説明

緩衝装置及び緩衝装置付き車両

【課題】車体と座席との間に介在させて座席に伝播する衝撃を好適に緩和、抑制することのできる緩衝装置を提供する。
【解決手段】伸縮リンク機構4を介して上下方向に相対移動可能に連結された上部フレーム2と下部フレーム3とを有し、その両フレーム2,3の間にバネ部材5が介在された緩衝装置である。上部フレーム2と下部フレーム3との間には屈伸リンク6が介在される。屈伸リンク6は、上部フレーム2に一端が回転可能に結合されたリンク61と、下部フレーム3に一端が回転可能に結合されたリンク62とを連接して成る。下部フレーム3と屈伸リンク6は、当該屈伸リンク6の屈伸動作に連動して伸縮するショックアブソーバ7により連結されている。ショックアブソーバ7は、その一端部が取付部73として下部フレーム3に回転可能に結合され、他の一端部がリンク61,62の連接部分63に回転可能に結合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝装置に係わり、特に車室内の座席を支持して走行振動などに起因する衝撃が搭乗者に伝播することを抑制することのできる緩衝装置と同緩衝装置を備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の座席に伝播する衝撃を緩和する緩衝装置として、上下一対のフレームを伸縮自在なリンク機構により連結し、更にその両フレーム間にショックアブソーバを架設した構造のものが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−11607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1などに開示される従来の座席用緩衝装置(シートサスペンション装置)は、上下一対のフレームに対し、ショックアブソーバの両端を直結した構造であるから、例えばその種の装置を装備した車両が悪路を走行している場合において、車体に振幅の大きな振動が一時的に加わると、これによる衝撃がショックアブソーバの軸方向に高速で作用し、ショックアブソーバのピストンヘッドに作動流体圧が急激に作用する結果、ショックアブソーバが凝り固まって、その緩衝機能が損なわれることになる。
【0005】
つまり、ショックアブソーバが無伸縮の剛直体と化してしまうこととなり、これにより車体に加わった振動に起因する衝撃が緩和されず、ショックアブソーバを介して座席に伝播してしまうという問題があった。
【0006】
又、低速で走行中の車両が段差に乗り上げるなどして大振幅の振動が作用した場合、ショックアブソーバが縮小しつつ、座席を取り付けた上部フレームが急速降下して下部フレームに激突し、これによる衝撃が座席に直接伝わってしまうこともあった。
【0007】
本発明は以上のような事情に鑑みて成されたものであり、その目的は車体と座席との間に介在させて座席に伝播する衝撃を好適に緩和、抑制することのできる緩衝装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するため、
伸縮リンク機構を介して上下方向に相対移動可能に連結された上部フレームと下部フレームとを有し、その両フレームの間に前記上部フレームを弾性支持するバネ部材が介在された緩衝装置において、
前記上部フレームと下部フレームとの間に介在し、その両フレームの上下方向への相対移動に際して屈伸する屈伸リンクを有し、
前記屈伸リンクは、前記上部フレームに一端が回転可能に結合された第1のリンクと、前記下部フレームに一端が回転可能に結合された第2のリンクとを連接して成り、
前記上部フレーム及び下部フレームのいずれか一方と前記屈伸リンクは、当該屈伸リンクの屈伸動作に連動して伸縮するショックアブソーバにより連結され、
前記ショックアブソーバは、その一端部が取付部として前記上部フレーム及び下部フレームのいずれか一方に回転可能に結合されると共に、他の一端部が前記第1、第2のリンクの連接部分に回転可能に結合され、前記屈伸リンクの屈伸時に前記取付部を中心に上下方向に揺動しながら伸縮することを特徴とする。
【0009】
又、本発明は、上記のように構成される緩衝装置をシートクッションとして座席の下部に設けた車両であり、
前記下部フレームが前記座席の下方に位置する車体に固定され、前記上部フレームに対して前記座席が固定されていることを特徴とする緩衝装置付き車両を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る緩衝装置によれば、第1のリンクと第2のリンクとを連接してなる屈伸リンクにより上部フレームと下部フレームとを連結し、そのいずれか一方と第1、第2のリンクの連接部分とをショックアブソーバにより連結した構成としていることから、下部フレームから上部フレームへ伝播する衝撃を屈伸リンクの屈伸動作に連動して伸縮するショックアブソーバにより良好に緩和することができる。
【0011】
又、係る緩衝装置をシートクッションとして車体と座席の下部との間に設けた車両によれば、走行振動に起因する衝撃が座席に伝播することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る緩衝装置を示す平面図
【図2】図1のX−X断面図
【図3】下部フレームの平面図
【図4】本発明に係る緩衝装置の動作説明図
【図5】ショックアブソーバの伸縮量と上部フレームの変位量との関係を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づいて本発明を詳しく説明する。図1は本発明に係る緩衝装置の実施形態を示した平面図であり、図2に図1のX−X断面を示す。図1および図2において、1は係る緩衝装置を構成するフレームであり、このフレーム1は図2から明らかなように上部フレーム2と下部フレーム3とにより構成されている。尚、図3は上部フレーム2を省略した下部フレーム3の平面を示している。
【0014】
図1および図3から明らかなように、上部フレーム2および下部フレーム3は、矩形の枠体21,31内に固定軸22,32を架設するなどして構成されている。このうち、上部フレーム2を構成する枠体21は、その前後縁をなす前縁部材21aと後縁部材21b、および前縁部材21aと後縁部材21bの両端間に架設された左右一対の側縁部材21c,21dからなり、その側縁部材21c,21dによりこれと直交する固定軸22の両端が支持されている。尚、固定軸22は前縁部材21aに近接して枠体21に固着されている。
【0015】
又、上部フレーム2の枠体21を構成する側縁部材21c,21dには、その各両端において左右方向に張り出すブラケット23が固着されており、それらブラケット23に対し、図示せぬ車両の座席がボルトにより締結される構成とされている。
【0016】
一方、下部フレーム3を構成する枠体31は、図3に示すように前縁部材31aと後縁部材31b、および前縁部材31aと後縁部材31bの両端間に架設された左右一対の側縁部材31c,31dからなり、その側縁部材31c,31dにより固定軸32の両端が支持されている。尚、固定軸32は前縁部材31aに近接して枠体31に固着されている。
【0017】
又、下部フレーム3の枠体31を構成する側縁部材31c,31dにも、その各両端において左右方向に張り出すブラケット33が固着されており、それらブラケット33が車体(座席下のボディー床)にボルトで締結されることにより、車体に対して下部フレーム3が固定されるようになっている。
【0018】
ここに、以上のように構成される上部フレーム2と下部フレーム3は、伸縮リンク機構4を介して上下方向に相対移動可能に連結されている。伸縮リンク機構4は、上部フレーム2と下部フレーム3との内側において、その左右両側に配した2組のクロスリンク41からなる伸縮構造物であり、それらクロスリンク41は長さが同じ一対のリンクアーム41a,41bの中心をピン接合することにより構成されている。このうち、相対向するリンクアーム41a,41aは、その各一端が上部フレーム2の固定軸22に対して回転可能に結合され、他の各一端が固定軸22に平行する可動軸43により連結されている。又、リンクアーム41a,41aに交差するリンクアーム41b,41bは、その各一端が下部フレーム3の固定軸32に対して回転可能に結合され、他の各一端が固定軸32に平行する可動軸44により連結されている。
【0019】
尚、図2から明らかなように、枠体21,31を構成する前縁部材21a,31a、後縁部材21b,31b、ならびに側縁部材21c,21d,31c,31dは、コ字形の断面を有する溝型鋼からなり、このうち側縁部材21c,21d,31c,31dの内側は上記可動軸43,44の両端を移動可能に支持するガイド溝Gとされている。又、可動軸43,44の両端には、それぞれガイド溝G内で転動するローラRが取り付けられている。しかして、上記のような伸縮リンク機構4により、上部フレーム2と下部フレーム3が平行状態を保って上下方向に相対移動可能(下部フレーム3に対して上部フレーム2が昇降可能)とされている。
【0020】
又、図1および図3に示されるように、上部フレーム2と下部フレーム3との間には、上部フレーム2を弾性支持するバネ部材5が介在されている。このバネ部材5は、上部フレーム2の自然降下を防止すると共に、衝撃荷重などを受けて降下した上部フレーム2を上方位置に復帰させるための働きをする弾性体(本例において空気バネ)であり、その下端は下部フレーム3に固着した座板34により支持され、上端は上部フレーム2に固着した天板24に弾接している。
【0021】
加えて、図2から明らかなように、上部フレーム2と下部フレーム3は屈伸リンク6を介して連結され、その屈伸リンク6と下部フレーム3がショックアブソーバ7により連結されている。
【0022】
屈伸リンク6は、2つのリンク61,62の一端同士を枢軸63により連接した構成であり、その両リンク61,62のうち、リンク61の他の一端は上部フレーム2の部位(天板24に固着したブラケット25)に回転自在に結合され、リンク62の他の一端は下部フレーム3の部位(後縁部材31bに固着したブラケット35の先端)に回転可能に結合されている。そして、係る屈伸リンク6は、下部フレーム3に対する上部フレーム2の昇降動作に連動して屈伸する。
【0023】
一方、ショックアブソーバ7は、シリンダ胴71とピストンロッド72とを有して成るダンパであり、シリンダ胴71の内部には作動流体としてオイルが充填されている。本例において、係るショップアブソーバ7は両端クレビス形であり、その一端部(ボトム側)は取付部73として下部フレーム3の部位(固定軸32に固着したブラケット36)に回転可能に結合され、他の一端部(ヘッド側)はリンク61,62の連接部分(枢軸63)に回転自在に結合されている。
【0024】
ここで、以上のように構成される緩衝装置の作用について説明すると、係る緩衝装置は例えばシートクッションとして車両の座席の下部に設けられ、上記のように上部フレーム2には車両の座席が取り付けられ、下部フレーム3は車体に固定される。そして、係る緩衝装置を装備した車両が悪路を走行したり、段差に乗り上げたりした場合、上部フレーム2はその際の衝撃荷重を受けて図4(b)に示す位置を基準に、同図(a)、(c)のように上下方向に振動する。このとき、屈伸リンク6は、上部フレーム2と下部フレーム3との間隔の変化に応じて屈伸し、その屈伸動作に連動してショックアブソーバ7が取付部73を中心に上下方向に揺動しながら伸縮する。特に、屈伸リンク6の屈伸動作により、単位時間当たりの上部フレーム2の変位量に対し、ショックアブソーバ7のストローク変化量(枢軸63と取付部73との距離の変化量)は図5のように小さくなる。換言すると、上部フレーム2の移動速度に比し、ショックアブソーバの伸縮速度が遅くなる。このため、車体から下部フレーム3に対して衝撃荷重が高速で作用した場合でも、ショックアブソーバ7が凝り固まりことなく伸縮し、これによって上部フレーム3に伝わる衝撃が緩和されることになる。
【0025】
以上、本発明に係る緩衝装置の実施形態を説明したが、ショックアブソーバ7はその一端部(取付部73)を下部フレーム3に結合することに限らず、上部フレーム2に結合するようにしてもよい。又、下部フレーム3あるいは上部フレーム2に結合される一端部(取付部73)は、ボトム側であることに限らず、ヘッド側でもよい。
【0026】
加えて、係る緩衝装置はシートクッションとして車両の座席下部に設けるほか、種々の構成部材間に介在させて上部フレーム2に伝わる衝撃を緩和することができる。
【符号の説明】
【0027】
2 上部フレーム
3 下部フレーム
4 伸縮リンク機構
5 バネ部材
6 屈伸リンク
61 第1のリンク
62 第2のリンク
63 枢軸(第1、第2のリンクの連接部分)
7 ショックアブソーバ
73 取付部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮リンク機構を介して上下方向に相対移動可能に連結された上部フレームと下部フレームとを有し、その両フレームの間に前記上部フレームを弾性支持するバネ部材が介在された緩衝装置において、
前記上部フレームと下部フレームとの間に介在し、その両フレームの上下方向への相対移動に際して屈伸する屈伸リンクを有し、
前記屈伸リンクは、前記上部フレームに一端が回転可能に結合された第1のリンクと、前記下部フレームに一端が回転可能に結合された第2のリンクとを連接して成り、
前記上部フレーム及び下部フレームのいずれか一方と前記屈伸リンクは、当該屈伸リンクの屈伸動作に連動して伸縮するショックアブソーバにより連結され、
前記ショックアブソーバは、その一端部が取付部として前記上部フレーム及び下部フレームのいずれか一方に回転可能に結合されると共に、他の一端部が前記第1、第2のリンクの連接部分に回転可能に結合され、前記屈伸リンクの屈伸時に前記取付部を中心に上下方向に揺動しながら伸縮することを特徴とする緩衝装置。
【請求項2】
請求項1記載の緩衝装置をシートクッションとして座席の下部に設けた車両であり、
前記下部フレームが前記座席の下方に位置する車体に固定され、前記上部フレームに対して前記座席が固定されていることを特徴とする緩衝装置付き車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−158284(P2012−158284A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20523(P2011−20523)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(500465570)
【Fターム(参考)】