説明

縫製装置およびそれを用いたエアバッグの製造方法

【課題】特別な前工程を必要とすることなく、非常に簡単な設備および方法により、所定の公差内で精度の高い縫製を行うことのできる縫製装置およびそれを用いたエアバッグの製造方法を提供する。
【解決手段】接着シール材を介して接合された2枚の基布の接合部上または接合部近傍を縫合する縫製装置であって、縫合手段、縫合予定線に対して所定の位置に設置され該接合部の端部を検知する検知手段、および、該検知手段が接合部の端部を検知した場合に縫合を停止させる制御手段を備えた縫製装置およびそれを用いたエアバッグの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縫製装置およびそれを用いたエアバッグの製造方法に関し、詳細には、所定の公差内で精度の高い縫合を行うことのできる縫製装置およびそれを用いたエアバッグの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用エアバッグとして、運転席用エアバッグ、助手席用エアバッグおよび後席用エアバッグといった前面衝突に対応するエアバッグが装着されるようになって久しい。近年では、側面衝突に対応するサイドエアバッグやカーテンシールドエアバッグの装着も増加している。これらのなかでも、とくに車両の横転に対応するカーテンシールドエアバッグが注目されている。このエアバッグには、車両が横転している数秒の間の乗員の頭部への衝撃を吸収するために、前面衝突に対応するエアバッグと比較して長時間の内圧保持が求められている。
また、このカーテンシールドエアバッグは、他のエアバッグより縫製距離がかなり長いため、安定した縫製寸法精度の維持も求められている。その他のエアバッグにおいても、外周縫製および補強布縫製の縫代寸法精度を高くすることが更に求められている。
【0003】
このような縫代寸法精度の高いエアバッグの縫製方法が、特許文献1に開示されている。この方法は、シートの表面の縫製予定線上に、シート表面と光反射率が異なる着色の縫製線を描き、縫製時にシート表面の縫製針挿通部の近傍部にスポット光を当て、光センサーで検出したスポット光の反射光の変化によりミシンの作動を制御するというものである。この方法においては、前工程でシートに性能上本来必要の無い縫製予定線を描く必要があり、エアバッグのコストが高くなる要因となる。
【0004】
また縫製に関しては、特許文献2に開示されている。このミシンは、針落ち位置の側方に設けられて被縫製物の端部を当接させることにより前記被縫製物の位置決め可能な位置決め部材を備えたミシンであって、前記針落ち位置と所定の間隔をおいて配置され前記被縫製物を裁断可能な裁断部材を備えたものである。これにより所望の縫い代を保つ事は出来るが、本来必要な縫製形状を保持することはできない。
【0005】
特許文献3には、各布片を縫製手段にて縫い合わせるときに、縫合する両布片を挟持して所定方向に移動させながら縫い合わせ、この縫い合わせを行う針落部の少なくとも直前にて前記両布片の縫合部付近の外周端縁の位置ずれを検出手段により検出し、且つ前記検出手段の検知信号に基づいて前記布片をその縫合方向に対して略直交する方向に移動させる布移動手段により、前記両布片の外周端縁部を揃えながら縫製し、かつ前記各布片には該布片を合わせ縫いするときの縫合目印が前記外周端縁に形成されてないものを用いて縫製する製造方法が開示されている。しかし、この方法では設備が複雑になり、また、補強布縫製等の端面が揃っていない部分の縫製は出来ない。
【0006】
特許文献4には、布送り方向線と加工布の側端縁との間隔を第1の案内手段に基づく前記加工布の側端縁からの間隔とは異なる値とするように加工布を案内するために、前記第1の案内手段に近接して配置された第2の案内手段と、縫目形成開始位置または前記加工布側端縁の形状に関連して実際の縫目形成位置を解読する解読手段を含み、その解読手段の解読結果に関連して前記第1及び第2の案内手段を選択的に有効化する制御手段とを設けた装置が記載されている。しかし、これも設備が複雑且つ高価になるという問題がある。
【0007】
【特許文献1】特開2005−219654号公報
【特許文献2】特開2002−159771号公報
【特許文献3】特開平5−221278号公報
【特許文献4】特開昭59−67992号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、特別な前工程を必要とすることなく、非常に簡単な設備および方法により、所定の公差内で精度の高い縫製を行うことのできる縫製装置およびそれを用いたエアバッグの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、接合部の端部または基布の縁部を検知するセンサーを、所定の位置で縫製装置に取り付け、該センサーが接合部の端部または基布の縁部を検知した時に縫合操作を自動的に停止されることにより、所望の公差を保った縫製を行なう事が出来る事を見出した。
【0010】
すなわち、本発明は、接着シール材を介して接合された2枚の基布の接合部上または接合部近傍を縫合する縫製装置であって、縫合手段、縫合予定線に対して所定の位置に設置され該接合部の端部を検知する検知手段、および、該検知手段が接合部の端部を検知した場合に縫合を停止させる制御手段を備えた縫製装置に関する。
前記検知手段を2つ以上備えることが好ましい。
また、本発明は、接着シール材を介して2枚の基布を接合する工程、および、該接合部上または接合部近傍でさらに該基布同士を縫合する工程を含むエアバッグの製造方法であって、該縫合工程において、縫合予定線に対して所定の位置に設置され該接合部の端部を検知する検知手段が、該端部を検知した場合に縫合を停止するエアバッグの製造方法に関する。
さらに、本発明は、2枚の基布を少なくとも一方の縁部近傍で縫合する縫製装置であって、縫合手段、縫合予定線に対して所定の位置に設置され該縁部を検知する検知手段、および、該検知手段が該縁部を検知した場合に縫合を停止させる制御手段を備えた縫製装置に関する。
前記検知手段を2つ以上備えたことが好ましい。
【0011】
さらにまた、本発明は、2枚の基布を少なくとも一方の縁部近傍で縫合する工程を含むエアバッグの製造方法であって、該縫合工程において、縫合予定線に対して所定の位置に設置され該縁部を検知する検知手段が、該端部を検知した場合に縫合を停止するエアバッグの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、特別な前工程を必要とすることなく、非常に簡単な設備および方法により、所定の公差内で精度の高い縫製を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の方法で製造されるエアバッグは、図1および2に一例が示されるように、2枚の基布を接着させた上でさらに縫合して得られるものである。
【0014】
図1のエアバッグ1は、2枚の基布2が接着シール材11を介して接合されており、その接合部3上を縫製糸4により縫合している。図2のエアバッグ1は、やはり、2枚の基布2が接着シール材11を介して接合されているが、縫合は、接合部3上ではなくその近傍で行われている。このとき、縫製糸4の位置は、接合部3に対して基布の内側でも外側でもよいが、接合部の補強効果の点で、接合部に対して基布の外側であることが好ましい。
【0015】
また、本発明の方法で製造されるエアバッグの他の例は、図3(a)および(b)に示されるように、2枚の基布を縫合して得られるものである。図3(a)では、同じ大きさの基布2同士を重ね合わせて、その縁部近傍を縫製糸4により縫合している。また、図3(b)では、異なる大きさの基布2aおよび2bを重ね合わせ、基布2aの縁部近傍で縫製糸4により縫合している。
【0016】
前記エアバッグの製造に使用される本発明の縫製装置について、以下に説明する。
本発明の縫製装置は、縫合手段を備えた通常の縫製ミシンに、縫合予定線に対して所定の位置に設置され基布接合部の端部を検知する検知手段、および、該検知手段が接合部の端部または基布の縁部を検知した場合に縫合を停止させる制御手段を備えたものである。
前記縫合手段とは、たとえば縫い針などである。
【0017】
検知手段とは、たとえば反射型センサーなど、レーザーの受光部および発光部を備えたものであり、発光部から照射され対象物によって反射したレーザー光の反射率の差によって、対象物の状態を識別することが出来る。つまり、シール材の有無、接合部上であるか否か、基布が無いのか、1枚、2枚、あるいはそれ以上あるのかを検知することが出来る。もちろん、レーザーの受光部と発光部とを1つの装置が備えている必要はなく、赤外線レーザー発光装置をミシン本体に、レーザー受光部をミシン下部に設置しても、同様の検知を行うことが出来る。
【0018】
前記検知手段は、縫合予定線に対して所定の位置に設置される。具体的には、レーザーの照準が決められた寸法公差(許容される縫合予定線に対するズレ)に合うような位置にレーザー発光部を設置し、該発光部から照射され対象物によって反射したレーザー光を受光することができる位置にレーザー受光部を設置する。なお、縫合予定線とは、縫合手段により形成される縫合部(縫い目)の予定位置のことであり、縫合予定線に対して所定の位置とは、縫合手段に対して所定の位置と言い換えることができる。
前記検知手段は、2つ以上設置されることが好ましい。2つ以上あることにより、縫製方向に対して左右いずれにズレが生じても、それを検知することが可能となる。さらには、前記検知手段を3つ以上設置することが好ましい。これにより、より複雑な縫製にも対応することが出来る。
【0019】
前記制御手段とは、縫合の停止および開始をコントロールするものであり、検知手段によりレーザー照準位置が接合部上を外れたこと、または、対象の基布上を外れたことが検知された場合に、縫合操作を停止するようにプログラムされている。
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、検知手段として反射型センサーを2つ用いた場合について説明しているが、もちろんこれに限定されるものではない。
【0021】
図4は、接着シール材を介して接合された2枚の基布の接合部(図示せず)上を縫合する場合について例示している。縫製装置は、縫製装置本体5、縫い針6、2つの反射型センサー7および縫製操作制御盤8を備えている。
使用される接着シール材の幅(w)が20mmであって、公差(a)が接着シール材中央部、つまり接合部中央から±6mmである場合、2つの反射型センサー7は、レーザー光9の照準が縫合予定線10の両側各4mmとなるようにそれぞれ設置される。すなわち、そのレーザー発光部が縫製方向に対して縫い針6の左右4mmの所になるように、反射型センサーをそれぞれ設置する。図4において、レーザー光9の照準と縫合予定線10との距離を符号dで示している。このように、接着シール材を介して接合された2枚の基布の接合部上を縫合する場合、レーザー光の照準と縫合予定線との距離(d)は、式:w/2−aで求められ、これをもとに反射型センサーの位置を決めることができる。
【0022】
このように反射型センサー7を設置した場合の、接着シール材11、縫合予定線10およびレーザー光9の照準位置を示したエアバッグの一部の断面図を図5(a)に示す。たとえば、縫い目が縫製方向に対して左に6mmずれてしまった場合、図5(b)に示すように、一方のレーザー光9の照準位置は接合部3の端部となり、センサーはこれを検知して縫合は停止される。その後、基布の位置を修正して、再び縫合操作が開始される。これにより、所定の公差内で縫製を行うことができる。
【0023】
図6は、接着シール材(図示せず)を介して接合された2枚の基布の接合部近傍外側を縫合する場合について例示している。縫製装置は、同様に縫製装置本体5、縫い針6、2つの反射型センサー7および縫製操作制御盤8を備えている。
【0024】
使用される接着シール材の幅(w)が10mmであって、公差(a)が接着シール材端部から5mm外側を中心に±3mmである場合、2つの反射型センサー7は、レーザー光9の照準が縫合予定線10から基布2内側方向に2mm(d)および8mm(d)となるように、すなわち、そのレーザー発光部が縫製方向に対して縫い針6の左側2mmおよび8mm、または右側2mmおよび8mmの所になるように、反射型センサーをそれぞれ設置する。なお、縫製方向に対して縫い針の左右いずれかに設置するかは、基布の内側方向が縫い針の左右いずれの方向であるかにより変わるため、適切な方へ設置すればよく、図6では、縫い針の左側である。このように、接着シール材を介して接合された2枚の基布の接合部近傍外側を縫合する場合、レーザー光の照準と縫合予定線との距離(d)は、接着シール材端部と縫合予定線との距離をbとして、式:b±aで求められ、これをもとに反射型センサーの位置を決めることができる。
【0025】
このように反射型センサー7を設置した場合の、接着シール材11、縫合予定線10およびレーザー光9の照準位置を示したエアバッグの一部の断面図を図7(a)に示す。たとえば、縫い目が接着シール材側に3mmずれてしまった場合、図7(b)に示すように、一方のレーザー光9の照準位置は接合部3の端部となり、センサーはこれを検知して縫合は停止される。逆に、縫い目が縫合予定線から基布外側に3mmずれてしまった場合、図7(c)に示すように、レーザー光9の他方の照準位置が接合部3の端部となるため、センサーはこれを検知してやはり縫合は停止される。その後、基布の位置を修正して、再び縫合操作が開始される。これにより、接合部と縫合部との距離をある一定の間隔に保つことができる。
【0026】
図8は、同じ大きさの基布同士を重ね合わせて、その縁部近傍を縫合する場合について例示している。縫製装置は、同様に縫製装置本体5、縫い針6、2つの反射型センサー7および縫製操作制御盤8を備えている。
【0027】
縫い代が基布縁部から30mm、公差が縫合予定線を中心に±10mmである場合、2つの反射型センサー7は、レーザー光9の照準が縫合予定線10から基布2外側方向に20mm(d)および40mm(d)となるように、すなわち、そのレーザー発光部が縫製方向に対して縫い針6の左側20mmおよび40mm、または右側20mmおよび40mmの所になるように、反射型センサーをそれぞれ設置する。なお、縫製方向に対して縫い針の左右いずれかに設置するかは、基布の外側方向が縫い針の左右いずれの方向であるかにより変わるため、適切な方へ設置すればよく、図8では、縫い針の右側である。このように、同じ大きさの基布同士を重ね合わせて、その縁部近傍を縫合する場合、レーザー光の照準と縫合予定線との距離(d)は、基布縁部と縫合予定線との距離をcとして、式:c±aで求められ、これをもとに反射型センサーの位置を決めることができる。
【0028】
このように反射型センサー7を設置した場合の、縫合予定線10およびレーザー光9の照準位置を示したエアバッグの一部の断面図を図9(a)に示す。たとえば、縫い目が基布外側に10mmずれてしまった場合、図9(b)に示すように、一方のレーザー光9の照準位置は基布2の縁部となり、センサーはこれを検知して縫合は停止される。逆に、縫い目が縫合予定線から基布内側に10mmずれてしまった場合、図9(c)に示すように、レーザー光9の他方の照準位置が基布2の縁部となるため、センサーはこれを検知してやはり縫合は停止される。その後、基布の位置を修正して、再び縫合操作が開始される。これにより、通常行われるエアバッグの外周縫製において、安定した縫代を保つことができる。
【0029】
図10は、大きさの異なる基布2aおよび2bを重ね合わせて、基布2aの縁部近傍を縫合する場合について例示している。縫製装置は、同様に縫製装置本体5、縫い針6、2つの反射型センサー7および縫製操作制御盤8を備えている。
【0030】
縫い代が基布2a縁部から30mm、公差が縫合予定線を中心に±10mmである場合、2つの反射型センサー7は、レーザー光9の照準が縫合予定線10から基布2a外側方向に20mm(d)および40mm(d)となるように、すなわち、そのレーザー発光部が縫製方向に対して縫い針6の左側20mmおよび40mm、または右側20mmおよび40mmの所になるように、反射型センサーをそれぞれ設置する。なお、縫製方向に対して縫い針の左右いずれかに設置するかは、基布2aの外側方向が縫い針の左右いずれの方向であるかにより変わるため、適切な方へ設置すればよく、図10では、縫い針の右側である。このように、大きさの異なる基布同士を重ね合わせて、小さい基布の縁部近傍を縫合する場合、レーザー光の照準と縫合予定線との距離(d)は、小さい基布の縁部と縫合予定線との距離をc´として、式:c´±aで求められ、これをもとに反射型センサーの位置を決めることができる。
【0031】
このように反射型センサー7を設置した場合の、縫合予定線10およびレーザー光9の照準位置を示したエアバッグの一部の断面図を図11(a)に示す。たとえば、縫い目が基布2a外側に10mmずれてしまった場合、図11(b)に示すように、一方のレーザー光9の照準位置は基布2aの縁部となり、センサーはこれを検知して縫合は停止される。逆に、縫い目が縫合予定線から基布2a内側に10mmずれてしまった場合、図11(c)に示すように、レーザー光9の他方の照準位置が基布2aの縁部となるため、センサーはこれを検知してやはり縫合は停止される。その後、基布の位置を修正して、再び縫合操作が開始される。これにより、通常行われるエアバッグの補強布縫製において、安定した縫代を保つことができる。
【0032】
本発明で使用される基布は、例えば、ナイロン6 、66および46などのポリアミド繊維、パラフェニレンテレフタルアミドと芳香族エーテルとの共重合体などに代表される芳香族ポリアミド繊維(アラミド繊維)、ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル繊維、全芳香族ポリエステル繊維、ビニロン繊維、レーヨン繊維、超高分子量ポリエチレンなどのポリオレフィン繊維、ポリオキシメチレン繊維、パラフェニレンサルフォンおよびポリサルフォンなどのサルフォン系繊維、ポリエーテルエーテルケトン繊維、ポリエーテルイミド繊維およびポリイミド繊維などの有機繊維、および、ガラス繊維、セラミックス繊維、炭素繊維および金属繊維などの無機繊維などがあげられ、これらを単独または併用して使用しても良い。なかでも、強度、耐久性およびコストなど総合的な観点から、ナイロン6 、66 および46などのポリアミド繊維が好ましい。
【0033】
また、その組織としては、織物、編物または不織布などの何れであってもよい。例えば、織物の場合は、平織、朱子織、綾織、パナマ織および袋織などがあげられ、編物の場合は、経編および丸編などがあげられる。なかでも、布帛の伸度および強度の点から織物が好ましく、平織組織のものがより好ましい。
【0034】
また、使用される合成繊維の単糸強度については、エアバッグとしての物理的特性を満足させるために5.4g/デシテックス以上であることが好ましい。
【0035】
また、これら合成繊維の総繊度については、155〜470デシテックスであることが好ましい。155デシテックス未満では布帛の強度を維持することができないおそれがあり、470デシテックスより大きくなると、基布の厚みが増大し、バッグの収納性が悪くなるおそれがある。
【0036】
また、これら合成繊維の単繊維の断面形状については、丸、扁平、三角、長方形、平行四辺形、中空、星型など特に限定されるものではないが、生産性やコスト面からは丸断面のものが好ましく、また、基布の厚みを薄くでき、バッグの収納性がよくなるという点では、扁平断面のものが好ましい。
【0037】
前記基布が織物である場合のカバーファクターについては、1500〜2500であることが好ましい。カバーファクターが1500より小さいと、織物の開口部が大きくなってしまいバッグの気密性を得ることが困難であり、またカバーファクターが2500より大きいと、織物の厚みが増大し、バッグの収納性が悪くなるおそれがある。ここで、カバーファクターとは基布のタテ糸総繊度をD1デシテックス、タテ糸密度をN1(本/2.54cm)とし、ヨコ糸総繊度をD2デシテックス、ヨコ糸密度をN2(本/2.54cm)とすると(D1×0.9)1/2×N+(D×0.9)1/2×N2で表される。
【0038】
また、これらの布帛は、耐熱性の向上および通気度の低下を目的として、樹脂などによりコーティングされていてもよい。
コーティングに用いられる樹脂としては、例えば、クロロプレンゴム、ハイバロンゴム、フッ素ゴムなどの含ハロゲンゴム、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレン三元共重合ゴム、ニトリルブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、イソブチレンイソプレンゴム、ウレタンゴムおよびアクリルゴムなどのゴム類、および、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂およびフッ素樹脂などの含ハロゲン樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エステル樹脂、アミド樹脂、オレフィン樹脂およびシリコーン樹脂などの樹脂類があげられ、これらは単独または併用して使用される。なかでも、耐熱性および耐候性に優れる点で、シリコーン樹脂が好ましい。
【0039】
さらに、エアバッグを滑らかに展開させる目的で、前記コーティング樹脂膜の摩擦を低減する処理をおこなうことが好ましい。前記処理としては、具体的には、コーティング樹脂膜にタルク等の微粉体を塗布する方法、コーティング樹脂に有機チタン化合物等の硬化後の粘着性を低減する物質を配合してコーティングをおこなう方法、および、コーティング樹脂膜にエンボス加工装置などを用いて凹凸を付与する方法などがあげられる。
【0040】
本発明で使用される接着シール材は、基布との接着性を考慮して選択すればよく、特に限定されない。たとえば、シリコーン系接着剤、ポリウレタン系接着剤、ポリアミド系接着剤およびニトリルゴム系接着剤などがあげられ、熱可塑性のものであっても熱硬化のものであってもよい。それらの硬化機構としては、室温湿気硬化型、室温縮合反応型、室温付加反応型および加熱硬化型などがあげられるが、加工時間の短縮という観点からみると加熱硬化型のものが好ましい。
【0041】
接着シール材の形状としては、1液、2液または3液以上の液状、粉体、フィルムおよびテープなどがあげられ、特に限定されない。なかでも、繊維束間や単繊維間への浸透が容易であるという点で、液状のものや加熱することにより流動性を有する、いわゆるホットメルトタイプのものが好ましい。なお、コーティング樹脂と同一の材料を用いると、材料コスト、生産性、品質管理等の点から有利なものとなり、より好ましい。
【0042】
接着シール材の塗布方法として、液状のものについては、ディスペンサー、スクリーンプリントまたはスプレーなどにて塗布する方法、粉体のものについては、型枠を通して塗布する方法、フィルム状やテープ状のものについては、所望の形状に裁断して、貼付する方法などがあげられ、適宜選択すればよい。
【0043】
接着シール材の付与幅については、1.5〜20mmであることが好ましい。幅が1.5mmより狭いと、接合部上を縫合する場合に接着シール材から外れてしまうおそれがあり、幅が20mmより広いと、接合部が嵩高となりバッグの収納性に劣るものとなるおそれがある。また接着シール材の厚みについては、0.05〜3mmが好ましい。厚みが0.05mmより薄いとバッグの気密性が保持出来ないおそれがあり、厚みが3mmを越えるとバッグの収納性に劣るものとなるおそれがある。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明により製造されるエアバッグの一部を示した斜視図である。
【図2】本発明により製造される他のエアバッグの一部を示した斜視図である。
【図3】(a)および(b)ともに、本発明により製造される他のエアバッグの一部を示した斜視図である。
【図4】本発明の縫製装置を示した模式図である。
【図5】(a)および(b)ともに、本発明の製造方法を説明するためのエアバッグ縫合部の断面図である。
【図6】本発明の他の縫製装置を示した模式図である。
【図7】(a)、(b)および(c)ともに、本発明の製造方法を説明するためのエアバッグ縫合部の断面図である。
【図8】本発明の他の縫製装置を示した模式図である。
【図9】(a)、(b)および(c)ともに、本発明の製造方法を説明するためのエアバッグ縫合部の断面図である。
【図10】本発明の他の縫製装置を示した模式図である。
【図11】(a)、(b)および(c)ともに、本発明の製造方法を説明するためのエアバッグ縫合部の断面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 エアバッグ
2、2a、2b 基布
3 接合部
4 縫製糸
5 縫製装置本体
6 縫い針
7 反射型センサー
8 縫製操作制御盤
9 レーザー光
10 縫合予定線
11 接着シール材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着シール材を介して接合された2枚の基布の接合部上または接合部近傍を縫合する縫製装置であって、縫合手段、縫合予定線に対して所定の位置に設置され該接合部の端部を検知する検知手段、および、該検知手段が接合部の端部を検知した場合に縫合を停止させる制御手段を備えた縫製装置。
【請求項2】
前記検知手段を2つ以上備えた請求項1記載の縫製装置。
【請求項3】
接着シール材を介して2枚の基布を接合する工程、および、該接合部上または接合部近傍でさらに該基布同士を縫合する工程を含むエアバッグの製造方法であって、該縫合工程において、縫合予定線に対して所定の位置に設置され該接合部の端部を検知する検知手段が、該端部を検知した場合に縫合を停止するエアバッグの製造方法。
【請求項4】
2枚の基布を少なくとも一方の縁部近傍で縫合する縫製装置であって、縫合手段、縫合予定線に対して所定の位置に設置され該縁部を検知する検知手段、および、該検知手段が該縁部を検知した場合に縫合を停止させる制御手段を備えた縫製装置。
【請求項5】
前記検知手段を2つ以上備えた請求項4記載の縫製装置。
【請求項6】
2枚の基布を少なくとも一方の縁部近傍で縫合する工程を含むエアバッグの製造方法であって、該縫合工程において、縫合予定線に対して所定の位置に設置され該縁部を検知する検知手段が、該端部を検知した場合に縫合を停止するエアバッグの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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