説明

縞鋼板の縞目高さ測定装置及び縞目高さ測定方法

【課題】縞目高さを精度よく測定する縞目高さ測定装置と縞目高さ測定方法を提供する
【解決手段】縞鋼板の縞目高さを測定する縞目高さ測定装置であって、先端に測定子を有するスピンドルと、内部を前記スピンドルが摺動するステムと、前記スピンドルの動きを距離に換算する表示部と、前記ステムを支持するベースとからなり、該ベース下部には縞鋼板の1条の縞目を跨ぐ逆U字型に開口した脚部が設けられ、該脚部の下面は縞鋼板の母材表面と平行に面接触することを特徴とする縞鋼板の縞目高さ測定装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縞鋼板の縞目高さ測定装置及び縞目高さ測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱間圧延にて製造される縞鋼板は、例えば、スパイラル鋼管素材として溶接管工場に供給され、スパイラル状に巻きながら溶接してスパイラル鋼管となる。このようにして得られたスパイラル鋼管は、内面に突起(リブともいい、縞鋼板の縞目に相当する)有し、土木建築現場で鋼管杭として立設され、この鋼管杭内はソイルセメントが充填された杭となる。そしてこの内面リブによってソイルセメントと鋼管杭との密着強度が保たれるので、縞目高さは密着性に大きく影響することとなる。従って、縞鋼板を製造するにあたっては、縞目高さを所定範囲内で高くすることが品質上重要となる。
【0003】
通常、スパイラル鋼管素材として供される縞鋼板は、板厚が9〜22mmであり、ピッチが板幅方向に30〜40mmである縦縞(圧延方向に長い縞)を有する。縞鋼板の板厚tとは、図4斜視図に示した母材1の厚みを指す。図4中、2は母材1の平坦部(谷3)に繋がる縞目であり、この縞目高さhは、母材1からの突出量として定義される。
【0004】
このように縞鋼板は、圧延方向(R)に長い縞目2と縞目2に繋がる谷3が板幅方向(W)に複数形成されている。
【0005】
縞目高さの測定は、通常、図5に示すように、2つの縞目2、2にデプスゲージ4を載せて行う。本方法により測定される縞目高さは、2つの縞目高さの平均値となる。デプスゲージが無い場合は、簡便法としては、2つ以上の縞目部に金定規を亘して、山の高さをノギスで測定する方法を用いる。
【0006】
なお、縞目高さを測定するものではないが、類似のものとして、特許文献1には、タイヤの残り溝深さを測定するタイヤ用デプスゲージが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−309313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
縞鋼板の縞目高さの測定を、図5に示すように、2つの縞目2にデプスゲージ4を載せて行うと、図6に示すように縞目高さがhとhの2つの縞目2が隣り合わせにある場合は、縞目高さの測定値は(h+h)/2と2つの縞目の平均高さとなる。
【0009】
例えば、縞目高さの基準値が2.4mm以上、h、hがそれぞれ2.8mmと2.0mmとした場合、縞目高さの測定値は2.4mmと一見、基準を満たしているように見えるが、低い縞目高さは2.0mmであり基準値を満たしていないことになる。
【0010】
特許文献1のタイヤの溝深さの測定を本縞鋼板の縞目高さの測定に適用した場合でも、2本の隣り合う縞目にデプスゲージを載せて測定するので同様の事が生じることとなる。
【0011】
上述したように、縞目高さを、2つの縞目にデプスゲージ4を載せて、谷深さを測定する方法では、正確な縞目高さを測定することとはならないことが判る。
【0012】
そこで、これを防止するためには、縞目1つ、1つの山高さを測定することが考えられる。図7に示すように、デプスゲージ4の底部を1つの縞目2の頂上に載せる場合、谷3が板幅方向(W)に湾曲している場合や、平坦であってもデプスゲージ4の載せ方によってはバランスを取ることが難しく、バランスを取るときの傾き度合いで1.5mm程度の誤差を生じることとなる。
【0013】
上述した問題点に鑑み、本発明は、1つ、1つの縞目高さを精度よく測定する縞目高さ測定装置と縞目高さの測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の要旨は以下の通りである。
【0015】
第一の発明は、縞鋼板の縞目高さを測定する縞目高さ測定装置であって、先端に測定子を有するスピンドルと、内部を前記スピンドルが摺動するステムと、前記スピンドルの動きを距離に換算する表示部と、前記ステムを支持するベースとからなり、該ベース下部には縞鋼板の1条の縞目を跨ぐ逆U字型に開口した脚部が設けられ、該脚部の下面は縞鋼板の母材表面と平行に面接触することを特徴とする縞鋼板の縞目高さ測定装置である。
【0016】
第二の発明は、縞鋼板の縞目高さを測定する縞目高さ測定装置であって、先端に測定子を有するスピンドルと、内部を前記スピンドルが摺動するステムと、前記スピンドルの動きを距離に換算する表示部と、前記ステムを支持するベースとからなり、該ベースの下部には縞鋼板の1条の縞目を跨ぐ逆U字型に開口した脚部が設けられ、該脚部の先端部はV字形状をなして縞鋼板の母材表面と線接触することを特徴とする縞鋼板の縞目高さ測定装置である。
【0017】
第三の発明は、第一または第二の発明に記載の縞目高さ測定装置を用いて、該装置の脚部を縞鋼板の縞目に合わせて、縞目の頂上面にスピンドル先端部の測定子を接触させて、スピンドルを上昇させることで、その上昇量を縞目高さとする縞鋼板の縞目高さ測定方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、縞目高さを1山毎に測定するようにしたので、縞目谷の形状や隣接する縞目の影響を受けることなく縞目高さを測定することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の縞目高さ測定装置の一実施の形態を示す図である。
【図2】縞目高さの測定方法を説明する図である。
【図3】本発明の他の実施の形態を示す図である。
【図4】縞鋼板の縞目部の形態を説明する図である。
【図5】従来の測定方法を説明する図である。
【図6】従来の隣接する縞目高さが異なる例を示す図である。
【図7】従来の測定方法の他の測定方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施の形態を、図面を用いて説明する。
【0021】
図1は本発明の縞目高さ測定装置の、一実施の形態を示すダイヤルゲージ11である。12は測定結果の表示部、13は表示部12とベース14を繋ぐもの(ステム)で、内部を測定棒である1本のスピンドル17が摺動できるようになっている。スピンドル17の先端には被計測部に当接する測定子16が取り付けられている。ベース14の下部には縞鋼板の1条の縞目を跨げるように幅W、高さHの逆U字型に開口した脚部があり、この中央部をスピンドル17が上下動できるようになっている。ベース14の幅Wは、縞鋼板の圧延方向(R)に長い縞目2と縞目2に繋がる谷3に脚部が接地できる幅となっている。なお紙面直角方向にダイヤルゲージ11が自立できる厚みを有している。
【0022】
図2は、縞目高さの測定方法を示す図であり、まずダイヤルゲージ11を、図示しない定番上において零点調整を行い、次いで縞目2を跨いで、測定子16を縞目頂上部に当接させてダイヤルゲージ11を直立させると、スピンドル17の動きが、谷3を基準面として縞目頂上部までの距離(縞目高さ)を表すこととなる。このように測定することにより、隣接する縞目の高さに影響されることなく、またベース4が両足なので測定装置11の姿勢がブレルことがないので、直接各縞目の高さを測定することができる。
【0023】
図3は本発明の他の実施の形態を示す図である。ベース14の脚先部分がV字形状をしている以外は図1の場合に同じである。これは縞鋼板が板幅方向に湾曲している場合に、縞目の立ち上がり部に測定装置11の脚先部分が近づくことによって、谷3にベース下部15が線接触することで、母材の湾曲の影響を少なくできるようにしたものである。
【符号の説明】
【0024】
1 母材
2 縞目
3 谷
4 デプスゲージ
11 測定装置
12 表示部
13 ステム
14 ベース
15 ベース下部
16 測定子
17 スピンドル
R 圧延方向
W 板幅方向
h 縞目高さ
t 板厚
W1 ベース幅1
W2 ベース幅2
W3 ベース幅3
H1 ベース高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縞鋼板の縞目高さを測定する縞目高さ測定装置であって、先端に測定子を有するスピンドルと、内部を前記スピンドルが摺動するステムと、前記スピンドルの動きを距離に換算する表示部と、前記ステムを支持するベースとからなり、該ベース下部には縞鋼板の1条の縞目を跨ぐ逆U字型に開口した脚部が設けられ、該脚部の下面は縞鋼板の母材表面と平行に面接触することを特徴とする縞鋼板の縞目高さ測定装置。
【請求項2】
縞鋼板の縞目高さを測定する縞目高さ測定装置であって、先端に測定子を有するスピンドルと、内部を前記スピンドルが摺動するステムと、前記スピンドルの動きを距離に換算する表示部と、前記ステムを支持するベースとからなり、該ベースの下部には縞鋼板の1条の縞目を跨ぐ逆U字型に開口した脚部が設けられ、該脚部の先端部はV字形状をなして縞鋼板の母材表面と線接触することを特徴とする縞鋼板の縞目高さ測定装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の縞目高さ測定装置を用いて、該装置の脚部を縞鋼板の縞目に合わせて、縞目の頂上面にスピンドル先端部の測定子を接触させて、スピンドルを上昇させることで、その上昇量を縞目高さとする縞鋼板の縞目高さ測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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