緩衝部材、ハードディスクドライブの衝撃保護装置およびそれを用いた携帯情報機器
【課題】落下等の非常に大きな衝撃から日常動作等の小さな衝撃や繰り返しの振動まで、幅広い衝撃緩衝ができる緩衝部材、衝撃保護装置を提供する。
【解決手段】そのために、緩衝部材s11は、圧縮変形するクッション性能を有する柔らかい略直方体形状の柔軟部s111と、柔軟性を有し樹脂材料で構成された略長方形状でシート状の基材部s112とで構成され、柔軟部の一面より略垂直に余材部Wを残して途中まで切り込みを入れスリットを形成し、基材部を柔軟部に形成されたスリットに挿入し取り付ける。そして、比較的弱い衝撃力は柔軟部の余材部で吸収し、余材部で吸収しきれなかった大きな衝撃力を柔軟部と基材部の相互の作用で吸収する。
【解決手段】そのために、緩衝部材s11は、圧縮変形するクッション性能を有する柔らかい略直方体形状の柔軟部s111と、柔軟性を有し樹脂材料で構成された略長方形状でシート状の基材部s112とで構成され、柔軟部の一面より略垂直に余材部Wを残して途中まで切り込みを入れスリットを形成し、基材部を柔軟部に形成されたスリットに挿入し取り付ける。そして、比較的弱い衝撃力は柔軟部の余材部で吸収し、余材部で吸収しきれなかった大きな衝撃力を柔軟部と基材部の相互の作用で吸収する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝部材、衝撃による影響を受けやすい装置であるハードディスクドライブの衝撃保護装置に関し、さらに詳述すれば、ハードディスクドライブが搭載された携帯情報機器の落下時の衝撃から当該ハードディスクドライブを保護する緩衝部材、この緩衝部材により構成された衝撃保護装置、およびハードディスクドライブを収容した衝撃保護装置を内蔵する携帯情報機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハードディスクドライブ(以下「HDD」と略称する)は、高速で回転するディスクの表面から所定の離間距離(以下、「浮上スペーシング量」という)を保つヘッドロード状態で磁気ヘッドを移動させて、目的の記録位置にデータを記録する或いは再生する装置である。このようなHDDの記録密度向上のため、ディスク表面と磁気ヘッドとこれらの間の浮上スペーシング量は、年々小さくなる傾向にある。
【0003】
そのために、HDDの動作中に、特にディスク面に対して垂直な方向に衝撃力が加わると、磁気ヘッドが浮上スペーシング量以上に変位してディスク表面を叩く、ヘッドスラップと呼ばれる現象が起こり易くなっている。ヘッドスラップはディスクの記録表面或いはヘッドの物理的損傷を招く。これにより、少なくともディスクの損傷部に対するデータの記録再生ができなくり、最悪の場合には、ディスクの全記録面が使用不可となり、つまりHDDが損壊する。
【0004】
HDDがデスクトップコンピュータに代表される据え置き型の情報機器に搭載されて使用される場合には、ヘッドスラップを招くような衝撃力がHDDに加わることは希である。一方、ノート型パーソナルコンピュータ(以降、「ノートPC」と略称する)に代表される携帯型情報機器に搭載されるHDDは、そのような衝撃力が加わる危険に常に曝されている。つまり、ノートPCはその携帯性ゆえに、ユーザが容易に持ち運んだり移動させたりできるのであるが、そのような運搬や移動時にはユーザが誤ってノートPCを机の角のような堅いものに打ち当てたり、落下させてしまい易い。ノートPCは携帯性を確保するために、軽量且つコンパクトに作成されており、そのような衝撃力が、内蔵されているHDDにも容易に伝わってしまい、その結果、HDDの損壊に至ってしまうことがある。
【0005】
そのため、近年、ノートPCに内蔵される小型のHDDは、特に動作時の耐衝撃性を増すために、磁気ヘッド待避機能が設けられている。例えば2.5インチHDDでは、非動作時或いは動作時であっても一定時間アクセス要求が無いアイドル状態時には、磁気ヘッドをディスクから離れた位置に配置された退避用部材の中に移動させ、その位置でロックするヘッドアンロード動作によって、ディスクから離間した位置に磁気ヘッドを待避させる。このような動作により、上述のディスクの記録面に対して垂直に働く衝撃力による磁気ヘッド或いはディスク表面の物理的損傷が回避される。
【0006】
つまり、動作モード的にHDDのディスクの記録面上に磁気ヘッドを位置させる必要が無い場合には、ヘッドをディスクから待避させて、ヘッドスラップの発生を未然に防止している。
【特許文献1】特開平11−242881号公報
【特許文献2】特開2004−315087号公報
【特許文献3】特開平2−205579号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、磁気ヘッドのディスクへのアクセス動作中(HDDのアクセス動作時)は、当然のことながら磁気ヘッドはヘッドロード状態に在るので、垂直方向の衝撃力が加わればヘッドスラップを生じてディスクが損傷する。つまり、HDDのアクセス動作時では、ディスク面に垂直方向の衝撃力が加わればヘッドスラップを生じてディスクが損傷する可能性は依然高く、HDDのアクセス動作時にユーザが誤って堅いものに打ち当てたり、落下させてしまうといったようなHDD耐衝撃性に対しては対応できていない。また、机上にノートPCを置いたとき、あるいは鞄にノートPCをいれて持ち運ぶときのような日常的にHDDに加わる小さい衝撃、周波数の高い繰り返しの振動もHDD、ディスク面にとって損傷の原因となる。以下、従来のHDD等の電子機器に用いられる緩衝部材、および電子機器への搭載構造について、図面を用いて説明する。
【0008】
図14は、従来の緩衝部材を介して内蔵された状態を示す電子機器の模式的斜視図である。電子機器10が落下等の衝撃を受けた場合に、電子機器10の四隅の各面に装着された緩衝部材31によって、電子機器10本体が受ける衝撃力を緩和するようになされている。
【0009】
また、衝撃緩衝特性の異なる複数の材料の組み合わせにより構成した緩衝部材が提案されている。
【0010】
図15は、電子機器10と、電子機器10の収容部(図示せず)との間に、複数の部材からなる振動・衝撃を吸収する緩衝部材を設けた例を示す、模式的正面図である。
【0011】
図15においては、圧縮弾性率の高い第1の緩衝部材41と、圧縮弾性率の低い第2の緩衝部材42により緩衝部材が構成されている。弱い衝撃が電子機器10に加わった場合には、柔らかい第1の緩衝部材42のみによって柔らかく衝撃を吸収する。さらに、強い衝撃が電子機器10に加わった場合には、柔らかい第1の緩衝部材42で吸収しきれない衝撃を新たに付加した硬い第2の緩衝部材41で吸収する、2段階構造にしている。したがって、いずれの緩衝部材もそれぞれの弾性変形により衝撃を吸収している。この構成により、単一の緩衝部材に比べて、弱い衝撃から強い衝撃までの幅広い衝撃に対して、効果的に対応することができる。
【0012】
なお、関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【0013】
しかしながら、図15に示すような緩衝部材および衝撃緩衝方法では、単に弾性変形によって衝撃を吸収させるものである限り、その衝撃力を有効に緩和して、電子機器本体に致命的な損傷がないようにすることは困難であると考えざるをえない。
【0014】
図16は、第1の緩衝材51の中に、シート状の第2の緩衝材52を配置した複合部材で構成し、一体成形した従来の緩衝部材の例を示す、模式的正面図である。
【0015】
この緩衝部材においては、電子機器10に衝撃が加わった際に、緩衝材52の屈曲により衝撃を吸収してから、さらに屈曲部での座屈により衝撃を吸収するので、比較的長い時間にわたって衝撃圧縮力を受けとめることができ、緩衝性能を十分に発揮させることが可能な緩衝部材が得られる。
【0016】
なお、関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献2が知られている。
【0017】
しかしながら、図16に示すような緩衝部材および衝撃緩衝方法では、弱い衝撃の時にはシート状の第2の緩衝材52が屈曲せず緩衝効果がなかった。また、電子機器10は発する高周波振動をシート状の第2の緩衝材52を介して、電子機器10を収容している製品の筐体に伝播していた。ノートPCの場合であれば、ハードディスク装置の振動を、筐体側に伝えることになり、使用者がノートPCの触れる筐体部分にこの振動が伝わり、製品の品格上の問題となっていた。
【0018】
図17は、包装材料での緩衝材の複合化の従来例を示す、模式的斜視図である。
【0019】
この例においても、複数の緩衝材を一体成形し、緩衝材61内部に埋設された座屈材62を座屈させることにより、緩衝性能を向上させている。なお、座屈材62は緩衝材61と一体成形されている。また、座屈材62は緩衝材61よりも厚み方向に短くすることにより、被包装体を傷つけないように考慮されている。
【0020】
なお、関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献3が知られている。
【0021】
しかしながら、図17に示す例においても、緩衝材と座屈材が一体成形されている以上は、図16に示す例と同様に座屈材を通して衝撃を伝播していた。
【0022】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、落下等の非常に大きな衝撃から日常動作等の小さな衝撃、繰り返しの振動など、幅広い衝撃の緩衝ができる緩衝部材、衝撃保護装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
そのために本発明は、圧縮変形するクッション性能を有する柔らかい略直方体形状の第1の緩衝材(柔軟部)と、柔軟性を有し樹脂材料で構成された略長方形状でシート状の第2の緩衝材(基材部)とで緩衝部材を構成する。第1の緩衝材の一面より略垂直に途中まで切り込みを入れスリットを形成し、第2の緩衝材を第1の緩衝材に形成されたスリットに挿入し、取り付けて構成した複合部材であることを特徴とする緩衝部材である。
【0024】
このような構成によって、比較的弱い衝撃力は柔軟部のスリットを形成しなかった余材部で吸収され、余材部で吸収しきれなかったより大きな衝撃力を柔軟部と基材部の相互の作用で吸収するので、ユーザが誤ってノートPCを落下させたときのような大きな衝撃から、机上にノートPCを置いたとき、鞄にノートPCをいれて持ち運ぶときのような日常的な小さい衝撃まで、幅広い衝撃に対して緩衝効果が得られる。
【発明の効果】
【0025】
以上のように本発明の緩衝部材は、このような構成によって、比較的弱い衝撃力は柔軟部のスリットを形成しなかった余材部で吸収され、余材部で吸収しきれなかったより大きな衝撃力を柔軟部と基材部の相互の作用で吸収するので、ユーザが誤ってノートPCを落下させたときのような大きな衝撃から、机上にノートPCを置いたとき、鞄にノートPCをいれて持ち運ぶときのような日常的な小さい衝撃まで、幅広い衝撃に対して緩衝効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、図1から図13Bまでを用いて説明する。
【0027】
(実施の形態1)
図1に、本発明にかかるハードディスクドライブの衝撃保護装置がノートPCに組み込まれている一例の模式的分解斜視図を示す。HDD11は衝撃保護装置12で覆われて、その衝撃保護装置12の内部に実装され、衝撃保護装置12と共にノートPC19に実装されている。
【0028】
この衝撃保護装置12は本発明の衝撃保護装置の実施の形態1であり、このノートPC19は本発明の衝撃保護装置を用いた携帯情報機器の実施の形態1ある。
【0029】
図2は、衝撃保護装置12で覆われてその内部に実装されたHDD11を示す模式的斜視図である。
【0030】
図2では、HDD11が衝撃保護装置12の内部に実装されている状態を、拡大して示している。この状態でノートPCに実装される。
【0031】
図3〜図5は、衝撃保護装置12の組立とHDD11を実装する手順を示す模式的斜視図と模式的分解斜視図である。
【0032】
図4及び5において、衝撃保護装置12は、4個一組の緩衝部材s11、4個一組の緩衝部材s12、2個一組の緩衝部材s13、2個一組の緩衝部材s14、1個の緩衝部材s15を備えている。包装材pは薄い樹脂製のシート材であり、図3のように裁断され、折り曲げて成型し、折り曲げてできる空間にHDDのような衝撃に対して弱い装置を収容する。
【0033】
また、図5に示すHDD11は、HDD本体h11と、HDDの駆動、あるいは記録、再生データの信号受け渡しのためのコネクタ、およびフラットケーブルからなるケーブルユニットh12とからなる。
【0034】
図6A〜図6Eは、緩衝部材s11の構成と組立順を示す斜視図である。
【0035】
図6A〜図6Eにおいて、緩衝部材s11は、押圧すると圧縮変形するクッション性能を有する柔らかい、幅長X1、長手方向長Y1、厚み長Z1からなる、略直方体形状の柔軟部(第1の緩衝材)s111と、柔軟性を有し樹脂材料で構成された、長手方向長Y4、幅長Z4からなる、略長方形形状でシート状の基材部(第2の緩衝材)s112と、基材部s112が柔軟部s111のスリットから脱落するのを防止する粘着テープs113と、緩衝部材s11を包装材pに固着するための両面粘着テープs114からなる。
【0036】
柔軟部s111の材料はウレタン発泡材などのクッション材料、基材部s112は一般的なポリエチレンのようなシート材料で構成される。
【0037】
なお、図4に示す緩衝部材s11以外の緩衝部材s12〜s15は柔軟部s111と両面粘着テープs114のみからなる。
【0038】
図2〜5を用いて本発明の衝撃保護装置の組立と、HDDを実装する手順の詳細を説明する。
【0039】
まず、図3に示す包装材pに、図4に示すように緩衝部材s11〜s15を両面粘着テープs114によって、包装材pの各面に貼付固着する。x印は図4に示す包装材pの紙面裏面側、●印は図4に示す包装材pの紙面手前側に、緩衝部材s11〜s15をそれぞれ貼付して衝撃保護装置12を完成する。
【0040】
次に、図5のようにHDD11を、包装材pを折り曲げてできる空間に収容し、包装材pの舌部p11、p12を両面粘着テープ等で留める。これにより図2に示すような、HDD11が衝撃保護装置12で覆われてその内部に収容された、HDDユニットを完成する。
【0041】
HDD11は、内部に実装されたディスク面に垂直な方向に対して衝撃に弱い。従って緩衝部材s11は、HDD11のディスク面に平行な面に対応する包装材pの面に、両面粘着テープs114を用いて貼付するのが好ましい。
【0042】
次に、緩衝部材s11の組立手順を、図6A〜図6Eを用いて説明する。
【0043】
図6Aの柔軟部s111の塊に、柔軟部s111の一面より面に略垂直に反対面まで切り込むのではなく、図6Bに示すように余材部分(長さLwに相当)を残して途中まで切り込みを入れる。図6BではX−Y面より略垂直に、幅方向Xに略等間隔に長手方向Yに、Y−Z面に平行に、余材部W(長さLw)を残して深さZ2の複数(図6Bでは3つ)の切り込みを入れ、スリットを形成する。さらに、図6Cに示すように、略長方形に裁断した基材部s112を、形成されたスリットに挿入する。、最後に、図6Dに示すように、基材部s112の脱落防止用の粘着テープs113を、柔軟部s111のスリットの切り口を覆うように貼付し、スリットの切り口が形成された反対面に、緩衝部材s11を包装材pに固着するための両面粘着テープs114を貼付して、図6Eの緩衝部材s11が完成する。
【0044】
なお、図6Cにおいて、基材部s112を柔軟部s111に形成されたスリットに挿入するのみで、接着剤等で固定せず、柔軟部s111と基材部s112との境界面において摺動可能に取り付ける。さらに、柔軟部s111と基材部s112との境界面では滑り易くするために、基材部s112に水分など付着しないようにするほうが良い。
【0045】
また、基材部s112のスリット深さに対応した幅寸法Z4は、基材部s112がスリットに完全に挿入して納まるように、柔軟部s111のスリットの深さZ2=Z1−Lwに等しいか、または短くなり(Z4≦Z2=Z1−Lw)、長手方向の寸法Y4は柔軟部s111の長手方向の寸法Y1に略等しくなるように、基材部s112を予め裁断しておく。また、柔軟部s111のスリット間隔は、柔軟部s111のX方向両端〜スリット間はX2、スリット〜スリット間はX3になるように、柔軟部s111に切り込みを入れる。すなわちX方向両端〜スリット間の寸法を等しく、また、スリット〜スリット間の寸法を等しくするように、スリットを形成する。
【0046】
また、スリットは複数である必要はなく、一つであってもよい。また、必ずしも3個に限るものではなく、それ以上かそれ以下であってもよい。
【0047】
以下に本発明の緩衝部材、衝撃保護装置の緩衝動作について図7A〜図11を用いて説明する。
【0048】
図7A〜図7Dは、HDD11を収容した衝撃保護装置12に、下方から衝撃を加えたときの緩衝動作を説明する模式的断面図である。図1で言えば、ノートPCを図1下方に落下させた場合に相当する。
【0049】
図7Aは、衝撃が加わる前の筐体に収容されたHDDユニットの模式的断面図で、下方から衝撃が加わると、図7Bに示すように、先に緩衝部材s11の柔らかい柔軟部s111の余材部Wが大きく圧縮され、衝撃力がこれ以上加わらない場合には、この状態から図7Aの元の状態に、緩衝部材s11を含めた各緩衝部材は復元する。
【0050】
図7Bの状態から、さらに大きな衝撃力が緩衝部材s11下方から加わると、図7Cに示すように、余材部Wで吸収しきれなかった衝撃力は柔軟部s111と基材部s112の相互の作用で吸収する。すなわち基材部s112は屈曲、変形して、柔軟部s111は基材部s112が折れ曲がらないように周囲より支持する。このように、比較的弱い衝撃力は柔軟部s111の余材部Wで吸収され、余材部Wで吸収しきれなかったより大きな衝撃力を柔軟部s111と基材部s112の相互の作用で吸収する。なお、図7Dは緩衝部材s11の模式的斜視図であり、Xは緩衝部材の幅方向、Yは緩衝部材の長手方向、Zは緩衝部材の厚み方向を示し、Lwは余材部Wの厚みを示している。
【0051】
また、緩衝部材s11の余材部Wにより、別の効果を奏することを図8A〜図9Bを用いて説明する。
【0052】
この柔らかい材質の柔軟部s111の厚み方向全域(Z1に相当)にわたってスリットを入れずに、余材部Wを残すことによって、ノートPC筐体から伝播する周波数の高い、HDD11には有害な振動を遮断する効果がある。また、逆に、動作中のHDD11側の振動が、ノートPC筐体側へ伝播するのを遮断することもできる。
【0053】
図8Aは、柔軟部s111に余材部Wを設けていないときに、HDD11に伝わる衝撃波形を示したグラフ、図8Bは、柔軟部s111に余材部Wを設けたときに、HDD11に伝わる衝撃波形を示したグラフであり、余材部Wを設けることによって高周波の衝撃が遮断されることを示し、余材部Wの有効性を明示している。
【0054】
図9A、図9Bは、衝撃保護装置をノートPC筐体内に収容したときの、緩衝部材の詳細を示す模式的断面図である。図9Aは緩衝部材s11に余材部Wのある場合、図9Bは緩衝部材s11に余材部がない場合を示し、それぞれを比較する説明図である。
【0055】
あらかじめ決められた高さLtのノートPCの収容スペースに、HDD11を収容した衝撃保護装置12を設置する場合、
「Ls11+Lpt+Ls12≧Lt」
の関係にあることが好ましい。
【0056】
ここで、Ls11は緩衝部材s11の厚み(図6AのZ1と同じ)、LptはHDD1を収容する包装材pを組み立てて完成する衝撃保護装置12の厚み方向の寸法、Ls12は緩衝部材s12の厚みである。
【0057】
もしも逆の関係、「Ls11+Lpt+Ls12<Lt」にあると、衝撃保護装置12は何らかの方法で固定しないと、ノートPC筐体内の収容スペースを滑って移動してしまうからである。すなわち、ノートPCの収容スペースの高さより若干高めに衝撃保護装置12の高さと緩衝部材の厚みを設定するのであるが、図9Bに示すように、緩衝部材s11に余材部Wが無いと収容スペースに収容する際に、基材部s112が屈曲した状態で収容される。これは図7Cの状態に近く、つまり、衝撃力が加わらない状態であるににもかかわらず、基材部s112がすでに衝撃力を受けたように屈曲、または座屈してしまい、その衝撃力吸収能力を損なわれている。
【0058】
また、図9Aの緩衝部材s11に余材部Wのある、衝撃保護装置12をノートPC筐体内に収容したときの緩衝部材s11に関して、
「A<L<A+Lw」
であり、なおかつ「ΔLw=(A+Lw)−L」とすると
「ΔLw/Lw<0.3」
であることが好ましい。
【0059】
ただし、Aは基材部s112の柔軟部s111に形成したスリット深さに対応した辺の長さ(図6CのZ4と同じ)、Lは緩衝部材s11が当接するノートPCの筐体端から緩衝部材s11を貼付した包装材pの面までの長さ(距離)、Lwは衝撃保護装置をノートPCに実装する前(押し縮められる前)の余材部Wの元の寸法(厚み)、ΔLwは衝撃保護装置をノートPC筐体内に収容したとき、余材部Wが押し縮められる寸法(厚み)である。
【0060】
すなわち、衝撃保護装置12をノートPC筐体内に収容したとき、余材部Wが押し縮められる割合を0.3未満にすることにより、次の(効果1)〜(効果3)のような効果を十分引き出すことができる。
【0061】
(効果1)ノートPC筐体内の予め決められた空間に衝撃保護装置12を収容したとき、基材部s112を屈曲させることなく、その衝撃力吸収能力を最大限に生かすことができる。
【0062】
(効果2)ノートPC筐体から伝播する周波数の高いHDDには有害な振動を、有効に遮断することができる。
【0063】
(効果3)ノートPC筐体内の予め決められた空間内に、固定手段を用いることなく衝撃保護装置を安定的かつ確実に収容することができる。
【0064】
また、図6Cの説明で、「基材部s112を柔軟部s111に形成されたスリットに挿入するのみで、接着剤等により固定せず柔軟部s111と基材部s112との境界面において摺動可能に取り付ける」とした。さらに、「柔軟部s111と基材部s112との境界面では滑り易くするのが良い」と説明した。また、「基材部s112を柔軟部s111に固定しないため、基材部s112の柔軟部s111よりの脱落防止のために、脱落防止用粘着テープs113を柔軟部s111のスリットの切り口を覆うように貼付する」と説明した。
【0065】
この理由を、図10A、図10B及び図11を用いて説明する。
【0066】
図10Aは基材部s112を柔軟部s111に固定しない場合、図10Bは基材部s112を柔軟部s111に固定した場合に、それぞれ図の上方から荷重Fを加えたときの基材部s112、柔軟部s111の変形のようすを示す模式的断面図である。
【0067】
図10Aでは図7A〜図7Dの説明同様、図上方から荷重Fを加えたとき(図10Aの一番上の図)、先に柔らかい柔軟部s111の余材部Wが大きく圧縮され(図10Aの中央の図)、この状態からさらに大きな力が加わると、余材部Wで吸収しきれなかった力は基材部s112が屈曲して、柔軟部s111が基材部s112の周囲より支持する(図10Aの一番下の図)。基材部s112は屈曲し、柔軟部s111は圧縮して変形するのでその境界面では変形量にズレがあり、変形量の差は互いに滑り合いながら屈曲または圧縮して変形し、変形量の差を吸収するので、固定されず、むしろ上記の境界面は滑り易いほうが好適である。
【0068】
図10Bのように、基材部s112を柔軟部s111に埋没させ、境界面を動かないように固定すると、図上方から荷重を加えたとき(図10Bの一番上の図)、荷重に比例して柔軟部s111は変形し、柔軟部s111と基材部s112の境界面は固定されているので、基材部s112は柔軟部s111の圧縮された変形量に追従するように変形し、基材部s112は圧縮する材質でなく弾力的に曲がる性質であるので、柔軟部s111との境界面に引っ張られるように座屈して(折れ曲がって)変形する(図10Bの中央の図,図10Bの一番下の図)。従って、基材部s112の弾力的に屈曲して衝撃を吸収する性質が生かされず、柔軟部s111の硬度を高くする機能しか為さない。
【0069】
図11は、柔軟部のみからなる緩衝部材(a)、基材部s112と柔軟部s111からなり、柔軟部s111に基材部s112を埋没させ、境界面を接着固定した緩衝部材(b)、本発明の、基材部s112と柔軟部s111からなり、柔軟部s111のスリットに基材部s112を挿入して、境界面を固定せず滑りやすくして構成した緩衝部材(c)の、各緩衝部材に上方から荷重Fを加えたときの、荷重Fと変形量ΔLの関係を示した図である。
【0070】
緩衝部材(a)の荷重Fに対する変形量ΔLは、ほぼ正比例して増加する。
【0071】
緩衝部材(b)では、上方から荷重Fを加えたとき、基材部s112は柔軟部s111の硬度を高くするのみなので、柔軟部s111、基材部s112は共に荷重Fに比例して、緩衝部材(a)よりも少しずつ変形量を増し、柔軟部s111の圧縮変形に追従するように基材部s112も屈曲する。そして、図11のグラフ中に示した座屈材(基材部s112に相当)が折れる点で変形が急速に進んで座屈する(折れ曲がる)。基材部s112は座屈により変形率が増して、荷重Fに対する変形量ΔLは座屈する以前に比較してより増加傾向を示し、ほぼ緩衝部材(a)と同程度の増加率となる。
【0072】
一方、本発明の緩衝部材(c)では、上方から荷重Fを加えたとき、初めは先に柔らかい柔軟部s111の余材部Wから圧縮されるので、柔軟部のみの緩衝部材(a)に近い変形量ΔLとなる。その後、さらに荷重Fが加わると、余材部Wで吸収しきれなかった力は基材部s112が屈曲して、柔軟部s111が基材部s112の周囲より支持するので、今度は緩衝部材(b)の変形の特性に近づくような変形の特性を示す。基材部s112は屈曲はするが、緩衝部材(b)のような折れ曲がりは起こらないので、滑らかな曲線特性となる。なお、図11の緩衝部材(c)の曲線特性のグラフにおいて、余材部W(W部)により弱い衝撃や高周波振動を吸収する領域を、楕円で囲み示した。
【0073】
本発明の緩衝部材(c)では、基材部s112は屈曲はするが、緩衝部材(b)のように座屈する可能性が少なく、大きな衝撃力を受けた後でも座屈痕(折り目)を生じることは無く復元するので、基材部s112の緩衝性能は変わらず回復する。従って、緩衝部材の交換の必要もなく、次のノートPCの落下、衝撃に、即座に備えることができる効果もある。
【0074】
換言すれば、基材部s112は一度、折り目を生じるまで座屈してしまうと、緩衝部材s11の復元時に基材部s112は完全には元の状態に回復することなく、基材部s112がもつ本来の緩衝性能も保持できないので、次のノートPCの落下、衝撃に備えることができない。従って、衝撃保護装置12ごと取り替えるか、または緩衝部材s11を剥がして交換するしかなく、座屈する可能性が大きな場合には、好ましい緩衝部材とは言い難い。
【0075】
以上のように本実施の形態によれば、比較的弱い衝撃力は柔軟部s111の余材部Wで吸収され、余材部Wで吸収しきれなかったより大きな衝撃力を柔軟部s111、基材部s112の相互の作用で吸収する。従って、ユーザが誤ってノートPCを落下させたときのような大きな衝撃から、机上にノートPCを置いたときや、鞄にノートPCを入れて持ち運ぶときのような日常的な小さい衝撃まで、幅広い衝撃に対して有効に緩衝効果が得られる。
【0076】
また、落下時に発生する筐体側の高周波衝撃のHDD11側への伝播を遮断し、さらに緩衝性能を向上することができる。また、逆に、動作中のHDD11側の振動が筐体側へ伝播するのを遮断することもできる。
【0077】
また、緩衝部材s11に余材部Wを残すことで、ノートPC筐体内の予め決められた空間に衝撃保護装置12を収容したとき、基材部s112を屈曲させることなく、その衝撃力吸収能力を生かす効果がある。また、ノートPC筐体内の予め決められた空間に、固定手段を用いず衝撃保護装置12を安定的かつ確実に収容することも可能である。
【0078】
さらに、緩衝部材s11が大きな衝撃力を受けたときに、基材部s112を柔軟部s111に固定しないで構成したことで、柔軟部s111は圧縮して変形し、基材部s112は屈曲して生ずるそれぞれの境界面における変形量のズレを、境界面を接着固定しないことで吸収することができる。従って、基材部s112は屈曲はするが、座屈して座屈跡を生じること無く復元するので、緩衝部材の交換の必要もなく、次の落下等の衝撃に即座に備えることができる。
【0079】
なお、緩衝部材s11は衝撃保護装置12のs11のみに適応したが、緩衝部材s12を始めとするその他の緩衝部材(図4に示す緩衝部材s12〜s15)に適応してもよい。
【0080】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2は、多くの点で本発明の実施の形態1と同様であるので、同じ部分については同一番号を付してその説明を省略し、実施の形態2が実施の形態1と異なる部分だけを説明する。
【0081】
図12は、衝撃保護装置で覆われてその内部に実装されたHDDを示す、HDDユニットの模式的分解斜視図である。
【0082】
図13A及び図13Bは、HDD11を収容した衝撃保護装置12に、下方から衝撃を加えたときの緩衝動作を説明する模式的断面図である。図1で言えば、ノートPCを図下方に落下させた場合に相当する。
【0083】
実施の形態2が実施の形態1と異なるのは、ストッパである突起物Stを、緩衝部材s11側部付近の包装材pに固着した点である。
【0084】
図12に示すように、衝撃保護装置12を構成する包装材pの、緩衝部材s11が貼り付けられている側部の付近に、突起物Stが貼り付けられている。
【0085】
図13Bの上の図は、衝撃が加わる前の筐体に収容されたHDDユニットの模式的断面図で、ストッパStがない場合であり、本発明の実施の形態1に相当する。
【0086】
緩衝部材s11の基材部s112では吸収しきれない極めて強い衝撃が加わったときには、図13Bの下の図のように、基材部s112は折り目ができる程度まで座屈してしまい、その後、緩衝部材s11は柔軟部s111の作用によって復元するものの、折り目ができた基材部s112は元の緩衝性能を保持していない。
【0087】
一方、図13Aの上の図は、衝撃が加わる前の筐体に収容されたHDDユニットの模式的断面図で、ストッパStを取り付けた場合であり、本発明の実施の形態2に相当する。
【0088】
緩衝部材s11に基材部s112では吸収しきれない極めて強い衝撃が加わったときには、図13Aの下の図のように、ストッパStの高さLhstだけ衝撃保護装置12とノートPC筐体の間隔が維持されるので、基材部s112は折り目ができるまで座屈せず、緩衝部材s11は復元後には元の緩衝性能を保持し、次の落下等の衝撃に備えることができる。
【0089】
なお、この時、ストッパStの高さLhstは、「Lw′<Lhst<L」の範囲であり、図13Aの下の図の状態で、基材部s112が座屈して折り目ができるまでに至らないように、長さLより十分小さい値に設定する。
【0090】
なお、LhstはストッパStの高さ、Lは緩衝部材s11が当接するノートPCの筐体端から緩衝部材s11を貼付した包装材pの面までの長さ(距離)、Lw′は衝撃保護装置12をノートPC筐体内に収容したとき(押し縮められた後)の余材部Wの寸法(厚み)である。
【0091】
以上のように本実施の形態2によれば、ストッパStを緩衝部材s11側部付近の包装材pに取り付けることで、緩衝部材s11の基材部s112では吸収しきれない極めて強い衝撃が加わったときでも、基材部s112は折り目ができるほど座屈せず、復元後、緩衝部材s11は元の緩衝性能を保持し、次の落下、衝撃に備えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明にかかる緩衝部材は、ユーザが誤ってノートPCを落下させたときのような大きな衝撃から、机上にノートPCを置いたときや、鞄にノートPCをいれて持ち運ぶときのような日常的な小さい衝撃まで、幅広い衝撃に対して緩衝効果が得られるといった効果を有し、ハードディスクドライブが搭載された携帯情報機器の落下時の衝撃からハードディスクドライブを保護する衝撃保護装置および衝撃保護装置に用いる緩衝部材として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明にかかるハードディスクドライブ衝撃保護装置がノートPCに組み込まれている一例を示す模式的分解斜視図
【図2】衝撃保護装置で覆われて内部に実装されたHDDを示す模式的斜視図
【図3】衝撃保護装置の組立とHDDを実装する手順を示すための包装材の模式的斜視図
【図4】衝撃保護装置の組立とHDDを実装する手順を示すための衝撃保護装置の模式的組立分解斜視図
【図5】衝撃保護装置の組立とHDDを実装する手順を示すためのHDDユニットの模式的分解斜視図
【図6】[A]は、緩衝部材の構成と組立順を示すための加工前の柔軟部の斜視図、[B]は、緩衝部材の構成と組立順を示すためのスリット形成後の柔軟部の斜視図、[C]は、緩衝部材の構成と組立順を示すためのスリット形成後の柔軟部の斜視図、[D]は、緩衝部材の構成と組立順を示すための粘着テープ貼付時の柔軟部の斜視図、[E]は、緩衝部材の構成と組立順を示すための緩衝部材の完成時の斜視図
【図7】[A]は、衝撃保護装置に下方から衝撃を加える前の模式的断面図、[B]は、衝撃保護装置に下方から弱い衝撃を加えた時の模式的断面図、[C]は、衝撃保護装置に下方から強い衝撃を加えた時の模式的断面図、[D]は、緩衝部材の模式的斜視図
【図8】[A]は、柔軟部に余材部を設けていないときのHDDに伝わる衝撃波形を示したグラフ、[B]は、柔軟部に余材部を設けたときのHDDに伝わる衝撃波形を示したグラフ
【図9】[A]は、衝撃保護装置をノートPC筐体内に収容したときの余材部のある緩衝部材の詳細を示す模式的断面図、[B]は、衝撃保護装置をノートPC筐体内に収容したときの余材部のない緩衝部材の詳細を示す模式的断面図
【図10】[A]は、基材部を柔軟部に固定しない場合に図上方から荷重を加えたときの基材部、柔軟部の変形のようすを示す模式的断面図、[B]は、基材部を柔軟部に固定した場合に図上方から荷重を加えたときの基材部、柔軟部の変形のようすを示す模式的断面図
【図11】柔軟部のみの緩衝部材、柔軟部に基材部を埋没させ、境界面を接着固定した緩衝部材、柔軟部のスリットに基材部を挿入して、境界面を固定せず構成した緩衝部材の各々に上方から荷重を加えたときの変形量ΔLを示したグラフ
【図12】ストッパを配置した衝撃保護装置で覆われてその内部に実装されたHDDを示す、HDDユニットの模式的分解斜視図
【図13】[A]は、実施の形態2のHDDを収容した衝撃保護装置に下方から衝撃を加えたときの緩衝動作を説明する、筐体に収容されたHDDユニットの模式的断面図[B]は、実施の形態1のHDDを収容した衝撃保護装置に下方から衝撃を加えたときの緩衝動作を説明する、筐体に収容されたHDDユニットの模式的断面図
【図14】従来の緩衝部材を介して内蔵された状態を示す電子機器の模式的斜視図
【図15】従来の緩衝部材の第2例の模式的正面図
【図16】従来の緩衝部材の第3例の模式的正面図
【図17】従来の緩衝部材の第4例の模式的斜視図
【符号の説明】
【0094】
11 ハードディスクドライブ(HDD)
12 衝撃保護装置
s11〜s15 緩衝部材
p 包装材
h11 ハードディスクドライブ本体
h12 ケーブルユニット
p11,p12 包装材の舌部
St ストッパ
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝部材、衝撃による影響を受けやすい装置であるハードディスクドライブの衝撃保護装置に関し、さらに詳述すれば、ハードディスクドライブが搭載された携帯情報機器の落下時の衝撃から当該ハードディスクドライブを保護する緩衝部材、この緩衝部材により構成された衝撃保護装置、およびハードディスクドライブを収容した衝撃保護装置を内蔵する携帯情報機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハードディスクドライブ(以下「HDD」と略称する)は、高速で回転するディスクの表面から所定の離間距離(以下、「浮上スペーシング量」という)を保つヘッドロード状態で磁気ヘッドを移動させて、目的の記録位置にデータを記録する或いは再生する装置である。このようなHDDの記録密度向上のため、ディスク表面と磁気ヘッドとこれらの間の浮上スペーシング量は、年々小さくなる傾向にある。
【0003】
そのために、HDDの動作中に、特にディスク面に対して垂直な方向に衝撃力が加わると、磁気ヘッドが浮上スペーシング量以上に変位してディスク表面を叩く、ヘッドスラップと呼ばれる現象が起こり易くなっている。ヘッドスラップはディスクの記録表面或いはヘッドの物理的損傷を招く。これにより、少なくともディスクの損傷部に対するデータの記録再生ができなくり、最悪の場合には、ディスクの全記録面が使用不可となり、つまりHDDが損壊する。
【0004】
HDDがデスクトップコンピュータに代表される据え置き型の情報機器に搭載されて使用される場合には、ヘッドスラップを招くような衝撃力がHDDに加わることは希である。一方、ノート型パーソナルコンピュータ(以降、「ノートPC」と略称する)に代表される携帯型情報機器に搭載されるHDDは、そのような衝撃力が加わる危険に常に曝されている。つまり、ノートPCはその携帯性ゆえに、ユーザが容易に持ち運んだり移動させたりできるのであるが、そのような運搬や移動時にはユーザが誤ってノートPCを机の角のような堅いものに打ち当てたり、落下させてしまい易い。ノートPCは携帯性を確保するために、軽量且つコンパクトに作成されており、そのような衝撃力が、内蔵されているHDDにも容易に伝わってしまい、その結果、HDDの損壊に至ってしまうことがある。
【0005】
そのため、近年、ノートPCに内蔵される小型のHDDは、特に動作時の耐衝撃性を増すために、磁気ヘッド待避機能が設けられている。例えば2.5インチHDDでは、非動作時或いは動作時であっても一定時間アクセス要求が無いアイドル状態時には、磁気ヘッドをディスクから離れた位置に配置された退避用部材の中に移動させ、その位置でロックするヘッドアンロード動作によって、ディスクから離間した位置に磁気ヘッドを待避させる。このような動作により、上述のディスクの記録面に対して垂直に働く衝撃力による磁気ヘッド或いはディスク表面の物理的損傷が回避される。
【0006】
つまり、動作モード的にHDDのディスクの記録面上に磁気ヘッドを位置させる必要が無い場合には、ヘッドをディスクから待避させて、ヘッドスラップの発生を未然に防止している。
【特許文献1】特開平11−242881号公報
【特許文献2】特開2004−315087号公報
【特許文献3】特開平2−205579号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、磁気ヘッドのディスクへのアクセス動作中(HDDのアクセス動作時)は、当然のことながら磁気ヘッドはヘッドロード状態に在るので、垂直方向の衝撃力が加わればヘッドスラップを生じてディスクが損傷する。つまり、HDDのアクセス動作時では、ディスク面に垂直方向の衝撃力が加わればヘッドスラップを生じてディスクが損傷する可能性は依然高く、HDDのアクセス動作時にユーザが誤って堅いものに打ち当てたり、落下させてしまうといったようなHDD耐衝撃性に対しては対応できていない。また、机上にノートPCを置いたとき、あるいは鞄にノートPCをいれて持ち運ぶときのような日常的にHDDに加わる小さい衝撃、周波数の高い繰り返しの振動もHDD、ディスク面にとって損傷の原因となる。以下、従来のHDD等の電子機器に用いられる緩衝部材、および電子機器への搭載構造について、図面を用いて説明する。
【0008】
図14は、従来の緩衝部材を介して内蔵された状態を示す電子機器の模式的斜視図である。電子機器10が落下等の衝撃を受けた場合に、電子機器10の四隅の各面に装着された緩衝部材31によって、電子機器10本体が受ける衝撃力を緩和するようになされている。
【0009】
また、衝撃緩衝特性の異なる複数の材料の組み合わせにより構成した緩衝部材が提案されている。
【0010】
図15は、電子機器10と、電子機器10の収容部(図示せず)との間に、複数の部材からなる振動・衝撃を吸収する緩衝部材を設けた例を示す、模式的正面図である。
【0011】
図15においては、圧縮弾性率の高い第1の緩衝部材41と、圧縮弾性率の低い第2の緩衝部材42により緩衝部材が構成されている。弱い衝撃が電子機器10に加わった場合には、柔らかい第1の緩衝部材42のみによって柔らかく衝撃を吸収する。さらに、強い衝撃が電子機器10に加わった場合には、柔らかい第1の緩衝部材42で吸収しきれない衝撃を新たに付加した硬い第2の緩衝部材41で吸収する、2段階構造にしている。したがって、いずれの緩衝部材もそれぞれの弾性変形により衝撃を吸収している。この構成により、単一の緩衝部材に比べて、弱い衝撃から強い衝撃までの幅広い衝撃に対して、効果的に対応することができる。
【0012】
なお、関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【0013】
しかしながら、図15に示すような緩衝部材および衝撃緩衝方法では、単に弾性変形によって衝撃を吸収させるものである限り、その衝撃力を有効に緩和して、電子機器本体に致命的な損傷がないようにすることは困難であると考えざるをえない。
【0014】
図16は、第1の緩衝材51の中に、シート状の第2の緩衝材52を配置した複合部材で構成し、一体成形した従来の緩衝部材の例を示す、模式的正面図である。
【0015】
この緩衝部材においては、電子機器10に衝撃が加わった際に、緩衝材52の屈曲により衝撃を吸収してから、さらに屈曲部での座屈により衝撃を吸収するので、比較的長い時間にわたって衝撃圧縮力を受けとめることができ、緩衝性能を十分に発揮させることが可能な緩衝部材が得られる。
【0016】
なお、関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献2が知られている。
【0017】
しかしながら、図16に示すような緩衝部材および衝撃緩衝方法では、弱い衝撃の時にはシート状の第2の緩衝材52が屈曲せず緩衝効果がなかった。また、電子機器10は発する高周波振動をシート状の第2の緩衝材52を介して、電子機器10を収容している製品の筐体に伝播していた。ノートPCの場合であれば、ハードディスク装置の振動を、筐体側に伝えることになり、使用者がノートPCの触れる筐体部分にこの振動が伝わり、製品の品格上の問題となっていた。
【0018】
図17は、包装材料での緩衝材の複合化の従来例を示す、模式的斜視図である。
【0019】
この例においても、複数の緩衝材を一体成形し、緩衝材61内部に埋設された座屈材62を座屈させることにより、緩衝性能を向上させている。なお、座屈材62は緩衝材61と一体成形されている。また、座屈材62は緩衝材61よりも厚み方向に短くすることにより、被包装体を傷つけないように考慮されている。
【0020】
なお、関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献3が知られている。
【0021】
しかしながら、図17に示す例においても、緩衝材と座屈材が一体成形されている以上は、図16に示す例と同様に座屈材を通して衝撃を伝播していた。
【0022】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、落下等の非常に大きな衝撃から日常動作等の小さな衝撃、繰り返しの振動など、幅広い衝撃の緩衝ができる緩衝部材、衝撃保護装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
そのために本発明は、圧縮変形するクッション性能を有する柔らかい略直方体形状の第1の緩衝材(柔軟部)と、柔軟性を有し樹脂材料で構成された略長方形状でシート状の第2の緩衝材(基材部)とで緩衝部材を構成する。第1の緩衝材の一面より略垂直に途中まで切り込みを入れスリットを形成し、第2の緩衝材を第1の緩衝材に形成されたスリットに挿入し、取り付けて構成した複合部材であることを特徴とする緩衝部材である。
【0024】
このような構成によって、比較的弱い衝撃力は柔軟部のスリットを形成しなかった余材部で吸収され、余材部で吸収しきれなかったより大きな衝撃力を柔軟部と基材部の相互の作用で吸収するので、ユーザが誤ってノートPCを落下させたときのような大きな衝撃から、机上にノートPCを置いたとき、鞄にノートPCをいれて持ち運ぶときのような日常的な小さい衝撃まで、幅広い衝撃に対して緩衝効果が得られる。
【発明の効果】
【0025】
以上のように本発明の緩衝部材は、このような構成によって、比較的弱い衝撃力は柔軟部のスリットを形成しなかった余材部で吸収され、余材部で吸収しきれなかったより大きな衝撃力を柔軟部と基材部の相互の作用で吸収するので、ユーザが誤ってノートPCを落下させたときのような大きな衝撃から、机上にノートPCを置いたとき、鞄にノートPCをいれて持ち運ぶときのような日常的な小さい衝撃まで、幅広い衝撃に対して緩衝効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、図1から図13Bまでを用いて説明する。
【0027】
(実施の形態1)
図1に、本発明にかかるハードディスクドライブの衝撃保護装置がノートPCに組み込まれている一例の模式的分解斜視図を示す。HDD11は衝撃保護装置12で覆われて、その衝撃保護装置12の内部に実装され、衝撃保護装置12と共にノートPC19に実装されている。
【0028】
この衝撃保護装置12は本発明の衝撃保護装置の実施の形態1であり、このノートPC19は本発明の衝撃保護装置を用いた携帯情報機器の実施の形態1ある。
【0029】
図2は、衝撃保護装置12で覆われてその内部に実装されたHDD11を示す模式的斜視図である。
【0030】
図2では、HDD11が衝撃保護装置12の内部に実装されている状態を、拡大して示している。この状態でノートPCに実装される。
【0031】
図3〜図5は、衝撃保護装置12の組立とHDD11を実装する手順を示す模式的斜視図と模式的分解斜視図である。
【0032】
図4及び5において、衝撃保護装置12は、4個一組の緩衝部材s11、4個一組の緩衝部材s12、2個一組の緩衝部材s13、2個一組の緩衝部材s14、1個の緩衝部材s15を備えている。包装材pは薄い樹脂製のシート材であり、図3のように裁断され、折り曲げて成型し、折り曲げてできる空間にHDDのような衝撃に対して弱い装置を収容する。
【0033】
また、図5に示すHDD11は、HDD本体h11と、HDDの駆動、あるいは記録、再生データの信号受け渡しのためのコネクタ、およびフラットケーブルからなるケーブルユニットh12とからなる。
【0034】
図6A〜図6Eは、緩衝部材s11の構成と組立順を示す斜視図である。
【0035】
図6A〜図6Eにおいて、緩衝部材s11は、押圧すると圧縮変形するクッション性能を有する柔らかい、幅長X1、長手方向長Y1、厚み長Z1からなる、略直方体形状の柔軟部(第1の緩衝材)s111と、柔軟性を有し樹脂材料で構成された、長手方向長Y4、幅長Z4からなる、略長方形形状でシート状の基材部(第2の緩衝材)s112と、基材部s112が柔軟部s111のスリットから脱落するのを防止する粘着テープs113と、緩衝部材s11を包装材pに固着するための両面粘着テープs114からなる。
【0036】
柔軟部s111の材料はウレタン発泡材などのクッション材料、基材部s112は一般的なポリエチレンのようなシート材料で構成される。
【0037】
なお、図4に示す緩衝部材s11以外の緩衝部材s12〜s15は柔軟部s111と両面粘着テープs114のみからなる。
【0038】
図2〜5を用いて本発明の衝撃保護装置の組立と、HDDを実装する手順の詳細を説明する。
【0039】
まず、図3に示す包装材pに、図4に示すように緩衝部材s11〜s15を両面粘着テープs114によって、包装材pの各面に貼付固着する。x印は図4に示す包装材pの紙面裏面側、●印は図4に示す包装材pの紙面手前側に、緩衝部材s11〜s15をそれぞれ貼付して衝撃保護装置12を完成する。
【0040】
次に、図5のようにHDD11を、包装材pを折り曲げてできる空間に収容し、包装材pの舌部p11、p12を両面粘着テープ等で留める。これにより図2に示すような、HDD11が衝撃保護装置12で覆われてその内部に収容された、HDDユニットを完成する。
【0041】
HDD11は、内部に実装されたディスク面に垂直な方向に対して衝撃に弱い。従って緩衝部材s11は、HDD11のディスク面に平行な面に対応する包装材pの面に、両面粘着テープs114を用いて貼付するのが好ましい。
【0042】
次に、緩衝部材s11の組立手順を、図6A〜図6Eを用いて説明する。
【0043】
図6Aの柔軟部s111の塊に、柔軟部s111の一面より面に略垂直に反対面まで切り込むのではなく、図6Bに示すように余材部分(長さLwに相当)を残して途中まで切り込みを入れる。図6BではX−Y面より略垂直に、幅方向Xに略等間隔に長手方向Yに、Y−Z面に平行に、余材部W(長さLw)を残して深さZ2の複数(図6Bでは3つ)の切り込みを入れ、スリットを形成する。さらに、図6Cに示すように、略長方形に裁断した基材部s112を、形成されたスリットに挿入する。、最後に、図6Dに示すように、基材部s112の脱落防止用の粘着テープs113を、柔軟部s111のスリットの切り口を覆うように貼付し、スリットの切り口が形成された反対面に、緩衝部材s11を包装材pに固着するための両面粘着テープs114を貼付して、図6Eの緩衝部材s11が完成する。
【0044】
なお、図6Cにおいて、基材部s112を柔軟部s111に形成されたスリットに挿入するのみで、接着剤等で固定せず、柔軟部s111と基材部s112との境界面において摺動可能に取り付ける。さらに、柔軟部s111と基材部s112との境界面では滑り易くするために、基材部s112に水分など付着しないようにするほうが良い。
【0045】
また、基材部s112のスリット深さに対応した幅寸法Z4は、基材部s112がスリットに完全に挿入して納まるように、柔軟部s111のスリットの深さZ2=Z1−Lwに等しいか、または短くなり(Z4≦Z2=Z1−Lw)、長手方向の寸法Y4は柔軟部s111の長手方向の寸法Y1に略等しくなるように、基材部s112を予め裁断しておく。また、柔軟部s111のスリット間隔は、柔軟部s111のX方向両端〜スリット間はX2、スリット〜スリット間はX3になるように、柔軟部s111に切り込みを入れる。すなわちX方向両端〜スリット間の寸法を等しく、また、スリット〜スリット間の寸法を等しくするように、スリットを形成する。
【0046】
また、スリットは複数である必要はなく、一つであってもよい。また、必ずしも3個に限るものではなく、それ以上かそれ以下であってもよい。
【0047】
以下に本発明の緩衝部材、衝撃保護装置の緩衝動作について図7A〜図11を用いて説明する。
【0048】
図7A〜図7Dは、HDD11を収容した衝撃保護装置12に、下方から衝撃を加えたときの緩衝動作を説明する模式的断面図である。図1で言えば、ノートPCを図1下方に落下させた場合に相当する。
【0049】
図7Aは、衝撃が加わる前の筐体に収容されたHDDユニットの模式的断面図で、下方から衝撃が加わると、図7Bに示すように、先に緩衝部材s11の柔らかい柔軟部s111の余材部Wが大きく圧縮され、衝撃力がこれ以上加わらない場合には、この状態から図7Aの元の状態に、緩衝部材s11を含めた各緩衝部材は復元する。
【0050】
図7Bの状態から、さらに大きな衝撃力が緩衝部材s11下方から加わると、図7Cに示すように、余材部Wで吸収しきれなかった衝撃力は柔軟部s111と基材部s112の相互の作用で吸収する。すなわち基材部s112は屈曲、変形して、柔軟部s111は基材部s112が折れ曲がらないように周囲より支持する。このように、比較的弱い衝撃力は柔軟部s111の余材部Wで吸収され、余材部Wで吸収しきれなかったより大きな衝撃力を柔軟部s111と基材部s112の相互の作用で吸収する。なお、図7Dは緩衝部材s11の模式的斜視図であり、Xは緩衝部材の幅方向、Yは緩衝部材の長手方向、Zは緩衝部材の厚み方向を示し、Lwは余材部Wの厚みを示している。
【0051】
また、緩衝部材s11の余材部Wにより、別の効果を奏することを図8A〜図9Bを用いて説明する。
【0052】
この柔らかい材質の柔軟部s111の厚み方向全域(Z1に相当)にわたってスリットを入れずに、余材部Wを残すことによって、ノートPC筐体から伝播する周波数の高い、HDD11には有害な振動を遮断する効果がある。また、逆に、動作中のHDD11側の振動が、ノートPC筐体側へ伝播するのを遮断することもできる。
【0053】
図8Aは、柔軟部s111に余材部Wを設けていないときに、HDD11に伝わる衝撃波形を示したグラフ、図8Bは、柔軟部s111に余材部Wを設けたときに、HDD11に伝わる衝撃波形を示したグラフであり、余材部Wを設けることによって高周波の衝撃が遮断されることを示し、余材部Wの有効性を明示している。
【0054】
図9A、図9Bは、衝撃保護装置をノートPC筐体内に収容したときの、緩衝部材の詳細を示す模式的断面図である。図9Aは緩衝部材s11に余材部Wのある場合、図9Bは緩衝部材s11に余材部がない場合を示し、それぞれを比較する説明図である。
【0055】
あらかじめ決められた高さLtのノートPCの収容スペースに、HDD11を収容した衝撃保護装置12を設置する場合、
「Ls11+Lpt+Ls12≧Lt」
の関係にあることが好ましい。
【0056】
ここで、Ls11は緩衝部材s11の厚み(図6AのZ1と同じ)、LptはHDD1を収容する包装材pを組み立てて完成する衝撃保護装置12の厚み方向の寸法、Ls12は緩衝部材s12の厚みである。
【0057】
もしも逆の関係、「Ls11+Lpt+Ls12<Lt」にあると、衝撃保護装置12は何らかの方法で固定しないと、ノートPC筐体内の収容スペースを滑って移動してしまうからである。すなわち、ノートPCの収容スペースの高さより若干高めに衝撃保護装置12の高さと緩衝部材の厚みを設定するのであるが、図9Bに示すように、緩衝部材s11に余材部Wが無いと収容スペースに収容する際に、基材部s112が屈曲した状態で収容される。これは図7Cの状態に近く、つまり、衝撃力が加わらない状態であるににもかかわらず、基材部s112がすでに衝撃力を受けたように屈曲、または座屈してしまい、その衝撃力吸収能力を損なわれている。
【0058】
また、図9Aの緩衝部材s11に余材部Wのある、衝撃保護装置12をノートPC筐体内に収容したときの緩衝部材s11に関して、
「A<L<A+Lw」
であり、なおかつ「ΔLw=(A+Lw)−L」とすると
「ΔLw/Lw<0.3」
であることが好ましい。
【0059】
ただし、Aは基材部s112の柔軟部s111に形成したスリット深さに対応した辺の長さ(図6CのZ4と同じ)、Lは緩衝部材s11が当接するノートPCの筐体端から緩衝部材s11を貼付した包装材pの面までの長さ(距離)、Lwは衝撃保護装置をノートPCに実装する前(押し縮められる前)の余材部Wの元の寸法(厚み)、ΔLwは衝撃保護装置をノートPC筐体内に収容したとき、余材部Wが押し縮められる寸法(厚み)である。
【0060】
すなわち、衝撃保護装置12をノートPC筐体内に収容したとき、余材部Wが押し縮められる割合を0.3未満にすることにより、次の(効果1)〜(効果3)のような効果を十分引き出すことができる。
【0061】
(効果1)ノートPC筐体内の予め決められた空間に衝撃保護装置12を収容したとき、基材部s112を屈曲させることなく、その衝撃力吸収能力を最大限に生かすことができる。
【0062】
(効果2)ノートPC筐体から伝播する周波数の高いHDDには有害な振動を、有効に遮断することができる。
【0063】
(効果3)ノートPC筐体内の予め決められた空間内に、固定手段を用いることなく衝撃保護装置を安定的かつ確実に収容することができる。
【0064】
また、図6Cの説明で、「基材部s112を柔軟部s111に形成されたスリットに挿入するのみで、接着剤等により固定せず柔軟部s111と基材部s112との境界面において摺動可能に取り付ける」とした。さらに、「柔軟部s111と基材部s112との境界面では滑り易くするのが良い」と説明した。また、「基材部s112を柔軟部s111に固定しないため、基材部s112の柔軟部s111よりの脱落防止のために、脱落防止用粘着テープs113を柔軟部s111のスリットの切り口を覆うように貼付する」と説明した。
【0065】
この理由を、図10A、図10B及び図11を用いて説明する。
【0066】
図10Aは基材部s112を柔軟部s111に固定しない場合、図10Bは基材部s112を柔軟部s111に固定した場合に、それぞれ図の上方から荷重Fを加えたときの基材部s112、柔軟部s111の変形のようすを示す模式的断面図である。
【0067】
図10Aでは図7A〜図7Dの説明同様、図上方から荷重Fを加えたとき(図10Aの一番上の図)、先に柔らかい柔軟部s111の余材部Wが大きく圧縮され(図10Aの中央の図)、この状態からさらに大きな力が加わると、余材部Wで吸収しきれなかった力は基材部s112が屈曲して、柔軟部s111が基材部s112の周囲より支持する(図10Aの一番下の図)。基材部s112は屈曲し、柔軟部s111は圧縮して変形するのでその境界面では変形量にズレがあり、変形量の差は互いに滑り合いながら屈曲または圧縮して変形し、変形量の差を吸収するので、固定されず、むしろ上記の境界面は滑り易いほうが好適である。
【0068】
図10Bのように、基材部s112を柔軟部s111に埋没させ、境界面を動かないように固定すると、図上方から荷重を加えたとき(図10Bの一番上の図)、荷重に比例して柔軟部s111は変形し、柔軟部s111と基材部s112の境界面は固定されているので、基材部s112は柔軟部s111の圧縮された変形量に追従するように変形し、基材部s112は圧縮する材質でなく弾力的に曲がる性質であるので、柔軟部s111との境界面に引っ張られるように座屈して(折れ曲がって)変形する(図10Bの中央の図,図10Bの一番下の図)。従って、基材部s112の弾力的に屈曲して衝撃を吸収する性質が生かされず、柔軟部s111の硬度を高くする機能しか為さない。
【0069】
図11は、柔軟部のみからなる緩衝部材(a)、基材部s112と柔軟部s111からなり、柔軟部s111に基材部s112を埋没させ、境界面を接着固定した緩衝部材(b)、本発明の、基材部s112と柔軟部s111からなり、柔軟部s111のスリットに基材部s112を挿入して、境界面を固定せず滑りやすくして構成した緩衝部材(c)の、各緩衝部材に上方から荷重Fを加えたときの、荷重Fと変形量ΔLの関係を示した図である。
【0070】
緩衝部材(a)の荷重Fに対する変形量ΔLは、ほぼ正比例して増加する。
【0071】
緩衝部材(b)では、上方から荷重Fを加えたとき、基材部s112は柔軟部s111の硬度を高くするのみなので、柔軟部s111、基材部s112は共に荷重Fに比例して、緩衝部材(a)よりも少しずつ変形量を増し、柔軟部s111の圧縮変形に追従するように基材部s112も屈曲する。そして、図11のグラフ中に示した座屈材(基材部s112に相当)が折れる点で変形が急速に進んで座屈する(折れ曲がる)。基材部s112は座屈により変形率が増して、荷重Fに対する変形量ΔLは座屈する以前に比較してより増加傾向を示し、ほぼ緩衝部材(a)と同程度の増加率となる。
【0072】
一方、本発明の緩衝部材(c)では、上方から荷重Fを加えたとき、初めは先に柔らかい柔軟部s111の余材部Wから圧縮されるので、柔軟部のみの緩衝部材(a)に近い変形量ΔLとなる。その後、さらに荷重Fが加わると、余材部Wで吸収しきれなかった力は基材部s112が屈曲して、柔軟部s111が基材部s112の周囲より支持するので、今度は緩衝部材(b)の変形の特性に近づくような変形の特性を示す。基材部s112は屈曲はするが、緩衝部材(b)のような折れ曲がりは起こらないので、滑らかな曲線特性となる。なお、図11の緩衝部材(c)の曲線特性のグラフにおいて、余材部W(W部)により弱い衝撃や高周波振動を吸収する領域を、楕円で囲み示した。
【0073】
本発明の緩衝部材(c)では、基材部s112は屈曲はするが、緩衝部材(b)のように座屈する可能性が少なく、大きな衝撃力を受けた後でも座屈痕(折り目)を生じることは無く復元するので、基材部s112の緩衝性能は変わらず回復する。従って、緩衝部材の交換の必要もなく、次のノートPCの落下、衝撃に、即座に備えることができる効果もある。
【0074】
換言すれば、基材部s112は一度、折り目を生じるまで座屈してしまうと、緩衝部材s11の復元時に基材部s112は完全には元の状態に回復することなく、基材部s112がもつ本来の緩衝性能も保持できないので、次のノートPCの落下、衝撃に備えることができない。従って、衝撃保護装置12ごと取り替えるか、または緩衝部材s11を剥がして交換するしかなく、座屈する可能性が大きな場合には、好ましい緩衝部材とは言い難い。
【0075】
以上のように本実施の形態によれば、比較的弱い衝撃力は柔軟部s111の余材部Wで吸収され、余材部Wで吸収しきれなかったより大きな衝撃力を柔軟部s111、基材部s112の相互の作用で吸収する。従って、ユーザが誤ってノートPCを落下させたときのような大きな衝撃から、机上にノートPCを置いたときや、鞄にノートPCを入れて持ち運ぶときのような日常的な小さい衝撃まで、幅広い衝撃に対して有効に緩衝効果が得られる。
【0076】
また、落下時に発生する筐体側の高周波衝撃のHDD11側への伝播を遮断し、さらに緩衝性能を向上することができる。また、逆に、動作中のHDD11側の振動が筐体側へ伝播するのを遮断することもできる。
【0077】
また、緩衝部材s11に余材部Wを残すことで、ノートPC筐体内の予め決められた空間に衝撃保護装置12を収容したとき、基材部s112を屈曲させることなく、その衝撃力吸収能力を生かす効果がある。また、ノートPC筐体内の予め決められた空間に、固定手段を用いず衝撃保護装置12を安定的かつ確実に収容することも可能である。
【0078】
さらに、緩衝部材s11が大きな衝撃力を受けたときに、基材部s112を柔軟部s111に固定しないで構成したことで、柔軟部s111は圧縮して変形し、基材部s112は屈曲して生ずるそれぞれの境界面における変形量のズレを、境界面を接着固定しないことで吸収することができる。従って、基材部s112は屈曲はするが、座屈して座屈跡を生じること無く復元するので、緩衝部材の交換の必要もなく、次の落下等の衝撃に即座に備えることができる。
【0079】
なお、緩衝部材s11は衝撃保護装置12のs11のみに適応したが、緩衝部材s12を始めとするその他の緩衝部材(図4に示す緩衝部材s12〜s15)に適応してもよい。
【0080】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2は、多くの点で本発明の実施の形態1と同様であるので、同じ部分については同一番号を付してその説明を省略し、実施の形態2が実施の形態1と異なる部分だけを説明する。
【0081】
図12は、衝撃保護装置で覆われてその内部に実装されたHDDを示す、HDDユニットの模式的分解斜視図である。
【0082】
図13A及び図13Bは、HDD11を収容した衝撃保護装置12に、下方から衝撃を加えたときの緩衝動作を説明する模式的断面図である。図1で言えば、ノートPCを図下方に落下させた場合に相当する。
【0083】
実施の形態2が実施の形態1と異なるのは、ストッパである突起物Stを、緩衝部材s11側部付近の包装材pに固着した点である。
【0084】
図12に示すように、衝撃保護装置12を構成する包装材pの、緩衝部材s11が貼り付けられている側部の付近に、突起物Stが貼り付けられている。
【0085】
図13Bの上の図は、衝撃が加わる前の筐体に収容されたHDDユニットの模式的断面図で、ストッパStがない場合であり、本発明の実施の形態1に相当する。
【0086】
緩衝部材s11の基材部s112では吸収しきれない極めて強い衝撃が加わったときには、図13Bの下の図のように、基材部s112は折り目ができる程度まで座屈してしまい、その後、緩衝部材s11は柔軟部s111の作用によって復元するものの、折り目ができた基材部s112は元の緩衝性能を保持していない。
【0087】
一方、図13Aの上の図は、衝撃が加わる前の筐体に収容されたHDDユニットの模式的断面図で、ストッパStを取り付けた場合であり、本発明の実施の形態2に相当する。
【0088】
緩衝部材s11に基材部s112では吸収しきれない極めて強い衝撃が加わったときには、図13Aの下の図のように、ストッパStの高さLhstだけ衝撃保護装置12とノートPC筐体の間隔が維持されるので、基材部s112は折り目ができるまで座屈せず、緩衝部材s11は復元後には元の緩衝性能を保持し、次の落下等の衝撃に備えることができる。
【0089】
なお、この時、ストッパStの高さLhstは、「Lw′<Lhst<L」の範囲であり、図13Aの下の図の状態で、基材部s112が座屈して折り目ができるまでに至らないように、長さLより十分小さい値に設定する。
【0090】
なお、LhstはストッパStの高さ、Lは緩衝部材s11が当接するノートPCの筐体端から緩衝部材s11を貼付した包装材pの面までの長さ(距離)、Lw′は衝撃保護装置12をノートPC筐体内に収容したとき(押し縮められた後)の余材部Wの寸法(厚み)である。
【0091】
以上のように本実施の形態2によれば、ストッパStを緩衝部材s11側部付近の包装材pに取り付けることで、緩衝部材s11の基材部s112では吸収しきれない極めて強い衝撃が加わったときでも、基材部s112は折り目ができるほど座屈せず、復元後、緩衝部材s11は元の緩衝性能を保持し、次の落下、衝撃に備えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明にかかる緩衝部材は、ユーザが誤ってノートPCを落下させたときのような大きな衝撃から、机上にノートPCを置いたときや、鞄にノートPCをいれて持ち運ぶときのような日常的な小さい衝撃まで、幅広い衝撃に対して緩衝効果が得られるといった効果を有し、ハードディスクドライブが搭載された携帯情報機器の落下時の衝撃からハードディスクドライブを保護する衝撃保護装置および衝撃保護装置に用いる緩衝部材として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明にかかるハードディスクドライブ衝撃保護装置がノートPCに組み込まれている一例を示す模式的分解斜視図
【図2】衝撃保護装置で覆われて内部に実装されたHDDを示す模式的斜視図
【図3】衝撃保護装置の組立とHDDを実装する手順を示すための包装材の模式的斜視図
【図4】衝撃保護装置の組立とHDDを実装する手順を示すための衝撃保護装置の模式的組立分解斜視図
【図5】衝撃保護装置の組立とHDDを実装する手順を示すためのHDDユニットの模式的分解斜視図
【図6】[A]は、緩衝部材の構成と組立順を示すための加工前の柔軟部の斜視図、[B]は、緩衝部材の構成と組立順を示すためのスリット形成後の柔軟部の斜視図、[C]は、緩衝部材の構成と組立順を示すためのスリット形成後の柔軟部の斜視図、[D]は、緩衝部材の構成と組立順を示すための粘着テープ貼付時の柔軟部の斜視図、[E]は、緩衝部材の構成と組立順を示すための緩衝部材の完成時の斜視図
【図7】[A]は、衝撃保護装置に下方から衝撃を加える前の模式的断面図、[B]は、衝撃保護装置に下方から弱い衝撃を加えた時の模式的断面図、[C]は、衝撃保護装置に下方から強い衝撃を加えた時の模式的断面図、[D]は、緩衝部材の模式的斜視図
【図8】[A]は、柔軟部に余材部を設けていないときのHDDに伝わる衝撃波形を示したグラフ、[B]は、柔軟部に余材部を設けたときのHDDに伝わる衝撃波形を示したグラフ
【図9】[A]は、衝撃保護装置をノートPC筐体内に収容したときの余材部のある緩衝部材の詳細を示す模式的断面図、[B]は、衝撃保護装置をノートPC筐体内に収容したときの余材部のない緩衝部材の詳細を示す模式的断面図
【図10】[A]は、基材部を柔軟部に固定しない場合に図上方から荷重を加えたときの基材部、柔軟部の変形のようすを示す模式的断面図、[B]は、基材部を柔軟部に固定した場合に図上方から荷重を加えたときの基材部、柔軟部の変形のようすを示す模式的断面図
【図11】柔軟部のみの緩衝部材、柔軟部に基材部を埋没させ、境界面を接着固定した緩衝部材、柔軟部のスリットに基材部を挿入して、境界面を固定せず構成した緩衝部材の各々に上方から荷重を加えたときの変形量ΔLを示したグラフ
【図12】ストッパを配置した衝撃保護装置で覆われてその内部に実装されたHDDを示す、HDDユニットの模式的分解斜視図
【図13】[A]は、実施の形態2のHDDを収容した衝撃保護装置に下方から衝撃を加えたときの緩衝動作を説明する、筐体に収容されたHDDユニットの模式的断面図[B]は、実施の形態1のHDDを収容した衝撃保護装置に下方から衝撃を加えたときの緩衝動作を説明する、筐体に収容されたHDDユニットの模式的断面図
【図14】従来の緩衝部材を介して内蔵された状態を示す電子機器の模式的斜視図
【図15】従来の緩衝部材の第2例の模式的正面図
【図16】従来の緩衝部材の第3例の模式的正面図
【図17】従来の緩衝部材の第4例の模式的斜視図
【符号の説明】
【0094】
11 ハードディスクドライブ(HDD)
12 衝撃保護装置
s11〜s15 緩衝部材
p 包装材
h11 ハードディスクドライブ本体
h12 ケーブルユニット
p11,p12 包装材の舌部
St ストッパ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮変形するクッション性能を有する略直方体形状の第1の緩衝材と、
柔軟性を有し樹脂材料で構成された略長方形状でシート状の第2の緩衝材とで構成され、
前記第1の緩衝材の一面より略垂直に余材部分を残して途中まで切り込みを入れスリットを形成し、
前記第2の緩衝材を前記第1の緩衝材に形成されたスリットに挿入し取り付けて構成した複合部材であることを特徴とする、緩衝部材。
【請求項2】
前記スリットの数は1以上であり、複数の場合は略等間隔に平行に切り込みを入れたスリットであることを特徴とする、請求項1に記載の緩衝部材。
【請求項3】
前記第2の緩衝材を前記第1の緩衝材に形成されたスリットに挿入し、前記第1の緩衝材と前記第2の緩衝材との境界面では摺動可能にして取り付けることを特徴とする、請求項1に記載の緩衝部材。
【請求項4】
前記一面より切り込みを入れた前記第1の緩衝材の切り口には前記第2の緩衝材の脱落防止のために粘着テープを貼付することを特徴とする、請求項1に記載の緩衝部材。
【請求項5】
前記スリットを形成する切り込み深さは、前記第2の緩衝材の当該切り込み深さに対応する辺の長さと等しいかまたは長いことを特徴とする、請求項1に記載の緩衝部材。
【請求項6】
シート材を裁断、折り曲げて成型し、折り曲げてできる空間に装置を収容する包装材を備え、
請求項1に記載の緩衝部材を前記包装材の面に貼付したことを特徴とする、衝撃保護装置。
【請求項7】
前記緩衝部材は、前記収容する装置の衝撃に対して弱い面に対応する前記包装材の面に、両面粘着テープにより貼付することを特徴とする、請求項6に記載の衝撃保護装置。
【請求項8】
前記各緩衝部材側部付近の前記包装材に、ストッパである突起物を固着したことを特徴とする、請求項6に記載の衝撃保護装置。
【請求項9】
携帯情報機器に装着される請求項6から8のいずれか1項に記載の衝撃保護装置であって、
Aは前記第2の緩衝材の前記スリットを形成する切り込み深さに対応した辺の長さ、
Lは前記衝撃保護装置が当接する前記携帯情報機器の筐体端から前記衝撃保護装置の面までの長さ(距離)、
Lwは前記衝撃保護装置を前記携帯情報機器に実装する前(押し縮められる前)の前記余材部分の元の寸法(厚み)、
ΔLwは(A+Lw)−L、すなわち、前記衝撃保護装置を前記携帯情報機器筐体内に収容したときに前記余材部分が押し縮められる寸法(厚み)とするとき、
A<L<A+Lw
または
ΔLw/Lw<0.3
の関係のいずれかまたは両方が成立することを特徴とする、請求項6から8のいずれか1項に記載の衝撃保護装置。
【請求項10】
請求項6から8のいずれか1項に記載の衝撃保護装置を備えた携帯情報機器。
【請求項11】
請求項9に記載の衝撃保護装置を備えた携帯情報機器。
【請求項1】
圧縮変形するクッション性能を有する略直方体形状の第1の緩衝材と、
柔軟性を有し樹脂材料で構成された略長方形状でシート状の第2の緩衝材とで構成され、
前記第1の緩衝材の一面より略垂直に余材部分を残して途中まで切り込みを入れスリットを形成し、
前記第2の緩衝材を前記第1の緩衝材に形成されたスリットに挿入し取り付けて構成した複合部材であることを特徴とする、緩衝部材。
【請求項2】
前記スリットの数は1以上であり、複数の場合は略等間隔に平行に切り込みを入れたスリットであることを特徴とする、請求項1に記載の緩衝部材。
【請求項3】
前記第2の緩衝材を前記第1の緩衝材に形成されたスリットに挿入し、前記第1の緩衝材と前記第2の緩衝材との境界面では摺動可能にして取り付けることを特徴とする、請求項1に記載の緩衝部材。
【請求項4】
前記一面より切り込みを入れた前記第1の緩衝材の切り口には前記第2の緩衝材の脱落防止のために粘着テープを貼付することを特徴とする、請求項1に記載の緩衝部材。
【請求項5】
前記スリットを形成する切り込み深さは、前記第2の緩衝材の当該切り込み深さに対応する辺の長さと等しいかまたは長いことを特徴とする、請求項1に記載の緩衝部材。
【請求項6】
シート材を裁断、折り曲げて成型し、折り曲げてできる空間に装置を収容する包装材を備え、
請求項1に記載の緩衝部材を前記包装材の面に貼付したことを特徴とする、衝撃保護装置。
【請求項7】
前記緩衝部材は、前記収容する装置の衝撃に対して弱い面に対応する前記包装材の面に、両面粘着テープにより貼付することを特徴とする、請求項6に記載の衝撃保護装置。
【請求項8】
前記各緩衝部材側部付近の前記包装材に、ストッパである突起物を固着したことを特徴とする、請求項6に記載の衝撃保護装置。
【請求項9】
携帯情報機器に装着される請求項6から8のいずれか1項に記載の衝撃保護装置であって、
Aは前記第2の緩衝材の前記スリットを形成する切り込み深さに対応した辺の長さ、
Lは前記衝撃保護装置が当接する前記携帯情報機器の筐体端から前記衝撃保護装置の面までの長さ(距離)、
Lwは前記衝撃保護装置を前記携帯情報機器に実装する前(押し縮められる前)の前記余材部分の元の寸法(厚み)、
ΔLwは(A+Lw)−L、すなわち、前記衝撃保護装置を前記携帯情報機器筐体内に収容したときに前記余材部分が押し縮められる寸法(厚み)とするとき、
A<L<A+Lw
または
ΔLw/Lw<0.3
の関係のいずれかまたは両方が成立することを特徴とする、請求項6から8のいずれか1項に記載の衝撃保護装置。
【請求項10】
請求項6から8のいずれか1項に記載の衝撃保護装置を備えた携帯情報機器。
【請求項11】
請求項9に記載の衝撃保護装置を備えた携帯情報機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2008−291986(P2008−291986A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−238793(P2007−238793)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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