説明

縦横同時フィルム延伸装置

本発明は、合成フィルムを、このフィルム(2)を支持し、搬送し、そして延伸するための連続するクランプ(13)を用いて、同時に縦横延伸するのに使用される機械式装置に関する。本発明によれば無端チェーン(8)がフィルムの両側に設けられる。このチェーンは連続するリンク(9,10)を具備し、これらリンクは垂直シャフト(11,12)を用いて互いに連結されている。二つのうちの一方のシャフト(11)に連結される上記クランプ(13)は、チェーン(8)の一方側の上に突出しており、かつ第1のレール(14)で案内される。本発明はまた、クランプ(13)間で二つのうちの一方のシャフト(12)にやはり連結されかつ第2のレール(16)上を動く案内片(15)を具備する。可変間隔(E,e)が二つのレール(14,16)間に配され、これによってリンク(9,10)は、クランプ(13)同士の間の距離(d,D)を固定または変更するように実質的に整列させられるかあるいは角度をなす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、より簡単に「同時フィルム延伸装置」としても知られる、縦方向および横方向にプラスチックフィルムを同時延伸するための機械式装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二軸延伸プラスチックのフィルムは、フィルムの結晶化を遅らせ、そして続いてそれを延伸することを可能とするように冷却されたキャスティングドラム上に溶融状態の原料を載せることで、押し出し成形されたストリップから得られる。
【0003】
ストリップは続いて縦延伸装置に入り、この中で、さまざまな連続ロール間の速度差の原理によって延伸が行われる。ストリップは続いて横延伸装置に入り、その中でストリップはチェーンに設けられたグリッパーによって保持され、その離間距離は漸進的に増大する。
【0004】
この方式の延伸(順次延伸として知られる)は、たとえばポリプロピレン、ポリエステルのような多くのプラスチックに完全に好適であり、それゆえ製造業において広く使用されている。
【0005】
対照的に、他のタイプのフィルム、たとえばポリアミドまたはポリエチレンからなるものは以下の事実によって特徴付けられる。すなわち、それらのその後の用途が要求する特性を得るために、縦方向の延伸および横方向の延伸は、上で説明したように順次的になされるよりも、むしろ同時になされる必要がある。
【0006】
この同時延伸が指定される一つのよく知られた理由は次のようなものである。すなわちある種の製品は、延伸されるや否や結晶化する傾向があり、これはその分子構造を固定し、そして第2の延伸作業を不可能にする。
【0007】
こうした理由から、同時延伸装置として知られる非常に多くの装置、すなわち縦方向および横方向に同時に延伸する装置が既に提案されている。こうした装置は二つのグループに分類できる。すなわち、その一方は機械式同時延伸装置であり、他方は電子式同時延伸装置である。
【0008】
機械式装置の部類においては、パンタグラフ型の装置と可変ピッチネジ型の装置との間で区別がなされる。
【0009】
上記装置(これはかなり複雑な機械的構造を持つ)には二重の欠点がある。すなわち、明らかに機械的複雑さのために高い生産速度には十分に適しておらず、しかも延伸比率の調整ができない。
【0010】
事実、フィルムの特性に適合させるため、あるいは延伸される製品のそれぞれに固有の延伸を最適化するために、横および特に縦の延伸比率を簡単な手法で調整できることが必要である。上で言及した機械式装置に関し、横延伸比率は、フィルム保持グリッパーを支持するレールの離間距離によって比較的容易に適合できるが、変更されるべき横延伸の間、グリッパーが縦方向に互いに漸進的に広がる手段を必要とする縦延伸に関しては、同じことが当てはまらないということが容易に理解されるであろう。
【0011】
パンタグラフ型の装置は概ね完全に固定されている。すなわち、縦延伸比率も横延伸比率もいずれの調整もできない。
【0012】
可変ピッチネジ型の装置は、グリッパーが漸進的に広がる経路を調整する可変ピッチネジを取り替えることで調整可能であるかもしれない。
【0013】
延伸比率を調整するためにネジガイドを取り替えることは、装置を停止させ、その主要コンポーネントを開放する必要があり、したがって少なくとも約1日の生産休止時間を伴う面倒な作業であることが容易に理解されるであろう。
【0014】
上で述べた理由により、機械式同時延伸装置はますます使用されなくなっている。
【0015】
機械式装置の上記欠点を改善するため、たとえば欧州特許第0 760 739(BRUCKNER)に開示されたもののような電子式同時延伸装置が最近開発された。このものでは連続するグリッパー(レールによってガイドされている状態のままである間は所望の横延伸比率を得るためにグリッパーの離間距離を変更可能である)は、もはやチェーン型の機械的部材によって互いに連結されていない。この例では、延伸されるべきフィルムを搬送するグリッパーの駆動は、各グリッパー(またはグリッパーの各グループ)が備える、リニアモーター型の別個のモーターによって各グリッパー(またはグリッパーの各グループ)に与えられる。このタイプのモーターでは、各グリッパーを駆動するリニアモーターへの供給電流の周波数はレールに沿ったグリッパーの移動速度を決定し、二つの連続するグリッパーに対応する二つのモーターの周波数の適当な変動は、それによって、レールに沿った各グリッパーの移動に係る直線速度を生じさせること、したがって縦延伸比率を漸進的に増大させることを可能にする。
【0016】
この装置は確かに理論的には高い生産速度を可能にする利点を有し、しかもそれはまた理論的には、生産中に容易にかつ連続的に縦延伸比率を調整可能という産業上の要請を完全に満たす。なぜなら、実際に必要とされることの全ては、生産速度を増大させるために基本周波数を変更すること、および二つのグリッパーの相対的離間距離を、したがって縦延伸比率を変更するために二つのグリッパー間の周波数を変更することであるからである。
【0017】
上で説明したような電子式装置は、若干の場合に、主として研究装置のために実際に生産されており、かつ概して、この種の用途において申し分のないことを証明した。
【0018】
これに反して、事業を目的とした生産装置でのその使用は、その使用を極めて専門的な高コストフィルムに事実上制限する相当な数の制約がすぐに明らかになった。
【0019】
第一の欠点は上記装置自体の非常に高いコストに由来し、これは、上記各グリッパーのモーターの制御周波数を変更するのに使用される電子システムの複雑さに由来する。
【0020】
さらなる欠点がすぐに現れた。これは、リニアモーターのエネルギー消費に関する効率は辛うじて0.5を超える程度であるという事実に起因する。これは、グリッパーの駆動に要するエネルギーの約半分(しかもこれは生産速度が増大すると極めて急速に増大する)が個々のリニアモーター内部で熱に変わることを意味すると共に、結果として、これらモーターをたとえば循環水によってグリッパーが移動する乾燥室内で冷却しなければならないことを意味する。
【0021】
上記装置はまた、ほとんどのパッケージングフィルムに添加しなければならない添加物(滑り添加物、帯電防止添加物)による案内部材の汚損に対して極端に鋭敏である。しかも事実上その全ては、温度と延伸による表面積増大との組み合わされた作用のもとでの横延伸の間に昇華をこうむり、そして続いて、その上を渡って来る最初の冷却コンポーネント上で、すなわちこの種の装置の状況では、冷却されなければならないまさにレール上で凝結する、という特性を有する。
【0022】
このレールの汚損は、グリッパー(この同期はいかなる機械的コンポーネントの存在をも伴わずに保証される)が、装置の右バンクと左バンクとの間で同期したままとなるのを確実にすることを徐々に困難なものとし、しかも実際には極めて早期にそれを不可能とし、こうして非同期状態になるとフィルムにはすぐにシワや裂け傷が生じる、ということが容易に理解されるであろう。
【0023】
上記理由から、リニアモーターを備えた電子式同時延伸装置は、研究用途または、産業的規模で使用される場合にはたとえば極薄ポリエステルフィルムなどの極めて特殊なフィルムのいずれかに用途が限定されていた。それどころか、広く使用されている工業フィルムの生産に関して、そうした装置の利用は容易には予見できない。
【特許文献1】欧州特許第0 760 739号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明は、機械式装置および電子式装置の両方について既に説明した欠点を解決するものである。ゆえに本発明の目的は、現在製造業が要求している高い生産速度を実現することを可能にし、一方で同時に、停止中またはフィルムが生産されている間に、横延伸比率および縦延伸比率の安定調整を可能にする同時延伸装置を用いた産業を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
この目的のため、本発明の主題は本質的に、フィルムを、このフィルムを保持し、搬送し、そして延伸するための連続するグリッパーを使用して、縦方向および横方向に同時延伸するための機械装置であって、グリッパーはレールによって支持されかつ案内されると共にグリッパー同士を一つに連結する無端チェーンによって前方に駆動され、無端チェーンは一つ以上のスプロケットによって駆動され、前記延伸装置は、延伸されるべきフィルムの両側に、可変離間距離の二つのレールに案内された無端チェーンを具備し、無端チェーンは垂直ピンを中心として互いに連結されたリンクの連続体からなり、グリッパーは二つのうちの一方のピンに連結されるかまたは二つのリンク間に設けられ、かつ二つのレールの一方に案内されてチェーンの一方の側に突出し、これに対し案内片は、グリッパー間の、二つのうちの一方のピンに連結されるかあるいは二つのリンク間に設けられ、かつ離間距離および/または上記二つのレールの離間距離の変更によって、チェーンの連続するリンクがほぼ一列に並ぶか、または他方で連続するグリッパー同士の間の距離を固定しかつ/または変更するよう互いに角度をなすように、二つのレールのうちの他方に沿って移動することによって特徴付けられる。
【0026】
好ましくは、グリッパーはチェーンの連続するリンクの二つの垂直ヒンジピンのうちの一方を中心として連結された本体を有し、一方、案内片は、先のヒンジピン同士の間に配置されたチェーンの連続するリンクの他方の垂直ヒンジピンを中心として連結されている。
【0027】
好ましい実施形態では、可変離間距離の二つのレールは「モノレール」型のものであり、かつ一方ではグリッパーの本体が、そして他方では案内片が、有利なことには、対応するレールの二つの側面に沿って転がる垂直軸ローラーと、対応するレールの上端面に沿って転がる少なくとも一つの水平軸ローラーとを具備する。こうして高速運転が可能となる。
【0028】
ゆえに、無端チェーンの経路の各ポイントにおける二つのレール間の距離は、このチェーンの挙動を、したがって二つの連続するグリッパー間の距離を決定する。特に、二つのレール間の離間距離が短くなるとチェーンのリンクは直線状に配列され、これは二つの連続するグリッパー間の距離が最大であることを意味する。これに対して、二つのレール間の離間距離が大きくなると、チェーンのリンクは「ジグザク」形状とさせられ、ゆえにリンクは斜めに配列される。この結果、二つの連続するグリッパー間の距離はより短くなる(連続するグリッパーが接触状態とさえなるかもしれない)。二つのレール間の離間距離が変化する場合、チェーンの形状は漸進的に変更される。このチェーンが前方に駆動されるとき、連続するリンクによって形成される角度は開くかあるいは閉じる。そしてこの結果、二つのレールの離間距離によって強制されかつ完全に決定される様式で、連続するグリッパー同士の間の距離は増大または減少する。
【0029】
特に、二つのレールが収束する場合、チェーンの連続するリンク間の角度は漸進的に開き、そして連続するグリッパーは互いに分離し、これによってフィルムは縦方向に延伸される。特に、この構造は、フィルムの両側に配置された、二つのチェーンの広がり部分に採用可能である。この結果、注目している領域において、フィルムは縦方向および横方向に同時に延伸される。ここではこれが所望する目標である。これに対して、好ましい構造では、延伸領域の上流に配されたフィルム予熱領域では、二つのレールは互いに平行でありかつフィルムが搬送される方向と平行であり、しかも最大離間距離を有し、そして延伸領域の下流に配された安定化領域では、上記二つのレールは互いに平行でありかつフィルムが搬送される方向と平行であり、しかも最小離間距離を有する。
【0030】
だが、この延伸領域では、二つのレールは広がることもでき、これは、そこでグリッパーが先とは対照的に集められることを意味する。これによって、「負の」縦延伸比率(すなわち収縮比率)を実現することが可能になる。これはあるタイプのフィルムにとっては必要なことである。
【0031】
チェーンの特定の構造は別にして、本発明の主題である同時延伸装置は、関連する技術分野で公知のタイプのグリッパーおよびレールを使用できる。これは、本装置が容易にかつ経済的に製造可能であること、およびそれが確実に作動することを意味する。特に、グリッパーはチェーンによって、したがって公知のタイプの機械的コンポーネントによって連結されるので、本装置は、汚損が著しい場合でさえ、延伸装置の全ての領域において、信頼性が高く、しかもグリッパー間の強制的同調性を保証する。さらにグリッパーは、フィルムを汚損する可能性のある潤沢な滑油を必要とせず、特にローリングによってレール上で案内可能である。使用されるレールはまた可撓性が大きいという利点を有し、この可撓性は、移動方向に変形する間に案内の連続性を中断することなく、20°もの広がり角度を、あるいは25°でさえ実現することを可能にする。しかもそれは容易に採用することができ、これによって漸進的であるかあるいは他方で急送な延伸が可能となり、この延伸は今までに知られたフィルムの全ての組成物質に関する要求を満たす。
【0032】
したがって、全体として、本発明は、同時延伸装置における機械式のものおよび電子式のものの両方が現在有している全ての問題を回避する機械的な解決策を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明は、実例として、この同時フィルム延伸装置の一実施形態を示す添付概略図面を参照し、以下の説明を助けとすることで、より良く理解されるであろう。
【0034】
同時フィルム延伸装置(それに係る図1は非常に概略的な全体図を提供する)は、温度制御囲い(図1では図示せず)を有し、こうした囲いは関連する産業分野では公知である。この囲いは、10メーターほども、あるいはそれ以上あってもよい作業幅、および(所望の生産速度ならびにフィルム2の厚みにしたがって)概ね数十メーターの、そしてある場合には約100メーター近い長さを有する。
【0035】
上記囲い内で、かつ上流端から下流へと、予熱領域3、延伸領域4、安定化領域5、ニュートラル領域6、および冷却領域7が存在する。フィルム2は矢印Fの方向に搬送される。この結果、それは連続領域3ないし7を連続的に通過する。本発明はさらに詳しくは延伸領域4に関する。
【0036】
フィルム2を保持しかつ搬送するために、フィルム2は、グリッパーによってその二つの向き合う縁部のところを保持される。この構造は公知であり、そして特に本出願人名義の仏国特許第9200609/2686041号の開示と一致してもよい。このグリッパーは、本延伸装置の縦軸線に関して対称的に配置され無端チェーン8によって水平面内で支持され、しかも個々の矢印F1およびF2の方向にスプロケットによって駆動される。二つの無端チェーン8の能動部はその個々の内部ストランドであり、特にこれは延伸領域4に対応した広がり部を具備してなる。
【0037】
無端チェーン8およびその案内手段について、ここで図2(これは延伸領域4の細部Aを示す)およびそれに続く図を参照して説明する。
【0038】
各チェーン8は、交互に9および10で示すリンクの連続体からなる。それは、11および12で交互に示す垂直ピンを中心として互いに連結されている。
【0039】
全ての第2のリンク、すなわちリンク9とリンク10との間の各ヒンジピン11にはグリッパー13が連結されており、このグリッパー13はチェーン8の一方側に突出し、かつ第1のレール14上で案内されている。さらに全ての第2のリンク(ただしグリッパー13同士の間)には、すなわち各ヒンジピン12には案内片15が連結されており、この案内片15は、チェーン8の反対側に突出しかつ第2のレール16に沿って動く。
【0040】
上記二つのレールは垂直プレートの形態の「モノレール」型のものであり、これら二つのレール14および16は、(後に詳述するように)互いにある距離を置いて、T形共有サポートまたは別個のサポート18および19(図4参照)のいずれかによって保持される。
【0041】
各グリッパー13は、レール14の側面に沿って転がる垂直軸ローラー20と、レール14の上端面に沿って転がる水平軸ローラー21とを台車方式で支える本体を有する。
【0042】
同様に各案内片15は台車を形成し、この台車には、レール16の二つの側面に沿って転がる垂直軸ローラー22と、レール16の上端面に沿って転がる水平軸ローラー23とが設けられている。
【0043】
各グリッパー本体13および各案内片15に関して、側面ローラー20および22はここでは、レール14または16の両側に、二つのアッパーローラーおよび二つのロアローラーを具備する。二つのアッパーローラーは、二つのロアローラーがそうであるように、わずかな垂直オフセットを持つことが可能である。この結果、それらはコンパクト化のために重積可能である。
【0044】
二つのレール14および16は、最大値E(図2参照、左側)と最小値e(図2参照、右側)との間で変化する可変離間距離を有し、これら二つのレール14および16を互いに平行にすること、あるいは互いの方向に向かって収束させるか互いに広げることが可能となっている(図2参照、中央)。二つのレール14および16の離間距離それ自体が、二つの連続するグリッパー13同士の間の距離を決定する。
【0045】
二つのレール14および16がその最大離間距離Eを持つときに起きるのは、チェーン8のリンク9および10が、一方ではグリッパー13の配列と、他方では案内片15の配列との間の最大離間距離によって定まる「ジグザク」構造をなすことである。二つの連続するグリッパー13同士の間の距離は、そのとき、その最小値dをとる。
【0046】
二つのレール14および16が平行でかつその最大離間距離Eを維持する場合、ひとつながりに連続するグリッパー13同士の間の距離自体も一定のままであり、そしてこれはその最小値dに等しい。これは特に予熱領域3において事実である。
【0047】
逆に、二つのレール14および16がその最小離間距離eを持つとき、チェーン8のリンク9および10は一列に並び、しかもこれは、一方ではグリッパー13の配列と、他方では案内片15の配列との間の最小離間距離に対応する。二つの連続するグリッパー13同士の間の距離は、ゆえにその最大値Dをとる。
【0048】
二つのレール14および16が平行でありかつその最小離間距離eを維持する場合、連続するグリッパー13同士の間の距離自体も一定のままとなり、しかもその最大値Dと等しい。これは特にフィルム2が安定化される安定化領域5において事実である。
【0049】
対照的に、二つのレール14および16間の離間距離が変化したとき、これら二つのレール間の可変距離はまた連続するグリッパー13同士の間の距離に変化を引き起こすことが容易に理解されるであろう。ここで生じることは、二つのレール14および16間の離間距離の変化が、チェーン8の連続するリンク9および10間の角度を開かせるかあるいは閉ざすことであり、しかもこれが二つの連続するグリッパー13を収束させるかあるいは広げる。
【0050】
特に、これは延伸領域4に応用性が存在する。ここで、二つのチェーン8の広がり経路全体において、二つのレール14および16は漸進的に収束する。これによって、連続するリンク9および10間の角度は漸進的に開拡される、この開拡は、最小距離dから最大距離Dへと動く、連続するグリッパー13の漸進的な開拡によって達成される。こうして互いに広がることで、グリッパー13はフィルム2の縦延伸(Lで示す)を行う。すなわちこのフィルム2の搬送方向Fにおける延伸を行う。同時に、二つのチェーン8の広がりは同じ領域4において、同じフィルム2の横延伸(Tで示す)を引き起こす。これは、所望の同時延伸がこの領域4において達成されることを意味する。
【0051】
展張されたチェーン8のリンク9,10の長さと、折り畳まれた体勢にある同じリンクの(投影)長さとの間の比が与えられたとすると、最大の縦延伸比率はここでは実際には、5ないし6のオーダーであり、これは現在の延伸作業にとってもちろん十分なものである、ということに留意されたい。
【0052】
延伸領域4からの出口において、二つのレール14および16が互いに平行に、かつ装置の長手方向と平行となるように復帰する場合、フィルム2は順次延伸の場合と同じ方式で安定化されるであろう。だがこの安定化領域5においてはまた、二つのレール14および16間の距離は変更可能であり、これは、縦収縮または縦伸び、たとえば図1に24で示す一部領域における収縮を伴ってフィルム2が安定化することを可能にする。
【0053】
製造中に縦横延伸比率を調整するために、二つのレール14および16の離間距離および/またはその収束角度を局所的に変更するための機械的手段が設けられてもよく、レール14および16は、これが実現されるよう十分に変形可能に設計される。この調整機能は重要な利点である。
【0054】
もちろん、本装置はさらに、チェーン8を駆動しそして帰還させるためのスプロケット25、およびチェーン8の帰還ストランドを案内するための適当な手段を具備する。
【0055】
以下は、請求項で規定される本発明の範囲から逸脱するものではない。
・チェーン、特にそのリンクに対する細部の構造的変更
・グリッパーおよび案内片に対する構造的および/または機能的変更(これらグリッパーおよび他の片については、シングルまたはダブルのローリングあるいはスライディングによりレールに沿って案内することが可能である)
・設備の特性、延伸されるフィルムの性状、および所望の縦横延伸比率に応じた、チェーンおよびその案内レールの経路の調節
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明による同時延伸装置の上方から見た概略平面図である。
【図2】図1の領域Aに対応する上から見た拡大平面図である。
【図3】そのグリッパーおよびその案内片を備えた本装置のチェーンの部分斜視図である。
【図4】本装置の断面図である。
【図5】図2の矢印F5の方向から見た部分側面図である。
【符号の説明】
【0057】
2 フィルム
3 予熱領域
4 延伸領域
5 安定化領域
6 ニュートラル領域
7 冷却領域
8 無端チェーン
9,10 リンク
11,12 垂直ピン
13 グリッパー
14 第1のレール
15 案内片
16 第2のレール
18,19 サポート
20,22 垂直軸ローラー
21,23 水平軸ローラー
24 一部領域
25 スプロケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックフィルムを、このフィルム(2)を保持し、搬送し、そして延伸するための連続するグリッパー(13)を使用して、縦方向および横方向に同時延伸するための機械式装置であって、
前記グリッパーはレール(14)によって支持されかつ案内されると共に前記グリッパー(13)同士を一つに連結する無端チェーン(8)によって前方に駆動され、前記無端チェーン(8)は一つ以上のスプロケット(25)によって駆動され、
装置は、延伸されるべき前記フィルム(2)の両側に、可変離間距離(E,e)の二つのレール(14,16)に案内された無端チェーン(8)を具備し、前記無端チェーン(8)は垂直ピン(11,12)を中心として互いに連結されたリンク(9,10)の連続体からなり、
前記グリッパー(13)は二つのうちの一方のピン(11)に連結されるかまたは二つのリンク間に設けられ、かつ前記二つのレールの一方(14)に案内されて前記チェーン(8)の一方の側に突出し、
これに対し案内片(15)は、前記グリッパー(13)間の、二つのうちの一方のピン(12)に連結されるかまたは二つのリンク間に設けられ、かつ前記離間距離(E,e)および/または前記二つのレール(14,16)の離間距離の変更によって、前記チェーン(8)の前記連続するリンク(9,10)がほぼ一列に並ぶか、または他方で前記連続するグリッパー(13)同士の間の距離(d,D)を固定しかつ/または変更するよう互いに角度をなすよう、前記二つのレールのうちの他方(16)に沿って移動することを特徴とする装置。
【請求項2】
前記グリッパー(13)は、前記チェーン(8)の前記連続するリンク(9,10)の前記垂直ヒンジピンの二つのうちの一方のピン(11)を中心として連結された本体を有するのに対して、前記案内片(15)は、前記ヒンジピン(11)同士の間に配置された前記チェーン(8)における前記連続するリンク(9,10)の他方の前記垂直ヒンジピン(12)を中心として連結されていることを特徴とする請求項1に記載の同時延伸装置。
【請求項3】
可変離間距離(E,e)の前記二つのレール(14,16)は「モノレール」型のものであり、一方では前記グリッパー(13)の前記本体が、そして他方では前記案内片(15)が、対応する前記レール(14,16)の二つの側面に沿って転がる垂直軸ローラー(20,22)と、対応する前記レール(14,16)の上端面に沿って転がる少なくとも一つの水平軸ローラー(21,22)とを具備することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の同時延伸装置。
【請求項4】
各グリッパー本体(13)および各案内片(15)に関して、前記側面ローラー(20,22)は、前記レール(14,16)の両側に、二つのアッパーローラーおよび二つのロアローラーを具備することを特徴とする請求項3に記載の同時延伸装置。
【請求項5】
前記二つのアッパーローラー(20,22)は、前記二つのロアローラー(20,22)と同様に、わずかな垂直オフセットを有し、これによって前記アッパーローラー(20,22)は重なり合うことが可能であることを特徴とする請求項4に記載の同時延伸装置。
【請求項6】
前記フィルム(2)の両側に配置された、特に二つの前記チェーン(8)の広がり部において、二つの前記レール(14,16)は、前記チェーン(8)の前記連続するリンク(9,10)同士の間の角度が漸進的に広がっていき、かつ前記連続するグリッパー(13)は互いに分かれていき、これによって前記フィルム(2)を前記縦方向(L)および前記横方向(T)に延伸させるよう、収束することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の同時延伸装置。
【請求項7】
前記延伸領域(4)の上流に配されたフィルム予熱領域(3)において、前記二つのレール(14,16)は互いに平行でありかつ前記フィルム(2)が搬送される方向(7)に対して平行であると共に最大離間距離(E)を有し、かつ、前記延伸領域(4)の下流に配された安定化領域(5)において、前記二つのレール(14,16)は互いに平行でありかつ前記フィルム(20)が搬送される方向(F)に対して平行であると共に最小離間距離(e)を有することを特徴とする請求項6に記載の同時延伸装置。
【請求項8】
製造中に縦横延伸比率を調整するために、二つの前記レール(14,16)の前記離間距離および/またはそれらの収束角度を局所的に変更するための機械的手段が設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の同時延伸装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−513069(P2006−513069A)
【公表日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−568142(P2004−568142)
【出願日】平成15年12月24日(2003.12.24)
【国際出願番号】PCT/FR2003/003901
【国際公開番号】WO2004/071748
【国際公開日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(500209055)ダルレ・マーシャント・テクノロジー・ソシエテ・アノニム (2)
【Fターム(参考)】