編組線の接続構造
【課題】部品点数及び組み立て工数の削減を図ると共にシールド性能の向上を図った編組線の接地構造を提供する。
【解決手段】機器ケース5の挿入孔51の周縁から機器ケース5外に向かって立設した筒部52が、設けられている。機器ケース5の筒部52外側に編組22の端末が被せられ、当該筒部52外側に被せられた編組22の外側にシールドバンド10が巻き付けられている。
【解決手段】機器ケース5の挿入孔51の周縁から機器ケース5外に向かって立設した筒部52が、設けられている。機器ケース5の筒部52外側に編組22の端末が被せられ、当該筒部52外側に被せられた編組22の外側にシールドバンド10が巻き付けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、編組線の接続構造に係り、特に、被覆電線及び前記被覆電線を覆う筒状の編組から構成された編組線と、前記被覆電線の端末に取り付けられたコネクタを内部に挿入するための挿入孔が設けられた機器ケースと、を備え、前記編組が前記機器ケースに接続された編組線の接続構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動体としての自動車には、搭載される種々のランプや種々のモータなどの機器にバッテリなどの電源から電力を供給したり制御装置から制御信号を送ったりするために電線が配索されている。このように自動車に配索される電線としては、ノイズ対策のために編組線を用いることが知られている。
【0003】
上記編組線は、被覆電線及び被覆電線を覆う筒状の編組で構成されていて、編組を接地することにより被覆電線から外部に漏洩するノイズや外部からのノイズが編組に当たってグランドに流れることとなり、ノイズの漏洩、侵入を防止することができる。このような編組線の編組の接地構造としては、編組線をモータなどの機器に接続する場合、機器の収容ケースに編組を接続して接地する接地構造が知られている。
【0004】
この種の編組線の接地構造として、例えば図14〜図16に示すものが知られている(特許文献1〜3)。同図に示すように、編組線の接地構造1は、複数の被覆電線21及びこれら複数の被覆電線21を一括でまとめて覆う筒状の編組22から構成された編組線2と、被覆電線21の端末に取り付けられたコネクタ3と、コネクタ3に取り付けられた金属製のシールドシェル4と、コネクタ3を内部に挿入するための挿入孔51が設けられた機器ケース5と、機器ケース5内部に固定された端子台6と、を備えている。
【0005】
上記コネクタ3は、各被覆電線21の芯線に圧着された複数の端子金具31と、複数の端子金具31をまとめて収容する樹脂製のハウジング32と、から構成されている。上記ハウジング32は、編組線2の長手方向に貫通した複数の端子収容室が設けられ、この端子収容室内に端子金具31の芯線との圧着部が挿入されている。
【0006】
上記シールドシェル4は、ハウジング32が挿入される筒状のシールドシェル本体41と、シールドシェル本体41の外側面から突設されたフランジ部42と、を備えている。上記シールドシェル本体41の外側には、筒状の編組22の端末が被せられていて、さらにシールドシェル本体41の外側に被された編組22の外側に編組加締めリング7が巻き付けられて加締められている。これにより、編組22とシールドシェル4とを電気的に接続することができる。
【0007】
上記フランジ部42には、後述するグランドに接地された機器ケース5にシールドシェル4を取り付けて接続するための複数のボルト孔43が設けられる。図15に示すように、このフランジ部43を後述する機器ケース5の外側面に重ねてボルト44によって締結することにより、シールドシェル4と機器ケース5とを電気的に接続することができる。即ち、編組22はシールドシェル4を介して機器ケース5に接続されており、これにより編組22を接地することができる。
【0008】
上記機器ケース5には、編組線2の端末に取り付けたコネクタ3を内部に挿入するための挿入孔51が設けられている。この挿入孔51からコネクタ3が機器ケース5内に挿入される。上記端子台6は、ボルト孔68が設けられていて、図示しないボルトによって機器ケース5に締結されている。また、端子台6には、挿入孔51から内部に挿入されたコネクタ3の端子金具31が重ねられ、ボルト69によって締結されている。
【0009】
次に、上述した構成の編組線の接地構造1の組み立て手順に説明する。まず、編組線2を構成する被覆電線21の端末に上述したコネクタ3を取り付けるとともに、コネクタ3にシールドシェル4を取り付けておく。次に、編組線2の編組22の端末をシールドシェル本体41に被せた後に、被せた編組22の外側に編組加締めリング7で巻き付けて加締めることにより、編組22とシールドシェル4とを接続する。また、機器ケース5内にボルトによって端子台6を固定しておく。
【0010】
次に、挿入孔51からコネクタ3を内部に挿入して、コネクタ3の端子金具31を端子台6の上に重ねると共にフランジ部42を機器ケース5の外側面に重ねる。次に、ボルト44を用いてフランジ部42を機器ケース5に締結した後に、ボルト69を用いて端子金具31を端子台6に締結することにより、コネクタ3及びシールドシェル4を機器ケース5に固定する。
【0011】
上述した従来の編組線の接地構造1は、編組22を接地するためにシールドシェル4が必要となってしまう。このため、下記に示すような問題点が生じていた。即ち、部品点数が増大し、さらにシールドシェル4を機器ケース5にボルト締結する必要があり、組み立て工数も増大してしまう、という問題が生じていた。
【0012】
また、シールドシェル4−コネクタ3のハウジング32間、シールドシェル4−機器ケース5間に隙間が生じてシールド性能が低下する、という問題が生じていた。さらに、防水、防油を図るために、シールドシェル4と機器ケース5との間に面シールを設ける必要があり、これも部品点数、組み立て工数の増加の原因となっていた。
【0013】
また、上述した編組線の接地構造1において、コネクタ3の機器ケース5への固定は、コネクタ3に取り付けられたシールドシェル4を機器ケース5に1次固定した後に、端子金具31を端子台6に2次固定することにより行われていた。このように、1次固定を行うためにボルト締結する必要があるため、これも組み立て工数の増加の大きな原因といえる。
【0014】
また、上述した編組線2の接地構造1は、図16に示すように、複数の端子金具31を一直線上に並べて配置している。このため、端子台6の上記端子金具31の並び方向の大きさが大きくなってしまう、という問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2002−289307号公報
【特許文献2】特開2005−339933号公報
【特許文献3】特開2003−264040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
そこで、本発明は、部品点数及び組み立て工数の削減を図ると共にシールド性能の向上を図った編組線の接地構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述した課題を解決するための請求項1記載の発明は、被覆電線及び前記被覆電線を覆う筒状の編組から構成された編組線と、前記被覆電線の端末に取り付けられたコネクタを内部に挿入するための挿入孔が設けられた機器ケースと、を備え、前記編組が前記機器ケースに接続された編組線の接地構造において、前記機器ケースの前記挿入孔の周縁から機器ケース外に向かって立設した筒部が、設けられ、前記機器ケースの筒部外側に前記編組の端末が被せられて前記編組と前記機器ケースがシールド接続されることを特徴とする編組線の接地構造に存する。
【0018】
請求項2記載の発明は、前記コネクタのハウジングに前記筒部内に嵌合する嵌合部が、設けられ、前記嵌合部外側と前記筒部内側との間にリング状の弾性シールが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の編組線の接地構造に存する。
【0019】
請求項3記載の発明は、前記機器ケース内に固定された端子台をさらに備え、前記端子台及び前記コネクタのハウジングの一方に、前記編組線の径方向に撓むアームと、前記アームから前記径方向に突出する係止突起と、を有する係止ランスが設けられ、前記端子台及び前記コネクタのハウジングの他方に、前記係止突起と係止する係止部が設けられたことを特徴とする請求項1又は2に記載の編組線の接地構造に存する。
【0020】
請求項4記載の発明は、前記機器ケース内に固定された端子台をさらに備え、前記コネクタのハウジングが、前記機器ケース内に固定される端子台と一体に形成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の編組線の接地構造に存する。
【0021】
請求項5記載の発明は、前記コネクタのハウジング及び前記機器ケースの何れか一方に、前記編組線の径方向に撓むアームと、前記アームから前記径方向に突出する係止突起と、を有する係止ランスが設けられ、前記コネクタのハウジング及び前記機器ケースの他方に、前記係止突起と係止する係止部が設けられたことを特徴とする請求項4に記載の編組線の接地構造に存する。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように請求項1記載の発明によれば、機器ケースに設けた筒部外側に編組の端末が被せられて編組と機器ケースとがシールド接続されているので、シールドシェルを廃止することができ、部品点数及び組み立て工数の削減を図ることができる。また、ケースに直接、編組を被せることで、従来のようにシールドシェル−コネクタ間、シールドシェル−ケース間の隙間がなくなり、シールド性能が向上する。
【0023】
請求項2記載の発明によれば、コネクタのハウジングに設けられた嵌合部外側と筒部内側との間にリング状の弾性シールが設けられているので、面シールを廃止して、取り付けが容易なリング状の弾性シールを用いて防水、防油することができる。
【0024】
請求項3記載の発明によれば、端子台とコネクタとの固定を係止ランスにより行うことができるので、端子台とコネクタとを固定するためにボルト締結する必要がなく、組み立て工数の削減を図ることができる。
【0025】
請求項4記載の発明によれば、端子台とコネクタとを一体に形成することにより、端子台とコネクタとの固定作業を行う必要がなく、組み立て工数の削減を図ることができる。しかも、コネクタと別に端子台を設ける必要がなく、部品点数の削減を図ることができる。
【0026】
請求項5記載の発明によれば、コネクタと機器ケースとの固定を係止ランスにより行うことができるので、コネクタと機器ケースとを固定するためにボルト締結する必要がなく、組み立て工数の削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1実施形態における本発明の編組線の接地構造の斜視図である。
【図2】図1に示す編組線の接地構造を編組線側から見た分解斜視図である。
【図3】図1に示す編組線の接地構造を機器ケース側から見た分解斜視図である。
【図4】図1に示す編組線の接地構造を構成する被覆電線と被覆電線に取り付けられたコネクタとを示す上面図である。
【図5】図2のI−I線部分断面図である。
【図6】図1に示す編組線の接地構造の端子金具側から見た斜視図である。
【図7】図6のII−II線概略断面図である。
【図8】(A)及び(B)はそれぞれ図4に示すコネクタ3の背面図及び正面図である。
【図9】第2実施形態における本発明の編組線の接地構造を示す斜視図である。
【図10】図9のIII−III線断面図である。
【図11】第3実施形態における本発明の編組線の接地構造を示す斜視図である。
【図12】図11に示す編組線の接地構造の分解斜視図である。
【図13】図11のIV−IV線断面図である。
【図14】従来の編組線の接地構造を示す分解斜視図である。
【図15】図14に示す編組線の接地構造の斜視図である。
【図16】図15に示す編組線の接地構造の機器ケース内側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
第1実施形態
以下、第1実施形態における本発明の編組線の接地構造を図1〜図8に基づいて説明する。図2及び図3などに示すように、編組線の接地構造1は、例えば3本の被覆電線21(図4)及びこれら3本の被覆電線21を一括でまとめて覆う筒状の編組22から構成された編組線2と、被覆電線21の端末に取り付けられたコネクタ3と、コネクタ3を内部に挿入するための挿入孔51が設けられた機器ケース5と、この機器ケース5内に固定される端子台6と、を備えている。
【0029】
上記被覆電線21は、導電性の芯線と絶縁性の被覆部(何れも図示せず)とを備えている。上記図示しない芯線は、一本の導線又は複数の導線が撚られて構成されている。上記被覆部は、芯線を被覆していて、ポリ塩化ビニルなどの合成樹脂からなる。
【0030】
上記編組22は、アルミ線やステンレス線などの複数の導線を筒状に編んで形成されている。この編組22の端部は、後述する機器ケース5の筒部52外側に被せるために、その内径が筒部52の外径よりも大きくなるように拡開されている。さらに、編組22の端部は、図5に示すように、外側に折り返されて2重に設けられている。そして、この編組22の2重の部分が、シーム溶接やスポット溶接、半田付けなどにより互いに溶接されている。
【0031】
上記コネクタ3は、図2〜図4などに示すように、金属製の複数の端子金具31と、これら端子金具31をまとめて収容する樹脂製のハウジング32と、を備えている。端子金具31は、図4、図6及び図7に示すように、例えばLA端子が用いられ、ボルト締結可能なボルト孔33が設けられた平板状のタブ端子部34と、被覆電線21の端末に露出された図示しない芯線に圧着して電気的に接続される電線接続部(図示せず)と、編組線2の長手方向Y1に連なって設けられている。
【0032】
上記ハウジング32は、円柱状に設けられ、編組線2の長手方向Y1に沿って貫通する3つの端子収容室35(図8(A))と、後述する端子台6の係止ランス62を挿入するための取付孔36(図7、図8(B))と、後述する機器ケース5の筒部52内に嵌合部37(図2、図3)が設けられている。
【0033】
上記3つの端子収容室35はそれぞれ、3つの端子金具31の電気接続部を収容していて、編組線2の長手方向Y1先端側の開口からタブ端子部34が突出し、後端側の開口から被覆電線21が引き出されている。上記端子金具31の電線接続部及びこの電線接続部に連なる被覆電線21の外側に、図2、図3、図4及び図7などに示すように、補強層7が樹脂モールドされて一体成形されている。そして、この補強層7が一体成形された被覆電線21の外側に、さらに上記ハウジング32がオーバーモールドされる。
【0034】
このように、被覆電線21の外側に補強層7をモールドすることにより、被覆電線21を補強している。なお、上記補強層7としては、被覆電線21とは別体に設け、別体に設けた補強層7を被覆電線21に被せてさらにハウジング32をオーバーモールドするようにしても、防水ゴム栓を被覆電線21に装着し、予め別体に設けられたハウジング32に挿入するようにしても良い。
【0035】
また、図8などに示すように、上記3つの端子収容室35は、上下方向Y3(端子台6に接離する方向、即ち端子台6の端子金具31の搭載面に直交する方向)に2段並べて配置されている。詳しくは、上記3つの端子収容室35のうち2つが、端子台6から離れた側の上段に左右方向Y2(編組線2の長手方向Y1及び上下方向Y3の双方に直交する方向)に沿って並べて配置され、3つの端子収容室35のうち1つが、端子台6側の下段に配置されている。さらに、上段に並べられた2つの端子収容室35の間に、下段の端子収容室35が配置されている。
【0036】
これら端子収容室35にそれぞれ端子金具31を収容することにより、3つの端子金具31は、上下方向Y3に2段並べて配置されるように、ハウジング32に保持される。また、3つの端子金具31のうち2つが、上段に左右方向Y2に沿って並べて配置され、3つの端子金具31のうち1つが、下段に配置されるように、ハウジング32に保持される。さらに、上段に並べられた2つの端子金具31の間に下段の端子金具31が配置される。また、上記端子収容室35は、下段の端子金具31が上段の端子金具31よりも編組線2の長手方向Y1の先端側に配置するように、設けられている。
【0037】
上記取付孔36は、図7に示すように、ハウジング32の長手方向Y1先端側から凹に形成されていて、その内側面に後述する端子台6の係止ランス62に係止する一対の凸状の係止部39がそれぞれ設けられている。この係止部39には、長手方向Y1後端側に向かうに従って内側に向かうテーパが設けられている。
【0038】
また、図7に示すように、上記嵌合部37の外周には溝部38が設けられていて、その溝部38にリング状の弾性シール8が嵌め込まれている。このように弾性シール8を嵌め込んだ状態で筒部52内に挿入すると、嵌合部37外側と筒部52内側との間にリング状の弾性シール8が設けられる。この弾性シール8によってハウジング32と筒部52との間の隙間が塞がれて、ハウジング32と筒部52との間の隙間から機器ケース5内部に水や油が侵入するのを防止することができる。
【0039】
上記機器ケース5は、編組線2が電気的に接続されるモータなどの機器を収容する金属製のケースであり、接地されている。この機器ケース5には、内外を貫通する円状の挿入孔51と、この挿入孔51の周縁から機器ケース5外に向かって立設した筒部52と、が設けられている。図1〜図3に示すように、この機器ケース5の筒部52外側に編組22の端末が被せられ、筒部52外側に被せられた編組22の外側に帯状部材であるシールドバンド9が巻き付けられて加締められている。シールドバンド9は、帯状の金属板から構成されていて、その両端に互いに係止する係止部が設けられている。
【0040】
上記端子台6は、図6及び図7に示すように、合成樹脂等により形成されていて、上記端子金具31のタブ端子部34を搭載する端子台本体61と、端子台6をコネクタ3のハウジング32に係止するために一対の係止ランス62と、を備えている。上記端子台本体61は、上述した上段の端子収容室35に収容される端子金具31のタブ端子部34が搭載される上段端子台本体63と、下段の端子収容室35に収容される端子金具31のタブ端子部34が搭載される下段端子台本体64と、が一体に設けられている。
【0041】
上記上段端子台本体63は、略直方体状に設けられている。この上段端子台本体63のタブ端子部34が重ねられる上面には、タブ端子部34のボルト孔33が重ねられるボルト孔65(図7)と、編組線2の長手方向Y1の後端側に左右方向Y2に沿って立設する立壁部66(図6)と、上段に配置された2つの端子金具31のタブ端子部34を左右方向Y2に隔てる長手方向Y1に沿った隔壁部67と、が設けられている。
【0042】
上記立壁部66には、長手方向Y1に貫通する上段に配置された端子金具31のタブ端子部34が挿入される図示しない端子挿入孔が設けられている。この立壁部66に設けられた図示しない端子挿入孔にタブ端子部34を挿入すると、挿入したタブ端子部34を上段端子台本体63の上面に重ねることができる。
【0043】
上記下段端子台本体64は、略直方体状に設けられている。この下段端子台本体64の上面は、その長手方向Y1後端側が上段端子台本体63下面の長手方向Y1の先端側に連なって設けられている。この下段端子台本体64のタブ端子部34が重ねられる上面には、機器ケース5内にボルト締めするためのボルト孔68と、タブ端子部34のボルト孔33が重ねられるボルト孔69と、タブ端子34の左右に立設する一対の隔壁部70と、が設けられている。
【0044】
また、上記上段端子台本体63の下側には、長手方向Y1に貫通する下段に配置された端子金具31のタブ端子部34が挿入される図示しない端子挿入孔が設けられている。この上段端子台本体63に設けられた図示しない端子挿入孔にタブ端子部34を挿入すると、挿入したタブ端子34を下段端子台本体64の上面に重ねることができる。
【0045】
上述した端子台6に設けたボルト孔65、69にそれぞれタブ端子部34のボルト孔33と、図示しない機器ケース5内に収容されている相手側コネクタのタブ端子部のボルト孔とを重ねてボルト締めすることにより、端子台6とコネクタ3とを固定すると共にタブ端子部34と図示しない相手側コネクタのタブ端子部とを電気的に接続することができる。また、上述した端子台6に設けたボルト孔68と機器ケース5に設けた図示しないボルト孔とに図示しないボルトを挿入してボルト締めすることにより、端子台6を機器ケース5に固定することができる。
【0046】
また、上記一対の係止ランス62は、それぞれ上段端子台本体63から長手方向Y1後端側に向かって突出し、さらに左右方向Y2に並べられて設けられている。上記一対の係止ランス62は、図7に示すように、それぞれ編組線2の径方向に撓むアーム62Aと、アーム62Aから径方向外側に突出する係止突起62Bと、を有している。この係止突起62Bには、長手方向Y1後端側に向かうに従って内側に向かうテーパが設けられている。この一対の係止ランス62を上述したハウジング32に設けた取付孔36に挿入すると、係止突起62Bと係止部39とが係止して、ハウジング32に端子台6を取り付けることができる。
【0047】
次に、上述した構成の編組線の接地構造1の組み立て手順について説明する。まず、予め編組22端末の内径を筒部52の外径よりも広げ、さらに外側に折り返して2重にする。その後、編組22の2重の部分をシーム溶接やスポット溶接、半田付などにより互いに溶接して、編組22がほつれないようにしておく。
【0048】
また、被覆電線21の端末の被覆部を剥いて芯線を露出させ、露出した芯線を端子金具31に圧着させる。そして、この芯線に圧着した端子金具31をコネクタ3のハウジング32内に収容して、被覆電線21の端末にコネクタ3を取り付ける。また、機器ケース5の図示しないボルト孔に端子台6のボルト孔68が重なるように、機器ケース5に端子台6を搭載する。その後、機器ケース5の図示しないボルト孔と端子台6に設けたボルト孔68との双方に図示しないボルトを挿入してボルト締結することにより、端子台6を機器ケース5に固定する。
【0049】
次に、機器ケース5の挿入孔51からコネクタ3を挿入する。このとき、ハウジング32の嵌合部37を筒部52に挿入し、係止ランス62をハウジング32の取付孔36に挿入し、タブ端子部34を端子台6の図示しない端子挿入孔に挿入する。挿入によって、係止ランス62の係止突起62Bが係止部39に達すると、アーム62Aが係止部39に押されて内側に撓み、係止部39に乗り上げる。
【0050】
さらに、コネクタ3を機器ケース5の内部に挿入させると、係止突起62Bが係止部39を乗り越えてアーム62Aが外側に復元して、図7に示すように、係止突起62Bと係止部39とが係止して、コネクタ3が端子台6を介して機器ケース5に1次固定される。このとき、タブ端子部34のボルト孔33と端子台6のボルト孔65、69とが重ねられる位置にタブ端子部34が端子台6上に搭載される。
【0051】
次に、タブ端子部34の上に相手側コネクタのタブ端子部を重ねて、相手側コネクタのタブ端子部のボルト孔、タブ端子部34のボルト孔33及び端子台6のボルト孔65、69に図示しないボルトを挿入してボルト締結することにより、コネクタ3が端子台6を介して機器ケース5に2次固定されると共に相手側コネクタのタブ端子とタブ端子部34とが電気的に接続される。
【0052】
次に、編組22の端部を筒部54の外側に被せて、さらに筒部54の外側に被せられた編組22の外側にシールドバンド9を巻き付けて加締める。これにより、編組22と機器ケース5とが電気的に接続され、編組22が機器ケース5を介して接地される。或いは編組22の外側よりシーム溶接などにより筒部54に接続させてもよい。
【0053】
上述した第1実施形態によれば、機器ケース5に設けた筒部52外側に編組22の端末が被せられ、当該筒部52外側に被せられた編組22の外側にシールドバンド9が巻き付けられているので、シールドシェルを廃止することができ、部品点数及び組み立て工数の削減を図ることができる。また、機器ケース5に直接、編組22を被せることで、従来のようにシールドシェル−コネクタ間、シールドシェル−ケース間の隙間がなくなり、シールド性能が向上する。
【0054】
また、上述した第1実施形態によれば、編組22の端末が折り返されて2重に設けられ、編組22の2重の部分が互いに溶接されているので、編組22が機器ケース5に接地されるまでの間に、編組22がばらつくのを防止することができる。
【0055】
また、上述した第1実施形態によれば、コネクタ3のハウジング32に設けられた嵌合部37外側と筒部32内側との間にリング状の弾性シール8が設けられているので、面シールを廃止して、取り付けが容易なリング状の弾性シール8を用いて防水、防油することができる。
【0056】
また、上述した第1実施形態によれば、端子台6に、編組線2の径方向に撓むアーム62Aと、アーム62Aから径方向に突出する係止突起62Bと、を有する係止ランス62が設けられ、コネクタ3のハウジング32に、係止突起62Bと係止する係止部39が設けられている。これにより、端子台6とコネクタ3との1次固定を係止ランス62により行うことができるので、端子台6とコネクタ3とを1次固定するためにボルト締結する必要がなく、組み立て工数の削減を図ることができる。
【0057】
また、上述した第1実施形態によれば、コネクタ3の端子金具31が、機器ケース5に固定された端子台6に接離する上下方向Y3に2段並べて配置されいるので、全ての端子金具31を1段に並べる場合に比べて、端子台6の左右方向Y2の大きさを小さくすることができる。しかも、端子台6側の下段の端子金具31が、端子台6から離れた側の上段の端子金具31よりも編組線2の長手方向Y1の先端側に配置されているので、下段の端子金具31を端子台6にボルト固定する際に上段の端子金具31が干渉することがない。
【0058】
また、上述した第1実施形態によれば、端子台6から離れた側の上段の2つの端子金具31の間に、端子台6側の下段の端子金具31が配置されているので、端子台6の上下方向Y3の大きさを小さくすることができる。
【0059】
なお、上述した第1実施形態によれば、複数の被覆電線21を編組22によってまとめて一括で覆う編組線2に適用していたが、本発明はこれに限ったものではない。例えば、1つの被覆電線21を編組22によって覆った編組線2に適用してもよい。
【0060】
また、上述した第1実施形態によれば、編組2はその端部が外側に折り返されて2重に設けられていたが、本発明はこれに限ったものではない。内側に折り返されていてもよいし、ほつれが心配なければ折り返して2重にしなくてもよい。
【0061】
また、上述した第1実施形態によれば、端子台6に係止ランス62が設けられ、コネクタ3のハウジング32に係止ランス62の係止突起62Bに係止する係止部39が設けられたが、本発明はこれに限ったものではない。逆に、コネクタ3のハウジング32に係止ランス62を設け、端子台6に係止部39を設けるようにしてもよい。
【0062】
また、上述した第1実施形態によれば、下段の端子収容室35は一つしか設けられていなかったが、本発明はこれに限ったものではない。下段の端子収容室35も左右方向Y2に並べて複数設けてもよい。また、端子収容室35は、上下2段だけでなく、3段以上設けてもよい。
【0063】
また、上述した第1実施形態によれば、端子金具31としてはボルト締結可能なLA端子を用いていたが、本発明はこれに限ったものではない。端子金具31としては、相手側コネクタの端子金具と雄雌嵌合できるものであてもよい。また、この場合、端子台6は必要ない。
【0064】
第2実施形態
次に、第2実施形態における本発明の編組線の接地構造1を図9及び図10に基づいて説明する。なお、図9及び図10においては、図1〜図8ついて上述した第1実施形態で説明した部分と同等の部分には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。第1実施形態と第2実施形態とで大きく異なる点は、端子台6の構造である。第1実施形態では、コネクタ3のハウジング32と端子台6とを別体に設け、係止ランス62によってハウジング32に端子台6を取り付けていたが、第2実施形態では、コネクタ3のハウジング32と端子台6とを樹脂により一体に設けている。
【0065】
また、第1実施形態では、端子台6を機器ケース5に取り付けるためのボルト孔68を下段の端子収容室35に収容される端子金具31のタブ端子部34の左右に設けていたが、第2実施形態では、端子台6を機器ケース5に取り付けるためのボルト孔68を下端の端子収容室35に収容される端子金具31のタブ端子部34の長手方向Y1の先端側に設けることにより機器ケース5の挿入孔51に容易に挿入できる。
【0066】
上述した構成の編組線の接地構造1の組み立て手順については第1実施形態と同様である。まず、第1実施形態と同様に、予め編組22端末の内径を筒部52の外径よりも広げ、さらに外側に折り返して2重にする。その後、編組22の2重の部分をシーム溶接やスポット溶接、半田付などにより互いに溶接して、編組22がほつれないようにしておく。また、被覆電線21の端末にコネクタ3を取り付けておく。
【0067】
次に、機器ケース5の挿入孔51からコネクタ3を挿入する。そして、ハウジング32に一体に設けられた端子台6のボルト孔68を機器ケース5の図示しないボルト孔に重ねる。その後、互いに重ねた端子台6のボルト孔68と機器ケース5の図示しないボルト孔との双方に図示しないボルトを挿入してボルト締結することにより、機器ケース5とコネクタ3のハウジング32とを固定する。
【0068】
その後、タブ端子部34の上に相手側コネクタのタブ端子部を重ねて、互いに重ねた相手側コネクタのタブ端子部のボルト孔、タブ端子部34のボルト孔33及び端子台6のボルト孔65、69に図示しないボルトを挿入してボルト締結することにより、コネクタ3が端子台6を介して機器ケース5に(2次)固定されると共に相手側コネクタのタブ端子とタブ端子部34とが電気的に接続される。
【0069】
次に、第1実施形態と同様に、編組22の端部を筒部54の外側に被せて、さらに筒部54の外側に被せられた編組22の外側にシールドバンド9を巻き付けて加締める。これにより、編組22と機器ケース5とが電気的に接続され、編組22が機器ケース5を介して接地される。
【0070】
上述した第2実施形態によれば、端子台6とコネクタ3とを一体に形成することにより、端子台6とコネクタ3との1次固定作業を行う必要がなく、組み立て工数の削減を図ることができる。しかも、コネクタ3と別に端子台6を設ける必要がなく、部品点数の削減を図ることができる。
【0071】
第3実施形態
次に、第3実施形態における本発明の編組線の接地構造1を図11〜図13に基づいて説明する。なお、図11〜図13においては、図9及び図10について上述した第2実施形態で説明した部分と同等の部分には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。第2実施形態と第3実施形態とで大きく異なる点は、端子台6の構造である。第1実施形態では、端子台6にボルト孔68を設けてボルト締結によって機器ケース5に固定していたが、第2実施形態では、ボルト孔68を廃止している。
【0072】
そして、このボルト孔68の代わりに、機器ケース5の挿入孔51の周縁に係止させるための係止ランス40を設けている。この機器ケース5の挿入孔51の周縁が請求項中の係止部に相当する。上記係止ランス40は、編組線22の径方向に撓む一対のアーム40Aと、一対のアーム40Aから径方向外側にそれぞれ突出する係止突起40Bと、を有している。アーム40Aは、長手方向Y1に沿って設けられていて、その長手方向Y1先端側が端子台6の外側面側に連結されて、長手方向Y1の後端が径方向に撓む。
【0073】
上述した構成の編組線の接地構造1の組み立て手順は第2実施形態と同様である。まず、第2実施形態と同様に、まず、第1実施形態と同様に、予め編組22端末の内径を筒部52の外径よりも広げ、さらに外側に折り返して2重にする。その後、編組22の2重の部分をシーム溶接やスポット溶接、半田付などにより互いに溶接して、編組22がほつれないようにしておく。また、被覆電線21の端末にコネクタ3を取り付けておく。
【0074】
次に、機器ケース5の挿入孔51からコネクタ3を挿入する。この挿入によって、係止ランス40の係止突起40Bが筒部52に達するとアーム40が筒部52の内側面に押されて内側に撓み、筒部52内に挿入される。さらに、コネクタ3を機器ケース5奥側に挿入させると係止突起40Bが筒部52外に出て機器ケース5内に挿入されて、挿入孔51の周縁と係止突起40Bとが係止して、機器ケース5と端子台6とが相対的に位置決めされて固定される。
【0075】
その後、タブ端子部34の上に相手側コネクタのタブ端子部を重ねて、互いに重ねた相手側コネクタのタブ端子部のボルト孔、タブ端子部34のボルト孔33及び端子台6のボルト孔65、69に図示しないボルトを挿入してボルト締結することにより、コネクタ3が端子台6を介して機器ケース5に(2次)固定されると共に相手側コネクタのタブ端子とタブ端子部34とが電気的に接続される。
【0076】
次に、第2実施形態と同様に、、編組22の端部を筒部54の外側に被せて、さらに筒部54の外側に被せられた編組22の外側にシールドバンド9を巻き付けて加締める。これにより、編組22と機器ケース5とが電気的に接続され、編組22が機器ケース5を介して接地される。
【0077】
上述した第3実施形態によれば、コネクタ3と機器ケース5との固定を係止ランス40により行うことができるので、コネクタ3と機器ケース5とを固定するためにボルト締結する必要がなく、組み立て工数の削減を図ることができる。
【0078】
なお、上述した第3実施形態によれば、コネクタ3に係止ランス40が設けられ、機器ケース5に係止部が設けられていたが、本発明はこれに限ったものではない。逆に機器ケース5に係止ランス40を設け、コネクタ3に係止部を設けるようにしてもよい。
【0079】
また、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0080】
1 編組線の接地構造
2 編組線
3 コネクタ
5 機器ケース
6 端子台
8 弾性シール
9 シールドバンド(帯状部材)
31 端子金具
32 ハウジング
21 被覆電線
22 編組
37 嵌合部
39 係止部
40 係止ランス
40A アーム
40B 係止突起
51 挿入孔
52 筒部
62 係止ランス
62A アーム
62B 係止突起
【技術分野】
【0001】
本発明は、編組線の接続構造に係り、特に、被覆電線及び前記被覆電線を覆う筒状の編組から構成された編組線と、前記被覆電線の端末に取り付けられたコネクタを内部に挿入するための挿入孔が設けられた機器ケースと、を備え、前記編組が前記機器ケースに接続された編組線の接続構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動体としての自動車には、搭載される種々のランプや種々のモータなどの機器にバッテリなどの電源から電力を供給したり制御装置から制御信号を送ったりするために電線が配索されている。このように自動車に配索される電線としては、ノイズ対策のために編組線を用いることが知られている。
【0003】
上記編組線は、被覆電線及び被覆電線を覆う筒状の編組で構成されていて、編組を接地することにより被覆電線から外部に漏洩するノイズや外部からのノイズが編組に当たってグランドに流れることとなり、ノイズの漏洩、侵入を防止することができる。このような編組線の編組の接地構造としては、編組線をモータなどの機器に接続する場合、機器の収容ケースに編組を接続して接地する接地構造が知られている。
【0004】
この種の編組線の接地構造として、例えば図14〜図16に示すものが知られている(特許文献1〜3)。同図に示すように、編組線の接地構造1は、複数の被覆電線21及びこれら複数の被覆電線21を一括でまとめて覆う筒状の編組22から構成された編組線2と、被覆電線21の端末に取り付けられたコネクタ3と、コネクタ3に取り付けられた金属製のシールドシェル4と、コネクタ3を内部に挿入するための挿入孔51が設けられた機器ケース5と、機器ケース5内部に固定された端子台6と、を備えている。
【0005】
上記コネクタ3は、各被覆電線21の芯線に圧着された複数の端子金具31と、複数の端子金具31をまとめて収容する樹脂製のハウジング32と、から構成されている。上記ハウジング32は、編組線2の長手方向に貫通した複数の端子収容室が設けられ、この端子収容室内に端子金具31の芯線との圧着部が挿入されている。
【0006】
上記シールドシェル4は、ハウジング32が挿入される筒状のシールドシェル本体41と、シールドシェル本体41の外側面から突設されたフランジ部42と、を備えている。上記シールドシェル本体41の外側には、筒状の編組22の端末が被せられていて、さらにシールドシェル本体41の外側に被された編組22の外側に編組加締めリング7が巻き付けられて加締められている。これにより、編組22とシールドシェル4とを電気的に接続することができる。
【0007】
上記フランジ部42には、後述するグランドに接地された機器ケース5にシールドシェル4を取り付けて接続するための複数のボルト孔43が設けられる。図15に示すように、このフランジ部43を後述する機器ケース5の外側面に重ねてボルト44によって締結することにより、シールドシェル4と機器ケース5とを電気的に接続することができる。即ち、編組22はシールドシェル4を介して機器ケース5に接続されており、これにより編組22を接地することができる。
【0008】
上記機器ケース5には、編組線2の端末に取り付けたコネクタ3を内部に挿入するための挿入孔51が設けられている。この挿入孔51からコネクタ3が機器ケース5内に挿入される。上記端子台6は、ボルト孔68が設けられていて、図示しないボルトによって機器ケース5に締結されている。また、端子台6には、挿入孔51から内部に挿入されたコネクタ3の端子金具31が重ねられ、ボルト69によって締結されている。
【0009】
次に、上述した構成の編組線の接地構造1の組み立て手順に説明する。まず、編組線2を構成する被覆電線21の端末に上述したコネクタ3を取り付けるとともに、コネクタ3にシールドシェル4を取り付けておく。次に、編組線2の編組22の端末をシールドシェル本体41に被せた後に、被せた編組22の外側に編組加締めリング7で巻き付けて加締めることにより、編組22とシールドシェル4とを接続する。また、機器ケース5内にボルトによって端子台6を固定しておく。
【0010】
次に、挿入孔51からコネクタ3を内部に挿入して、コネクタ3の端子金具31を端子台6の上に重ねると共にフランジ部42を機器ケース5の外側面に重ねる。次に、ボルト44を用いてフランジ部42を機器ケース5に締結した後に、ボルト69を用いて端子金具31を端子台6に締結することにより、コネクタ3及びシールドシェル4を機器ケース5に固定する。
【0011】
上述した従来の編組線の接地構造1は、編組22を接地するためにシールドシェル4が必要となってしまう。このため、下記に示すような問題点が生じていた。即ち、部品点数が増大し、さらにシールドシェル4を機器ケース5にボルト締結する必要があり、組み立て工数も増大してしまう、という問題が生じていた。
【0012】
また、シールドシェル4−コネクタ3のハウジング32間、シールドシェル4−機器ケース5間に隙間が生じてシールド性能が低下する、という問題が生じていた。さらに、防水、防油を図るために、シールドシェル4と機器ケース5との間に面シールを設ける必要があり、これも部品点数、組み立て工数の増加の原因となっていた。
【0013】
また、上述した編組線の接地構造1において、コネクタ3の機器ケース5への固定は、コネクタ3に取り付けられたシールドシェル4を機器ケース5に1次固定した後に、端子金具31を端子台6に2次固定することにより行われていた。このように、1次固定を行うためにボルト締結する必要があるため、これも組み立て工数の増加の大きな原因といえる。
【0014】
また、上述した編組線2の接地構造1は、図16に示すように、複数の端子金具31を一直線上に並べて配置している。このため、端子台6の上記端子金具31の並び方向の大きさが大きくなってしまう、という問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2002−289307号公報
【特許文献2】特開2005−339933号公報
【特許文献3】特開2003−264040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
そこで、本発明は、部品点数及び組み立て工数の削減を図ると共にシールド性能の向上を図った編組線の接地構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述した課題を解決するための請求項1記載の発明は、被覆電線及び前記被覆電線を覆う筒状の編組から構成された編組線と、前記被覆電線の端末に取り付けられたコネクタを内部に挿入するための挿入孔が設けられた機器ケースと、を備え、前記編組が前記機器ケースに接続された編組線の接地構造において、前記機器ケースの前記挿入孔の周縁から機器ケース外に向かって立設した筒部が、設けられ、前記機器ケースの筒部外側に前記編組の端末が被せられて前記編組と前記機器ケースがシールド接続されることを特徴とする編組線の接地構造に存する。
【0018】
請求項2記載の発明は、前記コネクタのハウジングに前記筒部内に嵌合する嵌合部が、設けられ、前記嵌合部外側と前記筒部内側との間にリング状の弾性シールが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の編組線の接地構造に存する。
【0019】
請求項3記載の発明は、前記機器ケース内に固定された端子台をさらに備え、前記端子台及び前記コネクタのハウジングの一方に、前記編組線の径方向に撓むアームと、前記アームから前記径方向に突出する係止突起と、を有する係止ランスが設けられ、前記端子台及び前記コネクタのハウジングの他方に、前記係止突起と係止する係止部が設けられたことを特徴とする請求項1又は2に記載の編組線の接地構造に存する。
【0020】
請求項4記載の発明は、前記機器ケース内に固定された端子台をさらに備え、前記コネクタのハウジングが、前記機器ケース内に固定される端子台と一体に形成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の編組線の接地構造に存する。
【0021】
請求項5記載の発明は、前記コネクタのハウジング及び前記機器ケースの何れか一方に、前記編組線の径方向に撓むアームと、前記アームから前記径方向に突出する係止突起と、を有する係止ランスが設けられ、前記コネクタのハウジング及び前記機器ケースの他方に、前記係止突起と係止する係止部が設けられたことを特徴とする請求項4に記載の編組線の接地構造に存する。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように請求項1記載の発明によれば、機器ケースに設けた筒部外側に編組の端末が被せられて編組と機器ケースとがシールド接続されているので、シールドシェルを廃止することができ、部品点数及び組み立て工数の削減を図ることができる。また、ケースに直接、編組を被せることで、従来のようにシールドシェル−コネクタ間、シールドシェル−ケース間の隙間がなくなり、シールド性能が向上する。
【0023】
請求項2記載の発明によれば、コネクタのハウジングに設けられた嵌合部外側と筒部内側との間にリング状の弾性シールが設けられているので、面シールを廃止して、取り付けが容易なリング状の弾性シールを用いて防水、防油することができる。
【0024】
請求項3記載の発明によれば、端子台とコネクタとの固定を係止ランスにより行うことができるので、端子台とコネクタとを固定するためにボルト締結する必要がなく、組み立て工数の削減を図ることができる。
【0025】
請求項4記載の発明によれば、端子台とコネクタとを一体に形成することにより、端子台とコネクタとの固定作業を行う必要がなく、組み立て工数の削減を図ることができる。しかも、コネクタと別に端子台を設ける必要がなく、部品点数の削減を図ることができる。
【0026】
請求項5記載の発明によれば、コネクタと機器ケースとの固定を係止ランスにより行うことができるので、コネクタと機器ケースとを固定するためにボルト締結する必要がなく、組み立て工数の削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1実施形態における本発明の編組線の接地構造の斜視図である。
【図2】図1に示す編組線の接地構造を編組線側から見た分解斜視図である。
【図3】図1に示す編組線の接地構造を機器ケース側から見た分解斜視図である。
【図4】図1に示す編組線の接地構造を構成する被覆電線と被覆電線に取り付けられたコネクタとを示す上面図である。
【図5】図2のI−I線部分断面図である。
【図6】図1に示す編組線の接地構造の端子金具側から見た斜視図である。
【図7】図6のII−II線概略断面図である。
【図8】(A)及び(B)はそれぞれ図4に示すコネクタ3の背面図及び正面図である。
【図9】第2実施形態における本発明の編組線の接地構造を示す斜視図である。
【図10】図9のIII−III線断面図である。
【図11】第3実施形態における本発明の編組線の接地構造を示す斜視図である。
【図12】図11に示す編組線の接地構造の分解斜視図である。
【図13】図11のIV−IV線断面図である。
【図14】従来の編組線の接地構造を示す分解斜視図である。
【図15】図14に示す編組線の接地構造の斜視図である。
【図16】図15に示す編組線の接地構造の機器ケース内側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
第1実施形態
以下、第1実施形態における本発明の編組線の接地構造を図1〜図8に基づいて説明する。図2及び図3などに示すように、編組線の接地構造1は、例えば3本の被覆電線21(図4)及びこれら3本の被覆電線21を一括でまとめて覆う筒状の編組22から構成された編組線2と、被覆電線21の端末に取り付けられたコネクタ3と、コネクタ3を内部に挿入するための挿入孔51が設けられた機器ケース5と、この機器ケース5内に固定される端子台6と、を備えている。
【0029】
上記被覆電線21は、導電性の芯線と絶縁性の被覆部(何れも図示せず)とを備えている。上記図示しない芯線は、一本の導線又は複数の導線が撚られて構成されている。上記被覆部は、芯線を被覆していて、ポリ塩化ビニルなどの合成樹脂からなる。
【0030】
上記編組22は、アルミ線やステンレス線などの複数の導線を筒状に編んで形成されている。この編組22の端部は、後述する機器ケース5の筒部52外側に被せるために、その内径が筒部52の外径よりも大きくなるように拡開されている。さらに、編組22の端部は、図5に示すように、外側に折り返されて2重に設けられている。そして、この編組22の2重の部分が、シーム溶接やスポット溶接、半田付けなどにより互いに溶接されている。
【0031】
上記コネクタ3は、図2〜図4などに示すように、金属製の複数の端子金具31と、これら端子金具31をまとめて収容する樹脂製のハウジング32と、を備えている。端子金具31は、図4、図6及び図7に示すように、例えばLA端子が用いられ、ボルト締結可能なボルト孔33が設けられた平板状のタブ端子部34と、被覆電線21の端末に露出された図示しない芯線に圧着して電気的に接続される電線接続部(図示せず)と、編組線2の長手方向Y1に連なって設けられている。
【0032】
上記ハウジング32は、円柱状に設けられ、編組線2の長手方向Y1に沿って貫通する3つの端子収容室35(図8(A))と、後述する端子台6の係止ランス62を挿入するための取付孔36(図7、図8(B))と、後述する機器ケース5の筒部52内に嵌合部37(図2、図3)が設けられている。
【0033】
上記3つの端子収容室35はそれぞれ、3つの端子金具31の電気接続部を収容していて、編組線2の長手方向Y1先端側の開口からタブ端子部34が突出し、後端側の開口から被覆電線21が引き出されている。上記端子金具31の電線接続部及びこの電線接続部に連なる被覆電線21の外側に、図2、図3、図4及び図7などに示すように、補強層7が樹脂モールドされて一体成形されている。そして、この補強層7が一体成形された被覆電線21の外側に、さらに上記ハウジング32がオーバーモールドされる。
【0034】
このように、被覆電線21の外側に補強層7をモールドすることにより、被覆電線21を補強している。なお、上記補強層7としては、被覆電線21とは別体に設け、別体に設けた補強層7を被覆電線21に被せてさらにハウジング32をオーバーモールドするようにしても、防水ゴム栓を被覆電線21に装着し、予め別体に設けられたハウジング32に挿入するようにしても良い。
【0035】
また、図8などに示すように、上記3つの端子収容室35は、上下方向Y3(端子台6に接離する方向、即ち端子台6の端子金具31の搭載面に直交する方向)に2段並べて配置されている。詳しくは、上記3つの端子収容室35のうち2つが、端子台6から離れた側の上段に左右方向Y2(編組線2の長手方向Y1及び上下方向Y3の双方に直交する方向)に沿って並べて配置され、3つの端子収容室35のうち1つが、端子台6側の下段に配置されている。さらに、上段に並べられた2つの端子収容室35の間に、下段の端子収容室35が配置されている。
【0036】
これら端子収容室35にそれぞれ端子金具31を収容することにより、3つの端子金具31は、上下方向Y3に2段並べて配置されるように、ハウジング32に保持される。また、3つの端子金具31のうち2つが、上段に左右方向Y2に沿って並べて配置され、3つの端子金具31のうち1つが、下段に配置されるように、ハウジング32に保持される。さらに、上段に並べられた2つの端子金具31の間に下段の端子金具31が配置される。また、上記端子収容室35は、下段の端子金具31が上段の端子金具31よりも編組線2の長手方向Y1の先端側に配置するように、設けられている。
【0037】
上記取付孔36は、図7に示すように、ハウジング32の長手方向Y1先端側から凹に形成されていて、その内側面に後述する端子台6の係止ランス62に係止する一対の凸状の係止部39がそれぞれ設けられている。この係止部39には、長手方向Y1後端側に向かうに従って内側に向かうテーパが設けられている。
【0038】
また、図7に示すように、上記嵌合部37の外周には溝部38が設けられていて、その溝部38にリング状の弾性シール8が嵌め込まれている。このように弾性シール8を嵌め込んだ状態で筒部52内に挿入すると、嵌合部37外側と筒部52内側との間にリング状の弾性シール8が設けられる。この弾性シール8によってハウジング32と筒部52との間の隙間が塞がれて、ハウジング32と筒部52との間の隙間から機器ケース5内部に水や油が侵入するのを防止することができる。
【0039】
上記機器ケース5は、編組線2が電気的に接続されるモータなどの機器を収容する金属製のケースであり、接地されている。この機器ケース5には、内外を貫通する円状の挿入孔51と、この挿入孔51の周縁から機器ケース5外に向かって立設した筒部52と、が設けられている。図1〜図3に示すように、この機器ケース5の筒部52外側に編組22の端末が被せられ、筒部52外側に被せられた編組22の外側に帯状部材であるシールドバンド9が巻き付けられて加締められている。シールドバンド9は、帯状の金属板から構成されていて、その両端に互いに係止する係止部が設けられている。
【0040】
上記端子台6は、図6及び図7に示すように、合成樹脂等により形成されていて、上記端子金具31のタブ端子部34を搭載する端子台本体61と、端子台6をコネクタ3のハウジング32に係止するために一対の係止ランス62と、を備えている。上記端子台本体61は、上述した上段の端子収容室35に収容される端子金具31のタブ端子部34が搭載される上段端子台本体63と、下段の端子収容室35に収容される端子金具31のタブ端子部34が搭載される下段端子台本体64と、が一体に設けられている。
【0041】
上記上段端子台本体63は、略直方体状に設けられている。この上段端子台本体63のタブ端子部34が重ねられる上面には、タブ端子部34のボルト孔33が重ねられるボルト孔65(図7)と、編組線2の長手方向Y1の後端側に左右方向Y2に沿って立設する立壁部66(図6)と、上段に配置された2つの端子金具31のタブ端子部34を左右方向Y2に隔てる長手方向Y1に沿った隔壁部67と、が設けられている。
【0042】
上記立壁部66には、長手方向Y1に貫通する上段に配置された端子金具31のタブ端子部34が挿入される図示しない端子挿入孔が設けられている。この立壁部66に設けられた図示しない端子挿入孔にタブ端子部34を挿入すると、挿入したタブ端子部34を上段端子台本体63の上面に重ねることができる。
【0043】
上記下段端子台本体64は、略直方体状に設けられている。この下段端子台本体64の上面は、その長手方向Y1後端側が上段端子台本体63下面の長手方向Y1の先端側に連なって設けられている。この下段端子台本体64のタブ端子部34が重ねられる上面には、機器ケース5内にボルト締めするためのボルト孔68と、タブ端子部34のボルト孔33が重ねられるボルト孔69と、タブ端子34の左右に立設する一対の隔壁部70と、が設けられている。
【0044】
また、上記上段端子台本体63の下側には、長手方向Y1に貫通する下段に配置された端子金具31のタブ端子部34が挿入される図示しない端子挿入孔が設けられている。この上段端子台本体63に設けられた図示しない端子挿入孔にタブ端子部34を挿入すると、挿入したタブ端子34を下段端子台本体64の上面に重ねることができる。
【0045】
上述した端子台6に設けたボルト孔65、69にそれぞれタブ端子部34のボルト孔33と、図示しない機器ケース5内に収容されている相手側コネクタのタブ端子部のボルト孔とを重ねてボルト締めすることにより、端子台6とコネクタ3とを固定すると共にタブ端子部34と図示しない相手側コネクタのタブ端子部とを電気的に接続することができる。また、上述した端子台6に設けたボルト孔68と機器ケース5に設けた図示しないボルト孔とに図示しないボルトを挿入してボルト締めすることにより、端子台6を機器ケース5に固定することができる。
【0046】
また、上記一対の係止ランス62は、それぞれ上段端子台本体63から長手方向Y1後端側に向かって突出し、さらに左右方向Y2に並べられて設けられている。上記一対の係止ランス62は、図7に示すように、それぞれ編組線2の径方向に撓むアーム62Aと、アーム62Aから径方向外側に突出する係止突起62Bと、を有している。この係止突起62Bには、長手方向Y1後端側に向かうに従って内側に向かうテーパが設けられている。この一対の係止ランス62を上述したハウジング32に設けた取付孔36に挿入すると、係止突起62Bと係止部39とが係止して、ハウジング32に端子台6を取り付けることができる。
【0047】
次に、上述した構成の編組線の接地構造1の組み立て手順について説明する。まず、予め編組22端末の内径を筒部52の外径よりも広げ、さらに外側に折り返して2重にする。その後、編組22の2重の部分をシーム溶接やスポット溶接、半田付などにより互いに溶接して、編組22がほつれないようにしておく。
【0048】
また、被覆電線21の端末の被覆部を剥いて芯線を露出させ、露出した芯線を端子金具31に圧着させる。そして、この芯線に圧着した端子金具31をコネクタ3のハウジング32内に収容して、被覆電線21の端末にコネクタ3を取り付ける。また、機器ケース5の図示しないボルト孔に端子台6のボルト孔68が重なるように、機器ケース5に端子台6を搭載する。その後、機器ケース5の図示しないボルト孔と端子台6に設けたボルト孔68との双方に図示しないボルトを挿入してボルト締結することにより、端子台6を機器ケース5に固定する。
【0049】
次に、機器ケース5の挿入孔51からコネクタ3を挿入する。このとき、ハウジング32の嵌合部37を筒部52に挿入し、係止ランス62をハウジング32の取付孔36に挿入し、タブ端子部34を端子台6の図示しない端子挿入孔に挿入する。挿入によって、係止ランス62の係止突起62Bが係止部39に達すると、アーム62Aが係止部39に押されて内側に撓み、係止部39に乗り上げる。
【0050】
さらに、コネクタ3を機器ケース5の内部に挿入させると、係止突起62Bが係止部39を乗り越えてアーム62Aが外側に復元して、図7に示すように、係止突起62Bと係止部39とが係止して、コネクタ3が端子台6を介して機器ケース5に1次固定される。このとき、タブ端子部34のボルト孔33と端子台6のボルト孔65、69とが重ねられる位置にタブ端子部34が端子台6上に搭載される。
【0051】
次に、タブ端子部34の上に相手側コネクタのタブ端子部を重ねて、相手側コネクタのタブ端子部のボルト孔、タブ端子部34のボルト孔33及び端子台6のボルト孔65、69に図示しないボルトを挿入してボルト締結することにより、コネクタ3が端子台6を介して機器ケース5に2次固定されると共に相手側コネクタのタブ端子とタブ端子部34とが電気的に接続される。
【0052】
次に、編組22の端部を筒部54の外側に被せて、さらに筒部54の外側に被せられた編組22の外側にシールドバンド9を巻き付けて加締める。これにより、編組22と機器ケース5とが電気的に接続され、編組22が機器ケース5を介して接地される。或いは編組22の外側よりシーム溶接などにより筒部54に接続させてもよい。
【0053】
上述した第1実施形態によれば、機器ケース5に設けた筒部52外側に編組22の端末が被せられ、当該筒部52外側に被せられた編組22の外側にシールドバンド9が巻き付けられているので、シールドシェルを廃止することができ、部品点数及び組み立て工数の削減を図ることができる。また、機器ケース5に直接、編組22を被せることで、従来のようにシールドシェル−コネクタ間、シールドシェル−ケース間の隙間がなくなり、シールド性能が向上する。
【0054】
また、上述した第1実施形態によれば、編組22の端末が折り返されて2重に設けられ、編組22の2重の部分が互いに溶接されているので、編組22が機器ケース5に接地されるまでの間に、編組22がばらつくのを防止することができる。
【0055】
また、上述した第1実施形態によれば、コネクタ3のハウジング32に設けられた嵌合部37外側と筒部32内側との間にリング状の弾性シール8が設けられているので、面シールを廃止して、取り付けが容易なリング状の弾性シール8を用いて防水、防油することができる。
【0056】
また、上述した第1実施形態によれば、端子台6に、編組線2の径方向に撓むアーム62Aと、アーム62Aから径方向に突出する係止突起62Bと、を有する係止ランス62が設けられ、コネクタ3のハウジング32に、係止突起62Bと係止する係止部39が設けられている。これにより、端子台6とコネクタ3との1次固定を係止ランス62により行うことができるので、端子台6とコネクタ3とを1次固定するためにボルト締結する必要がなく、組み立て工数の削減を図ることができる。
【0057】
また、上述した第1実施形態によれば、コネクタ3の端子金具31が、機器ケース5に固定された端子台6に接離する上下方向Y3に2段並べて配置されいるので、全ての端子金具31を1段に並べる場合に比べて、端子台6の左右方向Y2の大きさを小さくすることができる。しかも、端子台6側の下段の端子金具31が、端子台6から離れた側の上段の端子金具31よりも編組線2の長手方向Y1の先端側に配置されているので、下段の端子金具31を端子台6にボルト固定する際に上段の端子金具31が干渉することがない。
【0058】
また、上述した第1実施形態によれば、端子台6から離れた側の上段の2つの端子金具31の間に、端子台6側の下段の端子金具31が配置されているので、端子台6の上下方向Y3の大きさを小さくすることができる。
【0059】
なお、上述した第1実施形態によれば、複数の被覆電線21を編組22によってまとめて一括で覆う編組線2に適用していたが、本発明はこれに限ったものではない。例えば、1つの被覆電線21を編組22によって覆った編組線2に適用してもよい。
【0060】
また、上述した第1実施形態によれば、編組2はその端部が外側に折り返されて2重に設けられていたが、本発明はこれに限ったものではない。内側に折り返されていてもよいし、ほつれが心配なければ折り返して2重にしなくてもよい。
【0061】
また、上述した第1実施形態によれば、端子台6に係止ランス62が設けられ、コネクタ3のハウジング32に係止ランス62の係止突起62Bに係止する係止部39が設けられたが、本発明はこれに限ったものではない。逆に、コネクタ3のハウジング32に係止ランス62を設け、端子台6に係止部39を設けるようにしてもよい。
【0062】
また、上述した第1実施形態によれば、下段の端子収容室35は一つしか設けられていなかったが、本発明はこれに限ったものではない。下段の端子収容室35も左右方向Y2に並べて複数設けてもよい。また、端子収容室35は、上下2段だけでなく、3段以上設けてもよい。
【0063】
また、上述した第1実施形態によれば、端子金具31としてはボルト締結可能なLA端子を用いていたが、本発明はこれに限ったものではない。端子金具31としては、相手側コネクタの端子金具と雄雌嵌合できるものであてもよい。また、この場合、端子台6は必要ない。
【0064】
第2実施形態
次に、第2実施形態における本発明の編組線の接地構造1を図9及び図10に基づいて説明する。なお、図9及び図10においては、図1〜図8ついて上述した第1実施形態で説明した部分と同等の部分には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。第1実施形態と第2実施形態とで大きく異なる点は、端子台6の構造である。第1実施形態では、コネクタ3のハウジング32と端子台6とを別体に設け、係止ランス62によってハウジング32に端子台6を取り付けていたが、第2実施形態では、コネクタ3のハウジング32と端子台6とを樹脂により一体に設けている。
【0065】
また、第1実施形態では、端子台6を機器ケース5に取り付けるためのボルト孔68を下段の端子収容室35に収容される端子金具31のタブ端子部34の左右に設けていたが、第2実施形態では、端子台6を機器ケース5に取り付けるためのボルト孔68を下端の端子収容室35に収容される端子金具31のタブ端子部34の長手方向Y1の先端側に設けることにより機器ケース5の挿入孔51に容易に挿入できる。
【0066】
上述した構成の編組線の接地構造1の組み立て手順については第1実施形態と同様である。まず、第1実施形態と同様に、予め編組22端末の内径を筒部52の外径よりも広げ、さらに外側に折り返して2重にする。その後、編組22の2重の部分をシーム溶接やスポット溶接、半田付などにより互いに溶接して、編組22がほつれないようにしておく。また、被覆電線21の端末にコネクタ3を取り付けておく。
【0067】
次に、機器ケース5の挿入孔51からコネクタ3を挿入する。そして、ハウジング32に一体に設けられた端子台6のボルト孔68を機器ケース5の図示しないボルト孔に重ねる。その後、互いに重ねた端子台6のボルト孔68と機器ケース5の図示しないボルト孔との双方に図示しないボルトを挿入してボルト締結することにより、機器ケース5とコネクタ3のハウジング32とを固定する。
【0068】
その後、タブ端子部34の上に相手側コネクタのタブ端子部を重ねて、互いに重ねた相手側コネクタのタブ端子部のボルト孔、タブ端子部34のボルト孔33及び端子台6のボルト孔65、69に図示しないボルトを挿入してボルト締結することにより、コネクタ3が端子台6を介して機器ケース5に(2次)固定されると共に相手側コネクタのタブ端子とタブ端子部34とが電気的に接続される。
【0069】
次に、第1実施形態と同様に、編組22の端部を筒部54の外側に被せて、さらに筒部54の外側に被せられた編組22の外側にシールドバンド9を巻き付けて加締める。これにより、編組22と機器ケース5とが電気的に接続され、編組22が機器ケース5を介して接地される。
【0070】
上述した第2実施形態によれば、端子台6とコネクタ3とを一体に形成することにより、端子台6とコネクタ3との1次固定作業を行う必要がなく、組み立て工数の削減を図ることができる。しかも、コネクタ3と別に端子台6を設ける必要がなく、部品点数の削減を図ることができる。
【0071】
第3実施形態
次に、第3実施形態における本発明の編組線の接地構造1を図11〜図13に基づいて説明する。なお、図11〜図13においては、図9及び図10について上述した第2実施形態で説明した部分と同等の部分には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。第2実施形態と第3実施形態とで大きく異なる点は、端子台6の構造である。第1実施形態では、端子台6にボルト孔68を設けてボルト締結によって機器ケース5に固定していたが、第2実施形態では、ボルト孔68を廃止している。
【0072】
そして、このボルト孔68の代わりに、機器ケース5の挿入孔51の周縁に係止させるための係止ランス40を設けている。この機器ケース5の挿入孔51の周縁が請求項中の係止部に相当する。上記係止ランス40は、編組線22の径方向に撓む一対のアーム40Aと、一対のアーム40Aから径方向外側にそれぞれ突出する係止突起40Bと、を有している。アーム40Aは、長手方向Y1に沿って設けられていて、その長手方向Y1先端側が端子台6の外側面側に連結されて、長手方向Y1の後端が径方向に撓む。
【0073】
上述した構成の編組線の接地構造1の組み立て手順は第2実施形態と同様である。まず、第2実施形態と同様に、まず、第1実施形態と同様に、予め編組22端末の内径を筒部52の外径よりも広げ、さらに外側に折り返して2重にする。その後、編組22の2重の部分をシーム溶接やスポット溶接、半田付などにより互いに溶接して、編組22がほつれないようにしておく。また、被覆電線21の端末にコネクタ3を取り付けておく。
【0074】
次に、機器ケース5の挿入孔51からコネクタ3を挿入する。この挿入によって、係止ランス40の係止突起40Bが筒部52に達するとアーム40が筒部52の内側面に押されて内側に撓み、筒部52内に挿入される。さらに、コネクタ3を機器ケース5奥側に挿入させると係止突起40Bが筒部52外に出て機器ケース5内に挿入されて、挿入孔51の周縁と係止突起40Bとが係止して、機器ケース5と端子台6とが相対的に位置決めされて固定される。
【0075】
その後、タブ端子部34の上に相手側コネクタのタブ端子部を重ねて、互いに重ねた相手側コネクタのタブ端子部のボルト孔、タブ端子部34のボルト孔33及び端子台6のボルト孔65、69に図示しないボルトを挿入してボルト締結することにより、コネクタ3が端子台6を介して機器ケース5に(2次)固定されると共に相手側コネクタのタブ端子とタブ端子部34とが電気的に接続される。
【0076】
次に、第2実施形態と同様に、、編組22の端部を筒部54の外側に被せて、さらに筒部54の外側に被せられた編組22の外側にシールドバンド9を巻き付けて加締める。これにより、編組22と機器ケース5とが電気的に接続され、編組22が機器ケース5を介して接地される。
【0077】
上述した第3実施形態によれば、コネクタ3と機器ケース5との固定を係止ランス40により行うことができるので、コネクタ3と機器ケース5とを固定するためにボルト締結する必要がなく、組み立て工数の削減を図ることができる。
【0078】
なお、上述した第3実施形態によれば、コネクタ3に係止ランス40が設けられ、機器ケース5に係止部が設けられていたが、本発明はこれに限ったものではない。逆に機器ケース5に係止ランス40を設け、コネクタ3に係止部を設けるようにしてもよい。
【0079】
また、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0080】
1 編組線の接地構造
2 編組線
3 コネクタ
5 機器ケース
6 端子台
8 弾性シール
9 シールドバンド(帯状部材)
31 端子金具
32 ハウジング
21 被覆電線
22 編組
37 嵌合部
39 係止部
40 係止ランス
40A アーム
40B 係止突起
51 挿入孔
52 筒部
62 係止ランス
62A アーム
62B 係止突起
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆電線及び前記被覆電線を覆う筒状の編組から構成された編組線と、前記被覆電線の端末に取り付けられたコネクタを内部に挿入するための挿入孔が設けられた機器ケースと、を備え、前記編組が前記機器ケースに接続された編組線の接地構造において、
前記機器ケースの前記挿入孔の周縁から機器ケース外に向かって立設した筒部が、設けられ、
前記機器ケースの筒部外側に前記編組の端末が被せられて前記編組と前記機器ケースがシールド接続されることを特徴とする編組線の接地構造。
【請求項2】
前記コネクタのハウジングに前記筒部内に嵌合する嵌合部が、設けられ、
前記嵌合部外側と前記筒部内側との間にリング状の弾性シールが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の編組線の接地構造。
【請求項3】
前記機器ケース内に固定された端子台をさらに備え、
前記端子台及び前記コネクタのハウジングの一方に、前記編組線の径方向に撓むアームと、前記アームから前記径方向に突出する係止突起と、を有する係止ランスが設けられ、
前記端子台及び前記コネクタのハウジングの他方に、前記係止突起と係止する係止部が設けられたことを特徴とする請求項1又は2に記載の編組線の接地構造。
【請求項4】
前記機器ケース内に固定された端子台をさらに備え、
前記コネクタのハウジングが、前記機器ケース内に固定される端子台と一体に形成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の編組線の接地構造。
【請求項5】
前記コネクタのハウジング及び前記機器ケースの何れか一方に、前記編組線の径方向に撓むアームと、前記アームから前記径方向に突出する係止突起と、を有する係止ランスが設けられ、
前記コネクタのハウジング及び前記機器ケースの他方に、前記係止突起と係止する係止部が設けられたことを特徴とする請求項4に記載の編組線の接地構造。
【請求項1】
被覆電線及び前記被覆電線を覆う筒状の編組から構成された編組線と、前記被覆電線の端末に取り付けられたコネクタを内部に挿入するための挿入孔が設けられた機器ケースと、を備え、前記編組が前記機器ケースに接続された編組線の接地構造において、
前記機器ケースの前記挿入孔の周縁から機器ケース外に向かって立設した筒部が、設けられ、
前記機器ケースの筒部外側に前記編組の端末が被せられて前記編組と前記機器ケースがシールド接続されることを特徴とする編組線の接地構造。
【請求項2】
前記コネクタのハウジングに前記筒部内に嵌合する嵌合部が、設けられ、
前記嵌合部外側と前記筒部内側との間にリング状の弾性シールが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の編組線の接地構造。
【請求項3】
前記機器ケース内に固定された端子台をさらに備え、
前記端子台及び前記コネクタのハウジングの一方に、前記編組線の径方向に撓むアームと、前記アームから前記径方向に突出する係止突起と、を有する係止ランスが設けられ、
前記端子台及び前記コネクタのハウジングの他方に、前記係止突起と係止する係止部が設けられたことを特徴とする請求項1又は2に記載の編組線の接地構造。
【請求項4】
前記機器ケース内に固定された端子台をさらに備え、
前記コネクタのハウジングが、前記機器ケース内に固定される端子台と一体に形成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の編組線の接地構造。
【請求項5】
前記コネクタのハウジング及び前記機器ケースの何れか一方に、前記編組線の径方向に撓むアームと、前記アームから前記径方向に突出する係止突起と、を有する係止ランスが設けられ、
前記コネクタのハウジング及び前記機器ケースの他方に、前記係止突起と係止する係止部が設けられたことを特徴とする請求項4に記載の編組線の接地構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−22920(P2012−22920A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160491(P2010−160491)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】
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