説明

縫製生地の処理装置及び処理方法

【課題】簡単な構造でかつ多種の生地に対応できる汎用性のある縫製生地の処理装置及び処理方法を提供する。
【解決手段】生地8を供給する供給ユニット1と、生地8に対して搬送ベルト7側からスチームを噴射するリラックスユニット2と、生地8に対して上方からプレスをかけ、同時にプレス19からスチームを噴射し搬送ベルト7側から吸引する湿熱プレスユニット3と、生地8に対して上方及び搬送ベルト7側から、更にスチームを噴射させるエージングユニット4と、生地8に対して上方から、熱風を吹き付け搬送ベルト7側に吸引する乾燥ユニット5と、生地8を室温に冷却する冷却ユニット6を含み、各ユニットは組換え可能に接続されており、搬送ベルト7は1枚であり、かつリラックスユニット2から冷却ユニット6までの搬送ベルト7上は同一平面を形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生地の前処理であるスポンジング加工を実現する縫製生地の処理装置及び処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
衣服の製造においては、生地の伸縮が問題になる。例えば接着工程においては、生地を裁断後、裁断した生地を表地とし、この表地に芯地を接着する。この際、生地を加熱するので、この加熱により、生地が収縮する。また、縫製後において、時間の経過とともに、型くずれする場合もある。このように、生地が不安定であると、生地の寸法調整が必要になり、例えば生地の伸縮を見越した裁断が必要になる。
【0003】
他方、あらかじめ生地の安定化を図る処理がされていれば、衣服の製造は容易になる。このような生地の前処理として、スポンジング加工が知られている。スポンジング加工は、スチーム処理を含ませることにより、生地の安定化を図るというものである。例えば下記特許文献1には、生地にスチーム処理を行い、ついでスチーム・プレス処理を行い、更にスチーム処理を行い、室温に冷却処理するスポンジング加工法が提案されている。
【0004】
また、下記特許文献2には、スポンジング加工した生地をサンプル生地として、裁断パターンを補正する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−228858号公報
【特許文献2】特開平10−259518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、スポンジング加工法を実現する処理装置には、例えば簡単な構造が望まれ、また多種の生地に対応できる汎用性も望まれる。これらを実現する構造面の提案は、前記特許文献1、2には特別見当たらなかった。
【0007】
例えば、前記特許文献1では、処理装置として搬送ベルトがネットコンベアである通常の装置を前提としている(文献1の第2頁10行)。ネットコンベアを用いた装置では、生地の傷付きを防ぐため、プレス工程においては、ネットコンベアはプレス面を迂回させなければならず、このことは装置の簡素化を妨げていた。
【0008】
本発明は、前記のような従来の問題を解決するものであり、生地の安定性を高められる処理ができるとともに、簡単な構造でかつ多種の生地に対応できる汎用性のある縫製生地の処理装置及び処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の縫製生地の処理装置は、生地を搬送ベルトに載せ、前記搬送ベルト側に吸引しながら進行方向に生地を供給する供給ユニットと、生地に対して前記搬送ベルト側からスチームを噴射して生地をリラックスさせるリラックスユニットと、生地に対して上方からプレスをかけ、同時に前記プレスからスチームを噴射し搬送ベルト側から吸引する湿熱プレスユニットと、生地に対して上方及び搬送ベルト側から、更にスチームを噴射させ生地をエージングさせるエージングユニットと、生地に対して上方から、熱風を吹き付け搬送ベルト側に吸引する乾燥ユニットと、前記搬送ベルト側に吸引する吸引する吸引流により、生地を室温に冷却する冷却ユニットとを含み、前記各ユニットは組換え可能に接続されており、前記搬送ベルトは1枚であり、かつ前記リラックスユニットから前記冷却ユニットまでの搬送ベルト上は同一平面を形成していることを特徴とする。
【0010】
本発明の縫製生地の処理方法は、生地を搬送ベルトに載せ、前記搬送ベルト側に吸引しながら進行方向に生地を供給する供給工程と、生地に対して前記搬送ベルト側からスチームを噴射して生地をリラックスさせるリラックス工程と、生地に対して上方からプレスをかけ、同時に前記プレスからスチームを噴射し搬送ベルト側から吸引する湿熱プレス工程と、生地に対して上方及び搬送ベルト側から、更にスチームを噴射させ生地をエージング工程と、生地に対して上方から、熱風を吹き付け搬送ベルト側に吸引する乾燥工程と、前記搬送ベルト側に吸引する吸引する吸引流により、生地を室温に冷却する冷却工程とを含み、前記各工程のユニットは組換え可能に接続されており、前記搬送ベルトは1枚であり、かつ前記リラックス工程から前記冷却工程までの搬送ベルト上は同一平面を形成していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、生地の安定性を高められる処理ができるとともに、簡単な構造でかつ多種の生地に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の形態に係る縫製用生地の処理装置の全体構成図。
【図2】本発明の一実施の形態に係る生地の投入の様子を示す拡大図。
【図3】スチーム噴射装置の詳細を示す図であり、(a)図はスチーム噴射装置の長さ方向における断面図、(b)図は(a)図のAA線における断面図、(c)図は、スチーム噴射管15の拡大断面図。
【図4】本発明の一実施の形態に係るプレス装置の要部の拡大図。
【図5】図4のBB線における断面図。
【図6】本発明の一実施の形態に係るスチームヒータの配管図。
【図7】本発明の一実施の形態に係るスチーム噴射管の配管図。
【図8】本発明の一実施の形態に係る2次スチームタンクの配管の詳細を示す図。
【図9】本発明の一実施の形態に係るユニットの組換え例を示す図。
【図10】本発明の一実施の形態に係るユニットの組換えの別の例を示す図。
【図11】本発明の一実施の形態に係るユニット追加の一例を示す図。
【図12】本発明の一実施の形態に係る排気ダクトを示した図であり、(a)図は排気ダクトの一部を示す側面図、(b)図は(a)図のCC線における断面図。
【図13】図1に示した供給ユニット1の別の実施の形態を示す拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の、縫製生地の処理装置及び処理方法によれば、生地の安定性を高められる処理ができるとともに、搬送ベルトは1枚であり、各ユニットは組換え可能に接続されているので、簡単な構造にでき、かつ多種の生地に対応できる汎用性を実現することができる。
【0014】
前記本発明の処理装置においては、前記湿熱プレスユニットは、生地と前記1枚の搬送ベルトとを一体にプレスすることが好ましい。
【0015】
また、前記湿熱プレスユニットの前記プレスは、プレス面を含む箱状体にスチーム噴射管を収納しており、前記スチーム噴射管は、スチームが広がりながら噴射するように複数の噴射孔を配置しており、前記プレス面を経て生地に向けてスチームが噴射するとともに、前記プレス面で反射したスチームが前記箱状体内を流動することが好ましい。この構成によれば、スチーム噴射面であるプレス面の各部位から噴射されるスチームの均一化を図ることができる。
【0016】
また、前記各ユニットにおける上方からのスチーム噴射位置、及び前記乾燥ユニットにおける熱風の熱源の位置は、それぞれ高さ調整が可能であり、前記各高さは前記生地の素材情報の入力により自動調整されることが好ましい。この構成によれば、生地の素材に応じた寸法安定化の処理をすることができる。
【0017】
また、前記各ユニットにおけるスチーム流動用の配管は、隣接するユニット間に跨る部分の切り離し及び接続ができるように設定していることが好ましい。この構成によれば、ユニットの組み換えが容易になる。
【0018】
また、前記各ユニットにおける電気配線は、前記各ユニット単位で完結していることが好ましい。この構成によれば、ユニットの組み換えが容易になる。
【0019】
また、前記処理装置の上部に、ドレンを受けるトレイと、前記トレイが受けたドレンを蒸発させるヒータとを設けていることが好ましい。この構成によれば、生地に水滴状のドレンが落下するのを防止することができる。
【0020】
また、前記処理装置の下部に、ドレン排水の流路を設けており、前記流路は排水の上流側から順に、トラップ、1次弁、2次弁を介在させていることが好ましい。この構成によれば、ドレン排出による処理装置内の温度変化及び蒸気温度の変化を抑えることができる。
【0021】
また、前記処理装置の上部の少なくとも一部はハウジングで覆われており、前記ハウジングに風量調節ダンパーを備えた排気ダクトを接続していることが好ましい。この構成によれば、排気される吸引流の風量調節をすることができ、処理装置内の温度、湿度の調節をすることができる。
【0022】
また、前記供給ユニットに、さらにローラを備えており、生地は前記ローラと前記搬送ベルトとの間に挟まれた状態で、前記搬送ベルト側に吸引されながら進行方向に供給されることが好ましい。この構成によれば、生地の地の目修正が可能になる。
【0023】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係る縫製用生地の処理装置10の全体構成図を示している。処理装置10は、生地の前処理としてのスポンジング加工をする装置である。生地に処理装置10によるスポンジング加工をすることにより、衣服の製造工程における生地の安定化を図ることができる。
【0024】
処理装置10は、右側の生地の供給側から左側の生地の排出側に向けて、供給ユニット1、リラックスユニット2、湿熱プレスユニット3、エージングユニット4、乾燥ユニット5、冷却ユニット6の順に各ユニットを配列している。
【0025】
処理装置10には、生地を搬送するために1枚の搬送ベルト7が環状に取り付けられており、搬送ベルト7は上部と下部とを循環するように走行する。搬送ベルト7は、上部において供給ユニット1から冷却ユニット6に向けて走行し、下部において冷却ユニット6から供給ユニット1に向けて走行する。
【0026】
供給ユニット1に、処理対象である生地を投入する。図2は生地の投入の様子を示す拡大図である。供給ユニット1には、吸引機9を備えた吸引装置11が配置されている。生地8の先端を搬送ベルト7に載せると(矢印a方向)、吸引機9の吸引力により、生地8は搬送ベルト7に吸い付けられる。
【0027】
この状態で搬送ベルト7を走行(矢印b方向)させると、生地8は搬送ベルト7側に吸引されながら、リラックスユニット2側に供給されることになる。
【0028】
リラックスユニット2(図1)は、スチーム噴射装置12を備えている。リラックスユニット2に供給された生地8に、スチーム噴射装置12により、搬送ベルト7側から生地8にスチームを噴射して生地8をリラックス(緩和)させる。
【0029】
図3にスチーム噴射装置12の詳細を示している。図3(a)はスチーム噴射装置12の長さ方向(搬送ベルト7の長手方向)における断面図であり、図3(b)は図3(a)のAA線における断面図である。外装体13の開放部を噴射板14が覆って箱状体を形成している。噴射板14は平板状部材に、スチーム噴射用の小孔を多数形成したものである。この箱状体の内部に、スチーム噴射管15及びスチームヒータ16を収納している。
【0030】
スチーム噴射管15及びスチームヒータ16は、いずれもスチームタンク(図示せず)に接続されている。スチーム噴射管15には、噴射孔が形成されており、スチームタンクから供給したスチームを噴射孔から噴射する。管状のスチームヒータ16の管内には、スチームタンクから供給したスチームが流動する。スチームヒータ16による放熱により、スチーム噴射管15から噴射したスチームを加熱することができる。
【0031】
図3(c)に、スチーム噴射管15の拡大断面図を示している。スチーム噴射管15の上側半分の領域に、一対の噴射孔15a、15bを、左右対称に形成している。このことにより、噴射孔15a及び15bからのスチームが広がりながら噴射するようにしている。一対の噴射孔15a、15bは、スチーム噴射管15の長さ方向においても、所定ピッチで多数形成している。
【0032】
図3(b)において、スチーム噴射管15から噴射したスチームは、広がりながら噴射するので、異なる噴射孔から噴射したスチーム同士が交ざり合うことになる。また、スチーム噴射管15から噴射したスチームの一部は、噴射板14で反射され、外装体13の内部を流動することになる。このことにより、外装体13の内部におけるスチームの分布が均一化され、噴射板14の噴射面の各部位から噴射されるスチームの均一化を図ることができる。
【0033】
なお、一対の噴射孔15a、15bの配置は、左右対称に限るものではなく、必要なスチームの広がり角度が得られるように、配置は適宜設定すればよい。
【0034】
次に、湿熱プレスユニット3(図1)に送られた生地は、プレス装置17により、スチームの噴射を受けつつ、プレスされることになる。この処理による生地の収縮により、衣服の製造工程で起こる寸法変化を抑えられることになる。
【0035】
図4にプレス装置17の要部の拡大図を示している。本図は、プレス装置17の長さ方向(搬送ベルト7の長手方向)における断面図である。プレス装置17は、基台部18と可動部19とを備えている。可動部19は、シリンダ装置20(図1)のシャフトの伸縮により昇降する。搬送ベルト7は基台部18の上側にあり、可動部19が下降すると、基台部18と可動部19との間に、搬送ベルト7及び生地8の双方が挟まれることになる。
【0036】
この構成は、搬送ベルト7がプレス装置17のプレス面を迂回していないので、供給ユニット1から冷却ユニット6までの間において、搬送ベルト7上が同一平面を形成するようにすることができる。この場合、搬送ベルト7は、生地8と一体にプレスしても生地8の損傷を防止できる材料とすればよく、このような材料として、例えばコーネックス耐熱布が挙げられる。
【0037】
従来のプレス機構を備えた装置では、搬送ベルトはプレスせずプレス面を迂回させるのが通常であった。この構成では、搬送ベルトによりプレス面へ生地を供給することができず、生地先端にベルト状の捨布を縫い付けて、この捨布により生地を引き出す必要があった。この構成は、搬送ベルトと捨布の2枚のベルトが必要となり、装置の簡素化の妨げになっていた。本実施の形態では、捨布は不要となり、ベルトは搬送ベルト1枚で足り、装置の構造も簡単になる。
【0038】
図4において、可動部19は、外装体21の開放部をプレス板22が覆って箱状体を形成している。プレス板22は平板状部材に、スチーム噴射用の小孔を多数形成したものである。プレス板22の搬送ベルト7側の面は、多孔性で通気性のある布材で覆われている。このような布材として耐熱フェルトが挙げられる。
【0039】
可動部19の内部には、スチーム噴射管23及び電気ヒータ24を設けている。スチーム噴射管23は、スチームタンク(図示せず)に接続されている。スチーム噴射管23の構成、作用は、図3に示したスチーム噴射管15と同様である。スチーム噴射管23の噴射孔から、スチームタンクから供給したスチームを噴射する。
【0040】
電気ヒータ24は、スチーム噴射管23から噴射したスチームを加熱する。電気ヒータ24は、図3に示したスチーム噴射装置12に用いたスチームヒータ16に比べ、高温にスチームを加熱することができる。
【0041】
図5は、図4のBB線における断面図である。本図の構成は、図3(b)の構成に比べ、スチームの噴射方向が上下逆であるが、図3(b)の構成と同様に、プレス板22の噴射面の各部位から噴射されるスチームの均一化を図るようにしている。
【0042】
図4において、基台部18は、外装体25の開放部をプレス板26が覆って箱状体を形成している。基台部18の内部には、スチーム噴射管27及び電気ヒータ28を設けている。基台部18は、可動部19の上下を逆に配置した構成に相当し、可動部19と基台部18との基本構成は同じである。したがって、可動部19と基台部18とでは、スチームの噴射方向は上下逆になるが、搬送ベルト7側にスチームを噴射する点は同じである。
【0043】
以上の構成によれば、可動部19内部のスチーム噴射管23から噴射したスチームが、電気ヒータ24により高温に加熱され、プレス板22の小孔を経て、搬送ベルト7上の生地8に向けて噴射されることになる。他方、基台部18内部のスチーム噴射管27から噴射したスチームが、電気ヒータ28により高温に加熱され、プレス板26の小孔を経て、搬送ベルト7上の生地8に向けて噴射されることになる。
【0044】
また、図1に示したように、基台部18は吸引機29に接続されており、生地8は搬送ベルト7側に吸引される。この状態で、可動部19が下降し、生地8は搬送ベルト7と一体に、可動部19のプレス板22と、基台部18のプレス板26との間に挟まれてプレスされることになる。
【0045】
ここで、可動部19の高さに応じて、生地8に接するスチームの温度も異なることになる。可動部19の高さが低いほど、生地8に接するスチームの温度は高くなる。一方、可動部19の高さが高くなると、生地8に接するスチームの温度が低くなるとともに、スチームが凝縮した水分の割合も大きくなる。
【0046】
このため、プレス前の可動部19の高さを調節することにより、生地8の素材に応じた寸法安定化の処理をすることができる。例えば、ポリエステル高混率の生地に対しては、プレス前の可動部19の高さを低くし、高温(低湿)スチームが生地8に当たるようにし、生地8を収縮させる。レーヨン、テンセル等の吸湿性、放湿性の高い生地に対しては、プレス前の可動部19の高さを高くし、低温(高湿)スチームが生地8に当たるようにする。
【0047】
プレス処理された生地8は、エージングユニット4(図1)に送られる。エージングユニット4においては、上側スチーム噴射装置29と下側スチーム噴射装置33の双方から、搬送ベルト7側にスチームを噴射する。エージングユニット4では、湿熱プレスユニット3で噴射するスチームに比べ、低温のスチームを噴射し、生地に水分を与える。プレスユニット3におけるプレスにより生地が収縮した場合、後に元の状態に戻る生地もある。このような生地に対しては、このエージングユニット4における水分付加により、あらかじめ元の状態に戻しておくことができる。
【0048】
上側スチーム噴射装置29は、スチーム噴射管30と電気ヒータ31とを備えており、プレスユニット3の可動部19と同様の構成である。下側スチーム噴射装置33は、スチーム噴射管34とスチームヒータ35とを備えており、リラックスユニット2のスチーム噴射装置12と同様の構成である。
【0049】
上側スチーム噴射装置29は、シリンダ装置32のシャフトの伸縮により昇降可能であるので、高さ調節が可能である。この高さ調節により、プレスユニット3と同様に、生地に当てるスチームの状態を変化させ、生地の材質に応じた処理をすることができる。
【0050】
エージング処理された生地8は乾燥ユニット5(図1)に送られる。乾燥ユニット5においては、上方から生地8に向けて熱風を吹き付ける。このことにより、生地に含まれる余分な水分を取り除くことができる。また、プレスにより表面が変化し、湿熱プレスユニット3によるプレスに適さない生地に対しては、この乾燥ユニット5により生地を収縮させて、プレス処理と同様の処理をすることができる。
【0051】
上側スチーム噴射装置36は、湿熱プレスユニット3の可動部19と同様の構成である。スチーム噴射管37からのスチームを、電気ヒータ38により高温に加熱して、生地8に向けて噴射することができる。
【0052】
また、上側スチーム噴射装置36は、シリンダ装置39のシャフトの伸縮により昇降可能であるので、高さ調節が可能である。この高さ調節により、生地8の材質に応じた処理をすることができる点は、プレスユニット3、エージングユニット4と同様である。
【0053】
加熱装置40は、スチームヒータ41を備えており、さらに吸引機42に接続されている。このことにより、生地8を搬送ベルト7側から吸引しつつ加熱することができる。吸引機42により吸引された熱風は、ダクト43を経て上側スチーム噴射装置36側に排気され、上側スチーム噴射装置36からの熱風とともに、生地側に吹き付けられることになる。
【0054】
図1の例では、生地8に対しスチームを含む熱風を吹き付けることができるが、生地8の素材によっては、スチーム噴射管37からのスチーム噴射を停止させて、スチームを含まない熱風を吹き付けるようにしてもよい。スチーム噴射を停止させても、ダクト43からの吹き出し流により、電気ヒータ38により加熱された高温空気を、生地8に吹き付けることができる。
【0055】
前記の通り、湿熱プレスユニット3における可動型19、エージングユニット4及び乾燥ユニット5における上側スチーム噴射装置29、36は、それぞれ高さ調節が可能である。また、前記の通り、この高さに応じて生地の処理状態が異なることになる。
【0056】
このため、これらの各高さを、生地の投入前に生地の素材に応じて設定しておけばよい。この設定は生地の素材情報の入力により自動調整されるようにするのが好ましい。この自動調整は、各ユニットのシリンダ装置20、32、39を、各素材情報とシャフトの移動量情報との関係を記憶させた制御プログラムを用いて制御すればよい。
【0057】
乾燥ユニット5において乾燥処理された生地は、冷却ユニット6(図1)に送られる。冷却ユニット6においては、生地8を室温に冷却する。搬送ベルト7の下側には、吸引機45を備えた吸引装置44が配置されている。吸引機45の吸引力により、生地を搬送ベルト7側に吸引しつつ、生地を室温に冷却する。冷却ユニット6を通過した生地8は装置10の外に排出されることになる。
【0058】
以上、処理装置10について、ユニット毎に説明したが、各ユニットは組換え可能に接続されている。このことにより、処理対象の生地の素材に応じて、新たなユニットを追加でき、不要なユニットを省くこともできる。
【0059】
図1の例では、処理装置10は、それぞれ独立した構造体の各ユニットを処理工程順に配置したものである。各ユニットの本体同士を確実に接続するには、機械的接続が好ましく、このような接続として例えはボルト・ナットによる接続が挙げられる。また、ユニット単位で配管の切り離し及び接続ができるようにしておけば、ユニットの組換えが一層容易になる。以下、処理装置10の配管を説明した後、ユニットの組換えについて具体的に説明する。
【0060】
図6、7は、それぞれ処理装置10の配管の一部を示す図である。図示の便宜上、配管を図6と図7とに分けて図示している。図6は、スチームタンクとスチームヒータとの配管図である。図6に示したように、1次スチームタンク50と、スチーム噴射装置12のスチームヒータ16及び湿熱プレスユニット3上部のスチームヒータ46とが接続されている。さらに、1次スチームタンク50と、スチーム噴射装置33のスチームヒータ35及び加熱装置40のスチームヒータ41とが接続されている。
【0061】
図7は、スチームタンクとスチーム噴射管との配管図である。本図は、スチームタンクとスチーム噴射管との最小限の接続関係を図示したものである。後に図8を用いて説明するように、スチームタンクに蒸気湿切り換えのために、複数の並列した配管を接続する場合もある。
【0062】
1次スチームタンク50と、2次スチームタンク51、52とが接続されている。2次スチームタンク51とリラックスユニット2のスチーム噴射管15とが接続されている。2次スチームタンク52と、湿熱プレスユニット3のスチーム噴射管23、28、エージングユニット4のスチーム噴射管30、34、乾燥ユニット5のスチーム噴射管37とが接続されている。
【0063】
すなわち、各スチーム噴射管へのスチームは、2次スチームタンク51又は52を経由させて供給されることになる。各タンクに複数本の配管を接続し、スチーム噴射させる配管を切り換えるようにすれば、スチームの蒸気質を切り換えることができる。図8に具体例を示す。
【0064】
図8は、2次スチームタンク51の配管の詳細を示す図である。2次スチームタンク51には、上から順に3本の配管48a、48b、48cを接続している。このことにより、各配管を流動するスチームの蒸気質が異なるようにしている。上側にある配管48aからは最も低湿なスチームを噴射でき、配管48b、配管48cの順に高湿な蒸気湿となる。3つの電磁弁49a、49b、49cのうち、2つを閉じ1つを開くことにより、必要な蒸気湿のスチームを噴射することができる。比例弁59により流量調節をすることができる。2次スチームタンク52についても、配管要領は同様である。
【0065】
以上のような配管接続において、ユニット間に跨る配管の接続及び切り離しを可能にしておけば、ユニットの組換えが容易になる。例えば、湿熱プレスユニット3を取り外す場合は、図6において接続部53、54を切り離し、図7において、接続部56、57、58を切り離す。
【0066】
この状態は、湿熱プレスユニット3に隣接するリラックスユニット2、エージングユニット4に跨る配管は切り離されているので、湿熱プレスユニット3の取り外しに、配管が妨げになることはない。湿熱プレスユニット3を取り外した後は、図6において接続部53と54とを接続し、図7において接続部56と57とを接続し、接続部58を封止すればよい。図6、7において各接続部は簡略化して図示しているが、これらの各接続部には、各種管継手を用いればよい。
【0067】
ユニットの組換えのための配管接続について説明したが、電気配線については、各ユニット単位で完結するようにしておけば、ユニットの組換えが容易になる。この場合、電源供給、外部制御盤との接続等、ユニット外に配線が及ぶ部分は、コネクタ、プラグ等により切り離し及び接続ができるようにしておけばよい。また、各ユニット単位で制御盤を設けておけば、ユニットの組換えは一層容易になる。
【0068】
次に、ユニットの組換え例について説明する。図9に示した処理装置10aは、図1の処理装置10において、湿熱プレスユニット3を省いた例である。この組み換え例は、プレスに適さない生地、例えばプレスにより表面変化する生地用として使用することができる。
【0069】
湿熱プレスユニット3の本体の取り外しは、ユニット間の機械的結合を解除(例えばボルト・ナットの取り外し)すればよい。配管の切り離しは、図6、7を用いて説明したように、ユニット間に跨る配管の接続部を切り離せばよい。電気配線については、湿熱プレスユニット3内で完結するようにしておけば、特別な作業は不要になる。
【0070】
湿熱プレスユニット3を取り外した後は、リラックスユニット2とエージングユニット4との本体同士を機械的に結合(例えばボルト・ナットによる締め付け)する。配管については、接続部53と54とを接続し(図6)、接続部55と56とを接続し、接続部57を封止すればよい(図7)。これらの接続に連結管を介在させてもよい。また、各ユニット内で電気配線が完結するようにしておけば、新たな電気接続は特別不要になる。
【0071】
図10に示した処理装置10bは、図1の処理装置10において、エージングユニット4aを追加した例である。この組み換え例は、リラックスユニット2において十分なリラックス効果が得られない素材や、1つのエージングユニット4のみでは、湿熱プレスユニット3における過収縮を適正量に戻すことができない場合に適している。
【0072】
図10の構成にするには、図1の処理装置10において、エージングユニット4と乾燥ユニット5とを切り離し、この間にエージングユニット4aを追加することになる。この場合、エージングユニット4と乾燥ユニット5との間の距離が長くなるので組み換え後の配管接続には、連結管を介在させればよい。
【0073】
また、追加するエージングユニット4aの構成は、元のエージングユニット4の構成と同一である必要はなく、1次スチームタンクは元のエージングユニット4の1次スチームタンク50(図6、7)と共用してもよい。
【0074】
図11は、エージングユニット4と4aとで、1次スチームタンク50を共用した例を示している。この場合、1次スチームタンク50にあらかじめ配管60を備えておけば、1次スチームタンク50とスチームヒータ65との接続が可能になる(接続部62)。同様に、1次スチームタンク50にあらかじめ配管61を備えておけば、エージングユニット4aの2次スチームタンク64と、共用した1次スチームタンク50との接続が可能になる(接続部63)。
【0075】
次に、処理装置10の排気及び排水について説明する。前記の通り、処理装置10内にはスチームが噴射されるので、処理装置10内の空気の排気が必要になる。このため、処理装置10の上部に排気ダクトを接続し、噴射したスチームを排気するようにしている。
【0076】
図12は、排気ダクトを示した図であり、図12(a)は排気ダクトの一部を示す側面図、図12(b)は、図12(a)のCC線における断面図である。排気ダクト71は、図1に示したハウジング47に設けた排気口70に接続される。排気ダクト71は吸引機(図示せず)に接続され、処理装置10内の空気をスチームが凝縮したドレンとともに排気する。
【0077】
排気ダクト71には、風量調節ダンパー72が取り付けられている。風量調節ダンパー72は、平板状部材であり、軸を介して開閉器73と一体になっている。開閉器73を矢印c方法に回転させることにより、これと一体にダンパー72も矢印c方法に回転する。このことにより、吸引流の風量調節をすることができ、処理装置10内の温度、湿度の調節をすることができる。
【0078】
また、水滴状のドレンが生地8に落下するのを防止するために、図1に示したように、湿熱プレスユニット3の上部には、トレイ45及びスチームヒータ46を設けている。このことにより、ドレンをトレイ45で受け、スチームヒータ46で蒸発させるようにしている。図1の例ではトレイ45及びスチームヒータ46は、湿熱プレスユニット3の上部に設けているが、この場所に限らず搬送ベルト7の上側で水滴の生じ易い場所に設ければよい。
【0079】
なお、ハウジング47が覆う範囲は適宜決定すればよく、図1の例では、ハウジング47は、リラックスユニット2、湿熱プレスユニット3及びエージングユニット4を覆っているが、乾燥ユニット5を覆ってもよい。
【0080】
前記の通り、ドレンの一部は、排気ダクト71を経て排気されたり、スチームヒータ46により蒸発したりする。これら以外のドレンは、図1の例では、処理装置10の下部に集めて、ドレン排水の流路である排水管74を経て排水する。
【0081】
排水管74には、排水の上流側から順に、トラップ75、1次弁76、2次弁77を介在させている。トラップ75は、ドレン排水に通常用いられるスチームトラップである。トラップ75により、処理装置10内にドレンを溜めすぎたり、スチームを漏らしたりすることがないようにしている。
【0082】
本実施の形態では、トラップ75に、1次弁76及び2次弁77を追加している。このことにより、ドレンの排出流量を抑制し安定させ、ドレン排出による処理装置10内の温度変化及び蒸気温度の変化を抑えるようにしている。
【0083】
なお、図示の便宜上、排水管74は処理装置10の下部のさらにその下部に図示しているが、通常は処理装置10の下部に配置する。
【0084】
図13は、図1に示した供給ユニット1の別の実施の形態を示す拡大図である。本図は、図2に相当する図であり、ローラ80を追加している点が図2と異なる。生地8は搬送ベルト7に載せられており、吸引機9の吸引力により、生地8は搬送ベルト7に吸い付けられている。生地8はローラ80と搬送ベルト7との間に挟まれた状態で、搬送ベルト7側に吸引されながら進行方向に供給される。
【0085】
ローラ80は、例えばロール状のビニールで形成したものである。ローラ80の軸方向の長さは、搬送ベルト7の幅寸法を確保しており、生地8の幅全体に対応している。また、ローラ80は複数個追加してもよい。
【0086】
図13の構成のようにローラ80を追加することにより、生地8をローラ80と搬送ベルト7とでサンドイッチ状態にして吸引機9による吸引圧を高めることができる。このことにより、生地8の地の目(布のたて糸又はよこ糸の線)修正が可能になる。例えば、地の目曲がりのあったジャージ素材を、図1の供給ユニット1にローラ80(図13)を追加した処理装置10で処理した結果、地の目曲がりが改善できた。
【産業上の利用可能性】
【0087】
以上のように、本発明によれば、生地の安定性を高められる処理ができるとともに、簡単な構造でかつ多種の生地に対応することができるので、本発明は、生地の前処理であるスポンジング加工を実現する縫製生地の処理装置及び処理方法として有用である。
【符号の説明】
【0088】
1 供給ユニット
2 リラックスユニット
3 湿熱プレスユニット
4 エージングユニット
5 乾燥ユニット
6 冷却ユニット
7 搬送ベルト
8 生地
10 処理装置
12 スチーム噴射装置
15,23,28,30,34,37 スチーム噴射管
15a,15b 噴射孔
16,35,41,46 スチームヒータ
24,27,31,38,46 電気ヒータ
17 プレス装置
29,36 上側スチーム噴射装置
71 排気ダクト
72 風量調節ダンパー
75 トラップ
76 1次弁
77 2次弁
80 ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生地を搬送ベルトに載せ、前記搬送ベルト側に吸引しながら進行方向に生地を供給する供給ユニットと、
生地に対して前記搬送ベルト側からスチームを噴射して生地をリラックスさせるリラックスユニットと、
生地に対して上方からプレスをかけ、同時に前記プレスからスチームを噴射し搬送ベルト側から吸引する湿熱プレスユニットと、
生地に対して上方及び搬送ベルト側から、更にスチームを噴射させ生地をエージングさせるエージングユニットと、
生地に対して上方から、熱風を吹き付け搬送ベルト側に吸引する乾燥ユニットと、
前記搬送ベルト側に吸引する吸引する吸引流により、生地を室温に冷却する冷却ユニットとを含み、
前記各ユニットは組換え可能に接続されており、
前記搬送ベルトは1枚であり、かつ前記リラックスユニットから前記冷却ユニットまでの搬送ベルト上は同一平面を形成していることを特徴とする縫製生地の処理装置。
【請求項2】
前記湿熱プレスユニットは、生地と前記1枚の搬送ベルトとを一体にプレスする請求項1に記載の縫製用生地の処理装置。
【請求項3】
前記湿熱プレスユニットの前記プレスは、プレス面を含む箱状体にスチーム噴射管を収納しており、前記スチーム噴射管は、スチームが広がりながら噴射するように複数の噴射孔を配置しており、前記プレス面を経て生地に向けてスチームが噴射するとともに、前記プレス面で反射したスチームが前記箱状体内を流動する請求項1又は2に記載の縫製用生地の処理装置。
【請求項4】
前記各ユニットにおける上方からのスチーム噴射位置、及び前記乾燥ユニットにおける熱風の熱源の位置は、それぞれ高さ調整が可能であり、前記各高さは前記生地の素材情報の入力により自動調整される請求項1から3のいずれかに記載の縫製用生地の処理装置。
【請求項5】
前記各ユニットにおけるスチーム流動用の配管は、隣接するユニット間に跨る部分の切り離し及び接続ができるように設定している請求項1から4のいずれかに記載の縫製用生地の処理装置。
【請求項6】
前記各ユニットにおける電気配線は、前記各ユニット単位で完結している請求項1から5のいずれかに記載の縫製用生地の処理装置。
【請求項7】
前記処理装置の上部に、ドレンを受けるトレイと、前記トレイが受けたドレンを蒸発させるヒータとを設けている請求項1から6のいずれかに記載の縫製用生地の処理装置。
【請求項8】
前記処理装置の下部に、ドレン排水の流路を設けており、前記流路は排水の上流側から順に、トラップ、1次弁、2次弁を介在させている請求項1から7のいずれかに記載の縫製用生地の処理装置。
【請求項9】
前記処理装置の上部の少なくとも一部はハウジングで覆われており、前記ハウジングに風量調節ダンパーを備えた排気ダクトを接続している請求項1から8のいずれかに記載の縫製用生地の処理装置。
【請求項10】
前記供給ユニットに、さらにローラを備えており、生地は前記ローラと前記搬送ベルトとの間に挟まれた状態で、前記搬送ベルト側に吸引されながら進行方向に供給される請求項1から9のいずれかに記載の縫製用生地の処理装置。
【請求項11】
生地を搬送ベルトに載せ、前記搬送ベルト側に吸引しながら進行方向に生地を供給する供給工程と、
生地に対して前記搬送ベルト側からスチームを噴射して生地をリラックスさせるリラックス工程と、
生地に対して上方からプレスをかけ、同時に前記プレスからスチームを噴射し搬送ベルト側から吸引する湿熱プレス工程と、
生地に対して上方及び搬送ベルト側から、更にスチームを噴射させ生地をエージング工程と、
生地に対して上方から、熱風を吹き付け搬送ベルト側に吸引する乾燥工程と、
前記搬送ベルト側に吸引する吸引する吸引流により、生地を室温に冷却する冷却工程とを含み、
前記各工程のユニットは組換え可能に接続されており、
前記搬送ベルトは1枚であり、かつ前記リラックス工程から前記冷却工程までの搬送ベルト上は同一平面を形成していることを特徴とする縫製生地の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−13786(P2010−13786A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−132240(P2009−132240)
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【出願人】(508170003)株式会社ラ・モード (3)
【Fターム(参考)】