説明

緩衝材

【課題】固定の対象となる筒状部材が装着されたときに、その筒状部材を離脱させにくくすることができる緩衝材を提供する。
【解決手段】現像剤収容器2が緩衝材1に装着されるときに、固定の対象となる筒状の装着部21の内周面は、第1突出部12の側壁に凸部122にて接し、その外周面は、凸部122の法線方向から見て、凸部122を挟んだ凸部133及び凸部134にて第3突出部14の側壁に接している。このとき、凸部122と凸部133との距離は、凸部122と凸部134との距離よりも小さく、且つ第3突出部14の凸部133におけるz軸方向への突出量は、凸部134のそれよりも大きい。凸部122からの距離が短く、幅方向の接触範囲が狭い凸部133においても、突出量を大きくして接触面積を広げることで、緩衝材1が現像剤収容器2から離脱しにくくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝材に関する。
【背景技術】
【0002】
製品の脆弱な部位を衝撃から保護することを目的として、例えば樹脂や発泡スチロールを材料として形成された緩衝材により製品を固定して梱包箱に収納することがある。特許文献1には、部品類や工作材料を含む固体などを包装するためのフランジ付き軟質フィルム容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−206138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、固定の対象となる筒状部材が装着されたときに、その筒状部材を離脱させにくくすることができる緩衝材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するため、本発明の請求項1に係る緩衝材は、基部と、前記基部から突出する第1の突出部と、前記第1の突出部を挟む位置で前記基部からそれぞれ突出する第2の突出部及び第3の突出部とを備え、固定の対象となる筒状部材の内周面が、前記第2の突出部の側壁から突き出た少なくとも1箇所で接するとともに、前記第1の突出部の側壁から突き出た第1の接触領域に接し、且つ前記筒状部材の外周面が、前記第1の接触領域の法線方向から見て当該第1の接触領域を挟んだ位置にあり、前記第3の突出部の側壁から突き出た接触領域である第2の接触領域及び第3の接触領域に接するよう、当該筒状部材が装着される場合に、前記第3の突出部において、前記第1の接触領域と前記第2の接触領域との距離が、前記第1の接触領域と前記第3の接触領域との距離よりも小さく、且つ前記第2の接触領域における突出方向の長さが、前記第3の接触領域における前記突出方向の長さよりも大きいことを特徴とする。
【0006】
本発明の請求項2に係る緩衝材は、請求項1に係る緩衝材において、前記筒状部材の内周面が、前記第3の突出部の側壁から突き出た少なくとも1箇所で接するとともに、前記第1の突出部の側壁から突き出た第4の接触領域に接し、且つ当該筒状部材の外周面が、前記第4の接触領域の法線方向から見て当該第4の接触領域を挟んだ位置にあり、前記第2の突出部の側壁から突き出た接触領域である第5の接触領域及び第6の接触領域にて前記第2の突出部の側壁に接するよう、当該筒状部材が装着される場合に、前記第2の突出部において、前記第4の接触領域と前記第5の接触領域との距離が、前記第4の接触領域と前記第6の接触領域との距離よりも小さく、且つ前記第5の接触領域における突出方向の長さが、前記第6の接触領域における前記突出方向の長さよりも大きいことを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項3に係る緩衝材は、基部と、前記基部から突出する第1の突出部と、前記第1の突出部を挟む位置で前記基部からそれぞれ突出する第2の突出部及び第3の突出部とを備え、固定の対象となる筒状部材の内周面が、前記第2の突出部の側壁から突き出た少なくとも1箇所で接するとともに前記第1の突出部の側壁から突き出た第1の接触領域にて接し、且つ当該筒状部材の外周面が、前記第1の接触領域の法線方向から見て当該第1の接触領域を挟んだ位置にあり、前記第3の突出部の側壁から突き出た接触領域である第2の接触領域及び第3の接触領域にて前記第3の突出部の側壁に接するよう、当該筒状部材が装着される場合に、前記第3の突出部において、前記第1の接触領域と前記第2の接触領域との距離が、前記第1の接触領域と前記第3の接触領域との距離よりも小さく、且つ前記筒状部材を前記基部から離れる方向に離脱させるときに前記第2の接触領域に生じる摩擦力が、前記第3の接触領域に生じる当該摩擦力よりも大きいことを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項4に係る緩衝材は、請求項3に係る緩衝材において、前記筒状部材の内周面が、前記第3の突出部の側壁から突き出た少なくとも1箇所で接するとともに前記第1の突出部の側壁から突き出た第4の接触領域に接し、且つ当該筒状部材の外周面が、前記第4の接触領域の法線方向から見て当該第4の接触領域を挟んだ位置にあり、前記第2の突出部の側壁から突き出た接触領域である第5の接触領域及び第6の接触領域にて前記第2の突出部の側壁に接するよう、当該筒状部材が装着される場合に、前記第2の突出部において、前記第4の接触領域と前記第5の接触領域との距離が、前記第4の接触領域と前記第6の接触領域との距離よりも小さく、且つ前記筒状部材を前記基部から離れる方向に離脱させるときに前記第5の接触領域に生じる摩擦力が、前記第6の接触領域に生じる当該摩擦力よりも大きいことを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項5に係る緩衝材は、請求項2又は4に係る緩衝材において、前記第1の突出部は、前記第5の接触領域のある側から前記第6の接触領域のある側に向かって前記基部に近づく方向に傾斜する面を突出端に有しており、前記第3の突出部は、前記第2の接触領域のある側から前記第3の接触領域のある側に向かって前記基部に近づく方向に傾斜する面を突出端に有していることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項6に係る緩衝材は、基部と、前記基部から突出する第1の突出部と、前記第1の突出部を挟む位置で前記基部からそれぞれ突出する第2の突出部及び第3の突出部とを備え、固定の対象となる筒状部材の内周面が、前記第2の突出部の側壁から突き出た少なくとも1箇所で接するとともに、前記第1の突出部の側壁の角部である第1の接触領域に接しており、且つ当該筒状部材の外周面が、前記第3の突出部の側壁から突き出た接触領域である第2の接触領域及び第3の接触領域にて前記第3の突出部の側壁に接するよう、当該筒状部材が装着される場合に、前記第3の突出部において、前記第1の接触領域と前記第2の接触領域との距離が、前記第1の接触領域と前記第3の接触領域との距離よりも小さく、且つ前記筒状部材を前記基部から離れる方向に離脱させるときに前記第3の接触領域に生じる摩擦力が、前記第2の接触領域に生じる当該摩擦力よりも大きいことを特徴とする。
本発明の請求項7に係る緩衝材は、請求項6に係る緩衝材において、前記筒状部材の内周面が、前記第3の突出部の側壁から突き出た少なくとも1箇所で接するとともに、前記第1の突出部の側壁の角部である第4の接触領域に接しており、且つ当該筒状部材の外周面が、前記第1の突出部の側壁から突き出た接触領域である第5の接触領域及び第6の接触領域にて前記第1の突出部の側壁に接するよう、当該筒状部材が装着される場合に、前記第1の突出部において、前記第4の接触領域と前記第5の接触領域との距離が、前記第4の接触領域と前記第6の接触領域との距離よりも小さく、且つ前記筒状部材を前記基部から離れる方向に離脱させるときに前記第6の接触領域に生じる摩擦力が、前記第5の接触領域に生じる当該摩擦力よりも大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、固定の対象となる筒状部材が装着されたときに、その筒状部材を離脱させにくくすることができる。
請求項2に係る発明によれば、利用者にとって筒状部材を装着しやすくすることができるとともに、筒状部材を離脱させにくくすることができる。
請求項3に係る発明によれば、固定の対象となる筒状部材が装着されたときに、その筒状部材を離脱させにくくすることができる。
請求項4に係る発明によれば、利用者にとって筒状部材を装着しやすくすることができるとともに、筒状部材を離脱させにくくすることができる。
請求項5に係る発明によれば、利用者にとって筒状部材をさらに装着しやすくすることができる。
請求項6に係る発明によれば、筒状部材の周方向への移動を抑制することができる。
請求項7に係る発明によれば、利用者にとって筒状部材を装着しやすくするとともに、筒状部材の周方向への移動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る緩衝材の概要を説明する図である。
【図2】緩衝材の周辺の外観を示す斜視図である。
【図3】現像剤収容器が装着されたときの緩衝材の外観の様子を示す図である。
【図4】図3中の切断線IV-IVで切断したときの装着部及び緩衝材の断面を表すである。
【図5】図4に示す態様から、装着部をz軸を中心に180度回転させて装着したときの断面図である。
【図6】図4に示す態様で現像剤収容器が装着されたときの、第3突出部と装着部との接触領域を説明する図である。
【図7】変形例1に係る緩衝材に現像剤収容器が装着されたときの緩衝材を上面から見た図である。
【図8】変形例2に係る緩衝材に現像剤収容器が装着されたときの緩衝材を上面から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施形態]
図1は、本発明の一実施形態である緩衝材の概要を説明する図である。
同図に示すように、本実施形態の緩衝材1は、製品である現像剤収容器2に装着され、梱包箱3内において現像剤収容器2の位置を固定するものである。梱包箱3の内部では、緩衝材1は、現像剤収容器2と梱包箱3との間に位置し、梱包箱3が外部から受ける衝撃を緩衝して現像剤収容器2を保護する。緩衝材1は、例えば樹脂を材料として形成されるが、衝撃の吸収に優れた材料が選択されるとよい。現像剤収容器2は、特定の色の現像剤(トナー)を内部に収容する円柱状の部材であり、一方の先端付近には緩衝材1が装着される装着部21を有している。装着部21は筒状の部材として形成されている。装着部21の筒状の内側にはメモリ(図示せず)が設けられている。このメモリは、現像剤収容器2が装着された装置によって情報の読み書きがなされ、現像剤収容器2の現像剤の残量に関する情報などを記憶する。現像剤収容器2は、図示せぬ電子写真方式の画像形成装置に着脱自在に構成されており、画像形成装置に装着されて画像を形成する処理が実行されたときには、画像形成を行う機構に現像剤を排出する。現像剤収容器2に収容された現像剤が消費されて空になったときには、利用者によって画像形成装置から取り外されて新品のものと交換される。このとき、利用者は、緩衝材1に装着された新品の現像剤収容器2を梱包箱3から取り出し、緩衝材1を取り外す。そして、利用者は、現像剤収容器2を画像形成装置に装着し、図1に矢印で示すように、画像形成装置から取り外した使用済みの現像剤収容器2に緩衝材1を装着して、梱包箱3に収納する。
【0014】
次に、緩衝材1の構成について詳述する。
図2は、緩衝材1の外観を示す斜視図である。図3は、現像剤収容器2が装着されたときの緩衝材1の周辺の外観の様子を示す図である。図4は、図3中の切断線IV-IVで切断したときの装着部21及び緩衝材1の断面を表す図である。これらの図に示すように、緩衝材1は底面が略長方形に形成された部材である。以下の説明では、緩衝材1の底面の一辺の方向にx軸を定め、x軸に直交し、緩衝材1の他辺の方向にy軸を定め、x軸及びy軸に直交し、現像剤収容器2が着脱される方向である図中白抜きの矢印方向にz軸を定めて、緩衝材1の構成を説明する。
【0015】
緩衝材1の構成は、基部11と、第1突出部12と、第2突出部13と、第3突出部14と、外縁部15とに大別される。基部11は、xy平面方向に広がる平面状に形成された部位である。第1突出部12は、基部11の中心付近で基部11から突出している。第1突出部12は上面に突出端121を有しており、緩衝材1に現像剤収容器2が装着されたときには、突出端121は現像剤収容器2が有している上述のメモリに接触する。また、第1突出部12は、側壁から外側に向かって突き出た凸部122,123を有している。凸部122は、第3突出部14側を向く側壁に設けられ、凸部123は、第2突出部13側を向く側壁に設けられている。
【0016】
第2突出部13及び第3突出部14は、第1突出部12を挟む位置で基部11からそれぞれ突出している。第1突出部12と第2突出部13との間、及び第2突出部13と第3突出部14との間の寸法は、現像剤収容器2の装着部21が嵌め込まれる大きさとなっている。第2突出部13は、突出端131,132を有している。第2突出部13の突出端131のz軸方向の高さは、第1緩衝部12の突出端121や突出端132のそれよりも高くなっている。突出端132の方が低くなっているのは、現像剤収容器2の構造によりこれ以上高くし得ないのであり、突出端131についてはこの高さの制約をさほど受けない。つまり、第2突出部13の突出端131が高くなるように構成し得るわけであるが、現に高くしている理由については後述する。突出端131,132は現像剤収容器2の特定の部位に接触し、この接触した部位を保護する。また、第2突出部13は、側壁から外側に向かって突き出た凸部133,134,135を有している。凸部133,134は、第1突出部12側を向く側壁に設けられている。また、凸部133,134は、第1突出部12の凸部123を両側から挟んだ位置に設けられている。凸部135は、第1突出部12とは反対側である、外縁部15側を向く側壁に設けられている。
【0017】
第3突出部14は、第2突出部13と同一寸法で、且つ同一形状に形成されており、第1突出部12を挟んで対向する位置関係となっている。第3突出部14は、突出端141,142を有しており、突出端141のz軸方向の高さは、第1緩衝部12の突出端121や突出端142のそれよりも高い。また、第3突出部14は、側壁から外側に向かって突き出る凸部143,144,145を有している。凸部143,144は、第1突出部12側の側壁に設けられている。また、凸部143,144は、第1突出部12の凸部122の法線方向から見て、凸部122を両側から挟んだ位置に設けられている。凸部145は、第1突出部12と反対側である、外縁部15側を向く側壁に設けられている。
外縁部15は、緩衝材1の外縁に沿って基部11から突出した部位である。外縁部15は、緩衝材1に現像剤収容器2が装着されたときに、装着部位の外周面に外部からの衝撃が直接的に加わらないようにするために設けられている。
なお、第1突出部12、第2突出部13及び第3突出部14の突出方向はz軸方向であり、その突出方向に直交する方向がxy平面方向である。
【0018】
以上の構成を有している緩衝材1に、図4に示すようにして現像剤収容器2が装着されたときには、第1突出部12は凸部122を第1の接触領域として、現像剤収容器2の装着部21の内周面に接する。現像剤収容器2と第1突出部12の側壁とは、この1箇所で互いに接している。第2突出部13は、凸部135にて現像剤収容器2の装着部21の内周面に接する。現像剤収容器2と第2突出部13の側壁とは、少なくともこの1箇所で接している。第3突出部14は、凸部143を第2の接触領域とし、凸部144を第3の接触領域として、それぞれが現像剤収容器2の装着部21の外周面に接している。現像剤収容器2と第3突出部14の側壁とはこの2箇所で接している。
【0019】
また、緩衝材1は、図4に示す現像剤収容器2の装着部21の位置を、z軸を中心に180度回転させた位置としても装着し得るように構成されている。図5は、この方向に現像剤収容器2が装着されたときの断面図であり、緩衝材1と装着部21との位置関係を説明する図である。
現像剤収容器2の装着部21の内周面は、第3突出部14の凸部145に接しており、且つ第1突出部12の凸部123を第4の接触領域として接している。また、現像剤収容器2の装着部21の外周面は、第1突出部12の凸部123の法線方向から見て、凸部123を挟んだ第5の接触領域である凸部133、及び第6の接触領域である凸部134にて、第2突出部13の側壁に接している。このように、緩衝材1は、現像剤収容器2を2方向で装着し得るように構成されており、利用者が回転方向を意識しなくても緩衝材1に装着しやすいように構成されている。
【0020】
図6は、図4に示す態様で現像剤収容器2が装着されたときの第3突出部14と装着部21との接触領域を説明する図であり、同図においては、図4に示すB部の装着部21をy軸方向に見たときの様子を模式的に表している。同図において、装着部21が第3突出部14と第接触する部位をハッチングで示す。現像剤収容器2の装着部21と凸部143とは接触領域T1にて接触しており、そのxy平面方向を幅方向としたときの幅寸法をW1とする。また、凸部122から接触領域T1の幅方向に対する中心までの距離はL1である。距離L1は、ここでは装着部21の部材部分に沿った、凸部122から接触領域T1までの長さである。また、装着部21と凸部144とは接触領域T2にて接触しており、その幅寸法をW2とする。接触領域T2の幅寸法は、接触領域T1のそれよりも大きい(つまり、W1<W2)。凸部122から接触領域T2の幅方向に対する中心までの距離はL2であり、L1よりも大きい(つまり、L1<L2)。距離L2は、ここでは装着部21の部材部分に沿った、凸部122から接触領域T2までの長さである。また、第3突出部14の凸部143のz軸方向への長さである突出量(ここでは、突出端141のz軸方向の高さに等しい)はH1であり、凸部144のz軸方向への突出量(ここでは、突出端142のz軸方向の高さに等しい)はH2であり、H1>H2という関係を満たしている。すなわち、接触領域T2のz軸方向に対する領域は接触領域T1のそれよりも大きい。
【0021】
緩衝材1にあっては、L1<L2であり、W1<W2という関係を満たすという理由から、第3突出部14がH1>H2という関係を満たすように構成されている。緩衝材1においては、現像剤収容器2の構造上、凸部122から凸部143までの距離L1と、凸部144までの距離L2とが互いに異なる構成を採らざるを得ない。これにより、両者の距離が一致する(つまり、L1=L2となる)場合に比べて、凸部122からの距離が短い接触領域T1での固定が不安定になりやすい。また、接触領域T1の幅寸法W1を大きくして接触面積を増やそうとしても、緩衝材1は、上述したように現像剤収容器2の構造に合わせた構成を採る必要があるし、また、図4,5に示すように、2方向で現像剤収容器2を装着し得るように構成されていることから、W1の寸法を十分に確保するのが困難である。そこで、緩衝材1は、接触領域T1においても十分な接触面積を確保するために、凸部143の位置で第3突出部14のz軸方向への突出量(つまり、突出端141のz軸方向の高さ)を大きくしている。これにより、現像剤収容器2を基部11から離れる方向に離脱させようとするときに、凸部143と装着部21との間に生じる摩擦力が、その突出量が小さい場合に比べて大きくなる。この摩擦力は、少なくとも凸部143と装着部21との間に生じる摩擦力よりも大きい。この構成により、固定が不安定になりやすい接触領域T1においても十分な接触面積が確保されるので、現像剤収容器2がより安定して固定される。なお、接触領域T2においては、W2は或る程度大きいから、凸部144における第3突出部14のz軸方向への突出量が比較的小さい場合であっても、接触領域T2において十分な接触面積が確保され安定して固定される。
【0022】
また、図5に示す態様の装着であっても、凸部123と凸部133との距離L1は、凸部123と凸部134との距離L2よりも小さくなり、上記と同じ理由で現像剤収容器2の固定が不安定になってしまう虞がある。これに対し、第2突出部13は、凸部133の位置における基部11からz軸方向への突出量H1が凸部134の位置におけるその突出量H2よりも大きくなるように構成されているから、凸部133においても現像剤収容器2との十分な大きさの接触面積が確保され、現像剤収容器2がより安定して固定される。
【0023】
また、図2に示すA部において、第2突出部13の突出端131は、凸部133のある側から凸部134のある側に向かって基部11に近づく方向に傾斜している。第3突出部14の突出端141は、凸部143のある側から凸部144のある側に向かって基部11に近づく方向に傾斜している。このような構成にしているのは、現像剤収容器2の周方向に対する位置が適切でない場合であっても、現像剤収容器2がこの傾斜に沿って移動(回転)させられて適切な装着位置に導かれるようにするためである。この構成により、現像剤収容器2は突出端131,141の傾斜面の作用により正しい装着位置に案内されるから、利用者にとってはさらに現像剤収容器2を緩衝材1に装着しやすくなる。なお、この傾斜面は突出端全体に設けられていてもよいし、突出端の一部に設けられていてもよい。
【0024】
また、図5に示すように、緩衝材1の外縁部15の外周面は、1組の対向する2辺の外側を向く面の一部が凹んだ形状となっている。梱包箱3は、現像剤収容器2の外形に合わせた構成となっており、現像剤収容器2の寸法に近い細長い形状を成している。このような梱包箱3にはのりしろ部分に厚みが生じるなどして、開口部が厳密な長方形になっていない。緩衝材1のこの凹みは、このような梱包箱3の形状に合わせるために形成されたものであり、この凹みにより緩衝材1がスムーズに梱包箱3に収納される。
【0025】
以上説明したように、現像剤収容器2の装着部21の外周面が接する凸部133,134においては、凸部122からの距離が相違し、且つ凸部133で幅方向の接触範囲が小さく、凸部133の位置での現像剤収容器2の固定が不安定になりやすい。これに対し、第3突出部の凸部133の位置におけるz軸方向の突出量を、凸部134におけるそれよりも大きくなるように形成されているから、凸部133での接触面積が広がり、現像剤収容器2の固定の安定性が増す。よって、緩衝材1の構成上の制約が大きい場合であっても、現像剤収容器2が離脱しにくくなる。これにより、利用者が梱包箱3から現像剤収容器2を取り出すときにも、緩衝材1が梱包箱3の内部で途中に引っ掛かることなく取り出せる。梱包箱3は、緩衝材1と利用者の手とが同時に挿入し得るほど大きく形成されないことがあるが、この場合であっても、利用者が緩衝材1を取り出すのに手間取って作業効率を低下させてしまうこともない。
また、緩衝材1は、図4,5に示すように2方向に装着し得るように構成されており、利用者は現像剤収容器2を緩衝材1に装着しやすい。また、突出端131、141には傾斜面が設けられており、この傾斜に沿って現像剤収容器2が周方向に移動し、適切な装着位置に現像剤収容器2が導かれるので、利用者にとってはさらに現像剤収容器2が装着しやすくなる。
【0026】
[変形例]
本発明は、上述した実施形態と異なる形態で実施し得る。また、以下に示す変形例は、各々を組み合わせてもよい。
[変形例1]
本発明の緩衝材を、図7に示す緩衝材1aとして構成してもよい。図7は、緩衝材1aについて、図3に示すものと同じ方向の装着部及び緩衝材の断面を表す図である。なお、緩衝材1と同一の構成については同じ符号を付して表して、その説明を省略する。また、対応する構成については末尾に「a」という符号を付して表す。
緩衝材1aの第3突出部14aにおいては、凸部143aの位置でのz軸方向への突出量と、凸部144aの位置での基部11からz軸方向への突出量とが同じとなっており、ここでは突出端141aの位置での基部11からの突出量が緩衝材1ほどは大きくない。この場合であっても、現像剤収容器2を基部11から離れる方向に離脱させようとするときに現像剤収容器2と凸部143aとの間に生じる摩擦力を大きくすることにより、現像剤収容器2が緩衝材1から離脱しにくくなる。
【0027】
例えば、凸部143aが第3突出部14aの側壁からさらに外側に突き出るように構成し、現像剤収容器2に対する食い込み量が凸部144aのそれよりも大きくなるようにしてもよい。また、凸部143aの表面粗さを、凸部144aのそれよりも大きくしてもよい。例えば、紙やすりで凸部143aの表面に凹凸を形成すれば摩擦力が高まる。また、凸部143aの表面にウレタンシールを貼付するなど、表面抵抗の高くするような部材を設けてもよい。上述の実施形態のように、凸部143の位置における第3突出部14aのz軸方向への突出量を大きくすれば、その接触領域での摩擦力が大きくなり、緩衝材1が現像剤収容器2から離脱しにくくなるが、これが不可能な事情があったり、これを実施しない場合であっても、上記手法で凸部143aに生じる摩擦力を大きくすれば、実施形態と同等の効果を奏する。また、図7に示すように、緩衝材1aについても、z軸を中心に180度回転させてもその構成が同じとなるようにされているから、現像剤収容器2を2方向で装着し得るように構成されている。
【0028】
[変形例2]
また、緩衝材1aを、図8に示す緩衝材1bに変形してもよい。図8は、緩衝材1bについて、図3に示すものと同じ方向の装着部及び緩衝材の断面を表す図である。なお、緩衝材1aと同一の構成については同じ符号を付して表して、その説明を省略する。また、対応する構成については末尾に「b」という符号を付して表す。
緩衝材1bは、緩衝材1aの第1突出部12bに設けられていた凸部122,123がない構成であり、この側面はほぼ平坦に構成されている。図8に示すように、装着部21の内周面は、第1突出部12bの側壁の角の周辺である角部C1を第1の接触領域として第1突出部12bに接している。角部C1は、第1突出部12bの側面のうち、少なくとも第2突出部13aの方向を向く側面と、この側面に隣接し、第2突出部13aがある方向とは異なる方向を向く側面とのそれぞれ一部を含む。また、緩衝材1bにおいて、角部C1と凸部133aとの距離が角部C1と凸部134aとの距離よりも小さくなっている。角部C1から凸部133a,134aまでのそれぞれの距離については、角部C1に含まれる面のどの位置を基準としてもよいが、例えば、角部C1を構成する隣接する2つの側面の境界部である。
【0029】
そして、緩衝材1bは、装着部21を基部11から離れる方向に離脱させるときに凸部134aに生じる摩擦力が、凸部133に生じる摩擦力よりも大きい。なお、摩擦力の大小に関する原因は変形例1のものと同じである。角部C1は、現像剤収容器2の装着部21の周方向(図8に示す矢印D方向)への回転を抑制する部位であり、この回転の中心となり得る部位である。この回転の中心となり得る角部C1からの距離が大きい凸部134aでの摩擦力を、凸部133aでの摩擦力よりも大きくすることで、この摩擦力の関係が逆である場合や、両方の摩擦力を大きくする場合に比べて以下の作用効果を奏する。緩衝材1bの構成によれば、現像剤収容器2に加わる周方向への力がより大きく作用する凸部134aのおいて、その回転をより効果的に抑えることができるし、また、利用者にとっては現像剤収容器2の緩衝材1bへの装着、及び緩衝材1bからの離脱をスムーズに行いやすくなる。
【0030】
また、緩衝材1bについても、現像剤収容器2をz軸を中心に180度回転させてもその構成が同じとなるようにされており、この場合、第1突出部12bの側壁の角の周辺である角部C2を第4の接触領域として、装着部21の内周面が第1突出部12bに接する。角部C2は、第1突出部12bの側面のうち、少なくとも第3突出部14aの方向を向く側面と、この側面に隣接し、第3突出部14aがある方向とは異なる方向を向く側面とのそれぞれ一部を含む。また、緩衝材1bにおいて、角部C2と凸部143aとの距離が角部C2と凸部144aとの距離よりも小さくなっている。角部C2から凸部143a,144aまでのそれぞれの距離については、角部C2に含まれる面のどの位置を基準としてもよいが、例えば、角部C2を構成する隣接する2つの側面の境界部である。この装着の態様であっても、緩衝材1bにおいて、装着部21を基部11から離れる方向に離脱させるときに凸部144aに生じる摩擦力が凸部143aに生じる摩擦力よりも大きくなるようすることで、上記と同等の作用効果を奏する。
【0031】
[変形例3]
上述の実施形態において、突出端に傾斜を設けない構成としてもよい。また外縁部15の構成は一例に過ぎず、形状や寸法が異なっていてもよいし、外縁部15を設けない構成であってもよい。
また、上述した実施形態では、緩衝材1を、現像剤収容器2を2方向に装着し得る構成にしたことを要因の一つとして、接触領域T1における固定の安定性に欠けると説明した。しかしながら、この2方向の装着に係る構成を採用しない場合であっても、例えば現像剤収容器2の構造を原因として、緩衝材1の突出部の寸法や形状に制約が生じることがあり得る。この場合であっても、上述の実施形態又は変形例で説明した構成を採ることにより、本発明の緩衝材によって現像剤収容器2が安定して固定されるようになる。
【0032】
[変形例4]
また、上述した実施形態では、W1<W2であったが、W1=W2とした場合であっても、L1<L2という関係を満たしていると現像剤収容器2の固定が不安定になりやすいので、この場合も、H1>H2となるように構成すれば、実施形態と同等の効果を奏する。また、W1>W2となる場合や、L1>L2となる場合には、H2>H1となるように構成すればよい。なお、突出端全体をH1,H2に応じた高さにする構成に限らず、少なくとも現像剤収容器2の装着部位と接する位置(例えば、接触領域T1,T2)がこの条件を満たしていれば足りる。
【0033】
[変形例5]
また、上述の実施形態では、L1≠L2であったが、L1=L2としてもよい。この場合、凸部122から凸部143,144への距離の相違を原因とした固定の不安定さは生じないが、W1<W2という関係になっていると、凸部143(接触領域T2)における幅方向に対する接触範囲が小さく、固定が不安定になりやすい。この場合であっても、H1>H2となるように第3突出部14や第2突出部13を構成すれば、実施形態と同等の効果を奏する。また、上述の実施形態では、凸部122及び凸部143,144の距離や、凸部123及び凸部133,134の距離については、接触領域の中心どうしの距離を採用していたが、xy平面方向に対する接触領域どうしの最短距離(つまり、直線距離)を採用してもよいし、接触領域の重心どうしの距離(例えば、装着部21の部材部分の距離や直線距離)を採用してもよく、接触領域のどの位置どうしのどの距離を採用するかについては、種々の構成を採り得る。
【0034】
また、緩衝材1が固定するものは現像剤収容器2に限らない。要するに製品の先端に筒状部材が形成され、この筒状部材に緩衝材を装着する構成であればよく、本発明の緩衝材が保護の対象とする製品は現像剤収容器2に限らない。
また、上述した実施形態における現像剤収容器2と、第1突出部12、第2突出部13及び第3突出部14のそれぞれとの接触箇所の数は一例に過ぎず、例えばさらに接触箇所の数を多くしてもよい。また、緩衝材1を構成する各部は全体が一体成形されていてもよいし、複数の部材を接合して構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0035】
1,1a,1b…緩衝材、11…基部、12…第1突出部、121,131,132,141,142…突出端、122,123,133,134,135,143,144,145…凸部、13…第2突出部、14…第3突出部、15…外縁部、2…現像剤収容器、3…梱包箱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部と、
前記基部から突出する第1の突出部と、
前記第1の突出部を挟む位置で前記基部からそれぞれ突出する第2の突出部及び第3の突出部と
を備え、
固定の対象となる筒状部材の内周面が、前記第2の突出部の側壁から突き出た少なくとも1箇所で接するとともに、前記第1の突出部の側壁から突き出た第1の接触領域に接し、且つ前記筒状部材の外周面が、前記第1の接触領域の法線方向から見て当該第1の接触領域を挟んだ位置にあり、前記第3の突出部の側壁から突き出た接触領域である第2の接触領域及び第3の接触領域に接するよう、当該筒状部材が装着される場合に、
前記第3の突出部において、
前記第1の接触領域と前記第2の接触領域との距離が、前記第1の接触領域と前記第3の接触領域との距離よりも小さく、且つ前記第2の接触領域における突出方向の長さが、前記第3の接触領域における前記突出方向の長さよりも大きい
ことを特徴とする緩衝材。
【請求項2】
前記筒状部材の内周面が、前記第3の突出部の側壁から突き出た少なくとも1箇所で接するとともに、前記第1の突出部の側壁から突き出た第4の接触領域に接し、且つ当該筒状部材の外周面が、前記第4の接触領域の法線方向から見て当該第4の接触領域を挟んだ位置にあり、前記第2の突出部の側壁から突き出た接触領域である第5の接触領域及び第6の接触領域にて前記第2の突出部の側壁に接するよう、当該筒状部材が装着される場合に、
前記第2の突出部において、
前記第4の接触領域と前記第5の接触領域との距離が、前記第4の接触領域と前記第6の接触領域との距離よりも小さく、且つ前記第5の接触領域における突出方向の長さが、前記第6の接触領域における前記突出方向の長さよりも大きい
ことを特徴とする請求項1に記載の緩衝材。
【請求項3】
基部と、
前記基部から突出する第1の突出部と、
前記第1の突出部を挟む位置で前記基部からそれぞれ突出する第2の突出部及び第3の突出部と
を備え、
固定の対象となる筒状部材の内周面が、前記第2の突出部の側壁から突き出た少なくとも1箇所で接するとともに前記第1の突出部の側壁から突き出た第1の接触領域に接し、且つ当該筒状部材の外周面が、前記第1の接触領域の法線方向から見て当該第1の接触領域を挟んだ位置にあり、前記第3の突出部の側壁から突き出た接触領域である第2の接触領域及び第3の接触領域にて前記第3の突出部の側壁に接するよう、当該筒状部材が装着される場合に、
前記第3の突出部において、
前記第1の接触領域と前記第2の接触領域との距離が、前記第1の接触領域と前記第3の接触領域との距離よりも小さく、且つ前記筒状部材を前記基部から離れる方向に離脱させるときに前記第2の接触領域に生じる摩擦力が、前記第3の接触領域に生じる当該摩擦力よりも大きい
ことを特徴とする緩衝材。
【請求項4】
前記筒状部材の内周面が、前記第3の突出部の側壁から突き出た少なくとも1箇所で接するとともに前記第1の突出部の側壁から突き出た第4の接触領域に接し、且つ当該筒状部材の外周面が、前記第4の接触領域の法線方向から見て当該第4の接触領域を挟んだ位置にあり、前記第2の突出部の側壁から突き出た接触領域である第5の接触領域及び第6の接触領域にて前記第2の突出部の側壁に接するよう、当該筒状部材が装着される場合に、
前記第2の突出部において、
前記第4の接触領域と前記第5の接触領域との距離が、前記第4の接触領域と前記第6の接触領域との距離よりも小さく、且つ前記筒状部材を前記基部から離れる方向に離脱させるときに前記第5の接触領域に生じる摩擦力が、前記第6の接触領域に生じる当該摩擦力よりも大きい
ことを特徴とする請求項3に記載の緩衝材。
【請求項5】
前記第1の突出部は、前記第5の接触領域のある側から前記第6の接触領域のある側に向かって前記基部に近づく方向に傾斜する面を突出端に有しており、
前記第3の突出部は、前記第2の接触領域のある側から前記第3の接触領域のある側に向かって前記基部に近づく方向に傾斜する面を突出端に有している
ことを特徴とする請求項2又は4に記載の緩衝材。
【請求項6】
基部と、
前記基部から突出する第1の突出部と、
前記第1の突出部を挟む位置で前記基部からそれぞれ突出する第2の突出部及び第3の突出部と
を備え、
固定の対象となる筒状部材の内周面が、前記第2の突出部の側壁から突き出た少なくとも1箇所で接するとともに、前記第1の突出部の側壁の角部である第1の接触領域に接しており、且つ当該筒状部材の外周面が、前記第3の突出部の側壁から突き出た接触領域である第2の接触領域及び第3の接触領域にて前記第3の突出部の側壁に接するよう、当該筒状部材が装着される場合に、
前記第3の突出部において、
前記第1の接触領域と前記第2の接触領域との距離が、前記第1の接触領域と前記第3の接触領域との距離よりも小さく、且つ前記筒状部材を前記基部から離れる方向に離脱させるときに前記第3の接触領域に生じる摩擦力が、前記第2の接触領域に生じる当該摩擦力よりも大きい
ことを特徴とする緩衝材。
【請求項7】
前記筒状部材の内周面が、前記第3の突出部の側壁から突き出た少なくとも1箇所で接するとともに、前記第1の突出部の側壁の角部である第4の接触領域に接しており、且つ当該筒状部材の外周面が、前記第1の突出部の側壁から突き出た接触領域である第5の接触領域及び第6の接触領域にて前記第1の突出部の側壁に接するよう、当該筒状部材が装着される場合に、
前記第1の突出部において、
前記第4の接触領域と前記第5の接触領域との距離が、前記第4の接触領域と前記第6の接触領域との距離よりも小さく、且つ前記筒状部材を前記基部から離れる方向に離脱させるときに前記第6の接触領域に生じる摩擦力が、前記第5の接触領域に生じる当該摩擦力よりも大きい
ことを特徴とする請求項6に記載の緩衝材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−68390(P2011−68390A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−220802(P2009−220802)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】