説明

緯糸の測長方法

【課題】超収縮糸の測長貯留動作時に緯糸の測長量を安定させ、緯止まりを防止する。
【解決手段】回転ヤーンガイド(2)の回転によって給糸体(18)から緯糸(3)を引き出してドラム(4)に巻き付ける型式の測長貯留装置(1)と、回転ヤーンガイド(2)と緯糸(3)の給糸体(18)との間に設けられ、緯糸(3)が走行する方向に空気を噴射する空気噴射ノズル(5)とを備えた流体噴射式織機において、前記回転ヤーンガイド(2)の回転速度の変化に応じて、空気による緯糸(3)への搬送力を前記回転速度の変化と同一の傾向に変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸び縮みしやすい緯糸を正確に測長できる測長方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のドラム式の測長貯留装置に、特に超収縮糸(伸び縮みする糸の周りにカバーリング糸が巻き付いている伸び縮みしやすい糸や、ガラス糸、カーボン糸などの弾性収縮のない糸)の緯糸を用いると、回転ヤーンガイドが測長貯留装置のドラムに緯糸を巻き付ける際に、緯糸は、伸ばされた状態で測長され、その状態で貯留される。その後、緯入れのために、緯糸が解舒されると、緯糸は、本来の状態に戻ろうとして縮んでしまい、測長量に比べて実際の緯糸の長さが不足するため、これがショートピックなどの緯止まりの原因となる。
【0003】
特許文献1では、ドラム型の緯糸測長貯留装置において、織機の運転中に、アーム(回転ヤーンガイド)の糸道内のノズルから圧縮空気を連続噴射または間欠噴射し、この噴射を織機の運転期間中に継続していることが開示されている。特許文献1に開示されている技術によると、噴射空気流によってドラムに対する巻き付け位置で、緯糸の張力が低くなるため、上記の問題点はある程度解決される。
【0004】
しかし、特許文献1のように、織機運転中に圧縮空気を継続して噴射していると、ドラムの巻き付けが終了しても、緯糸が圧縮空気によって余分に送られて、ドラム上に溜まり、これが測長貯留動作、さらに緯入れの障害となる。また、織機の停止中または回転ヤーンガイドが止まっている時、即ち緯糸がアーム(回転ヤーンガイド)の回転によって牽引されていない時でも、緯糸が圧縮空気に吹きさらされるため、緯糸がダメージを受け、織物品位が損なわれることもある。また、特許文献1ではアーム停止時(即ちアームの回転速度が0の時)の空気供給量がアーム回転時の空気供給量より大きいので、緯糸のダメージが大きくなる。
【特許文献1】実公昭63−48709号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、特に超収縮糸を用いた測長貯留動作時に、緯糸の測長量を安定させることによって、緯止まりを防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題のもとに、本発明に係る緯糸の測長方法は、回転ヤーンガイドの回転によって給糸体から緯糸を引き出してドラムに巻き付ける型式の測長貯留装置と、回転ヤーンガイドと緯糸の給糸体との間に設けられ、緯糸が走行する方向に空気を噴射する空気噴射ノズルとを備えた流体噴射式織機において、前記回転ヤーンガイドの回転速度の変化に応じて、空気による緯糸への搬送力を前記回転速度の変化と同一の傾向に変化させることを特徴とする。
【0007】
さらに、本発明に係る緯糸の測長方法において、回転ヤーンガイドの回転速度が減速し始めてから所定期間経過後に、緯糸への搬送力を低下させることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る緯糸の測長方法は、測長貯留装置の上流側の緯糸張力を検出し、緯糸張力が所定の緯糸張力になるように緯糸張力に応じて搬送力を変化させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、空気噴射ノズルへ圧縮空気を供給することによって、回転ヤーンガイドの回転速度の変化に応じて、空気による緯糸への搬送力をヤーンガイドの回転速度の変化と同一の傾向に変化させる、即ち回転ヤーンガイドの回転速度が減速した時に緯糸への搬送力を低下させるから、圧縮空気によって緯糸がドラム側に余分に送られて、ドラム上に溜まることを防止でき、また織機の停止中、または織機の運転中で回転ヤーンガイドの停止時に、緯糸への搬送力を低下または0にして、回転ヤーンガイドの動作状況に応じて緯糸への搬送力を変化させるから、その期間に圧縮空気の噴射によって緯糸がダメージを受けるのを防止できる。
【0010】
また同様に、回転ヤーンガイドの回転速度が減速し始めてから所定期間経過後に、緯糸への搬送力を低下させるか、0にすることによっても、緯糸がドラム上に余分に溜まることを防止でき、圧縮空気の噴射によって緯糸がダメージを受けるのを防止できる。
【0011】
測長貯留装置の上流側で緯糸張力を検出し、緯糸張力が所定の緯糸張力になるように緯糸張力に応じて搬送力を変化させると、緯糸張力に応じた圧縮空気の制御が可能となる。
【0012】
特に、ドラムに緯糸を巻き付ける際に、緯糸張力が高くなった時(回転ヤーンガイドの回転速度が上昇した時)には、空気噴射ノズルによる緯糸への搬送力を増加させて、緯糸の送りを大きくし、回転ヤーンガイドの回転によって緯糸が過度に引っ張られるのを防止して、緯糸張力を低下し(回転ヤーンガイドの回転速度が低下し)、逆に、織機の停止中または回転ヤーンガイドの停止した後に、空気噴射ノズルによる緯糸への搬送力を低下させるか0にさせて、緯糸が送られないようにして緯糸の緩みを防止するから、特に伸び縮みしやすい緯糸に対して、測長量が安定し、緯止まりを防止することができる。
【0013】
前記空気噴射ノズルへの圧縮空気の間欠供給にすると、噴射期間に、緯糸に対する圧縮空気の作用力即ち緯糸への搬送力を連続供給よりも小さく調節できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、流体噴射式織機の測長貯留装置、詳細には製織中に緯糸3の解舒量又はドラム4の貯留量を検出しながら回転ヤーンガイド2の回転速度が制御されている測長貯留装置1に緯糸牽引用の空気噴射ノズル5を組み込んだ例を示している。流体噴射式織機は、回転ヤーンガイド2の回転によって給糸体18から緯糸3を引き出してドラム4に巻き付ける型式の測長貯留装置1と、回転ヤーンガイド2と緯糸3の給糸体18との間に設けられ、緯糸3が走行する方向に空気を噴射する空気噴射ノズル5とを備えている。
【0015】
この例で、空気噴射ノズル5は、回転ヤーンガイド2の軸部分で緯糸3が進入する糸道の入口側に設けられている。緯糸3は、空気噴射ノズル5の内部に引き込まれ、回転ヤーンガイド2の軸部分から回転ヤーンガイド2の内部の糸道を通り、回転ヤーンガイド2の先端部分から出てドラム4の外周面に巻き付けられる。
【0016】
測長貯留動作時に、緯糸3は、測長貯留装置1の回転ヤーンガイド2の回転によって給糸体18から引き出され、ドラム4の外周面で係止ピン19に係止された状態で、ドラム4に巻き付けられ、所定の測長量に測長される。なお、係止ピン19は操作器20により駆動され、測長貯留動作時にドラム4の外周面に進出して、緯糸3を係止しているが、緯入れ時に後退することにより、緯糸3を解舒し、緯入れノズル21により緯入れされる。
【0017】
空気噴射ノズル5は、回転ヤーンガイド2と給糸体18との間にあって、測長貯留動作時に圧縮空気を噴射して緯糸3に搬送力を作用させることにより、緯糸3を測長貯留装置1側に向けて吹き送り、回転ヤーンガイド2の回転により引き出される緯糸3を補助的に牽引する。なお、圧縮空気は、エアー源6から圧力調整器7、電磁弁8を通じて空気噴射ノズル5に供給される。
【0018】
また、測長貯留装置1には緯糸解舒センサ22が備えられており、解舒時の緯糸3を検出する。
【0019】
回転ヤーンガイド2の動作および空気噴射ノズル5の噴射動作は、制御装置9によって制御される。詳細には、制御装置9は、織機の主軸10のエンコーダ11からの回転角度の信号を入力されると織機が稼動し始めたと判断し、回転ヤーンガイド2を回転させる(加速させる)と同時に制御装置9において回転ヤーンガイド2によって引き出される緯糸3の測長量を随時カウント(増加)する。回転ヤーンガイド2が数回回転し、所定の測長量に達すると、回転ヤーンガイド2が減速し始める。その後、係止ピン19が解舒されドラム4から緯糸3が円弧状に飛走する。解舒された飛走する緯糸3が緯糸解舒センサ22によって検出され、緯糸3の検出回数に応じて制御装置9に記憶されている測長量が減少すると、この減少量を補うべく回転ヤーンガイド2が再び加速される。その後、係止ピン19が突出し緯糸3が係止され、緯糸3の測長量が所定の測長量に達すると回転ヤーンガイド2が再び減速される。このように緯入れ毎に所定の測長量になるように回転ヤーンガイド2の加減速を行う。
【0020】
上記制御の他に緯糸解舒センサ22に代えて、ドラム4上の貯留量を検出するセンサを設け、貯留量が一定になるように回転ヤーンガイド2の回転を制御してもよい。
【0021】
また制御装置9は、回転ヤーンガイド2の回転速度に応じて空気噴射ノズル5の噴射動作を制御するために、ノズル噴射タイミング設定器12とノズル噴射制御器13とを内蔵している。ノズル噴射タイミング設定器12は、回転ヤーンガイド2の回転速度を判断できる信号、例えば回転ヤーンガイド2を駆動するモータ14に連結されているエンコーダ15の出力信号を随時取得しており、回転ヤーンガイド2の回転速度の変化に基づいて圧縮空気の噴射時期を決定する。具体的には、回転ヤーンガイド2の回転速度が設定下限値(下限のしきい値)以上となると、ノズル噴射タイミング設定器12は、噴射開始指令をノズル噴射制御器13に送り、また回転ヤーンガイド2の回転速度が減少して設定下限値を下回ると、ノズル噴射タイミング設定器12は、噴射終了指令をノズル噴射制御器13に送る。この設定下限値は、設定器16によって予め設定される。なお、回転ヤーンガイド2の回転速度を判断できる信号は、エンコーダ15からではなく、測長貯留装置1のインバータ電流から取得してもよい。
【0022】
ノズル噴射制御器13は、ノズル噴射タイミング設定器12から噴射開始指令を受け取ると、電磁弁8を開き、空気噴射ノズル5から圧縮空気の噴射を開始するとともに、ノズル噴射タイミング設定器12から噴射終了指令を受け取ると、電磁弁8を閉じ、空気噴射ノズル5から圧縮空気の噴射を終了する。このように、空気噴射ノズル5の噴射期間は、基本的にはノズル噴射タイミング設定器12により規制される。なお、噴射期間中の圧縮空気の圧力は、圧力調整器7により調整されている。
【0023】
またノズル噴射制御器13は、回転ヤーンガイド2の回転速度の大小に応じて作動することに代えて、回転ヤーンガイド2の回転中であって、緯糸3の張力の変化にもとづいてノズル噴射態様の制御を行うようにしてもよい。すなわち図7のように、制御装置9に内蔵されている図示しないノズル噴射制御器13は、測長貯留装置1の上流側に設けられた緯糸張力センサ17から緯糸3の張力(緯糸張力値)に比例する信号を受信しており、その緯糸張力値と目標緯糸張力値とを比較し、両者の大小関係に基づいて、予め設定したノズル噴射態様により、圧力調整器7、電磁弁8または圧力調整器7および電磁弁8を動作させてもよい。詳細には、回転ヤーンガイド2の回転速度が設定下限値を上回っている時に空気噴射ノズル5の噴射を行うと共に、緯糸張力センサ17により検出された経糸張力値と目標経糸張力値との大小関係に応じて、緯糸への搬送力を変更する。例えば、上記経糸張力値が目標経糸張力値より大きい場合は連続噴射を行い、上記経糸張力値が目標経糸張力値より小さい場合は間欠噴射を行う。
【0024】
図7は、緯糸張力センサ17を空気噴射ノズル5の下流側、詳細には空気噴射ノズル5と測長貯留装置1との間の緯糸3の経路上に設けた例である。空気噴射ノズル5は、図示しない適当な支持手段により保持されている。また、緯糸張力センサ17を回転ヤーンガイド2と空気噴射ノズル5の間の緯糸経路に位置するように、測長貯留装置1に内蔵してもよい。
【0025】
緯糸張力にもとづくノズル噴射態様の制御は、空気噴射ノズル5の噴射期間中にのみ行われ、緯糸張力にもとづいて緯糸3の送り量を調整し、緯糸張力値と目標緯糸張力値とを近づけるために行われる。なお、緯糸張力センサ17は、緯糸3に接して、その緯糸張力を検出し、電気信号を出力する。なお、目標緯糸張力値、ノズル噴射態様は、設定器16によって予め設定される。もっとも比較的伸び縮みしにくい糸を使用する場合は、緯糸張力センサ17を省き、上記ノズル噴射態様の制御を行わなくともよい。
【0026】
図1の例を示している図2のaは、横軸に時間を、縦軸に回転ヤーンガイド2の回転速度をとり、回転ヤーンガイド2の回転速度の変動を表している。図2のb〜cは、横軸に時間を、縦軸に圧縮空気供給量をとり、圧縮空気の供給量(圧力又は単位時間当たりの流量)およびその供給時期を表している。
【0027】
図2のaのように、通常、上記のようにドラム4での緯糸3の貯留量詳細には制御装置9に記憶されている測長量の増加または減少に応じて、回転ヤーンガイド2は回転速度の増減を繰り返す。図2のaの速度曲線によると、回転ヤーンガイド2の回転速度は、巻き始め時に加速した後、所定の速度で緯糸3をドラムに数回例えば3回巻き付け、その後、減速して巻き付けを終了することで山波形を描き、設定下限値より低い速度まで低下し、谷波形を描く。
【0028】
図2のbは、回転ヤーンガイド2の回転速度の変化に応じて、具体的には設定下限値に対する大小関係に応じて、圧縮空気の噴射・噴射終了を制御する例を示している。前記のように、測長貯留動作中に、回転ヤーンガイド2の回転速度が設定下限値以上になった時点で、ノズル噴射タイミング設定器12はノズル噴射制御器13に噴射開始指令を出し、回転ヤーンガイド2の回転速度が予め設定されている設定下限値を下回った時点で、ノズル噴射タイミング設定器12はノズル噴射制御器13に噴射終了指令を出す。このため、ノズル噴射制御器13は、回転速度の設定下限値≦回転速度の期間にわたって一定の圧力での下で電磁弁8を開き、空気噴射ノズル5から圧縮空気を噴射し、緯糸3を補助的に牽引する。このように回転ヤーンガイド2は、その回転による巻き付け動作によって、給糸体18から緯糸3を牽引するため、緯糸3は、まず回転ヤーンガイド2の回転による巻き付け動作によって、給糸体18から牽引されるが、それに加えて、空気噴射ノズル5からの圧縮空気の噴射によっても補助的に牽引されることになる。
【0029】
なお、大小比較の基準は、回転速度の設定下限値≦回転速度でなく、設定下限値<回転速度としてもよい。また、回転速度の設定下限値は0でもよいから、回転ヤーンガイド2が緯糸3を巻き始めた時点から、すなわち回転ヤーンガイド2の回転速度が上がり始めた直後から空気噴射ノズル5の噴射を始め、再び回転速度が0となった時に噴射を終了してもよい。
【0030】
つぎに、図3は、図2に示した回転ヤーンガイド2の回転速度に基づくノズル噴射制御に加え、緯糸張力センサ17により検出された緯糸張力値を予め設定されている目標緯糸張力値とするために、言い換えると緯糸張力値を目標緯糸張力値に近づけるために、緯糸張力センサ17により検出された緯糸張力値にもとづいて、空気噴射ノズル5のノズル噴射態様の制御する例である。なお、この目標緯糸張力値も設定器16により入力される。
【0031】
図3のbに示すように、緯糸張力センサ17により検出した緯糸張力値が目標緯糸張力値以上ならば、ノズル噴射制御器13は、図2のbと同じような圧縮空気の噴射の制御をする。したがって、この噴射期間に圧縮空気は連続供給(連続噴射)となる。
【0032】
しかし、測長貯留動作中に、空気噴射ノズル5の噴射期間中つまり回転速度の設定下限値≦回転速度の期間であって、緯糸張力センサ17により検出した緯糸張力値が目標緯糸張力値を下回ったとき、ノズル噴射制御器13は、電磁弁8を所定の短い周期で開閉を繰り返させ、圧縮空気を図3のcのように、間欠供給(間欠噴射)をさせ、緯糸3を余分に牽引しないようにすることによって、緯糸張力値を目標緯糸張力値に近づける。その後、検出された緯糸張力値が目標緯糸張力値を上回ったときは、ノズル噴射制御器13は、空気噴射ノズル5を連続噴射に戻し、緯糸3を補助的に牽引する。なお、電磁弁8の開閉の周期(パルス状開閉駆動のデューテイ比)は、設定器16により任意に設定できる。
【0033】
上記の例において、上記緯糸張力値が目標緯糸張力値を下回ったときに間欠噴射を行っていたが、噴射を停止させてもよい。
【0034】
またノズル噴射期間(開始・終了)の決定は、基本的には回転ヤーンガイド2の回転速度によって決定されるが、目標緯糸張力値に対して、検出された緯糸張力値に応じてノズルの供給圧力または供給流量を変化させてもよい。すなわち、例えば緯糸張力センサ17により検出された緯糸張力値が予め設定されている目標緯糸張力値を下回っているときは、圧力調整器7の調整によって、空気噴射ノズル5への供給圧力を低くするか、または供給流量を減少させてもよい。逆に、緯糸張力センサ17により検出された緯糸張力値が予め設定されている目標緯糸張力値以上のときは、圧力調整器7の調整によって、空気噴射ノズル5への供給圧力を高くするか、または供給流量を増加させてもよい。なお、圧力調整器7は、供給圧力を調整する電空比例弁または供給流量を調整する電動絞り弁のいずれかを含む。
【0035】
また、間欠噴射において、回転ヤーンガイド2の回転中であって、検出された経糸張力値に応じてノズル噴射期間を補助的に変化させてもよい。詳細には、ノズル噴射期間(開始・終了)は、前記のように、基本的には回転ヤーンガイド2の回転速度によって決定されるが、回転速度の設定下限値≦回転速度の期間において、緯糸張力センサ17により検出した緯糸張力値と目標緯糸張力値との偏差に基づいて噴射期間を変更する、例えば、目標緯糸張力値に対して検出された緯糸張力値がはるかに高いときほど、ノズル噴射期間を長くし、逆に緯糸張力値がわずかに低いときほど、ノズルの噴射期間を短くし、緯糸張力値がはるかに低いときはノズルの噴射を止めてもよい。
【0036】
さらに、図2のcは、織機の停止中または織機の運転中で回転ヤーンガイド2の停止時、言い換えると、回転ヤーンガイド2の回転速度が設定下限値以下または下回っている時にも、空気噴射ノズル5へ若干の圧縮空気の供給を行う例である。この例によると、ノズル噴射制御器13は、空気噴射ノズル5に対して常に一定の圧縮空気の供給を行うように制御されており、回転ヤーンガイド2が緯糸3を巻き始め、回転ヤーンガイド2の回転速度が設定下限値まで上昇した時点から、圧力調整器7によって空気噴射ノズル5への圧縮空気の供給圧力または供給流量を増加させ、その後、回転ヤーンガイド2の回転速度が設定下限値以下に低下したとき、供給圧力または供給流量を増加前の元の一定値まで低下させる。なお、図2のcの例では、ノズル噴射タイミング設定器12は高圧噴射の噴射開始指令または噴射終了指令を出す。
【0037】
また、前記のような回転ヤーンガイド2の回転速度に応じて空気噴射ノズル5の噴射を制御するのではなく、回転ヤーンガイド2の回転の加速または減速し始める時期からの期間に応じて空気噴射ノズル5の噴射を制御してもよい。
【0038】
図4のaは図2のaと同様に、横軸に時間を、縦軸に回転ヤーンガイド2の回転速度をとり、回転ヤーンガイド2の回転速度の変動を表している。図4のbも図2のbと同様に、横軸に時間を、縦軸に圧縮空気供給量をとり、圧縮空気の供給量(ノズル噴射態様)およびその供給時期を表している。
【0039】
図4のa、bによると、制御装置9から回転ヤーンガイド2を駆動するモータ14に加速指令を出力すると回転ヤーンガイド2は加速する。制御装置9の内部にはクロックが内蔵されており、モータ14に加速指令を出力されてからクロック信号をカウントし所定の期間t1が経過すると、ノズル噴射タイミング設定器12はノズル噴射制御器13に噴射開始指令を出す。その後、モータ14に減速指令を出力すると回転ヤーンガイド2は減速する。モータ14に減速指令を出力されてからクロックをカウントし所定の期間t2が経過すると、ノズル噴射タイミング設定器12は、ノズル噴射制御器13に噴射終了指令を出し、これを繰り返す。
【0040】
なお期間t1、t2、t3は、設定器16により0も含む値として予め任意に設定され、期間t1、t2、t3はそれぞれ同じ期間でも異なる時間値でもよい。期間t3は2回目の緯入れ以降の期間t1に相当する期間である。
【0041】
また、期間は時間ではなく回転ヤーンガイド2を駆動するモータ14の回転量でもよい。モータ14の回転量θはエンコーダ15の信号から取得する。詳細には期間t1、t2、t3をそれぞれ回転量θ1、θ2、θ3と置き換え、回転量θ1、θ2、θ3を設定器16により予め設定し、モータ14に加速指令を出力されてからモータ14の回転量をカウントし所定の回転量θ1(θ3)に達すると、ノズル噴射タイミング設定器12はノズル噴射制御器13に噴射開始指令を出す。その後、モータ14に減速指令を出力されてからモータ14の回転量をカウントし所定の回転量θ2に達すると、ノズル噴射タイミング設定器12はノズル噴射制御器13に噴射終了指令を出す。
【0042】
さらに、図4では期間t2経過後(回転ヤーンガイド2の回転減速時)に空気噴射ノズル5の噴射を停止していたが、期間t2経過後に間欠噴射にしてもよい。
【0043】
図5のa、bは、回転ヤーンガイド2の回転速度の変化に同期して、緯糸への搬送力を変化させた例である。図5のaは図2のaと同様に、横軸に時間を、縦軸に回転ヤーンガイド2の回転速度をとり、回転ヤーンガイド2の回転速度の変動を表している。
【0044】
図5のbは、横軸に時間を、縦軸に圧縮空気供給量をとり、圧縮空気の供給量(ノズル噴射態様)を表している。図5のbの通り、この例での緯糸への搬送力即ち圧縮空気の供給量は回転ヤーンガイド2の回転速度の変化に同期している。なお、この圧縮空気の供給量の制御は、圧力調整器7詳細には供給圧力を調整する電空比例弁または供給流量を調整する電動絞り弁のいずれかより行われる。
【0045】
また、図5において、回転ヤーンガイド2の回転速度に応じて、圧縮空気の供給圧力または供給流量を変更するのに代えて、供給量は一定にして間欠噴射による間欠態様を変更することによって、緯糸3への搬送力を変更してもよい。即ち、間欠の1周期における噴射ON、噴射OFFの比率(パルス状開閉駆動のデューテイ比)を変更したり、間欠の周期を変更したりする。
【0046】
図6のa、bは、多色緯入れ織機において、ある1つの測長貯留装置1での回転ヤーンガイド2の回転速度の変化に応じて、緯糸への搬送力を変化させた例である。図6のaは図2のaと同様に、横軸に時間を、縦軸に回転ヤーンガイド2の回転速度をとり、回転ヤーンガイド2の回転速度の変動を表している。
【0047】
多色緯入れ織機の場合は、複数の測長貯留装置1が織機の製織パターンに従って互いに動作するため、ある1つの測長貯留装置1での回転ヤーンガイド2の回転速度の変化を見ると、回転ヤーンガイド2が回転している回転状態と、回転ヤーンガイド2が停止している停止状態の2つの状態に分かれる。
【0048】
図6のbは、横軸に時間を、縦軸に圧縮空気供給量をとり、圧縮空気の供給量(ノズル噴射態様)を表している。図6のbでは、回転ヤーンガイドの停止状態と回転状態の2つの状態間の移行に応じて緯糸への搬送力を変化させる。詳細には、停止状態の期間では空気噴射ノズル5の噴射を停止し、回転状態の期間では空気噴射ノズル5の噴射を連続噴射する。
【0049】
既述の通り、以上の例では、回転ヤーンガイド2の回転速度が増大したときに、緯糸3への搬送力を増大させ、回転ヤーンガイド2の回転速度が減少したときに、緯糸3への搬送力を減少させる。よって、回転ヤーンガイド2の回転速度の変化に応じて、緯糸3への搬送力を上記回転速度の変化と同一の傾向に変化させている。
【0050】
また、以上の例で、超収縮糸以外の緯糸3を使用する場合は、緯糸張力センサ17を用いなくてもよい。したがって、緯糸張力センサ17は必要に応じて付加的に設けられるものである。
【0051】
上述の例では、回転ヤーンガイド2の回転速度に基づいて空気噴射ノズル5の噴射動作を制御し、この制御に、空気噴射ノズル5に供給する圧縮空気の供給時間、供給圧力、供給流量の制御のいずれかひとつとを用いて圧縮空気の噴射態様の制御を行っているが、これらを適宜組み合わせて空気噴射ノズル5の噴射動作を制御してもよい。例えば、回転ヤーンガイド2の回転速度に基づく制御に加えて、緯糸張力の調整に圧縮空気の供給時間、供給圧力の制御を組み合わせて用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、1色の緯入れ織機に限らず、多色緯入れ織機にも応用できる。多色緯入れでは回転ヤーンガイド2の回転速度が大きく変動し易いことから、本発明は多色緯入れ織機に特に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】緯糸の測長方法を実施するための織機の要部の説明図である。
【図2】回転ヤーンガイド2の回転速度と空気噴射ノズル5の噴射動作との関係を示したグラフである。
【図3】回転ヤーンガイド2の回転速度と緯糸張力センサにより検出された緯糸張力値と空気噴射ノズル5の噴射動作との関係を示したグラフである。
【図4】回転ヤーンガイド2の回転速度と空気噴射ノズル5の噴射動作と期間t1、t2、t3との関係を示したグラフである。
【図5】回転ヤーンガイド2の回転速度と前記回転速度と同期された空気噴射ノズル5の噴射動作との関係を示したグラフである。
【図6】停止状態および回転状態を示した回転ヤーンガイド2の回転速度と空気噴射ノズル5の噴射動作との関係を示したグラフである。
【図7】緯糸の測長方法を実施するための他の例での織機の要部の説明図である。
【符号の説明】
【0054】
1 測長貯留装置
2 回転ヤーンガイド
3 緯糸
4 ドラム
5 空気噴射ノズル
6 エアー源
7 圧力調整器
8 電磁弁
9 制御装置
10 主軸モータ
11 エンコーダ
12 ノズル噴射タイミング設定器
13 ノズル噴射制御器
14 モータ
15 エンコーダ
16 設定器
17 緯糸張力センサ
18 給糸体
19 係止ピン
20 操作器
21 緯入れノズル
22 緯糸解舒センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転ヤーンガイド(2)の回転によって給糸体(18)から緯糸(3)を引き出してドラム(4)に巻き付ける型式の測長貯留装置(1)と、回転ヤーンガイド(2)と緯糸(3)の給糸体(18)との間に設けられ、緯糸(3)が走行する方向に空気を噴射する空気噴射ノズル(5)とを備えた流体噴射式織機において、
前記回転ヤーンガイド(2)の回転速度の変化に応じて、空気による緯糸(3)への搬送力を前記回転速度の変化と同一の傾向に変化させることを特徴とする緯糸の測長方法。
【請求項2】
前記回転ヤーンガイド(2)の回転中における速度変化に応じて、前記搬送力を変化させることを特徴とする請求項1に記載の緯糸の測長方法。
【請求項3】
前記回転速度に対するしきい値を設定し、前記しきい値に対する大小関係に応じて、前記搬送力を変化させることを特徴とする請求項2に記載の緯糸の測長方法。
【請求項4】
前記回転速度の変化に同期して、前記搬送力を変化させることを特徴とする請求項2に記載の緯糸の測長方法。
【請求項5】
前記回転速度が減速し始めてから所定期間経過後に、前記搬送力を低下させることを特徴とする請求項2に記載の緯糸の測長方法。
【請求項6】
前記回転ヤーンガイド(2)の停止状態と回転状態の2つの状態間の移行に応じて、前記搬送力を変化させることを特徴とする請求項1に記載の緯糸の測長方法。
【請求項7】
前記空気噴射ノズル(5)の下流側の緯糸張力を検出し、緯糸張力が所定の緯糸張力になるように、緯糸張力に応じて前記搬送力を変化させることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の緯糸の測長方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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