説明

繋留牛舎の乳牛飼養管理方法

【課題】 データの有効活用を図るとともに、搾乳処理及び給餌処理、更にこれらの段取等における能率性及び利便性を高める。
【解決手段】 搾乳時に、搾乳機コントローラ11により、少なくとも牛床番号に対応した乳量データを得るとともに、搾乳機コントローラ11及び給餌機コントローラ41に対して相互通信可能な管理コントローラ2により、少なくとも各乳量データに基づく固有の給餌量データを求め、給餌時に、給餌機コントローラ41により、少なくとも乳牛C…に取付けたIDタグ44t…から牛番を読取ることにより各乳牛C…を識別し、かつ各乳牛C…に対応する給餌量データを用いて給餌処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳牛が係留された各ストールに対して搾乳機を自動で移動させて搾乳を行うとともに、各ストールに対して給餌機を自動で移動させて給餌を行う繋留牛舎の乳牛飼養管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、繋留牛舎(スタンチョン牛舎)では、多数のストールが配列するストール群が設置され、各ストールに乳牛が係留されるとともに、ストール群に沿って搾乳システム及び給餌システムが設置される。そして、搾乳システムでは各ストールに搾乳機を自動で移動させて搾乳を行うとともに、給餌システムでは各ストールに給餌機を自動で移動させて給餌を行う。
【0003】
従来、このような繋留牛舎に設置される搾乳システムとしては、特許文献1で開示される搾乳ユニットの自動搬送装置が知られている。この自動搬送装置(搾乳システム)は、乳牛を係留する複数のストールの配列方向に沿って配した主レール及びこの主レールから分岐してストール間に配した複数の分岐レールを有するガイドレール部を備えるとともに、搾乳ユニット(搾乳機)が予め設定した位置を通過したことを位置検出部により検出し、コントローラ(搾乳機コントローラ)により搾乳ユニット(搾乳機)の走行を制御するようにしたものであり、各ストールに対して搾乳機を自動で移動させて搾乳を行うことができる。また、この種の搾乳システムでは、乳量等の搾乳データを管理する必要があり、通常、特許文献2に開示されるような搾乳管理システムによる搾乳データの管理が行われている。なお、同文献2に開示される搾乳管理システムは、ミルクパイプラインのミルクタップ側に被識別部を設け、かつ搾乳ユニットのディストリビュータ側に、被識別部を検出して牛床を識別する識別部とこの識別部により識別した識別データ及び搾乳に係わる搾乳データを一緒に記憶する記憶部とを有する制御ユニットを設けるとともに、記憶部に記憶したデータを受信して記憶する送受信ユニットを設けたものである。
【0004】
一方、このような繋留牛舎に設置される給餌システムとしては、特許文献3に開示される自動給餌装置が知られている。この自動給餌装置は、牛舎内に設置されたスタンチョン群に沿って上方に配設されたH型鋼などでなるレールと、このレールに走行装置を介して進退自在に吊下げられた給餌装置本体(給餌機)と、ビータ部と、飼料ケース部と、混合飼料供給部により構成したものであり、各ストールに対して給餌機を自動で移動させて給餌を行うことができる。
【特許文献1】特開2002−330653号公報
【特許文献2】特開2001−45898号公報
【特許文献3】特開2003−92942号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した従来の搾乳システム及び給餌システムは、次のような解決すべき課題が存在した。
【0006】
第一に、搾乳システムと給餌システムは、その目的や働きが全く異なり、得られるデータも自ずと異なることから、それぞれのデータの相互利用、即ち、それぞれのデータをより有効に活用する観点からは必ずしも十分とは言えない。したがって、例えば、データの一部が不完全な場合であっても修正されないまま使用されてしまうなど、データの正確性、信頼性、更には安全性の観点からも更なる改善の余地がある。
【0007】
第二に、搾乳システムと給餌システムは、その基本的な目的や働きが異なるため、通常、異なるメーカーにより提供される場合も多い。したがって、従来の各システムでは、それぞれ独立して動作及び制御が行われ、一方のシステムが他方のシステムに影響を及ぼすことはほとんどないが、乳牛に対する総合的飼養管理の観点からは、乳牛に係わる各種情報の効率的利用が図れず、搾乳処理及び給餌処理、更にこれらの段取等における能率面や利便性などにおいて必ずしも十分であるとは言えない。
【0008】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した繋留牛舎の乳牛飼養管理方法の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る繋留牛舎Mの乳牛飼養管理方法は、上述した課題を解決するため、乳牛C…が係留された各ストールAc…に対して搾乳機コントローラ11を搭載した搾乳機10を移動させて搾乳を行うとともに、各ストールAc…に対して給餌機コントローラ41を搭載した給餌機40を自動で移動させて給餌を行うに際し、搾乳時に、搾乳機コントローラ11により、少なくとも牛床番号に対応した乳量データを得るとともに、搾乳機コントローラ11及び給餌機コントローラ41に対して相互通信可能な管理コントローラ2により、少なくとも各乳量データに基づく固有の給餌量データを求め、給餌時に、給餌機コントローラ41により、少なくとも乳牛C…に取付けたIDタグ44t…から牛番を読取ることにより各乳牛C…を識別し、かつ各乳牛C…に対応する給餌量データを用いて給餌処理を行うようにしたことを特徴とする。
【0010】
この場合、発明の好適な態様により、搾乳機10は自動で移動させることができる。一方、搾乳機コントローラ11は、管理コントローラ2から少なくとも乳牛C…の搾乳禁止に係わる搾乳禁止データを含む管理データDmを受信し、受信した管理データDmの少なくとも一部を搾乳機10に設けた表示部13に対して少なくとも視覚的に表示することができる。また、搾乳禁止データには、搾乳禁止に係わる乳牛C…に対して搾乳機10における搾乳開始スイッチ13sを不能にするための制御データを含み、搾乳機コントローラ11は、制御データを受信したなら搾乳開始スイッチ13sを不能にする制御を行うことができる。さらに、搾乳機コントローラ11は、牛床番号リーダ15により各牛床に対応して取付けたIDタグ15tから牛床番号を読取ることにより牛床番号データを得、この牛床番号データに対応した乳量データを含む被管理データDmaを管理コントローラ2に送信することができる。加えて、搾乳機コントローラ11は、管理コントローラ2から受信した管理データDmを修正するデータ修正機能Fcaを備え、被管理データDmaに修正した管理データDmを含ませることができる。他方、給餌機コントローラ41は、給餌時に、乳牛検出センサ43により乳牛C…の存在有無を検出するとともに、牛番リーダ44により乳牛C…に取付けたIDタグ44t…から牛番を読取り、乳牛検出センサ43が乳牛C…を検出し、かつ牛番リーダ44が牛番を読取れたことを条件に、読取れた牛番に対応する今回用の給餌量データを用いて給餌する第一制御処理,乳牛検出センサ43が乳牛C…を検出し、かつ牛番リーダ44が牛番を読取れないことを条件に、牛床番号に対応する前回の給餌量データに基づく釣り餌を投与する第二制御処理,又は乳牛検出センサ43が乳牛C…を検出せず、かつ牛番リーダ44が牛番を読取れないことを条件に、給餌しない第三制御処理,のいずれかの制御処理を行なうことができる。また、給餌機コントローラ41は、乳牛検出センサ43による乳牛C…の存在有無に対する検出結果及び牛番リーダ44による乳牛C…に取付けたIDタグ44t…に対する牛番の読取結果を含む被管理データDhaを管理コントローラ2に送信することができる。さらに、給餌機コントローラ41は、第二制御処理により釣り餌を投与した後、少なくとも所定期間は、牛番リーダ44による牛番の読取りを行い、この読取結果を含む被管理データDhaを管理コントローラ2に送信することができる。
【発明の効果】
【0011】
このような手法を用いた本発明に係る繋留牛舎Mの乳牛飼養管理方法によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0012】
(1) 搾乳時に、搾乳機コントローラ11により牛床番号に対応した乳量データを得るとともに、管理コントローラ2により各乳量データに基づく固有の給餌量データを求め、給餌時に、給餌機コントローラ41により乳牛C…に取付けたIDタグ44t…から牛番を読取ることにより各乳牛C…を識別し、かつ牛床番号に対応した給餌量データを用いて給餌処理を行うようにしたため、少なくとも搾乳システム側で得られるデータを給餌システム側で有効に活用することができる。
【0013】
(2) 搾乳機コントローラ11及び給餌機コントローラ41に対して相互通信可能な管理コントローラ2を利用するため、搾乳システム側と給餌システム側が異なるメーカーにより提供されるような場合であっても、総合的飼養管理の観点から乳牛C…に係わる各種情報の効率的利用を図ることができ、搾乳処理及び給餌処理、更にこれらの段取等における能率性及び利便性をより高めることができる。特に、管理コントローラ2は、牛床番号によって特定される個々の乳牛C…における乳量データを速やかに得れるため、給餌システム側で使用する給餌量データに迅速に反映させることができる。
【0014】
(3) 好適な態様により、搾乳機コントローラ11により管理コントローラ2から乳牛C…の搾乳禁止に係わる搾乳禁止データを含む管理データDmを受信し、受信した管理データDmの少なくとも一部を搾乳機10に設けた表示部13に視覚的に表示するようにすれば、作業者は、搾乳しようとする乳牛Cが搾乳禁止牛或いは搾乳注意牛であることを確実に知ることができるため、例えば、病体牛が誤って搾乳され、いわゆる事故乳が発生する不具合を回避することができる。
【0015】
(4) 好適な態様により、搾乳禁止データに、搾乳禁止に係わる乳牛C…に対して搾乳機10における搾乳開始スイッチ13sを不能にするための制御データを含ませれば、搾乳機コントローラ11は、制御データにより搾乳開始スイッチ13sを不能に制御できるため、搾乳禁止に係わる乳牛C…に対する搾乳を確実に防止することができる。
【0016】
(5) 好適な態様により、搾乳機コントローラ11に、管理コントローラ2から受信した管理データDmを修正するデータ修正機能Fcaを設け、被管理データDmaに修正した管理データDmを含ませれば、例えば、給餌システム側で得られる牛番に係わるデータ(情報)が不完全な場合であっても搾乳システム側で確認することにより確実かつ正確に修正することができるなど、データの正確性、信頼性、更には安全性をより高めることができる。したがって、搾乳システム側と給餌システム側のそれぞれから得られる異なるデータの相互利用、更にはデータの有効活用を図ることができる。
【0017】
(6) 好適な態様により、給餌機コントローラ41により、給餌時に、乳牛検出センサ43により乳牛C…の存在有無を検出するとともに、牛番リーダ44により乳牛C…に取付けたIDタグ44t…から牛番を読取り、前述した第一制御処理,第二制御処理又は第三制御処理のいずれかの制御処理を行なうようにすれば、乳牛C…の状態(態様)を考慮した的確な給餌処理を行うことができる。
【0018】
(7) 好適な態様により、給餌機コントローラ41により、乳牛検出センサ43による乳牛C…の存在有無に対する検出結果及び牛番リーダ44による乳牛C…に取付けたIDタグ44t…に対する牛番の読取結果を含む被管理データDhaを管理コントローラ2に送信するようにすれば、この読取結果を、搾乳機コントローラ11へ送信する管理データDmに含ませることにより、データ修正機能Fcaを利用したデータの修正を正確かつ確実に行うことができる。
【0019】
(8) 好適な態様により、給餌機コントローラ41により、第二制御処理により釣り餌を投与した後、少なくとも所定期間にわたって牛番リーダ44による牛番の読取りを行うとともに、この読取結果を含む被管理データDhaを管理コントローラ2に送信するようにすれば、例えば、管理コントローラ2にエラー情報を表示するなどにより、的確な対応策を講じることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明に係る最良の実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0021】
まず、本実施形態に係る乳牛飼養管理方法の理解を容易にするため、繋留牛舎Mにおける搾乳システムSm及び給餌システムShの全体構成について、図5〜図8を参照して説明する。
【0022】
図5及び図6は繋留牛舎Mの内部概要を示す。この繋留牛舎Mには多数のストールAc…が配列するストール群Aが設置され、各ストールAc…に乳牛C…が係留されている。そして、このストール群Aの上方に、ストール群Aに沿った搾乳システムSmが設置されるとともに、このストール群Aの前方に、ストール群Aに沿った給餌システムShが設置される。
【0023】
搾乳システムSmは、ストール群Aの上方に配したガイドレール部21を備える。ガイドレール部21は、ストール群Aに沿って配した主レール21mと、この主レール21mの中途位置から直角方向に分岐し、かつストールAc…間に配した複数の分岐レール21s…を備える。この場合、分岐レール21s…は、配列するストールAc…に対して一つ置き、即ち、相隣る分岐レール21sと21s…間に二つのストールAc…が入るように配する。また、分岐レール21s…の先端前方には、図6に示すミルクライン22及び真空ライン23を配置する。ミルクライン22及び真空ライン23はストール群Aに沿って配し、各分岐レール21s…に対向する位置には、後述するディストリビュータ28が接続するミルクタップ22t…を付設する。
【0024】
さらに、搾乳システムSmには、ガイドレール部21に沿って移動する一台又は二台以上の搾乳機10…を備える。搾乳機10は、ガイドレール部21に装填した自走式の移動部25と、この移動部25に搭載したコントローラ部26と、移動部25の両側に吊下げた左右一対の搾乳ユニット27p,27qと、移動部25の先端に設けたディストリビュータ28を備える。この場合、移動部25には駆動モータを用いた駆動部29を搭載し、この駆動部29はバッテリを内蔵するコントローラ部26により駆動制御される。なお、移動部25の停止や移動方向の制御は、移動部25に設けた検出部(検出センサ)がガイドレール部21の所定位置に配した被検出部を検出することにより行われる。搾乳ユニット27p(27qも同じ)は、パルセータ装置や自動離脱装置等を含むユニット本体30と、乳牛Cの各乳房Cb…に装着する四つのティートカップ31…と、ミルククロー32を備え、ミルクチューブにより、ティートカップ31…とミルククロー32とユニット本体30とディストリビュータ28間を接続するとともに、真空チューブにより、ティートカップ31…とユニット本体30とディストリビュータ28間を接続する。また、ミルククロー32とユニット本体30は離脱用ワイヤ33により接続する。図7に、ユニット本体30の前面から見た外観図を示す。このような搾乳システムSmの構成により、各ストールAc…に対して搾乳機10を自動で移動させて搾乳を行うことができる。
【0025】
一方、給餌システムShは、ストール群Aの前上方に配したガイドレール部51と、このガイドレール部51に沿って移動する給餌機40を備える。給餌機40は、図8に示すように、ガイドレール部51に装填した自走式の移動部52と、この移動部52に吊下げられた給餌機本体53を備える。給餌機本体53は、底部に計量器付の飼料排出機構54を有する飼料ケース部55を備える。飼料ケース部55は、粗飼料Baを収容する粗飼料収容部56と配合飼料Bbを収容する配合飼料収容部57を有する。そして、粗飼料収容部56の内部には、粗飼料繰出コンベア機構58及び繰出量を安定化させるビータ機構59を配設するとともに、配合飼料収容部57の内部には、スクリュ式の繰出オーガ機構60を配設する。
【0026】
また、飼料ケース部55の外側面にはコントローラ部61を配設するとともに、飼料ケース部55の下面にはバッテリを収容したバッテリボックス62を配設する。上述した移動部52は駆動モータを用いた駆動部63を搭載し、この駆動部63はコントローラ部61により駆動制御される。なお、移動部52の停止や移動方向の制御は、移動部52に設けた検出部(検出センサ)65が、ガイドレール部51の所定位置に設けた被検出部64…を検出することにより行われる。このような給餌システムShの構成により、各ストールAc…に対して給餌機40を自動で移動させて給餌を行うことができる。
【0027】
次に、本実施形態に係る乳牛飼養管理方法を実施できる乳牛飼養管理システム1を含む搾乳システムSm及び給餌システムShの制御系(電気系)の構成について、図5〜図9を参照して説明する。
【0028】
まず、搾乳システムSmの搾乳機10には搾乳機コントローラ11を搭載する。搾乳機コントローラ11は、図9に示すように、搾乳機コントローラ本体部81を備えるとともに、この搾乳機コントローラ本体部81に接続した、無線通信部12,乳量計14,乳汁センサ16及び牛床番号リーダ15を備える。搾乳機コントローラ本体部81は、コンピュータ機能を備え、メモリに格納した処理プログラムに基づく一連の制御処理(シーケンス制御処理)をはじめ、演算処理,記憶処理,通信処理及び入出力処理等の各種データ処理(コンピューティング処理)を実行する。この場合、搾乳機コントローラ本体部81及び無線通信部12は、図6に示すコントローラ部26に内蔵するとともに、乳量計14…及び乳汁センサ16…は、図6に示す各搾乳ユニット27p…(27q…)におけるユニット本体30…に内蔵する。乳量計14は搾乳時の乳量を検出する機能を有するとともに、乳汁センサ16は搾乳した乳汁の品質を検査する機能を有する。なお、この乳汁センサ16には乳汁の品質(特性)が正常か否かを検出する様々なセンサを適用できる。牛床番号リーダ15は、移動部25の先端に配設し、牛床番号を読取る機能を有する。したがって、図6に示すように、各分岐レール21s…の先端部には、各牛床のID(牛床番号)を設定したIDタグ15t…を配設する。これにより、牛床番号リーダ15は、IDタグ15t…に近接した際に各IDタグ15t…に設定した牛床番号を読取ることができる。
【0029】
また、図7に示すように、ユニット本体30の前面には操作パネル30fを設ける。操作パネル30fには、一般に搾乳処理作業において必要となる、デジタル表示器85,操作部86及び搾乳開始スイッチ13sを配するとともに、さらに、本実施形態に従って表示部13を設ける。この場合、デジタル表示器85には、リアルタイム乳量や搾乳時間をはじめ、特に、牛番,注意分房,前回乳量を数値で表示できるとともに、操作部86により、牛番入力,注意分房入力を行うことができる。表示部13は、後述する搾乳禁止データ(管理データDm)を視覚的に表示するものであり、操作パネル30fの上側に配した警報表示部13uと、操作パネル30fの下側に配した注意分房表示部13dからなる。警報表示部13uは、図7における抽出拡大図のように、第一警報ランプ88と第二警報ランプ89を有する。そして、第一警報ランプ88を点灯させることにより「搾乳注意」を報知し、かつ点滅させることにより「搾乳禁止」を報知するとともに、第二警報ランプ89を点灯させることによりデジタル表示器85に牛番を表示し、かつ点滅させることにより「通信エラー」を報知する。また、注意分房表示部13dは、各乳房Cb…単位の搾乳禁止を表示することができ、図7における抽出拡大図のように、乳牛Cを模したイラスト部90及びこのイラスト部90における四つの乳房位置に対応した四つの注意分房ランプ91a,91b,91c,91dを有する。そして、注意分房ランプ91a…を点灯させることにより「搾乳可」を報知するとともに、注意分房ランプ91a…を点滅させることにより「搾乳不可」を報知する。
【0030】
一方、給餌システムShの給餌機40には給餌機コントローラ41を搭載する。給餌機コントローラ41は、図9に示すように、給餌機コントローラ本体部95を備えるとともに、この給餌機コントローラ本体部95に接続した、無線通信部42,乳牛検出センサ43及び牛番リーダ44を備える。給餌機コントローラ本体部95は、コンピュータ機能を備え、メモリに格納した処理プログラムに基づく一連の制御処理(シーケンス制御処理)をはじめ、演算処理,記憶処理,通信処理及び入出力処理等の各種データ処理(コンピューティング処理)を実行する。この場合、給餌機コントローラ本体部95及び無線通信部42は、図8に示すコントローラ部61に内蔵するとともに、乳牛検出センサ43及び牛番識別リーダ44は、センサユニット96として一体に構成し、図8に示すように、飼料ケース部55におけるストールAc…側に対向する外側面であって、その前側下部における飼料排出機構54付近に配設する。乳牛検出センサ43は、反射型超音波センサ等を利用して乳牛C…の存在有無を検出する機能を有するとともに、牛番リーダ44は、牛番を識別する機能を有する。したがって、牛番リーダ44は、図6に示すように、各乳牛C…の耳に取付けた電子耳標(IDタグ)44t…に設定されたID(牛番)を読取ることができる。
【0031】
他方、繋留牛舎Mの内部又は外部に管理室Rcを設置し、この管理室Rcの内部に管理コントローラ2を設置する。管理コントローラ2は、図5に示すように、汎用コンピュータシステム100により構成することができる。汎用コンピュータシステム100は、コンピュータ本体部101と、このコンピュータ本体部101に接続したディスプレイ102,入出力部103及び無線通信部104を備える。コンピュータ本体部101は、CPU(処理部)101s,データメモリ101d及びプログラムメモリ101p等を含むコンピュータ機能を備え、プログラムメモリ101pに格納した処理プログラムに基づく各種管理処理をはじめ、演算処理,記憶処理,通信処理及び入出力処理等の各種データ処理(コンピューティング処理)を実行するとともに、データメモリ101dに登録した後述する管理データDm,Dh(被管理データDma,Dha)を含む各種データベースを備える。ディスプレイ102は、カラー液晶ディスプレイ等を利用できるとともに、入出力部103には、外部メディア用ドライブ,キーボードやマウス等の入力部、及びプリンタ等の出力部を含む。
【0032】
管理コントローラ2は、無線通信部104及び無線通信部12を介して搾乳機コントローラ11と相互通信できるとともに、無線通信部104及び無線通信部42を介して給餌機コントローラ41と相互通信できる。また、管理コントローラ2は、少なくとも、搾乳機コントローラ11に対して乳牛C…の搾乳禁止に係わる搾乳禁止データを含む管理データDmを送信し、かつ搾乳機コントローラ11から搾乳時の収集データを含む被管理データDmaを受信するとともに、少なくとも、給餌機コントローラ41に対して乳牛C…の給餌量に係わる給餌量データを含む管理データDhを送信し、かつ給餌機コントローラ41から給餌時の収集データを含む被管理データDhaを受信する、データ通信機能Ftと、各被管理データDma,Dhaを統合的に管理するデータ管理機能Fcとを備える。このデータ通信機能Ftには、管理データDmに特定データを含ませて送信する特定データ送信機能Fttが含まれるとともに、特定データには、後述する搾乳禁止に係わる乳牛C…に対して搾乳開始スイッチ13sを不能にするための制御データが含まれる。また、データ管理機能Fcには、搾乳機コントローラ11から得る各乳牛C…の乳量データに基づいて各乳牛C…に対応する固有の給餌量を求めて給餌量データを得るデータ演算機能Fcpが含まれる。なお、各被管理データDma,Dhaを統合的に管理するとは、双方のデータを同時に管理することは勿論、各データを相互利用、例えば、データの一部が不完全な場合に他のデータを利用して修正(補完)する場合なども含まれる。
【0033】
さらに、管理コントローラ2は、PDA等のモバイルコンピューティング装置や携帯電話等を含むモバイル端末装置Scに対して相互通信可能に構成する。このように、管理コントローラ2とモバイル端末装置Scを相互通信可能に構成すれば、搾乳機コントローラ11及び給餌機コントローラ41によっては対応できない管理や通信を有効に補助(支援)することができ、更なる多様性,汎用性及び発展性を高めることができる。
【0034】
次に、本実施形態に係る乳牛飼養管理方法を含む乳牛飼養管理システム1の動作について、図5〜図9を参照しつつ図1〜図4に示すフローチャートに従って説明する。
【0035】
図1は管理コントローラ2による全体管理に係わる処理手順のフローチャートを示す。管理コントローラ2は管理モードの実行中にあり(ステップS1)、搾乳システムSmにおける搾乳処理及び給餌システムShにおける給餌処理は行われていない待機中にあるものとする(ステップS2)。今、この待機中において、搾乳開始時間になった場合を想定する(ステップS3)。搾乳開始時間になれば、管理コントローラ2は搾乳システムSmにおける搾乳機コントローラ11に管理データDmを送信する(ステップS3,S4)。これにより、管理データDmを受信した搾乳システムSmは、この管理データDmを利用した搾乳処理を行う。
【0036】
以下、搾乳システムSmにおける搾乳処理について、図2に示すフローチャートを参照して具体的に説明する。図2は搾乳機コントローラ11の搾乳処理に伴う処理手順を示す。搾乳機コントローラ11は、待機中において搾乳開始時間になれば、上述したように、管理コントローラ2から送信される管理データDmを受信する(ステップS21,S22,S23)。搾乳機コントローラ11は、この管理データDmを受信することにより、搾乳機コントローラ11に登録されている前回の搾乳時に使用した管理データDmの更新(書替)を行う。この場合、管理データDmには、少なくとも乳牛C…の搾乳禁止に係わる搾乳禁止データ、特に、各乳房Cb…単位の搾乳禁止データが含まれる。具体的には、全ての乳牛C…の牛番と、各牛番に対応する牛床番号及び搾乳禁止データを含む管理データDmがデータベースとして作成される。さらに、搾乳禁止データには、搾乳禁止に係わる乳牛C…に対して搾乳開始スイッチ13sを不能にするための制御データが含まれる。
【0037】
また、搾乳時には、搾乳機10がガイドレール部21に沿って移動する(ステップS24)。即ち、搾乳ユニット27p,27qが自動で搬送される。なお、最初はホームポジションから移動を開始する。そして、搾乳機10が搾乳を行う分岐レール21sに進入し、分岐レール21sの先端まで移動すれば、ディストリビュータ28がミルクタップ22tに自動で接続(装着)される(ステップS25)。この際、搾乳機10に備える牛床番号リーダ15は、分岐レール21sの先端に設けたIDタグ15tに近接するため、IDタグ15tに設定されているID(牛床番号)を読取り、牛床識別を行う(ステップS26)。搾乳機コントローラ11は、読取った牛床番号と管理データDmを照合し、牛床番号に対応する搾乳禁止データを選択(読出)して表示部13における警報表示部13u及び注意分房表示部13dに表示する(ステップS27)。
【0038】
具体的な表示は次のように行われる。まず、注意分房が無く正常であれば、警報表示部13uの第一警報ランプ88及び第二警報ランプ89は、いずれも消灯状態になるとともに、注意分房表示部13dにおける四つの注意分房ランプ91a…91dは、いずれも点灯状態になる。これに対して、例えば、一部の乳房Cbに乳房炎等による搾乳禁止の乳房Cbがあるときは、第一警報ランプ88が点灯状態になり「搾乳注意」が報知されるとともに、注意分房表示部13dの搾乳禁止に係わる乳房Cbに対応する注意分房ランプ91a…が点滅状態になる。また、抗生物質投与牛等による搾乳禁止牛の場合には、第一警報ランプ88が点滅状態になり「搾乳禁止」が報知されるとともに、注意分房表示部13dにおける全ての注意分房ランプ91a…91dが点滅状態になる。
【0039】
このように、搾乳機10に、搾乳禁止データを含む管理データDmの少なくとも一部を視覚的に表示する表示部13を設ければ、作業者は、搾乳しようとする乳牛Cが搾乳禁止牛或いは搾乳注意牛であることを確実に知ることができ、例えば、病体牛が誤って搾乳され、いわゆる事故乳が発生する不具合を回避することができる。特に、搾乳禁止データには、各乳房Cb…単位の搾乳禁止データを含ませたため、作業者は、搾乳が禁止されている具体的な乳房Cb…の位置を確実に知ることができ、実情に応じた柔軟な搾乳を行うことができる利点がある。
【0040】
また、搾乳禁止データに上述した制御データが含まれている場合には、搾乳機コントローラ11は、当該制御データの受信により搾乳開始スイッチ13sを不能にする制御を行う。これにより、搾乳禁止に係わる乳牛Cである場合には、制御データにより搾乳開始スイッチ13sを不能に制御できるため、当該搾乳禁止に係わる乳牛Cに対する搾乳を確実に防止できる利点がある。
【0041】
一方、第二警報ランプ89を初期点灯状態に設定すれば、デジタル表示器85には、牛番が数値表示される。この際、エラー情報等が表示される場合には、搾乳機コントローラ11に備えるデータ修正機能Fcaにより、管理コントローラ2から受信した管理データDmを修正することができる。例えば、後述するように、直前に行われた給餌システムSh側における給餌処理において、乳牛Cの牛番が読取れなかった場合には、その旨の情報が表示されるため、作業者は、実際の乳牛Cの状態を確認し、異常がない場合、即ち、給餌システムSh側での牛番の読取エラーが一時的な原因と思われる場合には、操作部86から正しい牛番を入力して管理データDmを修正することができる。或いは、管理データDmに設定されている搾乳禁止データを修正する必要がある場合、即ち、管理データDmでは注意分房が無く正常に設定されているが、作業者が目視等により乳房Cb…の疾病を確認できたような場合、作業者は、操作部86の入力操作により、管理データDmにおける搾乳禁止データの内容を修正及び追加することができる。このように、搾乳機コントローラ11に、管理コントローラ2から受信した管理データDmを修正するデータ修正機能Fcaを設け、被管理データDmaに修正した管理データDmを含ませれば、上述のように、給餌システムSh側で得られる牛番に係わるデータ(情報)が不完全な場合であっても搾乳システムSm側で確認することにより確実かつ正確に修正することができるなど、データの正確性、信頼性、更には安全性をより高めることができる。したがって、搾乳システム側と給餌システム側のそれぞれから得られる異なるデータの相互利用、更にはデータの有効活用を図れる利点がある。
【0042】
そして、作業者は、このような管理データDm(搾乳禁止データ)に基づく表示部13の表示(情報)を確認して、搾乳中止処理を含む搾乳処理を行うことができる(ステップS28)。なお、搾乳処理を行う場合には、図6に示すように、作業者は、各ティートカップ31…を乳房Cb…にそれぞれ装着して搾乳を行う。搾乳時には、乳量計14により乳量が検出され、得られる乳量データの収集が行われるとともに、乳汁センサ16により乳汁の品質に対する検査が行われる。搾乳時に収集されるこれらの収集データは管理データDmに追加される。これにより、管理データDmに対してデータ内容が修正及び/又は追加された被管理データDmaが得られる。一方、搾乳が終了すれば、ユニット本体30に内蔵する自動離脱装置によりティートカップ31…の自動離脱処理が行われる。これにより、乳牛C一頭の搾乳処理が終了する(ステップS29)。例示の搾乳機10では、左右二頭の乳牛C…に対して搾乳処理が同時に並行して行われる。搾乳処理の終了により、搾乳機10は次の分岐レール22sへ自動で移動するとともに、次の分岐レール22sにおいても同様の搾乳処理を行う(ステップS30,S24…)。そして、全ての乳牛C…に対する搾乳処理が終了すれば、上述した被管理データDmaが管理コントローラ2に送信される(ステップS31)。なお、管理コントローラ2に対する被管理データDmaの送信は、このように全ての乳牛C…に対する搾乳処理が終了した後にまとめて行ってもよいし、例えば、10回毎或いは30分毎など、更には各分岐レール22sにおいて行った搾乳処理毎に行うなど、その送信方法は任意に設定できる。また、搾乳機10は、ホームポジションまで自動で戻り、搾乳システムSmは待機中の状態になる。
【0043】
他方、管理コントローラ2は、搾乳機コントローラ11から被管理データDmaを受信すれば、この被管理データDmaを利用して新たな管理データを作成して更新する(ステップS5)。特に、管理コントローラ2は、被管理データDmaに含む乳量データを利用して給餌システムShで使用する給餌量データを求めるデータ処理を行う(ステップS6)。即ち、管理コントローラ2は、データ管理機能Fcに含むデータ演算機能Fcpにより、被管理データDmaに含まれる各乳牛C…の乳量データに基づいて各乳牛C…に対応する固有の給餌量を求めて給餌量データを得、この給餌量データを含む新たな管理データを作成する。この場合、給餌量データ(乳量データ)には、牛床番号リーダ15により読取った牛床番号が付随する。また、給餌量を求める際には、乳汁センサ16から得られる乳汁データを反映させることができる。
【0044】
このように、管理コントローラ2は、牛床番号データによって特定される個々の乳牛C…における乳量データを速やかに得れるため、給餌システムShで使用する給餌量データに迅速に反映させることができる。また、乳汁データにより、個々の乳牛C…における健康状態等の情報を速やかに得れるため、必要な処置等を迅速に講じることができるとともに、給餌システムShで使用する給餌量データに反映させることにより給餌量データの更なる適正化を図ることができる。
【0045】
一方、待機中において、給餌開始時間になった場合を想定する(ステップS7,S8)。給餌開始時間になれば、管理コントローラ2は、給餌システムShにおける給餌機コントローラ41に管理データDhを送信する(ステップS9)。これにより、給餌システムShでは、この管理データDhを利用した給餌処理を行う。
【0046】
以下、給餌システムShにおける給餌処理について、図3に示すフローチャートを参照して具体的に説明する。図3は給餌機コントローラ41の給餌処理に伴う処理手順を示す。給餌機コントローラ41は、待機中において給餌開始時間になれば、上述したように、管理コントローラ2から送信される管理データDhを受信する(ステップS41,S42,S43)。給餌機コントローラ41は、この管理データDhを受信することにより、給餌機コントローラ41に登録されている前回の給餌時に使用した管理データDhの更新(書替)を行う。この場合、管理データDhには、少なくとも給餌量データが含まれる。具体的には、全ての乳牛C…の牛番と、各牛番に対応する牛床番号及び給餌量データを含む管理データDhがデータベースとして作成される。
【0047】
なお、この管理データDhは、搾乳システムSm,給餌システムSh及び管理コントローラ2において共通に使用する同一のデータベースであってもよいし、給餌システムSh(搾乳システムSm)にとって必要なデータのみを抽出した異なるデータベースであってもよい。即ち、管理コントローラ2に全てのデータを含む管理データDoをデータベースとして登録した場合、管理データDoをそのまま管理データDh及び管理データDmとして使用してもよいし、或いは管理データDhに、管理データDoから抽出した一部のデータを使用し、他方、管理データDmに、管理データDoから抽出した一部のデータであって、管理データDhとは異なるデータを使用してもよい。管理コントローラ2,搾乳システムSm及び給餌システムShに、共通の管理データDoを使用すれば、異なる管理データDh及び管理データDmを作成する処理が不要になる利点があるとともに、異なる管理データDh及び管理データDmを作成して使用すれば、搾乳システムSm及び給餌システムShのメモリ容量が少なくて済む利点がある。
【0048】
また、給餌時には、給餌機40がガイドレール部51に沿って自動で移動する(ステップS44)。なお、最初はホームポジションから移動を開始する。給餌機40は、移動することにより検出部65が被検出部64を検出する給餌位置に達すれば、その給餌位置で停止する(ステップS45)。そして、給餌機40に備える乳牛検出センサ43は、乳牛C…の存在有無を検出するとともに(ステップS46)、同時に牛番リーダ44は、乳牛Cの耳に取付けた電子耳標(IDタグ)44tに設定されているID(牛番)を読取り、牛番の識別を行う(ステップS47)。
【0049】
一方、給餌処理は、乳牛検出センサ43の検出結果と牛番リーダ44の読取結果の態様に応じて異なる制御処理により行われる(ステップS48)。この制御処理について、図4に示すフローチャートを参照して具体的に説明する。図4は、給餌機コントローラ41によるステップS48における具体的な制御処理を示す。なお、図4及び図3における同一符号は同一ステップを示す。制御処理は、乳牛検出センサ43の検出結果と牛番リーダ44の読取結果の態様に応じて、第一制御処理,第二制御処理又は第三制御処理のいずれかが行われる。
【0050】
まず、乳牛検出センサ43が乳牛Cを検出し、かつ牛番リーダ44が牛番を読取れたことを条件に第一制御処理を行う(ステップS51)。この場合は正常状態にあるため、第一制御処理としては通常の給餌処理を行う(ステップS52)。即ち、給餌機コントローラ41は、読取った牛番と管理データDhを照合し、読取った牛番に対応する今回用の給餌量データを選択(読出)して給餌を行う。なお、今回用の給餌量データは、直前に行った搾乳処理で得られた乳量データに基づいて演算した給餌量データである。この場合、給餌機コントローラ41は、選択した今回用の給餌量データに基づき、粗飼料繰出コンベア機構58及び繰出オーガ機構60を制御するとともに、計量器付の飼料排出機構54を用いて、同給餌量データに設定された粗飼料Baと配合飼料Bbの配合比及び配合量に調合した給餌飼料Bsを得、この給餌飼料Bsを飼料排出機構54から外部の餌置位置に投与する。
【0051】
また、乳牛検出センサ43が乳牛Cを検出し、かつ牛番リーダ44が牛番を読取れないことを条件に第二制御処理を行う(ステップS53)。この場合、乳牛Cは検出されても牛番を読取れないため、電子耳標44tが落下していたり、乳牛Cが既に投与された隣の給餌飼料Bsを食べようとして電子耳標44tが離れているなど、何らかの異常が考えられる。しかし、乳牛Cの存在は確認されるため、牛床番号に対応する前回の給餌量データに基づく釣り餌を投与する(ステップS54)。このように、管理データDhに含まれる給餌量データには、今回用の給餌量データと前回の給餌量データの双方が含まれる。なお、釣り餌の投与方法は上述した第一制御処理の給餌方法と同様である。一方、給餌機コントローラ41は、釣り餌を投与した後、少なくとも所定期間は、牛番リーダ44による牛番の読取りを行う(ステップS55,S56)。上述したように、乳牛Cが隣の給餌飼料Bsを食べようとして牛番を読取れないような場合には、釣り餌により牛番を読取れる可能性がある。そして、このときの読取結果は被管理データDhaに追加する。このときの読取結果には、読取りの有無と読取った場合の牛番が含まれる。
【0052】
さらに、乳牛検出センサ43が乳牛Cを検出せず、かつ牛番リーダ44が牛番を読取れないことを条件に第三制御処理を行う(ステップS53)。この場合、対応するストールAcには乳牛Cが居ない空状態のため、給餌は行わない(ステップS57)。このように、乳牛検出センサ43により乳牛C…の存在有無を検出するとともに、牛番リーダ44により乳牛C…に取付けたIDタグ44t…から牛番を読取り、第一制御処理,第二制御処理又は第三制御処理のいずれかの制御処理を行なうようにしたため、乳牛C…の状態(態様)を考慮した的確な給餌処理を行うことができる利点がある。
【0053】
以上により、一頭の乳牛Cに対する給餌処理が終了する。そして、乳牛検出センサ43の検出結果及び牛番リーダ44の読取結果、第二制御処理により釣り餌を投与した後における牛番リーダ44による牛番の読取結果(読取りの有無と読取った場合の牛番)は、給餌時に収集する収集データとして管理データDhに追加される。これにより、管理データDhに対してデータ内容が追加された被管理データDhaが得られる。一方、この被管理データDhaは管理コントローラ2に送信される(ステップS49)。なお、管理コントローラ2に対する被管理データDhaの送信は、このように各給餌位置で停止した一回の給餌処理毎に送信してもよいし、例えば、10回毎或いは30分毎など、更には全ての乳牛C…に対する給餌処理が終了した後にまとめて行うなど、その送信方法は任意である。また、給餌処理の終了により、給餌機40は次の給餌位置へ自動で移動するとともに、次の給餌位置においても同様の給餌処理を行う(ステップS50,S44…)。そして、全ての乳牛C…に対する給餌処理が終了すれば、給餌機40は、ホームポジションまで自動で戻り、給餌システムShは待機中の状態になる(ステップS50)。
【0054】
他方、管理コントローラ2は、給餌機コントローラ41から被管理データDhaを受信すれば、この被管理データDhaを利用して新たな管理データを作成して更新する(ステップS10,S11,S12)。特に、管理コントローラ2は、被管理データDhaにおいて給餌時に追加された乳牛検出センサ43の検出結果及び牛番リーダ44の読取結果を新たな管理データに反映させるデータ処理を行う(ステップS12)。この被管理データDhaを反映させた管理データは、次に行われる搾乳時に、管理データDmとして搾乳機コントローラ11へ送信されるため、前述したように、搾乳時に、作業者が乳牛Cの状態を確認し、搾乳機コントローラ11におけるデータ修正機能Fcaによりデータの追加又は修正を行うことができる。なお、このようなデータの追加又は修正は、管理コントローラ2で行うこともできる。
【0055】
また、第二制御処理(又は第三制御処理)が行われた場合であって、最終的に牛番を読取ることができない場合は、何らかの異常を発生していることも考えられるため、管理コントローラ2に、例えば、被管理データDhaの内容に応じたエラー情報等を表示すれば、被管理データDhaの内容に対して的確な対応策を講じることができる。
【0056】
よって、このような本実施形態に係る繋留牛舎Mの乳牛飼養管理方法によれば、搾乳時に、搾乳機コントローラ11により牛床番号に対応した乳量データを得るとともに、管理コントローラ2により各乳量データに基づく固有の給餌量データを求め、給餌時に、給餌機コントローラ41により乳牛C…に取付けたIDタグ44t…から牛番を読取ることにより各乳牛C…を識別し、かつ牛床番号に対応した給餌量データを用いて給餌処理を行うようにしたため、少なくとも搾乳システム側で得られるデータを給餌システム側で有効に活用できる。また、搾乳機コントローラ11及び給餌機コントローラ41に対して相互通信可能な管理コントローラ2を利用するため、搾乳システム側と給餌システム側が異なるメーカーにより提供されるような場合であっても、総合的飼養管理の観点から乳牛C…に係わる各種情報の効率的利用を図ることができ、搾乳処理及び給餌処理、更にこれらの段取等における能率性及び利便性をより高めることができる。特に、管理コントローラ2は、牛床番号によって特定される個々の乳牛C…における乳量データを速やかに得れるため、給餌システム側で使用する給餌量データに迅速に反映させることができる。
【0057】
以上、最良の実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,手法等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。例えば、管理コントローラ2と搾乳機コントローラ11、及び管理コントローラ2と給餌機コントローラ41は、無線式の通信部12,42により相互通信可能に構成した場合を示したが、有線式の通信部12,42であってもよいし、必要によりLAN接続等により搾乳機コントローラ11と給餌機コントローラ41を相互通信可能に構成してもよい。また、搾乳機10は自動で移動させる場合を示したが手動で移動させてもよい。さらに、表示部13は視覚的に表示する場合を示したが、この表示部13にはアラーム音等による聴覚的な出力を含めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の最良の実施形態に係る乳牛飼養管理方法を含む管理コントローラによる全体管理に係わる処理手順を示すフローチャート、
【図2】同乳牛飼養管理方法における搾乳機コントローラの搾乳処理に伴う処理手順を示すフローチャート、
【図3】同乳牛飼養管理方法における給餌機コントローラの給餌処理に伴う処理手順を示すフローチャート、
【図4】同給餌機コントローラの給餌処理における一部を具体化した処理手順を示すフローチャート、
【図5】同乳牛飼養管理方法を実施できる乳牛飼養管理システムを備える繋留牛舎における内部のレイアウト構成を示す平面概略図、
【図6】同乳牛飼養管理システムを備える繋留牛舎における搾乳システム及び給餌システムの一部を示す正面構成図、
【図7】同搾乳システムの搾乳ユニットに備えるユニット本体の前面図、
【図8】同給餌システムの給餌機の内部構造図、
【図9】同乳牛飼養管理システムの全体構成を示すブロック系統図、
【符号の説明】
【0059】
2:管理コントローラ,10:搾乳機,11:搾乳機コントローラ,13:表示部,13s:搾乳開始スイッチ,15:牛床番号リーダ,15t:IDタグ,40:給餌機,41:給餌機コントローラ,43:乳牛検出センサ,44:牛番リーダ,44t…:IDタグ,M:繋留牛舎,C…:乳牛,Ac…:ストール,Fca:データ修正機能

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳牛が係留された各ストールに対して搾乳機コントローラを搭載した搾乳機を移動させて搾乳を行うとともに、前記各ストールに対して給餌機コントローラを搭載した給餌機を自動で移動させて給餌を行う繋留牛舎の乳牛飼養管理方法において、搾乳時に、前記搾乳機コントローラにより、少なくとも牛床番号に対応した乳量データを得るとともに、前記搾乳機コントローラ及び前記給餌機コントローラに対して相互通信可能な管理コントローラにより、少なくとも前記各乳量データに基づく固有の給餌量データを求め、給餌時に、前記給餌機コントローラにより、少なくとも乳牛に取付けたIDタグから牛番を読取ることにより各乳牛を識別し、かつ各乳牛に対応する給餌量データを用いて給餌処理を行うことを特徴とする繋留牛舎の乳牛飼養管理方法。
【請求項2】
前記搾乳機は自動で移動させることを特徴とする請求項1記載の繋留牛舎の乳牛飼養管理方法。
【請求項3】
前記搾乳機コントローラは、前記管理コントローラから少なくとも乳牛の搾乳禁止に係わる搾乳禁止データを含む管理データを受信し、受信した前記管理データの少なくとも一部を前記搾乳機に設けた表示部に対して少なくとも視覚的に表示することを特徴とする請求項1記載の繋留牛舎の乳牛飼養管理方法。
【請求項4】
前記搾乳禁止データには、搾乳禁止に係わる乳牛に対して前記搾乳機における搾乳開始スイッチを不能にするための制御データを含み、前記搾乳機コントローラは、前記制御データを受信したなら前記搾乳開始スイッチを不能にする制御を行うことを特徴とする請求項3記載の繋留牛舎の乳牛飼養管理方法。
【請求項5】
前記搾乳機コントローラは、牛床番号リーダにより各牛床に対応して取付けたIDタグから牛床番号を読取ることにより前記牛床番号データを得、この牛床番号データに対応した乳量データを含む被管理データを前記管理コントローラに送信することを特徴とする請求項1又は3記載の繋留牛舎の乳牛飼養管理方法。
【請求項6】
前記搾乳機コントローラは、前記管理コントローラから受信した前記管理データを修正するデータ修正機能を備え、前記被管理データに修正した管理データを含ませることを特徴とする請求項5記載の繋留牛舎の乳牛飼養管理方法。
【請求項7】
前記給餌機コントローラは、給餌時に、乳牛検出センサにより乳牛の存在有無を検出するとともに、牛番リーダにより乳牛に取付けたIDタグから牛番を読取り、
(a) 前記乳牛検出センサが乳牛を検出し、かつ前記牛番リーダが牛番を読取れたことを条件に、読取れた牛番に対応する今回用の給餌量データを用いて給餌する第一制御処理、
(b) 前記乳牛検出センサが乳牛を検出し、かつ前記牛番リーダが牛番を読取れないことを条件に、牛床番号に対応する前回の給餌量データに基づく釣り餌を投与する第二制御処理、
(c) 前記乳牛検出センサが乳牛を検出せず、かつ前記牛番リーダが牛番を読取れないことを条件に、給餌しない第三制御処理、
のいずれかの制御処理を行なうことを特徴とする請求項1記載の繋留牛舎の乳牛飼養管理方法。
【請求項8】
前記給餌機コントローラは、前記乳牛検出センサによる乳牛の存在有無に対する検出結果及び前記牛番リーダによる乳牛に取付けたIDタグに対する牛番の読取結果を含む被管理データを前記管理コントローラに送信することを特徴とする請求項7記載の繋留牛舎の乳牛飼養管理方法。
【請求項9】
前記給餌機コントローラは、前記第二制御処理により釣り餌を投与した後、少なくとも所定期間は、前記牛番リーダによる牛番の読取りを行い、この読取結果を含む被管理データを前記管理コントローラに送信することを特徴とする請求項7記載の繋留牛舎の乳牛飼養管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−112207(P2009−112207A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−285911(P2007−285911)
【出願日】平成19年11月2日(2007.11.2)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【出願人】(000103921)オリオン機械株式会社 (450)
【出願人】(592231446)北原電牧株式会社 (18)
【出願人】(000237824)富士平工業株式会社 (14)
【Fターム(参考)】