nμD)、になるように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対称的に回転する1対のローラの間を通って送給した線材を成形工具に衝合させて湾曲形状に成形する線材成形機及び、線材成形機の制御部が実行する線材挟持力制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の線材成形機として、1対のローラによる線材の挟持力を変更可能とし、その挟持力が設定値通りになるように制御するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−206763号公報(段落[0003],[0010]〜[0012]、第1図、第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、1対のローラを回転駆動するための負荷は、それらローラによる線材の挟持力が大きくなるほど増加し、ローラ駆動用の消費電力も大きくなる。このため、ローラが線材に対してスリップを起こさなければ、上記挟持力の設定値は、小さい程好ましい。ところが、線材を成形する際の曲率半径に応じて、最低限必要な挟持力の値は変わる。これに対し、従来は、ローラが線材を押し潰すことがない程度の比較的大きな一定値に挟持力を設定していたので、ローラ駆動用の電力が無駄に消費されることになっていた。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、ローラ駆動用の電力の無駄な消費を削減することが可能な線材成形機及び線材挟持力制御プログラムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係る線材成形機は、線材を湾曲変形させて線材成形品を製造するための線材成形機であって、線材成形品の各部位の曲率半径のデータを記憶したデータ記憶部と、線材を間に挟んで配置された少なくとも1対のローラを有し、それら1対のローラを対称的に回転させて線材成形品の展開長分の線材を送給可能な線材送給装置と、線材送給装置が送給した線材に衝合して円弧形状に成形することが可能な成形工具を有し、成形工具の位置を変更することで、円弧形状の線材の曲率半径を変更可能な成形工具駆動装置と、線材送給装置が送給した線材成形品の展開長分の線材のうち成形工具に到達した位置毎の曲率半径のデータをデータ記憶部から取得し、そのデータに対応した曲率半径の円弧形状に線材が成形されるように成形工具の位置を制御する制御部とを備えた線材成形機において、線材送給装置には、線材に対する1対のローラによる挟持力を任意の値に変更可能な挟持力変更機構が備えられ、データ記憶部には、線材の線径と、線材の引張り強さと、線材とローラとの間の静摩擦係数と、線材とローラとのスリップを防ぐための安全率とが記憶され、線径をd、引張り強さをσ、静摩擦係数をμ、安全率をk、曲率半径をD/2、ローラの対の数をn、線材に対する1対のローラの挟持力をNsとした場合に、制御部は、線材送給装置が送給した線材成形品の展開長分の線材のうち成形工具に到達した位置毎の挟持力Nsが、Ns=k・σ・d/(4nμD)、になるように制御するところに特徴を有する。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載の線材成形機において、挟持力変更機構には、カム及びカムに従動して変形する弾性体を用いて1対のローラの間の挟持力を変更可能なカム機構が備えられ、制御部は、挟持力Nsをカムの回転位置に変換し、その回転位置にカムを位置決め制御するところに特徴を有する。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の線材成形機において、線材成形品は、コイル径が徐々に変化するコイルばねであり、データ記憶部は、コイルばねの一端部から第何巻目かを特定するための巻き番号と、巻き番号毎のコイル径の平均値とを対応させて記憶し、制御部は、巻き番号及びコイル径のデータ群に基づいて、線材成形品の展開長のうち各巻き番号に対応する位置と、それら位置毎の挟持力Nsとを演算するところに特徴を有する。
【0008】
請求項4の発明に係る線材挟持力制御プログラムは、対称的に回転する少なくとも1対のローラの間を通って送給された線材を成形工具に衝合して湾曲形状に成形しかつ成形工具を位置決め制御することで湾曲形状の曲率半径を変更可能な線材成形機の制御部に実行され、線材から線材成形品を成形する際に、1対のローラによる線材に対する挟持力を制御するための線材挟持力制御プログラムであって、線材送給装置が送給した線材成形品の展開長分の線材のうち成形工具に到達した位置を演算するステップと、線材のうち成形工具に到達した位置毎の1対のローラによる挟持力を演算するステップとを有し、線材の線径をd、線材の引張り強さをσ、線材とローラとの間の静摩擦係数をμ、線材とローラとのスリップを防ぐための安全率をk、ローラの対の数をn、線材成形品の展開長における一端部からの位置をi、その位置iに応じて相違する線材成形品における線材の曲率半径をD(i)/2、挟持力をNs(i)とした場合に、挟持力Nsを演算するステップは、Ns(i)=k・σ・d/(4nμD(i))、の演算を行って挟持力Ns(i)を演算するところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0009】
[請求項1の発明]
請求項1の線材成形機では、線材送給装置に備えた1対のローラの間に線材を挟持し、それら1対のローラを対称的に回転させて送給した線材を成形工具を衝合させて円弧形状に成形する。ここで、円弧形状の曲率半径をD/2、線径をd、引張り強さをσ、線材とローラとの間の静摩擦係数をμ、ローラの対の数をn、1対のローラにかかる送給抵抗をFとすると、その送給抵抗Fは、
【0010】
F=σ・d/(2nD)
【0011】
、の理論式にて演算することができる。なお、上記理論式は、「ばねハンドブック」の366頁(2005年4月30日発行,出版元:社団法人日本ばね工業会,編者:技能検定テキスト改訂委員会)に開示されている。
【0012】
また、ローラと線材とがスリップを起こさずに送給可能な1対のローラ間の最小の挟持力をNminとすると、その最小の挟持力Nminは、
【0013】
Nmin=σ・d/(4nμD)
【0014】
、になる。これらに対し、本発明の線材成形機のデータ記憶部には、前記した線径d、曲率半径D/2、引張り強さσ、静摩擦係数μ、安全率kが記憶されている。そして、本発明の線材成形機に備えた制御部は、線材送給装置が送給した線材成形品の展開長分の線材のうち成形工具に到達した位置毎の挟持力Nsが、
【0015】
Ns=k・σ・d/(4nμD)
【0016】
、の理論値になるように制御する。これにより、線材成形品における各部位の間の曲率半径の相違に応じて、それら各部位を成形する際の1対のローラによる線材の挟持力Nsを理論的に変化させ、最小値に近づけることができる。即ち、本発明によれば、従来に比べてローラ駆動用の電力の無駄な消費を削減することが可能になる。
【0017】
[請求項2の発明]
請求項2の線材成形機では、カムを位置決め制御することで、線材に対する1対のローラの挟持力を制御することができる。
【0018】
[請求項3の発明]
データ記憶部には、コイル径のデータとして、線材成形品の展開長のおける位置とコイル径との関係式を記憶してもよいし、線材成形品の展開長を細分化し、それら細分化された位置毎にコイル径のデータ群を記憶してもよい。また、請求項3の構成のように、データ記憶部に、コイルばねの一端部から第何巻目かを特定するための巻き番号とコイル径とを対応させて記憶してもよい。請求項3の構成によれば、データ入力作業が容易になる。
【0019】
[請求項4の発明]
請求項4の線材挟持力制御プログラムでは、線材の線径をd、線材の引張り強さをσ、線材とローラとの間の静摩擦係数をμ、線材とローラとのスリップを防ぐための安全率をk、ローラの対の数をn、線材成形品の展開長における一端部からの位置をi、その位置iに応じて相違する線材成形品における線材の曲率半径をD(i)/2、挟持力をNs(i)とした場合に、線材のうち成形工具に到達した位置毎の1対のローラによる挟持力Ns(i)を、
【0020】
Ns=k・σ・d/(4nμD)
【0021】
、の理論式から求めて制御する。これにより、線材成形品における各部位の間の曲率半径の相違に応じて、それら各部位を成形する際の1対のローラによる線材の挟持力Nsを理論的に変化させ、最小値に近づけることができる。即ち、本発明によれば、従来に比べてローラ駆動用の電力の無駄な消費を削減することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図16に基づいて説明する。図1に示すように線材成形機10のベース台11には、水平方向で対峙した1対の機構組付部11A,11Bが備えられている。そして、一方の機構組付部11Aには線材送給装置30が組み付けられ、他方の機構組付部11Bにはユニバーサル機構20が組み付けられている。
【0023】
ユニバーサル機構20は、3つの駆動軸を有して、成形工具24を任意の位置、姿勢に変更することができる。そのユニバーサル機構20の第1駆動軸J1は、1対の機構組付部11A,11Bの対向方向で、機構組付部11Bに対して直動ベース21を直動させる構成になっている。
【0024】
直動ベース21のうち線材送給装置30との対向面からは、ツイストベース22が突出している。ツイストベース22は、直動ベース21に対して第2駆動軸J2により回転駆動される。その第2駆動軸J2による回転中心CL2は、図1において、ツイストベース22から上方にオフセットしかつ第1駆動軸J1による直動方向と平行になっている。
【0025】
ツイストベース22のうち回転中心CL2側を向いた面には、回転テーブル23が回転可能に設けられ、第3駆動軸J3にて回転駆動される。そして、回転テーブル23に固定された成形工具24の先端が、ツイストベース22の回転中心CL2上に配置されている。なお、第1〜第3の駆動軸J1〜J3は、それぞれサーボモータ25〜27を駆動源にして駆動される。
【0026】
線材送給装置30は、機構組付部11Aの上面のうち機構組付部11B側の縁部から上方に起立した前面支持板壁30Bを備えている。図2に示すように、前面支持板壁30Bには、機構組付部11A,11Bの対向方向にクイル14(線材ガイド)が貫通している。クイル14の中心には、線材ガイド孔(図示せず)が貫通形成され、そこに線材90が挿通されている。なお、前記したユニバーサル機構20の第2駆動軸J2による回転中心CL2は、クイル14の線材ガイド孔を通過する水平軸と一致している。
【0027】
クイル14は、前面支持板壁30Bに対して回転駆動可能に組み付けられかつ、線材ガイド孔の断面形状が異なる複数種類のクイル14が、交換可能になっている。そして、断面形状が非円形の線材90であっても、クイル14を適宜回転させることで、線材90の湾曲方向を任意の方向に変更することができる。なお、本実施形態における線材90の断面形状は円形であるので、クイル14は停止した状態で使用される。
【0028】
図4に示すように、前面支持板壁30Bのうちユニバーサル機構20(図1参照)と反対側には、機構組付部11Aの上面から起立した1対の対向支持壁30A,30Aが設けられている。そして、一方の対向支持壁30Aの外側面から僅かにオフセットした位置に、前記クイル14の線材ガイド孔(図示せず)から延びた線材90の送給経路が配置されている。また、図2に示すように、対向支持壁30A,30Aには、1対のローラ41,51で線材90を挟んで送給可能な2つの線材送給機構32,32が、線材90の送給方向に並べて組み付けられている。即ち、2対のローラ41,51が線材90の送給方向に並べて備えられている。
【0029】
具体的には、図4に示すように、1対の対向支持壁30A,30Aの間には、線材送給機構32毎に上下に略平行に配置された1対のローラ支持シャフト41S,51Sが差し渡されている。また、線材90の送給経路側に配置された一方の対向支持壁30Aには、図2に示すように、上下方向に延びたガイド溝30Mが、線材送給機構32毎に形成されている。さらに、各ガイド溝30Mの下端寄り位置には、下側可動ブロック52が嵌合される一方、上端寄り位置には上側可動ブロック42が嵌合されている。そして、図4に示すように、ローラ支持シャフト41S,51Sの一端部が、ガイド溝30Mを有しない側の対向支持壁30Aにベアリングにて回動可能に軸支される一方、ローラ支持シャフト41S,51Sの他端部が、上側可動ブロック42と下側可動ブロック52とに分けてそれぞれベアリングにて回動可能に支持されている。
【0030】
図5に示すように、上側可動ブロック42の外側面からは、ローラ支持シャフト41Sの端部が突出しており、その突出部分にはローラ41が一体回転可能に固定されている。これと同様に、下側可動ブロック52の外側面からは、ローラ支持シャフト51Sの端部が突出しており、その突出部分にローラ51が一体回転可能に固定されている。また、ローラ41,51の外周面には、それらの対向位置に断面半円形の円弧溝41M,51Mが形成されている。そして、それら円弧溝41M,51M内に線材90を配置してローラ41,51にて挟むことができる。
【0031】
各線材送給機構32には、ローラ41,51による線材90の挟持力を変更するための挟持力変更機構32Kが備えられている。その挟持力変更機構32Kは、カム駆動用サーボモータ12を駆動源として備え、上側可動ブロック42に対する上方からの加圧力を変更することで、ローラ41,51による線材90に対する挟持力を変更する。具体的には、下側可動ブロック52は、ガイド溝30Mの下端面から上方に突出したボルト53に螺合され、そのボルト53を回転操作することで、上下方向で位置を微調節することができるようになっている。
【0032】
上側可動ブロック42の上端部には、大径穴と小径穴の段付きの凹部42Aが形成され、その凹部42Aの大径穴と小径穴とに摺動可能な大径軸部と小径軸部が形成された直動ガイドシャフト42Sが挿入されている。そして、直動ガイドシャフト42Sの上端部にロードセルユニット35が載置されている。また、ロードセルユニット35の上方には雄ねじが突出しており、後述のカム従動シャフトに締結されている。さらに、直動ガイドシャフト42Sの小径軸部には、複数の皿ばね43が挿通され、これら皿ばね43の弾発力によってロードセルユニット35が直動可能範囲の上端位置に向けて付勢されている。
【0033】
ロードセルユニット35の内部には、図示しないロードセルが内蔵され、そのロードセルにより、後述するカム37が上側可動ブロック42を押圧する押圧力を検出することができるようになっている。
【0034】
図2に示すように、各ガイド溝30Mの上端部には、シャフトガイドブッシュ33が嵌合固定されている。そして、シャフトガイドブッシュ33の上下方向に貫通した断面四角形のガイド孔33A内に、ロードセルユニット35が下面の雌ねじに締結された角柱状のカム従動シャフト34が直動可能に挿通されている。また、カム従動シャフト34の上端部は、シャフトガイドブッシュ33から上方に突出しており、その突出部分には、カム当接ローラ36が回転可能に軸支されている。
【0035】
図4に示すように、対向支持壁30A,30Aの上端部の間には天井壁30Tが差し渡され、その天井壁30Tに固定されたモータ取付台30Dにカム駆動用サーボモータ12のステータが固定されている。そして、カム当接ローラ36の回転支持軸36Jの真上にカム駆動用サーボモータ12の回転出力軸12Sが平行に配置されている。また、回転出力軸12Sには、カム37が一体回転可能に固定され、そのカム37がカム当接ローラ36と上下方向で対向している。
【0036】
図5に示すように、カム駆動用サーボモータ12の回転出力軸12Sの上方でかつ回転出力軸12Sと平行に、モータ取付台30Dからばね支持ポール38が突出している。そして、カム当接ローラ36の回転支持軸36Jの先端部とばね支持ポール38の先端部との間に引っ張りコイルばね39Aが架け渡され、カム従動シャフト34とロードセルユニット35を上方に付勢している。これにより、カム37とカム当接ローラ36とが常に密着している。また、シャフトガイドブッシュ33と可動ブロック42とは上下方向で接近する方向に引っ張りコイルばね39Bにより付勢されている。そして、図2と図3とに比較してに示すように、カム37の回転位置に応じて、ガイド溝30Mにおける上側可動ブロック42の上下位置が変化する。また、ローラ41,51が線材90を介して当接したために、上側可動ブロック42を現状より下方に移動できない状態になっても、カム37を回転駆動して皿ばね43を変形させながらカム従動シャフト34のみを下方に下げることができる。これにより、ローラ41,51による線材90の挟持力が変更される。また、上側及び下側の可動ブロック42,52を上下動可能とするために、ローラ支持シャフト41S,51Sのうちローラ41,51から離れた側の端部を支持するベアリング(図4参照)は、それらローラ支持シャフト41S,51Sの回動を許容する構造になっている。
【0037】
なお、図2はローラ41,51が線材90を挟持している状態を示し、図3はローラ41,51が線材90を解放している状態を示している。
【0038】
以上が、挟持力変更機構32Kに関する説明である。次に、ローラ41,51を回転駆動するための機構について説明する。図4に示すように、ローラ支持シャフト41S,51Sのうち対向支持壁30A,30Aの間に挟まれた部分には、それぞれギヤ41G,51Gが一体回転可能に取り付けられている。そして、それらギヤ41G,51G同士の噛合により、ローラ41,51が対称的に回転する。
【0039】
両線材送給機構32,32の下側に配置された両ギヤ51G,51Gの間の中央位置の下方には、アイドルギヤ17が対向支持壁30Aに回転可能に軸支され、そのアイドルギヤ17にギヤ51G,51Gが共通して噛合している。また、アイドルギヤ17の下方には、送給用サーボモータ13が設けられている。その送給用サーボモータ13の回転出力軸には、減速機15を介して駆動ギヤ16が取り付けられている。そして、その駆動ギヤ16がアイドルギヤ17に噛合している。これらにより、送給用サーボモータ13にて両線材送給機構32,32のローラ51,51を回転駆動することができ、ローラ41,51が対称的に回転する。
【0040】
なお、図1に示すように、一方の対向支持壁30Aの外側面には、送給経路の途中で線材ガイド31が固定され、その線材ガイド31における図示しない孔を線材90が通って案内されるようになっている。
【0041】
ユニバーサル機構20及び線材送給装置30は、図6に示した制御部60によって制御される。制御部60は、CPU61とメモリ62(本発明の「データ記憶部」に相当する)とモニタ63とキーボード64を有している。そのメモリ62には、圧縮コイルばね(本発明の「線材成形品」に相当する)を製造するためのばね成形プログラムPG1(図7参照)が記憶されている。このばね成形プログラムPG1で対応可能な圧縮コイルばねには、コイル径が均一な一般的な圧縮コイルばねの他、図12に示した円錐形コイルばね91A、図14に示した樽形コイルばね91B、図16に示した鼓形コイルばね91Cのように、コイル径が不均一な圧縮コイルばねも含まれる。
【0042】
なお、ばね成形プログラムPG1のうち後述するコイル形状特定処理(S10)、カム位置決定処理(S20)、カム制御データ生成処理(S30)、及び、サーボモータ制御処理(S60)が、本発明に係る「線材挟持力制御プログラム」に相当する。
【0043】
図7に示すように、ばね成形プログラムPG1では、最初に、コイル形状特定処理(S10)を実行して、圧縮コイルばね(図12参照)の形状の特定を行う。即ち、コイル形状特定処理(S10)を実行すると、図8に示すように、例えば、圧縮コイルばねを製造するための線材90の品番の入力が求められる(S11)。ここで、制御部60のメモリ62には、線材90に係る線材データが品番を付して複数種類、記憶されている。その線材データは、線材90の線径d、引っ張り強さσ、線材90とローラ41,51との静摩擦係数μ、及び、上限挟持力Nmaxとからなる。なお、上限挟持力Nmaxは、ローラ41,51により線材90を押し潰さずに挟持可能な挟持力の上限値である。そして、線材90の品番を入力すると、CPU61が、その品番に対応した線材データ(上記した線径d,引っ張り強さσ,静摩擦係数μ、上限挟持力Nmax)をメモリ62から取得する。
【0044】
次いで、圧縮コイルばねのピッチpの入力が求められる(S12)。これに対してデータを入力すると、次に、圧縮コイルばね全体の巻数mの入力が求められる(S13)。ここで、巻き数が端数(例えば、図12に示した円錐形コイルばね91Aの場合は、10.5巻き)の場合、最後の端数分を一巻きと数えて巻数mを入力すればよい。
【0045】
すると、例えば、図11(A)に示した構造データテーブルTb1がモニタ63に表示され、その構造データテーブルTb1へのデータ入力が求められる(S14)。これに対し、作業者は、キーボード64を用いてカーソル(図示せず)を構造データテーブルTb1における任意の位置に移動してデータ入力を行うことができる。
【0046】
ここで、構造データテーブルTb1において、「巻き番号i」は、圧縮コイルばねのうち巻き始め側の端部からの位置を意味し、本実施形態の場合は、巻き始め側の端部から一巻きずつ数えて何巻き目であるかを指す番号として圧縮コイルばねにおける前記位置を特定している。上記の如く、巻数mを入力したことにより、構造データテーブルTb1の「巻き番号i」の欄には、1〜mまでの整数が順番に表示される。以下、上記した圧縮コイルばねのうち巻き始め側の端部を「圧縮コイルばねの始端部」という。
【0047】
構造データテーブルTb1において、「巻回量Z(i)」は、各巻き番号i毎の巻回量で初期値は「1」になっている。また、図12に示した円錐形コイルばね91Aのように最後が0.5巻きである場合には、キーボード64にてモニタ63上のカーソルを移動して、最後の巻き番号に対応した「巻回量Z(i)」の値を「0.5」に書き換えればよい。
【0048】
構造データテーブルTb1において、「コイル径D(i)」は、巻き番号i毎におけるコイル径である。ここで、図12の円錐形コイルばね91Aのように一巻きの間にコイル径が徐々に変化する場合には、一巻き分のコイル径の平均値をコイル径D(i)として入力すればよい。
【0049】
構造データテーブルTb1へのデータ入力が完了したら、キーボード64に備えた図示しない完了ボタン(図示せず)をオンすればよい。すると、ファイルネームの入力が求められるので(S15)、これに対して所定のファイルネームを入力すると、そのファイルネームで上記した構造データテーブルTb1におけるデータ群がメモリ62に記憶され、コイル形状特定処理(S10)から抜ける。
【0050】
図7に示すように、ばね成形プログラムPG1では、コイル形状特定処理(S10)に次いで、カム位置決定処理(S20)が実行される。カム位置決定処理(S20)が実行されると、図9に示すように、上記線径d、引っ張り強さσ及びコイル径D(i)と下記理論式(1)とから、圧縮コイルばねにおける各部位を成形する際に1対のローラ41,51にかかる送給抵抗F(i)を、巻き番号i毎に演算する(S21、S22,S24,S25)。なお、図9において「m」は、圧縮コイルばねの巻き数を示す。
【0051】
F(i)=σ・d/(2・D(i)) ・・・・・・・・(1)
【0052】
そして、上記送給抵抗F(i)と、静摩擦係数μ及び安全率kと、線材送給機構32の数n(本実施形態ではn=2)に基づいて、下記理論式(2)から線材90とローラ41,51とがスリップを起こさないために必要なローラ41,51による挟持力Ns(i)を、巻き番号i毎に演算する(S23)。
【0053】
Ns(i)=k・1/(2nμ)・F(i)・・・・・・・・・(2)
【0054】
なお、上記(2)におけるF(i)に上記式(1)のF(i)を代入した下記理論式(3)、
【0055】
Ns(i)=k・σ・d/(4・n・μ・D(i)) ・・・・・・(3)
【0056】
にて、巻き番号i毎の挟持力Ns(i)を演算してもよい。
【0057】
次いで、それら挟持力Ns(i)を実現させるためのカム37の回転位置θ(i)を決定する(S26)。ここで、メモリ62には、線材90の線径d毎に、挟持力Ns(i)と、その挟持力Ns(i)を実現させるためのカム37の回転位置θ(i)とを対応させた挟持力−カム位置対応マップ(図示せず)が記憶されている。そして、カム位置決定処理(S20)では、線材データに含まれる線径dから対応した挟持力−カム位置対応マップを選定し、その挟持力−カム位置対応マップに基づいて挟持力Ns(i)からカム37の回転位置θ(i)を決定する。このようにして、図11(B)に示すように、巻き番号i毎に対応させたカム37の回転位置θ(i)を記憶したカム制御データテーブルTb2が生成されてメモリ62に記憶され、カム位置決定処理(S20)から抜ける。
【0058】
なお、挟持力Ns(i)に所定の係数を乗じると、その挟持力Ns(i)を実現させるためのカム37の回転位置θ(i)が算出されるようにカム37の形状を形成しておき、上記したマップを用いずに、演算にて回転位置θ(i)を求めるように構成してもよい。
【0059】
図7に示すように、ばね成形プログラムPG1では、カム位置決定処理(S20)に次いで、カム制御データ生成処理(S30)を実行する。カム制御データ生成処理(S30)を実行すると、図10に示すように、巻き番号i毎の巻回部分の展開長L(i)を、上記したコイル径D(i)とピッチpと巻回量Z(i)と下記理論式(4)とから演算する(S31〜S34)。
【0060】
L(i)=Z(i)・(p+(π・D(i))1/2・・・(4)
【0061】
次いで、圧縮コイルばねの始端部から各巻き番号iの部位の展開長L(i)までを積算した積算展開長Ls(i)を演算し(S35〜S38)、展開長L(i)、積算展開長Ls(i)を巻き番号i毎にカム制御データテーブルTb2に記憶して、このカム制御データ生成処理(S30)から抜ける。
【0062】
このように生成されたカム制御データテーブルTb2に基づけば、例えば、「圧縮コイルばねの全体の展開長のうち始端部からLs(i−1)〜Ls(i)の範囲の巻回部分を成形する際には、カム37を回転位置θ(i)にする」というように、圧縮コイルばねの展開長分の線材90における各位置に対し、挟持力Ns(i)の代用値としてのカム37の回転位置θ(i)を決定することができる。
【0063】
ばね成形プログラムPG1では、カム制御データ生成処理(S30)から抜けると、工具制御データ生成処理(S40)を行う。工具制御データ生成処理(S40)では、圧縮コイルばねの構造を特定した線径d,コイル径D(i)等のデータ群に基づいて、圧縮コイルばねの展開長を細分化して得た各位置毎に、成形工具24の位置及び姿勢を決定するためのサーボモータ25〜27用の工具制御データを生成して、メモリ62における工具制御データテーブル(図示せず)に記憶する。工具制御データを生成するアルゴリズムに関しては、従来と同様であるので詳細な説明は省略する。
【0064】
ばね成形プログラムPG1は、工具制御データ生成処理(S40)から抜けると、線材送給装置30による線材90の送給速度Vの入力を求める(S50)。これに対してデータ入力を行うと、圧縮コイルばねを連続して成形可能な状態になる。そこで、図示しない起動スイッチをオンすると、ばね成形プログラムPG1のサーボモータ制御処理(S60)が繰り返して実行され、ユニバーサル機構20及び線材送給装置30が動作し、線材90から圧縮コイルばねが複数製造される。
【0065】
具体的には、サーボモータ制御処理(S60)を実行すると、制御部60が、送給速度Vに基づいて、所定周期毎に、送給用サーボモータ13の目標回転位置を決定する。そして、送給用サーボモータ13に備えた回転位置センサによる位置検出結果(図6のθb1)と前記目標回転位置との偏差が「0」になるように、送給用サーボモータ13の回転位置をフィードバック制御する。これにより、単位時間(所定周期)毎に所定長の線材90が、線材送給装置30からユニバーサル機構20へと送給され、圧縮コイルばねの展開長分の線材90のうち成形工具24に到達(衝合)する位置が、始端部から終端部へと所定長ずつ移動していく。
【0066】
また、制御部60は、線材送給装置30による線材90の所定周期毎の送給量(又は、所定周期毎の送給用サーボモータ13の目標回転位置)に基づき、圧縮コイルばねの展開長分の線材90のうち成形工具24に到達(衝合)する位置を所定周期毎に求め、その位置に対応した工具制御データを前記した工具制御データテーブル(図示せず)に基づいて決定する。そして、それら工具制御データに応じてユニバーサル機構20のサーボモータ25〜27を制御する。これにより、線材送給装置30による線材90の送給量に連動して成形工具24の位置及び姿勢が適宜変更されて、コイル径が始端部から徐々に成形されていく。
【0067】
さて、制御部60は、前述の如く、圧縮コイルばねの展開長分の線材90のうち成形工具24に到達(衝合)する位置を所定周期毎に求め、その位置に対応したカム制御用のデータ(回転位置θ(i))をカム制御データテーブルTb2(図11(b)参照)に基づいて決定する。詳細には、圧縮コイルばねの展開長分の線材90のうち成形工具24に到達した位置が、カム制御データテーブルTb2において、例えば、Ls(2)〜Ls(3)の範囲に入っていれば、回転位置θ(3)をカム制御用のデータとしてカム制御データテーブルTb2から取得する。そして、カム37の位置が回転位置θ(3)と一致するように、カム駆動用サーボモータ12にてカム37を駆動する。また、制御部60は、カム駆動用サーボモータ12に備えた回転位置センサによる位置検出結果(図6のθa1)を取り込み、その目標回転位置と位置検出結果との偏差が「0」になるように、カム駆動用サーボモータ12をフィードバック制御する。このようにして、線材送給装置30が送給した線材90のうち成形工具24に到達した位置毎の挟持力が、成形するコイルの径D(i)に応じた値に変化する。
【0068】
なお、本実施形態の線材成形機10では、ロードセルユニット35にて実際の挟持力を検出して制御部60に取り込んでおり、その実際の挟持力が上限挟持力Nmaxを越えた場合には、例えば、警告音等を出力して線材成形機10を一時停止する。
【0069】
上記したように本実施形態の線材成形機10及びその線材成形機10で実行するばね成形プログラムPG1(図7参照)によれば、ローラ41,51による線材90の挟持力Nsを、
【0070】
Ns=k・σ・d/(4nμD)
【0071】
、の理論式に基づき、圧縮コイルばねにおける各部位の間の曲率半径(D/2)の相違に応じて理論的に変化させ、最小値に近づけることができる。これにより、従来に比べてローラ駆動用の電力の無駄な消費を削減することが可能になる。
【0072】
また、ローラ41,51による挟持力が上限値を越えないように制御するので、その挟持力によって線材90を押し潰すような事態の発生を防ぐことができる。しかも、円錐形コイルばね91A(図12参照)、樽形コイルばね91B(図14参照)、鼓形コイルばね91C(図16参照)のように、コイル径が徐々に変化するコイルばねである場合に、メモリ62には、コイルばねの一端部から第何巻目かを特定するための巻き番号iと、コイル径Dとを対応させて記憶すればよいので、メモリ62へのデータ入力作業を容易に行うことができる。
【0073】
なお、本実施形態の線材成形機10にて、図12に示した円錐形コイルばね91Aを、コイル径が小さい側から成形した場合には、上記式(2)にて演算可能な挟持力Nsと、上記式(2)の安全率kを「1」にして演算可能な最小挟持力Nminと、上限挟持力Nmaxは、図13(A)に示したようになる。即ち、挟持力Ns及び最小挟持力Nminは、始端部側を成形する成形初期段階で大きくなり、成形が進むに従って徐々に小さくなる。また、挟持力Nsは、最小挟持力Nminより安全率kを乗じた分だけ大きくなり、上限挟持力Nmaxより小さくなる。さらに、カム37の回転位置θは、挟持力Nsに対応して変化する(図13(B)参照)。
【0074】
また、本実施形態の線材成形機10にて、図14に示した樽形コイルばね91Bを成形した場合には、前記挟持力Nsと最小挟持力Nminと上限挟持力Nmaxとは、図15(A)に示したようになる。即ち、挟持力Ns及び最小挟持力Nminは、始端部側を成形する成形初期段階で大きくなり、成形が進むに従って徐々に小さくなった後、途中から徐々に大きくなる。また、この樽形コイルばね91Bにおいても、挟持力Nsは、最小挟持力Nminより安全率kを乗じた分だけ大きくなり、上限挟持力Nmaxより小さくなる。さらに、カム37の回転位置θは、挟持力Nsに対応して変化する(図15(B)参照)。
【0075】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0076】
(1)前記実施形態では、カム37の回転位置を制御することでローラ41,51による挟持力を制御していたが、例えば、カム制御データテーブルTb2における挟持力Ns(i)と、ロードセルユニット35にて検出した実際の挟持力とが一致するように制御してもよい。
【0077】
(2)前記実施形態では、コイルばねの一端部から第何巻目かを特定するための巻き番号とコイル径とを対応させて線材成形機10に入力していたが、例えば、コイルばねの展開長を細分化して得た各位置とコイル径との関係式を制御部60に入力して記憶させておき、位置を関係式に代入してコイル径を求め、そのコイル径から挟持力を演算してもよい。
【0078】
(3)前記実施形態では、圧縮コイルばねを成形する線材成形機10に本発明を適用した例を示したが、図17に示した線材成形品92のように、第1の円弧部92Aの巻回中心軸92J1と、第2の円弧部92Bの巻回中心軸92J2とが互いに異なる方向を向いた構造の線材成形品を成形するための線材成形機等に本発明を適用してもよい。この場合は、例えば第1と第2の円弧部92A,92Bの曲率半径を線材成形品92の設計図から取得し、線材成形品92の展開長を細分化して得た各位置毎に曲率半径のデータを対応させて線材成形機の制御部60に入力すればよい。そして、制御部60にて位置毎の挟持力Ns(i)を上記理論式(2)、(3)から決定すればよい。
【0079】
(4)前記実施形態の線材90の断面は円形であったが、断面非円形の線材を用いる線材成形機等に本発明を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の実施形態に係る線材成形機の側面図
【図2】線材送給装置の側断面図
【図3】線材送給装置の側断面図
【図4】線材送給装置の背面断面図
【図5】挟持力変更機構の断面図
【図6】線材送給装置のブロック図
【図7】ばね成形プログラムのフローチャート
【図8】コイル形状特定処理のフローチャート
【図9】カム位置決定処理のフローチャート
【図10】カム制御データ生成処理のフローチャート
【図11】(A)構造データテーブル、(B)カム制御データテーブル
【図12】円錐形コイルばね
【図13】ばね成形プログラムの演算結果を示したグラフ
【図14】樽形コイルばね
【図15】ばね成形プログラムの演算結果を示したグラフ
【図16】鼓形コイルばね
【図17】(A)線材成形機の平面図,(B)線材成形機の正面図
【符号の説明】
【0081】
10 線材成形機
20 ユニバーサル機構
30 線材送給装置
32K 挟持力変更機構
37 カム
41,51 ローラ
60 制御部
62 メモリ(データ記憶部)
90 線材
91A 円錐形コイルばね(線材成形品)
91B 樽形コイルばね(線材成形品)
91C 鼓形コイルばね(線材成形品)
92 線材成形品
Tb1 構造データテーブル
Tb2 カム制御データテーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線材を湾曲変形させて線材成形品を製造するための線材成形機であって、
前記線材成形品の各部位の曲率半径のデータを記憶したデータ記憶部と、
線材を間に挟んで配置された少なくとも1対のローラを有し、それら1対のローラを対称的に回転させて前記線材成形品の展開長分の前記線材を送給可能な線材送給装置と、
前記線材送給装置が送給した線材に衝合して円弧形状に成形することが可能な成形工具を有し、前記成形工具の位置を変更することで、前記円弧形状の線材の曲率半径を変更可能な成形工具駆動装置と、
前記線材送給装置が送給した前記線材成形品の展開長分の線材のうち前記成形工具に到達した位置毎の前記曲率半径のデータを前記データ記憶部から取得し、そのデータに対応した曲率半径の円弧形状に前記線材が成形されるように前記成形工具の位置を制御する制御部とを備えた線材成形機において、
前記線材送給装置には、前記線材に対する前記1対のローラによる挟持力を任意の値に変更可能な挟持力変更機構が備えられ、
前記データ記憶部には、前記線材の線径と、前記線材の引張り強さと、前記線材と前記ローラとの間の静摩擦係数と、前記線材と前記ローラとのスリップを防ぐための安全率とが記憶され、
前記線径をd、前記引張り強さをσ、前記静摩擦係数をμ、前記安全率をk、前記曲率半径をD/2、前記ローラの対の数をn、前記線材に対する前記1対のローラの挟持力をNsとした場合に、
前記制御部は、前記線材送給装置が送給した前記線材成形品の展開長分の線材のうち前記成形工具に到達した位置毎の前記挟持力Nsが、
Ns=k・σ・d/(4nμD)
、になるように制御することを特徴とする線材成形機。
【請求項2】
前記挟持力変更機構には、カム及び前記カムに従動して変形する弾性体を用いて前記1対のローラの間の挟持力を変更可能なカム機構が備えられ、前記制御部は、前記挟持力Nsを前記カムの回転位置に変換し、その回転位置に前記カムを位置決め制御することを特徴とする請求項1に記載の線材成形機。
【請求項3】
前記線材成形品は、コイル径が徐々に変化するコイルばねであり、
前記データ記憶部は、前記コイルばねの一端部から第何巻目かを特定するための巻き番号と、前記巻き番号毎の前記コイル径の平均値とを対応させて記憶し、
前記制御部は、前記巻き番号及び前記コイル径のデータ群に基づいて、前記線材成形品の展開長のうち前記各巻き番号に対応する位置と、それら位置毎の前記挟持力Nsとを演算することを特徴とする請求項1又は2に記載の線材成形機。
【請求項4】
対称的に回転する少なくとも1対のローラの間を通って送給された線材を成形工具に衝合して湾曲形状に成形しかつ前記成形工具を位置決め制御することで前記湾曲形状の曲率半径を変更可能な線材成形機の制御部に実行され、前記線材から線材成形品を成形する際に、前記1対のローラによる線材に対する挟持力を制御するための線材挟持力制御プログラムであって、
前記線材送給装置が送給した前記線材成形品の展開長分の線材のうち前記成形工具に到達した位置を演算するステップと、
前記線材のうち前記成形工具に到達した位置毎の前記1対のローラによる挟持力を演算するステップとを有し、
前記線材の線径をd、前記線材の引張り強さをσ、前記線材と前記ローラとの間の静摩擦係数をμ、前記線材と前記ローラとのスリップを防ぐための安全率をk、前記ローラの対の数をn、前記線材成形品の展開長における一端部からの位置をi、その位置iに応じて相違する前記線材成形品における線材の曲率半径をD(i)/2、前記挟持力をNs(i)とした場合に、
前記挟持力Nsを演算するステップは、
Ns(i)=k・σ・d/(4nμD(i))
、の演算を行って前記挟持力Ns(i)を演算することを特徴とする線材挟持力制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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