説明

緩衝器

【課題】 減衰力特性を変更したときにも、それぞれの特性に応じて周波数感応機構の減衰力可変幅を任意に変えることができるようにする。
【解決手段】 ピストンロッド3の下端側に設けられた周波数感応機構25は、ピストンロッド3と一体に内筒1内を変位する筒状のハウジング26と、フリーピストン29、Oリング30,31とを含んで構成する。通路面積可変機構32のシャッタ32には、軸方向に延びる内孔33Aと、オリフィス孔33Bと、油溝33C,33D,33E,33Fとを設けている。シャッタ33の回動位置に応じて油孔3Cとオリフィス孔33Bとの間の開口面積を変える。油孔3D,3Eと油溝33C,33Dとの間、油孔3F,3Gと油溝33C,33D,33E,33Fとの間の開口面積もシャッタ33の回動位置に応じて可変に調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等の振動を緩衝するのに好適に用いられる緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、2輪または4輪自動車等の車両には、車輪側と車体側との間に油圧緩衝器が設けられ、走行時に発生する上,下方向の振動等を緩衝する構成としている。この油圧緩衝器は、アクチュエータを用いて作動流体の通過するオリフィス面積を変化させることにより、発生する減衰力を低減衰力から高減衰力まで適宜に調整することが可能である。しかも、周波数感応機構(入力振動周波数に応じて減衰力が下がる機構)を付与したもので、双方の組合せによって乗り心地の向上を実現している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この周波数感応機構は、例えば特許文献1の図2に示すように、減衰力特性をハードに設定したときでも、高周波の入力に対しては低減衰力にすることを可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−94065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した従来技術による緩衝器は、周波数感応機構による減衰力可変幅を決めるオリフィス面積が一定となっている。このため、減衰力調整式の油圧緩衝器により発生する減衰力を、ハードな特性、ミディアムな特性またはソフトな特性に変更するときに、それぞれの特性に応じて周波数感応機構の減衰力可変幅を自由に変えることができない。
【0006】
例えば、コーナリング時のロールを抑制するためハードな減衰力特性に設定した状態で、路面からの高周波振動を低減するために減衰力可変幅を大きくし、かつ良路走行時の乗り心地を良くするためにソフトな減衰力特性にした場合には、ばね下共振周波数での振動を抑制するために減衰力可変幅を小さくするといった特性を得ることができない。
【0007】
本発明は、上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、減衰力特性を変更したときにも、それぞれの特性に応じて周波数感応機構の減衰力可変幅を任意に変えることができるようにした緩衝器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、請求項1の発明が採用する構成は、作動流体が封入されたシリンダと、該シリンダ内に摺動可能に嵌装され該シリンダ内に2つの室を画成するピストンと、一端側が該ピストンに固着され他端側が前記シリンダの外部に突出したピストンロッドと、前記ピストンの移動により前記シリンダ内の2つの室間で作動流体が流通する主通路と、該主通路と並列に設けられ前記ピストンの移動により前記シリンダ内の2つの室のうちいずれか一方の室から他方の室に向けて作動流体が流れる第1通路および第2通路と、前記主通路に設けられ前記ピストンの移動により生じる前記作動流体の流れを規制して減衰力を発生させる主減衰バルブと、前記第1通路に設けられ前記ピストンの移動により生じる前記作動流体の流れを規制して減衰力を発生させる減衰力発生機構と、前記第2通路中に設けられ該第2通路を上流側と下流側に区画するフリーピストンと、を備え、前記第1通路及び第2通路の途中には、それぞれの通路面積を調整可能な通路面積可変機構を有する構成としたことにある。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、通路面積可変機構により第1通路の面積と第2通路の面積とをそれぞれ別々に調整することができる。このため、緩衝器により発生する減衰力をハードな特性、ミディアムな特性またはソフトな特性のいずれに変更したときでも、フリーピストンからなる周波数感応機構の減衰力可変幅をそれぞれの特性に応じて自由に変えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施の形態による油圧緩衝器を示す縦断面図である。
【図2】図1中の縮み側制御バルブを構成するメイン弁およびディスク弁を拡大して示す縦断面図である。
【図3】図2中のメイン弁を単体として下側からみた底面図である。
【図4】図2中のディスク弁を単体として下側からみた底面図である。
【図5】図1中のピストンロッドとシャッタとを拡大して示す部分断面図である。
【図6】シャッタを図5中の矢示VI−VI方向からみた横断面図である。
【図7】シャッタを図5中の矢示VII−VII方向からみた横断面図である。
【図8】第1の実施の形態によるシャッタ位置と開口面積との関係を示す特性図である。
【図9】第1の実施の形態による周波数と減衰力との関係を示す特性線図である。
【図10】第2の実施の形態による油圧緩衝器を示す縦断面図である。
【図11】第3の実施の形態による油圧緩衝器を示す縦断面図である。
【図12】第1、2の実施の形態による油圧緩衝器全体を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下で説明の実施の形態は、上述の発明が解決しようとする課題の欄や発明の効果の欄に記載した内容に止まること無くその他にもいろいろな課題を解決し、効果を呈している。以下の実施の形態が解決する課題の主なものを、上述の欄に記載した内容をも含め、次に列挙する。
【0012】
〔特性改善〕 振動状態に応じて減衰力特性(ピストン速度に対する減衰力)を変更する際に、より滑らかに変更する等の特性設定が求められている。これは、小さな減衰力が発生する特性と、大きな減衰力が発生する特性の切り替わりが唐突に起こると、実際に発生する減衰力も唐突に切り替わるので、車両の乗り心地が悪化し、さらには減衰力の切り替わりが車両の操舵中に発生すると、車両の挙動が不安定となり、運転者が操舵に対して違和感を招く恐れがあるためである。そのため、先に示した特許文献1に示すようにより滑らかに変更する特性設定が検討されているが、さらなる特性改善が望まれている。
【0013】
〔大型化の抑制〕 周波数感応機構は、フリーピストンが上下動する領域が必要であるため、領域を大きくすると軸方向に長くなるということがあげられる。シリンダ装置が大型化すると、車体への取付け自由度が低下するため、シリンダ装置の軸方向長の増加は、大きな課題である。外部から減衰力を調整する機構を付けるとその分の大型化が避けられないため、周波数感応部の小型化は、強い要求がある。
【0014】
〔部品数の低減〕 周波数感応機構は、ピストンに加え、ハウジングやフリーピストンなどの構成部品が備えられるため、部品数は増えることになる。部品数が増えると、生産性、耐久性、信頼性などに影響がでるため、所望の特性、つまり振動周波数の広い領域に対応した減衰力特性が得られるような特性を出しつつ、部品数の低減が望まれている。
【0015】
以下、本発明の実施の形態による緩衝器を、車両用の油圧緩衝器に適用した場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
【0016】
ここで、図1ないし図9及び図12は本発明の第1の実施の形態を示している。図12は、第1の実施の形態の全体を示すもので、内筒1の外周には外筒100が設けられており、内筒1と外筒100の間には、油とガスが封入されたリザーバ室Rが設けられている。リザーバ室Rとボトム側油室Bは、ボトムバルブ101により接続されている。ボトムバルブ機構は、リザーバ室Rからボトム側油室Bへ殆ど抵抗なく油液を流す逆止弁102と、比較的大きな減衰力を発生する減衰バルブ103が設けられている。
【0017】
後述のピストン2に接続されたピストンロッド3は、ロッドガイド104とシール105を貫通して、外筒100から突出している。また、ピストンロッド3の突出端からは、後述のコントロールロッド34が突出している。ピストンロッド3の先端は取付マウント(図示せず)を介して自動車に取り付けられる。そして、自動車に取り付けられた状態で、直動型アクチュエータ106が自動車のエンジンルームやトランクルーム側から取り付けられる。107は車輪側に取り付けるためのアイである。
【0018】
図1において、内筒1内には作動流体としての油液が封入され、前記外筒100と内筒1との間には、環状のリザーバ室Rが形成されている。
【0019】
2は内筒1内に摺動可能に挿嵌されたピストンで、該ピストン2は、内筒1内をロッド側油室Aとボトム側油室Bとの2室に画成している。ピストン2には、ロッド側油室Aとボトム側油室Bとを連通可能な油路2A,2Bがそれぞれ複数個、周方向に離間して形成され、これらの油路2A,2Bは、ピストン2の軸線に対して斜めに傾いた油穴により構成されている。油路2A,2Bは、ロッド側油室Aとボトム側油室Bとの間で油液を流通させる主通路を構成している。
【0020】
ピストン2の一側となる下側端面には、油路2Aの一側開口を取囲むように形成された環状凹部2Cと、該環状凹部2Cの径方向外側に位置し後述のメインディスク16が離着座する環状弁座2Dとが設けられている。ピストン2の他側となる上側端面には、油路2Bの他側開口を取囲むように形成された環状凹部2Eと、該環状凹部2Eの径方向外側に位置し後述のメインディスク7が離着座する環状弁座2Fとが設けられている。
【0021】
3は内筒1内を軸方向に延びたピストンロッドで、該ピストンロッド3は、一端側としての下端側が内筒1内に挿入され、後述するハウジング26の蓋付ナット27等によりピストン2に固着して設けられている。また、ピストンロッド3の他端側としての上端側は、前記ロッドガイド等を介して前記外筒および内筒1の外部に突出している。ピストンロッド3の内周側には、その下端側に開口して形成され後述のシャッタ33が回動可能に挿嵌されるシャッタ装入穴3Aと、該シャッタ装入穴3Aの上端側から上向きに延びた小径のロッド挿入穴3Bとが軸方向に貫通して設けられている。
【0022】
また、ピストンロッド3には、シャッタ装入穴3Aから径方向外向きに延びた複数の油孔3C、3D,3E,3F,3Gがそれぞれ軸方向と周方向とに離間して設けられている。これらの油孔3C〜3Gのうち各油孔3C〜3Eは、ピストン2により内筒1内に画成されたロッド側油室Aの位置に配置され、残りの各油孔3F,3Gは、内筒1内のボトム側油室Bの位置に配置されている。
【0023】
このうち最も上側に位置する各油孔3Cは、後述するシャッタ33の内孔33Aに径方向のオリフィス孔33Bを介して連通,遮断される。また、各油孔3D,3Eは、後述するシャッタ33の油溝33C,33Dを介して互いに連通,遮断される。各油孔3F,3Gは、後述するシャッタ33の油溝33E,33Fを介して互いに連通,遮断される。さらに、ピストンロッド3の外周側には、後述のポート部材22が軸方向に位置決めされる環状の段部3Hが形成されている。
【0024】
4は本実施の形態で採用した縮小側減衰力発生機構(以下、縮み側減衰機構4という)で、該縮み側減衰機構4は、図1に示すように内筒1のロッド側油室A内に位置してピストン2の上側に固定状態で取付けられている。縮み側減衰機構4は、ピストンロッド3の縮小行程でピストン2が内筒1内を下向きに摺動変位するときに、ボトム側油室Bからピストン2の各油路2B、後述の圧力室C、ピストンロッド3の油孔3E,3D、後述するシャッタ33の油溝33C,33D等を介してロッド側油室Aに向け流通する油液に抵抗力を与えて所定の減衰力を発生するものである。
【0025】
縮み側減衰機構4は、後述のポート部材23とピストン2との間に位置してピストンロッド3の外周側に固定された有蓋筒状の上側ケース体5と、該上側ケース体5の下面側に締代をもって嵌合する後述の弾性シール部材8を有し上側ケース体5との間に環状の圧力室Cを形成するメイン弁6と、後述の外側チェック弁9、内側チェック弁10およびディスク弁11とを含んで構成されている。
【0026】
縮み側減衰機構4の上側ケース体5には、その上側端面に形成され外側チェック弁9が離着座する環状弁座5Aと、該環状弁座5Aよりも径方向内側に位置し圧力室Cを環状弁座5Aの内側部位に連通させる軸方向油路としての油穴5Bと、圧力室Cをピストンロッド3の油孔3Eと常時連通させる径方向油路としての油溝5Cとが設けられている。外側チェック弁9は、リリーフ弁を構成するものであり、圧力室C内の圧力が予め決められたリリーフ設定圧まで上昇したときに開弁し、これ以外のときには環状弁座5Aに着座して閉弁状態に保持されるものである。
【0027】
メイン弁6は、ピストン2の環状弁座2Fに離着座するメインディスク7と、該メインディスク7の上面外周側に加硫、焼付け等の手段で固着して設けられた環状の弾性シール部材8とにより構成されている。該弾性シール部材8は、ゴム等の弾性材料を用いて厚肉なリング状に形成され、外側のロッド側油室Aに対して内側の圧力室Cを液密にシールしている。
【0028】
また、メイン弁6のメインディスク7は、本発明の構成要件である主減衰バルブを兼用して構成している。メイン弁6は、ピストンロッド3の縮小行程で油室A,B間の圧力差が予め決められた設定値まで大きくなると、メインディスク7が環状弁座2Fから離座して所定の縮小側減衰力を発生するものである。メイン弁6(メインディスク7)の開弁時には、油室A,B間がピストン2の油路2Bを介して連通し、これにより本発明の構成要件である主通路が形成される。
【0029】
メイン弁6のメインディスク7には、図2、図3に示すように円形穴7Aと、該円形穴7Aの径方向外側に位置し周方向に離間して形成された複数の円弧状孔7Bとが設けられている。メインディスク7は、円形穴7Aを介してピストンロッド3の外周側に取付けられる。円弧状孔7Bは、後述するディスク弁11の切欠き穴11Bを介してピストン2の環状凹部2Eと前記圧力室Cとを常時連通させる。
【0030】
10はピストン2の環状凹部2E内に設けられた内側チェック弁で、該内側チェック弁10は、環状凹部2Eの底面側に離着座し、ピストン2の油路2Bを環状凹部2E内に対して連通,遮断する。そして、内側チェック弁10は、ボトム側油室B内の油液がピストン2の油路2B側から環状凹部2E側に向けて流通するのを許し、逆に環状凹部2E側から油路2B側に向けて流通するのを阻止するものである。
【0031】
11は内側チェック弁10の上側にスペーサ等を介して設けられたディスク弁で、該ディスク弁11は、図2、図4に示すように円形穴11Aと、該円形穴11Aの径方向外側に位置し周方向に離間して形成された複数の切欠き穴11Bとが設けられている。ディスク弁11は、円形穴11Aを介してピストンロッド3の外周側に取付けられる。各切欠き穴11Bは、略T字状をなす油穴として形成され、メインディスク7の各円弧状孔7Bを介してピストン2の環状凹部2Eと前記圧力室Cとを常時連通させる。この場合、切欠き孔11Bは、メインディスク7の円弧状孔7Bよりも通路面積が十分に小さく、流通する油液に絞り作用を与えて減衰力を発生する。
【0032】
12はディスク弁11をメインディスク7との間で挟んだバックアップディスクで、該バックアップディスク12は、円形穴12Aを介してピストンロッド3の外周側に取付けられる。バックアップディスク12は、その上側面でディスク弁11とメインディスク7とを下側から補強する。また、バックアップディスク12は、ピストン2の環状凹部2E内に配置され、内側チェック弁10の最大開度を規制するリテーナとしても機能するものである。
【0033】
13は本実施の形態で採用した伸長側減衰力発生機構(以下、伸び側減衰機構13という)で、該伸び側減衰機構13は、図1に示すように内筒1のボトム側油室B内に位置してピストン2の下側に固定状態で取付けられている。伸び側減衰機構13は、ピストンロッド3の伸長行程でピストン2が内筒1内を上向きに摺動変位するときに、ロッド側油室Aからピストン2の各油路2A、下側ケース体14の圧力室D、ピストンロッド3の油孔3F,3G、後述するシャッタ33の油溝33E,33F等を介してボトム側油室Bに向け流通する油液に抵抗力を与えて所定の減衰力を発生するものである。
【0034】
伸び側減衰機構13は、後述のポート部材24とピストン2との間に位置してピストンロッド3の外周側に固定された有底筒状の下側ケース体14と、該下側ケース体14の上面側に締代をもって嵌合する後述の弾性シール部材17を有し下側ケース体14との間に環状の圧力室Dを形成するメイン弁15と、後述の外側チェック弁18、内側チェック弁19およびディスク弁20とを含んで構成されている。
【0035】
伸び側減衰機構13の下側ケース体14は、縮み側減衰機構4の上側ケース体5とほぼ同様に構成され、環状弁座14A、軸方向油路としての油穴14B、径方向油路としての油溝14Cとを有している。外側チェック弁18は、リリーフ弁を構成するものであり、圧力室D内の圧力が予め決められたリリーフ設定圧まで上昇したときに開弁し、これ以外のときには環状弁座14Aに着座して閉弁状態に保持されるものである。
【0036】
メイン弁15は、縮み側減衰機構4のメイン弁6と同様に構成され、ピストン2の環状弁座2Dに離着座するメインディスク16と、該メインディスク16の下面外周側に固着して設けられた環状の弾性シール部材17とにより構成されている。そして、メイン弁15についても、本発明の構成要件である主減衰バルブを兼用して構成している。
【0037】
メイン弁15は、ピストンロッド3の伸長行程で油室A,B間の圧力差が予め決められた設定値まで大きくなると、メインディスク16が環状弁座2Dから離座して所定の伸長側減衰力を発生するものである。メイン弁15(メインディスク16)の開弁時には、油室A,B間がピストン2の油路2Aを介して連通し、これにより本発明の構成要件である主通路が形成される。メイン弁15のメインディスク16にも、図2、図3に示すように円形穴16Aと、複数の円弧状孔16Bとが設けられている。
【0038】
19はピストン2の環状凹部2C内に設けられた内側チェック弁で、該内側チェック弁19は、環状凹部2Cの底面側に離着座し、ピストン2の油路2Aを環状凹部2C内に対して連通,遮断する。そして、内側チェック弁19は、ロッド側油室A内の油液がピストン2の油路2A側から環状凹部2C側に向けて流通するのを許し、逆に環状凹部2C側から油路2A側に向けて流通するのを阻止するものである。
【0039】
20は内側チェック弁19の下側にスペーサ等を介して設けられたディスク弁で、このディスク弁20は、縮み側減衰機構4のディスク弁11と同様に構成され、図2、図4に示すように円形穴20Aと複数の切欠き穴20Bとを有している。ディスク弁20の各切欠き穴20Bは、メインディスク16の各円弧状孔16Aを介してピストン2の環状凹部2Cと前記圧力室Dとを常時連通させる。この場合、切欠き孔20Bは、メインディスク16の円弧状孔16Aよりも通路面積が十分に小さく、流通する油液に絞り効果を発生させる。
【0040】
21はディスク弁20をメインディスク16との間で挟んだバックアップディスクで、該バックアップディスク21は、円形穴21Aを介してピストンロッド3の外周側に取付けられる。バックアップディスク21は、その下側面でディスク弁20とメインディスク16とを上側から補強する。また、バックアップディスク21は、ピストン2の環状凹部2C内に配置され、内側チェック弁19の最大開度を規制するリテーナとしても機能するものである。
【0041】
22,23はピストンロッド3の段部3Hと上側ケース体5との間に設けられたポート部材で、該ポート部材22,23は、ピストンロッド3の外周側に嵌合して設けられた環状のリング等により構成されている。ポート部材22は、ロッド側油室Aとピストンロッド3の油孔3Cとの間で油液を流入,出させるものである。また、ポート部材23は、ロッド側油室Aとピストンロッド3の油孔3Dとの間で油液を流入,出させるものである。
【0042】
24は伸び側減衰機構13の下側ケース体14と蓋付ナット27との間に設けられた他のポート部材で、該ポート部材24も、ピストンロッド3の外周側に嵌合して設けられた環状のリング等により構成されている。ポート部材24は、ボトム側油室Bとピストンロッド3の油孔3Gとの間で油液を流入,出させるものである。
【0043】
25はピストンロッド3の下端側に設けられた周波数感応機構で、該周波数感応機構25は、図1に示すように、ピストンロッド3と一体に内筒1内を変位する筒状のハウジング26と、該ハウジング26内に相対変位可能に設けられた後述のフリーピストン29、Oリング30,31とを含んで構成されている。ハウジング26は、ピストンロッド3の下端側に螺合して設けられた蓋部材としての蓋付ナット27と、有底筒状体28とにより構成されている。
【0044】
蓋付ナット27は、ピストンロッド3の下端側外周に螺着された内側ナット部27Aと、該内側ナット部27Aの上端側から径方向外向きに延びた環状蓋部27Bと、該環状蓋部27Bの外周側から下向きに垂下され内周面がフリーピストン29に対するガイド面となった外側の筒状垂下部27Cとにより構成されている。筒状垂下部27Cの下端面は、後述のOリング30が接触するハウジング接触面を構成する。
【0045】
有底筒状体28は、上端側が蓋付ナット27の環状蓋部27Bに外側からカシメ等の手段で固定され内筒1内を下向きに延びた筒状部28Aと、該筒状部28Aの下端側を閉塞する環状の底板部28Bとから構成されている。底板部28Bの中心側には、後述の下側室Fとボトム側油室Bとを連通させる連通孔28Cが形成されている。
【0046】
筒状部28Aの内周側には、後述のOリング31が接触するハウジング接触面としての傾斜円弧面28Dが形成され、この傾斜円弧面28Dは、後述するフリーピストン29の移動方向(即ち、軸方向)に対して傾斜した面で、かつ曲面を有する面を構成している。ここで、傾斜円弧面28Dは、フリーピストン29が下向きに変位するときに後述の環状凸部29Aとの間でOリング31を弾性的に圧縮変形させ、このときの抵抗力によりフリーピストン29のストロークエンドに向けた変位を抑制する機能を有している。
【0047】
29はハウジング26内に摺動可能に設けられたフリーピストンで、該フリーピストン29は、図1に示す如く有底筒状のピストンとして形成され、その外周側には軸方向の中間位置から径方向外向きに突出する環状凸部29Aが設けられている。フリーピストン29は、軸方向の一側となる下端側が有底筒状体28の筒状部28A内に変位可能に挿嵌され、軸方向の他側となる上端側が蓋付ナット27の筒状垂下部27C内に変位可能に挿嵌されている。
【0048】
ハウジング26内を軸方向に相対変位するフリーピストン29は、蓋付ナット27の環状蓋部27Bと有底筒状体28の底板部28Bとに当接することによって、上,下方向のストークエンドが規定される。フリーピストン29は、ハウジング26内(即ち、第2通路)を上流側,下流側の2室である上側室Eと下側室Fとに区画している。ここで、第2通路は、フリーピストン29に画成されており、ロッド側油室Aとボトム側油室B間で油液が置換する流れは生じないが、フリーピストン29がハウジング26に対して移動している間は、ロッド側油室Aの油液が上側室Eに流入し、下側室Fからは同量の油液がボトム側室B側に押し出されるので、実質的に流れを生じている。
【0049】
フリーピストン29の外周に設けた環状凸部29Aは、その上,下面側が傾斜円弧面29B,29Cとして形成され、これらの傾斜円弧面29B,29Cは、後述のOリング30,31が接触するフリーピストン接触面となっている。傾斜円弧面29B,29Cは、フリーピストン29の軸方向に対して傾斜した曲面を有する面を構成している。ここで、フリーピストン29の傾斜円弧面29Bは、Oリング30を挟んで筒状垂下部27Cの下端面と軸方向で対向し、傾斜円弧面29Cは、有底筒状体28の傾斜円弧面28DとOリング31を挟んで軸方向で対向するものである。
【0050】
30,31は周波数感応機構25の抵抗要素を構成する弾性体としてのOリングで、該Oリング30,31は、ハウジング26の筒状部28Aとフリーピストン29の外周面との間に配置され、両者の間を液密にシールしている。ハウジング26内の上側室Eと下側室Fとは、Oリング30,31により互いに封止した状態に保持される。
【0051】
フリーピストン29がハウジング26内を上向きに変位するときには、筒状垂下部27Cの下端面とフリーピストン29の環状凸部29A(傾斜円弧面29B)との間でOリング30が弾性的に圧縮変形される。このときOリング30は、フリーピストン29のストロークエンドに向けた上向き変位に対する抵抗力を発生する。また、フリーピストン29がハウジング26内を下向きに変位するときには、筒状部28A側の傾斜円弧面28Dとフリーピストン29の環状凸部29A(傾斜円弧面29C)との間でOリング31が弾性的に圧縮変形される。このときOリング31は、フリーピストン29のストロークエンドに向けた下向き変位に対する抵抗力を発生する。
【0052】
32は本実施の形態で採用した通路面積可変機構で、該通路面積可変機構32は、後述のシャッタ32、コントロールロッド34およびステッピングモータ等のアクチュエータ(図示せず)を含んで構成されている。通路面積可変機構32のアクチュエータは、例えばピストンロッド3の突出端側に設けられ、コントロールロッド34を介してシャッタ33を回動操作するものである。
【0053】
33はピストンロッド3のシャッタ装入穴3A内に設けられたシャッタで、該シャッタ33は、通路面積可変機構32の開口面積可変部材を構成するものである。シャッタ33は、コントロールロッド34の下端側に一体回転するように設けられ、ピストンロッド3のシャッタ装入穴3A内でコントロールロッド34と一緒に回動される。コントロールロッド34は、ピストンロッド3のロッド挿入穴3B内に挿通して設けられ、その上端側が前記アクチュエータの出力軸(図示せず)に連結される。
【0054】
シャッタ33の内周側は、軸方向に延びる内孔33Aとなり、その下端側はハウジング26内の上側室Eと常時連通している。また、シャッタ33には、内孔33Aから径方向外向きに穿設された開口としてのオリフィス孔33Bと、該オリフィス孔33Bからシャッタ33の軸方向に離間しシャッタ33の外周面に形成された油溝33C,33Dと、該油溝33C,33Dから軸方向に離間しシャッタ33の外周面に形成された他の油溝33E,33Fとが設けられている。
【0055】
オリフィス孔33Bは、図5に示すようにピストンロッド3の油孔3Cと軸方向、径方向で対向する位置に配置され、シャッタ33の回動位置に応じて油孔3Cを内孔33Aに対して連通,遮断する。ここで、本発明の構成要件である第2通路は、ロッド側油室Aに連通するポート部材22、ピストンロッド3の油孔3C、シャッタ33のオリフィス孔33B、内孔33Aおよびハウジング26により構成されている。この第2通路は、前記主通路に対して並列な通路となっている。そして、第2通路の一部を構成するハウジング26内は、フリーピストン29により上側室Eと下側室Fとに区画されている。
【0056】
シャッタ33の油溝33C,33Dは、シャッタ33の回動位置に応じてピストンロッド3の油孔3D,3E間を連通,遮断するものである。ここで、油溝33Cは、図5に示すようにシャッタ33の軸方向で寸法αの範囲にわたって延び、油溝33Dは、寸法αよりも短い寸法β(β<α)の範囲に形成されている。そして、油溝33Cは、図6に示すようにシャッタ33の外周面に形成された円弧状溝からなり、その溝幅はシャッタ33の周方向でほぼ等しくなっている。一方、油溝33Dは、図7に示すようにシャッタ33の外周面を円弧状に切欠いて形成され、その溝幅はシャッタ33の周方向で漸次小さくなっている。
【0057】
ここで、シャッタ33の油溝33C,33Dは、ピストンロッド3の油孔3D,3E、縮み側減衰機構4の圧力室C、メインディスク7の円弧状孔7B、ディスク弁11の切欠き穴11B(図2〜図4参照)およびピストン2の油路2B等と共に、本発明の構成要件である縮み側第1通路を構成し、この第1通路は前記主通路に対して並列な通路となっている。
【0058】
シャッタ33の油溝33E,33Fは、シャッタ33の回動位置に応じてピストンロッド3の油孔3F,3G間を連通,遮断するものである。ここで、油溝33Eは、前述した油溝33Dとほぼ同様にシャッタ33の軸方向で寸法βの範囲に形成され、その溝幅は図7に示すようにシャッタ33の周方向で漸次小さくなっている。また、油溝33Fは、前述した油溝33Cとほぼ同様にシャッタ33の軸方向で寸法あるαの範囲にわたって形成され、その溝幅は図6に示すようにシャッタ33の周方向でほぼ等しくなっている。
【0059】
また、シャッタ33の油溝33E,33Fは、ピストンロッド3の油孔3F,3G、伸び側減衰機構13の圧力室D、メインディスク16の円弧状孔16B、ディスク弁20の切欠き穴20B(図2〜図4参照)およびピストン2の油路2A等と共に、本発明の構成要件である伸び側第1通路を構成し、この第1通路は前記主通路に対して並列な通路となっている。
【0060】
ピストンロッド3のシャッタ装入穴3A内には、シャッタ33の下側(軸方向の一側)に位置して筒体35が設けられ、シャッタ33の上側(軸方向の他側)には、筒状のガイド部材36とシール部材37とが設けられている。シール部材37は、シャッタ装入穴3Aとコントロールロッド34との間から油液が外部に漏洩するのを阻止するものである。前記筒体35は、シャッタ33がシャッタ装入穴3Aから下方に脱落するのを防ぐ脱落防止部材を構成している。筒体35の内周側は内孔35Aとなり、この内孔35Aも前記第2通路の一部を構成している。
【0061】
第1の実施の形態による油圧緩衝器は上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について説明する。
【0062】
まず、油圧緩衝器を車両に実装するときには、ピストンロッド3の上端側が車両の車体側に取付けられ、前記外筒のボトム側が車輪側に取付けられる。車両の走行時には、路面の凹凸等により上,下方向の振動が発生すると、ピストンロッド3が内筒1から伸長、縮小するように変位し、縮み側減衰機構4と伸び側減衰機構13等により減衰力を発生することができ、車両の振動を緩衝することができる。
【0063】
即ち、ピストンロッド3の縮小行程では、ピストンロッド3が内筒1内へと進入し、ボトム側油室B内がロッド側油室Aよりも高圧になるので、ボトム側油室B内の油液がピストン2の油路2Bから内側チェック弁10を介して環状凹部2E内に流入し、この流入油は、ディスク弁11の切欠き穴11B、メインディスク7の円弧状孔7B(図2〜図4参照)を介して縮み側減衰機構4の圧力室C内に流れる。
【0064】
そして、圧力室C内の油液は、上側ケース体5の油溝5Cからピストンロッド3の油孔3E、シャッタ33の油溝33D,33C、ピストンロッド3の油孔3Dおよびポート部材23を介してロッド側油室A内へと流通し、例えばディスク弁11の切欠き穴11B、シャッタ33の油溝33D,33C等によって縮小側の減衰力を発生することができる。
【0065】
この状態で、ピストンロッド3の縮小速度が速くなり、油室A,B間の圧力差が前記設定値を越えるようになると、主減衰バルブを構成するメイン弁6のメインディスク7が環状弁座2Fから離座して開弁し、所定の縮小側減衰力を発生することができる。なお、縮み側減衰機構4の外側チェック弁9は、圧力室C内の圧力がリリーフ設定圧まで上昇したときに開弁し、圧力室C内の圧力上昇を抑えるリリーフ弁として機能する。
【0066】
一方、ピストンロッド3の伸長行程では、ロッド側油室A内がボトム側油室Bよりも高圧となるので、ロッド側油室A内の油液がピストン2の油路2Aからチェック弁19を介して環状凹部2C内に流入し、この流入油は、ディスク弁20の切欠き穴20B、メインディスク16の円弧状孔16Bを介して伸び側減衰機構13の圧力室D内に流れる。
【0067】
そして、圧力室D内の油液は、下側ケース体14の油溝14Cからピストンロッド3の油孔3F、シャッタ33の油溝33E,33F、ピストンロッド3の油孔3Gおよびポート部材24を介してボトム側油室B内へと流通し、例えばディスク弁20の切欠き穴20B、シャッタ33の油溝33E,33F等によって伸長側の減衰力を発生することができる。
【0068】
この状態で、ピストンロッド3の伸長速度が速くなり、油室A,B間の圧力差が前記設定値を越えるようになると、主減衰バルブを構成するメイン弁15のメインディスク16が環状弁座2Dから離座して開弁し、所定の伸長側減衰力を発生することができる。また、伸び側減衰機構13の外側チェック弁18は、圧力室D内の圧力がリリーフ設定圧まで上昇したときに開弁し、圧力室D内の圧力上昇を抑えるリリーフ弁として機能する。
【0069】
次に、通路面積可変機構32のシャッタ33により第1通路と第2通路との通路面積をそれぞれ変えることにより、減衰力を可変に調整する場合について説明する。
【0070】
第1の実施の形態においては、図8中に示す斜線部38のように、シャッタ33を位置aに配置したときに、シャッタ33の油溝33C,33Dがピストンロッド3の油孔3D,3Eと正対した状態で両者間の開口面積(即ち、減衰力調整側である第1通路の通路面積)が最大の開口面積となる。また、シャッタ33を位置aから位置bに回動したときにも、その開口面積は最大の面積に保たれる。しかし、シャッタ33を位置bから位置c,dへと回動したときには、例えば油溝33Dによって前記開口面積が漸次小さくなり、位置dのときには開口面積が零となって、油孔3D,3E間はシャッタ33の外周面により閉鎖されて遮断される。また、シャッタ33を位置dから位置eに回動したときにも、その開口面積は零に保たれる。
【0071】
一方、ピストンロッド3の油孔3Cとオリフィス孔33Bとの間の開口面積(即ち、周波数感応側である第2通路の通路面積)は、図8中に示す斜線部39のように、シャッタ33を位置aとしたときに、開口面積は零になる。しかし、シャッタ33を位置aから位置bに回動したときには,オリフィス孔33Bが油孔3Cに正対して最大の開口面積となる。また、シャッタ33を位置bから位置dに回動したときは、その開口面積は最大の面積に保たれる。さらに、位置eへと回動したときには、開口面積が零となる。
【0072】
このように、第1の実施の形態では、減衰力調整側の開口面積が位置a〜b間で一定(最大の開口面積)であるときに、周波数感応側の開口面積が零から最大の開口面積になるまで)大きくなるように制御され、減衰力調整側の開口面積が位置b〜d間で零まで漸次小さくなるときには、周波数感応側の開口面積が一定(最大の開口面積)であり、減衰力調整側の開口面積が位置d〜e間で開口面積が零のときには、周波数感応側の開口面積が漸次小さくなりeで零になる構成としている。
【0073】
このとき、ピストンロッド3の縮小速度(または伸長速度)が一定の場合を仮定すると、ピストンロッド3の伸縮周波数に対する減衰力の特性は、図9に示す特性線40〜43によって表すことができる。即ち、シャッタ33の回動位置が位置aのときには、減衰力調整側の開口面積が大きく、周波数感応側の開口面積が零のため、位置aでの減衰力特性は図9中に示す特性線40のようにソフトな減衰力で、周波数に対して変化しない設定とすることができる。
【0074】
また、シャッタ33の回動位置を位置aから位置bへと切換えると、減衰力調整側の開口面積は一定に保たれるが、周波数感応側の開口面積は最大面積になるまで大きくなるため、位置bでの減衰力特性は図9中に示す特性線41のように低周波数帯域ではソフトな減衰力で、高周波数帯域ではさらにソフトに設定することができる。
【0075】
さらに、シャッタ33の回動位置を位置bから位置dへと切換えると、減衰力調整側の開口面積が漸次小さくなり、周波数感応側の開口面積は最大面積で一定に保たれるため、位置dでの減衰力特性は図9中に示す特性線42のように低周波数帯域ではハードな減衰力で、高周波数帯域ではソフトに設定することができる。
【0076】
さらに、シャッタ33の回動位置を位置dから位置eへと切換えると、減衰力調整側の開口面積が零に保たれ、周波数感応側の開口面積が零まで漸次小さくなるため、位置eでの減衰力特性は図9中に示す特性線43のように低周波数帯域ではハードな減衰力で、高周波数帯域でもハードの減衰力を維持した周波数に対して変化しない設定とすることができる。
【0077】
かくして、第1の実施の形態によれば、図9中に示す特性線40〜43のように低周波数帯域の減衰力に加えて、各回動位置での高周波数帯域の減衰力可変幅(低減率)を調整できるので、例えばシャッタ33の回動位置を位置bとしたときには、特性線Bのように低速走行時には、低周波数帯域でソフト、さらに周波数感応の機能を効かせ高周波数帯域でよりソフトにし、乗り心地重視のコンフォートモードに制御することができる。
【0078】
また、シャッタ33を位置aに切換えて特性線40のように設定すると、周波数感応の機能がOFFになり、ばね下共振周波数付近でも減衰力を高く維持できるので、突起乗り越し後のばね下振動等を抑制することができる。また高速走行時には操縦安定性重視のスポーツモードに制御することができる。シャッタ33を位置dに切換えて特性線42のように設定すると、ばね上制振など乗心地制御に使うハードな減衰力とした上で、周波数感応の機能を効かせ高周波振動を抑制することができ、周波数感応の機能がないものに比べ、高次元の乗心地制御が可能、あるいは、より簡単な制御で同等なレベルの乗心地制御が可能となる。シャッタ33を位置eに切換えて特性線43のように設定すると、ハンドリング時のロール抑制等に使うハードな減衰力とした上で、周波数感応の機能がOFFになり、操縦安定性の制御性能を最大限に発揮することができる。
【0079】
従って、本実施の形態によれば、ピストンロッド3の油孔3D,3E、シャッタ33の油溝33C,33D、縮み側減衰機構4の圧力室C、メインディスク7の円弧状孔7B、ディスク弁11の切欠き穴11Bおよびピストン2の油路2B等により縮み側第1通路を構成できる。また、ピストンロッド3の油孔3F,3G、シャッタ33の油溝33E,33F、伸び側減衰機構13の圧力室D、メインディスク16の円弧状孔16B、ディスク弁20の切欠き穴20Bおよびピストン2の油路2A等により伸び側第1通路を構成することができる。そして、第2通路をポート部材22、ピストンロッド3の油孔3C、シャッタ33のオリフィス孔33B、内孔33Aおよびハウジング26等によって構成することができる。
【0080】
このように構成される第1通路の面積と第2通路の面積とを、通路面積可変機構32のシャッタ33によりそれぞれ別々に調整することができるため、緩衝器により発生する減衰力をハードな特性、ミディアムな特性またはソフトな特性のいずれに変更したときでも、フリーピストン29等からなる周波数感応機構25の減衰力可変幅をそれぞれの特性に応じて自由に変えることができ、車両の乗り心地を重視した制御と操縦安定性を重視した制御とを適切に実現することができる。
【0081】
この場合、車両固有の特性や狙い(乗り心地重視/操縦安定性重視など)に応じて、縮み側、伸び側減衰機構4,13のオリフィス面積と、周波数感応機構25の減衰力可変幅を決めるオリフィス面積とを、それぞれ独立して調整することができる。また、減衰力の制御が難しい高周波数帯域でも、周波数感応機構25により高周波数帯域のみ減衰力を下げることができるので、複雑な制御をする必要がない。従って、制御CPUのスペックダウンにより安価な構成となり、また制御頻度が少ないため耐久性の点でも有利である。
【0082】
また、周波数感応機構25のハウジング26とフリーピストン29の間には、抵抗要素となるOリング30,31を設ける構成としているので、Oリング30,31は、ハウジング26内でフリーピストン29が軸方向に変位するときに抵抗力を発生することができ、周波数感応機構25による減衰力を滑らかな特性で変更することができる。
【0083】
また、フリーピストン29に対してOリング30,31が接触するフリーピストン接触面を、環状凸部29Aの上,下面側に形成された傾斜円弧面29B,29Cとし、ハウジング26に対しOリング31が接触するハウジング接触面を、筒状部28Aの内周面に形成した傾斜円弧面28Dとし、これらの傾斜円弧面28D,29B,29Cをフリーピストン29の移動方向で互いに対向させると共に、その移動方向に対して傾斜させ、かつ曲面を有する構成としている。
【0084】
このため、例えばOリング31を傾斜円弧面28D,29C間で挟んで弾性変形させるときに、Oリング31が急激に変形するのを抑え、その変形を滑らかにすることができる。しかも、傾斜円弧面28D,29B,29Cの曲率を、Oリング30,31の弾性変形前の曲率よりも大きくすることによって、フリーピストン29の変位に伴うOリング30,31の変形を滑らかにでき、結果として減衰力を円滑にコントロールすることができる。
【0085】
次に、図10は本発明の第2の実施の形態を示し、第2の実施の形態の特徴は、縮み側第1通路と伸び側第1通路とを共通な同一の通路として形成する構成としたことにある。なお、第2の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0086】
図中、71は第2の実施の形態で採用したピストンで、該ピストン71は、第1の実施の形態で述べたピストン2とほぼ同様に構成され、内筒1内をロッド側油室Aとボトム側油室Bとの2室に画成している。ピストン71には、ロッド側油室Aとボトム側油室Bとを連通可能な油路71A,71Bがそれぞれ複数個、ピストン71の周方向に離間して形成されている。これらの油路71A,71Bは、ロッド側油室Aとボトム側油室Bとの間で油液を流通させる主通路を構成している。
【0087】
また、ピストン71には、油路71Aの一側開口を取囲むようにピストン71の一側となる下側端面に形成された環状凹部71Cと、該環状凹部71Cの径方向外側に位置し後述する伸長側のディスクバルブ73が離着座する環状弁座71Dと、油路71Bの他側開口を取囲むようにピストン71の他側となる上側端面に形成された環状凹部71Eと、該環状凹部71Eの径方向外側に位置し後述する縮小側のディスクバルブ74が離着座する環状弁座71Fとが設けられている。
【0088】
72は第2の実施の形態で採用したピストンロッドで、該ピストンロッド72は、第1の実施の形態で述べたピストンロッド3とほぼ同様に構成され、一端側としての下端側がハウジング26の蓋付ナット27等によりピストン71に固着されている。また、ピストンロッド72の内周側には、その下端側に開口して形成され後述のシャッタ78が回動可能に挿嵌されるシャッタ装入穴72Aと、該シャッタ装入穴72Aの上端側から上向きに延びた小径のロッド挿入穴72Bとが軸方向に貫通して設けられている。
【0089】
また、ピストンロッド72には、シャッタ装入穴72Aから径方向外向きに延びた複数の油孔72C,72D,72Eがそれぞれ軸方向と周方向とに離間して設けられている。これらの油孔72C〜72Eのうち各油孔72C,72Dは、ロッド側油室Aに開口するように配置され、残りの各油孔72Eは、内筒1内のボトム側油室Bに開口するように配置されている。
【0090】
このうち最も上側に位置する各油孔72Cは、後述するシャッタ78の内孔78Aに径方向のオリフィス孔78Bを介して連通,遮断される。また、各油孔72D,72Eは、後述するシャッタ78の油溝78C,78Dを介して互いに連通,遮断される。さらに、ピストンロッド72の外周側には、後述のポート部材75が軸方向に位置決めされる環状の段部72Fが形成されている。
【0091】
73,74は本実施の形態で採用した主減衰バルブとしてのディスクバルブを示し、該ディスクバルブ73,74のうちピストン71の一側となる下端面に設けられた伸長側のディスクバルブ73は、ピストンロッド72の伸長行程でピストン71が上向きに摺動変位するときに、各油路71A内を流通する油液に抵抗力を与えて所定の減衰力を発生する。また、ピストン71の他側となる上端面に設けられた縮小側のディスクバルブ74は、ピストンロッド72の縮小行程でピストン71が下向きに摺動変位するときに、各油路71B内を流通する油液に抵抗力を与えて所定の減衰力を発生するものである。
【0092】
75,76はピストンロッド72の段部72Fとピストン71との間に設けられたポート部材で、該ポート部材75,76は、ピストンロッド72の外周側に嵌合して設けられた環状のリング等により構成されている。ポート部材75は、ロッド側油室Aとピストンロッド72の油孔72Cとの間で油液を流入,出させるものである。また、ポート部材76は、ロッド側油室Aとピストンロッド72の油孔72Dとの間で油液を流入,出させるものである。
【0093】
77はピストン71と蓋付ナット27との間に設けられた他のポート部材で、該ポート部材77も、ピストンロッド72の外周側に嵌合して設けられた環状のリング等により構成されている。ポート部材77は、ボトム側油室Bとピストンロッド72の油孔72Eとの間で油液を流入,出させるものである。
【0094】
78は本実施の形態で採用したシャッタで、該シャッタ78は、第1の実施の形態で述べたシャッタ33とほぼ同様に通路面積可変機構32の開口面積可変部材を構成している。シャッタ78には、軸方向に延びる内孔78Aと、該内孔78Aから径方向外向きに穿設された開口としてのオリフィス孔78Bと、該オリフィス孔78Bからシャッタ78の軸方向に離間しシャッタ78の外周面に形成された油溝78C,78D,78Eとが設けられている。油溝78C,78D,78Eは、ピストンロッド72の油孔72D,72Eと共に減衰力発生機構を構成するものである。
【0095】
シャッタ78の油溝78C,78D,78Eは、互いに連通した溝により形成され、シャッタ78の回動位置に応じてピストンロッド72の油孔72D,72E間を連通,遮断する。ここで、油溝78C,78Eは、第1の実施の形態で述べた油溝33D(図7参照)と同様な形状を有し、油溝78Dは、第1の実施の形態で述べた油溝33C(図6参照)と同様な形状を有している。シャッタ78の油溝78C〜78Eは、ピストンロッド72の油孔72D,72Eおよびポート部材76,77等と共に、本発明の構成要件である第1通路を構成し、この第1通路は前記主通路に対して並列な通路となっている。
【0096】
オリフィス孔78Bは、ピストンロッド72の油孔72Cと軸方向、径方向で対向する位置に配置され、シャッタ78の回動位置に応じて油孔72Cを内孔78Aに対して連通,遮断する。ここで、本発明の構成要件である第2通路は、ロッド側油室Aに連通するポート部材75、ピストンロッド72の油孔72C、シャッタ78のオリフィス孔78B、内孔78Aおよびハウジング26により構成されている。この第2通路は、前記主通路に対して並列な通路となっている。
【0097】
かくして、このように構成される第2の実施の形態でも、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第2の実施の形態では、ピストンロッド72の油孔72D,72Eおよびシャッタ78の油溝78C〜78E等により構成される第1通路を、縮み側と伸び側とに共通な同一の通路として形成でき、全体の構造を単純化して簡素化することができる。そして、前記第1の実施の形態と第1,第2の変形例で述べた効果とほぼ同様な効果をより安価に実現することができる。
【0098】
次に、図11は本発明の第3の実施の形態を示し、第3の実施の形態の特徴は、通路面積可変機構のアクチュエータを電磁比例ソレノイドにより構成し、通路面積可変部材をピストンロッドの軸方向に変位させる構成としたことにある。なお、第3の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0099】
図中、81は第3の実施の形態で採用したピストンロッドで、該ピストンロッド81は、図11中に示すように内筒1内を軸方向に延びた筒状ロッド82と、該筒状ロッド82の一側(下端側)に連結部材83を介して連結され後述の比例ソレノイド87が内部に収納して配置された筒形ケース84と、該筒形ケース84の下端側に着脱可能に固定して設けられた段付ロッド85とを含んで構成されている。筒状ロッド82の他側(上端側)は、内筒1の外部に突出する突出端となっている。
【0100】
段付ロッド85は、第1の実施の形態で述べたピストンロッド3の下部側とほぼ同様に構成され、ハウジング26の蓋付ナット27等によりピストン2に固着されている。ここで、段付ロッド85の上端側は、筒形ケース84の下端側に嵌合状態で取付けられる大径の取付ボス部85Aとなっている。段付ロッド85は、この取付ボス部85Aを除いて第1の実施の形態のピストンロッド3(図1参照)の下部側とほぼ同様に構成されている。
【0101】
即ち、段付ロッド85の内周側には、その下端側に開口して形成され後述のスプール88が摺動可能に挿嵌されるスプール摺動穴85Bが軸方向に設けられている。また、段付ロッド85には、スプール摺動穴85Bから径方向外向きに延びた複数の油孔85C,85D,85E,85F,85Gがそれぞれ軸方向と周方向とに離間して設けられている。これらの油孔85C〜85Gのうち各油孔85C〜85Eは、ピストン2により内筒1内に画成されたロッド側油室Aの位置に配置され、残りの各油孔85F,85Gは、内筒1内のボトム側油室Bの位置に配置されている。
【0102】
このうち最も上側に位置する各油孔85Cは、後述するスプール88の内孔88Aに径方向のオリフィス孔88Bを介して連通,遮断される。また、各油孔85D,85Eは、後述するスプール88の油溝88Cを介して互いに連通,遮断される。各油孔85F,85Gは、後述するスプール88の油溝88Dを介して互いに連通,遮断される。さらに、段付ロッド85の取付ボス部85Aには、ポート部材22が軸方向に位置決めされる環状の段部85Hが形成されている。
【0103】
86は本実施の形態で採用した通路面積可変機構、87は該通路面積可変機構86のアクチュエータを構成する電磁比例ソレノイド(以下、比例ソレノイド87という)で、該比例ソレノイド87は、ピストンロッド81の筒形ケース84内に収納して設けられた筒状のコイル部87Aと、該コイル部87Aの内周側に固定して設けられた固定ホルダ部87Bと、該固定ホルダ部87Bと軸方向で対向してコイル部87Aの内周側に変位可能に設けられた可動鉄心87Cと、該可動鉄心87Cの中心側に固定して設けられた出力ロッド87Dと、固定ホルダ部87Bと可動鉄心87Cとの間に配設され該出力ロッド87Dを可動鉄心87Cと一緒に軸方向上向きに付勢したばね87Eとを含んで構成されている。
【0104】
比例ソレノイド87は、コイル部87Aに対しリード線87F等を通じて外部から給電を行うことにより、可動鉄心87Cと出力ロッド87Dとが一緒にばね87Eに抗して軸方向に変位する。このとき、出力ロッド87Dの軸方向の変位量は、コイル部87Aに流れる電流値に比例して制御される。これにより、後述のスプール88は、段付ロッド85のスプール摺動穴85B内を第1の実施の形態の図8のように軸方向に摺動変位される。
【0105】
88は本実施の形態で採用した開口面積可変部材としてのスプールで、該スプール88は、第1の実施の形態で述べたシャッタ33に替えてピストンロッド81(段付ロッド85)のスプール摺動穴85B内に摺動可能に設けられている。スプール88は、比例ソレノイド87の出力ロッド87Dによりスプール摺動穴85B内を軸方向に直動される。スプール88には、軸方向に延びる内孔88Aと、該内孔88Aから径方向外向きに穿設された開口としてのオリフィス孔88Bと、該オリフィス孔88Bからスプール88の軸方向にそれぞれ離間してスプール88の外周面に形成された環状の油溝88C,88Dとが設けられている。
【0106】
オリフィス孔88Bは、図11に示すように段付ロッド85の油孔85Cと軸方向、径方向で対向する位置に配置され、スプール88の摺動変位に応じて油孔85Cを内孔88Aに対して連通,遮断する。ここで、スプール88のオリフィス孔88Bと内孔88Aとは、ロッド側油室Aに連通するポート部材22、段付ロッド85の油孔85Cおよびハウジング26等と共に、本発明の構成要件である第2通路を構成する。
【0107】
スプール88の油溝88Cは、スプール88の摺動変位に応じて段付ロッド85の油孔85D,85E間を連通,遮断するものである。ここで、油溝88Cは、段付ロッド85の油孔85D,85E、縮み側減衰機構4の圧力室C、メインディスク7の円弧状孔7B、ディスク弁11の切欠き穴11B(図2〜図4参照)およびピストン2の油路2B等と共に、本発明の構成要件である縮み側第1通路を構成している。
【0108】
スプール88の油溝88Dは、スプール88の摺動変位に応じて段付ロッド85の油孔85F,85G間を連通,遮断するものである。ここで、油溝88Eは、段付ロッド85の油孔85F,85G、伸び側減衰機構13の圧力室D、メインディスク16の円弧状孔16B、ディスク弁20の切欠き穴20Bおよびピストン2の油路2A等と共に、本発明の構成要件である伸び側第1通路を構成している。
【0109】
段付ロッド85のスプール摺動穴85B内には、スプール88の下側(軸方向の一側)に位置して筒体89が設けられ、該筒体89の内周側は、前記第2通路の一部を構成する内孔89Aとなっている。スプール88の下端と筒体89との間には戻しばね90が設けられ、該戻しばね90は、スプール88を比例ソレノイド87の出力ロッド87D側に向けて常時付勢している。
【0110】
かくして、このように構成される第3の実施の形態でも、比例ソレノイド87の出力ロッド87Dでスプール88を軸方向に摺動変位(直動)させることにより、前記第1通路(減衰力調整側の開口面積)と第2通路(周波数感応側の開口面積)を第1の実施の形態の図8中に示す斜線部38,39のように個別に調整することができ、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。
【0111】
特に、第3の実施の形態によれば、通路面積可変機構86のアクチュエータに比例ソレノイド87を用いているため、減衰力の調整を連続的に行うことができ、より精度の高い減衰力調整が可能になることから、高い制御効果が得られる。さらに、アクチュエータとしての比例ソレノイド87を内筒1の内部(即ち、ピストンロッド81の筒形ケース84)に内蔵しているため、車両に対する当該緩衝器の搭載性を高めることができ、アクチュエータがエンジンルーム内に突出して装着されることがなく、省スペースかつ安全である。
【0112】
なお、前記第1,第3の実施の形態では、前述した縮み側第1通路と伸び側第1通路とを同じ形状に形成した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば縮み側の油溝33C,33D(油溝88C)と伸び側の油溝33E,33F(油溝88D)とを異なる形状にすることで、例えば伸び側をハードな減衰力特性としたときに縮み側をソフトな減衰力特性に設定したり、伸び側をソフトな減衰力特性としたときに縮み側をハードな減衰力特性に設定したりする等、縮み側と伸び側とで互いに異なる減衰力特性を得ることも可能である。
【0113】
一方、前記第1の実施の形態では、第1通路と第2通路とを1つのシャッタ33を用いて、それぞれの通路面積を可変に調整する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば第1通路と第2通路とを別々のシャッタでそれぞれの通路面積を個別に調整する構成としてもよく、個々のシャッタを別々のアクチュエータで回動操作する構成でも良い。また、通路面積可変機構は、アクチュエータではなく手動でシャッタを回動操作する構成でも良い。そして、この点は第2,第3の実施の形態についても同様である。
【0114】
また、前記第1の実施の形態では、ハウジング26とフリーピストン29の間に抵抗要素としてのOリング30,31を設ける場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば特開平7−19642号公報、前記特許文献1に記載の緩衝器のように、例えばコイルばね、板ばね等のばねを抵抗要素として用いる構成でもよい。また、抵抗要素としての弾性体は、Oリングに限らず、断面が四角形、非円形の弾性リング等を用いてもよい。そして、この点は第2,第3の実施の形態についても同様である。
【0115】
また、前記各実施の形態では、自動車等の車両に設ける緩衝器としての油圧緩衝器を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば、振動源となる種々の機械、建築物等に用いる減衰力調整式の緩衝器にも適用することが可能である。
【0116】
以上の実施の形態で述べたように、減衰力の制御が困難な高周波数帯域で、周波数感応機構の効果により減衰力を下げることができるので、複雑な制御をする必要がない。従って、制御CPUのスペックダウンにより安価な構成となり、また制御頻度が少ないため耐久性の点でも有利である。一方、アクチュエータをシリンダ内部に設けることができるため、トランクルーム内にアクチュエータを装着する必要が無く、車両搭載性や安全面で有利である。
【0117】
また、本発明によれば、フリーピストンは、内部に第2通路の少なくとも一部の流路が形成されるハウジング内に移動可能に設ける構成とし、前記ハウジングと前記フリーピストンの間には、該フリーピストンの変位に対して抵抗力を発生する抵抗要素を配置する構成としている。これにより、ハウジング内でフリーピストンが軸方向に変位するときに抵抗力を発生することができ、周波数感応機構による減衰力を滑らかな特性で変更することができる。
【0118】
また、本発明によれば、前記抵抗要素をばねにより構成している。この場合には、前記特許文献1に記載の緩衝器のように、例えば板ばね等のばね(抵抗要素)によりフリーピストンの変位に対して抵抗力を発生することができる。
【0119】
また、本発明によれば、フリーピストンとハウジングとの間には1つまたは複数の弾性体を設け、前記フリーピストンに対し前記弾性体が接触する前記フリーピストン接触面または前記ハウジングに対し前記弾性体が接触する前記ハウジング接触面は、少なくともいずれか一方の面が前記フリーピストンの移動方向に対し傾斜する面を有し、この傾斜する面が曲面により形成されている。これにより、弾性体(例えば、Oリング)を傾斜した曲面で弾性変形させるときに、急激な変形を抑え、その変形を滑らかにすることができ、結果として周波数感応機構による減衰力を円滑に変更することができる。
【0120】
また、本発明によれば、フリーピストンとハウジングとの間には複数の弾性体を設け、前記フリーピストンに対し前記弾性体が接触する前記フリーピストン接触面と前記ハウジングに対し前記弾性体が接触する前記ハウジング接触面とは、前記フリーピストンの移動方向で対向する部分を有する構成としている。これにより、弾性体(例えば、Oリング)を両接触面間で挟んで弾性変形させるときに、弾性体が急激に変形するのを抑え、その変形を滑らかにすることができる。
【0121】
また、本発明によれば、前記弾性体は、前記フリーピストンが一方向へ移動したときに圧縮変形する一の弾性体と、前記フリーピストンが他方向へ移動したときに圧縮変形する他の弾性体とを有する構成としている。これにより、周波数感応機構による減衰力を円滑に変更することができる。
【0122】
さらに、本発明によると、減衰力発生機構は、伸び側減衰力発生機構と、縮み側減衰力発生機構とを有し、第1通路は、前記伸び側減衰力発生機構内を流通する伸び側第1通路と、前記縮み側減衰力発生機構内を流通する縮み側第1通路とを有し、通路面積可変機構は、前記伸び側第1通路と前記縮み側第1通路とのそれぞれの通路面積を調整可能である構成としている。これによって、前記通路面積可変機構は、前記伸び側第1通路の通路面積を調整できると共に、前記縮み側第1通路の通路面積も調整することできる。
【符号の説明】
【0123】
1 内筒
2,71 ピストン
2A,2B,71A,71B 油路(主通路)
3,72,81 ピストンロッド
3C,72C,85C 油孔(第2通路)
3D〜3G,72D,72E,85D〜85G 油孔(第1通路)
4 縮み側減衰機構(縮小側減衰力発生機構)
5 上側ケース体
6,15 メイン弁
7,16 メインディスク(主減衰バルブ)
7B,16B 円弧状孔(第1通路)
8,17 弾性シール部材
9,18 外側チェック弁
10,19 内側チェック弁
11,20 ディスク弁
11B,20B 切欠き穴(第1通路)
13 伸び側減衰機構(伸長側減衰力発生機構)
14 下側ケース体
22,23,24,75,76,77 ポート部材
25 周波数感応機構
26 ハウジング
27 蓋付ナット
28 有低筒状体
28D 傾斜円弧面(ハウジング接触面、傾いた面)
29 フリーピストン
29B,29C 傾斜円弧面(フリーピストン接触面、傾いた面)
30,31 Oリング(弾性体、抵抗要素)
32,86 通路面積可変機構
33,78 シャッタ(開口面積可変部材)
33A,78A,88A 内孔(第2通路)
33B,78B,88B オリフィス孔(開口、第2通路)
33C,33D,88C 油溝(縮み側第1通路)
33E,33F,88D 油溝(伸び側第1通路)
73,74 ディスクバルブ(主減衰バルブ)
78C,78D,78E 油溝(第1通路、減衰力発生機構)
84 筒形ケース
85 段付ロッド
87 電磁比例ソレノイド(アクチュエータ)
88 スプール(開口面積可変部材)
90 戻しばね
A ロッド側油室
B ボトム側油室
C,D 圧力室
E 上側室
F 下側室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体が封入されたシリンダと、
該シリンダ内に移動可能に嵌装され該シリンダ内に2つの室を画成するピストンと、
一端側が該ピストンに固着され他端側が前記シリンダの外部に突出したピストンロッドと、
前記ピストンの移動により前記シリンダ内の2つの室間で作動流体が流通する主通路と、
該主通路と並列に設けられ前記ピストンの移動により前記シリンダ内の2つの室のうちいずれか一方の室から他方の室に向けて作動流体が流れる第1通路および第2通路と、
前記主通路に設けられ前記ピストンの移動により生じる前記作動流体の流れを規制して減衰力を発生させる主減衰バルブと、
前記第1通路に設けられ前記ピストンの移動により生じる前記作動流体の流れを規制して減衰力を発生させる減衰力発生機構と、
前記第2通路中に設けられ該第2通路を上流側と下流側に区画するフリーピストンと、を備え、
前記第1通路および第2通路の途中には、それぞれの通路面積を調整可能な通路面積可変機構を有することを特徴とする緩衝器。
【請求項2】
前記第1通路および第2通路のそれぞれの通路面積を調整可能な前記通路面積可変機構は一のコントロールロッドで操作可能であることを特徴とする請求項1に記載の緩衝器。
【請求項3】
前記通路面積可変機構は、前記第1通路の面積を小さくしたときに、前記第2通路の面積が大きくなる可変領域を有することを特徴とする請求項1または2に記載の緩衝器。
【請求項4】
前記通路面積可変機構は、前記第1通路の面積を小さくしたときに、前記第2通路の面積が小さくなる可変領域を有することを特徴とする請求項1または2に記載の緩衝器。
【請求項5】
前記通路面積可変機構は、前記第1通路の面積が小さくなる可変領域中に、前記第2通路の面積が一定である一定領域を有することを特徴とする請求項1または2に記載の緩衝器。
【請求項6】
前記通路面積可変機構は、前記第2通路の面積が小さくなる可変領域中に、前記第1通路の面積が一定である一定領域を有することを特徴とする請求項1または2に記載の緩衝器。
【請求項7】
前記第2通路は前記ピストンロッド内に形成され、
前記通路面積可変機構は、前記ピストンロッド内に配される開口が設けられた開口面積可変部材と、該開口面積可変部材を回転または直動させるアクチュエータとからなることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の緩衝器。
【請求項8】
前記フリーピストンは、内部に前記第2通路の少なくとも一部の流路が形成されるハウジング内に移動可能に設ける構成とし、前記ハウジングと前記フリーピストンの間には、該フリーピストンの変位に対して抵抗力を発生する抵抗要素を配置したことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の緩衝器。
【請求項9】
前記抵抗要素はばねであることを特徴とする請求項8に記載の緩衝器。
【請求項10】
前記フリーピストンと前記ハウジングとの間には1つまたは複数の弾性体を設け、前記フリーピストンに対し前記弾性体が接触する前記フリーピストン接触面または前記ハウジングに対し前記弾性体が接触する前記ハウジング接触面は、少なくともいずれか一方の面が前記フリーピストンの移動方向に対し傾斜する面を有し、この傾斜する面が曲面により形成されていることを特徴とする請求項8に記載の緩衝器。
【請求項11】
前記フリーピストンと前記ハウジングとの間には複数の弾性体を設け、前記フリーピストンに対し前記弾性体が接触する前記フリーピストン接触面と前記ハウジングに対し前記弾性体が接触する前記ハウジング接触面とは、前記フリーピストンの移動方向で対向する部分を有することを特徴とする請求項8に記載の緩衝器。
【請求項12】
前記弾性体は、前記フリーピストンが一方向へ移動したときに圧縮変形する一の弾性体と、前記フリーピストンが他方向へ移動したときに圧縮変形する他の弾性体とを有することを特徴とする請求項11に記載の緩衝器。
【請求項13】
前記減衰力発生機構は、伸び側減衰力発生機構と、縮み側減衰力発生機構とを有し、前記第1通路は、前記伸び側減衰力発生機構内を流通する伸び側第1通路と、前記縮み側減衰力発生機構内を流通する縮み側第1通路と、を有し、
前記通路面積可変機構は、前記伸び側第1通路と前記縮み側第1通路とのそれぞれの通路面積を調整可能であることを特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載の緩衝器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−149763(P2012−149763A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240307(P2011−240307)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】