説明

緩衝装置

【課題】折戸の閉じ際における制動力の働く時間及びタイミングを、ダンパに何ら変更を加えることなく適切に設定できるようにする。
【解決手段】緩衝装置60は一方の戸板の他方の戸板との連結端部に取り付けられる第1取付部材61と他方の戸板の一方の戸板との連結端部に取り付けられる第2取付部材62と両取付部材61、62を互いに回動自在に連結するヒンジ部63と制動機構70とを備える。両取付部材61、62は、互いに同一形状且つ同一寸法で同一金属材料からなる取付金具80と、各々の取付金具80に嵌合して一体的に固定される構造の相異なる樹脂製の第1ベース部材91、92を備える。制動機構70は、第2ベース部材92に保持されており、第1ベース部材91に押圧されることにより、その反発力によって折戸10の急激な回動を制動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シンクキャビネットや吊り戸棚等の建具或いは食器棚、書棚等の家具などに装備される折戸の緩衝装置に関し、より詳細には、折戸を閉める際の戸板相互の急激な回動を制動する緩衝装置に関する。
【背景技術】
【0002】
折戸は、少なくとも二つの戸板を備え、相隣り合う戸板同士を蝶番を介して互いに水平方向に回動自在に連結するとともに、戸板の上端部をその上方に敷かれたレールにランナーを介して移動自在に支持することにより、戸板相互が回動しながら開閉する構造になっている。
【0003】
このように折戸は戸板相互が回動しながら開閉する構造上、閉めた時に戸板が左右の戸枠に当接するとともに戸板相互の木口面同士が当接する。このため折戸を閉めた際に戸板が最後まで急激に回動すると大きな衝撃音や振動が発生する。この衝撃が折戸や戸枠に繰り返し加わることが部品の損傷や劣化を早める原因となる。また一旦最後まで閉まった戸板が衝撃により跳ね返り、戸板相互が折れ曲がった姿態で半閉まり状態になるという折戸特有の問題もある。この種の問題を解決するには、折戸を閉める際の戸板相互の急激な回動を制動することが有効である。
【0004】
従来、戸板の閉め際における急激な回動を制動する技術として、蝶番を介して戸板(扉)を取り付けた戸枠(框)の内側側面部に、戸板(扉)の木口面に当接して戸板(扉)の回動を制動する力を及ぼすダンパを埋設したものが知られている。この種のダンパは、戸枠(框)に埋設されたシリンダ内に、戸枠(框)の内側側面から出没するピストンとこれを常時突出させる側に付勢する復元ばねとを備え、戸板(扉)が完全に閉まる寸前に戸板(扉)の木口面がピストンに当接し、復元ばねの反発力に抗してピストンが押されることにより、復元ばねの反発力をピストンを介して戸板(扉)に作用させる。(特許文献1)
【0005】
しかし、戸枠(框)に埋設されているダンパ装置のピストンに戸板(扉)の木口面を当接させることにより戸板(扉)の閉め際における急激な回動を制動するようにしているため、戸板(扉)の極閉め際すなわち戸板(扉)が完全に閉じられる寸前にならなければ、ダンパによる制動力を戸板(扉)に作用させることができない。ダンパによる制動力が働くタイミングをより早めるためには、戸枠(框)の内側側面からのピストンの突出長を大きくし、ストロークも大きくする必要がある。これはより長寸のダンパが必要になることを意味し、それに合わせてダンパを埋設するための取付孔もより大きくする必要が生じる。
【0006】
そこで、本出願人は、図13に示す緩衝装置を開発した。この緩衝装置100は、折戸の閉じ際における戸板11、12相互の急激な回動を制動するべく折戸の背面に取り付けられるものであり、一方の戸板11の取付穴11aに嵌付けて螺子で固定される第1の取付金具101と、他方の戸板12の取付穴12aに嵌付けて螺子で固定される第2の取付金具102と、両取付金具101、102を互いに回動自在に連結しているヒンジ部103と、両取付金具101、102相互の回動を制動するべく一方の取付金具101、102に設けられた制動機構部104と、を備えている。制動機構部104は、水平方向に圧縮され反発するダンパ(図7参照)と、ダンパに装着された当接部材105と、を備え、当接部材105が折戸の閉じ際における両取付金具101、102相互の回動に伴って一方の取付金具101に押圧されることによりダンパが圧縮されるように構成されている。この緩衝装置100によれば、折戸の閉じ際における制動力の働く時間及びタイミングを、使用するダンパを長寸化することなく適切に設定することができる。
【特許文献1】実開昭53−16661号(実公昭57−11112号)公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図13の緩衝装置が備えている第1の取付金具101と第2の取付金具102は構造が互いに異なっているため、この緩衝装置100を製造するためには、構造が互いに異なる二種類の取付金具101、102を用意する必要があり、同一構造の取付金具をできる場合と比較して緩衝装置の製造コスト、部品管理効率等の面で不利である。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、折戸の閉じ際における制動力の働く時間及びタイミングを適切に設定できる緩衝装置を、使用するダンパを長寸化することなく且つ使用する部品の種類の数を削減しつつ実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の緩衝装置は、一対の戸板を互いに水平回動自在(水平方向すなわち左右に回動自在)に連結してなる折戸の閉じ際における戸板相互の急激な回動を制動するべく折戸の背面に取り付けられる緩衝装置であって、前記一対の戸板のうち一方の戸板の他方の戸板との連結端部に埋設して取り付けられる第1取付部材と、前記一対の戸板のうち他方の戸板の一方の戸板との連結端部に埋設して取り付けられる第2取付部材と、両取付部材を互いに回動自在に連結しているヒンジ部と、両取付部材相互の回動を制動するべく一方の取付部材に設けられた制動機構と、を備え、前記制動機構は、使用時に水平方向に圧縮され反発するダンパと、ダンパに装着された当接部材と、を備え、前記第1取付部材および前記第2取付部材は互いに同一形状且つ同一寸法で同一材料からなる共通部材(例えば金属部材)を各々備え、当該共通部材は戸板に締着される部材であり、前記第1取付部材は、その共通部材に嵌合して一体的に固定される第1ベース部材(例えば樹脂製の部材)を備え、前記第2取付部材は、その共通部材に嵌合して一体的に固定される第2ベース部材(例えば樹脂製の部材)を備え、一方のベース部材は、前記当接部材を進退移動可能に案内しつつ前記ダンパを保持しているダンパ保持部を備え、前記当接部材は、前記ダンパが伸縮することにより進退移動し且つその先端部が他方のベース部材に当接する部材であり、当該当接部材が折戸の閉じ際における両取付部材相互の回動に伴って当該他方のベース部材に押圧されることにより前記ダンパが圧縮されるように構成されている。
【0010】
本発明の緩衝装置において、前記他方のベース部材には、両取付部材相互を折戸を開く側に回動させて折り畳んだときに前記ダンパ保持部の前記一方の取付部材の共通部材から突出している部分を受け入れる凹部が形成されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、折戸の閉じ際における制動力の働く時間及びタイミングを、使用するダンパを長寸化することなく適切に設定できる緩衝装置を提供することができる。この緩衝装置は、両取付部材の取付金具として、互いに同一形状且つ同一寸法で同一材料からなる共通部材を使用するので、形状、寸法、材料のいずれかが異なる取付部材を使用する場合と比較して、使用する部品の種類の数を削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0013】
図1は本発明に係る折戸装置の背面図である。図2、図3、図4は本発明の緩衝装置の全体斜視図である。図5(a)〜(e)はそれぞれ本発明の緩衝装置の正面図、左側面図、右側面図、平面図、下面図である。図6は本発明の緩衝装置の背面図、図7は図5(a)中のA−A線に沿って切断した断面を示す概略断面図である。図8は本発明の緩衝装置の分解斜視図、図9は本発明の緩衝装置の分解平面図である。図10は本発明の緩衝装置とこれを取り付けるべく戸板に形成された取付穴とを示した斜視図である。
【0014】
折戸装置1は、左右一対の戸板11、12を蝶番21、22、23により水平方向に互いに回動自在に連結してなる折戸10と、折戸10の上方に敷かれたレール30と、折戸10をレール30に吊り下げた状態でレール30に沿って移動自在に支持しているランナー41、42と、レール30が取り付けられた矩形状の戸枠50と、折戸10の閉じ際における戸板11、12相互の急激な回動を制動すべく装備された緩衝装置60とを備えている。蝶番21、22、23は、折戸用の蝶番として広く用いられている公知の蝶番である。蝶番21、22、23は、いわゆるキャッチ機構を備えており、折戸10を閉じる際に両戸板11、12相互間の角度が略125度以上になると、そのキャッチ機構が作動して、折戸10を強制的に全閉状態に誘導する。緩衝装置60は、図1の例では、三つの蝶番21、22、23のうち最も高い位置に設けられた蝶番21と折戸10の上端縁との中間位置に設けられている。
【0015】
緩衝装置60は、一対の戸板11、12のうち一方の戸板11の他方の戸板12との連結端部に取り付けられる第1取付部材61と、他方の戸板12の一方の戸板11との連結端部に取り付けられる第2取付部材62と、両取付部材61、62を互いに回動自在に連結するヒンジ部63と、取付部材61、62相互の回動を制動するべく第2取付部材62に設けられた制動機構70と、を備えている。
【0016】
第1取付部材61および第2取付部材62は互いに同一形状且つ同一寸法で同一金属材料からなる取付金具(共通部材)80を各々備えている。取付金具80は戸板11、12に螺子(図示省略)で締着される金属板加工品である。取付金具80は、各戸板11、12に形成された取付穴11a、12a内に収められる手前に開いた断面コ字形の金具本体81aと、部材本体81aの開放端縁部から上下方向に耳状に張り出したフランジ部81b、81cと、上下一対の軸受部81e、81fからなる。各フランジ部81b、81cにはそれぞれ螺子孔81dが形成されている。
【0017】
第1取付部材61は、その取付金具80に嵌合して一体的に固定される樹脂製の第1ベース部材91を備えている。第1ベース部材91は、戸板11の取付穴11aに嵌め付けられる略円形状の部材である。第1ベース部材91には、取付金具80と嵌合するように形成された切欠部91aと、取付金具80と完全に嵌合したときに金具本体81aの端縁に係合して取付金具80からの離脱を防止する係止爪部91bとが形成されている。
【0018】
第2取付部材62は、その取付金具80に嵌合して一体的に固定される樹脂製の第2ベース部材92を備えている。第2ベース部材92は、戸板12の取付穴12aに嵌め付けられる略円形状の部材である。第2ベース部材92には、取付金具80と嵌合するように形成された切欠部92aと、取付金具80と完全に嵌合したときに金具本体81aの端縁に係合して取付金具80からの離脱を防止する係止爪部92bとが形成されている。
【0019】
第1取付部材61は、第1ベース部材91を戸板11の取付穴11aに嵌合させた状態でその取付金具80の各螺子孔81dに螺子を通して締め付けることにより、戸板11に固定されている。第2取付部材62は、第2ベース部材92を戸板12の取付穴12aに嵌合させた状態でその取付金具80の各螺子孔81dに螺子を通して締め付けることにより、戸板12に固定されている。
【0020】
ヒンジ部63は、第1取付部材61側の取付金具80に形成された上下一対の軸受部81e、81fと、第2取付部材62側の取付金具80に形成された上下一対の軸受部81e、81fとを、軸孔が連通するように互い違いに重ね合わせた状態で両取付金具80の上側の軸受部81e、81f同士、下側の軸受部81f、81e同士を、それぞれヒンジ軸63a、63bで連結することにより、両取付部材61、62を互いに回動自在に連結している。
【0021】
この例では、第1ベース部材91および第2ベース部材92にもそれぞれ上下一対の軸受部91c、91d及び92c、92dが形成されている。そして、これらの軸受部91c、91d及び92c、92dも、取付金具80の軸受部81e、81fとともにヒンジ軸63a、63bで連結されている。この例では、第1ベース部材91の両軸受部91c、91dは、取付金具80の軸受部81e、81fの外側に重なるように両者の間隔が選定されている。また、第2ベース部材92の両軸受部92c、92dは、取付金具80の軸受部81e、81fの内側に重なるように両者の間隔が選定されている。
【0022】
制動機構70は、水平方向に圧縮され反発するダンパ71と、ダンパ71に装着された当接部材73とを備えている。
【0023】
ダンパ71は、円柱形状のダンパ本体71aと、ダンパ本体71aの端部から突出し水平方向に進退移動するダンパピン(出力軸)71bとを備えている(図7参照)。ダンパ71の本体71a内には、ダンパ71に対しこれを圧縮する向き、すなわちダンパピン71bを本体71a側に押し込む向きに作用する力に抗して反発力を発生する図示しないコイルばね(弾性体)と、ダンパピン71bの急激な動きを緩衝する図示しないオイルダンパ(緩衝体)とが内蔵されている。
【0024】
第2ベース部材92には、制動機構70を収容する収容部(ダンパ保持部)72が形成されている。収容部72は、水平方向に延びる円筒状の側壁に囲まれた収容空間を有している。収容部72の第1取付部材61と重なり合う側の側壁は、第2ベース部材92の基部からドーム状に膨出している。収容部72の両端部72a、72bは開口しており、第1取付部材61に臨む端側の開口端部72aから収容空間内に制動機構70が挿入されている。
【0025】
収容部72のもう一方の開口端部72bはダンパ保持位置調節用キャップ72eにより閉塞されている。収容部72のキャップ72eが装着される部分は他の部分よりも太くなっておりその部分の内壁には、雌ねじ部72dが形成されている。一方、キャップ72eの胴部外周部には雄ねじ部72fが形成されており、この雄ねじ部72fを収容部72の雌ねじ部72dに螺合させることにより、収容部72の開口端部72bにキャップ72eが装着されている。キャップ72eの外側端にはこれを閉塞する円板状の端板部72gが形成されている。端板部72gの外周縁部はキャップ72eの胴部よりも若干外方に張り出しており、その部分に滑り止め用の凹凸を設けることにより摘み部72hが形成されている。この摘み部72hを指で摘んでキャップ72eを回転させて、収容部72に対するキャップ72eのねじ込み量を調節することにより、制動機構70の水平方向における保持位置を微調節できるようになっている。すなわち、収容部72の内壁に形成された雌ねじ部72dとこれに螺合しているキャップ72eとによりダンパ保持位置調節機構が構成され、キャップ72eのねじ込み量をより大きくすることにより、制動機構70の保持位置を第1取付部材61により近い位置に変位させることができ、反対に、キャップ72eのねじ込み量を小さくすれば、制動機構70の保持位置を第1取付部材61からより遠い位置に変位させることができるようになっている。
【0026】
第1取付部材61には、両取付部材61、62相互を折戸10を開く側に回動させて折り畳んだときに収容部72と当接部材73を受け入れる凹部91eが形成されている。
【0027】
当接部材73は、ダンパ本体71aにダンパピン71bとは反対側から被せて取り付けられた、先端部が閉塞されたキャップ状の部材である。ダンパ本体71aは、当接部材73内に完全に収容されている。当接部材73は、収容部72内に水平方向にスライド可能に挿入され、ダンパ本体71aを収容した状態でこれと一体となって移動する。当接部材73の基端部すなわちダンパピン71bがある側の端部は、ダンパ保持位置調節機構を構成しているキャップ72eの内部に摺動可能に挿入されている。ダンパピン71bは当接部材73の基端から突出しており、その突端がキャップ72eの端板部72g内面に当節している。
【0028】
当接部材73は、折戸10が閉じられる際の所定のタイミングで第1ベース部材91の第2取付部材62側の側縁部91fに当接するように、その先端部73aの形状及び寸法が選定されている。そして、当接部材73が折戸10の閉じ際における両取付部材61、62相互の回動に伴って第1ベース部材91に押圧されてダンパ本体71aとともにキャップ72e側に移動することにより、当接部材73とキャップ72eとの間でダンパ71が圧縮されるようになっている。折戸10が完全に閉じられたとき、ダンパ71は最も圧縮された状態になる。このときダンパピン71bは、当接部材73内にほぼ完全に埋没した状態になる。
【0029】
当接部材73の背面側の先端近傍には一対のガイド突起73c、73dが上下に張り出して形成されている。一方、第2ベース部材92には、ガイド突起73c、73dを受け入れて水平方向にスライド可能に案内するガイド溝(図示省略)が形成されている。ガイド突起73c、73dがガイド溝(図示省略)に案内されることにより、当接部材73の第2ベース部材92に対する回動及びがたつきが防止される。
【0030】
また、当接部材73の前面部には小突起73eが形成されている。一方、収容部72には水平方向(当接部材73の摺動方向)に延びる長孔73iが、収容部72の壁を貫通させて形成されている。当接部材73の小突起73eは、収容部72の長孔73i内に位置しており、長孔73iを通して収容部72の外部から視認可能である。すなわち、この突起73eの位置によって制動機構70の保持位置を概ね確認できるようになっている。また、突起73eが長孔73iの先端側端部に当接することにより、当接部材73の抜けを防止している。
【0031】
図11は折戸装置1の開閉時における一連の状態を示す部分斜視図、図12は同じく部分平面図である。図11および図12において、(a)は折戸10が全開の状態であり、この状態から折戸10を閉める際、(b)および(c)の状態を経て、(d)の状態すなわち折戸10の折曲角度が略125度になった時点で、蝶番21、22、23のキャッチ機構が作動し、その働きにより折戸10が強制的に(e)の状態すなわち全閉状態まで誘導される。その際、蝶番21、22、23のキャッチ機構の作動開始後から折戸10が全閉状態になるまでの間の所定のタイミングで、制動機構70による制動力が効き始める。これにより、折戸10は閉め際における両戸板11、12相互の急激な回動が制動されつつ、全閉状態まで静かに誘導される。
【0032】
上記のように構成された緩衝装置60は、折戸10の閉じ際における制動力の働く時間及びタイミングを、使用するダンパ71を長寸化することなく適切に設定できる。すなわちこの緩衝装置60は、水平方向に圧縮され反発するダンパ71を第2取付部材62側に装備し、ダンパ71に装着された当接部材73が折戸10の閉じ際における両取付部材61、62相互の回動に伴って第1取付部材61の側縁部91fに押圧されてダンパ本体71aとともに移動することによりダンパ71が圧縮され、その反発力によって折戸10の閉じ際における急激な回動を制動するように構成されているため、当接部材73の形状・寸法、当接部材73と第1取付部材61の側縁部91fとの互いの位置関係、ダンパ71の水平方向における保持位置などを適宜選定することにより、ダンパ71には何らの変更も加えることなく、制動力の働く時間及びタイミングを適切に設定することができる。
【0033】
また、収容部72へのキャップ72eのねじ込み量を調節することによりダンパ71の水平方向における保持位置を微調節できるので、緩衝装置60を折戸10に取り付けた後においても、制動力の働く時間及びタイミングを微調節することができる。
【0034】
また、この緩衝装置60は、両取付部材の取付金具として、互いに同一形状且つ同一寸法で同一金属材料からなる取付金具80を使用しているので、形状、寸法、金属材料のいずれかが異なる取付金具を使用する場合と比較して、使用する金属部品の種類の数を削減することができる。
【0035】
また、この緩衝装置60の両取付部材61、62の形状・寸法を蝶番21〜23の両取付部材の形状・寸法と一致させておけば、蝶番21〜23を折戸10に取り付けるための穴加工と全く同じ加工処理により緩衝装置60用の取付穴11a、12aを形成することができるので、折戸装置1の製造に要する工数及びコストを削減することができる。これに対し前述の従来技術では、ダンパを取り付けるための取付穴の形状・寸法が蝶番を取り付けるための取付穴の形状・寸法と異なるため、ダンパを取り付けるために蝶番用の取付穴とは異なる穴加工処理を別途実施する必要があり、工数及びコストを削減する上で妨げとなっていた。
【0036】
また、この緩衝装置60はそれ自体が蝶番としても機能し得るので、蝶番21〜23のいずれかの代わりにこの緩衝装置60を使用することにより、使用する蝶番の数を削減できる。
【0037】
なお、上記の例では、第1ベース部材91および第2ベース部材92を樹脂製の部材としたが、ベース部材91、92の両方又は一方を金属製の部材としてもよい。また、取付金具80の代わりに別の材質、たとえば硬質樹脂、セラミックなどからなる共通部材を使用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の緩衝装置を備えた折戸装置の背面図
【図2】図1中の緩衝装置(両取付部材が完全に開いた状態)の全体斜視図
【図3】図1中の緩衝装置(制動力が働き始める臨界状態)の全体斜視図
【図4】図1中の緩衝装置(両取付部材が互いに直角に回動した状態)の全体斜視図
【図5】(a)〜(e)はそれぞれ本発明の緩衝装置の正面図、左側面図、右側面図、平面図、下面図
【図6】本発明の緩衝装置の背面図
【図7】図5(a)中のA−A線に沿って切断した断面を示す概略断面図
【図8】本発明の緩衝装置の分解斜視図
【図9】本発明の緩衝装置の分解平面図
【図10】本発明の緩衝装置とこれを取り付けるべく戸板に形成された取付穴とを示した斜視図
【図11】図1に示す折戸装置の開閉時における一連の状態を示す部分斜視図
【図12】図1に示す折戸装置の開閉時における一連の状態を示す部分平面図
【図13】本出願人が先に提案した緩衝装置とこれを取り付けるべく戸板に形成された取付穴とを示した斜視図
【符号の説明】
【0039】
1 折戸装置
10 折戸
11 戸板
11a 取付穴
12 戸板
12a 取付穴
21、22、23 蝶番
30 レール
41、42 ランナー
50 戸枠
60 緩衝装置
61 第1取付部材(他方の取付部材)
61i 凹部
61f 側縁部
62 第2取付部材(一方の取付部材)
63 ヒンジ部
70 制動機構
71 ダンパ
71a ダンパ本体
71b ダンパピン(出力軸)
72 収容部(ダンパ保持部)
72d 雌ねじ部
72e キャップ
72f 雄ねじ部
72h 摘み部
73 当接部材
80 取付金具(共通部材)
81a 金具本体
81b、81c フランジ部
81e、81f 軸受部
91 第1ベース部材
91e 凹部
92 第2ベース部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の戸板を互いに水平回動自在に連結してなる折戸の閉じ際における戸板相互の急激な回動を制動するべく折戸の背面に取り付けられる緩衝装置であって、
前記一対の戸板のうち一方の戸板の他方の戸板との連結端部に埋設して取り付けられる第1取付部材と、
前記一対の戸板のうち他方の戸板の一方の戸板との連結端部に埋設して取り付けられる第2取付部材と、
両取付部材を互いに回動自在に連結しているヒンジ部と、
両取付部材相互の回動を制動するべく一方の取付部材に設けられた制動機構と、を備え、
前記制動機構は、
使用時に水平方向に圧縮され反発するダンパと、
ダンパに装着された当接部材と、を備え、
前記第1取付部材および前記第2取付部材は互いに同一形状且つ同一寸法で同一材料からなる共通部材を各々備え、当該共通部材は戸板に締着される部材であり、
前記第1取付部材は、その共通部材に嵌合して一体的に固定される第1ベース部材を備え、
前記第2取付部材は、その共通部材に嵌合して一体的に固定される第2ベース部材を備え、
一方のベース部材は、前記当接部材を進退移動可能に案内しつつ前記ダンパを保持しているダンパ保持部を備え、
前記当接部材は、
前記ダンパが伸縮することにより進退移動し且つその先端部が他方のベース部材(91)に当接する部材であり、
当該当接部材が折戸の閉じ際における両取付部材相互の回動に伴って当該他方のベース部材に押圧されることにより前記ダンパが圧縮されるように構成されている緩衝装置。
【請求項2】
前記他方のベース部材には、
両取付部材相互を折戸を開く側に回動させて折り畳んだときに前記ダンパ保持部の前記一方の取付部材の共通部材から突出している部分を受け入れる凹部が形成されている請求項1の緩衝装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−102812(P2009−102812A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−273030(P2007−273030)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【出願人】(000137959)株式会社ムラコシ精工 (92)
【Fターム(参考)】