説明

繊維補強された鉄筋

合成鉄筋は、繊維ストランドの粗糸の補強用材料、樹脂浴供給、及び樹脂浴を通過した樹脂浸漬補強用材料を引き抜くプーラーを供給することにより形成される。補強用繊維は鉄筋に対し縦方向の内側の粗糸を備え、この内側の粗糸は少なくとも1つの粗糸の第1及び第2の螺旋形の巻き付けを有する。この少なくとも1つの粗糸は、内側の粗糸の周囲を巻き付けの反対方向に巻き付けている。樹脂は両方の内側の粗糸及び前記複数の巻き付けを介して外面へ浸透する。外面において、硬化する間、前記内側の粗糸はその一部が前記第1及び第2の巻き付け又は複数の巻き付けの間に露出していると共に、前記巻き付け又は複数の巻き付けによりかけられた張力によって外側に隆起し、前記鉄筋の前記外面の要素を決定する前記隆起した部分はこのように起伏を有すると共に、材料が補強されるように噛み合うよう露出され、これにより補強される前記材料及び前記内側の粗糸の間の縦荷重を移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は繊維補強された鉄筋(reinforcing bar)、すなわち「鉄筋(rebar)」の製造方法に関する。
本明細書で用いられる「鉄筋」という用語は中空、すなわち管状である棒及びロッドを含むことを意図する。その外面は円形断面であることが好ましいが、必ずしもそうである必要はない。ロッドは比較的短い要素を含む任意の長さであることが可能であるので、時に「ボルト」と称されることもある。
【背景技術】
【0002】
建築、海洋、採鉱及びその他における繊維強化プラスチック(FRP)のロッドの使用は長期にわたって増加している。これはFRPが以下の多くの利点を有するためである。その利点とは例えば、非(化学物質又は海水による)腐食性、非金属性(又は非磁性)及び非導電性であること、鉄筋の約2から3倍の引張強度を有すると共に鉄筋の4分の1の重さであること、スチールロッドに比べて、コンクリート又は岩石とより適合する熱膨張率を有すること等である。鉄筋のほとんどは引き抜き成形法により作られ、線形又は均一の外形を有する。従来の引き抜き成形法とは、補強材(繊維又は単繊維)の束を元から引っ張ること、補強材を開放タンク内の樹脂浴を通過させることにより、繊維を湿らせると共に(好ましくは熱硬化可能なポリマー樹脂で)浸透させ、樹脂で湿り樹脂が浸透した束を成形型から取り出して繊維束を整列させると共に正確な断面構造にさせること、そして単繊維上の張力を維持すると同時に、樹脂を型内で硬化させることである。繊維は、引き抜き成形法の間に切断されたり或いは刻まれたりすることなく完全に伸びているため、結果としてできた製品は通常、縦方向(すなわち単繊維が引っ張られる方向)の非常に高い抗張力を有する。例示的な引き抜き技術は特許文献1から4に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
FRPの均一な特性又は線形のロッドにより、様々な産業上の利用において複数の利点がもたらされる。ロッドは耐食性を有すると共に、高抗張力を有し及び重量削減がなされている。過去において、ねじ山を有するスチールロッド又はボルトは技術的手法において幅広く用いられていた。しかしながら、スウェーデンで行われたモルタルでグラウトされたスチールボルトの長期的な観察によると、グラウト材料の質は観察対象の50%において十分ではなく、より多くのボルトが深刻な腐食に見舞われていたことがわかった(Hans K. Helfrichによる文献参照)。スチールボルトとは対照的に、FRPボルトは耐食性を有すると共に一時的な支持及び内巻きに同時に用いられることができる。また、FRPロックボルトを用いたトンネルの履工1回に掛かる工事費は、従来の場所打ちコンクリートを用いたトンネルの履工の費用よりも33%から50%安い(Amberg Ingenieurburo AG,(チューリッヒ)の文献参照)。このFRPロックボルトのシステムは耐久性を有すると共に、構造体をその寿命の間内巻きの一部として支持する。さらにFRPボルト及びアンカーはまた耐海水性を有するため、海岸(例:陸上又は海上の堤防)におけるコンクリート構造体を補強するための優れた解決法として証明されている。一般に、ファイバーグラスロッド/ボルトは既に重要なニッチであると共に、採鉱及び建築産業にとってより重要な製品であるであろう。これらの産業が必要とするものは、費用対効果の優れた長期的な信頼性をもたらす構造補強である。合成鉄筋はほぼ永久的に持続するため、これらの産業にとって修復及び維持に掛かる費用を削減することが重要である。
【0004】
採鉱産業は採鉱シャフト又はトンネルのルーフボルト用の合成ロッドを必要とする。これらのロッドは通常手で持ち運びされると共に採鉱トンネルの頭上に設置される。このため、ファイバーグラスが、現在幅広く用いられているスチール鉄筋の4分の1の重量であると共に強度はその2倍であるという点において有益である。ファイバーグラスロッドはまた採鉱装置を傷つけない。建設業界において、例えば橋、道路、堤防及び建造物等のスチール鉄筋の補強物は幅広く用いられており、ほとんどのスチール鉄筋は耐用年数の数年後に腐食している。一般に、スチール鉄筋を用いた構造体は一定期間後、しばしば破壊される。したがって、近年、建設業界で耐食性を有する合成鉄筋が増加している。
【0005】
非均一特性又は非線形のねじ山を有するロッドもまた、様々な産業上の利用において必要とされる。例えば、ねじ山を有するFRPロッド及び関連するナットは、採鉱産業においてはロックボルトシステム(例:トンネルのルーフボルト)として、建設業界においてはねじ山を有する補強鉄筋構造体(例:架橋工事)として、また海洋構造体で堤防のボルトシステムとして用いられている。
【0006】
現在の鉱業技術によるねじ山を有する合成ロッドは2つの種類からなる。
(1)外面に切削ねじを有する引き抜き成形されたロッド
(2)芯の外側がねじを形成するように成型されたプラスチック材料と共に繊維の粗糸の芯を有する引き抜き成形されたロッド
【0007】
種類(1)において、完全に硬化した後の合成鉄筋の表面を機械加工することの問題点は、表面の深い所にある繊維が断片に切断されていることである。繊維は短い長さに切断されると、その高い抗張力の利点が失われてしまう。そしてねじ山の強さは、繊維のせん断強さよりも非常に小さい硬化した樹脂のせん断強さに依存する。したがって、鉄筋のねじが芯から失われるため鉄筋は張力を受けた状態で用いられることはできなかった。鉄筋は特別に設計されたナットを用いる。このナットは、鉄筋上に負荷が置かれた場合鉄筋を圧迫して保持力を与えるものである。鉄筋にねじ山を有するナットは、ナット及びねじ表面の間のたるみを張るのに十分な抵抗力を有している。したがって、ナットはプレテンションなしで用いられる。
【0008】
種類(2)において、鉄筋はファイバーグラスの粗糸の芯及びねじ山表面が成型されたプラスチックを有している。この鉄筋は少量の縦荷重に耐えることのみ可能である。これは、成型されたプラスチックにより形成されたねじ山が、縦強度を有するファイバーグラス補強に乏しいためである。例えばMarshall Industries Composites IncのC-BARカタログ(1996年)に示される他の鉄筋は、繊維補強されたポリエステルの芯及びウレタンで修飾されたビニールエステル外皮の合成であり、鉄筋の表面にねじ山特性を有さない。
【0009】
【特許文献1】米国特許第3,793,108号(Goldworthy)
【特許文献2】米国特許第4,394,338号(Fuwa)
【特許文献3】米国特許第4,445,957号(Harvey)
【特許文献4】米国特許第5,174,844号(Tong)
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、採鉱、建築及び他の産業において、上記の段落に記載の種類(1)及び(2)の不利益を有さずにロッド及びナットに完全なねじ山が付いた外観を有する合成ロッド及びナット固定システムが必要とされている。
【0011】
本発明の目的の一つは、繊維補強された樹脂から形成された新規の鉄筋を提供することである。
本発明の第1の態様によれば、鉄筋に対して縦方向に配列された補強用繊維の一連の内側の粗糸と、前記内側の粗糸の周りに第1の巻き付け方向に巻かれた少なくとも一つの粗糸の第1の螺旋形の巻き付け或いは複数の巻き付けと、前記内側の粗糸の周りに第2の逆の巻き付け方向に巻かれた少なくとも一つの粗糸の第2の螺旋形の巻き付け或いは複数の巻き付けと、両方の前記内側の粗糸及び前記複数の巻き付けを介して浸透することにより結合した構造体を形成する樹脂を備える鉄筋であって、前記鉄筋は、前記鉄筋の長さの少なくとも大部分に沿って延出する外面を有し、前記外面において、硬化する間、前記内側の粗糸はその一部が前記第1及び第2の巻き付け又は複数の巻き付けの間に露出していると共に、前記巻き付け又は複数の巻き付けによりかけられた張力によって外側に隆起しており、前記鉄筋の前記外面の要素を決定する前記隆起した部分はこのように起伏を有すると共に、材料が補強されるように噛み合うよう露出され、これにより補強される前記材料及び前記内側の粗糸の間の縦荷重を移動させることを特徴とする鉄筋が提供される。
【0012】
好ましくは、前記樹脂が前記内側の粗糸及び前記巻かれた粗糸の前記外面上に露出している。
【0013】
好ましくは、前記外面が、前記樹脂の前記外面に取り付けられた接着された外部滑り止め要素を含まない。
【0014】
好ましくは、前記外面において、前記内側の粗糸及び巻かれた粗糸が外圧を受けない一方で前記樹脂が硬化されることにより、前記樹脂は硬化するにつれ、前記外面の形が前記内側の粗糸及び巻かれた粗糸の形によってのみ決定される。
【0015】
好ましくは、前記鉄筋が少なくとも一つの追加的な外面を有しており、前記外面において前記樹脂及び前記内側の粗糸及び前記巻かれた粗糸は圧縮され、対応する形をしたチャックと噛み合う多角形の断面を形成し、前記鉄筋は前記チャックにより前記鉄筋の縦軸周囲を回転可能である。
【0016】
本発明の第2の態様によれば、鉄筋に対して縦方向に配列された補強用繊維の一連の内側の粗糸と、前記内側の粗糸の周りに第1の巻き付け方向に巻かれた少なくとも一つの粗糸の第1の螺旋形の巻き付け或いは複数の巻き付けと、前記内側の粗糸の周りに第2の逆の巻き付け方向に巻かれた少なくとも一つの粗糸の第2の螺旋形の巻き付け或いは複数の巻き付けと、両方の前記内側の粗糸及び前記複数の巻き付けを介して浸透することにより結合した構造体を形成する樹脂を備える鉄筋であって、前記鉄筋は、前記鉄筋の全長に沿って外面を有し、前記外面において、硬化する間、前記内側の粗糸はその一部が前記第1及び第2の巻き付け又は複数の巻き付けの間に露出していると共に、前記巻き付け又は複数の巻き付けによりかけられた張力によって外側に隆起しており、前記鉄筋の前記外面の要素を決定する前記隆起した部分はこのように起伏を有すると共に、材料が補強されるように噛み合うよう露出され、これにより補強される前記材料及び前記内側の粗糸の間の縦荷重を移動させることを特徴とする鉄筋が提供される。
【0017】
本発明の第3の態様によれば、鉄筋に対して縦方向に配向された補強用繊維の一連の内側の粗糸と、前記内側の粗糸の周りに第1の巻き付け方向に巻かれた少なくとも一つの粗糸の第1の螺旋形の巻き付け或いは複数の巻き付けと、前記内側の粗糸の周りに第2の逆の巻き付け方向に巻かれた少なくとも一つの粗糸の第2の螺旋形の巻き付け或いは複数の巻き付けと、両方の前記内側の粗糸及び前記複数の巻き付けを介して浸透することにより結合した構造体を形成する樹脂を備える鉄筋であって、前記鉄筋は、前記鉄筋の前記全長の第1の部分に沿って延出する第1の外面を有し、前記鉄筋は、前記鉄筋の前記全長の第2の部分に沿って延出する第2の外面の少なくとも一部を有し、少なくとも一つの第2の外面において、前記樹脂及び前記内側の粗糸及び前記巻かれた粗糸は圧縮され、対応する形をしたチャックと噛み合う多角形の断面を形成し、前記鉄筋は前記チャックにより前記鉄筋の縦軸周囲を回転可能であることを特徴とする鉄筋が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る鉄筋の一部の側面図である。
【図2】図1の2−2線に沿った断面図である。
【図3】図2の断面図と同じ断面図の拡大図である。
【図4】図1の4−4線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1において示される鉄筋は通常(10)と表示される。鉄筋(10)は、鉄筋の長さの大部分に沿って延出する第1部分(11)と共に、鉄筋の長さの一部を延出させる第2部分(12)を有する。通常、鉄筋は連続的な構造で形成されているので、第1及び第2部分は交互に繰り返される。第2部分の長さは通常、主要部分(1)の長さと比較して短い部分のみを含むので、例えば主要部分の長さが12フィートであるとき、第2部分はたった6インチである。
【0020】
鉄筋は樹脂材料(14)からのみ形成される。樹脂材料(14)は、縦方向の補強用繊維(15)及び巻き付け補強用繊維(16)、(17)を含む補強用繊維の領域に浸透する。
【0021】
縦方向の補強用繊維(15)は構造体の主な容積を占め、通常、繊維含量は縦方向の繊維が90から97%、及び巻き付け繊維が3から10%で構成される。この場合、樹脂含量は略20から30重量%程度とすることができる。
【0022】
部分(11)の領域内の構造体は、いかなる繊維も引き抜き成形によって圧縮されることなく形成される。したがって、縦方向の繊維(15)によって形成された内部の芯或いは外側の巻き付け(16)、(17)も金型構造を通過しないので、構造体が形成される時、自分自身の位置が材料内の張力によって決定されるように配する必要がない。
【0023】
樹脂は熱がなくとも硬化する2つの樹脂であることができるが、例えばマイクロ波加熱、強制空気加熱、赤外線加熱、高周波加熱、又は誘導加熱等の多数の利用可能な加熱技術の一つにより加熱される熱硬化性樹脂がより好ましい。この加熱技術において、少なくとも一つの金属繊維が構造体に含まれ電磁エネルギを吸収する。したがって、構造体上の加熱装置に接触せずに樹脂の硬化を達成するよう熱が構造体に加えられる。このようにして、第1部分(11)の繊維はその張力に依存して自由に配置され、樹脂が縦方向の繊維及び巻き付け繊維を通過して延出するよう樹脂内に配置される。
【0024】
樹脂(14)が外面(18)の外側へ延出すると共に繊維の全てに浸透するというこの状況を達成するため、縦方向の繊維及び巻き付け繊維の両方は、好ましくは樹脂浴法又は浸漬法を用いて湿らされることが好ましい。これにより形成システムに入る前に繊維は完全に樹脂で被覆される。この形成システムは一般に上記に示されるものであり、より詳細は本発明者による上記米国特許に示されており、その開示は参照することにより本明細書に組み込まれることとする。
【0025】
繊維を湿らすことにより、樹脂が外面(18)の全構造体に浸透することが確実となる。
【0026】
縦方向の繊維の芯が通過する任意の形の金型を供給することにより、いかなる圧縮も生じない。これにより、巻き付け繊維がこれらの縦方向の繊維を内側に圧迫すると共に部分(19)内の縦方向の繊維を隆起させるよう接触する縦方向の繊維のこれらの部分に、巻き付け繊維(16)及び(17)が圧力をかけることを確実にする。したがって、繊維の夫々の巻き付けられた小片の間に、外側へ圧迫されると共に隆起した縦方向の繊維の一部が存在するため、縦方向の繊維の一部は、巻き付け繊維の外面が好ましくは僅かに盛り上がっている部分へ突出する。
【0027】
もちろん巻き付け繊維は螺旋形の巻き付け動作によって縦方向に間隔を有しているので、巻き付け繊維の幅は隆起した中間部分(19)の幅よりも狭い。
【0028】
一般に、各方向における巻き付け繊維は略1から3インチ程度である。しかしながら、縦方向の繊維が適切に制御される場合、及び巻き付けの間の隆起を確実にするのに十分な間隔がある場合、幅がより広い又はより狭い間隔が用いられることができる。
【0029】
巻き付け繊維は、一回のみ開始する巻き付けプロセスにおいて単一の粗糸として巻かれるか、或いは複数回開始する巻き付けプロセスに応用される複数の粗糸として巻かれる。このような複数回開始するプロセスにおいて、隣り合う多数の粗糸が3から10の範囲で存在する。巻き付け位置における粗糸の数又は粗糸の厚さは、芯の直径に依存して変化することができる。
【0030】
巻き付け動作は両方向で起こるので、たとえば(20)において示されるように交差すると、巻き付け繊維は互いに重なり合う。このようにして、隆起した部分は通常正面から見るとダイアモンド型であると共に、巻き付け繊維の巻き付け動作によって上下部分において圧迫されている。したがって、隆起部分(19)は巻き付け繊維によって個々に分離しており、さらに縦方向の繊維は、隆起部分の上部及び下部を巻き付けることにより構造体内に適切に収容されると共に保持される。
【0031】
巻き付け又は複数の巻き付けを両方向に対照的にもたらすことにより、内側の縦方向の粗糸が収容及び配置されやすくなり、また張力がかけられている場合でも縦方向に維持されやすくなる。したがって、縦方向における縦方向の繊維の最大限の力は維持されると共に縦方向の繊維がねじれるという任意の性質によって減少したり損なわれることがない。縦方向の繊維のそのようなねじれは、異なる繊維に荷重を連続的にかけることにより連続的な破損に繋がる強度を著しく減少させる。さらに、反対方向への巻き付けは、両方向のロッドに適用されるトルクに対応する。
【0032】
隆起部分(19)は外面(18)上にこのように存在し、内部に鉄筋が埋め込まれる材料と噛み合う。したがって、補強される材料がコンクリートの場合、コンクリートは鉄筋の周囲を固定すると共に隆起部分(19)に噛み合う。したがって、コンクリートから鉄筋への縦荷重は、巻き付け部分(16)及び(17)だけでなく隆起部分(19)へ移動される。巻き付け部分は、縦方向に対する自身の角度のため、縦方向及び連続的な縦方向の繊維よりも縦方向の張力に対応する能力が低い。したがって、荷重を隆起部分(19)へ縦方向に移動させることにより、荷重が縦方向の繊維へ移動すると共に、縦方向に移動することが可能或いは外面(18)から除去されることが可能な要素への移動が避けられる。隆起部分(19)は縦方向の繊維の一部であるため、縦方向への移動ができないことはもちろんである。
【0033】
さらに外面は、このような鉄筋の外面に通常付着する砂粒又は砂等の追加的な接着突出要素を有する必要がない。
【0034】
樹脂が縦方向の繊維及び巻き付け繊維を通過して外面(18)へ浸透するという事実により、巻き付け繊維が構造体内に効果的に接着されることが確実になる。
【0035】
第2部分(12)は、クランプ金型内の鉄筋の一部を締付けることによって形成されるように、鉄筋に沿って周期的に形成される。クランプ金型は前進する時構造体と共に移動可能である。或いはその移動は、締め付け位置において締め付け動作が生じる及び硬化が生じると同時に停止することができる。通常、締め付け位置の形成は、鉄筋の残りの部分が加熱部分へ移動して硬化作用を完了する前に起こる。クランプ金型は四角形等の多角形の内面を有すると共に、巻き付け繊維及び縦方向の繊維を圧迫して図4に示すような所望の外形(22)に形成する。締め付け動作は繊維を共に圧迫し、構造体から樹脂を圧迫するため断面領域を減少させる。図4に示す通り、縦方向の繊維は締め付け部分を通過して延出し、また巻き付け繊維も締め付け部分を通過して延出する。このように、巻き付けの両方向における巻き付け繊維は、多角形の第2部分(12)で構造体内に締め付けられる。
【0036】
多角形の形状のもう一つの手段として、平らに圧縮された形状のような他の非円形の形状が用いられることも可能である。
【0037】
さらなるもう一つの手段として、表面の粗い鉄筋には繊維を貫通する穴が形成されることが可能であり、アンカーとの接続をもたらす。
【0038】
このように第2部分(12)は形成されるので、鉄筋はチャック又は他の締め付け要素により捕捉される。これにより、鉄筋は特定の状況において分離していると同時に、軸を中心に回転可能である。繊維(16)及び(17)の巻き付けにより、第2部分(12)における回転が、これら巻き付け部分(16)及び(17)によって鉄筋の全長の至るところにあるトルクに伝わる。
【0039】
この種の配置の利用の一つの例として、鉄筋は、採鉱場所で岩石に掘削された穴及び樹脂で充填された掘削された穴へ挿入される。第2部分(12)を捕捉する鉄筋の回転及び第1部分(11)の回転により生じる樹脂攪拌動作により、樹脂は隆起部分(19)により生じる効果的な攪拌動作中に周辺の穴を通過し拡散される。したがって、鉄筋は掘削された穴の内部の場所に接着し、例えば鉱山の最高部領域にある採鉱構造体の補強物として作用する。
【0040】
この種の補強用鉄筋の他の使用法として、ドリル先端部を一方の部分(12)に取り付ける。この鉄筋は他方の部分(12)に捕捉される。これにより、鉄筋に穴を掘削させると同時に、掘削された穴に鉄筋を直接打ち込むドリル動作を引き起こすドリル先端部と共に鉄筋が回転することが可能となる。そして鉄筋は適所に留まり、ドリル先端部は完全に使い捨て可能な種類から選択されるため、穴の中に廃棄されることが可能である。
【0041】
再び、樹脂内の巻き付け繊維(16)及び(17)が存在することにより、多角形部分(12)及び鉄筋の主要部分の間が直接接続される。これにより、多角形部分及び主要部分(11)間での荷重の移動が可能となる。
【0042】
本明細書中に記載の配置は、コンクリート内の鉄筋を補強するパラメータの計算に用いられる要因である埋め込み強度を向上させる点において、著しく有利であることが示された。したがって、外面の形状(両方向における巻き付け、縦方向の螺旋構造の隆起)により、接着材料(コンクリート又はエポキシ樹脂)とのより高い接着性がもたらされる。このより高い機械的接着は高い埋め込み強度に変化する。
【0043】
本明細書中に記載の配置は、亀裂の幅の制御を向上させる点において、著しく有利であることが示された。亀裂の幅の計測は、亀裂の幅の要因を小さく保とうとする意図と共に、コンクリート内の鉄筋を補強するパラメータの計算に用いられるもう一つの要因である。亀裂制御の強化を設計する際、この製品の性質及びその高い埋め込み強度により、より小さい接着依存性係数を利用可能である(例えば、砂被覆鉄筋は0.8の係数を用い、滑らかに引き抜き成形された鉄筋はより高い係数を用いる)。より低い接着依存性係数により、亀裂の幅がより小さくなり、或いは同じ亀裂の幅に必要な補強がより少なくて済む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋に対して縦方向に配列された補強用繊維の一連の内側の粗糸と、
前記内側の粗糸の周りに第1の巻き付け方向に巻かれた少なくとも一つの粗糸の第1の螺旋形の巻き付け或いは複数の巻き付けと、
前記内側の粗糸の周りに第2の逆の巻き付け方向に巻かれた少なくとも一つの粗糸の第2の螺旋形の巻き付け或いは複数の巻き付けと、
両方の前記内側の粗糸及び前記複数の巻き付けを介して浸透することにより結合した構造物を形成する樹脂を備える鉄筋であって、
前記鉄筋は、前記鉄筋の長さの少なくとも大部分に沿って延出する外面を有し、
前記外面において、硬化する間、前記内側の粗糸はその一部が前記第1及び第2の巻き付け又は複数の巻き付けの間に露出していると共に、前記巻き付け又は複数の巻き付けによりかけられた張力によって外側に隆起しており、
前記鉄筋の前記外面の要素を決定する前記隆起した部分はこのように起伏を有すると共に、材料が補強されるように噛み合うよう露出され、これにより補強される前記材料及び前記内側の粗糸の間の縦荷重を移動させることを特徴とする鉄筋。
【請求項2】
前記樹脂が前記内側の粗糸及び前記巻かれた粗糸の前記外面上に露出していることを特徴とする請求項1記載の鉄筋。
【請求項3】
前記外面が、前記樹脂の前記外面に取り付けた接着された外部滑り止め要素を含まないことを特徴とする請求項2記載の鉄筋。
【請求項4】
前記外面において、前記内側の粗糸及び巻かれた粗糸が外圧を受けない一方で前記樹脂が硬化されることにより、前記樹脂は硬化するにつれ、前記外面の形が前記内側の粗糸及び巻かれた粗糸の形によってのみ決定されることを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項に記載の鉄筋。
【請求項5】
前記鉄筋が少なくとも一つの追加的な外面を有しており、前記外面において前記樹脂及び前記内側の粗糸及び前記巻かれた粗糸は圧縮され、対応する形をしたチャックと噛み合う多角形の断面を形成し、前記鉄筋は前記チャックにより前記鉄筋の縦軸周囲を回転可能であることを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項に記載の鉄筋。
【請求項6】
鉄筋に対して縦方向に配列された補強用繊維の一連の内側の粗糸と、
前記内側の粗糸の周りに第1の巻き付け方向に巻かれた少なくとも一つの粗糸の第1の螺旋形の巻き付け或いは複数の巻き付けと、
前記内側の粗糸の周りに第2の逆の巻き付け方向に巻かれた少なくとも一つの粗糸の第2の螺旋形の巻き付け或いは複数の巻き付けと、
両方の前記内側の粗糸及び前記複数の巻き付けを介して浸透することにより結合した構造物を形成する樹脂を備える鉄筋であって、
前記鉄筋は、前記鉄筋の全長に沿って外面を有し、
前記外面において、硬化する間、前記内側の粗糸はその一部が前記第1及び第2の巻き付け又は複数の巻き付けの間に露出していると共に、前記巻き付け又は複数の巻き付けによりかけられた張力によって外側に隆起しており、
前記鉄筋の前記外面の要素を決定する前記隆起した部分はこのように起伏を有すると共に、材料が補強されるように噛み合うよう露出され、これにより補強される前記材料及び前記内側の粗糸の間の縦荷重を移動させることを特徴とする鉄筋。
【請求項7】
鉄筋に対して縦方向に配列された補強用繊維の一連の内側の粗糸と、
前記内側の粗糸の周りに第1の巻き付け方向に巻かれた少なくとも一つの粗糸の第1の螺旋形の巻き付け或いは複数の巻き付けと、
前記内側の粗糸の周りに第2の逆の巻き付け方向に巻かれた少なくとも一つの粗糸の第2の螺旋形の巻き付け或いは複数の巻き付けと、
両方の前記内側の粗糸及び前記複数の巻き付けを介して浸透することにより結合した構造物を形成する樹脂を備える鉄筋であって、
前記鉄筋は、前記鉄筋の前記全長の第1の部分に沿って延出する第1の外面を有し、
前記鉄筋は、前記鉄筋の前記全長の第2の部分に沿って延出する第2の外面の少なくとも一部を有し、
少なくとも一つの第2の外面において、前記樹脂及び前記内側の粗糸及び前記巻かれた粗糸は圧縮され、対応する形をしたチャックと噛み合う多角形の断面を形成し、前記鉄筋は前記チャックにより前記鉄筋の縦軸周囲を回転可能であることを特徴とする鉄筋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−525197(P2010−525197A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504394(P2010−504394)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【国際出願番号】PCT/CA2007/002259
【国際公開番号】WO2008/128314
【国際公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(509294427)
【Fターム(参考)】