説明

縮合多環芳香族化合物、およびその製造方法

【課題】エチニル基またはエチニレン基を有する化合物を分子内環化反応させて縮合多環芳香族化合物を製造するに当たり、穏和な条件で縮合多環芳香族化合物を製造する方法を提供する。
【解決手段】下記式(1)で示される構造を有する化合物を、分子内環化反応させて、インデン骨格またはナフタレン骨格を有する化合物を製造する縮合多環芳香族化合物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縮合多環芳香族化合物、およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エチニル基を有する化合物を分子内環化反応させて、縮合多環芳香族化合物を製造する方法として、例えば非特許文献1には、4−エチニルフェナントレンからピレンを得る方法が開示されている。
【非特許文献1】J. Org. Chem,, 64, 3861 (1999)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、非特許文献1に開示された方法は、エチニル基を有する化合物を分子内環化反応させるに当たり、800℃という高温条件で反応を行う必要がある。
【0004】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、エチニル基またはエチニレン基を有する化合物を分子内環化反応させて縮合多環芳香族化合物を製造するに当たり、穏和な条件で縮合多環芳香族化合物を製造する方法を提供することにある。また、新規な縮合多環芳香族化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決することができた本発明の製造方法とは、下記式(1)で示される構造を有する化合物を、分子内環化反応させて、インデン骨格またはナフタレン骨格を有する化合物を製造するところに特徴を有する。
【0006】
【化1】

【0007】
[式(1)中、Q1,Q2は、同一または異なって、芳香環または複素芳香環を表し、R1
、およびR2またはR3は、同一または異なって、アルキル基、アリール基、およびヘテロアリール基よりなる群から選ばれる置換基を有していてもよいエチニル基を表す。]
【0008】
前記式(1)で示される構造を有する化合物が、R1とR2とに置換基を有していてもよいエチニル基を有し、R3が水素原子である場合は、本発明の製造方法は、下記式(2)
で示される構造を有する化合物を、分子内環化反応させて、下記式(3)で示される構造を有する化合物を製造する方法であることが好ましい。
【0009】
【化2】

【0010】
[式(2)および式(3)中、Q3,Q4は、同一または異なって、芳香環または複素芳香環を表し、R4はアリール基を表し、R5は、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、または水素原子を表す。Q5は炭化水素環を表し、Q5のインデン骨格と一辺を共有する環構造の環員数は、R4のエチニレン基に結合する環構造の環員数よりも1つ多い。]
【0011】
前記式(2)で示される構造においては、R4はエチニレン基に結合するベンゼン環で
あることが好ましく、前記式(3)で示される構造を有する化合物としてベンゾアズレン骨格を有する化合物を製造する方法であることが好ましい。
【0012】
前記式(1)で示される構造を有する化合物が、R1とR3とに置換基を有していてもよいエチニル基を有し、R2が水素原子である場合は、本発明の製造方法は、下記式(4)
で示される構造を有する化合物を、分子内環化反応させて、下記式(5)で示される構造を有する化合物を製造する方法であることが好ましい。
【0013】
【化3】

【0014】
[式(4)および式(5)中、Q6,Q7は、同一または異なって、芳香環または複素芳香環を表し、R6,R7は、同一または異なって、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、または水素原子を表す。]
【0015】
前記製造方法によれば、エチニル基またはエチニレン基を有する化合物を分子内環化反応させて縮合多環芳香族化合物を製造するに当たり、穏和な条件で縮合多環芳香族化合物を製造することができる。なお、前記製造方法においては、エチニル基またはエチニレン基を有する化合物を分子内環化反応させる際、白金触媒および/または金触媒存在下で反応を行うことが好ましい。
【0016】
本発明は、また、新規な縮合多環芳香族化合物として、下記式(6)で示される化合物および下記式(7)で示される化合物を提供する。
【0017】
【化4】

【0018】
[式(6)中、Q8,Q9は、同一または異なって、芳香環または複素芳香環を表し、R21は、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、または水素原子を表し、R22〜R26は、同一または異なって、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜40のアリール基、炭素数5〜40のヘテロアリール基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜40のアリールオキシ基、炭素数5〜40のヘテロアリールオキシ基、炭素数1〜20のエステル基、炭素数1〜20のアシルオキシ基、炭素数0〜20のアミノ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数6〜40のアリールチオ基、ハロゲン原子、炭素数1〜20のハロアルキル基、シリル基、ボリル基、スタニル基、ホスフィノ基、または水素原子を表し、R22〜R26の隣接する基は、共同して環形成してもよい。]
【0019】
【化5】

【0020】
[式(7)中、R21は、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、または水素原子を表し、R22〜R32は、同一または異なって、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜40のアリール基、炭素数5〜40のヘテロアリール基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜40のアリールオキシ基、炭素数5〜40のヘテロアリールオキシ基、炭素数1〜20のエステル基、炭素数1〜20のアシルオキシ基、炭素数0〜20のアミノ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数6〜40のアリールチオ基、ハロゲン原子、炭素数1〜20のハロアルキル基、シリル基、ボリル基、スタニル基、ホスフィノ基、または水素原子を表し、R22〜R26の隣接する基は、共同して環形成してもよい。]
【発明の効果】
【0021】
本発明の製造方法によれば、非特許文献1に開示される方法よりも穏和な条件で、エチニル基またはエチニレン基を有する化合物を分子内環化反応させて、縮合多環芳香族化合物を製造することができる。また、ベンゾアズレン骨格を有する新規な縮合多環芳香族化合物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
〔1.縮合多環芳香族化合物の製造方法〕
まず、本発明の縮合多環芳香族化合物の製造方法について説明する。本発明の製造方法では、下記式(1)で示される構造を有する化合物を、分子内環化反応させて、インデン骨格またはナフタレン骨格を有する化合物を製造する。
【0023】
【化6】

【0024】
式(1)中、Q1,Q2は、同一または異なって、芳香環または複素芳香環を表す。
【0025】
1,Q2の芳香環は、6〜40員環の炭化水素環を含有し、芳香族性を有することが好ましい。Q1,Q2の芳香環は、単環式であっても、多環式(縮合環式を含む)であってもよい。Q1,Q2の芳香環としては、例えば、ベンゼン環;ナフタレン環、アントラセン環、テトラセン環、ペンタセン環等のアセン環;フェナントレン環等が示される。さらに、Q1,Q2の芳香環には、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、エステル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、シリル基、ボリル基、スタニル基、ホスフィノ基等の置換基が結合していてもよい。前記置換基は、Q1,Q2の芳香環のどの位置に結合していてもよく、炭素を有する置換基である場合は、炭素数1〜20のものが好ましい。
【0026】
1,Q2の複素芳香環は、5〜40員環構造を含有し、前記環構造には、酸素、窒素、および硫黄よりなる群から選ばれる少なくとも1つの原子が含まれ、芳香族性を有することが好ましい。Q1,Q2の複素芳香環は、単環式であっても、多環式(縮合環式を含む)であってもよい。Q1,Q2の複素芳香環としては、例えば、ピリジン環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、ピラゾール環、イソオキサゾール環、イソチアゾール環、ピリダジン環、ピリミジン環、ベンゾイミダゾール環等が示される。さらに、Q1,Q2の複素芳香環には、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、エステル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、シリル基、ボリル基、スタニル基、ホスフィノ基等の置換基が結合していてもよい。前記置換基は、Q1,Q2の複素芳香環のどの位置に結合していてもよく、炭素を有する置換基である場合は、炭素数1〜20のものが好ましい。
【0027】
式(1)中、R1、およびR2またはR3は、同一または異なって、アルキル基、アリー
ル基、およびヘテロアリール基よりなる群から選ばれる置換基αを有していてもよいエチニル基を表す。また、式(1)中、R2またはR3が置換基αを有していてもよいエチニル基ではない場合、R2またはR3は水素原子を表す。すなわち、前記式(1)の化合物は、R1とR2に置換基αを有していてもよいエチニル基を有し、R3が水素原子であるか、R1とR3に置換基αを有していてもよいエチニル基を有し、R2が水素原子である。なお、前記エチニル基は、置換基αを有していなくてもよい。
【0028】
置換基αのアルキル基は、炭素数1〜20であることが好ましく、直鎖状、分枝状であっても、脂環構造を有するものであってもよい。置換基αのアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、i−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が示される。
【0029】
置換基αのアリール基は、6〜40員環の炭化水素環を含有し、芳香族性を有することが好ましい。前記アリール基は、単環式であっても、多環式(縮合環式を含む)であってもよい。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が示される。さらに、アリール基の芳香環には、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、エステル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、シリル基、ボリル基、スタニル基、ホスフィノ基等の置換基が結合していてもよい。アリール基の芳香環に置換基が結合する場合、置換基は芳香環のどの位置に結合していてもよく、また置換基が炭素を有するものである場合は、炭素数1〜20のものが好ましい。
【0030】
置換基αのヘテロアリール基は、5〜40員環構造を含有し、前記環構造には、酸素、窒素、および硫黄よりなる群から選ばれる少なくとも1つの原子が含まれ、芳香族性を有することが好ましい。前記ヘテロアリール基は、単環式であっても、多環式(縮合環式を含む)であってもよい。ヘテロアリール基としては、例えば、ピリジル基、フリル基、チエニル基、イミダゾジル基、ベンゾイミダゾリル基等が示される。さらに、ヘテロアリール基の環構造には、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、エステル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、シリル基、ボリル基、スタニル基、ホスフィノ基等の置換基が結合していてもよい。ヘテロアリール基の環構造に置換基が結合する場合、置換基は環構造のどの位置に結合していてもよく、また置換基が炭素を有するものである場合は、炭素数1〜20のものが好ましい。
【0031】
置換基αとしては、アリール基が好ましく、フェニル基、またはナフチル基がより好ましい。また、前記フェニル基、ナフチル基には、置換基が結合していてもよい。
【0032】
本発明の製造方法においては、反応により、式(1)で示される構造を有する化合物に、新たに環構造が形成され、その結果、インデン骨格またはナフタレン骨格を有する化合物が製造される。式(1)で示される構造を有する化合物が、R1とR2に置換基αを有していてもよいエチニル基を有し、R3が水素原子である場合は、分子内環化反応させるこ
とにより、インデン骨格を有する化合物が得られ、式(1)で示される構造を有する化合物が、R1とR3に置換基αを有していてもよいエチニル基を有し、R2が水素原子である
場合は、分子内環化反応させることにより、ナフタレン骨格を有する化合物が得られる。
【0033】
本発明においては、式(1)で示される構造を1つ有する化合物を分子内環化反応させてもよく、式(1)で示される構造を2つ以上有する化合物を分子内環化反応させてもよい。また、式(1)で示される化合物を、分子内環化反応させて、インデン骨格またはナフタレン骨格を有する化合物を製造してもよい。
【0034】
式(1)で示される構造を有する化合物を、分子内環化反応させて、インデン骨格またはナフタレン骨格を有する化合物を製造するには、反応を効率的に進めるために触媒を用いることが好ましい。触媒としては、特に限定されないが、白金触媒および/または金触媒が好ましい。
【0035】
白金触媒としては、白金錯体が好ましく、2価白金錯体がより好ましい。2価白金錯体触媒としては、例えば、PtCl2、PtBr2、PtCl2(cod)、PtCl(C6F5)(cod)、PtBr(CF3)(cod)
等を用いることができる。
【0036】
白金触媒として2価白金錯体を用いる場合、2価白金錯体に、さらに配位子としてホスフィン(PR3)やホスファイト(P(OR)3)を併用してもよい。なお、前記ホスフィンとホスファイトの一般式中、Rは有機基を表す。ホスフィンとしては、例えば、トリフェニルホスフィン(PPh3)、トリo−トリルホスフィン(P(o-tol)3)、トリtert−ブチルホ
スフィン(P(t-Bu)3)、ジフェニルホスフィノフェロセン(dppf)等が示される。ホスファイトとしては、例えば、P(OCH2CF3)3、トリフェニルホスファイト(P(OPh)3)、トリエチルホスファイト(P(OEt)3)等が示される。
【0037】
金触媒としては、金錯体が好ましく、1価金錯体がより好ましい。金錯体の置換基としては、例えば、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン;ビストリフルオロメタンスルホニルイミド(NTf2);トリフルオロメタンスルホニル(OTf)等が示される。金錯体の配位子と
しては、例えば、ホスフィン(PR3);ホスファイト(P(OR)3);N−ヘテロ環カルベン等が示される。なお、前記ホスフィンとホスファイトの一般式中、Rは有機基を表す。
【0038】
以下、式(1)で示される構造を有する化合物がR1とR2とに置換基αを有していてもよいエチニル基を有し、R3が水素原子である場合、すなわちインデン骨格を有する化合
物を製造する方法と、式(1)で示される構造を有する化合物がR1とR3とに置換基αを有していてもよいエチニル基を有し、R2が水素原子である場合、すなわちナフタレン骨
格を有する化合物を製造する方法とに分けて、各製造方法の詳細を説明する。
【0039】
〔2.インデン骨格を有する化合物の製造方法〕
本発明の縮合多環芳香族化合物の製造方法において、インデン骨格を有する化合物を製造する方法としては、下記式(2)で示される構造を有する化合物を、分子内環化反応させることが好ましい。
【0040】
【化7】

【0041】
式(2)中、Q3,Q4は、同一または異なって、芳香環または複素芳香環を表す。式(2)中、Q3,Q4については、前記式(1)のQ1,Q2についての前記説明と同様である。
【0042】
3,Q4としては、芳香環が好ましく、ベンゼン環がより好ましい。Q3,Q4がベンゼン環の場合、式(2)で示される構造は、2位と2’位に、置換基を有していてもよいエチニル基が結合したビフェニルとなる。この場合、ビフェニルの3位、4位、5位、3’位、4’位、5’位よりなる群から選ばれる少なくとも1つの炭素原子には、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜40のアリール基、炭素数5〜40のヘテロアリール基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜40のアリールオキシ基、炭素数5〜40のヘテロアリールオキシ基、炭素数1〜20のエステル基、炭素数1〜20のアシルオキシ基、炭素数0〜20のアミノ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数6〜40のアリールチオ基、ハロゲン原子、炭素数1〜20のハロアルキル基、シリル基、ボリル基、スタニル基、ホスフィノ基等の置換基が結合していてもよい。置換基としては、好ましくは、メチル基、メトキシ基、フェノキシ基、フッ素、臭素、塩素、ジフェニルアミノ基、およびフェニル基よりなる群から選ばれる少なくとも1つである。
【0043】
式(2)中、R4はアリール基を表し、R5は、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、または水素原子を表す。R4,R5のアリール基、R5のアルキル基、ヘテロアリー
ル基については、前記式(1)のR1〜R3の置換基αのアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基についての前記説明と同様である。
【0044】
4は、エチニレン基に結合するベンゼン環を有していることが好ましく、フェニル基
、またはナフチル基がより好ましい。前記フェニル基、ナフチル基には、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜40のアリール基、炭素数5〜40のヘテロアリール基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜40のアリールオキシ基、炭素数5〜40のヘテロアリールオキシ基、炭素数1〜20のエステル基、炭素数1〜20のアシルオキシ基、炭素数0〜20のアミノ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数6〜40のアリールチオ基、ハロゲン原子、炭素数1〜20のハロアルキル基、シリル基、ボリル基、スタニル基、ホスフィノ基等の置換基が結合していてもよい。置換基としては、好ましくは、メチル基、メトキシ基、フェノキシ基、フッ素、臭素、塩素、ジフェニルアミノ基、フェニル基、チエニル基、およびピリジル基よりなる群から選ばれる少なくとも1つである。置換基は、フェニル基、ナフチル基のどの位置に結合していてもよい。
【0045】
5は、R4と同一であることが好ましい。R4とR5とが同一であれば、式(2)の化合物の製造が容易になる。
【0046】
本発明の製造方法に従い、式(2)で示される構造を有する化合物を分子内環化反応させると、下記式(3)で示される構造、すなわちインデン骨格を有する化合物が得られる。
【0047】
【化8】

【0048】
式(3)中、Q3,Q4は、前記式(2)のQ3,Q4についての前記説明と同様である。式(2)中のQ3,Q4は、各々式(3)中のQ3,Q4として保持される。式(3)中、R5は、前記式(2)のR5についての前記説明と同様である。式(2)中のR5は、式(3
)中のR5として保持される。
【0049】
式(3)中、Q5は炭化水素環を表す。Q5の環構造は、単環式であっても、多環式(縮合環式を含む)であってもよい。
【0050】
式(3)のQ5のインデン骨格と一辺を共有する環構造の環員数は、式(2)のR4のエチニレン基に結合する環構造の環員数よりも1つ多くなる。例えば、R4がフェニル基の
場合、Q5は7員炭化水素環を形成する。また、R4がナフチル基の場合、Q5は7員炭化
水素環と6員炭化水素環とからなる縮合環を形成する。
【0051】
本発明において、インデン骨格を有する化合物を製造する方法としては、式(2)で示される構造を1つ有する化合物を分子内環化反応させてもよく、式(2)で示される構造を2つ以上有する化合物を分子内環化反応させてもよい。また、本発明においては、式(2)で示される化合物を、分子内環化反応させて、式(3)で示される化合物を製造してもよい。
【0052】
以下に、式(2)で示される構造を有する化合物を、分子内環化反応させて、式(3)で示される構造を有する化合物を製造する方法を、例示する。
【0053】
(例1)Q3とQ4がベンゼン環であり、R4とR5が4−クロロフェニル基の場合(2a)、Q5はクロロ基を有する7員炭化水素環を形成する(3a)。
【0054】
【化9】

【0055】
(例2)Q3とQ4がナフタレン環であり、R4が1−ナフチル基の場合(2b)、Q5
7員炭化水素環と6員炭化水素環とからなる縮合環を形成する(3b)。
【0056】
【化10】

【0057】
前記例1,2のように、R4がエチニレン基に結合するベンゼン環を有する場合は、Q5はインデン骨格と縮合する7員炭化水素環を形成し、生成物としてベンゾ[a]アズレン骨格を有する化合物が得られる。これを一般化して化学式で表すと、下記の通りになる。
【0058】
【化11】

【0059】
式(2c)、式(3c1)、および式(3c2)中、Q3,Q4,R5は、前記式(2)お
よび前記式(3)のQ3,Q4,R5についての前記説明と同様である。式(2c)、式(
3c1)、および式(3c2)中、R11〜R15は、同一または異なって、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜40のアリール基、炭素数5〜40のヘテロアリール基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜40のアリールオキシ基、炭素数5〜40のヘテロアリールオキシ基、炭素数1〜20のエステル基、炭素数1〜20のアシルオキシ基、炭素数0〜20のアミノ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数6〜40のアリールチオ基、ハロゲン原子、炭素数1〜20のハロアルキル基、シリル基、ボリル基、スタニル基、ホスフィノ基、または水素原子を表す。R11〜R15の隣接する基は、共同して環形成してもよい。例えば
、前記式(3b)に示す化合物のように、R11とR12とが共同して、ベンゾ[a]アズレン骨格の7員環と一辺を共有する6員環を形成してもよい。
【0060】
式(2)で示される構造を有する化合物を、分子内環化反応させて、式(3)で示される構造を有する化合物を製造するには、触媒を用いることが好ましい。触媒としては、特に限定されないが、白金触媒および/または金触媒が好ましい。白金触媒として2価白金錯体を用いる場合は、2価白金錯体に、さらにホスフィン(PR3)やホスファイト(P(OR)3)を併用してもよい。白金触媒、金触媒、および併用して用いてもよいホスフィンやホスファイトの詳細については、前記説明と同様である。反応を効率的に進めるためには、触媒として白金錯体を用いることがより好ましく、ホスフィンやホスファイトを併用することがさらに好ましい。特に好ましいのは、白金錯体触媒としてPtCl(C6F5)(cod)を用い、P(OCH2CF3)3を併用する方法である。
【0061】
式(2)で示される構造を有する化合物を、分子内環化させる反応は、溶媒中で行うことが好ましい。溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、p−キシレン、m−キシレン、オクタン、デカン等の炭化水素類;テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類;クロロベンゼン、ジクロロエタン等の含ハロゲン炭化水素類;ジメチルスルホキシド;ジメチルホルムアミド;ジメチルアセトアミド等が挙げられる。さらに、前記反応は、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0062】
前記反応を触媒存在下で行う場合、反応温度は、80℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましく、また160℃以下が好ましく、140℃以下がより好ましい。反応温度が80℃以上であれば、前記反応が速やかに進行しやすくなり、反応温度が160℃以下であれば、生成物の分解を抑えやすくなり、収率を上げやすくなる。
【0063】
前記反応を触媒存在下で行う場合、反応時間は、12時間以上、48時間以下が好ましい。反応時間が12時間以上であれば、式(3)で示される構造を有する化合物の収率が十分確保されやすくなり、反応時間が48時間を超えても式(3)で示される構造を有する化合物の収率がそれ以上高くなりにくい。
【0064】
前記反応後は、蒸留等の適当な分離手段により、反応生成物と溶媒とを分離してもよい。また、反応生成物をカラムクロマトグラフィー等の適当な精製手段を用いて精製し、式(3)で示される構造を有する化合物を得てもよい。
【0065】
インデン骨格を有する化合物を製造する際の原料として用いる式(2)で示される構造を有する化合物を製造する方法としては、例えば、下記方法を適用することができる。
【0066】
式(2)で示される構造を有する化合物として、Q3とQ4が同一であり、R4とR5が同一であり、式(2)で示される構造を1つ有する化合物であれば、次の方法により当該化合物を製造することができる。まず、式(8)で示される化合物をCu(II)を用いて酸化的カップリングさせてビフェニル骨格を製造した後、メタノール中炭酸カリウムにより脱保護してトリメチルシリル基を脱離させ、式(9)で示されるジエチニルビフェニルを合成する。さらに、Sonogashiraカップリング反応を利用することにより、式(9)で示され
る化合物のエチニル基と、ハロゲン化アリール(R41−X)とをクロスカップリングさせて式(10)で示される化合物、すなわち式(2)で示される構造を有する化合物を合成できる。
【0067】
【化12】

【0068】
上記において、R41は置換基を有していてもよいアリール基を表し、Xはハロゲン原子を表す。式(8)で示される化合物は、ベンゼン環骨格を有する代わりにナフタレン環等の任意の芳香環骨格または複素芳香環骨格を有していてもよく、芳香環骨格または複素芳香環骨格には、任意の置換基が結合していてもよい。
【0069】
式(2)で示される構造を有する化合物として、Q3とQ4が異なっていてもよく、R4
とR5が異なっていてもよい化合物であれば、次の方法により当該化合物を製造すること
ができる。まず、式(11)で示される化合物と式(12)で示される化合物とから、Suzuki-Miyauraカップリング反応を利用することにより、式(13)で示される化合物を合成する。さらに、Seyferth-Gilbert反応、またはCorey-Fuchs反応を利用して、式(13
)で示される化合物のケトンまたはアルデヒドを一炭素増やし、アルキンに変換することで、式(14)で示される化合物、すなわち式(2)で示される構造を有する化合物を合成できる。
【0070】
【化13】

【0071】
上記において、R42とR43は任意の置換基、または水素原子を表す。式(11)で示される化合物と式(12)で示される化合物は、ベンゼン環骨格を有する代わりにナフタレン環等の任意の芳香環骨格または複素芳香環骨格を有していてもよく、芳香環骨格または複素芳香環骨格には、任意の置換基が結合していてもよい。
【0072】
なお、Sonogashiraカップリング反応については、Tetrahedron Lett., 50, 4467 (1975) 等の文献を参考にでき、Suzuki-Miyauraカップリング反応については、Chem. Rev., 95, 2457 (1995) 等の文献を参考にでき、Seyferth-Gilbert反応については、J. Am. Chem.
Soc., 89, 4811 (1967) やJ. Org. Chem., 36, 1379 (1971) 等の文献を参考にでき、Corey-Fuchs反応については、Tetrahedron Lett., 3769 (1972) 等の文献を参考にできる。
【0073】
〔3.ナフタレン骨格を有する化合物の製造方法〕
本発明の縮合多環芳香族化合物の製造方法において、ナフタレン骨格を有する化合物を製造する方法としては、下記式(4)で示される構造を有する化合物を、分子内環化反応させることが好ましい。
【0074】
【化14】

【0075】
式(4)中、Q6,Q7は、同一または異なって、芳香環または複素芳香環を表す。式(4)中、Q6,Q7については、前記式(1)のQ1,Q2についての前記説明と同様である。
【0076】
6,Q7としては、芳香環が好ましく、ベンゼン環がより好ましい。Q6,Q7がベンゼン環の場合、式(4)で示される構造は、2位と6位に、置換基を有していてもよいエチニル基が結合したビフェニルとなる。この場合、ビフェニルの3位、4位、5位、3’位、4’位、5’位よりなる群から選ばれる少なくとも1つの炭素原子には、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜40のアリール基、炭素数5〜40のヘテロアリール基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜40のアリールオキシ基、炭素数5〜40のヘテロアリールオキシ基、炭素数1〜20のエステル基、炭素数1〜20のアシルオキシ基、炭素数0〜20のアミノ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数6〜40のアリールチオ基、ハロゲン原子、炭素数1〜20のハロアルキル基、シリル基、ボリル基、スタニル基、ホスフィノ基等の置換基が結合していてもよい。置換基としては、好ましくは、メチル基、メトキシ基、フェノキシ基、フッ素、臭素、塩素、ジフェニルアミノ基、およびフェニル基よりなる群から選ばれる少なくとも1つである。
【0077】
前記式(4)中、R6,R7は、同一または異なって、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、または水素原子を表す。R4,R5のアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基については、前記式(1)のR1〜R3の置換基αのアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基についての前記説明と同様である。
【0078】
6,R7としては、アリール基、またはヘテロアリール基が好ましく、フェニル基、またはチエニル基がより好ましい。前記フェニル基、チエニル基には、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜
40のアリール基、炭素数5〜40のヘテロアリール基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜40のアリールオキシ基、炭素数5〜40のヘテロアリールオキシ基、炭素数1〜20のエステル基、炭素数1〜20のアシルオキシ基、炭素数0〜20のアミノ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数6〜40のアリールチオ基、ハロゲン原子、炭素数1〜20のハロアルキル基、シリル基、ボリル基、スタニル基、ホスフィノ基等の置換基が結合していてもよい。置換基としては、好ましくは、メチル基、メトキシ基、フッ素、臭素、塩素、フェニル基、およびチエニル基よりなる群から選ばれる少なくとも1つである。R6,R7が置換基を有するフェニル基の場合、置換基は、フェニル基のエチニレン基結合位に対し、パラ位に結合していることが好ましい。
【0079】
6とR7とは同一であることが好ましい。R6とR7が同一であれば、式(4)の化合物の製造が容易になる。
【0080】
本発明の製造方法に従い、式(4)で示される構造を有する化合物を分子内環化反応させると、式(4)中、a位の炭素とc位の炭素とが結合し、b位の炭素とd位の炭素とが結合することによりナフタレン骨格が形成され、下記式(5)で示される構造を有する化合物が得られる。
【0081】
【化15】

【0082】
式(5)中、Q6,Q7は、前記式(4)のQ6,Q7についての前記説明と同様であり、R6,R7は、前記式(4)のR6,R7についての前記説明と同様である。式(4)中のQ6,Q7,R6,R7は、各々式(5)中のQ6,Q7,R6,R7として保持される。
【0083】
本発明において、ナフタレン骨格を有する化合物を製造する方法としては、式(4)で示される構造を1つ有する化合物を分子内環化反応させてもよく、式(4)で示される構造を2つ以上有する化合物を分子内環化反応させてもよい。また、本発明においては、式(4)で示される化合物を、分子内環化反応させて、式(5)で示される化合物を製造してもよい。
【0084】
以下に、式(4)で示される構造を有する化合物を、分子内環化反応させて、式(5)で示される構造を有する化合物を製造する方法を、例示する。なお、下記例示において、Meはメチル基を表し、Phはフェニル基を表す。
【0085】
(例3)Q6とQ7がベンゼン環の場合(4a)、ピレン骨格を有する化合物(5a)が生成する。
【0086】
【化16】

【0087】
(例4)Q6とQ7がチオフェン環の場合(4b)、硫黄原子を含む縮合多環芳香族化合物(5b)が生成する。
【0088】
【化17】

【0089】
(例5)Q7を共有して、式(4)で示される構造が連結している場合(4c)、4つ
の分子内環化反応が起こる(5c)。
【0090】
【化18】

【0091】
式(4)で示される構造を有する化合物を、分子内環化反応させて、式(5)で示される構造を有する化合物を製造するには、触媒を用いることが好ましい。触媒としては、特に限定されないが、白金触媒および/または金触媒が好ましい。白金触媒として2価白金錯体を用いる場合は、2価白金錯体に、さらにホスフィン(PR3)やホスファイト(P(OR)3)を併用してもよい。白金触媒、金触媒、および併用して用いてもよいホスフィンやホスファイトの詳細については、前記説明と同様である。反応を効率的に進めるためには、触媒として白金錯体を用い、ホスフィンやホスファイトと併用するか、触媒として金錯体を用いることが好ましい。特に好ましいのは、白金錯体触媒としてPtCl(C6F5)(cod)を用い
、P[OCH(CF3)2]3を併用する方法、または下記式(15)で示される金錯体を触媒として
用いる方法である。なお、式(15)のホスフィン配位子中、i-Prはi−プロピル基を表し、t-Buはtert−ブチル基を表す。
【0092】
【化19】

【0093】
式(4)で示される構造を有する化合物を、分子内環化させる反応は、溶媒中で行うことが好ましい。溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、p−キシレン、m−キシレン、オクタン、デカン等の炭化水素類;テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類;クロロベンゼン、ジクロロエタン等の含ハロゲン炭化水素類;ジメチルスルホキシド;ジメチルホルムアミド;ジメチルアセトアミド等が挙げられる。さらに、前記反応は、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0094】
前記反応を触媒存在下で行う場合、反応温度は、100℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましく、また200℃以下が好ましく、170℃以下がより好ましい。反応温度が100℃以上であれば、前記反応が速やかに進行しやすくなり、反応温度が200℃以下であれば、生成物の分解を抑えやすくなり、収率を上げやすくなる。
【0095】
前記反応を触媒存在下で行う場合、反応時間は、12時間以上、48時間以下が好ましい。反応時間が12時間以上であれば、式(3)で示される構造を有する化合物の収率が十分確保されやすくなり、反応時間が48時間を超えても式(3)で示される構造を有する化合物の収率がそれ以上高くなりにくい。
【0096】
前記反応後は、蒸留等の適当な分離手段により、反応生成物と溶媒とを分離してもよい。また、反応生成物をカラムクロマトグラフィー等の適当な精製手段を用いて精製し、式(5)で示される構造を有する化合物を得てもよい。
【0097】
ナフタレン骨格を有する化合物を製造する際の原料として用いる式(4)で示される構造を有する化合物を製造する方法としては、例えば次の方法を適用することができる。まず、式(16)で示される化合物と式(17)で示される化合物とから、Suzuki-Miyauraカップリング反応を利用することにより、式(18)で示される化合物を合成する。さらに、Seyferth-Gilbert反応、またはCorey-Fuchs反応を利用して、式(18)で示される
化合物のケトンまたはアルデヒドを一炭素増やし、アルキンに変換することで、式(19)で示される化合物、すなわち式(4)で示される構造を有する化合物を合成できる。
【0098】
【化20】

【0099】
上記において、R44とR45は任意の置換基、または水素原子を表す。式(16)で示される化合物と式(17)で示される化合物は、ベンゼン環骨格を有する代わりにナフタレン環等の任意の芳香環骨格または複素芳香環骨格を有していてもよく、芳香環骨格または複素芳香環骨格には、任意の置換基が結合していてもよい。当該製造方法によれば、式(4)で示される構造を有する化合物として、Q6とQ7が異なっていてもよく、R6とR7が異なっていてもよいものが得られる。
【0100】
なお、Suzuki-Miyauraカップリング反応については、Chem. Rev., 95, 2457 (1995) 等の文献を参考にでき、Seyferth-Gilbert反応については、J. Am. Chem. Soc., 89, 4811 (1967) やJ. Org. Chem., 36, 1379 (1971) 等の文献を参考にでき、Corey-Fuchs反応に
ついては、Tetrahedron Lett., 3769 (1972) 等の文献を参考にできる。
【0101】
〔4.縮合多環芳香族化合物〕
本発明の縮合多環芳香族化合物は、ベンゾ[a]アズレン骨格を有し、下記式(6)で示される化合物である。
【0102】
【化21】

【0103】
式(6)中、Q8,Q9は、同一または異なって、芳香環または複素芳香環を表す。
【0104】
8,Q9の芳香環は、6〜40員環の炭化水素環を含有し、芳香族性を有することが好ましい。Q8,Q9の芳香環は、単環式であっても、多環式(縮合環式を含む)であってもよい。Q8,Q9の芳香環としては、例えば、ベンゼン環;ナフタレン環、アントラセン環
、テトラセン環、ペンタセン環等のアセン環;フェナントレン環等が示される。さらに、Q8,Q9の芳香環には、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、エステル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、シリル基、ボリル基、スタニル基、ホスフィノ基等の置換基が結合していてもよい。前記置換基は、Q8,Q9の芳香環のどの位置に結合していてもよく、炭素を有する置換基である場合は、炭素数1〜20のものが好ましい。
【0105】
8,Q9の複素芳香環は、5〜40員環構造を含有し、前記環構造には、酸素、窒素、および硫黄よりなる群から選ばれる少なくとも1つの原子が含まれ、芳香族性を有することが好ましい。Q8,Q9の複素芳香環は、単環式であっても、多環式(縮合環式を含む)であってもよい。Q8,Q9の複素芳香環としては、例えば、ピリジン環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、ピラゾール環、イソオキサゾール環、イソチアゾール環、ピリダジン環、ピリミジン環、ベンゾイミダゾール環等が示される。さらに、Q8,Q9の複素芳香環には、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、エステル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、シリル基、ボリル基、スタニル基、ホスフィノ基等の置換基が結合していてもよい。前記置換基は、Q8,Q9の複素芳香環のどの位置に結合していてもよく、炭素を有する置換基である場合は、炭素数1〜20のものが好ましい。
【0106】
8,Q9は、芳香環が好ましく、ベンゼン環がより好ましい。従って、本発明の縮合多環芳香族化合物としては、フェナントロ[9,10−a]アズレン骨格を有し、下記式(7)で示される化合物がより好ましい。
【0107】
【化22】

【0108】
式(7)中、Q8,Q9のベンゼン環に結合する置換基R27〜R32は、同一または異なって、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜40のアリール基、炭素数5〜40のヘテロアリール基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜40のアリールオキシ基、炭素数5〜40のヘテロアリールオキシ基、炭素数1〜20のエステル基、炭素数1〜20のアシルオキシ基、炭素数0〜20のアミノ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数6〜40のアリールチオ基、ハロゲン原子、炭素数1〜20のハロアルキル基、シリル基、ボリル基、スタニル基、ホスフィノ基、または水素原子を表す。置換基R27〜R32としては、好ましくは、メチル基、メトキシ基、フェノキシ基、フッ素、臭素、塩素、ジフェニルアミノ基、フェニル基、または水素原子である。
【0109】
式(6)および式(7)中、R21は、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、または水素原子を表す。
【0110】
21のアルキル基は、炭素数1〜20であることが好ましく、直鎖状、分枝状であっても、脂環構造を有するものであってもよい。R21のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、i−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が示される。
【0111】
21のアリール基は、6〜40員環の炭化水素環を含有し、芳香族性を有することが好ましい。前記アリール基は、単環式であっても、多環式(縮合環式を含む)であってもよい。このようなアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が示される。さらに、アリール基の芳香環には、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、エステル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、シリル基、ボリル基、スタニル基、ホスフィノ基等の置換基が結合していてもよい。アリール基の芳香環に置換基が結合する場合、置換基は芳香環のどの位置に結合していてもよく、また置換基が炭素を有するものである場合は、置換基は炭素数1〜20のものが好ましい。
【0112】
21のヘテロアリール基は、5〜40員環構造を含有し、前記環構造には、酸素、窒素、および硫黄よりなる群から選ばれる少なくとも1つの原子が含まれ、芳香族性を有することが好ましい。前記ヘテロアリール基は、単環式であっても、多環式(縮合環式を含む)であってもよい。そのようなヘテロアリール基としては、例えば、ピリジル基、フリル基、チエニル基、イミダゾジル基、ベンゾイミダゾリル基等が示される。さらに、ヘテロアリール基の環構造には、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、エステル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、シリル基、ボリル基、スタニル基、ホスフィノ基等の置換基が結合していてもよい。ヘテロアリール基の環構造に置換基が結合する場合、置換基は環構造のどの位置に結合していてもよく、また置換基が炭素を有するものである場合は、置換基は炭素数1〜20のものが好ましい。
【0113】
21は、エチニレン基に結合するベンゼン環を有していることが好ましく、フェニル基、またはナフチル基がより好ましい。前記フェニル基、ナフチル基には、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜40のアリール基、炭素数5〜40のヘテロアリール基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜40のアリールオキシ基、炭素数5〜40のヘテロアリールオキシ基、炭素数1〜20のエステル基、炭素数1〜20のアシルオキシ基、炭素数0〜20のアミノ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数6〜40のアリールチオ基、ハロゲン原子、炭素数1〜20のハロアルキル基、シリル基、ボリル基、スタニル基、ホスフィノ基等の置換基が結合していてもよい。置換基としては、好ましくは、メチル基、メトキシ基、フェノキシ基、フッ素、臭素、塩素、ジフェニルアミノ基、フェニル基、チエニル基、およびピリジル基よりなる群から選ばれる少なくとも1つである。置換基は、フェニル基、ナフチル基のどの位置に結合していてもよい。
【0114】
式(6)および式(7)中、R22〜R26は、同一または異なって、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜
40のアリール基、炭素数5〜40のヘテロアリール基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜40のアリールオキシ基、炭素数5〜40のヘテロアリールオキシ基、炭素数1〜20のエステル基、炭素数1〜20のアシルオキシ基、炭素数0〜20のアミノ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数6〜40のアリールチオ基、ハロゲン原子、炭素数1〜20のハロアルキル基、シリル基、ボリル基、スタニル基、ホスフィノ基、または水素原子を表す。置換基R22〜R26としては、好ましくは、メチル基、メトキシ基、フェノキシ基、フッ素、臭素、塩素、ジフェニルアミノ基、フェニル基、チエニル基、ピリジル基、または水素原子である。R22〜R26の隣接する基は、共同して環形成してもよい。例えば、前記式(3b)に示す化合物のように、R22とR23とが共同して、ベンゾ[a]アズレン骨格の7員環と一辺を共有する6員環を形成してもよい。
【実施例】
【0115】
以下に、実施例を示すことにより本発明を更に詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0116】
<化合物同定方法>
1H NMR、13C NMR]
バリアン社製の「Gemini 2000」により測定した。NMR溶媒としては、重クロロホルム(CDCl3)を用いた。
【0117】
[高分解能質量分析計(HRMS)]
日本電子株式会社製のJMS-SX101A、JMS-MS700、JMS-BU250により、電子イオン化法(EI)または高速電子衝撃法(FAB)により測定した。
【0118】
[X線構造解析]
下記合成例A−6で得た12−ブロモ−9−(4−ブロモフェニル)フェナントロ[9,10−a]アズレンを、最小量のクロロホルムで溶解し、そこに同量のヘキサンを静かに加え、蓋をして2日間放置し、結晶を得た。析出した結晶を桐山ロート上でヘキサンで洗浄後、乾燥し、長方形型の深緑色の単結晶を得た。得られた単結晶を、株式会社リガク製のR-AXIS RAPIDにより測定した。
【0119】
<インデン骨格を有する化合物の合成>
[合成例A−1] 12−メトキシ−9−(4−メトキシフェニル)フェナントロ[9,10−a]アズレンの合成
【0120】
【化23】

【0121】
容量50 mLのシュレンクフラスコに、2,2’−ビス[(4−メトキシフェニル)エチ
ニル]ビフェニル 41.45 mg(0.1 mmol)、白金触媒としてPtCl(C6F5)(cod) 5.06 mg(0.01 mmol)、ホスファイト配位子 (CF3CH2O)3P 6.56 mg(0.02 mmol)、およびp−キシレ
ン 1 mLを入れて反応溶液とし、この溶液を120℃で保持しながら、アルゴンガス雰囲気下で24時間撹拌した。撹拌後、前記反応溶液から溶媒を減圧留去して生成物を得た。前記生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)により精製し、12−メトキシ−9−(4−メトキシフェニル)フェナントロ[9,10−a]アズレンを得た。収量は34.7 mg、収率は84%であった。
【0122】
化合物同定データ:
1H NMR δ3.98 (s, 3H), 4.00 (s, 3H), 6.83-6.89 (m, 2H), 7.13-7.16 (m, 2H), 7.31
(ddd, J=8.3, 7.1, 1.2Hz, 1H), 7.42-7.47 (m, 2H), 7.54-7.63 (m, 2H), 7.72 (ddd, J=8.3, 7.1, 1.2Hz, 1H), 7.98-8.02 (m, 2H), 8.69-8.78 (m, 2H), 8.93 (d, J=8.1Hz, 1H), 9.29 (d, J=10.5Hz, 1H)
13C NMR δ55.4, 55.9, 106.1, 114.3, 115.2, 121.5, 123.3, 124.0, 124.5, 124.9, 126.2, 126.5, 126.6, 127.2, 128.3, 129.1, 129.3, 130.0, 130.8, 131.2, 131.4, 132.3, 134.5, 134.9, 135.5, 136.5, 158.9, 166.7
HRMS (EI) C30H22O2(M+) 理論値 414.1620、実測値 414.1625
【0123】
[合成例A−2] 12−メトキシ−9−(4−メトキシフェニル)2,7−ジメチルフェナントロ[9,10−a]アズレンの合成
【0124】
【化24】

【0125】
容量50 mLのシュレンクフラスコに、2,2’−ビス[(4−メトキシフェニル)エチ
ニル]−4,4’−ジメトキシビフェニル 44.3 mg(0.1 mmol)、白金触媒としてPtCl(C6F5)(cod) 5.06 mg(0.01 mmol)、ホスファイト配位子 (CF3CH2O)3P 6.56 mg(0.02 mmol)、およびp−キシレン 1 mLを入れて反応溶液とし、この溶液を120℃で保持しながら
、アルゴンガス雰囲気下で24時間撹拌した。撹拌後、前記反応溶液から溶媒を減圧留去して生成物を得た。前記生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)により精製し、さらにゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により精製し、12
−メトキシ−9−(4−メトキシフェニル)2,7−ジメチルフェナントロ[9,10−a]アズレンを得た。収量は31.1 mg、収率は70%であった。
【0126】
化合物同定データ:
1H NMR δ2.25 (s, 3H), 2.68 (s, 3H), 3.98 (s, 3H), 4.00 (s, 3H), 6.82-6.89 (m, 2H), 7.13-7.15 (m, 2H), 7.36-7.46 (m, 4H), 7.73 (s, 1H), 8.00 (d. J=12Hz, 1H), 8.55 (d, J=8.7Hz, 1H), 8.62 (d, J=8.4Hz, 1H), 8.71 (s, 1H), 9.28 (d, J=10.5Hz, 1H)
13C NMR δ21.7, 22.1, 55.5, 55.8, 105.9, 114.1, 115.2, 121.5, 122.9, 123.7, 124.8, 126.0, 126.6, 128.0, 128.5, 129.0, 129.8, 131.0, 131.6, 132.3, 134.2, 134.7,
135.1, 135.2, 136.4, 136.7, 159.0, 166.5 (2 carbon missing)
HRMS (EI) C32H26O2(M+) 理論値 442.1933、実測値 442.1936
【0127】
[合成例A−3] 9−(1−ナフチル)フェナントロ[9,10−a]ベンゾ[e]アズレンの合成
【0128】
【化25】

【0129】
合成例A−2において、2,2’−ビス[(4−メトキシフェニル)エチニル]−4,4’−ジメトキシビフェニル44.3 mg(0.1 mmol)の代わりに2,2’−ビス[(1−ナ
フチル)エチニル]ビフェニル 90.9 mg(0.1 mmol)を用い、シリカゲルクロマトグラフィーによる精製の際、ヘキサン:酢酸エチル=10:1の溶媒を用いた以外は、合成例A−2と同様の操作を行い、9−(1−ナフチル)フェナントロ[9,10−a]ベンゾ[e]アズレンを得た。収量は70.4 mg、収率は77%であった。
【0130】
化合物同定データ:
1H NMR δ6.77-6.83 (m, 1H), 6.91-6.99 (m, 3H), 7.09-7.12 (m, 1H), 7.18-7.23 (m,
2H), 7.38-7.57 (m, 6H), 7.61-7.69 (m, 2H), 7.74-7.79 (m, 1H), 7.93 (d, J=9.3Hz,
1H), 7.99-8.03 (m, 1H), 8.39 (d, J=8.1Hz, 1H), 8.64 (d, J=9.0Hz, 1H), 8.71 (d, J=7.8Hz, 1H), 8.81 (d, J=8.1Hz, 1H)
13C NMR δ123.0, 123.2, 123.9, 124.2, 124.8, 125.4, 125.5, 126.0, 126.1, 126.2,
126.4, 126.4, 126.7, 127.0, 127.1, 127.2, 127.6, 127.8, 128.1, 128.5, 129.8, 131.1, 131.3, 132.6, 132.9, 133.2, 133.7, 134.0, 134.1, 134.6, 135.9, 136.0, 137.7, 138.5, 146.4 (1 carbon missing)
HRMS (EI) C36H22(M+) 理論値 454.1721、実測値 454.1720
【0131】
[合成例A−4] 2,3,6,7,12−ペンタメトキシ−9−(4−メトキシフェニル)フェナントロ[9,10−a]アズレンの合成
【0132】
【化26】

【0133】
合成例A−2において、2,2’−ビス[(4−メトキシフェニル)エチニル]−4,4’−ジメトキシビフェニル44.3 mg(0.1 mmol)の代わりに4,4’,5,5’−テト
ラメトキシ−2,2’−ビス[(4−メトキシフェニル)エチニル]ビフェニル 53.5 mg(0.1 mmol)を用い、シリカゲルクロマトグラフィーによる精製の際、ヘキサン:酢酸エチル=1:1の溶媒を用いた以外は、合成例A−2と同様の操作を行い、2,3,6,7,12−ペンタメトキシ−9−(4−メトキシフェニル)フェナントロ[9,10−a]アズレンを得た。収量は40.1 mg、収率は75%であった。
【0134】
化合物同定データ:
1H NMR δ3.47 (s, 3H), 3.93 (s, 3H), 3.99 (s, 3H), 4.11 (s, 3H), 4.16 (s, 3H), 4.20 (s, 3H), 6.78-6.83 (m, 2H), 7.12-7.17 (m, 2H), 7.45-7.50 (m, 2H), 7.51 (s, 1H), 7.87-7.97 (m, 3H), 8.35 (s, 1H), 9.11 (d, J=10.5Hz, 1H)
13C NMR δ54.9, 55.5, 55.8, 55.9, 56.1, 56.2, 104.1, 105.0, 105.3, 106.5, 107.6, 114.3, 115.3, 120.6, 122.6, 123.4, 124.0, 125.3, 128.1, 131.1, 131.6, 132.4, 132.6, 134.1, 134.7, 135.7, 147.3, 147.6, 148.7, 149.0, 158.9, 166.0
HRMS (EI) C34H30O6(M+) 理論値 534.2042、実測値 534.2044
【0135】
[合成例A−5] 12−クロロ−9−(4−クロロフェニル)フェナントロ[9,10−a]アズレンの合成
【0136】
【化27】

【0137】
合成例A−2において、2,2’−ビス[(4−メトキシフェニル)エチニル]−4,4’−ジメトキシビフェニル44.3 mg(0.1 mmol)の代わりに2,2’−ビス[(4−ク
ロロフェニル)エチニル]ビフェニル 42.2 mg(0.1 mmol)を用い、シリカゲルクロマトグラフィーによる精製の際、ヘキサン:酢酸エチル=10:1の溶媒を用いた以外は、合成例A−2と同様の操作を行い、12−クロロ−9−(4−クロロフェニル)フェナントロ[9,10−a]アズレンを得た。収量は22.9 mg、収率は54%であった。
【0138】
化合物同定データ:
1H NMR δ7.21-7.25 (m, 1H), 7.36 (ddd, J=8.3, 7.1, 1.2Hz, 1H), 7.45-7.49 (m, 2H), 7.54 (dd, J=2.0, 1.0Hz, 1H), 7.58-7.69 (m, 4H), 7.74-7.80 (m, 1H), 7.88 (d, J=11.1HZ, 1H), 7.93 (dd, J=8.3, 1.1Hz, 1H), 8.71-8.79 (m, 2H), 8.88-8.90 (m, 1H),
9.17 (d, J=10.2Hz, 1H)
13C NMR δ121.8, 123.6, 124.2, 124.4, 125.0, 125.4, 126.5, 126.8, 127.8, 127.9,
128.2, 129.3, 129.6, 132.0, 132.5, 132.5, 133.5, 133.8, 135.2, 136.5, 136.8, 139.4, 143.7 (3 carbon missing)
HRMS (EI) C28H16Cl2(M+) 理論値 422.0629、実測値 422.0629
【0139】
[合成例A−6] 12−ブロモ−9−(4−ブロモフェニル)フェナントロ[9,10−a]アズレンの合成
【0140】
【化28】

【0141】
合成例A−5において、2,2’−ビス[(4−クロロフェニル)エチニル]ビフェニル 42.2 mg(0.1 mmol)の代わりに2,2’−ビス[(4−ブロモフェニル)エチニル]ビフェニル51.2 mg(0.1 mmol)を用いた以外は、合成例A−5と同様の操作を行い、1
2−ブロモ−9−(4−ブロモフェニル)フェナントロ[9,10−a]アズレンを得た。収量は27.7 mg、収率は54%であった。
【0142】
化合物同定データ:
1H NMR δ7.33-7.42 (m, 4H), 7.65 (t, J=7.7Hz, 2H), 7.73-7.78 (m, 5H), 7.93 (d, J=8.1Hz, 1H), 8.74 (dd, J=16.2, 8.4Hz, 2H), 8.86 (d, J=7.8Hz, 1H), 9.03 (d, J=10.5Hz, 1H)
13C NMR δ121.7, 121.9, 123.5, 124.0, 125.0, 125.3, 126.5, 126.8, 127.1, 127.4,
127.7, 127.8, 128.1, 129.2, 129.4, 131.9, 132.1, 132.6, 132.7, 133.3, 134.0, 135.2, 136.7, 136.8, 139.4 (1 carbon missing)
HRMS (EI) C28H16Br2(M+) 理論値 509.9619、実測値 509.9617
X線構造解析結果 図1に示す通り
【0143】
<ナフタレン骨格を有する化合物の合成>
[合成例B−1] 4,10−ジメチルピレンの合成
【0144】
【化29】

【0145】
容量50 mLのシュレンクフラスコに、2,6−ビス(プロピニル)ビフェニル 23.0 mg
(0.01 mmol)、白金触媒としてPtCl(C6F5)(cod) 5.06 mg(0.1 mmol)、ホスファイト配位子 ((CF3)2CHO)3P 10.64 mg(0.02 mmol)、およびp−キシレン 1 mLを入れて反応溶
液とし、この溶液を140℃で保持しながら、アルゴンガス雰囲気下で24時間撹拌した。撹
拌後、前記反応溶液から溶媒を減圧留去して生成物を得た。前記生成物をフロリジルショートカラム(ヘキサン:酢酸エチル=8:1)により精製し、4,10−ジメチルピレン
を得た。収量は19.1 mg、収率は83%であった。
【0146】
化合物同定データ:
1H NMR δ2.92 (s, 6H), 7.93-7.98 (m, 3H), 8.06-8.12 (m, 3H), 8.34 (d, J=7.8Hz, 2H)
13C NMR δ20.3, 121.4, 123.0, 123.7, 124.8, 125.4, 125.9, 126.8, 130.8, 131.6, 133.2
HRMS (EI) C18H14(M+) 理論値 230.1096、実測値 230.1092
【0147】
[合成例B−2] 4,10−ビス(4−メトキシフェニル)ピレンの合成
【0148】
【化30】

【0149】
容量50 mLのシュレンクフラスコに、2,6−ビス[(4−メトキシフェニル)エチニ
ル]ビフェニル 41.5 mg(0.1 mmol)、白金触媒としてPtCl(C6F5)(cod) 10.12 mg(0.02
mmol)、ホスファイト配位子 ((CF3)2CHO)3P 21.28 mg(0.04 mmol)、およびp−キシ
レン 1 mLを入れて反応溶液とし、この溶液を150℃で保持しながら、アルゴンガス雰囲気下で24時間撹拌した。撹拌後、前記反応溶液から溶媒を減圧留去して生成物を得た。前記生成物をフロリジルショートカラム(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)により精製し、さらにPTLC(ヘキサン:ジクロロエタン=1:1)により精製し、4,10−ビス(4−メトキシフェニル)ピレンを得た。収量は30.1 mg、収率は73%であった。
【0150】
化合物同定データ:
1H NMR δ3.95 (s, 6H), 7.10-7.13 (m, 4H), 7.60-7.63 (m, 4H), 7.89 (t, J=8.0Hz, 1H), 8.01-8.06 (m, 3H), 8.21 (dd, J=15.0, 8.0Hz, 4H)
13C NMR δ55.4, 113.8, 123.5, 124.0, 124.7, 125.4, 126.3, 127.6, 130.7, 130.9, 131.2, 133.3, 139.3, 159.1 (1 carbon missing)
HRMS (EI) C30H22O2(M+) 理論値 414.1620、実測値 414.1604
【0151】
[合成例B−3] 2−tert−ブチル−4,10−ビス(4−メトキシフェニル)ピレンの合成
【0152】
【化31】

【0153】
容量50 mLのシュレンクフラスコに、4’−tert−ブチル−2,6−ビス[(4−
メトキシフェニル)エチニル]ビフェニル 23.53 mg(0.05 mmol)、金触媒として下記式(15)に示す金錯体 9.02 mg(0.01 mmol)、およびp−キシレン 0.5 mLを入れて反応溶液とし、この溶液を150℃で保持しながら、アルゴンガス雰囲気下で24時間撹拌した。
撹拌後、前記反応溶液から溶媒を減圧留去して生成物を得た。前記生成物をフロリジルショートカラム(クロロホルム:酢酸エチル=1:1)により精製し、2−tert−ブチル−4,10−ビス(4−メトキシフェニル)ピレンを得た。収量は22.5 mg、収率は96%であった。
【0154】
【化32】

【0155】
化合物同定データ:
1H NMR δ1.39 (s, 9H), 3.96 (s, 6H), 7.12-7.14 (m, 4H), 7.63-7.66 (m, 4H), 7.96-8.01 (m, 3H), 8.15 (d, J=7.5Hz, 2H), 8.34 (s, 2H), 8.34 (s, 2H)
13C NMR δ31.8, 35.5, 55.4, 113.8, 121.3, 123.5, 123.6, 124.5, 125.9, 127.5, 128.9, 130.6, 131.1, 133.5, 139.3, 148.3, 159.0
HRMS (EI) C34H30O2(M+) 理論値 470.2246、実測値 470.2244
【0156】
[合成例B−4] 4,10−ビス(4−メトキシフェニル)−1,3−ジメチルピレンの合成
【0157】
【化33】

【0158】
合成例B−3において、4’−tert−ブチル−2,6−ビス[(4−メトキシフェニル)エチニル]ビフェニル23.53 mg(0.05 mmol)の代わりに3’,5’−ジメチル−
2,6−ビス[(4−メトキシフェニル)エチニル]ビフェニル 22.13 mg(0.05 mmol)を用いた以外は、合成例B−3と同様の操作を行い、4,10−ビス(4−メトキシフェニル)−1,3−ジメチルピレンを得た。収量は20.97 mg、収率は95%であった。
【0159】
化合物同定データ:
1H NMR δ2.25 (s, 6H), 3.92 (s, 6H), 7.00-7.04 (m, 4H), 7.39-7.44 (m, 4H), 7.53
(s, 1H), 7.88 (s, 2H), 7.95 (dd, J=9.6, 6.6Hz, 1H), 8.06 (d, J=10.5Hz, 2H)
13C NMR δ25.4, 55.4, 113.4, 124.1, 126.0, 127.6, 128.2, 129.5, 130.2, 130.4, 133.7, 135.6, 137.9, 139.2, 158.6 (1 carbon missing)
HRMS (EI) C32H26O2(M+) 理論値 442.1933、実測値 442.1935
【産業上の利用可能性】
【0160】
本発明の縮合多環芳香族化合物は、機能性材料や、医薬・農薬等の合成原料等へ適用が可能である。また、本発明の製造方法は、前記材料や原料等の製造に適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0161】
【図1】合成例A−6で得られた12−ブロモ−9−(4−ブロモフェニル)フェナントロ[9,10−a]アズレンのX線結晶構造解析結果である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示される構造を有する化合物を、分子内環化反応させて、インデン骨格またはナフタレン骨格を有する化合物を製造することを特徴とする縮合多環芳香族化合物の製造方法。
【化1】


[式(1)中、Q1,Q2は、同一または異なって、芳香環または複素芳香環を表し、R1
、およびR2またはR3は、同一または異なって、アルキル基、アリール基、およびヘテロアリール基よりなる群から選ばれる置換基を有していてもよいエチニル基を表す。]
【請求項2】
下記式(2)で示される構造を有する化合物を、分子内環化反応させて、下記式(3)で示される構造を有する化合物を製造する請求項1に記載の縮合多環芳香族化合物の製造方法。
【化2】


[式(2)および式(3)中、Q3,Q4は、同一または異なって、芳香環または複素芳香環を表し、R4はアリール基を表し、R5は、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、または水素原子を表す。Q5は炭化水素環を表し、Q5のインデン骨格と一辺を共有する環構造の環員数は、R4のエチニレン基に結合する環構造の環員数よりも1つ多い。]
【請求項3】
前記R4がエチニレン基に結合するベンゼン環を有し、ベンゾアズレン骨格を有する化
合物を製造する請求項2に記載の縮合多環芳香族化合物の製造方法。
【請求項4】
下記式(4)で示される構造を有する化合物を、分子内環化反応させて、下記式(5)で示される構造を有する化合物を製造する請求項1に記載の縮合多環芳香族化合物の製造方法。
【化3】


[式(4)および式(5)中、Q6,Q7は、同一または異なって、芳香環または複素芳香環を表し、R6,R7は、同一または異なって、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、または水素原子を表す。]
【請求項5】
前記分子内環化反応を、白金触媒および/または金触媒存在下で行う請求項1〜4のいずれか一項に記載の縮合多環芳香族化合物の製造方法。
【請求項6】
下記式(6)で示されることを特徴とする縮合多環芳香族化合物。
【化4】


[式(6)中、Q8,Q9は、同一または異なって、芳香環または複素芳香環を表し、R21は、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、または水素原子を表し、R22〜R26は、同一または異なって、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜40のアリール基、炭素数5〜40のヘテロアリール基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜40のアリールオキシ基、炭素数5〜40のヘテロアリールオキシ基、炭素数1〜20のエステル基、炭素数1〜20のアシルオキシ基、炭素数0〜20のアミノ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数6〜40のアリールチオ基、ハロゲン原子、炭素数1〜20のハロアルキル基、シリル基、ボリル基、スタニル基、ホスフィノ基、または水素原子を表し、R22〜R26の隣接する基は、共同して環形成してもよい。]
【請求項7】
下記式(7)で示されることを特徴とする縮合多環芳香族化合物。
【化5】


[式(7)中、R21は、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、または水素原子を表し、R22〜R32は、同一または異なって、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜40のアリール基、炭素数5〜40のヘテロアリール基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜40のアリールオキシ基、炭素数5〜40のヘテロアリールオキシ基、炭素数1〜20のエステル基、炭素数1〜20のアシルオキシ基、炭素数0〜20のアミノ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数6〜40のアリールチオ基、ハロゲン原子、炭素数1〜20のハロアルキル基、シリル基、ボリル基、スタニル基、ホスフィノ基、または水素原子を表し、R22〜R26の隣接する基は、共同して環形成してもよい。]


【図1】
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【公開番号】特開2009−234928(P2009−234928A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−79305(P2008−79305)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】