説明

繊維機械のドラフトシステムおよびその運転方法

【課題】きわめて一様なスライバの品質を可能とするドラフトシステム、ならびにその運転方法を提案する。
【解決手段】繊維機械(特には、梳綿機、または、練条機などの紡績準備機械、リング紡績機、空気紡績機、あるいは、フライヤ)のドラフトシステム1であって、引き伸ばすべき材料を案内すべく相互作用する複数の下側ローラおよび上側ローラと、当該ドラフトシステム1の運転中に前記下側、および/または、上側ローラの少なくとも一方に荷重を作用させる少なくとも1つの荷重印加装置16とを備えているドラフトシステム1を運転するための方法であり、荷重の程度が、コントローラ13によって、前記繊維機械の装置データ、および/または、引き伸ばされる材料のデータにもとづいて調節される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維機械(特には、梳綿機、または、練条機(drawframe)などの紡績準備機械(spinning preparation machine)、リング紡績機(ring spinning machine)、空気紡績機(air spinning machine)、あるいは、フライヤ)のドラフトシステムであって、引き伸ばすべき材料を案内すべく相互作用する複数の下側ローラおよび上側ローラと、下側ローラ、および/または、上側ローラの少なくとも一方に荷重を作用させるための荷重印加装置(laoding device)とを備えているドラフトシステム、ならびにそのようなドラフトシステムに対応する運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維機械のドラフトシステムは、とりわけ、所与の繊維材料から可能な限り一様なスライバ(sliver)を生成するために使用されている。
この目的のため、ドラフトシステムは、通常は連続して配置された複数のローラペアの形態の一連のドラフト装置を有しており、繊維材料が、スライバの横軸のいわゆるクランプ線(clamping line)に沿ってローラペアの間に挟まれる。
ローラペアが、スライバの移動方向に順次大きくなる異なる周速度を有しているため、1つ以上のスライバで作られた繊維材料が、最終的に引き伸ばされると同時に、より一様になる。
【0003】
しかしながら、周速度の正しい選択に加えて、ドラフトシステムの上側、または、下側ローラに作用する荷重の圧力、すなわち引き伸ばされるべき繊維材料に作用する荷重の圧力も、スライバの品質に影響を及ぼす。
この理由で、ドラフトシステムの荷重印加装置は、通常は引き伸ばされるべき繊維材料の種類にもとづいて、引き伸ばしのプロセスの開始に先立って荷重の程度を所望の値に設定できるように、或る程度は設けられている。
【0004】
従って、DE3325422A1が、ドラフトシステム用の荷重印加装置であって、空気圧シリンダの形態などの加圧媒体の圧力によって駆動することができるプレスユニットとして実現された荷重印加部材を有する荷重印加装置を記載している。
これにより、荷重の圧力を製品の切り替えの後で、例えば、変更後の材料の特性を考慮するように変更することが可能である。
【0005】
同様に、DE19704815A1が、上側ローラの荷重の力を空気圧シリンダなどによって相応の圧力調節器を使用して個別に変更できるように設計することを提案している。
【0006】
たとえ上述のシステムが、ドラフトシステムのローラに作用する荷重の力、すなわち引き伸ばされるべき材料に作用する荷重の力の調節を可能にしても、製造される製品の品質をさらに向上させるために、改善へのさらなるニーズが存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】DE3325422A1(ドイツ国特許文献)
【特許文献2】DE19704815A1(ドイツ国特許文献)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、ローラペアの荷重の調節を可能な限り確実に可能にし、きわめて一様なスライバの品質を可能にするドラフトシステム、ならびにそのようなドラフトシステムに対応するドラフトシステムの運転方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、方法に関して、荷重の程度が、コントローラによって、繊維機械の装置データ、および/または、引き伸ばされる材料のデータにもとづいて調節されることで達成される。
これにより、コントローラが、さらに詳しく後述される種々のデータを考慮でき、その直接的な結果として荷重を調節することができるため、生成されるスライバの品質を大きく改善することが可能であり、特には生成されるスライバの一様性を大きく向上させることが可能である。
このようにして、ローラに作用する圧力、引き伸ばされる繊維材料に作用する圧力を常に最適に制御することができる。
結果は、引き伸ばされる材料がほとんどの場合に含んでいる不揃いをリアルタイムで考慮することができるため、技術水準に対する非常に大きな改善である。
結果として、ドラフトシステムのローラの荷重を連続的な最低レベルに今や維持することができ、引き伸ばされるべき材料の上側および下側ローラの間での確実な挟み付けだけが保証されればよい。
摩擦ゆえ、低い接触圧力は、ローラの低い表面温度と同義でもあり、結果として、ドラフトシステムのローラについて、前もって定められる最高の表面温度において、従来のシステムと比べてより高い回転速度を実現することができる。
この向上は、最終的に、ドラフトシステムを備える紡績準備機械(梳綿機、または、練条機、リング紡績機、空気紡績機、あるいは、フライヤの形態など)について、より高い生産速度を可能にし、同時に製品の品質の改善も実現可能にする。
【0010】
前記装置データが、ドラフトシステムの運転時間、および/または、休止時間、ならびに/あるいは、温度(特には、表面温度)、もしくは、前記上側、および/または、下側ローラの少なくとも一方の温度(特には、表面温度)を含むと、特に効果的である。
なぜならば、ドラフトシステムの長きにわたる休止期間後の引き伸ばしプロセスの開始時に製品の品質の低下が生じることが、明らかになっているからである。
これは、休止期間中にドラフトシステムのローラの温度が低下することに起因する。
なぜならば、ローラの表面の把持能力は、暖まった状態においてのみ完全な水準に達するからである。
従って、引き伸ばしプロセスの暖気段階において、この段階においても繊維材料の確実な挟み付けを保証するために、ローラへの荷重、すなわち繊維材料への荷重の程度を増やすことが、効果的である。
荷重を最終的には、ローラの摩耗に関して望ましい利点を達成するために、運転時間、または、ローラの温度の関数として、より低いレベルに調節することが可能である。
【0011】
従って、荷重を(測定による(すなわち実際の))上側ローラの荷重、あるいは、上側、および/または、下側ローラの少なくとも一方の回転速度、ドラフト領域の幅(入り口ローラペアおよび中央ローラペアを含む予備ドラフト領域や、中央ローラペアおよび排出ローラペアを含む主ドラフト領域など、対応するローラペアのクランプ線の間の距離)、個々のローラペアの間の引き伸ばし、全体としての引き伸ばし、ならびに/あるいは、ドラフトシステムの任意の他の可変のパラメータにもとづいて調節することが可能であり、そのような調節をいずれの場合も連続的、または、階段状に実行することが可能である。
しかしながら、装置データは、通常は繊維機械の有形の動作パラメータを表すデータを含むだけではない。
むしろ、引き伸ばしプロセスの関数として生成されるデータも含む。
そのようなデータとして、スライバの破断などのプロセス不良を示す信号や、上流、または、下流の繊維機械によってもたらされる外部データなど、幅広くさまざまな信号が挙げられる。
【0012】
また、前記引き伸ばされる材料のデータが、引き伸ばされる材料の太さ、水分含有量、温度、繊維間の摩擦、(特には綿について)存在するハニーデュー(honeydew)、または、化学繊維について存在する仕上げ剤(finish)の種類および量などの表面組成、繊維長、純度、種類、直線重量(linear weight)、ならびに/あるいは、一様性を含むことが、効果的である。
上述のパラメータは常に変化するものであるため、コントローラによって制御される荷重によって上述のパラメータを補償して、きわめて一様なスライバの品質を最終的にもたらすことができる。
【0013】
前記引き伸ばされる材料のデータが、ドラフトシステムの入り口、出口、あるいは、入り口と出口との間において測定されると、さらに効果的である。
これにより、荷重の程度を入り口において測定されるデータにもとづいて最初に前もって調節でき、出口、または、入り口と出口との間で測定されるさらなるデータによって、細かく調節することができる。
このように、調節を開ループにて行うことができるが、閉ループにおいて行うこともできる。
【0014】
前記装置データ、および/または、前記引き伸ばされる材料のデータが、センサによって測定されるとさらに効果的である。
そのようなセンサとして、引き伸ばされる繊維材料の特性を測定するUV、IR、または、マイクロ波センサ、温度センサ、速度センサ、湿度などの周囲条件を測定するためのセンサ、あるいは、種々の圧力センサが挙げられる。
【0015】
引き伸ばしプロセスの品質は、通常は2つ以上のパラメータに依存するため、複数のセンサの測定データが、互いに相関付けられることが有効である。
実際には、測定データの任意の量を全体として可能な最高の製品品質を得るためにお互いに対して考慮することができる。
【0016】
本発明の特に有効な洗練においては、ドラフトシステムが、スライバの破断後に荷重が増やされて運転される。
そのような出来事(引き伸ばされる材料の該当のデータ(太さ、または、一様性など)の変化が常に付随する)の後では、引き伸ばされるべき繊維材料に、必ず再び荷重を印加しなければならない。
結果としての繊維材料の太さの変化が、最終的に、従来の方法においては、必ず最終製品の品質に悪影響を及ぼす。
しかしながら、本発明によれば、継ぎ合わせの際に太い場所、または、細い場所が生じても、ドラフトシステムのローラの継ぎ合わせを調節することによって、可能な限り一様な引き伸ばしを保証することが可能である。
継ぎ合わせが通過した後で、繊維材料および該当の機械部品の荷重を常に可能な限り低い水準に保つことができるよう、荷重を再びより低いレベルに最終的に調節することができる。
【0017】
また、前記引き伸ばされる材料が、少なくとも1つの供給容器からドラフトシステムに送り込まれ、ドラフトシステムが、前記少なくとも1つの供給容器の交換後に、継ぎ目をなくすために荷重が増やされて運転されると、きわめて効果的である。
容器が交換されるとき、対応する繊維ストランドの組み合わせに起因して、太さの変化も生じる。
ここでも可能な限り一様な引き伸ばしを達成するために、荷重が一時的に増やされると、やはり大いに効果的である。
この増加を引き伸ばされる材料のデータにもとづいて行うこともできるが、容器の変更時に該当のセンサによって生成される該当の信号など、装置データにもとづいて行うことも可能である。
【0018】
さらなる利点が、各々の荷重を常に最適に調節して、ローラ表面の最小限の摩耗および可能な限り一様な引き伸ばしを保証できるように、個々の上側ローラ、および/または、下側ローラの荷重が個別に調節される場合に達成される。
【0019】
また、荷重が、少なくとも1つの、特には個別に作動させることができる機械式、空気圧式、油圧式、電気式、および/または、電磁気式の荷重印加部材によって調節されると、特に効果的である。
そのような部材は、小さなサイズであり、従って単純なやり方でドラフトシステムに統合することができる。
また、短い応答時間ゆえに、荷重の連続的かつ迅速に作用する調節を可能にする。
【0020】
ドラフトシステムのドラフト領域の幅が、該当の上側、および/または、下側ローラの荷重の関数として調節されると、さらに効果的である。
なぜならば、2つの隣接するローラペアの締め付け距離が、前記荷重に直接的に依存するからである。
荷重が増やされる場合、上側ローラのゴムが各々の下側ローラにより良好に接触するため、締め付け距離が減らされなければならない。
最適な締め付け距離が個々の繊維について決定されたならば、荷重を増加させるときに該当のドラフト領域の幅も増やすことが効果的である。
同様に、荷重が減らされるとすぐにドラフト領域の幅を(再び)減らすことも効果的である。
また、個々のローラ、または、すべてのローラの速度を荷重の関数として調節することや、ローラの過熱を防止し、従って繊維の品質の低下を防止するために、該当のローラの表面温度を調節することが、必要かもしれない。
【0021】
本発明によるドラフトシステムは、最終的には、荷重印加装置が、コントローラに接続できる少なくとも1つの荷重印加部材を備えていることで、特には先の実施例に従って、機械の動作中に前記コントローラによって荷重印加装置の荷重の程度を調節できることを特徴とする。
これにより、技術水準によれば、引き伸ばすべき材料の種類の変更時などの特別な場合に限って、圧力調節器、または、対応する調節ねじによる手作業での荷重の変更が典型的であるところ、荷重を必要に応じて自動的かつ連続的に調節する可能性が開かれる。
このように、本発明による繊維機械だけが上述の方法による運転を可能にし、利点の各々に関する説明の該当の部分が参照される。
【0022】
いずれの場合も、前記少なくとも1つの荷重印加部材が、機械式、空気圧式、油圧式、電気式、または、電磁気式の荷重印加部材であり、ローラに作用するその圧力が、連続的、または、階段状に、迅速、かつ、手作業による調節を必要とせずに調節可能であると、効果的である。
【0023】
ドラフトシステムが、上述にように、装置データ、および/または、引き伸ばされる材料の対応するデータを捕らえるために、前記コントローラに連絡した少なくとも1つのセンサを備えており、このデータにもとづいて荷重の程度が調節されると、さらに効果的である。
しかしながら、他の何らかのやり方で決定される荷重の程度の曲線も、考えられる。
例えば、荷重を装填の手順に始まって装填の手順の後の特定の運転時間にわたって増加させることができ、基本の荷重を別のデータから導出することができる。
【0024】
特に、前記少なくとも1つのセンサが、ドラフトシステムの入り口、出口、または、入り口と出口との間に配置されると、効果的である。
測定されるデータを最終的にコントローラによって個別、または、互いに関連付けて分析し、この分析にもとづいて、1つ、または、すべての荷重印加部材の荷重の程度を調節することができる。
【0025】
複数のセンサの測定データを互いに相関付けることができると、さらに効果的である。
このやり方で、複数のパラメータをコントローラによって処理することができ、可能な限り高い製品の品質という結果を達成するために、荷重の程度の制御ループに流すことができる。
【0026】
また、前記装置データが、ドラフトシステムの運転時間、および/または、休止時間、上側、および/または、下側ローラの少なくとも一方の温度、特には表面温度、上側ローラの荷重、上側、および/または、下側ローラの少なくとも一方の回転速度、ドラフト領域の幅、個々の上側、および/または、下側ローラの間の引き伸ばし、ならびに/あるいは、ドラフトシステムの全体としての引き伸ばしを含むと、効果的である。
特には引っ張りプロセスの長い休止期間の後で、ドラフトシステムのローラの温度が下がり、ドラフトシステムのローラの把持能力が低下するため、製品の品質の低下が一般的に生じる。
従って、特には引き伸ばしプロセスの暖気段階において、この段階においても繊維材料の確実な締め付けを保証すべく、荷重の程度を増やすことができると、効果的である。
ローラの摩耗を少なくし、あるいは、ドラフトシステムのローラの回転速度を増すことによって処理速度を高めるために、運転時間、または、ローラの温度の関数として、荷重を最終的に低いレベルに調節することが可能である。
【0027】
また、前記引き伸ばされる材料のデータが、引き伸ばされる材料の太さ、水分含有量、温度、繊維間の摩擦、(特には綿について)存在するハニーデュー、または、化学繊維について存在する仕上げ剤の種類および量などの表面組成、繊維長、純度、種類、直線重量、ならびに/あるいは、一様性を含むと、通常は常に変化するこれらのパラメータを荷重の程度の調節の際に考慮することができるため、効果的である。
【0028】
さらなる効果的な実施例においては、ドラフトシステムをスライバの破断後にコントローラによって増やされた荷重で運転することができる。
そのような出来事の後では、引き伸ばされるべき繊維材料が常に再装填され、いわゆる継ぎ合わせにつながる。
結果としての繊維材料の太さの変化が、最終的に、従来の方法においては必ず最終製品の一様性に悪影響を及ぼす。
しかしながら、本発明によるドラフトシステムによれば、継ぎ合わせの際に太い場所、または、細い場所が生じても、ドラフトシステムのローラの荷重を調節することによって、可能な限り一様な引き伸ばしを保証することが可能である。
継ぎ合わせが通過した後で、ローラを許される最大温度を超えることなくより高い回転速度で再び動作させることができるよう、荷重を再びより低いレベルに最終的に減らすことができる。
【0029】
効果的な態様においては、さらに繊維機械が、少なくとも1つの供給容器に作動可能に接続されており、引き伸ばされる材料をこの少なくとも1つの供給容器からドラフトシステムに送り込むことができ、ドラフトシステムを前記少なくとも1つの供給容器の交換後に、継ぎ目をなくすためにコントローラによって増やされた荷重で運転することができる。
これによる利点は、対応するスライバの破断後の荷重の調節の場合と同じであり、従って上述した情報を参照することができる。
【0030】
また、個々の上側、および/または、下側ローラの荷重を個別に調節できると、最終的に効果的である。
これは、引き伸ばされる材料に存在する太い場所、または、細い場所が、ドラフトシステムにおける位置に依存し、従ってすでに通過したローラペアの関数として、きわめてさまざまに生じるため、特に効果的である。
個別の荷重の調節は、この事実を考慮に入れることができ、結果として、可能な限り一様な最終製品を製品およびシステムを保護しつつ迅速に製造することができる。
【0031】
本発明のさらなる利点を以下の図面と連動して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】練条機のドラフトシステムの側面図。
【図2】考えられる荷重の程度について、時間の関数としての曲線を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、繊維機械の例としての練条機のドラフトシステム1を示している。
【0034】
概略的に図示された練条機に、互いに隣接する6本の個別の繊維ストランド2が導入され、これらの繊維ストランド2が、じょうご3によって1本のスライバ4に集められる。
ここで、繊維ストランド2および測定装置5が上方から図示されている一方で、練条機そのものは、側面図にて示されている。
【0035】
傍らを案内されるスライバ4の長さ当たりの質量を表す第1の測定信号S1を相応の接続17によってコントローラ13に送信する第1の測定装置5を通過した後で、スライバ4は、練条機の中心部を形成するドラフトシステム1に送り込まれる。
【0036】
次に、ドラフトシステム1は、入り口ローラペア6、中央ローラペア7、および出口(または、排出)ローラペア8を備えており、これらの入り口ローラペア6、中央ローラペア7および出口ローラペア8は、この順で大きくなる周速度でそれぞれ回転している。
この入り口ローラペア6、中央ローラペア7および出口ローラペア8の周速度の相違ゆえに、ドラフトシステム1において不織マットの様相で広がるスライバ4が、最終的に個々の周速度の比に従って引き伸ばされる。
従って、入り口ローラペア6および中央ローラペア7が、いわゆる予備ドラフト領域を形成し、中央ローラペア7および排出ローラペア8が、いわゆる主ドラフト領域を形成する。
【0037】
一様、かつ、連続的な引き伸ばしを可能にするために、ドラフトシステム1の個々のローラの軸と相互作用する個々の荷重印加部材16を備えている荷重印加装置が、入り口ローラペア6、中央ローラペア7および出口ローラペア8に組み合わせられている。
荷重印加部材16は、機械式、空気圧式、油圧式、電気式、または、電磁気式の荷重印加部材16として実現可能であり、相応の接続17によってコントローラ13に接続されている。
典型的には、コントローラ13が、キーボードなどの運転者の制御装置14に接続され、画面などの出力ユニット15に接続される。
【0038】
さらなる測定装置9が、カレンダロールペア11および保管容器12が接続されたドラフトシステム1の出口に配置されており、通過するスライバ4の質量を捕らえる測定室10を備えている。
前記質量、または、太さが、センサ電子機器(図示されていない)によって測定信号S2に変換され、さらなる接続17によってコントローラ13に送信され、分析される。
スライバ4の平均太さおよびスライバ4に残る非一様性が、特には捕らえられる。
排出されるスライバ4の品質が要件を満たさない場合、予備ドラフト、および/または、主ドラフトの変更に加えて、引き伸ばしのプロセスにおいて荷重を自動的に調節するために、荷重印加部材16に信号を送信することもできる。
【0039】
さらには、休止時間、結果として生じるローラの温度低下、あるいは、これに対応して荷重印加のプロセスから生じうる太さのより大きい場所に応じて、引き伸ばしのプロセスの開始時に、荷重の程度を増やすことが可能である。
このやり方で、荷重の程度を通常の引き伸ばしプロセスにおいては可能な限り低いレベルに保つことができ、そのような荷重の程度が、リアルタイムで割り出され、あるいは、前もって割り出されたデータを形成する個々の装置データ、または、引き伸ばされるべき材料のデータによって必要とされる場合に限り、増やされなければならない。
結果として、本発明は、荷重の程度の自動的な調節が、ドラフトシステム1の始動時および停止時、あるいは、実際の引き伸ばしプロセス中に調節可能なさらなるパラメータを提供するため、引き伸ばし後のスライバ4の一様性の向上を可能にする。
【0040】
図2が、時間tの関数としての荷重Bの程度について、考えられる曲線の例を示している。
引き伸ばしプロセス中の荷重印加部材16の平均的な荷重の程度が、tとtとの間の期間に示されている。
【0041】
とtとの間において生じる増加は、時刻tにおけるドラフトシステム1の始動の後で、ドラフトシステム1のローラの表面温度が、まだ最適な動作温度に達していないという事実に起因している。
この段階においては、ローラが最適な把持能力を未だ有しておらず、通常の荷重の程度のもとでは、ローラと繊維材料との間に滑りが生じうる。
この引き伸ばしプロセスの初期の段階において、本発明による荷重の程度の調節が、このリスクを最小限にし、従ってスライバ4の可能な限り最良の一様性を始動の直後から保証することができる。
【0042】
図は、ドラフトシステム1の始動の直後(時間期間t〜t)の荷重の程度が、時刻tにおいて完了するローラ表面の暖気段階に比べて、さらに高められることも示している。
これは、始動および装填のプロセスに起因して生じる繊維材料の太い場所を確実に追放できることを保証している。
【0043】
荷重の程度の同様の増加を点tとtとの間にも見て取ることができる。
このような増加は、例えば、スライバ4の破断後に大いに効果的であると考えられる。
なぜならば、この段階において、継ぎ合わせに起因して、やはり太い場所が生じる可能性があり、そのような太い場所を荷重が相応に増やされた場合にのみ確実になくすことが可能であるからである。
【0044】
点tの後の領域は、荷重の程度の連続的な調節も可能であることを最終的に示しており、荷重の変更は、測定された該当の装置データ、または、引き伸ばされるべき材料のデータ(ドラフトシステム1の種々の場所における太さ、など)から行われる。
【0045】
最後に、荷重の程度の階段状の変化が、調節の1つの可能性を示しているにすぎないことに、注意すべきである。
の後の領域に示されているような荷重の程度の緩やかな増加、または、減少も、当然ながら可能であり、有効である。
また、荷重の変化が、任意の非線形であってもよい。
【0046】
さらに、本発明は、上述の実施例に限られない。
むしろ、図面に示され、あるいは、特許請求の範囲、または、明細書に記載されたとおりの上述の個々の特徴のあらゆるすべての組み合わせが、そのような組み合わせが可能であって理にかなっていると考えられる限りにおいて、本発明の主題である。
【符号の説明】
【0047】
1 ・・・ドラフトシステム
2 ・・・繊維ストランド
3 ・・・じょうご
4 ・・・スライバ
5 ・・・測定装置
6 ・・・入り口ローラペア
7 ・・・中央ローラペア
8 ・・・出口ローラペア、または排出ローラペア
9 ・・・測定装置
10 ・・・測定室
11 ・・・カレンダロールペア
12 ・・・保管容器
13 ・・・コントローラ
14 ・・・制御装置
15 ・・・出力ユニット
16 ・・・荷重印加部材
17 ・・・接続
S1 ・・・測定信号
S2 ・・・測定信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維機械、梳綿機、または、練条機などの紡績準備機械、リング紡績機、空気紡績機、あるいは、フライヤのドラフトシステム(1)であって、引き伸ばすべき材料を案内すべく相互作用する複数の下側ローラおよび上側ローラと、当該ドラフトシステム(1)の運転中に前記下側ローラ、および/または、上側ローラの少なくとも一方に荷重を作用させる少なくとも1つの荷重印加装置とを備えているドラフトシステム(1)を運転するための方法であって、
荷重の大きさが、コントローラ(13)によって、前記繊維機械の装置データ、および/または、引き伸ばされる材料のデータにもとづいて制御されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記装置データが、前記ドラフトシステム(1)の運転時間、および/または、休止時間、前記上側ローラ、および/または、下側ローラの少なくとも一方の温度、表面温度、前記上側ローラの荷重、前記上側ローラ、および/または、下側ローラの少なくとも一方の回転速度、ドラフト領域の幅、個々の上側ローラ、および/または、下側ローラの間の引き伸ばし、ならびに/あるいは、前記ドラフトシステム(1)の全体としての引き伸ばしを含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記引き伸ばされる材料のデータが、該引き伸ばされる材料の太さ、水分含有量、温度、繊維間の摩擦、存在するハニーデュー、または、仕上げ剤の種類および量などの表面品質、繊維長、純度、種類、直線重量、ならびに/あるいは、一様性を含むことを特徴とする請求項1または請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記引き伸ばされる材料のデータが、前記ドラフトシステム(1)の入り口、出口、あるいは、入り口と出口との間において測定されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記装置データ、および/または、前記引き伸ばされる材料のデータが、センサによって測定されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
複数のセンサの測定データが、互いに相関付けられることを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記ドラフトシステム(1)が、スライバ(4)の破断後に荷重を増やして運転することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記引き伸ばされる材料が、少なくとも1つの供給容器から前記ドラフトシステム(1)に送り込まれ、該ドラフトシステム(1)が、前記少なくとも1つの供給容器の交換後に、継ぎ目をなくすために荷重を増やして運転することを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記荷重が、個々の上側、および/または、下側ローラについて個別に制御されることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記荷重が、少なくとも1つの、個別に作動させることができる機械式、空気圧式、油圧式、電気式、および/または、電磁気式の荷重印加部材(16)によって制御されることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記ドラフトシステム(1)のドラフト領域の幅が、荷重の関数として制御されることを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
引き伸ばすべき材料を案内すべく相互作用する複数の下側ローラおよび上側ローラと、前記下側ローラ、および/または、上側ローラの少なくとも一方に荷重を作用させる荷重印加装置とを備えている繊維機械、梳綿機、または、練条機などの紡績準備機械、リング紡績機、空気紡績機、あるいは、フライヤのドラフトシステム(1)であって、
前記荷重印加装置が、コントローラ(13)に接続できる少なくとも1つの荷重印加部材(16)を備えていることで、前記機械の動作中に前記コントローラ(13)によって荷重の大きさを制御することを特徴とするドラフトシステム(1)。
【請求項13】
前記少なくとも1つの荷重印加部材(16)が、機械式、空気圧式、油圧式、電気式、または、電磁気式の荷重印加部材(16)であることを特徴とする請求項12記載のドラフトシステム(1)。
【請求項14】
装置データ、および/または、引き伸ばされる材料のデータを捕らえるために、前記コントローラ(13)に連絡した少なくとも1つのセンサを備えており、
該データにもとづいて荷重の大きさを制御することを特徴とする請求項12または請求項13記載のドラフトシステム(1)。
【請求項15】
前記少なくとも1つのセンサが、当該ドラフトシステム(1)の入り口、出口、または、入り口と出口との間に配置されていることを特徴とする請求項14記載のドラフトシステム(1)。
【請求項16】
複数のセンサの測定データを互いに相関付けることができることを特徴とする請求項14または請求項15記載のドラフトシステム(1)。
【請求項17】
前記装置データが、当該ドラフトシステム(1)の運転時間、および/または、休止時間、前記上側ローラ、および/または、下側ローラの少なくとも一方の温度、表面温度、前記上側ローラの荷重、前記上側ローラ、および/または、下側ローラの少なくとも一方の回転速度、ドラフト領域の幅、個々の上側ローラ、および/または、下側ローラの間の引き伸ばし、ならびに/あるいは、前記ドラフトシステム(1)の全体としての引き伸ばしを含むことを特徴とする請求項14乃至請求項16のいずれかに記載のドラフトシステム(1)。
【請求項18】
前記引き伸ばされる材料のデータが、該引き伸ばされる材料の太さ、水分含有量、温度、繊維間の摩擦、存在するハニーデュー、または、仕上げ剤の種類および量などの表面組成、繊維長、純度、種類、直線重量、ならびに/あるいは、一様性を含むことを特徴とする請求項14乃至請求項16のいずれかに記載のドラフトシステム(1)。
【請求項19】
スライバ(4)の破断後に前記コントローラ(13)によって増やされた荷重で運転することを特徴とする請求項12乃至請求項18のいずれかに記載のドラフトシステム(1)。
【請求項20】
前記繊維機械が、少なくとも1つの供給容器に作動可能に接続されており、前記引き伸ばされる材料を前記少なくとも1つの供給容器から当該ドラフトシステム(1)に送り込むことができ、当該ドラフトシステム(1)を前記少なくとも1つの供給容器の交換後に、継ぎ目をなくすために前記コントローラ(13)によって増やされた荷重で運転することを特徴とする請求項12乃至請求項19のいずれかに記載のドラフトシステム(1)。
【請求項21】
前記荷重を個々の上側、および/または、下側ローラについて個別に制御することを特徴とする請求項12乃至請求項20のいずれかに記載のドラフトシステム(1)。

【図1】
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【図2】
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