説明

線画処理装置、線画処理方法およびプログラム

【課題】オペレータによる簡便な操作入力によって高精度かつ高効率な彩色処理を行う技術を提供する。
【解決手段】まず、線画処理装置1は、オペレータの操作入力に基づき、指定領域を設定するとともに、当該指定領域内に識別点Fを設定し、しかる後に、各識別点Fが連なる連続領域を彩色した第1・第2識別データ14Dを生成する。さらに線画処理装置1は、第2識別データ14Dで彩色されていない1以上の閉領域を抽出し、各閉領域の面積と、第2識別データ14Dで彩色されている連続領域との面積とを比較することで、1以上の各閉領域の彩色の要否を判定する。そして、線画処理装置1は、線画データ11Dについて、第2識別データ14Dの連続領域と、彩色が必要と判定された閉領域とを同じ色で彩色する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線画を処理する技術に関するものであって、特に線画を彩色する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
マンガ(Manga)は、モノクロ(未彩色)線図の代表的なものである。マンガは、一般的に、欧米のコミック(Comic)とは異なり、日本独自の風合いを持つモノクロ線画である。すなわち、マンガでは、階調(色合い)の表現やキャラクターの感情等が、様々な網点やベタ、効果線等の模様並びに輪郭線等の描画線で表現されており、カラー表現が多いコミックとは性質が大きく異なっている。
【0003】
従来より、マンガは紙上に印刷されて市場に供給されているが、カラー印刷コストがかかりすぎる等の理由から、雑誌等の巻頭カラーページ以外はモノクロでしか制作されていなかった。
【0004】
しかし、携帯電話等の端末装置の通信技術の発達により、デジタル化されたマンガを、通信回線を介して購読できるサイトが急増しており、マンガを液晶モニタ等で鑑賞できる機会が増えている。それに伴い、カラー化(彩色、色付け)されたマンガの需要が大きくなっている。また、日本国外においては、モノクロマンガの文化がないため、マンガビジネスを海外展開する上では、モノクロマンガを彩色する必要がある。
【0005】
マンガ等の線画の彩色については、線図をデジタルデータ化した線画をモニタ等に表示しつつ、作業者による操作入力に基づいて、各領域の彩色処理が行われる。しかし、マンガ等では微小点からなる網トーンが貼付されていたり、細かな描画線が多数あったり、輪郭線を示す描画線に多数の線切れが発生していたりするため、彩色作業には膨大な時間がかかっていた。
【0006】
このように、作業者による手作業で線画の彩色処理を行う場合には、多くの煩雑な工程が必要となっており、彩色処理を自動化する技術が望まれていた。そこで、彩色処理を半自動化する技術が、これまでにもいくつか提案されている(例えば、特許文献1)。
【0007】
詳細には、特許文献1では、線画中に中心画素を設定して、当該中心画素を中心とする所定半径の円状領域内を彩色する技術が開示されている。より具体的には、特許文献1では、中心画素から所定の複数方向の位置にあるエッジ(描画線等)までの距離がそれぞれ測定され、当該測定結果に基づいて上記円状領域の半径が決定される。
【0008】
【特許文献1】特開平10−293855号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、特許文献1の技術では、細かな描画線が多数描かれる領域(例えば、前髪が細かく描かれた「顔」の領域)については、多数の細かな描画線をエッジとして検出してしまうため、当該描画線と描画線の隙間を完全に彩色することは困難であった。
【0010】
また、特許文献1の技術では、所定の複数方向のみの位置のエッジを検出するため、作業者が意図しない範囲を超えた部分まで過剰な彩色が行われるという問題があった。そのため、作業者が彩色の状況を監視して、彩色処理を適宜停止する必要があった。
【0011】
一方で、マンガには、描画線の断線(線切れ)が多数含まれており、線切れによって本来は別領域ではあるものの、一領域として同じ色で彩色すべき場合もある。例えば、作品中の登場人物の「顔」と「首」の輪郭に線切れがある場合において、顔の領域と首の領域とを、同一の肌色で彩色する等である。ところが、特許文献1では線切れが考慮されないため、当該線切れを超えた領域を同一色で一度に彩色することができなかった。
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、オペレータによる簡便な操作入力によって高精度かつ高効率な彩色処理を行う技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するため、請求項1の発明は、線画を彩色処理する線画処理装置であって、線画データを取得する取得手段と、前記線画データに含まれる線画の線切れ状態を補正することによって、補正画像データを生成する線切補正手段と、前記線画データおよび前記補正画像データのうちのいずれかにつき、彩色を行うべき領域に、操作入力に基づいて指定領域を設定する指定領域設定手段と、前記補正画像データにつき、前記指定領域を構成する各単位閉領域の中に識別点を設定する識別点設定手段と、画面全体のうちの前記識別点に連なる連続領域を特定色で彩色する領域彩色手段とを備えることを特徴とする。
【0014】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明に係る線画処理装置であって、前記識別点設定手段は、前記線画データおよび前記補正画像データについて、前記指定領域を構成する各単位閉領域の中に識別点を設定するとともに、前記線画処理装置は、前記線画データと前記補正画像データとについて、画面全体のうちの前記識別点に連なる連続領域と、前記画面全体から前記連続領域を除いた残余領域とを相互に識別した第1識別データと第2識別データとをそれぞれ生成する連続領域識別手段と、前記第1識別データと前記第2識別データとのそれぞれの前記連続領域の差分領域を求め、前記差分領域に含まれる1以上の閉領域を、前記補正画像データから抽出する領域抽出手段と、前記1以上の閉領域のそれぞれについて、彩色の要否を所定の判定基準に基づいて判定する判定手段とをさらに備え、前記領域彩色手段は、前記1以上の閉領域のうちの前記判定手段によって彩色が必要と判定された閉領域と、前記第2識別データで識別されている連続領域とを同一の特定色で彩色することを特徴とする。
【0015】
また、請求項3の発明は、請求項2の発明に係る線画処理装置であって、前記連続領域識別手段は、前記線画データと前記補正画像データとについて、前記連続領域をそれぞれ彩色することによって、前記残余領域から識別することを特徴とする。
【0016】
また、請求項4の発明は、請求項2または3の発明に係る線画処理装置であって、前記判定手段は、前記第2識別データで識別された連続領域の面積と前記1以上の閉領域のそれぞれの面積との比較に基づいて、前記彩色の要否を判定することを特徴とする。
【0017】
また、請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかの発明に係る線画処理装置であって、前記指定領域設定手段は、前記特定色の曲線により規定された指定領域を設定することを特徴とする。
【0018】
また、請求項6の発明は、請求項1ないし5のいずれかの発明に係る線画処理装置であって、前記識別点設定手段は、前記指定領域を規定する曲線と、前記指定領域内に含まれる描画線とで規定される各閉領域を前記単位閉領域として、前記単位閉領域ごとの重心点を識別点に設定することを特徴とする。
【0019】
また、請求項7の発明は、請求項1ないし6のいずれかの発明に係る線画処理装置であって、前記識別点設定手段は、前記指定領域をさらに複数の領域に分割し、前記複数の領域のそれぞれに識別点を設定することを特徴とする。
【0020】
また、請求項8の発明は、請求項1ないし7のいずれかの発明に係る線画処理装置であって、前記識別点設定手段は、前記指定領域のうちの所定の方向に偏った部分領域を指定する部分領域指定手段、を含み、前記識別点設定手段は、前記部分領域に識別点を設定することを特徴とする。
【0021】
また、請求項9の発明は、請求項1ないし8のいずれかの発明に係る線画処理装置であって、前記線切補正手段は、前記線画データにおける描画線を所定の割合で膨張処理する膨張処理手段、を含むことを特徴とする。
【0022】
また、請求項10の発明は、情報処理装置を使って線画を彩色処理する線画処理方法であって、前記情報処理装置が、(a)線画データを取得する工程と、(b)前記線画データに含まれる線画の線切れ状態を補正することによって、補正画像データを生成する工程と、(c)前記線画データおよび前記補正画像データのうちのいずれかにつき、彩色を行うべき領域に、操作入力に基づいて指定領域を設定する工程と、(d)前記補正画像データにつき、前記(c)工程にて設定した前記指定領域を構成する各単位閉領域の中に識別点を設定する工程と、(e)画面全体のうちの前記識別点に連なる連続領域を特定色で彩色する工程とを実行することを特徴とする。
【0023】
また、請求項11の発明は、コンピュータが読み取り可能なプログラムであって、前記コンピュータが前記プログラムを読み取ることにより、前記コンピュータを、線画データを取得する取得手段と、前記線画データに含まれる線画の線切れ状態を補正することによって、補正画像データを生成する線切補正手段と、前記線画データおよび前記補正画像データのうちのいずれかにつき、彩色を行うべき領域に、操作入力に基づいて指定領域を設定する指定領域設定手段と、前記補正画像データにつき、前記指定領域を構成する各単位閉領域の中に識別点を設定する識別点設定手段と、画面全体のうちの前記識別点に連なる連続領域を特定色で彩色する領域彩色手段とを備えた線画を彩色処理する線画処理装置として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
請求項1ないし11に記載の発明によれば、彩色範囲として含ませるべき領域(例えば、細かな複数の描画線等によって規定される比較的小さな小領域)の少なくとも一部をオペレータが指定する指定領域に含めることで、当該小領域を相対的に大きな領域と同様に彩色することが可能となる。また、細かな描画線を多数含む領域であっても、当該細かな描画線の隙間を彩色することができる。すなわち、簡便な操作入力によって、彩色処理を効率良く行うことができる。
【0025】
また、請求項2に記載の発明によれば、線切れを有する線画と線切れ補正した補正画像とのそれぞれに基づいて、自動的に彩色すべき領域と彩色すべきでない領域と判定を行うため、彩色処理を高精度、かつ、高効率に行うことができる。
【0026】
また、請求項3に記載の発明によれば、特定色での彩色により連続領域を識別することによって、オペレータが処理過程や、色合いを確認しやすくなる。
【0027】
また、請求項4に記載の発明によれば、面積に基づいて比較を行うため、容易に彩色の要否の判定を行うことができる。
【0028】
また、請求項5に記載の発明によれば、線画を彩色する特定色で曲線によって閉領域を規定することで、オペレータは、容易に彩色する色を指定することができるとともに、領域彩色手段による彩色処理前に当該領域に適した色か否かを確認することが可能となる。
【0029】
また、請求項6に記載の発明によれば、重心点の位置を識別点に設定することで、識別点を容易に設定することができる。
【0030】
また、請求項7に記載の発明によれば、識別点が指定領域から外れることを防止することができる。したがって、確実に指定領域内部に彩色処理の基準となる基準点を設定することができるため、彩色処理精度を高めることができる。
【0031】
また、請求項8に記載の発明によれば、識別点を設定すべき領域範囲をさらに絞り込むことができるため、彩色処理精度を高めることができる。
【0032】
また、請求項9に記載の発明によれば、膨張処理することによって、線画の線切れ状態を容易に補正することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の好適な実施の形態について、添付の図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0034】
<1. 第1の実施の形態>
<1.1. 線画処理装置1の構成および機能>
[概略構成]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る線画処理装置1の外観図である。また、図2は、線画処理装置1の構成を示す図である。
【0035】
線画処理装置1は、主にCPU10、記憶部11、操作部12、表示部13、ディスク読取部14、通信部15およびスキャナ16を備え、一般的なコンピュータ(情報処理装置)としての機能を備えている。
【0036】
CPU10は、記憶部11に記憶されているプログラム2にしたがって動作することによって、各種データの演算や制御信号の生成を実行し、線画処理装置1の各構成を制御する。CPU10によって実現される機能ブロックについては後述する。
【0037】
記憶部11は、CPU10の一時的なワーキングエリアとなるRAM及びハードディスクや、読み取り専用のROMを備えている(図示せず)。記憶部11は、プログラム2や各種データを記憶する記録媒体としての機能を有している。なお、プログラム2は、後述する記録媒体9からディスク読取部14を介して記憶部11に転送されてもよい。あるいは、プログラム2が通信部15を介して、記憶部11に転送されてもよい。
【0038】
操作部12は、線画処理装置1に対してユーザの指示を入力するために使用される。すなわち、操作部12は、線画処理装置1における入力装置として機能する。具体的に操作部12は、例えばキーボードやマウス、ペンタブレット(登録商標)及び各種ボタン類などが該当する。
【0039】
表示部13は、各種データを画像として画面に表示する。すなわち表示部13は、線画処理装置1における表示装置として機能する。具体的に表示部13は、例えばCRTモニタや液晶ディスプレイなどが該当するが、タッチパネルディスプレイのように、操作部12の機能を一部有しているものでもよい。
【0040】
ディスク読取部14は、可搬性の記録媒体9に記憶されているデータを読み取って記憶部11に転送する装置である。すなわち、ディスク読取部14は線画処理装置1におけるデータ入力装置として機能する。
【0041】
なお、本実施の形態における線画処理装置1は、ディスク読取部14としてCD−ROMドライブを備えている。しかし、ディスク読取部14はこれに限られるものではなく、例えばFDドライブ、DVDドライブ、MO装置などであってもよい。なお、ディスク読取部14が記録媒体9にデータを記録させる機能を有する場合には、ディスク読取部14に記憶部11の機能の一部を代行させることも可能である。
【0042】
通信部15は、線画処理装置1と図示しない他の装置群との間でネットワークを介した通信を行う。線画処理装置1は、当該ネットワークを介することによって、各種データを取得することができる。
【0043】
スキャナ16は、線画を読み取るための読取装置であって、多数のイメージセンサを有しており、アナログの線画をデジタルデータとして取得する機能を有する。
【0044】
図3は、線画処理装置1の機能ブロックをデータの流れとともに示す図である。図3に示す画像取得部21、線切補正部22、識別処理部23、領域抽出部24、判定部25および領域彩色部26は、主にCPU10がプログラム2に従って動作することにより実現される機能ブロックである。
【0045】
[画像取得部21]
図4は、線画データ11Dの一例を示す図である。印刷基材(紙等)に印刷された線画(マンガの一部)がスキャナ16により読み取られて取得された線画データ11Dは、画像取得部21によって記憶部11に格納される。なお、データの取得方法は、もちろんこれに限られるものではなく、画像取得部21は、記録媒体9に記録されている線画データ11Dをディスク読取部14により読み取って取得してもよいし、ネットワークを介して線画データ11Dを取得してもよい。
【0046】
線画処理装置1の処理対象となる線画は、紙等に記載されたアナログ画像(原稿)の場合のほか、過去にデジタル化された画像の場合もあるが、いずれの場合も白黒2値画像である。
【0047】
アナログ画像の場合には、スキャナ16などを用いた光電読取りによってデジタル化するにあたって2値画像としての読取りでもよいが、その場合には、下記に説明する指定領域設定処理の前に、複数ビットを用いたカラー多階調画像表現(例えばR(赤)G(緑)B(青)の信号値を各8ビットで表現、すなわち1画素当たり24ビットで表現)の画像に変換しておく。
【0048】
また、最初からカラー多階調での画像読取りであってもよい。もっとも、多階調化処理の前段階での「多階調」は、各画素が複数ビットで表現されているというだけであり、実際には、白と黒との2つのレベル(例えば、白色はR=0,G=0,B=0の階調値、黒色はR=255,G=255,B=255の階調値)が用いられる。
【0049】
また、本実施の形態では、描画線等を構成する画素は「黒色」の画素で、無地部分の画素は「白色」の画素で構成されているものとして説明するが、これらは説明のために便宜的に定義されるものであり、例えば描画線等が「白色」の画素によって構成されていてもよい。
【0050】
なお、線画データ11Dでは、主に「背景」領域と、人物の「顔」領域と、「首」領域とが描画されている。そして「顔」領域の額部分には、複数本の前髪が描画線で描かれており、当該描画線によって他の領域から分離された比較的小さい小領域SRが形成されている。また、顔の輪郭線は、点線で囲む計5ヶ所の断線(線切れ)を含んでいるため、画面全体の中では、顔領域は、背景領域と首領域とにつながっている。本実施の形態では、このような線画について、顔領域を特定色で彩色する際に、小領域SRを顔領域と同じ色で彩色すること、ならびに、首領域および顔領域(すなわち画面全体の中の背景領域を除く領域)を同じ色で彩色することを目的として説明する。
【0051】
[線切補正部22]
図5は、図4に示す線画データ11Dについて線切れ補正を行った補正画像データ12Dの一例を示す図である。線切補正部22は、画像取得部21により取得された線画データ11Dに含まれる輪郭線等の描画線の線切れ状態(図4中、点線で囲んだ部分)を接続補正することによって、補正画像データ12Dを生成する。
【0052】
本実施の形態では、線切補正部22は、線画データ11Dにおける描画線を所定の割合で膨張させる膨張処理を行うことによって、線切れの補正を行う。ここでの膨張処理とは、線画データ11Dにおける「白色」の注目画素の8近傍の画素(注目画素の上下左右および斜め方向に隣接する画素)に、1つでも「黒色」の画素があれば、その注目画素を「黒色」の画素に変換する処理をいう。ただし、注目画素の8近傍の画素を識別して処理するものに限られず、例えば4近傍の画素(注目画素の上下左右方向に隣接する画素)を識別して処理するものであってもよい。
【0053】
このような膨張処理を所定回数繰り返して行うことによって、線切補正部22は、線画データ11Dにおける輪郭線の描画線の線切れや、スキャナ16での読みとり時に発生する線切れ(画素の白抜け等が含まれる。)を補正する。線切補正部22は、線画データ11Dにおける描画線を所定の割合で膨張処理したデータ(補正画像データ12D)を記憶部11に格納する。
【0054】
なお、本実施の形態では、線切補正部22は、膨張処理を行うことによって線切れを補正するとしているが、もちろんこれに限られるものではなく、例えば線画データ11Dの描画線を線幅1画素の細線にした後に(細線化)、各細線の終端点を抽出し、所定の範囲内で近接する終端点同士を直線(又は曲線)等で接続して、線切れの補正を実行する構成としてもよい。
【0055】
[識別処理部23]
再び図3に戻って、識別処理部23は、主として、指定領域設定部231、識別点設定部232、連続領域識別部233を備え、線画データ11Dおよび補正画像データ12Dにおいて、オペレータによる操作入力に基づいて、彩色すべき領域を残余領域から識別する機能を有する。以下に、各機能ブロックについて、詳細に説明する。
【0056】
[指定領域設定部231]
図6は、指定領域設定画面Wの例を示す図である。指定領域設定部231は、線画データ11Dおよび補正画像データ12Dのうちのいずれかにつき、彩色を行うべき領域の内部に、操作入力に基づいて指定領域41Rを設定する。より詳しくは、指定領域設定部231は、線画データ11Dを含む指定領域設定画面Wを表示部13に表示させる。そして指定領域設定部231は、オペレータのコマンド(命令)入力に基づいて描画される曲線(折れ線を含む。)41Lにより規定される指定領域41Rを設定する。
【0057】
指定領域設定画面Wは、主として、曲線41Lを描画するためのブラシツールボタン31と、画像を拡大するための拡大ツールボタン32と、曲線41Lを描画する際の色を選択するためのカラーパレット33とを備えている。また、図示を省略するが、描画する曲線41Lの太さを規定するボタンが準備されている。
【0058】
指定領域41Rを設定するために、オペレータは、表示部13に表示された線画データ11D(または補正画像データ12D)を確認しながら、彩色したいパーツの領域を輪郭線に沿っておおまかに曲線41Lを描画することによって、指定領域41Rを指定する。
【0059】
図6に示す例では、オペレータは人物の「顔」を彩色するべく、「顔」の額部分に指定領域41Rを指定している。この指定領域41Rを規定するための曲線41Lは、ブラシツールによって、線画データ11D上に描画される。また、この曲線41Lは、色付けしたい色(特定色)がカラーパレット33から選択され、当該特定色で描画される。すなわち、特定色についての情報を有する曲線41Lによって指定領域41Rが指定される。また、図示を省略するが、オペレータによる描画に誤りがあった場合などは、曲線41Lの消去ツールによって適宜修正が可能とされる。
【0060】
図6に示す線画データ11Dの人物の額部分には、前述のように複数の前髪が描画されているが、前髪の描画線のみで形成される小領域SR(図4参照)の少なくとも一部が、指定領域41Rの内部に含まれるように、曲線41Lが描画される。これにより、後述する彩色処理によって、当該小領域SRと、顔の領域部分とを同一色で彩色することができる。
【0061】
なお、本実施の形態では、ブラシツールによって曲線41Lを描画することにより指定領域41Rを設定するものとしているが、予め用意された所定形状(例えば、円形(楕円形を含む。)や多角形等)の領域選択ツール(図示せず)によって、指定領域41Rを設定するように構成してもよい。
【0062】
また、指定領域設定部231は、オペレータによって描画された曲線41Lが完全に閉じたものでない場合(すなわち、曲線41Lが閉領域を形成しない場合)に、例えば描画開始点と描画終了点とを自動的に接続する補助線を追加する機能を有していてもよい。これにより、オペレータが閉じた曲線41Lを描画し損なった場合であっても、指定領域41Rを確実に指定することができる。
【0063】
また、ここでは、指定領域41Rを線画データ11Dに対して設定しているが、これに限られるものではなく、例えば補正画像データ12Dに対して設定されてもよい。この場合には、指定領域設定部231が指定領域設定画面Wに補正画像データ12Dを表示させて、オペレータが指定領域41Rを指定できるようにすればよい。
【0064】
[識別点設定部232]
図7は、図6に示す指定領域41R内部に識別点Fを設定した例を示す図である。また、図8は、図5に示す補正画像データ12Dに対して、識別点Fを設定した例を示す図である。
【0065】
識別点設定部232は、線画データ11Dおよび補正画像データ12Dについて、指定領域41Rを構成する各単位閉領域の中に識別点Fを設定する。より詳しくは、本実施の形態では、指定領域41Rを規定する曲線41Lと、指定領域41R内部の描画線とで規定される各単位閉領域の重心点(位置的中心)を識別点Fとして設定する。
【0066】
例えば図7に示す例では、識別点設定部232は、曲線41Lおよび線画データ11Dにおける鼻および目の描画線(輪郭線)とで規定される、2つの「目」の単位閉領域411R,412Rと、「鼻」の一部の単位閉領域413Rと、2本の前髪の描画線で形成される単位閉領域414R(小領域SRに対応する。)と、これら単位閉領域411R〜414Rを除く指定領域41Rの内部の単位閉領域415Rとの計5つの単位閉領域411R〜415Rについて、それぞれの重心点の位置を求める。そして識別点設定部232は、当該重心点に相当する画素を、それぞれ識別点F1〜F5に設定する。
【0067】
一方、図8に示すように、識別点設定部232は、補正画像データ12Dに対しても識別点F1〜F5に対応する位置に識別点F1a〜F5aを設定する。すなわち、識別点F1〜F5の線画データ11Dの画面全体における画素位置と、識別点F1a〜F4aの補正画像データ12Dの画面全体における画素位置とが同じとなるように、識別点F1a〜F5aが設定される。このように、識別点設定部232は、線画データ11Dおよび補正画像データ12Dのそれぞれに識別点Fを設定する。
【0068】
なお、ここでは、線画データ11Dに対して指定領域41Rが設定した場合について説明したが、補正画像データ12Dに対して指定領域41Rを設定した場合には、識別点設定部232は、補正画像データ12Dに対して識別点Fを設定し、線画データ11Dに対しても、対応する同位置に識別点Fを設定すればよい。
【0069】
また、本実施の形態では、識別点設定部232は、各単位閉領域411R〜415Rごとの重心点を識別点Fに設定するとしているが、これに限られるものではなく、例えば閉領域411R〜414Rの境界線に外接する長方形の中心点を、識別点Fに設定するようにしてもよい。
【0070】
[連続領域識別部233]
連続領域識別部233は、線画データ11Dと補正画像データ12Dとについて、画面全体のうちの識別点Fに連なる連続領域と、画面全体から連続領域を除いた残余領域とを相互に識別した第1識別データと第2識別データとをそれぞれ生成する。ここで、連続領域とは、識別点Fの画素の階調値と同一階調値(ここでは、白色の画素)の画素群であって、識別点Fに連なる画素の集合をいう。換言すれば、線画データ11Dまたは補正画像データ12Dの画面全体の中において、識別点Fが属する(含まれる)、描画線および画面の枠(最も外側の画素)によって規定される閉領域をいう。
【0071】
図9は、図7に示す線画データ11Dから生成した第1識別データ13Dの一例を示す図である。また、図10は、図8に示す補正画像データ12Dから生成した第2識別データ14Dの一例を示す図である。本実施の形態では、図9または図10に示すように、線画データ11Dにおける識別点設定部232により設定した識別点Fに連なる連続領域を、曲線41Lの描画時に選択した特定色で彩色することにより、画面全体から当該連続領域を除いた残余領域と識別される。
【0072】
図9に示す例では、識別点F1,F2と連なる連続領域は「目」部分(単位閉領域411R,412Rに相当)であり、識別点F3と連なる連続領域は「鼻」部分(単位閉領域413Rに相当)であり、識別点F4と連なる連続領域は前髪の描画線で囲まれる小領域SR(単位閉領域414Rに相当)である。したがって、これらの連続領域は、特定色で彩色されて、残余領域から識別される。
【0073】
一方、識別点F5は、「顔」の領域(詳細には、「目」と「鼻」を除く領域)に属するものの、顔の輪郭線の一部が断線(線切れ)しているため、識別点F5に連なる連続領域は、顔、首および背景のすべての領域に一致する。したがって、図9に示すように、線画データ11Dからは、画面全体が特定色で彩色された第1識別データ13Dが生成される。
【0074】
これに対して、補正画像データ12Dでは、識別点F1a,F2aに連なる連続領域は「目」部分であり、識別点F3aに連なる連続領域は「鼻」部分であり、識別点F4と連なる連続領域は前髪の描画線で形成される小領域SRである。この点は、線画データ11Dのものと同様である。ところが、補正画像データ12Dは、先に述べたように、線切れ補正がなされた画像であるため、識別点F5aは顔領域のみに含まれている。したがって、補正画像データ12Dからは、図10に示すように、これらの「目」および「鼻」部分と小領域SRとを含む顔領域のみが彩色されたデータ(第2識別データ14D)が生成される。
【0075】
なお、上記の識別のための彩色は、線画データ11Dの元の描画線、あるいは補正画像データ12Dの線切れ補正された描画線と同じレイヤーに対して実行されてもよいが、彩色後に修正等を実行しやすくするため、別レイヤーに対して実行されることが望ましい。また、線画データ11Dに対しては、描画線の内側を彩色するものとするが、補正画像データ12Dに対して彩色する際には、各識別点Fが連なる連続領域を所定の割合(線切れ補正時に描画線を膨張させたのと同じ割合)だけ膨張させた範囲を彩色するものとする。
【0076】
連続領域識別部233が生成した第1識別データ13Dおよび第2識別データは、記憶部11に格納される。以上が、識別処理部23が備える各機能ブロックの説明である。なお、図示を省略するが、識別処理部23が第1識別データ13Dおよび第2識別データ14Dを適宜表示部13に表示するように線画処理装置1を構成してもよい。これにより、彩色結果を確認することができるので、指定領域41Rの指定のやり直しの判断や、選択した特定色の良否等の判断を容易に行うことができる。
【0077】
[領域抽出部24]
図3に戻って、領域抽出部24は、第1識別データ13Dと第2識別データ14Dとのそれぞれの連続領域の差分領域を求め、当該差分領域に含まれる1以上の閉領域を、補正画像データ12Dから抽出する。換言すれば、ここでは、第1識別データ13Dで彩色されている領域(第1識別領域)と、第2識別データ14Dで彩色されている領域(第2識別領域)とを重ねあわせ、第1識別領域と第2識別領域との差分領域を抽出する。さらに領域抽出部24は、補正画像データ12Dの描画線に基づいて、当該抽出した差分領域を1以上の閉領域に分類する。
【0078】
図11は、図9に示す第1識別データ13Dと図10に示す第2識別データ14Dとから生成した領域抽出データ15Dの一例を示す図である。例えば図9に示す第1識別データ13Dで彩色されている第1識別領域と、図10に示す第2識別データ14Dで彩色されている第2識別領域とを比較したとき、第1識別領域では彩色されているが、第2識別領域では彩色されていない差分領域(ここでは、画面全体のうちの「顔」以外の領域)が抽出される。この差分領域は、補正画像データ12Dでは描画線によって、「首」部分の閉領域NRと「背景」部分の閉領域BRとに分類することができるため、図11に示すように、これら2つの閉領域NR,BRが抽出される。
【0079】
なお、領域抽出部24は、抽出した閉領域NR,BRについての面積(具体的には、閉領域NR,BRを構成する画素の数)情報等を記録したデータ(領域抽出データ15D)を記憶部11に格納する。
【0080】
[判定部25]
再び図3に戻って、判定部25は、領域抽出部24により抽出された1以上の閉領域において、彩色の要否を所定の判定基準に基づいて判定する。より詳しくは、本実施の形態では、判定部25は、前記第2識別データ14Dで識別(彩色)された連続領域(顔領域、図9参照)の面積と、1以上の閉領域(閉領域NR,BR、図10参照)のそれぞれの面積との比較し、彩色の要否を判定する。
【0081】
例えば、図11に示す閉領域NR(首領域)の面積は、顔領域の面積に対して、比率が0.3となっている。一方、閉領域BR(背景領域)の面積は、顔領域の面積に対して、比率が2.5となっている。ここで、彩色の要否に関する判定基準として、比率の閾値を0.5以下に設定した場合には、閉領域NR,BRのうち、閉領域NRのみが判定基準を満たす(比率が0.3<0.5)。したがって、判定部25は、閉領域NRのみを彩色が必要と判定する。そして判定部25は、領域抽出データ15Dの閉領域NRにフラグを設定したデータ(判定結果16D)を記憶部11に格納する。
【0082】
このように、判定基準を適切に設定することによって、オペレータが彩色を希望する顔領域の一部(指定領域41R)を指定するだけで、同一色で塗るべきその他の部分(首領域)を自動的に判定することができる。すなわち、本実施の形態における線画処理装置1は、線画データ11Dが保有する描画線の線切れを利用することによって、彩色を行いたい領域を超えて、効率的に線画を彩色することができる。
【0083】
なお、上記説明では、判定部25は面積の比較に基づいて判定を行うとしているが、もちろんこれに限られるものではなく、例えば周囲長(具体的には、各閉領域NR,BRの輪郭線部分を構成する画素数)等に基づいて判定を行う構成としてもよい。また、本実施の形態では、第2識別データ14Dで識別されている閉領域(「顔」の領域)の面積を比較の基準としているが、これに限られるものではなく、例えば、指定領域41Rの面積(あるいは周囲長等)を比較の基準としてもよい。
【0084】
[領域彩色部26]
再び図3に戻って、領域彩色部26は、領域抽出部24によって抽出された1以上の閉領域のうちの判定部25によって彩色が必要と判定された閉領域と、前記第2識別データで識別されている連続領域とを同一の特定色で彩色する。
【0085】
図12は、図4に示す線画データ11Dを彩色して生成した彩色画像データ17Dの一例を示す図である。領域彩色部26は、判定結果16Dを参照することによって、彩色が必要と判断された閉領域NR(首領域)に対応する線画データ11Dの部分と、第2識別データ14Dで識別(彩色)されている顔領域に対応する線画データ11Dの部分とを、特定色(オペレータが曲線41Lを描画するカラーパレット33から選択した色)で彩色する。これにより、図12に示すように、顔領域と首領域とが同一の特定色で彩色された彩色画像データ17Dが生成される。
【0086】
以上が線画処理装置1の構成および機能の説明である。次に、線画処理装置1の動作について説明する。
【0087】
<1.2. 動作>
図13は、線画処理装置1の動作を示す流れ図である。なお、以下の動作は、特に断らない限り、CPU10の制御により実現されるものである。
【0088】
線画処理装置1は、所定の設定データ(例えば判定部25の判定基準の設定等)の読出し等の初期設定動作を実行した後、線画データ11Dの取得を行う(ステップS11)。なお、紙面等上に印刷された線図のスキャナ16や記録媒体9、ネットワークを介して線画データ11Dを取得してもよい。また、線画データ11Dは、RGBのカラー画像表現の画像として記憶部11に格納される。
【0089】
線画データ11Dを取得すると、線画処理装置1は、所定の回数の膨張処理を行い、線画データ11Dの描画線の線切れを補正した補正画像データ12Dを生成する(ステップS12)。なお、この膨張処理の回数は、オペレータが適宜変更することが可能である。
【0090】
次に、線画処理装置1は、指定領域設定画面Wを表示部13に表示する(図6参照)。これに従って、オペレータは、指定領域設定画面Wに表示される線画データ11D(あるいは補正画像データ12D)を確認しながら、カラーパレット33から彩色したい色を指定して、ブラシツールによる曲線41Lの描画によって彩色を行うべき領域を指定する。これにより、指定領域41Rが設定される(ステップS13)。
【0091】
指定領域41Rを設定すると、線画処理装置1は、線画データ11Dおよび補正画像データ12Dのそれぞれに対して、指定領域41R内に識別点Fを設定する(ステップS14、図7,8参照)。
【0092】
識別点Fを設定すると、線画処理装置1は、線画データ11Dにおける識別点Fと連なる連続領域を他の領域(画面全体のうちから連続領域を除いた残余領域)から識別した第1識別データ13Dと、補正画像データ12Dにおける識別点Fと連なる連続領域を、他の領域から識別した第2識別データ14Dとを生成する(ステップS15、図9,10参照)。この識別は、例えば識別点Fに連なる連続領域を特定色で彩色することによって、他の領域から区別する方法で行う。これにより、オペレータは、処理経過や色の可否等について、容易に確認することができる。
【0093】
第1識別データ13Dおよび第2識別データ14Dを生成すると、線画処理装置1は、第1識別データ13Dと第2識別データ14Dとのそれぞれの連続領域を比較して差分領域を求め、当該差分領域に含まれる1以上の閉領域(例えば、図11に示す閉領域NR,BR)を、補正画像データ12Dから抽出する(ステップS16)。
【0094】
ステップS16にて1以上の閉領域を抽出すると、線画処理装置1は、各閉領域について、彩色処理が必要か否かを判定する(ステップS17)。すなわち、線画処理装置1は、第2識別データで彩色された閉領域の面積と、ステップS16にて補正画像データ12Dから抽出された閉領域の面積とがそれぞれ比較する。そして面積比率が所定の値以下の場合に、彩色が必要と判定される。
【0095】
この判定は、面積を基準にするものに限られるものではなく、各領域の周囲長等を基準としてもよい。なお、判定部25は、領域抽出データ15Dから、彩色が必要と判定した領域について、フラグを設定する。また、判定部25は、抽出された全閉領域についての判定結果16Dを記憶部11に格納する。
【0096】
判定処理を完了すると、線画処理装置1は、第2識別データ14Dと判定結果16Dとに基づいて、線画データ11Dに対して彩色を行う(ステップS18)。すなわち、第2識別データ14Dで識別(彩色)されている領域(例えば、図10の顔領域)と、ステップS16で彩色が必要と判定された領域(例えば、図11の首領域)とについて、線画データ11Dのそれぞれの領域に対応する範囲を特定色で彩色する(図12参照)。ここでは、例えば、第2識別データ14Dの彩色したレイヤーを線画データ11Dに適用してもよい。なお、補正画像データ12Dに対して、彩色が実行されてもよい。
【0097】
彩色処理を終えると、線画処理装置1は、さらに彩色を行うべき未彩色の領域があるかどうかを判断する(ステップS19)。詳細には、ステップS18にて彩色された彩色画像データ17Dが指定領域設定画面Wに表示される。これに従って、オペレータは、さらに彩色を行いたい領域がある場合(YESの場合)には、所定のコマンドを入力する。これにより、線画処理装置1は、再びステップS13に戻って、以降の処理を繰り返して実行する。一方、彩色したい領域がない場合(NOの場合)には、オペレータは彩色画像データ17Dの保存等の終了処理を行う。そして、線画処理装置1は、彩色処理を終了する。
【0098】
以上が線画処理装置1の動作についての説明である。
【0099】
<1.3. 効果>
本実施の形態における線画処理装置1では、彩色を行いたい領域(顔領域)の一部を指定領域41Rに設定する際に、小領域SRの一部についても含むように指定領域41Rを設定することで、当該小領域SRについても顔領域と同じ特定色で彩色することができる。また、例えばマンガ等に描かれている人物の額部分の前髪等、細かな線が描画された領域であっても、その描画線の隙間を精密に彩色することができる。
【0100】
また、線切れを有する線画と線切れ補正した補正画像とのそれぞれに基づいて、自動的に彩色すべき領域と彩色すべきでない領域と判定を行うため、オペレータによる彩色を行うべき指定領域41Rの簡便な指定によって、彩色処理を高精度、かつ、効率的に行うことができる。
【0101】
<2. 第2の実施の形態>
第1の実施の形態では、領域抽出部24が抽出した1以上の閉領域について、判定部25が彩色の要否を判定することによって、彩色すべき領域を越えた他の領域についても彩色を行うとしているが、彩色処理方法はこれに限られるものではない。なお、以下に本実施の形態について説明するが、第1の実施の形態と同様の構成については、適宜同符号を付し説明を省略する。以下の各実施の形態についても同様とする。
【0102】
図14は、第2の実施の形態に係る線画処理装置1の動作を示す流れ図である。なお、本実施の形態では、図4に示す画像についての顔領域を彩色する際に、小領域SRについても顔領域と同じ色で彩色することを目的として説明する。
【0103】
線画データ11Dの取得(ステップS21)、補正画像データD12の生成(ステップS22)および指定領域41Rの設定(ステップS23)は、第1の実施の形態のステップS11〜ステップS13のそれぞれと同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0104】
本実施の形態では、指定領域41Rを設定すると、線画処理装置1は、補正画像データ12Dのみに対して、指定領域41Rを構成する各単位閉領域の中に識別点Fの設定する(ステップS24、図8参照)。
【0105】
識別点Fを設定すると、線画処理装置1は、補正画像データ12Dに対して、識別点Fに連なる連続領域を特定色で彩色する(ステップS25)。なお、この彩色は、補正画像データ12Dの膨張処理した描画線とは別のレイヤーに対して実行されるとともに、当該彩色された領域は、描画線の膨張の割合と同じ割合だけ膨張される。以上の処理により、第1の実施の形態における第2識別データ14Dと同様のデータ、すなわち、小領域SRを含む顔領域が彩色されたデータを取得することができる。取得されたデータは、記憶部11に格納される。
【0106】
次に、線画処理装置1は、補正画像データ12Dに対して彩色した彩色レイヤーを線画データ11Dに適用することによって、線画データ11Dを彩色する(ステップS26)。
【0107】
彩色処理を終えると、線画処理装置1は、さらに彩色を行うべき未彩色の領域があるかどうか判断する(ステップS27)。詳細には、ステップS26にて彩色された線画データ11Dが指定領域設定画面Wに表示される。これに従って、オペレータは、さらに彩色を行いたい領域がある場合(YESの場合)には、所定のコマンドを入力する。これにより、線画処理装置1は、再びステップS23に戻って、以降の処理を繰り返して実行する。一方、彩色したい領域がない場合(NOの場合)には、オペレータは彩色した線画データ11Dの保存等の終了処理を行う。そして、線画処理装置1は、彩色処理を終了する。
【0108】
このように、彩色を行いたい領域(顔領域)の一部を指定領域41Rに設定する際に、小領域SRの一部についても含むように指定領域41Rを設定することで、当該小領域SRについても顔領域と同じ特定色で彩色することができる。本実施の形態では、第1の実施の形態のように、彩色を行うべき領域以外の部分は彩色されないものの、より単純な処理によって、比較的小さな小領域についても、逐一選択して彩色する必要がなくなるため、彩色処理を効率的に行うことができる。
【0109】
<3. 第3の実施の形態>
第1の実施の形態では、識別点設定部232は、指定領域41Rを規定する曲線41Lと、指定領域41R内部に含まれる線画データ11D(または補正画像データ12D)の描画線とで規定される各閉領域の重心点(位置的中心)を識別点Fとして設定すると説明した。しかし、識別点Fの設定方法は、これに限定されるものではない。
【0110】
図15は、第3の実施の形態に係る識別点Fの設定方法の一例を示す図である。図14に示すように、本実施の形態では、オペレータの指定により指定領域41Rが設定された後に、識別点設定部232は、指定領域41Rをさらに複数の領域に分割し、当該複数の領域ごとに識別点Fを設定する。
【0111】
より詳細には、本実施の形態における識別点設定部232は、指定領域41Rを複数に等分(図14に示す例では、12等分)した後に、各領域の任意の位置(図15に示す例では、各領域の重心点(位置的中心))に識別点Fを設定する。
【0112】
例えばオペレータが指定した指定領域41Rが「コ」の字のような凹部形状を有していたときに、重心点を識別点Fに自動的に設定するようにした場合には、指定領域41Rの外部に識別点Fが設定されてしまう虞れがある。ところが、本実施の形態では、上記実施の形態とは異なり、指定領域41Rを複数に分割した領域ごとに識別点Fが設定されるため、指定領域41Rの内部に確実に識別点Fを設定することができる。
【0113】
<4. 第4の実施の形態>
上記実施の形態では、識別点設定部232は、オペレータの指定により設定された指定領域41Rの全範囲を対象に、識別点Fを設定していたが、識別点Fの設定方法はこれに限られるものではない。
【0114】
図16は、第4の実施の形態に係る指定領域設定画面Waの一例を示す図である。また、図17は、図16に示す指定領域41R内部に識別点Fを設定した示す図である。図16に示すように、本実施の形態では、指定領域設定画面Waは、指定領域41Rのうちの所定の方向に偏った部分領域を指定するための部分領域指定ツールボタン34を備えている。
【0115】
より詳細には、オペレータは、ブラシツールによって曲線41Lを描画することで指定領域41Rを指定した後に、部分領域指定ツールによって指定領域41R内の任意方向(図16に示す例では下方)に偏った位置に指定点41Pを付加する。これにより、識別点設定部232は、指定点41Pの指定領域41Rの中心位置からの偏りに基づいて、当該方向の部分領域(図16に示す例では、指定領域41Rの下半分の領域)が選択されたことを認識し、当該部分領域を複数の領域に分割する(図17に示す例では、6等分)。そして識別点設定部232は、分割した各領域内の任意の位置(ここでは、重心)に識別点Fを設定する。
【0116】
このように部分領域指定ツールボタン34を備えることによって、識別点Fを設定した場合、オペレータが彩色すべきパーツ領域の輪郭線をはみ出して曲線41Lを描画した場合であっても、当該パーツ領域外に識別点Fを設定することを防止することができるため、高精度な彩色処理を実現することができる。また、設定される識別点Fは、彩色の基準となる点であるため、当該識別点Fを設定する場所をより絞り込むことによって、線画を高精度に彩色することができる。
【0117】
なお、部分領域指定ツールで指定する方向は1方向に限られるものではなく、複数方向指定できるように線画処理装置1を構成してもよい。また、指定される部分領域は、指定領域41Rの半分の領域に限られるものではなく、さらに細かく区切られた領域であってもよい。また、指定点41Pが付加された画素を中心とした所定範囲内の領域を部分領域として採用する構成としてもよい。
【0118】
また、ここでは、指定領域41Rを指定してから、部分領域指定ツールにより部分領域をさらに指定する構成としているが、これに限られるものではなく、指定領域41Rを指定の指定と同時に部分領域が自動的に設定されるように構成してもよい。また、ブラシツール自体が部分領域指定ツールの機能を兼ね備えていてもよい。すなわち、ブラシツールで曲線41Lを描画した後に、指定領域41R内の偏った位置に指定点41Pを描画することで、当該指定点41Pを識別点設定部232が認識するようにしてもよい。
【0119】
さらに、指定領域41Rを指定する際に、当該指定領域41Rの形状に特徴を持たせ、当該特徴に基づいて部分領域を選択するように構成してもよい。
【0120】
図18は、領域指定方法のその他の例を示す図である。すなわち、特徴的な形状部分を有する閉ループ(図17に示す例では、下方に鋭利な突出部分を有する楕円形状の閉曲線)41Laによって指定領域41Rが指定され、識別点設定部232は、当該特徴部分である突出部分の位置情報に基づいて、指定領域41Rの下半分の部分領域に識別点Fを設定する。
【0121】
このように、指定領域41Rの指定方法に所定のルールを定めておき、オペレータが描画する形状に基づいて、指定領域41R内における部分領域の位置を設定するように構成することで、線画処理装置1の操作性を向上させることができる。
【0122】
<5. 変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく様々な変形が可能である。
【0123】
例えば上記実施の形態では、識別処理部23が、閉領域の識別を特定色で彩色することによって行うと説明したが、これに限られるものではなく、他の領域と区別できるのであれば、どのような識別方法でもよい。
【0124】
また、上記実施の形態では、指定領域41Rの指定を、彩色したい色(特定色)で行っているが、これに限られるものではなく、例えば領域彩色部26が線画データ11Dを彩色する際に、オペレータが色指定を行えるように線画処理装置1を構成してもよい。
【0125】
また、上記実施の形態において、指定領域41Rが指定された時点で、指定領域設定部231が当該指定領域41Rの内部を特定色で彩色してもよい。これにより、オペレータが指定した指定領域41R内部を確実に彩色することができる。
【0126】
また、上記実施の形態では、モノクロの画像をRGBのカラー画像表現でのデジタル画像に変換するとしているが、例えば彩色を行う前(すなわち、ステップS18,S26の前)までは、線画データ11Dをカラー多階調表現の画像に変換せずに各処理を行い、彩色を行う際に、線画データ11Dをカラー多階調表現の画像に変換するようにしてもよい。
【0127】
さらに、上記実施形態および各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る線画処理装置の外観図である。
【図2】線画処理装置の構成を示す図である。
【図3】線画処理装置の機能ブロックをデータの流れとともに示す図である。
【図4】線画データの一例を示す図である。
【図5】図4に示す線画データについて線切れ補正を行った補正画像データの一例を示す図である。
【図6】領域設定画面の例を示す図である。
【図7】図6に示す閉領域内部に識別点Fを設定した例を示す図である。
【図8】図5に示す補正画像データに対して、識別点を設定した例を示す図である。
【図9】図7に示す線画データから生成した第1識別データの一例を示す図である。
【図10】図8に示す補正画像データから生成した第2識別データの一例を示す図である。
【図11】図9に示す第1識別データと図10に示す第2識別データとから生成した領域抽出データの一例を示す図である。
【図12】図4に示す線画データを彩色して生成した彩色画像データの一例を示す図である。
【図13】線画処理装置の動作を示す流れ図である。
【図14】第2の実施の形態に係る線画処理装置の動作を示す流れ図である。
【図15】第3の実施の形態に係る識別点の設定方法の一例を示す図である。
【図16】第4の実施の形態に係る領域指定画面の一例を示す図である。
【図17】図15に示す特定の閉領域内部に識別点を設定した示す図である。
【図18】領域指定方法のその他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0129】
1 線画処理装置
10 CPU
11 記憶部
12 操作部
13 表示部
2 プログラム
21 画像取得部
22 線切補正部
23 識別処理部
231 指定領域設定部
232 識別点設定部
233 連続領域識別部
24 領域抽出部
25 判定部
26 領域彩色部
31 ブラシツールボタン
33 カラーパレット
34 部分領域指定ツールボタン
41R 指定領域
BR,NR 閉領域
11D 線画データ
12D 補正画像データ
13D 第1識別データ
14D 第2識別データ
15D 領域抽出データ
16D 判定結果
17D 彩色画像データ
F 識別点
W,Wa 指定領域設定画面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線画を彩色処理する線画処理装置であって、
線画データを取得する取得手段と、
前記線画データに含まれる線画の線切れ状態を補正することによって、補正画像データを生成する線切補正手段と、
前記線画データおよび前記補正画像データのうちのいずれかにつき、彩色を行うべき領域に、操作入力に基づいて指定領域を設定する指定領域設定手段と、
前記補正画像データにつき、前記指定領域を構成する各単位閉領域の中に識別点を設定する識別点設定手段と、
画面全体のうちの前記識別点に連なる連続領域を特定色で彩色する領域彩色手段と、
を備えることを特徴とする線画処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の線画処理装置であって、
前記識別点設定手段は、前記線画データおよび前記補正画像データについて、前記指定領域を構成する各単位閉領域の中に識別点を設定するとともに、
前記線画処理装置は、
前記線画データと前記補正画像データとについて、画面全体のうちの前記識別点に連なる連続領域と、前記画面全体から前記連続領域を除いた残余領域とを相互に識別した第1識別データと第2識別データとをそれぞれ生成する連続領域識別手段と、
前記第1識別データと前記第2識別データとのそれぞれの前記連続領域の差分領域を求め、前記差分領域に含まれる1以上の閉領域を、前記補正画像データから抽出する領域抽出手段と、
前記1以上の閉領域のそれぞれについて、彩色の要否を所定の判定基準に基づいて判定する判定手段と、
をさらに備え、
前記領域彩色手段は、
前記1以上の閉領域のうちの前記判定手段によって彩色が必要と判定された閉領域と、前記第2識別データで識別されている連続領域とを同一の特定色で彩色することを特徴とする線画処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の線画処理装置であって、
前記連続領域識別手段は、
前記線画データと前記補正画像データとについて、前記連続領域をそれぞれ彩色することによって、前記残余領域から識別することを特徴とする線画処理装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の線画処理装置であって、
前記判定手段は、
前記第2識別データで識別された連続領域の面積と前記1以上の閉領域のそれぞれの面積との比較に基づいて、前記彩色の要否を判定することを特徴とする線画処理装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の線画処理装置であって、
前記指定領域設定手段は、
前記特定色の曲線により規定された指定領域を設定することを特徴とする線画処理装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の線画処理装置であって、
前記識別点設定手段は、
前記指定領域を規定する曲線と、前記指定領域内に含まれる描画線とで規定される各閉領域を前記単位閉領域として、前記単位閉領域ごとの重心点を識別点に設定することを特徴とする線画処理装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の線画処理装置であって、
前記識別点設定手段は、
前記指定領域をさらに複数の領域に分割し、前記複数の領域のそれぞれに識別点を設定することを特徴とする線画処理装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の線画処理装置であって、
前記識別点設定手段は、
前記指定領域のうちの所定の方向に偏った部分領域を指定する部分領域指定手段、
を含み、
前記識別点設定手段は、
前記部分領域に識別点を設定することを特徴とする線画処理装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の線画処理装置であって、
前記線切補正手段は、
前記線画データにおける描画線を所定の割合で膨張処理する膨張処理手段、
を含むことを特徴とする線画処理装置。
【請求項10】
情報処理装置を使って線画を彩色処理する線画処理方法であって、前記情報処理装置が、
(a) 線画データを取得する工程と、
(b) 前記線画データに含まれる線画の線切れ状態を補正することによって、補正画像データを生成する工程と、
(c) 前記線画データおよび前記補正画像データのうちのいずれかにつき、彩色を行うべき領域に、操作入力に基づいて指定領域を設定する工程と、
(d) 前記補正画像データにつき、前記(c)工程にて設定した前記指定領域を構成する各単位閉領域の中に識別点を設定する工程と、
(e) 画面全体のうちの前記識別点に連なる連続領域を特定色で彩色する工程と、
を実行することを特徴とする線画処理方法。
【請求項11】
コンピュータが読み取り可能なプログラムであって、
前記コンピュータが前記プログラムを読み取ることにより、前記コンピュータを、
線画データを取得する取得手段と、
前記線画データに含まれる線画の線切れ状態を補正することによって、補正画像データを生成する線切補正手段と、
前記線画データおよび前記補正画像データのうちのいずれかにつき、彩色を行うべき領域に、操作入力に基づいて指定領域を設定する指定領域設定手段と、
前記補正画像データにつき、前記指定領域を構成する各単位閉領域の中に識別点を設定する識別点設定手段と、
画面全体のうちの前記識別点に連なる連続領域を特定色で彩色する領域彩色手段と、
を備えた線画を彩色処理する線画処理装置として機能させることを特徴とするプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2009−259149(P2009−259149A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−110134(P2008−110134)
【出願日】平成20年4月21日(2008.4.21)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】