説明

縦孔掘削ユニット、縦孔掘削サブシステム及び縦孔掘削システム

【課題】掘削によって発生する土石や粉塵などの発生物を効率よくまた簡便に地上へ排出することができながら、堅い岩盤をも掘削できる縦孔掘削ユニットを提供する。
【解決手段】震動する鑿岩ロッド1aで岩盤を鑿岩する鑿岩部1と、鑿岩部1の回りを回るように回転駆動される円筒状の掘削部2と、鑿岩部1を中心として掘削部2を設置した本体基部3と、本体基部3と掘削部2との間に設けられた破砕部4と、鑿岩部1で鑿岩され掘削部2で掘削され破砕部4で破砕された掘削部2内の土石を吸引排出する土石吸引手段5とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に鉄塔の基礎用などの縦孔を掘削する際に、油圧建機の先端に取り付けて用いられる縦孔掘削ユニット、この縦孔掘削ユニットを用いた縦孔掘削サブシステム及びこれらの縦孔掘削ユニットまたは縦孔掘削サブシステムを備え、掘削した土石を自動連続して排出貯留する縦孔掘削システムに関する。
【背景技術】
【0002】
縦孔の掘削については、本出願人による特許文献1及び特許文献2の技術が提案されている。
【0003】
特許文献1では、縦孔の孔底での掘削作業を確実、強力に行うため、地上におかれた油圧ショベルの先端に伸縮可能なテレスコピックアームを取り付け、このテレスコピックアームによって、孔底に置かれた掘削機械の押圧中心を押圧しながら掘削する技術が提案されている。
【0004】
この技術は、孔底の限られたスペースに設置可能な小型の掘削機械を用いながら、その掘削機械を地上から押圧することで、より強力な掘削を可能とするものであるが、孔底で掘削によって発生した土石の排出の余分の手間が必要であり、また、掘削による粉塵の環境下で掘削機械の操作を人に頼る必要があり、その点で改善が望まれていた。
【0005】
特許文献2では、上記問題を解決すべく、土石吸引手段を設けた縦孔掘削ユニットを提案しており、図10は、この本発明の背景技術となる縦孔掘削ユニットを示す外観斜視図である。
【0006】
この図10に記載された縦孔掘削ユニット60は、図示しない油圧建機に取り付けられたテレスコピックアームの先端に、取付具57、取付具57に対して回転駆動力を与えるアースオーガ56を介して垂下取り付けられて用いられるもので、アースオーガ56と共回転する円筒状の掘削部51と、この掘削部51と共回転せず、掘削部51の後端を気密に閉止する蓋52と、この蓋52に設けられた吸出口53を備えている。
【0007】
吸出口53には、地上から吸気筒59を介して、吸引力が与えられ、円筒状の掘削部51内に溜まったものを地上へ吸引排出することができる。
【0008】
掘削部51は、アースオーガ56に連結される部分となる中心軸51aと、この中心軸51aと同心で共回転する円筒部51bと、中心軸51aの先端と円筒部51bの前周端とにそれぞれ設けられた複数の岩盤掘削チップ51cとを備えている。
【0009】
このような構成で、この縦孔掘削ユニット60によれば、掘削部51で掘削された土石(土砂、岩石の破砕片などを含むもの)が、吸出口53、吸気筒59を介して、順次地上に吸引排出されるので、土石排出の余分な手間が省かれ、かつ、この吸引排出に伴い、掘削によって生じる粉塵も排出されるので、孔底の粉塵環境も改善される。
【0010】
しかしながら、この縦孔掘削ユニット60は、回転する掘削部51で掘削するものであるので、堅い岩盤のような場合には、掘削することができなかった。
【特許文献1】特開2003−314185号公報(図13)
【特許文献2】特開2005−220609号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、掘削によって発生する土石や粉塵などの発生物を効率よくまた簡便に地上へ排出することができながら、堅い岩盤をも掘削できる縦孔掘削ユニット、縦孔掘削サブシステム及び縦孔掘削システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1記載の縦孔掘削ユニットは、震動する鑿岩ロッドで岩盤を鑿岩する鑿岩部と、前記鑿岩部の回りを回るように回転駆動される円筒状の掘削部と、前記鑿岩部を中心として前記掘削部を設置した本体基部と、前記本体基部と前記掘削部との間に設けられた破砕部と、前記鑿岩部で鑿岩され前記掘削部で掘削され前記破砕部で破砕された前記掘削部内の土石を吸引排出する土石吸引手段とを備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項2記載の縦孔掘削ユニットは、請求項1に従属し、掘削部は、鑿岩ロッドの周囲を回転可能に本体基部に支持され、前記本体基部に設置された回転駆動手段から回転駆動力を受ける内円筒部と、前記内円筒部と同心で共回転する外円筒部と、前記内円筒部と前記外円筒部とを連結する複数の桟と、前記桟の前方側に設けられた複数の岩盤掘削チップとを備えており、前記複数の桟に設置された複数の岩盤掘削チップが、全体として、そのチップ先端が円錐ら旋を形成するように配置されていることを特徴とする。
【0014】
請求項3記載の縦孔掘削ユニットは、請求項2に従属し、破砕部は、前記桟の裏面から後方に向けて設けられた二本一組の後向破砕チップと、前記本体基部から前方に向けて設けられた前向破砕チップとを備え、前記後向破砕チップと前記前向破砕チップとは、掘削部の回転軸方向には相互に重なる部分を持ちながら、前記後向破砕チップが回転する際には、前記前向破砕チップがその二本一組の前記後向破砕チップの間を通過するように構成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項4記載の縦孔掘削ユニットは、請求項1から3のいずれかに従属し、土石吸引手段は、本体基部に対して気密を維持しながら回転する掘削部と、この掘削部の内部に向けて、前記本体基部を貫通して設けられた吸出口とを備えていることを特徴とする。
【0016】
請求項5記載の縦孔掘削ユニットは、請求項1から4のいずれかに従属し、本体基部に、縦孔掘削ユニットを油圧建機へ着脱可能に取り付けるためのユニット取付部を備えていることを特徴とする。
【0017】
請求項6記載の縦孔掘削ユニットは、請求項5に従属し、ユニット取付部に、取り付け対象とする油圧建機に対して縦孔掘削ユニットを旋回させる旋回手段を備えていることを特徴とする。
【0018】
請求項7記載の縦孔掘削サブシステムは、地盤への嵌入固定手段を備え、この嵌入固定手段により地盤に垂直に立位固定される支柱と、前記支柱上を上下する昇降部と、この昇降部に固定された旋回部と、この旋回部に固定されたフリーアーム部とを備え、このフリーアーム部の先端に請求項5記載の縦孔掘削ユニットが設置され、前記支柱の上端に、油圧建機に取り付けるためのサブ取付部を備え、このサブ取付部は、前記支柱に旋回自在に連結されていることを特徴とする。
【0019】
請求項8記載の縦孔掘削システムは、地上に配置された油圧建機に取り付けられた、請求項1から6のいずれか記載の縦孔掘削ユニットまたは請求項7記載の縦孔掘削サブシステムと、土石吸引手段によって吸引された土石を排出し、貯留するため、地上に配置された土石排出貯留装置とを備えていることを特徴とする。
【0020】
請求項9記載の縦孔掘削システムは、請求項8に従属し、土石排出貯留装置から排出される排気を浄化するための排気浄化装置を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
請求項1記載の縦孔掘削ユニットによれば、震動する鑿岩ロッドで岩盤を鑿岩する鑿岩部と、前記鑿岩部の回りを回るように回転駆動される円筒状の掘削部と、前記鑿岩部を中心として前記掘削部を設置した本体基部と、前記本体基部と前記掘削部との間に設けられた破砕部と、前記鑿岩部で鑿岩され前記掘削部で掘削され前記破砕部で破砕された前記掘削部内の土石を吸引排出する土石吸引手段とを備えたので、掘削によって発生する土石や粉塵などの発生物を効率よくまた簡便に地上へ排出することができながら、堅い岩盤をも掘削できる。
【0022】
請求項2記載の縦孔掘削ユニットによれば、請求項1の効果に加え、掘削部は、鑿岩ロッドの周囲を回転可能に本体基部に支持され、前記本体基部に設置された回転駆動手段から回転駆動力を受ける内円筒部と、前記内円筒部と同心で共回転する外円筒部と、前記内円筒部と前記外円筒部とを連結する複数の桟と、前記桟の前方側に設けられた複数の岩盤掘削チップとを備えており、前記複数の桟に設置された複数の岩盤掘削チップが、全体として、そのチップ先端が円錐ら旋を形成するように配置されているので、岩盤掘削チップが先端から後方へ、周囲と順次岩盤を掘削して行き、より小さな駆動力で効率よく掘削することができる。
【0023】
請求項3記載の縦孔掘削ユニットによれば、請求項2の効果に加え、破砕部は、前記桟の裏面から後方に向けて設けられた二本一組の後向破砕チップと、前記本体基部から前方に向けて設けられた前向破砕チップとを備え、前記後向破砕チップと前記前向破砕チップとは、掘削部の回転軸方向には相互に重なる部分を持ちながら、前記後向破砕チップが回転する際には、前記前向破砕チップがその二本一組の前記後向破砕チップの間を通過するように構成されているので、鑿岩部で鑿岩された大きな岩片がより小さな岩片に破砕され、土石吸引手段による吸引排出が可能になる。
【0024】
請求項4記載の縦孔掘削ユニットによれば、請求項1から3のいずれかの効果に加え、土石吸引手段は、本体基部に対して気密を維持しながら回転する掘削部と、この掘削部の内部に向けて、前記本体基部を貫通して設けられた吸出口とを備えているので、効率よく、掘削部内の土石を吸引排出することができる。
【0025】
請求項5記載の縦孔掘削ユニットによれば、請求項1から4のいずれかの効果に加え、本体基部に、縦孔掘削ユニットを油圧建機へ着脱可能に取り付けるためのユニット取付部を備えているので、油圧建機への着脱が可能で、容易である。
【0026】
請求項6記載の縦孔掘削ユニットによれば、請求項5の効果に加え、ユニット取付部に、取り付け対象とする油圧建機に対して縦孔掘削ユニットを旋回させる旋回手段を備えているので、縦孔掘削ユニットの出っ張りによる堀残しをなくすため、油圧建機の取り回しが不要となり、便利である。
【0027】
請求項7記載の縦孔掘削サブシステムによれば、地盤への嵌入固定手段を備え、この嵌入固定手段により地盤に垂直に立位固定される支柱と、前記支柱上を上下する昇降部と、この昇降部に固定された旋回部と、この旋回部に固定されたフリーアーム部とを備え、このフリーアーム部の先端に請求項5記載の縦孔掘削ユニットが設置され、前記支柱の上端に、油圧建機に取り付けるためのサブ取付部を備え、このサブ取付部は、前記支柱に旋回自在に連結されているので、請求項5の効果に加え、全体として縦孔掘削ユニットの位置と方向の自由度が高く、限られた空間である縦孔内での作業性が良く、また、拡底掘削も行うことができる。
【0028】
請求項8記載の縦孔掘削システムによれば、請求項1から6のいずれかの効果または請求項7の効果に加え、地上に配置された油圧建機に取り付けられた、土石吸引手段によって吸引された土石を排出し、貯留するため、地上に配置された土石排出貯留装置とを備えているので、硬い岩盤がある場合でも、地上の油圧建機からの操作で、縦孔の掘削がある程度の深さまで進んだ状態であっても、縦孔の孔底に作業者が入ることなく、連続して縦孔の掘削をし、掘削された土石を排出し、貯留袋に貯留することができる。
【0029】
請求項9記載の縦孔掘削システムによれば、請求項8の効果に加え、土石排出貯留装置から排出される排気を浄化するための排気浄化装置を備えているので、排気により周囲環境を汚染することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下に、本発明の実施の形態(実施例)について、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0031】
図1は、本発明の縦孔掘削ユニットの一例を示すもので、(a)はその概念的な要部縦断面図、(b)は(a)を具体化したものを掘削先端側から見た外観図、図2(a)は図1の縦孔掘削ユニットの正面図、(b)はその側面図である。
【0032】
この縦孔掘削ユニット10は、地上に設置された油圧建機(例えば、図9の符号OK3)に取り付けて用いられ、主に鉄塔や大型建築物の基礎坑となる縦孔の掘削に用いられる。
【0033】
縦孔掘削ユニット10は、震動する鑿岩ロッド1aで岩盤を鑿岩する鑿岩部1と、鑿岩部1の回りを回るように回転駆動される円筒状の掘削部2と、鑿岩部1を中心として掘削部2を設置した本体基部3と、本体基部3と掘削部2との間に設けられた破砕部4と、鑿岩部1で鑿岩され掘削部2で掘削され破砕部4で破砕された掘削部2内の土石を吸引排出する土石吸引手段5とを備えていることを特徴とする。
【0034】
縦孔掘削ユニット10は、加えて、本体基部3に設置され、掘削部2を回転駆動する回転駆動手段6と、この縦孔掘削ユニット10を油圧建機OK3に着脱可能に取り付けるためのユニット取付部7とを備えている。これら鑿岩部1からユニット取付部7に至る各部の主要素材は格別に記載する場合を除き鋼鉄である。
【0035】
鑿岩部1は、既述の鑿岩ロッド1aと、この鑿岩ロッド1aを油圧により図1(a)の上下方向Bに強力に震動させる本体部1bとを備えており、一般に市販されているものを採用することができる。
【0036】
鑿岩ロッド1aは、本体部1bに対して着脱交換可能となっており、鑿岩対象に合わせて最適のものを用いることができる。
【0037】
なお、鑿岩部1は、本体基部3に着脱可能であり、堅い岩盤を鑿岩する必要のない場合には、取り外すことも可能である。この場合、鑿岩部1の重量分だけ、縦孔掘削ユニット10の重量を軽量化できる。
【0038】
掘削部2は、鑿岩ロッド1aの周囲を回転可能に本体基部に支持され、回転駆動手段6から回転駆動力を受ける内円筒部2aと、内円筒部2aと同心で共回転する外円筒部2bと、内円筒部2aと外円筒部2bとを連結する複数の桟2cと、この桟2cの前方側に設けられた複数の岩盤掘削チップ2dとを備えている。
【0039】
掘削部2は、加えて、外円筒部2bの前周端に設けられた複数の周縁掘削チップ2e、回転する外円筒部2bの後端部分で本体基部3に近接する部分に本体基部3の前側を覆うように設けられた外側周リブ2f、複数の桟2cの適所に設けられた補助掘削チップ2g及び内円筒部2aを本体基部3に対して回転可能に支持する上下二つの回転軸受2h、2iを備えている。
【0040】
内円筒部2aは、回転駆動手段6からの回転駆動力を桟2c、外円筒部2bに伝え、これらに設けられた岩盤掘削チップ2d、周縁掘削チップ2eによる岩盤の掘削を可能にする程度の強度を持つ肉厚に形成されている。
【0041】
内円筒部2aの内径は、鑿岩部1を取り付けた際に、鑿岩ロッド1aが震動するのに支障のない程度の隙間を鑿岩ロッド1aの外径に対して維持する内径となっている。
【0042】
内円筒部2aの本体基部3からの突き出し長さは、図1(a)に示すように、内円筒部2aの前端外側から外円筒部2bの前端周内側に複数の桟2cを架け渡した際に中央凸となるように、外円筒部2bの前端周の突き出し長さよりも長い。
【0043】
外円筒部2bは円筒状であるが、この縦孔掘削ユニット10による掘削時に、その前端周により掘削面を覆って、掘削部2と掘削面とで閉鎖空間を形成して、後述するように、
土石吸出手段5がその吸引力を好適に発揮できるようにする役割も果たしている。
【0044】
中央凸となっている複数の桟2cの前方側に設けられた複数の岩盤掘削チップ2dは、この例では、図示したように、円周を2等分する位置となっている二つの桟2上に、回転中心から、徐々にまた交互に等間隔で離れるような位置にそれぞれ設けられ、こうして、全体として、岩盤掘削チップ2dの先端が、円錐ら旋を形成するように配置されている。
【0045】
また、それぞれの岩盤掘削チップ2dは真下に向けて設けられるのではなく、掘削部2の回転方向T(図1(b)に示す。)に一定角度に傾くように設けられている。したがって、掘削部2の回転方向Tへの回転に伴い、掘削された岩盤は、掘削部2のより内側へ向かうようになっている。
【0046】
周縁掘削チップ2eは、掘削部2の周縁付近に存在する岩盤を掘削して、掘削部2が全体として掘削対象とする岩盤、掘削部分に入り込んで行けるようにしている。つまり、このような周縁掘削チップ2eがなく、円筒の前周端だけだと、上述した気密効果はあるが、堅い岩盤などにその前周端が阻まれて、掘削部2が入り込んでいかないので、この周縁掘削チップ2eを設けたものである。
【0047】
外側周リブ2fは、本体基部3の前周端外側を覆って、掘削部2の後周端と本体基部3の前周端との間からの空気の吸い込みを極力防止して、土石吸出手段5による吸出力が掘削部2内の破砕された土石に及ぶようにしている。
【0048】
補助掘削チップ2gは、補助的な掘削のために設けられたものである。
【0049】
二つの回転軸受2h、2iは、本体基部に固定され、その内輪により内円筒部2aを確実に回転支持するものであり、特に、上側の回転軸受2hはスラスト回転軸受で構成され、鑿岩部1による震動鑿岩の際、内円筒部2aに負荷される可能性の高い上方向のスラスト荷重に耐えられるようになっている。
【0050】
本体基部3は、上述したように、その外側に鑿岩部1、掘削部2、ユニット取付部7を設置するための構造的基部となるもので、円形のボックス体である。その内部には、図1(a)で解るように、回転駆動手段6を構成する歯車列6rが収容されている。
【0051】
本体基部3の外側には、更に、回転駆動手段6の駆動源となる油圧モータ6aが設置され、また、本体基部3の適所には、この本体基部3を貫通し、掘削部2の内側に開口した吸出口5aが設けられている。
【0052】
破砕部4は、桟2cの裏面から後方に向けて設けられた二本一組の後向破砕チップ4aと、本体基部3から前方に向けて設けられた前向破砕チップ4bとを備えている。
【0053】
後向破砕チップ4aと前向破砕チップ4bとは、図1(a)に示すように、掘削部2の回転軸方向(同図の上下方向)には相互に重なる部分を持ちながら、後向破砕チップ4aが回転する際には、前向破砕チップ4bがその二本一組の前記後向破砕チップの間を通過するように構成されている。
【0054】
したがって、鑿岩部1で鑿岩された大きな岩片は、重力の影響もあって、回転する二本の後向破砕チップ4aに掛け渡されるような状態で共回転し、その二本の後向破砕チップ4aの中間に突出する前向破砕チップ4bに激突することになり、より小さな岩片に破砕されることになる。
【0055】
つまり、このような後向破砕チップ4a、前向破砕チップ4bで構成される破砕部4は、鑿岩部1で鑿岩された大きな岩片をより小さな岩片に破砕する破砕の機能を持っている。
【0056】
土石吸引手段5は、本体基部3に対して外側周リブ2fにより気密を維持しながら回転する掘削部2と、この掘削部2の内部に向けて、本体基部3を貫通して設けられた吸出口5aとを備えている。この吸出口5aには、図1(a)に白矢印で示した吸引空気Vが供給される。
【0057】
土石吸引手段5を構成する外側周リブ2fと、吸出口5aについては、既に説明したが、外側周リブ2fについては、掘削部2と本体基部3との間の隙間が相互の回転に支障がなく、かつ、外気の吸入を吸出口5aによる土石吸出に支障がない程度に制限するものであれば、格別に設ける必要がないものである。
【0058】
回転駆動手段6は、既述の油圧モータ6aと、この油圧モータ6aによる回転駆動力を掘削部2の中心にある内円筒部2aに伝達する歯車列6rとを備え、この歯車列6rは、油圧モータ6aの出力軸に直結された原動歯車6b、原動歯車6bに噛み合う中間大歯車6c、中間大歯車6cと同心で共回転する中間小歯車6d及び中間小歯車6eに噛み合い内円筒部2aに固定された従動歯車6eを備えている。
【0059】
回転駆動手段6の駆動源として、ここでは、鑿岩部1に油圧を用いており近くに油圧源がある点と、コンパクトで大きな駆動力が得られる点から、油圧のものを用いているが、条件が満足されれば、空圧のものや、電動のものであってもよい。
【0060】
回転駆動手段6の歯車列6rとして、ここでは、通常の平歯車列を用いているが、限定されたスペースで所望の減速比が得られるものであれば、これに限らない。例えば、ウォームとウォームホイールの歯車列、外円筒部2bの内側に取り付けられるような内歯車と、これに対応したピニオン歯車との歯車列などであっても良い。
【0061】
ユニット取付部7は、図2によって説明するが、本体基部3の裏面に、鑿岩部1、吸出口5a、油圧モータ6aの設置部分の間で、鑿岩部1を挟み込むように立設された取付基部7aと、この取付基部7aに着脱可能に連結され、油圧建機OK3の先端部に着脱可能な結合孔7cを備えた汎用取付部7bとを備えている。
【0062】
なお、この例では、汎用取付部7bの結合孔7cは、規格化された油圧建機OK3の先端部のリンク孔に対して、二つの結合用のリンクピンで嵌合取り付け可能な左右一対の二組の結合孔7cとなっている。
【0063】
このような構成によって、この縦孔掘削ユニット10によれば、油圧建機OK3の先端に取り付けられ、原則として、縦孔掘削ユニット10の先端の向きが下方向、つまり、縦孔の掘削方向で用いられ、硬い岩盤などを含めた掘削対象を掘削することができる。
【0064】
この際、掘削部2の岩盤掘削チップ2dによる掘削が困難な硬い岩盤があっても、掘削部1の前後に強力に震動する鑿岩ロッド1aによって、鑿岩が可能であって、硬い岩盤は、最大限、掘削部2の外周縁に規制された範囲での岩片に割れた状態となる。
【0065】
この大きな岩片は、掘削部2の回転進行方向に対して、対面する岩片をすくい上げるように設けられた岩盤掘削チップ2dによって、掘削部2内側へ向かい、桟2cの裏側部分と本体基部3と間の掘削部2の内部空間で、破砕部4の後向破砕チップ4aと前向破砕チップ4bとの相互作用により、より小さい岩片に破砕される。
【0066】
岩盤の掘削破砕は、掘削部2の岩盤掘削チップ2d、周縁掘削チップ2e、補助掘削チップ2gによってもなされ、こうして、吸引可能な程度に破砕された土石は、土石吸引手段5による強力な気流によって、このユニット10外へ吸引排出される。
【0067】
こうしてこの縦孔掘削ユニット10によれば、油圧建機OK3に載った作業者が、ユニット10全体の掘削位置、掘削対象への押圧、鑿岩部1の震動作動、掘削部2の回転作動、土石吸引手段5への吸引空気の供給の操作をするだけで、硬い岩盤があった場合でも、掘削部分に近づくことなく、縦孔の掘削を連続して行うことができる。
【0068】
また、掘削の際に発生する粉塵は、土石吸引手段5で吸引排出されるので、粉塵による掘削場所付近での環境悪化の問題も解決される。
【0069】
つまり、本発明の縦孔掘削ユニット10によれば、掘削によって発生する土石や粉塵などの発生物を効率よくまた簡便に地上へ排出することができながら、堅い岩盤をも掘削できる。
【0070】
なお、このような硬い岩盤を含めた掘削作業と、掘削によって発生する土石の吸引排出という二つの機能を一台の油圧建機OK3で可能とする本発明の縦孔掘削ユニット10の効果は、一般の平地で、掘削現場を広く取り、何台もの油圧建機の配置が可能で、鑿岩機を備えた油圧建機で鑿岩し、掘削された土石の排出、除去を油圧ショベルなどで行える場合には、あまり実感されない。
【0071】
しかしながら、山間などの奥地で、高圧送電線用の鉄塔の基礎孔としての縦孔を掘削する場合には、掘削現場として広い平坦地を確保するのは困難で、一台の油圧建機だけで掘削、土石の排出を可能とする縦孔掘削ユニット10の効果は大きい。
【0072】
ましてや、本発明の縦孔掘削ユニット10は、鑿岩部1と破砕部4とを更に備えて、硬い岩盤であっても鑿岩し、破砕して、掘削された土石を吸引排出できるので、その効果は更に大きい。
【0073】
更に、この縦孔掘削ユニット10によれば、後述もするように、縦孔の深さが深くなって、他のものでは孔底での人手による作業や、先端掘削具の変更が必要となる場合、また、油圧ショベルでの土石の排出が全く不可能となる場合でも、地上あるいは縦孔上部からの操作が可能となり、硬い岩盤を含めた掘削作業と、掘削によって発生する土石の吸引排出という二つの機能を一台の油圧建機で可能とする本発明の効果の産業的意義は更に大きいものとなる。
【実施例2】
【0074】
図3は、本発明の縦孔掘削ユニットの他例を示すもので、(a)はその正面図、(b)はその側面図である。これより、既に説明した部分と同じ部分には同じ符号を付して重複説明を省略する。また、各部分の集合体について別個の符号がある場合については、煩雑さを避けるために、集合体の符号だけを示すようにすること、個々の部分については説明に必要な部分だけ必要な符号を示すことがある。
【0075】
この縦孔掘削ユニット10Aは、図1、2の縦孔掘削ユニット10に比べ、ユニット取付部7Aの取付基部7aと汎用取付部7bとの間に、汎用取付部7bに対して縦孔掘削ユニット10Aの取付基部7a側を旋回させる旋回手段8を更に備えている点が異なっている。
【0076】
この旋回手段8は、油圧モータや電動モータを内蔵し、その固定部8aに対して、回転部8bだけを回転させ、また、所望の回転角度の位置で、双方が回転しないように固定可能なものである。
【0077】
このような旋回手段8は、つまる所、このユニット10Aを取り付ける相手である油圧建機が回転しなくとも、油圧建機に対する縦孔掘削ユニット10Aの向きをかえることができる旋回手段として機能する。
【0078】
このような旋回手段8によれば、本発明の縦孔掘削ユニット10Aのように、本体基部3に対して配置場所の都合により油圧ポンプ6aが出っ張りとなっている場合に、縦孔の壁に沿って掘削する際、この出っ張りの分だけ堀残しが生じるが、旋回手段8で縦孔掘削ユニット10Aの取付基部7a側をだけを旋回させて、この出っ張りが邪魔にならないようにすることができる。
【0079】
一方、このような旋回手段8がない場合には、地上にある油圧建機を、掘削した縦孔の回りに移動回転させて、結果として、縦孔掘削ユニット10Aの出っ張りが堀残しの部分に来ないようにして、掘削する必要があり、大掛かりな操作が必要であり、その操作も縦孔掘削ユニット10Aが縦孔の深い所にある場合には、簡単なものではない。
【0080】
また、上述したように掘削現場の広さが制限されているような場合には、そのような油圧建機の取り回し自体が不可能な場合があり、その際には、縦孔掘削ユニットを油圧建機に向きを変えて取り付けるなど大きな余分の手間が必要であるが、この旋回手段8は、そのような問題を解決することができる。
【実施例3】
【0081】
図4は、本発明の縦孔掘削ユニットの他例を示すもので、(a)はその正面図、(b)はその側面図である。
【0082】
この縦孔掘削ユニット10Bは、図3の縦孔掘削ユニット10Aに比べ、ユニット取付部7Bに旋回手段8が介在している点は共通するが、油圧建機に取り付けられる汎用取付部7dが結合孔7e付きのものとなっている点が異なっている。
【0083】
この結合孔7eは、油圧建機の先端に交換可能に取り付けられるテレスコピックアームの先端に垂下して取り付けられるもので、一つの結合用のリンクピンで嵌合取り付け可能な左右一対の一組の結合孔7eとなっている。
【0084】
このような汎用取付部7dを備えた縦孔掘削ユニット10Bは、縦孔掘削ユニット10Bの掘削方向を真下以外とする必要性の少ない、縦孔の深い部分を掘削するのに用いられるが、その場合にも、旋回手段8は、ユニット10Bの掘削部2からの出っ張りを回避して、堀残しのないようにするために、地上の油圧建機を取り回しする必要がなく、有益である。
【0085】
なお、上述した3種類の縦孔掘削ユニット10、10A、10Bは、取付基部7a以下の部分は共通しており、旋回手段8の介在の有無、汎用取付部7b、7dが角度可変取付か、そうでないかの相違があるだけであるので、これらの旋回手段8、汎用取付部7b、7dを着脱交換することで、いずれのタイプから他のいずれのタイプにも変更できるものである。
【実施例4】
【0086】
図5は、図4の縦孔掘削ユニットを用いた本発明の縦孔掘削システムの一例を概念的に示す全体構成図、図6は、図5の縦孔掘削システムで用いられる排気浄化装置を概念的に示すもので、(a)はその縦断面図、(b)は(a)のCC断面図である。
【0087】
この縦孔掘削システム30は、テレスコピックアームTAを装着した油圧建機OK1のテレスコピックアームTAの先端に縦孔掘削ユニット10Bを取り付けたものと、土石吸引手段5によって吸引された土石を排出し、貯留するため、地上に配置された土石排出貯留装置21とを備えており、縦孔VHの掘削がある程度の深さまで進んだ状態である。
【0088】
土石排出貯留装置21は、吸引排出された土石や粉塵を吸引排出のための空気から分離して捕集する捕集器21aと、この捕集器21aで捕集された土石を搬送するコンベア21bと、コンベア21bで搬送された土石を貯留する貯留袋21cと、捕集器21aを介して土石の吸引排出のための吸引空気を供給する吸引装置21dと、吸引装置21dから排出される排気を浄化する排気浄化装置22と、吸排ダクト21eとを備えている。
【0089】
吸排ダクト21eは、縦孔掘削ユニット10Bの吸出口5aと捕集器21a、及び捕集器21aと吸引装置21dとを連結して、吸引装置21dの吸引空気が縦孔掘削ユニット10Bに及ぶようにしている。
【0090】
吸排ダクト21eは、また、吸引装置21dと排気浄化装置22とを連結して、吸引装置21dの排気が排気浄化装置22で浄化されるようにしている。
【0091】
このような構成の縦孔掘削システム30によれば、縦孔掘削ユニット10Bを用い、土石排出貯留装置21を備えているので、硬い岩盤がある場合でも、地上の油圧建機OK1からの操作で、縦孔VHの掘削がある程度の深さまで進んだ状態であっても、縦孔VHの孔底に作業者が入ることなく、連続して縦孔VHの掘削をし、掘削された土石を排出し、貯留袋21cに貯留することができる。
【0092】
また、この場合の掘削では、縦孔掘削ユニット10Bを掘削部分での岩盤の硬さに合わせて鑿岩機に変えたり、掘削された土石を別途排出したりする必要がないので、時間の無駄がなく、効率的である。
【0093】
また、この縦孔掘削ユニット10Bの場合、旋回手段8を備え、これにより縦孔掘削ユニット10Bの出っ張りによる堀残しの問題は解決できるので、地上にある油圧建機OK1は縦孔VHに対して前進後退とテレスコピックアームTAを油圧建機OK1を中心として首振りさせるだけでよく、狭い掘削現場での掘削に有利である。
【0094】
さらに、この縦孔掘削システム30によれば、排気浄化装置22を備えているので、排気により周囲環境を汚染することがない。
【0095】
なお、吸引装置21dの排気は、掘削による土砂粉塵を含んでいるだけのものであるので、周囲環境が例えば、山中であって自然物である土砂粉塵による一時的な汚染が環境問題とならないような場合には、そのまま排気してもよいので、その場合には、排気浄化装置22は必ずしも必要なものではない。
【0096】
また、この例は、掘削現場が、送電線の鉄塔用の立坑を掘削する現場であり、山間奥地で道路などが整備されておらず、ケーブル輸送装置で排出された土石を輸送する場合であるので、捕集された土石などは、それに適合するように貯留袋21cに貯留されるが、大型輸送車が使用できる場合には、コンベア21bの先や、捕集器21aから直接、大型輸送車に貯留して輸送することができる。
【0097】
したがって、そのような場合には、貯留袋21cやコンベア21bは無くともよいものである。
【0098】
ついで、排気浄化装置22について、図6を用いて説明する。
【0099】
この排気浄化装置22は、両端が閉止された円筒形の本体部22aと、円筒形の軸心を立てて用いられる本体部22aの上方に、その円形の接線方向に吸引装置21dからの排気AIが導入されるように設けられた排気導入口22bと、この導入され旋回流となった排気流ACに水を噴霧あるいはシャワー状に放射するシャワー部22cとを備えている。
【0100】
排気浄化装置22は、また、シャワー部22cに水を供給するポンプ22dと、このポンプ22dに供給される水Wを貯留する水タンク22eと、水の放射を受け、湿った状態の旋回流となった排気流ACから、土砂の塵埃を除去し、清浄な空気を通過させる台形円錐状のフィルタ22fとを備えている。
【0101】
排気浄化装置22は、加えて、フィルタ22fを下部で受ける円筒部22gと、フィルタ22fと円筒部22gとで形成される内部空間の清浄な空気AOを排出するための排気筒22hと、円筒部22gと本体部22aとの間の部分に貯留される水と分離された土砂の塵埃との混合物の上澄み水を水タンク22eに戻すオーバーフロー孔22iとを備えている。
【0102】
フィルタ22fは、吸水性あるいは親水性の繊維糸を用いた網目状のものであり、その網目の細かさ(メッシュ)は、蚊除けの網程度のものから、家庭での調理用のザル程度のものがよいが、これに限定されず、実験によって定められるものである。
【0103】
円筒部22gと本体部22aとの間の部分には、土砂の塵埃が徐々に蓄積されるが、この土砂は、本体部22aに設けられた図示しない開口部から、適宜除去されるものとする。
【0104】
このような構成の排気浄化装置22によれば、旋回流の排気ACに水を放射するので、旋回流の排気ACには効率よく水分が与えられ、こうして湿った状態の旋回流となった排気流ACから親水性のフィルタ22fで土砂の塵埃を分離するので、全体として効率よく土砂を分離することができる。
【0105】
本願発明者の実験では、最低でも、吸引装置21dからの排気に含まれる土砂塵埃の70%を除去するできることが解っている。
【0106】
また、この排気浄化装置22によれば、旋回流の排気ACに放射する水を再利用しているので、山間地で水の供給のない場所での使用に向いている。
【実施例5】
【0107】
図7は、図1の縦孔掘削ユニットを用いた本発明の縦孔掘削サブユニットを備えた油圧建機の一例を示す図、図8は、図7の油圧建機の使用態様の一例を示す図である。
【0108】
図7に示す油圧建機OK2は、油圧ショベルと称されるものの先端のショベル部分を外したもので、そのショベル部分の代わりに、図1の縦孔掘削ユニットを用いた縦孔掘削サブユニット20が着脱交換可能に取り付けられている。
【0109】
油圧建機OK2は、縦孔掘削サブユニット20を設置したままで、これを持ち上げて、移動、旋回が可能であり、この縦孔掘削サブユニット20を任意の場所で使うことができる。
【0110】
縦孔掘削サブユニット20は、地盤への嵌入固定手段12を備え、地盤に垂直に立位固定される支柱11と、支柱11上を上下する昇降部13と、この昇降部13に固定された旋回部14と、この旋回部14に固定されたフリーアーム部15とを備えている。
【0111】
このフリーアーム部15の先端に図1の縦孔掘削ユニット10が設置されている。
【0112】
支柱11の上端に、油圧建機に取り付けるためのサブ取付部16を備え、このサブ取付部16は、支柱11の上端への取付部16a、取付部16aを垂直軸を中心に回転可能に支持する回転部16b及び回転部16bに連結され、油圧建機OK2の先端に着脱可能にかつ水平軸を中心に角度自在に取り付け可能な自在取付部16cを備えている。
【0113】
つまり、支柱11は、サブ取付部16を介して、油圧建機OK2の先端に着脱可能に、かつ、水平軸を中心に角度自在に、また、支柱11全体がその長手軸回りに回転自在に取り付けられている。
【0114】
このような構成の縦孔掘削サブユニット20によれば、油圧建機OK2に装着することで、任意の場所で縦孔の掘削が可能で、自体が回転可能な支柱11によりサブユニット20を縦孔内でも回転可能で、昇降部13で縦孔掘削ユニット10の昇降が可能で、旋回部14で縦孔掘削ユニット10の支柱11まわりの首振りが可能である。
【0115】
また、この縦孔掘削サブユニット20によれば、フリーアーム部15により縦孔掘削ユニット10の上下方向の向きを自由に設定することができ、全体として縦孔掘削ユニット10の位置と方向の自由度が高く、限られた空間である縦孔内での作業性が良い。
【0116】
加えて、この縦孔掘削サブユニット20によれば、縦孔掘削ユニット10を先端に備えているので、その効果もサブユニット20全体として発揮する。
【0117】
なお、この縦孔掘削サブユニット20を用いる場合、縦孔内の場合であったとしても、縦孔掘削サブユニット20全体の位置と向きを自由に変えることができるので、縦孔掘削ユニット10がフリーアーム部15に対して旋回可能である必要性は少なく、ここでは、縦孔掘削ユニット10は旋回手段8のないものである。
【0118】
しかしながら、この場合でも、旋回手段8を備えた縦孔掘削ユニット10Aを用いるようにしてもよい。
【0119】
図8によって、この縦孔掘削サブユニット20を縦孔VH内で使用する場合について説明する。この図は、縦孔VHの掘削が進行し、油圧建機OK2に支えられた縦孔掘削サブユニット20がほぼ縦孔VHの中に嵌まり込んでしまうような状態となっている所を示している。
【0120】
この様な状態では、油圧建機OK2の運転台に座った状態での縦孔掘削サブユニット20の操作は困難であるので、図8に示すような操作かご18を用いると良い。
【0121】
この操作かご18は、作業員を収容し、かつ、作業員がその内部で操作できるようなかご体で、縦孔VHの周壁の任意位置に係止可能となっており、縦孔掘削サブユニット20全体への油圧源となる油圧供給手段18a、作業用椅子18b、操作レバー18cを備えている。
【0122】
この操作レバー18cによって、昇降部13の上下位置設定維持、旋回部14の水平面内での回転角度設定維持、フリーアーム部15による縦孔掘削ユニット10の上下方向の向き、縦孔掘削ユニット10自体の操作が可能であり、縦孔掘削ユニット10を見ながらの操作ができるので、操作性が良い。
【0123】
なお、この際、もともと操作かご18の位置は、縦孔掘削ユニット10による掘削部分からは離れているので、掘削による粉塵の影響は少ないが、縦孔掘削ユニット10によって、発生する粉塵も吸引排出されるので、その影響はより少ないものとなっている。
【0124】
この操作かご18は、このような縦孔内だけでなく、地上で、縦孔掘削サブユニット20と組わせて用いても良いし、また、図5の油圧建機OK1と組み合わされた縦孔掘削ユニット10Bの場合、更に、図9の油圧建機OK3と組み合わされた縦孔掘削ユニット10Aの場合にも用いても良い。
【0125】
また、この縦孔掘削サブユニット20による縦孔VHの掘削においては、縦孔掘削ユニット10の上下方向の向きを、真下だけでなく、斜め方向にもすることができるので、図示したような拡底部WHの掘削も可能である。
【0126】
このような拡底部WHを備えた縦孔VHは、鉄塔の土台を引き抜く方向の力が作用するような場合に、地盤から脱けにくくするのに有効である。
【0127】
また、この縦孔掘削サブユニット20は、図5の実施例4に示したテレスコピックアームTAを装着した油圧建機OK1のテレスコピックアームTAの先端に取り付けてもよく、図9の実施例6に示したスライドアームSAを装着した油圧建機OK3のスライドアームSAの先端に取り付けてもよく、その場合、それぞれの油圧建機OK1、OK3の効果と、ユニット20の効果との相乗効果を発揮する。
【実施例6】
【0128】
図9は、図3の縦孔掘削ユニットを備えた油圧建機の一例を示す図である。
【0129】
この油圧建機OK3は、先端に一定程度の伸縮が可能で、その先端に取り付けたものの角度変化操作も可能なスライドアームSAを備えており、図3の縦孔掘削ユニット10Aは、このスライドアームSAの先端に取り付けられ、上下方向の角度が設定できるようになっている。
【0130】
このようなスライドアームSA付きの油圧建機OK3に取り付けられた縦孔掘削ユニット10Aによれば、その縦孔掘削ユニット10Aの基本的な効果に加え、その掘削位置が自由に決められ、また、方向も設定できるという効果を発揮する。
【0131】
また、この場合、縦孔掘削ユニット10Aは旋回手段8を備えているので、これにより縦孔掘削ユニット10Aの出っ張りによる堀残しの問題は解決できるので、地上にある油圧建機OK3は縦孔VHに対して前進後退とスライドアームSAを油圧建機OK3を中心として首振りさせるだけでよく、狭い掘削現場での掘削に有利である。
【0132】
上記実施例の説明から、本発明には、以下のような構成、作用効果のものが含まれることが解る。
【0133】
(1)縦孔掘削ユニット10は、震動する鑿岩ロッド1aで岩盤を鑿岩する鑿岩部1と、鑿岩部1の回りを回るように回転駆動される円筒状の掘削部2と、鑿岩部1を中心として掘削部2を設置した本体基部3と、本体基部3と掘削部2との間に設けられた破砕部4と、鑿岩部1で鑿岩され掘削部2で掘削され破砕部4で破砕された掘削部2内の土石を吸引排出する土石吸引手段5とを備えている(図1)ので、掘削によって発生する土石や粉塵などの発生物を効率よくまた簡便に地上へ排出することができながら、堅い岩盤をも掘削できる。
【0134】
(2)縦孔掘削ユニット10の掘削部2は、鑿岩ロッド1aの周囲を回転可能に本体基部3に支持され、本体基部3に設置された回転駆動手段5から回転駆動力を受ける内円筒部2aと、内円筒部2aと同心で共回転する外円筒部2bと、内円筒部2aと外円筒部2bとを連結する複数の桟2cと、桟2cの前方側に設けられた複数の岩盤掘削チップ2dとを備えており、複数の桟2cに設置された複数の岩盤掘削チップ2dが、全体として、そのチップ先端が円錐ら旋を形成するように配置されている(図1)ので、岩盤掘削チップ2dが先端から後方へ、周囲と順次岩盤を掘削して行き、より小さな駆動力で効率よく掘削することができる。
【0135】
(3)縦孔掘削ユニット10の破砕部4は、桟2cの裏面から後方に向けて設けられた二本一組の後向破砕チップ4aと、本体基部3から前方に向けて設けられた前向破砕チップ4bとを備え、後向破砕チップ4aと前向破砕チップ4bとは、掘削部2の回転軸方向には相互に重なる部分を持ちながら、後向破砕チップ4aが回転する際には、前向破砕チップ4bがその二本一組の後向破砕チップ4aの間を通過するように構成されている(図1)ので、鑿岩部1で鑿岩された大きな岩片がより小さな岩片に破砕され、土石吸引手段5による吸引排出が可能になる。
【0136】
(4)縦孔掘削ユニット10の土石吸引手段は、本体基部3に対して気密を維持しながら回転する掘削部2と、この掘削部2の内部に向けて、本体基部3を貫通して設けられた吸出口5aとを備えている(図1)ので、効率よく、掘削部2内の土石を吸引排出することができる。
【0137】
(5)縦孔掘削ユニット10は、本体基部3に、縦孔掘削ユニット10を油圧建機へ着脱可能に取り付けるためのユニット取付部7(図2)を備えているので、油圧建機への着脱が可能で、容易である。
【0138】
(6)縦孔掘削ユニット10A、10Bは、ユニット取付部7A、7Bに、取り付け対象である油圧建機に対して縦孔掘削ユニットを旋回させる旋回手段8を備えている(図3、図4)ので、縦孔掘削ユニット10A、10Bの出っ張りによる堀残しをなくすため、油圧建機の取り回しが不要となり、便利である。
【0139】
(7)縦孔掘削サブシステム20は、地盤への嵌入固定手段12を備え、地盤に垂直に立位固定される支柱11と、支柱11上を上下する昇降部13と、この昇降部13に固定された旋回部14と、この旋回部14に固定されたフリーアーム部15とを備え、このフリーアーム部15の縦孔掘削ユニット10が設置され、
支柱11の上端に、油圧建機OK2に取り付けるためのサブ取付部16を備え、このサブ取付部16は、支柱11に旋回自在に連結されている(図7、図8)ので、油圧建機OK2に装着することで、任意の場所で縦孔の掘削が可能で、自体が回転可能な支柱11によりサブユニット20を縦孔内でも回転可能で、昇降部13で縦孔掘削ユニット10の昇降が可能で、旋回部14で縦孔掘削ユニット10の支柱11まわりの首振りが可能である。
【0140】
また、この縦孔掘削サブユニット20によれば、フリーアーム部15により縦孔掘削ユニット10の上下方向の向きを自由に設定することができ、全体として縦孔掘削ユニット10の位置と方向の自由度が高く、限られた空間である縦孔内での作業性が良く、拡底掘削も可能となる。
【0141】
(8)縦孔掘削システム30は、地上に配置された油圧建機に取り付けられた、縦孔掘削ユニット10、10A、10Bのいずれか、または縦孔掘削サブシステム20と、土石吸引手段5によって吸引された土石を排出し、貯留するため、地上に配置された土石排出貯留装置21とを備えている(図5)ので、硬い岩盤がある場合でも、地上の油圧建機OK1からの操作で、縦孔VHの掘削がある程度の深さまで進んだ状態であっても、縦孔VHの孔底に作業者が入ることなく、連続して縦孔VHの掘削をし、掘削された土石を排出し、貯留袋21cに貯留することができる。
【0142】
(9)縦孔掘削システム30は、土石排出貯留装置21から排出される排気を浄化するための排気浄化装置22を備えているので、排気により周囲環境を汚染することがない。
【0143】
(10)縦孔掘削ユニット10は、その掘削部2に周縁掘削チップ2eを備え、この周縁掘削チップ2eにより掘削部2の周縁付近に存在する岩盤を掘削して、掘削部2が全体として掘削対象とする岩盤、掘削部分に入り込んで行けることを可能にするという効果を発揮する。
【0144】
(11)縦孔掘削サブユニット20は、図5の実施例4に示したテレスコピックアームTAを装着した油圧建機OK1のテレスコピックアームTAの先端に取り付けてもよく、図9の実施例6に示したスライドアームSAを装着した油圧建機OK3のスライドアームSAの先端に取り付けてもよく、その場合、それぞれの油圧建機OK1、OK3の効果と、ユニット20の効果との相乗効果を発揮する。
【0145】
なお、上記では、本発明の実施例、それらの包括的概念による構成、作用効果を説明したが、本発明の縦孔掘削ユニット、縦孔掘削サブシステム及び縦孔掘削システムは、これらのものに限定されるものではない。
【0146】
また、上記実施例に説明した種々の変形例については、例示された組み合わせに限定されず、例示外の可能なあらゆる組み合わせも含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0147】
本発明の縦孔掘削ユニット、縦孔掘削サブシステム及び縦孔掘削システムは、掘削によって発生する土石や粉塵などの発生物を効率よくまた簡便に地上へ排出することができながら、堅い岩盤をも掘削できることが要請される縦孔の掘削に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】本発明の縦孔掘削ユニットの一例を示すもので、(a)はその概念的な要部縦断面図、(b)は(a)を具体化したものを掘削先端側から見た外観図
【図2】(a)は図1の縦孔掘削ユニットの正面図、(b)はその側面図
【図3】本発明の縦孔掘削ユニットの他例を示すもので、(a)はその正面図、(b)はその側面図
【図4】本発明の縦孔掘削ユニットの他例を示すもので、(a)はその正面図、(b)はその側面図
【図5】図4の縦孔掘削ユニットを用いた本発明の縦孔掘削システムの一例を概念的に示す全体構成図
【図6】図5の縦孔掘削システムで用いられる排気浄化装置を概念的に示すもので、(a)はその縦断面図、(b)は(a)のCC断面図
【図7】図1の縦孔掘削ユニットを用いた本発明の縦孔掘削サブユニットを備えた油圧建機の一例を示す図
【図8】図7の油圧建機の使用態様の一例を示す図
【図9】図2の縦孔掘削ユニットを備えた油圧建機の一例を示す図
【図10】本発明の背景技術となる縦孔掘削ユニットを示す外観斜視図
【符号の説明】
【0149】
1 鑿岩部
1a 鑿岩ロッド
2 掘削部
2a 内円筒部
2b 外円筒部
2c 桟
2d 岩盤掘削チップ
3 本体基部
4 破砕部
4a 後向破砕チップ
4b 前向破砕チップ
5 土石吸引手段
5a 吸出口
6 回転駆動手段
7〜7B ユニット取付部
8 旋回手段
10〜10B 縦孔掘削ユニット
11 支柱
12 嵌入固定手段
13 昇降部
14 旋回部
15 フリーアーム部
16 サブ取付部
18 操作かご
20 縦孔掘削サブシステム
21 土石排出貯留装置
22 排気浄化装置
30 縦孔掘削システム
OK1〜OK3 油圧建機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
震動する鑿岩ロッドで岩盤を鑿岩する鑿岩部と、前記鑿岩部の回りを回るように回転駆動される円筒状の掘削部と、前記鑿岩部を中心として前記掘削部を設置した本体基部と、前記本体基部と前記掘削部との間に設けられた破砕部と、前記鑿岩部で鑿岩され前記掘削部で掘削され前記破砕部で破砕された前記掘削部内の土石を吸引排出する土石吸引手段とを備えたことを特徴とする縦孔掘削ユニット。
【請求項2】
掘削部は、鑿岩ロッドの周囲を回転可能に本体基部に支持され、前記本体基部に設置された回転駆動手段から回転駆動力を受ける内円筒部と、前記内円筒部と同心で共回転する外円筒部と、前記内円筒部と前記外円筒部とを連結する複数の桟と、前記桟の前方側に設けられた複数の岩盤掘削チップとを備えており、
前記複数の桟に設置された複数の岩盤掘削チップが、全体として、そのチップ先端が円錐ら旋を形成するように配置されていることを特徴とする請求項1記載の縦孔掘削ユニット。
【請求項3】
破砕部は、前記桟の裏面から後方に向けて設けられた二本一組の後向破砕チップと、前記本体基部から前方に向けて設けられた前向破砕チップとを備え、前記後向破砕チップと前記前向破砕チップとは、掘削部の回転軸方向には相互に重なる部分を持ちながら、前記後向破砕チップが回転する際には、前記前向破砕チップがその二本一組の前記後向破砕チップの間を通過するように構成されていることを特徴とする請求項2記載の縦孔掘削ユニット。
【請求項4】
土石吸引手段は、本体基部に対して気密を維持しながら回転する掘削部と、この掘削部の内部に向けて、前記本体基部を貫通して設けられた吸出口とを備えていることを特徴とする請求項1から3のいずれか記載の縦孔掘削ユニット。
【請求項5】
本体基部に、縦孔掘削ユニットを油圧建機へ着脱可能に取り付けるためのユニット取付部を備えていることを特徴とする請求項1から4のいずれか記載の縦孔掘削ユニット。
【請求項6】
ユニット取付部に、取り付け対象とする油圧建機に対して縦孔掘削ユニットを旋回させる旋回手段を備えていることを特徴とする請求項5記載の縦孔掘削ユニット。
【請求項7】
地盤への嵌入固定手段を備え、この嵌入固定手段により地盤に垂直に立位固定される支柱と、前記支柱上を上下する昇降部と、この昇降部に固定された旋回部と、この旋回部に固定されたフリーアーム部とを備え、このフリーアーム部の先端に請求項5記載の縦孔掘削ユニットが設置され、
前記支柱の上端に、油圧建機に取り付けるためのサブ取付部を備え、このサブ取付部は、前記支柱に旋回自在に連結されていることを特徴とする縦孔掘削サブシステム。
【請求項8】
地上に配置された油圧建機に取り付けられた、請求項1から6のいずれか記載の縦孔掘削ユニットまたは請求項7記載の縦孔掘削サブシステムと、土石吸引手段によって吸引された土石を排出し、貯留するため、地上に配置された土石排出貯留装置とを備えていることを特徴とする縦孔掘削システム。
【請求項9】
土石排出貯留装置から排出される排気を浄化するための排気浄化装置を備えていることを特徴とする請求項8記載の縦孔掘削システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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