説明

緩衝器

【課題】バルブ特性の適正化を図ることが可能となる緩衝器の提供。
【解決手段】減衰力発生機構39が、通路56の開口部56aが設けられたバルブ本体35を有し、バルブ本体35には、開口部56aよりも内周側に位置する内側シート部48と、開口部56aよりも外側に位置し、内側シート部48よりも高い外側シート部49とが形成され、ディスクバルブ37は、内周および外周が軸方向に移動可能であって、内側シート部48および外側シート部49に着座可能に配され、ディスクバルブ37を内側シート部48に押し付ける押圧部84を周方向に複数有する押圧部材86を設け、押圧部84が周方向に不均一に配される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスクバルブの剛性を周方向で異ならせ、ディスクバルブの開弁による流路の急激な拡大を抑制する構造のものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−120726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
緩衝器においては、バルブ特性の適正化を図ることが求められている。
【0005】
本発明は、バルブ特性の適正化を図ることが可能となる緩衝器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、減衰力発生機構が、通路の開口部が設けられたバルブ本体を有し、該バルブ本体には、前記開口部よりも内周側に位置する内側シート部と、前記開口部よりも外側に位置し、前記内側シート部よりも高い外側シート部とが形成され、ディスクバルブは、内周および外周が軸方向に移動可能であって、前記内側シート部および前記外側シート部に着座可能に配され、前記ディスクバルブを前記内側シート部に押し付ける押圧部を周方向に複数有する押圧部材を設け、前記押圧部は周方向に不均一に配される構成とした。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、バルブ特性の適正化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る第1実施形態の緩衝器の要部を断面とした部分正面図である。
【図2】本発明に係る第1実施形態の緩衝器の要部を示す拡大断面図である。
【図3】本発明に係る第1実施形態の緩衝器のガイド部材を示す下面図である。
【図4】本発明に係る第1実施形態の緩衝器の伸び側の流量−差圧特性を示す線図である。
【図5】本発明に係る第2実施形態の緩衝器の要部を示す拡大断面図である。
【図6】本発明に係る第2実施形態の緩衝器の押圧部材を示す下面図である。
【図7】本発明に係る第3実施形態の緩衝器の要部を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
「第1実施形態」
本発明に係る第1実施形態の緩衝器を図1〜図4を参照して以下に説明する。
【0010】
図1に示すように、第1実施形態の緩衝器は、液体あるいは気体等の流体が封入されるシリンダ11を有している。このシリンダ11は、内筒12と、内筒12よりも大径で内筒12を覆うように同心状に設けられる外筒13とを有し、これら内筒12と外筒13との間にリザーバ室14が形成された二重筒構造をなしている。
【0011】
シリンダ11の内筒12内には、ピストン17が摺動可能に嵌装されている。このピストン17は、内筒12内に上室18と下室19とを画成している。シリンダ11内には、具体的に、上室18および下室19内に流体としての作動液が封入され、リザーバ室14内に流体としての作動液およびガスが封入されている。
【0012】
シリンダ11には、一端がシリンダ11の外部へと延出されるピストンロッド22の他端が内筒12内に挿入されており、ピストン17は、このピストンロッド22の内筒12内の他端にナット23により連結されている。ピストンロッド22の一端側は、内筒12および外筒13の上端部に装着された図示略のロッドガイドおよびオイルシールに挿通されて外部へと延出されている。
【0013】
ピストン17は、内筒12内に嵌装されて内筒12内を上室18および下室19の2室に仕切る略円板状のピストンバルブ本体25と、ピストンバルブ本体25の上室18側に配置される減衰バルブ26と、ピストンバルブ本体25の下室19側に配置される減衰バルブ27とを有している。ピストンバルブ本体25には、上室18および下室19を連通させる図示略の複数の通路が形成されている。減衰バルブ26は、一部の通路を介して行われる下室19から上室18への作動液の流れを許容する一方で上室18から下室19への作動液の流れを規制する。減衰バルブ27は、残りの一部の通路を介して行われる上室18から下室19への作動液の流れを許容する一方で下室19から上室18への作動液の流れを規制する。
【0014】
上室18側の減衰バルブ26は、ピストンロッド22がシリンダ11内への挿入量を増やし緩衝器の全長が縮む縮み行程において開弁して一部の通路を介して下室19から上室18へ作動液を流すとともにその際に減衰力を発生させる縮み側の減衰力発生機構28をピストンバルブ本体25とで構成している。下室19側の減衰バルブ27は、ピストンロッド22がシリンダ11内への挿入量を減らし緩衝器の全長が伸びる伸び行程において開弁して残りの一部の通路を介して上室18から下室19へ作動液を流すとともにその際に減衰力を発生させる伸び側の減衰力発生機構29をピストンバルブ本体25とで構成している。
【0015】
外筒13は、円筒部31と、円筒部31の端部を閉塞する底蓋部32とからなっている。底蓋部32と内筒12との間には、シリンダ11内に嵌装されてシリンダ11内を下室19およびリザーバ室14の2室に仕切る略円板状のベースバルブ本体(バルブ本体)35が設けられている。このベースバルブ本体35のリザーバ室14側には、減衰バルブとしてのディスクバルブ36が設けられており、ベースバルブ本体35の下室19側には、サクションバルブとしてのディスクバルブ37が設けられている。ディスクバルブ36は、下室19からリザーバ室14への作動液の流れを許容する一方でリザーバ室14から下室19への作動液の流れを規制する。ディスクバルブ37は、リザーバ室14から下室19への作動液の流れを許容する一方で下室19からリザーバ室14への作動液の流れを規制する。
【0016】
ディスクバルブ36は、縮み行程において開弁して下室19からリザーバ室14に作動液を流すとともに減衰力を発生する縮み側の減衰バルブとなっており、ディスクバルブ37は、伸び行程において開弁してリザーバ室14から下室19内に作動液を流すサクションバルブとなっている。ベースバルブ本体35とディスクバルブ36とが、縮み行程において減衰力を発生する縮み側の減衰力発生機構38を構成しており、ベースバルブ本体35とディスクバルブ37とが、伸び行程において減衰力を発生する伸び側の減衰力発生機構39を構成している。
【0017】
図2に示すように、ベースバルブ本体35は、上部の外周部に下部よりも小径となる段差部42が形成されており、この段差部42において内筒12の下端の内周部に嵌合する。また、ベースバルブ本体35は、下部の外周側に軸方向に突出する突出足部43を有しており、この突出足部43において外筒13の底蓋部32に当接する。この突出足部43には、径方向に貫通する通路溝44が周方向に間隔をあけて複数カ所形成されている。通路溝44によって、内筒12と外筒13との間からベースバルブ本体35と底蓋部32との間までの範囲が、リザーバ室14になっている。
【0018】
ベースバルブ本体35には、径方向の中央にピン挿通孔46が軸方向に貫通するように形成されている。また、ベースバルブ本体35には、その軸方向の突出足部43とは反対側に、径方向のピン挿通孔46の周囲にて軸方向に若干突出する円筒状のガイドボス部47と、径方向のガイドボス部47よりも外側にて軸方向に突出する円筒状の内側シート部48と、径方向の内側シート部48よりも外側にて軸方向に突出する円筒状の外側シート部49とが形成されている。さらに、ベースバルブ本体35には、その軸方向の突出足部43側に、径方向のピン挿通孔46の周囲にて軸方向に若干突出する円筒状の取付ボス部51と、径方向の取付ボス部51よりも外側にて軸方向に若干突出する円筒状のシート部52とが形成されている。
【0019】
ここで、ベースバルブ本体35の軸方向において、外側シート部49は、内側シート部48よりも突出方向の高さ位置を高くしており、ガイドボス部47は、これらよりも突出方向の高さ位置を高くしている。また、シート部52は、取付ボス部51よりも突出方向の高さ位置を高くしている。
【0020】
ベースバルブ本体35は、軸方向の一端の開口部55aがガイドボス部47と内側シート部48との間に開口し、他端の開口部55bが取付ボス部51とシート部52との間に開口して軸方向に貫通する通路55が、周方向に間隔をあけて複数カ所形成されている。また、ベースバルブ本体35には、軸方向の一端の開口部56aが内側シート部48と外側シート部49との間に開口し、他端の開口部56bがシート部52よりも取付ボス部51とは反対側に開口して軸方向に貫通する通路56が周方向に間隔をあけて複数カ所形成されている。
【0021】
内側の通路55は、内筒12内のピストン17の摺動によって下室19とリザーバ室14との間で作動液の流れが生じる一方の通路を形成している。この通路55の開口部55a,55bは、通路55とともにベースバルブ本体35に設けられており、複数の通路55に対して、これらを開閉するように上記したディスクバルブ36が設けられている。
【0022】
外側の通路56は、内筒12内のピストン17の摺動によって下室19とリザーバ室14との間で作動液の流れが生じる他方の通路を形成している。この通路56の開口部56a,56bは、通路56とともにベースバルブ本体35に設けられており、複数の通路56に対して、これらを開閉するように上記したディスクバルブ37が設けられている。ベースバルブ本体35には、開口部56aよりも内周側に位置する内側シート部48と、開口部56aよりも外側に位置し、内側シート部48よりも高い外側シート部49とが形成されている。
【0023】
ベースバルブ本体35には、取付ボルト61が取り付けられている。取付ボルト61は、ベースバルブ本体35のピン挿通孔46に挿通される軸部62と、軸部62の一端に設けられたこれよりも大径の頭部63とを有している。なお、軸部62の頭部63とは反対側の他端には、ナット64が螺合される。
【0024】
ベースバルブ本体35の軸方向の突出足部43側には、ベースバルブ本体35側から順に、減衰バルブとして作用する上記したディスクバルブ36、スペーサ66およびバルブ規制部材67が設けられている。また、ベースバルブ本体35の軸方向の突出足部43とは反対側には、ベースバルブ本体35側から順に、サクションバルブとして作用するディスクバルブ37、ガイド部材70、バネ部材71、スペーサ72およびバルブ規制部材73が設けられている。
【0025】
ディスクバルブ36、スペーサ66およびバルブ規制部材67は、いずれも有孔円板状をなしており、ディスクバルブ36がベースバルブ本体35の取付ボス部51およびシート部52に当接させられ、ディスクバルブ36にスペーサ66が、スペーサ66にバルブ規制部材67がそれぞれ重ねられることになり、この状態で、それぞれの内周部に取付ボルト61の軸部62が挿通されることになる。ディスクバルブ36、スペーサ66およびバルブ規制部材67は、ナット64が取付ボルト61に締結されることにより、ナット64とベースバルブ本体35の取付ボス部51とによって内周側がクランプされる。
【0026】
ディスクバルブ36は、有孔円板状の複数枚の同一外径のディスクが軸方向に重ねられて構成されるもので、その外径が、シート部52の外径より若干大径となっており、ベースバルブ本体35のシート部52に当接して内側の通路55を閉じる。ディスクバルブ36にはシート部52との当接位置に常時通路55をリザーバ室14に連通させる固定オリフィス75が形成されている。
【0027】
縮み行程で図1に示すピストン17が下室19側に移動して下室19の圧力が上昇すると、ディスクバルブ36は、ピストン17の速度が遅いと固定オリフィス75を介して作動液を通路55を介して下室19からリザーバ室14に流し、ピストン17の速度が速いとシート部52から離座して内側の通路55を開く。これにより、ベースバルブ本体35に設けられた内側の通路55は、縮み行程にて作動液が下室19からリザーバ室14に向け流通することになり、ディスクバルブ36は、この通路55を開閉し減衰力を発生する縮み側の減衰バルブとなっている。なお、ディスクバルブ36は、ピストン17に設けられた縮み側の減衰バルブ26との関係から、主としてピストンロッド22のシリンダ11への進入により生じる液の余剰分を排出するように下室19からリザーバ室14に液を流す機能を果たす。ここで、縮み側のディスクバルブをシリンダ内圧が高くなったときに圧力をリリーフするリリーフ弁としてもよい。
【0028】
スペーサ66は、その外径が、ディスクバルブ36の外径よりも小径であって取付ボス部51の外径より若干大径の外径となっている。バルブ規制部材67は、その外径が、ディスクバルブ36の外径と同径となっている。バルブ規制部材67は、ディスクバルブ36がシート部52から離れる方向に所定量変形したときに、ディスクバルブ36に当接してそれ以上の変形を規制する。
【0029】
ディスクバルブ37は、一枚の板材からプレス成形で成形されており、一定厚さの有孔円板状をなしている。ディスクバルブ37は、その内周部にベースバルブ本体35のガイドボス部47が挿入されることになり、ガイドボス部47で案内されて内周側も軸方向に移動可能となっている。つまり、ディスクバルブ37は、外周は勿論、内周も軸方向に移動可能なフローティング構造となっている。ディスクバルブ37は、その外径が外側シート部49の外径よりも若干大径となっている。ディスクバルブ37は、内側シート部48および外側シート部49の両方に着座可能に配されており、両方に同時に着座することで、外側の通路56を閉じることになる。ディスクバルブ37には、径方向の内側シート部48とガイドボス部47との間となる位置に軸方向に貫通する平面視円弧状の通路溝77が形成されている。
【0030】
ガイド部材70は、一枚の板材からプレス成形で成形されており、一定厚さの有孔円板状の主板部80と、主板部80の外周部から軸方向に突出する、図3に示す円弧状の複数(具体的には四カ所)の当接部81とを有している。当接部81は円周方向に等間隔で配置されており、内径がディスクバルブ37の外径よりも若干大径となっている。
【0031】
ガイド部材70の主板部80は、その径方向の内側に、同一内径の複数(具体的には三カ所)の大内径部82と、大内径部82よりも小径の同一内径の複数(具体的には三カ所)の小内径部83とを有している。これにより、ガイド部材70は、その内周部に径方向内側に突出する押圧部84を周方向に間隔をあけて複数(具体的には三カ所)有しており、小内径部83は、押圧部84の突出先端部となっている。ガイド部材70は、押圧部84がある部分は剛性が高く、押圧部84がない部分は剛性が低くなっており、剛性が周方向で不均一となっている。
【0032】
ここで、複数の小内径部83の周方向の幅、つまり押圧部84の周方向の幅は、同じとなっており、複数の大内径部82の周方向幅は、一つのものが最も狭くこれを基準として周方向に順に広くなるように不均一に形成されている。よって、複数の押圧部84は、周方向に隣り合うもの同士の間隔が、一組の間隔が最も狭くこの組を基準として周方向に順に広くなるように不均一に配されている。小内径部83の内径Eは、図2に示す内側シート部48の内径よりも若干小径であり、図3に示す大内径部82の内径Gは、図2に示す内側シート部48の外径よりも大径であって、外側シート部49の内径よりも小径となっている。
【0033】
ガイド部材70は、複数の当接部81の内側にディスクバルブ37を配置するようにしてディスクバルブ37に主板部80において当接するようになっている。言い換えれば、ガイド部材70は、外周にディスクバルブ37の外周側側面に当接する当接部81を有しており、当接部81をディスクバルブ37の外周側側面に当接させることで径方向に位置決めされる。なお、ガイド部材70の主板部80の板厚とディスクバルブ37の板厚との合計値は、ガイドボス部47の内側シート部48からの軸方向長さよりも小さく、ガイドボス部47の外側シート部49から軸方向長さよりも大きくなっている。
【0034】
バネ部材71、スペーサ72およびバルブ規制部材73は、いずれも有孔円板状をなしており、バネ部材71がベースバルブ本体35のガイドボス部47に当接させられ、バネ部材71にスペーサ72が、スペーサ72にバルブ規制部材73がそれぞれ重ねられることになり、この状態で、それぞれの内周部内に取付ボルト61の軸部62が挿通されることになる。バネ部材71、スペーサ72およびバルブ規制部材73は、ナット64が取付ボルト61に締結されることによって取付ボルト61の頭部63とベースバルブ本体35のガイドボス部47とによって内周側がクランプされる。
【0035】
バネ部材71は、ディスク型のものであり、外径が、内側シート部48および大内径部82の内径よりも大径であり、外側シート部49の内径よりも小径となっている。ここで、上記したように、ガイド部材70の主板部80の板厚とディスクバルブ37の板厚との合計値が、ガイドボス部47の内側シート部48からの軸方向長さよりも小さく、ガイドボス部47の外側シート部49から軸方向長さよりも大きくなっていることから、バネ部材71が、内側シート部48と外側シート部49との間に位置する外周端部の押圧点からの押圧力Fでガイド部材70およびディスクバルブ37を押圧すると、これらを外側シート部49に押し付けるとともに、外側シート部49を支点として内径側が軸方向のベースバルブ本体35側に近づくように撓ませる。これにより、ディスクバルブ37を内側シート部48にも押し付ける。なお、ガイド部材70の押圧部84の先端となる小内径部83の内径Eが上記押圧点よりも内側にあって内側シート部48よりも径方向内側まで延出しているため、ディスクバルブ37は、押圧部84で押圧されて、内側シート部48に良好に押し付けられる。
【0036】
ガイド部材70およびバネ部材71は、ディスクバルブ37を内側シート部48に押し付ける押圧部84を周方向に複数有する押圧部材86を構成しており、減衰力発生機構39を構成している。バネ部材71には、径方向の中間位置に軸方向に貫通する平面視円弧状の通路溝87が形成されている。
【0037】
スペーサ72は、バネ部材71の通路溝87よりも径方向内側位置に配置されるように外径が設定されている。バルブ規制部材73は、ガイド部材70の外径よりも若干小径の外径に形成されており、径方向の中間位置に軸方向に貫通する平面視円弧状の通路溝88が形成されている。バルブ規制部材73は、ディスクバルブ37、ガイド部材70およびバネ部材71が、内側シート部48および外側シート部49から離れる方向に所定量変形したときに、バネ部材71あるいはガイド部材70に当接してそのさらなる変形を規制する。
【0038】
上記した減衰力発生機構39は、伸び行程にて図1に示すピストン17が上室18側に移動して下室19の圧力が下降して、下室19とリザーバ室14との差圧ΔPが開弁差圧になると、この差圧ΔPにより、まず、ディスクバルブ37およびガイド部材70がバネ部材71の付勢力に抗して、それまでベースバルブ本体35側に変形していた内径側をベースバルブ本体35とは反対側に変形させる。これにより、ディスクバルブ37が内側シート部48からリフトして離れ、リザーバ室14の作動液が、通路56からディスクバルブ37と内側シート部48との隙間、ディスクバルブ37の通路溝77、ガイド部材70の内側、バネ部材71の通路溝87等を介して下室19側に流れる。
【0039】
このとき、ディスクバルブ37を内側シート部48に向け押圧していたガイド部材70の押圧部84が周方向に不均一に配されており、ガイド部材70による押圧力が周方向に不均一であって、ディスクバルブ37に内側シート部48の開弁圧力の低い部分と高い部分とが存在しているため、開弁圧力の低い部分つまり押圧部84の周方向に隣り合うもの同士の間部分のうち、周方向の間隔が広い部分から順にディスクバルブ37が内側シート部48から離れることになり、押圧部84の周方向に隣り合うもの同士の間部分がすべて離れると、押圧部84の位置が離れることになって、ディスクバルブ37の内側シート部48からの開弁量が徐々に大きくなるようになっている。
【0040】
下室19とリザーバ室14との差圧ΔPがさらに高くなると、バネ部材71を変形させながらディスクバルブ37およびガイド部材70の外径側が外側シート部49から離れ、リザーバ室14の作動液が、上記に加えて、通路56からディスクバルブ37と外側シート部49との隙間を介して下室19側に流れる。なお、ディスクバルブ37は、ピストン17に設けられた伸び側の減衰バルブ27との関係から、主としてピストンロッド22のシリンダ11からの突出に伴う作動液の不足分を補うようにリザーバ室14から下室19に作動液を実質的に抵抗なく流す機能を果たす。
【0041】
以上に述べた第1実施形態の緩衝器によれば、ディスクバルブ37を内側シート部48に向け押圧しているガイド部材70の押圧部84が周方向に不均一に配されているため、ディスクバルブ37の内側シート部48からの開弁量が徐々に大きくなり、作動液の流路が徐々に拡大することになる。よって、流路の急激な拡大による減衰力特性の急激な変化を防止して、搭載車両の乗り心地および操縦安定性を向上させることができる。つまり、第1実施形態の緩衝器によれば、図4に示すように、特に減衰力特性の急激な変化を生じやすい微低流量域から低流量域までの領域Kにおける円弧形状の減衰力特性(いわゆる開弁R)が滑らかとなり、急激な変化を防止することができる。
【0042】
また、ディスクバルブ37は、内側シート部48と外側シート部49とのみの2点で支持されており、内側シート部48と外側シート部49との間位置に押圧力Fが加えられているため、閉弁時におけるディスクバルブ37と内側シート部48および外側シート部49との隙間をなくすことができ、開弁初期から安定した開弁特性を得ることができる。よって、個体差の少ない安定した減衰力特性を得ることができる。
【0043】
また、ディスクバルブ37は、上述したように内周側から開弁するため、この点からも、流路の急激な拡大による減衰力特性の急激な変化を防止して、搭載車両の乗り心地および操縦安定性を向上させることができる。
【0044】
また、ディスクバルブ37を内側シート部48に押し付ける押圧部84を周方向に複数有する押圧部材86が、外周にディスクバルブ37の外周側側面に当接する当接部81を有し内周に押圧部84を有するガイド部材70と、ガイド部材70をベースバルブ本体35側に向けて押し付けるバネ部材71とから構成されるため、内側シート部48および外側シート部49の間の押圧点でディスクバルブ37を押圧することと、ディスクバルブ37を押圧する押圧部84を周方向に不均一に配置することとが容易にできる。
【0045】
「第2実施形態」
次に、第2実施形態を主に図5および図6に基づいて第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
【0046】
第2実施形態においては、第1実施形態のガイド部材70とバネ部材71とからなる押圧部材86にかえて、図5に示すように、軸方向に突出する突起状の押圧部91を有する一つの押圧部材92が設けられている。押圧部材92には、図6に示すように軸方向に貫通する平面視円弧状の通路溝93が形成されており、通路溝93よりも径方向外側に、押圧部91が複数(具体的には四カ所)設けられている。これらの押圧部91は、周方向に不均一に配されている。押圧部91は、図5に示す内側シート部48および外側シート部49の間の押圧点でディスクバルブ37を押圧し、ディスクバルブ37の内径側が軸方向のベースバルブ本体35側に位置するように撓ませながら、ディスクバルブ37を外側シート部49および内側シート部48に押し付ける。このとき、押圧部91が周方向に不均一に配されているため、ディスクバルブ37への押圧力が周方向に不均一になる。
【0047】
以上に述べた第2実施形態の緩衝器によっても、ディスクバルブ37を内側シート部48に向け押圧している押圧部材92の押圧部91が周方向に不均一に配されているため、隣り合う押圧部91の間部分であって間隔が広く押圧力が小さい部分から順に、内側シート部48から離間し、最終的には、押圧部91の部分が内側シート部48から離間する。これにより、ディスクバルブ37の内側シート部48からの開弁量が徐々に大きくなり、作動液の流路が徐々に拡大することになる。よって、第1実施形態と同様、流路の急激な拡大による減衰力特性の急激な変化を防止して、搭載車両の乗り心地および操縦安定性を向上させることができる。
【0048】
「第3実施形態」
次に、第3実施形態を主に図7に基づいて第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
【0049】
上記した第1,第2実施形態の減衰力発生機構38,39の構造を、ピストン17側の減衰力発生機構28,29にかえて適用することも可能であり、第3実施形態は、ピストン17の伸び側の減衰力発生機構に、第1実施形態の減衰力発生機構38の構造を適用し、ピストン17の縮み側の減衰力発生機構に、第1実施形態の減衰力発生機構39の構造を適用したものである。
【0050】
つまり、ピストンバルブ本体25と下室19側のディスクバルブ36とで伸び側の減衰力発生機構38を構成し、ピストンバルブ本体25と上室18側のディスクバルブ37とで縮み側の減衰力発生機構39を構成している。
【0051】
ピストンバルブ本体25には、ピストンロッド22の小径の取付軸部101を挿通させるようにピン挿通孔46が形成され、その上室18側に、ガイドボス部47と内側シート部48と外側シート部49とが形成されており、その下室19側に、取付ボス部51とシート部52とが形成されている。
【0052】
ピストンバルブ本体25には、開口部55aがガイドボス部47と内側シート部48との間に開口し、開口部55bが取付ボス部51とシート部52との間に開口して通路55が形成されており、開口部56aが内側シート部48と外側シート部49との間に開口し、開口部56bがシート部52よりも取付ボス部51とは反対側に開口して通路56が形成されている。内側の通路55に、これを開閉するようにディスクバルブ36が設けられており、外側の通路56に、これを開閉するようにディスクバルブ37が設けられている。
【0053】
ピストンバルブ本体25は、軸方向の下室19側に、ピストンバルブ本体25側から順に、ディスクバルブ36、スペーサ66およびバルブ規制部材67を有しており、軸方向の上室18側に、ピストンバルブ本体25側から順に、ディスクバルブ37、ガイド部材70、バネ部材71、スペーサ72およびバルブ規制部材73を有している。
【0054】
ディスクバルブ36、スペーサ66およびバルブ規制部材67のそれぞれの内周部内にピストンロッド22の取付軸部101が挿通されることになり、これらは、ナット23が取付軸部101に締結されることにより、ナット23とピストンバルブ本体25の取付ボス部51とによって内周側がクランプされる。
【0055】
ディスクバルブ37は、その内周部にピストンバルブ本体25のガイドボス部47を挿入させることになり、ガイド部材70は、複数の当接部81の内側にディスクバルブ37を配置するようにしてディスクバルブ37に主板部80において当接する。そして、バネ部材71、スペーサ72およびバルブ規制部材73のそれぞれの内周部内に取付軸部101が挿通されることになり、これらは、ナット23が取付軸部101に締結されることによりピストンロッド22の段部103とピストンバルブ本体25のガイドボス部47とによって内周側がクランプされる。
【0056】
第3実施形態においては、減衰力発生機構39が、縮み行程にてピストン17が下室19側に移動して下室19と上室18との差圧ΔPが開弁差圧になると、ディスクバルブ37がバネ部材71の付勢力に抗して内側シート部48からリフトして離れ、下室19の作動液が、通路56からディスクバルブ37と内側シート部48との隙間等を介して上室18側に流れることになり、差圧ΔPがさらに高くなると、バネ部材71を変形させながらディスクバルブ37およびガイド部材70の外径側が外側シート部49から離れ、下室19の作動液が、上記に加えて、通路56からディスクバルブ37と外側シート部49との隙間を介して上室18側に流れる。したがって、縮み行程にて第1実施形態と同様の効果を得られることになる。
【符号の説明】
【0057】
11 シリンダ
17 ピストン
22 ピストンロッド
25 ピストンバルブ本体(バルブ本体)
35 ベースバルブ本体(バルブ本体)
37 ディスクバルブ
39 減衰力発生機構
48 内側シート部
49 外側シート部
56 通路
56a 開口部
70 ガイド部材
71 バネ部材
81 当接部
84 押圧部
86 押圧部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が封入されるシリンダと、
該シリンダ内に摺動可能に設けられるピストンと、
該ピストンに連結されて前記シリンダから外部に延出されるピストンロッドと、
前記シリンダ内の前記ピストンの摺動によって流体の流れが生じる通路と、
該通路に設けられたディスクバルブを有する減衰力発生機構とを備えた緩衝器において、
前記減衰力発生機構は、前記通路の開口部が設けられたバルブ本体を有し、該バルブ本体には、前記開口部よりも内周側に位置する内側シート部と、前記開口部よりも外側に位置し、前記内側シート部よりも高い外側シート部とが形成され、
前記ディスクバルブは、内周および外周が軸方向に移動可能であって、前記内側シート部および前記外側シート部に着座可能に配され、
前記ディスクバルブを前記内側シート部に押し付ける押圧部を周方向に複数有する押圧部材を設け、前記押圧部は周方向に不均一に配されることを特徴とする緩衝器。
【請求項2】
前記ディスクバルブは、内周側から開弁することを特徴とする請求項1に記載の緩衝器。
【請求項3】
前記押圧部材は、外周に前記ディスクバルブの外周側側面に当接する当接部を有し内周に前記押圧部を有するガイド部材と、該ガイド部材を前記バルブ本体側に向けて押し付けるバネ部材と、から構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の緩衝器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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