繊維系又は樹脂系ジオグリッド
【課題】 本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、縫製ムラや不良品発生がない高品質のものであって、製造コストの安価な繊維系又は樹脂系ジオグリッドを提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明に係る繊維系又は樹脂系ジオグリッド(土木用ネット状シート)10は、経糸及び緯糸を交差させ、経糸及び緯糸の交差部をコーティングにより結合させてなる目の粗いネット部10aを織成するのと同時に、前記ネット部側縁の側部補強帯域10b及び該側部補強帯域10bにおける連結用孔11を形成してなるものであって、ネット部10aの織成と同時に、ネット部10aの中央に縦方向の中央縦補強帯域10cが形成され、かつ、ネット部の中央に横方向の中央横補強帯域10dが形成されてなるものである。
【解決手段】
本発明に係る繊維系又は樹脂系ジオグリッド(土木用ネット状シート)10は、経糸及び緯糸を交差させ、経糸及び緯糸の交差部をコーティングにより結合させてなる目の粗いネット部10aを織成するのと同時に、前記ネット部側縁の側部補強帯域10b及び該側部補強帯域10bにおける連結用孔11を形成してなるものであって、ネット部10aの織成と同時に、ネット部10aの中央に縦方向の中央縦補強帯域10cが形成され、かつ、ネット部の中央に横方向の中央横補強帯域10dが形成されてなるものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維系又は樹脂系ジオグリッドに関し、特に互いに連結することが容易な構造を備えた土木用のネット状シート体として使用できる繊維系又は樹脂系ジオグリッドに関する。
【0002】
なお、ジオグリッドとは、合成樹脂製の格子であって、合成樹脂により構成される格子構造の交差部が結合又は一体化しているものであり、繊維系ジオグリッドと樹脂系ジオグリッドとの2種類がある。繊維系ジオグリッドは、アラミド繊維やポリエステル繊維等の高強度繊維を編織して格子構造を成形し、ポリエチレン、塩化ビニル又はアクリル等の合成樹脂でコーティングし、格子の交差部を結合一体化するものである。樹脂系ジオグリッドは、ポリエチレンやポリプロピレン等からなる厚手の合成樹脂シートに規則的に孔をあけ、この孔あきシートを縦横に延伸させることにより形成される。
【背景技術】
【0003】
従来、図14〜図16に示すように、連結孔111を有する帯体110が側縁部に縫着された繊維系又は樹脂系ジオグリッドよりなるネット状のシート体100を使用し、該シート体100を隣接せしめた状態で、各シート体100における近接する各連結孔111同士にロープを挿通して結んだり、各連結孔111同士に適宜の連結具を係合させることによって各シート体を連結している(特許文献1〜4)。
【特許文献1】特開平9−316849号公報
【特許文献2】特開2000−110809号公報
【特許文献3】特開2000−213509号公報
【特許文献4】実用新案登録第3091540号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のようなシート体100の場合には、連結孔111を有する帯体110を繊維系又は樹脂系ジオグリッドの側縁部に別途縫着又は接着しなければならず、材料代及び加工代等のコストが発生し、コスト高にならざるを得ない欠点があった。また、帯体110の縫着又は接着の際における人為的ミスに対する品質管理に手間が掛かるという欠点があり、さらに、紫外線により帯体110を縫着した縫着糸が劣化して、側縁部が破断するおそれがあった。
【0005】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、品質の向上と共に製造コストの安価な繊維系又は樹脂系ジオグリッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る繊維系又は樹脂系ジオグリッドは、周囲の補強帯域と内方のネット部とからなり、該補強帯域は、ネット部の形成と共に一体に形成されたものであることを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明に係る繊維系又は樹脂系ジオグリッドは、上記の構成に加え、ネット部の縦方向又は横方向のいずれか一方又は両方にネット部の形成と共に一体に適宜の間隔をおいて形成された補強帯域を有していることを特徴とする構成としてもよい。
【0008】
さらに、本発明に係る繊維系又は樹脂系ジオグリッドは、上記の構成に加え、補強帯域がネット部のメッシュより目の細かい高密度メッシュから構成され、該高密度メッシュを合成樹脂によりコーティングすると共に該高密度メッシュのグリッド交差部を接着してなることを特徴とする構成としてもよい。
【0009】
例えば繊維系ジオグリッドの場合には、ネット部は経糸及び緯糸を目が粗くなるように交差させ、補強帯域は経糸及び緯糸を目が細かくなるように交差させて織成すると共にこれら経糸及び緯糸の交差部をコーティングにより結合させることにより形成される。樹脂系ジオグリッドの場合には、延伸前の合成樹脂シートに対する孔あけの際に、延伸後にネット部になる部分には多数の孔をあけ、補強帯域となる部分には少数の孔をあけ、これを縦横に延伸すると共に補強帯域をコーティングすることにより作成される。
【0010】
さらにまた、本発明に係る繊維系又は樹脂系ジオグリッドは、上記の構成に加え、補強帯域が合成樹脂フィルムのラミネート加工により形成されてなることを特徴とする構成としてもよい。
【0011】
また、本発明に係る繊維系又は樹脂系ジオグリッドは、上記の構成に加え、補強帯域に、経糸及び緯糸の配置により連結用孔を形成するか、又は、打ち抜き又は縫製により連結用孔を補強帯域形成と同時に形成してなることを特徴とする構成としてもよい。この場合、縫製とは例えばボタンホールのような孔を縫製により形成することを意味する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の繊維系又は樹脂系ジオグリッドによれば、従来のように連結用孔を有する帯体を別途縫製して形成する必要がなく、また、帯体を縫着又は接着する手間が掛からないため、製造コストを低減することができる。また、ネット部の縦方向に適宜間隔をおいて補強帯域を設けた場合には、縦方向の引っ張りに対する強度が高くなり、ネット部の横方向に適宜間隔をおいて補強帯域を設けた場合には、横方向の引っ張りに対する強度が高くなり、繊維系又は樹脂系ジオグリッド全体の強度が増す利点がある。さらに、横方向に適宜間隔をおいて設けた補強帯域又は縦方向に適宜間隔をおいて設けた補強帯域のいずれか一方又は双方に連結用孔を設けると連結配置構成、すなわち、一方のジオグリッドの側部の補強帯域と他方のジオグリッドのネット部の補強帯域とを連結することができ、ジオグリッドの設置面積に応じた配置構成ができるので便利である。なお、ジオグリッドの一方をネット部の補強帯域の箇所で切断し、他方のジオグリッドの周囲の補強帯域と突き合わせて連結すれば、2枚重ねの部分が生ずることなく幅調整が可能となり、凹凸のないフラットな状態でジオグリッドを敷設することでき、かつ、ジオグリッドの使用量を最小限にすることができる。しかも、中央縦方向の補強帯域及び中央横方向の補強帯域及びこれらの補強帯域に形成する連結用孔がネット部を織成等により形成するのと同時に形成することができるので、製造効率が高く、コストダウンにつながる利点がある。また、従来のように帯体を縫着あるいは接着することによる人為的ミスが生じないので、品質管理に手間が掛からず、また、帯体を縫製するための縫着糸を使用しないので、縫着糸の紫外線劣化による前記各補強帯域の破断が生じない利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明の一実施例を添付の図面に基づいて説明する。なお、実施例1〜3においては、本発明の繊維系又は樹脂系ジオグリッドを土木用ネット状シート体として実施する場合について説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【実施例1】
【0014】
図1は実施例1に係る土木用ネット状シート体の表面図、図2は実施例1に係る土木用ネット状シート体の部分拡大斜視図、図3は実施例1に係る土木用ネット状シート体の部分拡大端面図、図4は実施例1に係る土木用ネット状シート体の使用状態を示す表面図である。
【0015】
図1〜図3において、10は本実施例に係る土木用ネット状シートを示し、その内方に経糸及び緯糸を交差させて目の粗いネット部10a(目の大きさ約5mm〜150mm)が形成されており、土木用ネット状シート10の周縁部には同じく経糸及び緯糸を交差させた目の細かい側部補強帯域10b(目の大きさ3mm以下)が形成されている。そして、土木用ネット状シート10は幅約2m、長さ約4m〜50mの長方形状をなすものであり、長尺の場合にはロール状に巻回して保管及び運搬される。
【0016】
そして、前記側部補強帯域10bには、ボタンホールのような連結用孔11(孔の大きさは最大部分で約15mm)が形成されている。この連結用孔11は、図4に示すように複数の土木用ネット状シート10を隣接して配置した際に、隣接する土木用ネット状シート10同士を連結するために使用され、連結用孔11にロープAを挿通したり、適宜の連結具を使用して、隣接する土木用ネット状シート10同士を連結する。したがって、この連結用孔11は、1孔当たり少なくとも0.5kN〜10kNの力を加えても破断しないように構成しておくことが好ましい。なお、図4は土木用ネット状シート10を左右に連結する使用例を示したが、上下にも連結できることは詳述するまでもない。
【0017】
前記土木用ネット状シート10のネット部10aの中央縦方向、すなわち両側から約1mの箇所に目の細かい中央縦補強帯域10cが形成されている。このように構成することにより、縦方向の引っ張りに対する強度が高くなる。また、前記土木用ネット状シート10のネット部10aの中央横方向、すなわち上下両側から約2mの箇所に目の細かい中央横補強帯域10dが形成されている。このように構成することにより、横方向の引っ張りに対する強度が高くなる。したがって実施例1に係る土木用ネット状シート10は、その全体の引っ張り強度が強いものとなる。なお、本実施例においては、中央縦方向及び中央横方向において補強帯域を増設しているが、これに限られるものではなく、縦方向又は横方向に適宜間隔をおいて補強帯域を設けてもよい。
【0018】
そして、これらネット部10a、側部補強帯域10b、連結用孔11、中央縦補強帯域10c及び中央横補強帯域10dは、同時に織成されるように設計され、また織成と同時に経糸及び緯糸の交差部をコーティングしてシート全体の形態を固定する。このように連結用孔11を同時織成することにより、従来より行われていた連結孔を有する帯体を縫着又は接着する手間及び人為的ミスに対する品質管理上の手間が掛からないため、高品質な製品を製造コストを下げて提供することができる。
【0019】
なお、側部補強帯域10b、連結用孔11、中央縦補強帯域10c及び中央横補強帯域10dは、目の粗いネット部に合成樹脂フィルムをラミネートして構成してもよく、目の細かいメッシュ地を形成し、その部分に合成樹脂フィルムをラミネートして構成してもよい。
【実施例2】
【0020】
図5は実施例2に係る土木用ネット状シート体の表面図、図6は実施例2に係る土木用ネット状シート体の使用状態を示す表面図、図7は実施例2に係る土木用ネット状シート体の使用状態における端面図である。
【0021】
実施例2の土木用ネット状シート20は、実施例1の土木用ネット状シート10において、その中央縦補強帯域10cと中央横補強帯域10dにボタンホールのような連結用孔21を同時織成にて形成したものである。したがって、実施例1と同様の箇所については、実施例1の説明を援用すると共に実施例1と同一符号をもって示す。
【0022】
実施例2の土木用ネット状シート20は、実施例1の土木用ネット状シート10について図4をもって示した使用状態が可能であるほかに、図5に示す使用状態が可能である。すなわち、図6及び図7に示すように一方の土木用ネット状シート20の側部補強帯域10bと他方の土木用ネット状シート20の中央縦補強帯域10cとを重ね合わせ、側部補強帯域10bの連結用孔11と中央縦補強帯域10cの連結用孔21とをロープA又は適宜の連結具を使用して連結すれば、土木用ネット状シート20が連結される。
【0023】
このように土木用ネット状シート20を構成すると、図4に示す使用状態及び図6に示す使用状態を組み合わせることにより、シートの設置面積に応じてた対応ができるので、便利である。しかも、図6及び図7に示す使用状態の場合には、ネット部10aの重なり合う部分ができ、その部分が丈夫になる利点がある。
【実施例3】
【0024】
図8は実施例3に係る土木用ネット状シート体の表面図、図9は実施例3に係る土木用ネット状シートを半裁した状態を示す表面図、図10は実施例3に係る土木用ネット状シートを他の土木用ネット状シートに連結した状態を示す表面図である。
【0025】
実施例3における土木用ネット状シート30は、実施例2の土木用ネット状シート20における中央縦補強帯域10cと中央横補強帯域10dとに形成した1列の連結用孔21を、図8に示すように2列並列して連結用孔31a,31bを同時織成にて形成したものである。したがって、実施例2と同様の箇所については、実施例2の説明を援用すると共に実施例2と同一符号をもって示す。
【0026】
このように連結用孔31a,31bを形成した土木用ネット状シート30は、これを図9に示すように半裁すると、図10に示すように、他の土木用ネット状シート20と連結紐Aにて連結することができるので、重ね合わせの部分がなくフラットに敷設でき、また、残余の半裁部を利用すれば材料費が節約できる利点がある。
【実施例4】
【0027】
図11は実施例4に係る土木用ネット状シートの表面図、図12は実施例4に係る土木用ネット状シートを縦横に重ねた合わせた状態を示す表面図、図13は実施例4に係る土木用ネット状シートの使用状態を示す斜視図である。
【0028】
実施例4における土木用ネット状シート40は、実施例1における土木用ネット状シート10の幅を半分に縮小したものであって、幅約1m、長さ約4mの長方形状をなすものである。なおこの長さは50m程度まで延長してもよい。したがって、実施例1と同様の同一の箇所については、実施例1の説明を援用すると共に実施例1と同一符号をもって示す。
【0029】
この土木用ネット状シート40を、図12に示すように、十字型に縦横に重ね合わせ、図13に示すように、中央の重ね合わせ領域40Aを除く左右上下の張り出し部40B〜40E起立させ、隣接する連結用孔11をロープAで連結すると箱状に組み立てることができる利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明に係る繊維系又は樹脂系ジオグリッドは、軟弱地盤や急勾配盛土の安定強化、建造物や空港滑走路の地盤安定化のために、地面に敷設する敷網工法において使用する他、河川や海洋の護岸工事、造成工事、根固め工事あるいは洗掘防止工事(浸食防止工事)、護岸緑化工事、橋脚の洗掘防止工事、緊急対策(災害復旧)補強盛土などの土木工事に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施例1に係る土木用ネット状シート体の表面図である。
【図2】実施例1に係る土木用ネット状シート体の部分拡大斜視図である。
【図3】実施例1に係る土木用ネット状シート体の部分拡大端面図である。
【図4】実施例1に係る土木用ネット状シート体の使用状態を示す表面図である。
【図5】実施例2に係る土木用ネット状シート体の表面図である。
【図6】実施例2に係る土木用ネット状シート体の使用状態を示す表面図である。
【図7】実施例2に係る土木用ネット状シート体の使用状態における端面図である。
【図8】実施例3に係る土木用ネット状シート体の表面図である。
【図9】実施例3に係る土木用ネット状シートを半裁した状態を示す表面図である。
【図10】実施例3に係る土木用ネット状シートを他の土木用ネット状シートに連結した状態を示す表面図である。
【図11】実施例4に係る土木用ネット状シート体の表面図である。
【図12】実施例4に係る土木用ネット状シートを縦横に重ねた合わせた状態を示す表面図である。
【図13】実施例4に係る土木用ネット状シートの使用状態を示す斜視図である。
【図14】従来の土木用ネット状シート体の表面図である。
【図15】従来の土木用ネット状シート体の部分拡大斜視図である。
【図16】従来の土木用ネット状シート体の部分拡大端面図である。
【符号の説明】
【0032】
10・・・・土木用ネット状シート
10a・・・ネット部
10b・・・側部補強帯域
11・・・・連結用孔
A・・・・・ロープ
10c・・・中央縦補強帯域
10d・・・中央横補強帯域
20・・・・土木用ネット状シート
21・・・・連結用孔
30・・・・土木用ネット状シート
31a・・・連結用孔
31b・・・連結用孔
40・・・・土木用ネット状シート
40A・・・重ね合わせ領域
40B〜40E・・・張り出し部
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維系又は樹脂系ジオグリッドに関し、特に互いに連結することが容易な構造を備えた土木用のネット状シート体として使用できる繊維系又は樹脂系ジオグリッドに関する。
【0002】
なお、ジオグリッドとは、合成樹脂製の格子であって、合成樹脂により構成される格子構造の交差部が結合又は一体化しているものであり、繊維系ジオグリッドと樹脂系ジオグリッドとの2種類がある。繊維系ジオグリッドは、アラミド繊維やポリエステル繊維等の高強度繊維を編織して格子構造を成形し、ポリエチレン、塩化ビニル又はアクリル等の合成樹脂でコーティングし、格子の交差部を結合一体化するものである。樹脂系ジオグリッドは、ポリエチレンやポリプロピレン等からなる厚手の合成樹脂シートに規則的に孔をあけ、この孔あきシートを縦横に延伸させることにより形成される。
【背景技術】
【0003】
従来、図14〜図16に示すように、連結孔111を有する帯体110が側縁部に縫着された繊維系又は樹脂系ジオグリッドよりなるネット状のシート体100を使用し、該シート体100を隣接せしめた状態で、各シート体100における近接する各連結孔111同士にロープを挿通して結んだり、各連結孔111同士に適宜の連結具を係合させることによって各シート体を連結している(特許文献1〜4)。
【特許文献1】特開平9−316849号公報
【特許文献2】特開2000−110809号公報
【特許文献3】特開2000−213509号公報
【特許文献4】実用新案登録第3091540号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のようなシート体100の場合には、連結孔111を有する帯体110を繊維系又は樹脂系ジオグリッドの側縁部に別途縫着又は接着しなければならず、材料代及び加工代等のコストが発生し、コスト高にならざるを得ない欠点があった。また、帯体110の縫着又は接着の際における人為的ミスに対する品質管理に手間が掛かるという欠点があり、さらに、紫外線により帯体110を縫着した縫着糸が劣化して、側縁部が破断するおそれがあった。
【0005】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、品質の向上と共に製造コストの安価な繊維系又は樹脂系ジオグリッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る繊維系又は樹脂系ジオグリッドは、周囲の補強帯域と内方のネット部とからなり、該補強帯域は、ネット部の形成と共に一体に形成されたものであることを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明に係る繊維系又は樹脂系ジオグリッドは、上記の構成に加え、ネット部の縦方向又は横方向のいずれか一方又は両方にネット部の形成と共に一体に適宜の間隔をおいて形成された補強帯域を有していることを特徴とする構成としてもよい。
【0008】
さらに、本発明に係る繊維系又は樹脂系ジオグリッドは、上記の構成に加え、補強帯域がネット部のメッシュより目の細かい高密度メッシュから構成され、該高密度メッシュを合成樹脂によりコーティングすると共に該高密度メッシュのグリッド交差部を接着してなることを特徴とする構成としてもよい。
【0009】
例えば繊維系ジオグリッドの場合には、ネット部は経糸及び緯糸を目が粗くなるように交差させ、補強帯域は経糸及び緯糸を目が細かくなるように交差させて織成すると共にこれら経糸及び緯糸の交差部をコーティングにより結合させることにより形成される。樹脂系ジオグリッドの場合には、延伸前の合成樹脂シートに対する孔あけの際に、延伸後にネット部になる部分には多数の孔をあけ、補強帯域となる部分には少数の孔をあけ、これを縦横に延伸すると共に補強帯域をコーティングすることにより作成される。
【0010】
さらにまた、本発明に係る繊維系又は樹脂系ジオグリッドは、上記の構成に加え、補強帯域が合成樹脂フィルムのラミネート加工により形成されてなることを特徴とする構成としてもよい。
【0011】
また、本発明に係る繊維系又は樹脂系ジオグリッドは、上記の構成に加え、補強帯域に、経糸及び緯糸の配置により連結用孔を形成するか、又は、打ち抜き又は縫製により連結用孔を補強帯域形成と同時に形成してなることを特徴とする構成としてもよい。この場合、縫製とは例えばボタンホールのような孔を縫製により形成することを意味する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の繊維系又は樹脂系ジオグリッドによれば、従来のように連結用孔を有する帯体を別途縫製して形成する必要がなく、また、帯体を縫着又は接着する手間が掛からないため、製造コストを低減することができる。また、ネット部の縦方向に適宜間隔をおいて補強帯域を設けた場合には、縦方向の引っ張りに対する強度が高くなり、ネット部の横方向に適宜間隔をおいて補強帯域を設けた場合には、横方向の引っ張りに対する強度が高くなり、繊維系又は樹脂系ジオグリッド全体の強度が増す利点がある。さらに、横方向に適宜間隔をおいて設けた補強帯域又は縦方向に適宜間隔をおいて設けた補強帯域のいずれか一方又は双方に連結用孔を設けると連結配置構成、すなわち、一方のジオグリッドの側部の補強帯域と他方のジオグリッドのネット部の補強帯域とを連結することができ、ジオグリッドの設置面積に応じた配置構成ができるので便利である。なお、ジオグリッドの一方をネット部の補強帯域の箇所で切断し、他方のジオグリッドの周囲の補強帯域と突き合わせて連結すれば、2枚重ねの部分が生ずることなく幅調整が可能となり、凹凸のないフラットな状態でジオグリッドを敷設することでき、かつ、ジオグリッドの使用量を最小限にすることができる。しかも、中央縦方向の補強帯域及び中央横方向の補強帯域及びこれらの補強帯域に形成する連結用孔がネット部を織成等により形成するのと同時に形成することができるので、製造効率が高く、コストダウンにつながる利点がある。また、従来のように帯体を縫着あるいは接着することによる人為的ミスが生じないので、品質管理に手間が掛からず、また、帯体を縫製するための縫着糸を使用しないので、縫着糸の紫外線劣化による前記各補強帯域の破断が生じない利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明の一実施例を添付の図面に基づいて説明する。なお、実施例1〜3においては、本発明の繊維系又は樹脂系ジオグリッドを土木用ネット状シート体として実施する場合について説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【実施例1】
【0014】
図1は実施例1に係る土木用ネット状シート体の表面図、図2は実施例1に係る土木用ネット状シート体の部分拡大斜視図、図3は実施例1に係る土木用ネット状シート体の部分拡大端面図、図4は実施例1に係る土木用ネット状シート体の使用状態を示す表面図である。
【0015】
図1〜図3において、10は本実施例に係る土木用ネット状シートを示し、その内方に経糸及び緯糸を交差させて目の粗いネット部10a(目の大きさ約5mm〜150mm)が形成されており、土木用ネット状シート10の周縁部には同じく経糸及び緯糸を交差させた目の細かい側部補強帯域10b(目の大きさ3mm以下)が形成されている。そして、土木用ネット状シート10は幅約2m、長さ約4m〜50mの長方形状をなすものであり、長尺の場合にはロール状に巻回して保管及び運搬される。
【0016】
そして、前記側部補強帯域10bには、ボタンホールのような連結用孔11(孔の大きさは最大部分で約15mm)が形成されている。この連結用孔11は、図4に示すように複数の土木用ネット状シート10を隣接して配置した際に、隣接する土木用ネット状シート10同士を連結するために使用され、連結用孔11にロープAを挿通したり、適宜の連結具を使用して、隣接する土木用ネット状シート10同士を連結する。したがって、この連結用孔11は、1孔当たり少なくとも0.5kN〜10kNの力を加えても破断しないように構成しておくことが好ましい。なお、図4は土木用ネット状シート10を左右に連結する使用例を示したが、上下にも連結できることは詳述するまでもない。
【0017】
前記土木用ネット状シート10のネット部10aの中央縦方向、すなわち両側から約1mの箇所に目の細かい中央縦補強帯域10cが形成されている。このように構成することにより、縦方向の引っ張りに対する強度が高くなる。また、前記土木用ネット状シート10のネット部10aの中央横方向、すなわち上下両側から約2mの箇所に目の細かい中央横補強帯域10dが形成されている。このように構成することにより、横方向の引っ張りに対する強度が高くなる。したがって実施例1に係る土木用ネット状シート10は、その全体の引っ張り強度が強いものとなる。なお、本実施例においては、中央縦方向及び中央横方向において補強帯域を増設しているが、これに限られるものではなく、縦方向又は横方向に適宜間隔をおいて補強帯域を設けてもよい。
【0018】
そして、これらネット部10a、側部補強帯域10b、連結用孔11、中央縦補強帯域10c及び中央横補強帯域10dは、同時に織成されるように設計され、また織成と同時に経糸及び緯糸の交差部をコーティングしてシート全体の形態を固定する。このように連結用孔11を同時織成することにより、従来より行われていた連結孔を有する帯体を縫着又は接着する手間及び人為的ミスに対する品質管理上の手間が掛からないため、高品質な製品を製造コストを下げて提供することができる。
【0019】
なお、側部補強帯域10b、連結用孔11、中央縦補強帯域10c及び中央横補強帯域10dは、目の粗いネット部に合成樹脂フィルムをラミネートして構成してもよく、目の細かいメッシュ地を形成し、その部分に合成樹脂フィルムをラミネートして構成してもよい。
【実施例2】
【0020】
図5は実施例2に係る土木用ネット状シート体の表面図、図6は実施例2に係る土木用ネット状シート体の使用状態を示す表面図、図7は実施例2に係る土木用ネット状シート体の使用状態における端面図である。
【0021】
実施例2の土木用ネット状シート20は、実施例1の土木用ネット状シート10において、その中央縦補強帯域10cと中央横補強帯域10dにボタンホールのような連結用孔21を同時織成にて形成したものである。したがって、実施例1と同様の箇所については、実施例1の説明を援用すると共に実施例1と同一符号をもって示す。
【0022】
実施例2の土木用ネット状シート20は、実施例1の土木用ネット状シート10について図4をもって示した使用状態が可能であるほかに、図5に示す使用状態が可能である。すなわち、図6及び図7に示すように一方の土木用ネット状シート20の側部補強帯域10bと他方の土木用ネット状シート20の中央縦補強帯域10cとを重ね合わせ、側部補強帯域10bの連結用孔11と中央縦補強帯域10cの連結用孔21とをロープA又は適宜の連結具を使用して連結すれば、土木用ネット状シート20が連結される。
【0023】
このように土木用ネット状シート20を構成すると、図4に示す使用状態及び図6に示す使用状態を組み合わせることにより、シートの設置面積に応じてた対応ができるので、便利である。しかも、図6及び図7に示す使用状態の場合には、ネット部10aの重なり合う部分ができ、その部分が丈夫になる利点がある。
【実施例3】
【0024】
図8は実施例3に係る土木用ネット状シート体の表面図、図9は実施例3に係る土木用ネット状シートを半裁した状態を示す表面図、図10は実施例3に係る土木用ネット状シートを他の土木用ネット状シートに連結した状態を示す表面図である。
【0025】
実施例3における土木用ネット状シート30は、実施例2の土木用ネット状シート20における中央縦補強帯域10cと中央横補強帯域10dとに形成した1列の連結用孔21を、図8に示すように2列並列して連結用孔31a,31bを同時織成にて形成したものである。したがって、実施例2と同様の箇所については、実施例2の説明を援用すると共に実施例2と同一符号をもって示す。
【0026】
このように連結用孔31a,31bを形成した土木用ネット状シート30は、これを図9に示すように半裁すると、図10に示すように、他の土木用ネット状シート20と連結紐Aにて連結することができるので、重ね合わせの部分がなくフラットに敷設でき、また、残余の半裁部を利用すれば材料費が節約できる利点がある。
【実施例4】
【0027】
図11は実施例4に係る土木用ネット状シートの表面図、図12は実施例4に係る土木用ネット状シートを縦横に重ねた合わせた状態を示す表面図、図13は実施例4に係る土木用ネット状シートの使用状態を示す斜視図である。
【0028】
実施例4における土木用ネット状シート40は、実施例1における土木用ネット状シート10の幅を半分に縮小したものであって、幅約1m、長さ約4mの長方形状をなすものである。なおこの長さは50m程度まで延長してもよい。したがって、実施例1と同様の同一の箇所については、実施例1の説明を援用すると共に実施例1と同一符号をもって示す。
【0029】
この土木用ネット状シート40を、図12に示すように、十字型に縦横に重ね合わせ、図13に示すように、中央の重ね合わせ領域40Aを除く左右上下の張り出し部40B〜40E起立させ、隣接する連結用孔11をロープAで連結すると箱状に組み立てることができる利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明に係る繊維系又は樹脂系ジオグリッドは、軟弱地盤や急勾配盛土の安定強化、建造物や空港滑走路の地盤安定化のために、地面に敷設する敷網工法において使用する他、河川や海洋の護岸工事、造成工事、根固め工事あるいは洗掘防止工事(浸食防止工事)、護岸緑化工事、橋脚の洗掘防止工事、緊急対策(災害復旧)補強盛土などの土木工事に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施例1に係る土木用ネット状シート体の表面図である。
【図2】実施例1に係る土木用ネット状シート体の部分拡大斜視図である。
【図3】実施例1に係る土木用ネット状シート体の部分拡大端面図である。
【図4】実施例1に係る土木用ネット状シート体の使用状態を示す表面図である。
【図5】実施例2に係る土木用ネット状シート体の表面図である。
【図6】実施例2に係る土木用ネット状シート体の使用状態を示す表面図である。
【図7】実施例2に係る土木用ネット状シート体の使用状態における端面図である。
【図8】実施例3に係る土木用ネット状シート体の表面図である。
【図9】実施例3に係る土木用ネット状シートを半裁した状態を示す表面図である。
【図10】実施例3に係る土木用ネット状シートを他の土木用ネット状シートに連結した状態を示す表面図である。
【図11】実施例4に係る土木用ネット状シート体の表面図である。
【図12】実施例4に係る土木用ネット状シートを縦横に重ねた合わせた状態を示す表面図である。
【図13】実施例4に係る土木用ネット状シートの使用状態を示す斜視図である。
【図14】従来の土木用ネット状シート体の表面図である。
【図15】従来の土木用ネット状シート体の部分拡大斜視図である。
【図16】従来の土木用ネット状シート体の部分拡大端面図である。
【符号の説明】
【0032】
10・・・・土木用ネット状シート
10a・・・ネット部
10b・・・側部補強帯域
11・・・・連結用孔
A・・・・・ロープ
10c・・・中央縦補強帯域
10d・・・中央横補強帯域
20・・・・土木用ネット状シート
21・・・・連結用孔
30・・・・土木用ネット状シート
31a・・・連結用孔
31b・・・連結用孔
40・・・・土木用ネット状シート
40A・・・重ね合わせ領域
40B〜40E・・・張り出し部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲の補強帯域と内方のネット部とからなり、該補強帯域は、ネット部の形成と共に一体に形成されたものであることを特徴とする繊維系又は樹脂系ジオグリッド。
【請求項2】
ネット部の縦方向又は横方向のいずれか一方又は両方に、ネット部の形成と共に一体に適宜の間隔をおいて形成された補強帯域を有していることを特徴とする請求項1に記載の繊維系又は樹脂系ジオグリッド。
【請求項3】
補強帯域がネット部のメッシュより目の細かい高密度メッシュから構成され、該高密度メッシュを合成樹脂によりコーティングすると共に該高密度メッシュのグリッド交差部を接着してなることを特徴とする請求項1又は2に記載の繊維系又は樹脂系ジオグリッド。
【請求項4】
補強帯域が合成樹脂フィルムのラミネート加工により形成されてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の繊維系又は樹脂系ジオグリッド。
【請求項5】
補強帯域に、経糸及び緯糸の配置により連結用孔を形成するか、又は、打ち抜き又は縫製により連結用孔を補強帯域形成と同時に形成してなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の繊維系又は樹脂系ジオグリッド。
【請求項1】
周囲の補強帯域と内方のネット部とからなり、該補強帯域は、ネット部の形成と共に一体に形成されたものであることを特徴とする繊維系又は樹脂系ジオグリッド。
【請求項2】
ネット部の縦方向又は横方向のいずれか一方又は両方に、ネット部の形成と共に一体に適宜の間隔をおいて形成された補強帯域を有していることを特徴とする請求項1に記載の繊維系又は樹脂系ジオグリッド。
【請求項3】
補強帯域がネット部のメッシュより目の細かい高密度メッシュから構成され、該高密度メッシュを合成樹脂によりコーティングすると共に該高密度メッシュのグリッド交差部を接着してなることを特徴とする請求項1又は2に記載の繊維系又は樹脂系ジオグリッド。
【請求項4】
補強帯域が合成樹脂フィルムのラミネート加工により形成されてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の繊維系又は樹脂系ジオグリッド。
【請求項5】
補強帯域に、経糸及び緯糸の配置により連結用孔を形成するか、又は、打ち抜き又は縫製により連結用孔を補強帯域形成と同時に形成してなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の繊維系又は樹脂系ジオグリッド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2009−68185(P2009−68185A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−235142(P2007−235142)
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【出願人】(390039114)株式会社田中 (21)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【出願人】(390039114)株式会社田中 (21)
【Fターム(参考)】
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