説明

緩衝資材

【課題】 異種仕様の要緩衝機材に対して汎用的に用いることができる、新規な緩衝資材を開発することを技術課題とした。
【解決手段】 熱可塑性樹脂によって形成された柔軟なチューブ状のケーシング10内部を充填空間とし、この充填空間にゲル状の緩衝機能材11が封入された長尺の出発素材が、必要な長さ毎に切り出されるとともに端部が封止状態とされていることを特徴として成るものであり、緩衝資材1を汎用的なものとして提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は例えば精密機械等の要緩衝機材に具えられる緩衝用の部材に関するものであって、特に汎用性に優れるとともに異種仕様の要緩衝機材との一体化を合理的に行うことのできる緩衝資材に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来より図10に示すように、精密機器等に伝わる振動を吸収するためのインシュレータ2′等には高い緩衝機能が求められており、このため軟質な樹脂やゲル等を素材とする緩衝機能材11′を上下の台座21′、22′間に挟み込み、所望の緩衝性能が発揮できるような構成が採られている。
そして前記緩衝機能材11′としてゲル状物質が採用される場合には、このものはべとついた流動性のある物質であるため、所定の金型によってフィルムシート状のケーシング10′の素材を上下に最中状にヒートシールする際に、その間にゲル状物質を封入するようにして緩衝資材1′が製造されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
ところで上述のようなゲル状物質は、前記インシュレータ2′の他にも、各種クッションやプロテクタの緩衝材、携帯機器の緩衝材、重量機器の免震材等として幅広く供されているが、前記フィルムシート状のケーシング10′は適用される要緩衝機材毎に合わせて作製された金型によりカスタムメイドされており、様々な種類の要緩衝機材に対して組み付けることのできる汎用部品としての緩衝資材は未だ流通していないのが実情である。
【特許文献1】特開平11−48378号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はこのような背景を認識してなされたものであって、異種仕様の要緩衝機材に対して汎用的に用いることができる、新規な緩衝資材を開発することを技術課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち請求項1記載の緩衝資材は、熱可塑性樹脂によって形成された柔軟なチューブ状のケーシング内部を充填空間とし、この充填空間にゲル状の緩衝機能材が封入された長尺の出発素材が、必要な長さ毎に切り出されるとともに端部が封止状態とされていることを特徴として成るものである。
この発明によれば、緩衝資材を汎用的なものとして提供することができる。
【0006】
また請求項2記載の緩衝資材は、前記要件に加え、前記ケーシングは、可透視状態であることを特徴として成るものである。
この発明によれば、緩衝機能材を外部から視認することができ、緩衝機能が高性能であることを視覚的に積極的に顕示するとともに、装飾効果を発揮させて商品性を高めることができる。
【0007】
更にまた請求項3記載の緩衝資材は、前記要件に加え、前記ケーシングは、横断面視において複数の充填空間に区画されていることを特徴として成るものである。
この発明によれば、各々の充填空間に充填される緩衝機能材同士が混ざってしまうのを防止することができる。
【0008】
更にまた請求4項記載の緩衝資材は、前記請求項3記載の要件に加え、前記複数の充填空間には、性状を異ならせた緩衝機能材がそれぞれ充填されていることを特徴として成るものである。
この発明によれば、緩衝機能や装飾効果を、複数種の緩衝機能材による複合的な相乗効果が発現したものとすることができる。
【0009】
更にまた請求5項記載の緩衝資材は、前記要件に加え、前記充填空間には、緩衝機能材とは別の機能部材が収容されていることを特徴として成るものである。
この発明によれば、緩衝資材を、緩衝機能以外の機能を持った多機能のものとして構成することができる。
【0010】
更にまた請求6項記載の緩衝資材は、前記要件に加え、前記緩衝機能材はシリコーンゲルを素材としたものであることを特徴として成るものである。
この発明によれば、緩衝資材を高度な緩衝機能を持ったものとして構成することができる。
【0011】
更にまた請求項7記載の緩衝資材は、前記要件に加え、前記ケーシングは、熱可塑性ポリウレタンエラストマーを素材として成るものであることを特徴として成るものである。
この発明によれば、ケーシングを接着性等の加工性に優れるとともに、透明度が高いものとして形成することができ、ケーシング内に充填される緩衝機能材を、鮮明に視認させることができる。
またケーシングを折れ曲がりによる白濁を引き起こしにくいものとして形成することができる。
そしてこれら各請求項記載の発明の構成を手段として前記課題の解決が図られる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、異種仕様の要緩衝機材に対して汎用的に用いることができる緩衝資材を提供し、要緩衝機材に対して、熱可塑性樹脂によって形成された柔軟なケーシング内に充填されたゲル状の緩衝機能材により優れた緩衝性を付与することができるとともに、緩衝資材を含めた要緩衝機材の製造コストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の「緩衝資材」の最良の形態の一つについて実施例に基づいて説明するものであるが、この実施例に対して、本発明の技術的思想の範囲内において適宜変更を加えることも可能である。
【実施例】
【0014】
図1中、符号Sで示すものは、要緩衝機材(一例として精密機器)であって、この機器の脚部に対してインシュレータ2が設けられるものであり、このインシュレータ2に対して本発明の緩衝資材1が組み込まれる。
また本発明の緩衝資材1は、組み付け対象を前出のインシュレータ2に限るものではなく、例えば各種クッションやプロテクタの緩衝材、携帯機器の緩衝材、重量機器の免震材、あるいは冷蔵庫における扉等のパッキン材等として組み付けることができるものである。
【0015】
以下緩衝資材1について説明すると、このものは熱可塑性樹脂製の柔軟なチューブ状のケーシング10内にゲル状の緩衝機能材11が封入されて成るものである。
この実施例では、前記ケーシング10を可透視状態とするものであり、一例として熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)を素材として形成した。因みにこの熱可塑性ポリウレタンエラストマーは柔軟性に優れるとともに透明性に優れたものであり、変形した場合であっても白濁を起こすことが少ないため、特に外部から露見される個所に適用されるような緩衝資材1の原料として適したものである。
なおこの実施例では一例として、前記熱可塑性ポリウレタンエラストマーとしてBASF社製、エラストンラン(登録商標)を採用するものであり、一例として硬度がJIS
A 90のものを使用した。
また前記ケーシング10の素材としては、前記熱可塑性ポリウレタンエラストマーの他にもスチレン系、オレフィン系、アクリル系等の合成樹脂や他の合成樹脂を用いることもできる。
【0016】
一方、前記緩衝機能材11としては、シリコーンゲルやウレタンゲル等のゲル状物質が適用されるものであり、特にシリコーンゲルが好ましく、この実施例ではシリコーンゲルとしてジェルテック社製、αGEL(登録商標)を採用するものであり、一例としてJIS K2207(50g荷重)に規定する針入度が150のものを使用した。
なお前記αGELは、シリコーンを主成分とするゲル状物質であって、例えば次式〔1〕で示されるジオルガノポリシロキサン(以下A成分という):RR1 2 SiO- (R2 2 SiO)n SiR1 2 R…〔1〕
[ただし、Rはアルケニル基であり、R1 は脂肪族不飽和結合を有しない一価の炭化水素基であり、R2 は一価の脂肪族炭化水素基(R2 のうち少なくとも50モル%はメチル基であり、アルケニル基を有する場合にはその含有率は10モル%以下である)であり、nはこの成分の25℃における粘度が100〜100000cStになるような数である]と、25℃における粘度が5000cSt以下であり、一分子中に少なくとも2個のSi原子に直接結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン(B成分)とからなり、且つこのB成分中のSi原子に直接結合している水素原子の合計量に対するA成分中に含まれるアルケニル基の合計量の比(モル比)が0.1〜2.0になるように調整された混合物を硬化させることにより得られる付加反応型シリコーンコポリマーである。
【0017】
またこの実施例では緩衝機能材11を半透明状態に着色し、ケーシング10を通してその存在がはっきりと視認できるようにしたが、製品仕様によっては透明状態のままとしたり、非透明状態にまで着色する場合もある。
更にまた緩衝機能材11に対して図3(b)に示すように、機能部材として金属粒子、金属箔等のフィラー16を混入してもよく、この場合には、負荷がかかることにより流動する緩衝機能材11の動きをフィラー16の動きとして外部より視認することができるようになる。
なお前記フィラー16の他、蛍光塗料、蓄光塗料、温度の高低に応じて色の変化する塗料等を機能部材として緩衝機能材11に混入するようにしてもよい。
【0018】
そしてこの実施例では長尺状態のケーシング10に緩衝機能材11を注入したものを出発素材とし、図2(a)(b)(c)に示すように所定寸法毎に、凹型51と凸型52とを具えて成る金型5を用いてケーシング10を押し潰した状態で熱溶着して封止部12を形成するとともに、カッター53によって裁断して所望の長さの緩衝資材1を形成するようにした。
なおケーシング10を予め所定の寸法に裁断して短寸にしておき、このものに緩衝機能材11を注入し、その両端部を熱溶着するようにしてもよい。
またこの実施例では前記封止部12の形状を図2(d)に示すように断面視でU字状となるような形状としたが、同図(e)に示すように断面視で直線状となるような形状にしてもよい。
更にまたケーシング10の両端部を熱溶着することなく、蓋体を両端開口部に被せるとともに溶着して緩衝機能材11を封入するようにしてもよい。なおこのような溶着は熱溶着の他に、高周波溶着、超音波溶着等によって行うこともできる。
【0019】
また前記ケーシング10は異形押出成形法によって成形されるものであり、図3(a)に示すような円形の断面形状を有するものが基本仕様とされるものであるが、図3(b)に示すように内周部の一部の厚さを異ならせたり、図3(c)に示すように外周部の一部の厚さを異ならせるようしてもよい。
なお前記厚さの異なった部分のみを着色するようにしてもよい。
【0020】
更にまた前記ケーシング10の断面形状は図4(a)に示すように三角形や他の多角形あるいは楕円等としてもよく、同時に内周部の一部の厚さを所定のパターンで異ならせるようにしてもよい。
なお図4(b)に示すケーシング10は、外周部の一部の厚さを所定のパターンで異ならせたものであり、図4(c)に示すケーシング10は、図4(a)に示したものに捻りを加えたものである。
更にまた図4(d)に示すケーシング10は、内周部の縦断面が円弧の連続パターンとなるようにしたものである。
【0021】
更にまたケーシング10の断面形状を、複数の充填空間に区画されたものとすることができるものであり、図5(a)(b)(c)に示すものは仕切壁10aによって充填空間を均等に二カ所、三カ所、四カ所に区画したものである。
また図5(d)に示すものは、仕切壁10aによって三角形の充填空間を形成したものであり、更に図5(e)に示すものは仕切壁10aによって円形の充填空間を形成したものである。
更にまた図5(f)に示すものは、ケーシング10の断面形状を長方形とするとともに、充填空間を仕切壁10aによって二カ所に区画したものである。
そしてこれらの充填空間には、同一性状の緩衝機能材11を充填してもよいが、硬度、色彩等の性状を異ならせた緩衝機能材11を充填することにより、緩衝効果や装飾効果を複数種の緩衝機能材11による複合的な相乗効果が発現したものとすることができる。なおこの場合であっても、複数種の緩衝機能材11同士が混ざってしまうことはない。
また前記充填空間の少なくとも一カ所には緩衝機能材11が充されるものであるが、
その他の充填空間には何も充填せずに空気が充填された状態としたり、窒素ガス等の気体あるいは水等の液体といった流体を充填するようにしてもよい。
【0022】
更にまた複数のケーシング10を連設することにより、前記仕切壁10aを設けたときと同様に充填空間を複数設けることができるものであって、図6(a)に示すものは円形断面のケーシング10を二個連設したものであり、図6(b)に示すものは正方形断面のケーシング10を二個連設したものである。
【0023】
更にまた前記緩衝資材1のケーシング10の表面には、製品名や製造会社名等を一例としてシルク印刷によって印刷した化粧標示13を形成するようにしてもよい。
【0024】
本発明の緩衝資材1は一例として上述したようにして構成されるものであり、以下、緩衝資材1の要緩衝機材Sに対する組み付け態様について幾つかの例を挙げて説明する。
まず緩衝資材1をインシュレータ2に対して組み込み、このインシュレータ2を要緩衝機材Sに組み付ける実施例について説明する。
前記インシュレータ2は図1及び図7に示すように、接地部材である台座21と、要緩衝機材Sの脚部に接続される台座22とを具えて成るものであり、上下の台座21、22の間に緩衝資材1を挟み込んだ状態として、外部からの振動を緩衝資材1によって吸収して要緩衝機材Sに伝わらないようにする部材である。
そして前記緩衝資材1の受入規制空間23が上下の台座21、22の対向面にそれぞれ溝状に形成され、ここに緩衝資材1が嵌め込まれた状態とされるものである。
【0025】
なおこの実施例では、前記受入規制空間23を平面視で円形としたため、ここに嵌め込まれる緩衝資材1も円形となるものであり、図7(b)に示すように封止部12の形状に馴染んだ形状の接続片15を用いて、ケーシング10の両端に位置する封止部12を連結して円形となるようにした。
なお図2(e)に示した封止部12の場合には、図8に示すような封止部受15aが形成された接続片15が用いられる。
因みに前記接続片15は、ケーシング10と同じ前記熱可塑性ポリウレタンエラストマーや他の合成樹脂によって形成される。
なお緩衝資材1に対して加飾効果をもたせることが要求される場合には、前記接続片15に対して、小型の電池や圧電素子とともに、小型のLEDを機能部材として組み込むことにより、ケーシング10内に充填された緩衝機能材11を発光させるような構成とすることもできる。
【0026】
また要緩衝機材Sとしては、各種クッション、プロテクタ、携帯機器等が挙げられるが、本発明の緩衝資材1は汎用性に優れるとともに異種仕様の要緩衝機材Sとの一体化を合理的に行うことのできるものであるため、これら種々の要緩衝機材Sに対して容易に緩衝機能を付与することができる。
一例として図9に示すように、ライダースーツのプロテクタを要緩衝機材Sとする場合には、複数のポケットPを形成しておき、それぞれのポケットPの深さに応じた長さの緩衝資材1が挿入されることとなるが、本発明の緩衝資材1は格別金型を要することなく、封止部12の形成段階で長さを調節してその要求に応えることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の緩衝資材が組み込まれたインシュレータ及び要緩衝機材を示す斜視図並びにb−b断面図及びc−c断面図である。
【図2】封止部の形成の様子を示す斜視図である。
【図3】緩衝資材の横断面図である。
【図4】種々の形態のケーシングを示す斜視図である。
【図5】仕切壁によって充填空間を区画した種々の形態のケーシングを示す断面図である。
【図6】ケーシングを連設して構成されたケーシングを示す断面図である。
【図7】インシュレータを示す分解斜視図並びに接続片を具えた緩衝資材を示す斜視図である。
【図8】接続片の他の形態を示す断面図である。
【図9】要緩衝機材の他の形態を示す斜視図である。
【図10】既存のインシュレータを示す斜視図並びに断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 緩衝資材
10 ケーシング
10a 仕切壁
11 緩衝機能材
12 封止部
13 化粧標示
15 接続片
15a 封止部受
16 フィラー
2 インシュレータ
21 台座
22 台座
23 受入規制空間
5 金型
51 凹型
52 凸型
53 カッター
S 要緩衝機材
P ポケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂によって形成された柔軟なチューブ状のケーシング内部を充填空間とし、この充填空間にゲル状の緩衝機能材が封入された長尺の出発素材が、必要な長さ毎に切り出されるとともに端部が封止状態とされていることを特徴とする緩衝資材。
【請求項2】
前記ケーシングは、可透視状態であることを特徴とする請求項1記載の緩衝資材。
【請求項3】
前記ケーシングは、横断面視において複数の充填空間に区画されていることを特徴とする請求項1または2記載の緩衝資材。
【請求項4】
前記複数の充填空間には、性状を異ならせた緩衝機能材がそれぞれ充填されていることを特徴とする請求項3記載の緩衝資材。
【請求項5】
前記充填空間には、緩衝機能材とは別の機能部材が収容されていることを特徴とする請求項1、2、3または4記載の緩衝資材。
【請求項6】
前記緩衝機能材はシリコーンゲルを素材としたものであることを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の緩衝資材。
【請求項7】
前記ケーシングは、熱可塑性ポリウレタンエラストマーを素材として成るものであることを特徴とする請求項1、2、3、4、5または6記載の緩衝資材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−321870(P2007−321870A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−152678(P2006−152678)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(306011034)株式会社ジェルテック (11)
【出願人】(306026980)株式会社タイカ (62)
【Fターム(参考)】