説明

緩衝材及び段ボール板

【課題】
本発明は組み立ての手間がかからず、運搬が容易で、挿入が容易に行える緩衝材及びこの緩衝材に変形する段ボール板を提供することを課題とする。
【解決手段】
本発明にかかる緩衝用の段ボール板1は、付勢部7と、製品を位置決めするための開口部6を有する位置決め面3とを備えている。付勢部7が折曲げられると折曲げ前の形状に復元しようとする復元力によって前記付勢力が生じ、位置決め面3は付勢力によって付勢部7から離れるように付勢される。この段ボール板1を一方向の製品間に挿入すると、他の仕切板等を使用しなくとも、製品の位置決めが行える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は緩衝用の段ボール板及び緩衝材に関し、特に製品間への挿入作業を簡略化する緩衝用の段ボール板及び緩衝材に関する。
【背景技術】
【0002】
製品が箱詰めされた状態で輸送されると、製品が互いに接触し、製品表面の塗装がはがれたり、表面が変形したりする場合がある。これを防ぐため、製品と製品との間に緩衝用の仕切板が入れられるのが一般的である。図8は仕切板50を入れた状態の箱の斜視図である。この仕切板50は、縦仕切板51と横仕切り板52とから成る。縦仕切板51及び横仕切板52は互いに交差する位置に切込みが入っており、この切込みに沿って縦の仕切り板51と横の仕切り板52が組み立てられる。仕切板50は組み立てられた状態で製品間に挿入される。組み立てられた仕切板50を製品間に挿入する場合、製品の位置を整えながら挿入しなければならず、挿入作業に時間がかかってしまう。また、仕切板50の組み立ては、たくさんの縦仕切板51及び横仕切板52を組み合わせるため、手間がかかってしまう。さらに、通常は仕切板50は折り畳まれた状態で業者に納入されるが、この状態では全体の厚みが一定ではなく、重ねての運搬には適しておらず仕切板50自体の運搬効率は悪いものであった。
【0003】
これに対し従来、一対の帯板素材を部分的に糊付けした仕切板が提案されている(特許文献1参照)。この仕切板は、簡単に角形の製品挿入部分を形成できるため、仕切板の組立時間を短縮でき、また重ねての運搬にも適するものであった。
【特許文献1】特開平6−56146号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、提案された上記の仕切板であっても、製品の位置を整えながら仕切板を挿入しなければならず、挿入に手間がかかるとういう従来の問題は残ったままであった。
【0005】
そこで、本発明は製品間への挿入作業が効率的に行える緩衝材及びこの緩衝材に変形する段ボール板を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本願発明にかかる緩衝材は、第一折曲部と開口部とが形成された、段ボール紙製の緩衝材であって、前記第一折曲部が付勢部として機能し、前記開口部の周辺部が内容物を保持する位置決め部として機能し、前記付勢部は、前記第一折曲部が折り曲げ前の形状に復元しようとする性状によって付勢力を発生させ、該付勢力によって、前記位置決め部の面の略法線方向に、前記位置決め部が付勢され、展開することによって一の段ボール板状になる。かかる構成によれば、緩衝材を製品間に挿入すると、製品を緩衝材の挿入方向と略直角方向に付勢し、位置決め部に対応する位置に固定することができる。そのため、例えば商品の間の縦方向に緩衝材を挿入すれば、横方向に仕切板等を挿入しなくても、製品間の接触を防ぐことができる。
【0007】
また、上記緩衝材において、前記第一折曲部と略平行な第二折曲部が形成され、前記第一折曲部と前記第二折曲部との間に前記位置決め部が位置し、前記第二折曲部を介して前記位置決め部に隣接する部分が天面として機能するようにしてもよい。かかる構成によれば、緩衝材が製品間に挿入されるのに伴って、製品の上部に天面を形成することができる。よって、製品を複数段に積み上げる場合、各段を仕切るための仕切板を挿入する必要がないため、箱詰め作業を単純化することができる。
【0008】
また、上記緩衝材において、前記開口部が、前記第一折曲部に沿って複数形成されるようにしてもよい。かかる構成によれば、複数の製品に対応して位置決めすることができる。
【0009】
また、上記緩衝材において、前記第一折曲部が、段繰り方向(中芯の流れ方向)と略平行に形成されてもよい。かかる構成によれば大きな付勢力を発生することができる。
【0010】
また、上記緩衝材において、前記開口部が前記第一折曲部を挟んでその両側に形成され、前記第一折曲部を挟んで二の位置決め部が形成され、前記付勢力によって、前記二の位置決め部が互いに離れる方向に付勢されるようにしてもよい。かかる構成によれば、2列に並べられた製品に対応することができる。
【0011】
さらに、上記課題を解決するため、本願発明にかかる段ボール板は、折曲線と、開口部とを有し、前記折曲線に沿って折曲げることによって、上記の緩衝材に変形する。なお、上記の「折曲線」には罫線及びハーフカット線が含まれる。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかる緩衝材を製品間の一方向に挿入するだけで、製品間の接触を防ぐことができる。よって、緩衝材の商品間への挿入作業を効率的に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明にかかる緩衝材及び段ボール板を実施するための最良の形態について、図を参照しつつ以下に説明する。本実施形態では、製品を4つずつ2列に並べ、これを上下2段に積んで箱詰めする場合に使用する緩衝材及び段ボール板ついて説明する。また、製品の形状は円柱である場合を想定している。
【0014】
まず、段ボール板の構成について説明する。図1は、本実施形態に係る段ボール板1の平面図である。図1に示すように、本実施形態に係る段ボール板1の形状は長方形である。段ボール板1は、1つの中央面2と、2つの位置決め面3と、2つの天面4とを備えている。
【0015】
中央面2は平面視が長方形であって、段ボール板1の中央に位置する面である。中央面2は、中央面2と位置決め面3との境界線7に平行で、かつ、中央面2の中央に位置する中央線5を有する。中央線5は上面側が切断されたハーフカット加工が施されている。図2はハーフカット加工された段ボール板の断面図である。図2に示すように、ハーフカット加工とは、一方のライナー22を残し、他方のライナー21と中芯23とを切断する加工である。かかる加工によれば、加工部を容易に折曲げることができる。なお、後述の付勢力を増加させたい場合は、ハーフカット加工を罫線加工としてもよい。
【0016】
位置決め面3は平面視が長方形であって、中央面2の両端に位置する面である。位置決め面3の幅w2は、中央面2の幅w1のおよそ半分である。また、位置決め面3の幅w2は、製品Pの高さhよりも狭くしてもよい(図5参照)。両位置決め面3は、中央線5に平行に等間隔に開口部6を有している。本実施形態では、両位置決め面3の開口部6は製品Pの位置に対応して4か所に施されている。開口部6は位置決め面3と中央面2との境界線7から天面4との境界線8にかけて開口している。開口部6は略長方形であるが、位置決め面3と中央面2との境界線7付近では、開口部6の幅が広がっている。また、段ボール板1の側端部12から最も近い開口部6の中心までの距離d1は、開口部6同士の中心間距離d2の約半分である。中央面2と位置決め面3との境界線7には、罫線(折曲加工)が施されている(第一折曲線)。なお、段ボール板1において、一方の天面4から他方の天面4に向かう方向と直角の方向が段繰り方向(中芯の流れ方向)である。つまり、上記罫線は段繰り方向(中芯の流れ方向)と略平行に形成されている。
【0017】
天面4は平面視が略長方形であって、位置決め面3のさらに外方に位置する面である。天面4は、端部9の中央部に半円状の切込み10を有している。また、位置決め面3と天面4との境界線8は、上面側が切り取られるハーフカット加工が施されている(第二折曲線)。なお、両天面4の合計面積は、製品が箱詰めされる箱の平面視における面積よりもわずかに小さくなっている。また、各面2、3、4の境界線7、8方向の長さは、製品Pを4つ並べられた状態の長さとほぼ同じである。
【0018】
以上が本実施形態にかかる段ボール板1の構成である。本実施形態にかかる段ボール板1は、1枚の段ボール板に折り曲げ加工及び切断加工がなされたものである。よって、段ボール板1全体に渡って同じ厚さを有しているため、重ねても崩れにくい。そのため、段ボール板1の運搬を効率良く行うことができる。
【0019】
次に、本実施形態に係る段ボール板1の折り込み方法について説明する。段ボール板1は、所定形状に折り込まれた状態で使用される。図3は本実施形態に係る段ボール板1を使用する際の折り込み状態を表した図である。図3に示すように、中央線5を境にして、両半面の裏面同士を向き合うように、中央面2を鋭角に折り込む。上述のように中央線5は上面側が切り取られたハーフカット加工が施されているため、容易に折り込むことができる。
【0020】
また、中央面2と位置決め面3との境界線7を境にして、中央面2の表面と位置決め面3の表面とが向き合うように、位置決め面3を鋭角に折り込む。上述のように、中央面2と位置決め面3との境界線7には罫線が施されているため、周囲に比べ境界線7で折れやすくなっている。この中央面2と位置決め面3との境界線7は付勢力を発生させる付勢部の役割を果たす。位置決め面3と中央面2との境界線7はハーフカット加工が施されている部分に比べ、折り込みはある程度の力を要するが、その分大きな復元力を発生させることができる。罫線が施された境界線7(折曲加工部)は、折り曲げられることにより、折り曲げ前の形状に復元しようとする復元力を発生する。この復元力を利用して付勢力を発生させる。
【0021】
また、天面2と位置決め面3の境界線8を境にして、両天面4が水平になるように、天面4を略直角に折り込む。なお、天面2の折り込みは、段ボール板を製品Pの間に挿入した後に行ってもよい。
【0022】
以上が本実施形態にかかる段ボール板1の折り込み方法である。このように本実施形態にかかる段ボール板1は、他の部材と組み合わせて組み立てる必要がなく、簡単な折り込み作業によって使用可能な状態にすることができる。
【0023】
次に、折り込まれた段ボール板の製品間への挿入方法について説明する。図4は、折り込まれた段ボール板1の一部が製品P間に挿入された状態の概略図である。下段の製品Pが並べられた後に、上記の折り込まれた状態の段ボール板1を挿入する。折り込まれた段ボール板1に対して天面4側から中心面2方向へ力をかけ、段ボール板1が内側に縮んだ状態で製品Pの間へ挿入する。図4に示すように、中央面2と位置決め面3との両境界線7の部分をまず製品Pの間へ挿入する。位置決め面3の開口部6の位置は、製品Pの位置に対応しており、かつ製品Pの側面は円弧状であるため、開口部6の少なくとも一方の側辺11に製品Pの側面が接触する。特に、開口部6の位置決め面3と中央面2との境界線7付近は幅が広くなっているため、製品Pの位置と開口部6の中心位置が多少ずれていても開口部6の側辺11は製品Pの側面と接触することができる。つまり、この幅広の部分は、製品を開口部6へ導くガイドの役割を果たす。
【0024】
また、挿入状態では、位置決め面3は天面4との境界線8が中央面2との境界線7よりも外側となるように傾斜している。そのため、段ボール板1を製品Pの間にさらに押し込んでいくと、製品Pには外側に向かう力が徐々に大きくなる。そうすると、開口部6の一方の側辺11の一点から力を受けていた製品は、より安定した状態を求めて両方の側辺11と接触するよう開口部6の中心に移動する。これにより、各製品Pは開口部6の中心に位置決めされる。
【0025】
図5は、本実施形態にかかる段ボール板1が製品Pの間に完全に挿入された状態の斜視図である。図5に示すように、段ボール板1は位置決め面3と天面4の境界線8が製品の上面の高さと一致する位置まで挿入される。付勢部7は鋭角に曲げられた状態であり、折曲げ前の形状に復元しようとする復元力により、製品Pは位置決め面3(開口部6)の略法線方向に付勢される。そのため、製品Pは安定位置である開口部6の中心に固定し続ける。さらに、位置決め面3と天面4との境界線8で、両天面4は水平になるように、天面4を折り込む。これにより、製品Pの上面を覆うことができる。なお、天面4の端部9は箱Bの壁面の近くに位置する。また、段ボール板を外す際、天面4に施された半円状の切欠き部10に指を入れることが可能であるため、段ボール板1を容易に取り外すことができる。
【0026】
下段の製品Pに段ボール板1を挿入した後は、下段に挿入された段ボール板1の天面4に上段の製品Pを並べる。このように、上段の製品Pと下段の製品Pの間に天面4を介しているため、上段の製品Pと下段の製品Pの接触を防止することができる。なお、図8に示すような従来の仕切板50を使用する場合、図8の仕切板50とは別の仕切板を上段と下段の間に敷く作業が必要であったが、本実施形態によれば、そのような作業は不要となる。上段の製品Pの間に挿入される段ボール板1の挿入方法は、下段に挿入する段ボール板1の挿入方法と同じである。ただし、上段に挿入する段ボール板の構成は、天面4を有しない構成としてもよい。製品を2段で箱に詰め込む場合、上段の製品の上に製品が並べられることは無いからである。この場合であっても、開口部6に対応する部分が開口部となり、本来の開口部6と同様の機能を果たすことができる。
【0027】
以上が本実施形態にかかる段ボール板1の製品Pの間への挿入方法である。このように折り込まれた本実施形態にかかる段ボール板1は、製品間の一方向に挿入するだけで、製品を位置決め及び固定し、緩衝材として機能することができる。よって、このような緩衝材であれば挿入作業を効率よく行うことができる。
【0028】
以上では、本実施形態にかかる段ボール板1は両位置決め面3の間に中央面2を備えていると説明したが、これに代えて図6の段ボール板1aのように、両位置決め面3a同士を隣接させても良い。この場合、両位置決め面3aの境界線7aが付勢部となる。図6の段ボール板1aは図1の段ボール板1よりも使用する材料を減らすことができる。
【0029】
また、本実施形態では中央面2の中央線5に対して対称な段ボール板1について説明したが、これに代えて図7のように図1の段ボール板1の半分のみの形状を有する段ボール板1bとしても良い。図7のような段ボール板1bは、製品が1列に並んでいる場合に使用することができる。また、図1の段ボール板1、図6の段ボール板1a及び図7の段ボール板1bの各段ボール板を連結させたものであってもよい。例えば、同じ段ボール板を連結してもよく、他の段ボール板を連結してもよい。かかる構成によれば、二又は三以上の列に並べられた製品にも対応することができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明によれば、製品間への挿入作業が容易な緩衝用の段ボールケース及び緩衝材を提供することができる。よって、段ボール板及び緩衝材の技術分野において有益である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本願発明にかかる段ボール板の平面図である。
【図2】ハーフカット加工を説明するための段ボール板の断面図である。
【図3】図1の段ボール板を折り込んだ状態の斜視図である。
【図4】図1の段ボール板を折り込んで一部を製品間に挿入した状態の断面図である。
【図5】図1の段ボール板を折り込んで全部を製品間に挿入した状態の斜視図である。
【図6】本願発明にかかる段ボール板の他の実施形態を示した平面図である。
【図7】本願発明にかかる段ボール板の他の実施形態を示した平面図である。
【図8】従来の仕切板が挿入された状態の段ボールケースの斜視図である。
【符号の説明】
【0032】
1 段ボール板
3 位置決め面
4 天面
6 開口部
7 付勢部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一折曲部と開口部とが形成された、段ボール紙製の緩衝材であって、
前記第一折曲部が付勢部として機能し、前記開口部の周辺部が内容物を保持する位置決め部として機能し、
前記付勢部は、前記第一折曲部が折り曲げ前の形状に復元しようとする性状によって付勢力を発生させ、
該付勢力によって、前記位置決め部の面の略法線方向に、前記位置決め部が付勢され、
展開することによって一の段ボール板状になる、緩衝材。
【請求項2】
前記第一折曲部と略平行な第二折曲部が形成され、
前記第一折曲部と前記第二折曲部との間に前記位置決め部が位置し、
前記第二折曲部を介して前記位置決め部に隣接する部分が天面として機能する、請求項1記載の緩衝材。
【請求項3】
前記開口部が、前記第一折曲部に沿って複数形成された、請求項1又は2記載の緩衝材。
【請求項4】
前記第一折曲部が、段繰り方向(中芯の流れ方向)と略平行に形成された、請求項1乃至3のいずれかに記載の緩衝材。
【請求項5】
前記開口部が前記第一折曲部を挟んでその両側に形成され、
前記第一折曲部を挟んで二の位置決め部が形成され、
前記付勢力によって、前記二の位置決め部が互いに離れる方向に付勢される、請求項1乃至4のいずれかに記載の緩衝材。
【請求項6】
折曲線と、開口部とを有し、前記折曲線に沿って折曲げることによって、請求項1乃至5のいずれかに記載の緩衝材に変形する段ボール板。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−261627(P2007−261627A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−88552(P2006−88552)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【特許番号】特許第3944232号(P3944232)
【特許公報発行日】平成19年7月11日(2007.7.11)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】