説明

織機、特に細幅織機

織機、特に細幅織機が、少なくとも2つの緯入れ間の長さに亘り、少なくとも1本の糸(10)または糸群を処理するための少なくとも1つの電気駆動式糸送り装置(22a、22b、22c、26a、26b)を有する。織機はさらに、織布用巻取り装置と、製造すべき織布用のパターンプログラムに基づいて織機を制御するための電子制御装置(36)とを含む。供給すべき糸(10)の送り長をパターンプログラムで設定されたデータと巻取り装置(16)のデータと製造すべき織布の幅データとに相応して糸送り装置(22a、22b、22c、26a、26b)で自動的に調整するために、制御装置(36)が制御手段を有する場合に、織機は、製造すべき織布に、すなわち製織パターンおよび使用される糸材料に、一層良好に最適化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に記載された織機、特に細幅織機に関する。
【背景技術】
【0002】
冒頭で言及した種類の織機、特に細幅織機は周知である。通常、織機において経糸および/または緯糸の送り量は、消極的に張力制御されるか、または、積極的に機械的かつ固定的に設定されて処理部に供給される。消極的糸制御は、糸の負荷、特に、異なる品質および性質の糸を利用する場合における糸の負荷に影響される欠点がある。ゴム糸および他の弾性糸の場合、糸が有害な張力で負荷されないように、消極的制御は個別に調整されなければならない。一方、固定的に設定された積極的な機械的制御は、最も弱い糸に適合させて調整した一定の引張力でしか給糸装置を作動できない欠点があり、その結果、織布の品質が損なわれることになる。
【0003】
欧州特許出願公開第1526199号明細書により公知の織機は、個別に駆動可能な糸送り装置を有している。この糸送り装置は、パターンプログラムに応じて個別に制御可能ではあるが、その制御は張力に依存して行われ、それに優先する個別的な適合手段は提供されていない。
【0004】
WO2004/111322号公報により、編機への緯糸挿入を制御するための電子制御装置を有するメカニズムが公知である。このメカニズムは、パターンプログラムに基づいて、製造すべき編地のための個別的糸送りを調節する。この編機は補正装置をさらに含み、この補正装置により、編成要素のパターン相応機能に、調整可能な補正係数を重畳することができる。
【0005】
WO88/05089号公報により、織機においてプログラム制御式ステッピングモータで経糸ビームおよび/またはクロスビームの駆動速度を調節して経糸張力を調節する方法が公知である。しかし、この文献には緯糸張力または緯糸量の調節についての開示や示唆はない。経糸量を解放しかつ調節するための類似方法および相応する装置がWO91/05895号公報により公知であり、この装置では、経糸量は例えばキーボードを備えた制御装置によって計算される。しかし、この文献にも緯糸張力または緯糸量の調節についての開示や示唆はない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、冒頭で言及した種類の織機をさらに改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1の特徴部分の構成によって解決される。少なくとも1本の緯糸用の少なくとも1つの電気駆動式糸送り装置と、織布のための巻取り装置と、製造すべき織布のパターンプログラムに基づいて織機を制御するための電子制御装置とを有する織機、特に細幅織機において、前記制御装置が、供給すべき緯糸の送り長を前記少なくとも1つの糸送り装置で自動的に調整するための制御手段を有することによって、第一に、各緯糸給糸用と各パターン用に要求される正確な糸長が恒常的に得られることが確保される。緯糸を、例えばコーンから、緯入れ装置によって引き出すことはもはや必要ない。その結果として、織布が全体的に改善され、パターン形成が特に本質的に改善される。製織過程における糸切れや欠陥部等の障害は十分に防止される。それに加えて、パターンプログラムおよび巻取り装置のデータを用いるのみならず、特に製織中に大きく変化する、製造すべき織布の幅データをも用いて送り長を計算可能であるので、その結果として、本発明における測長は、製織中の諸変化に対処できる。
【0008】
上記において、織機が経糸用の他の電気駆動式糸送り装置を有することが有利である。その場合、前記制御装置は、パターンプログラムに設定されたデータに相応して供給すべき経糸の送り長を糸送り装置で自動的に調整するための制御手段も有する。経糸用の前記他の糸送り装置の送り長は、パターンプログラムのデータと巻取り装置のデータと製造すべき織布の幅データとを用いて計算可能である(請求項2)。
【0009】
請求項3による構成は、少なくとも緯糸供給のパターン相応機能データを付加的に変更する補正係数Kによって、例えば、製造すべき織布の異なる糸品質および/またはパターン特性に対するさらなる個別的適合を達成できるので、特に有利である。このような補正係数KもしくはKは、巻取り装置および/または経糸供給に対しても設定されることが好適である(請求項4)。
【0010】
請求項5によれば、特に有利な補正装置は、表示画面、好ましくはタッチパネルであって、種々の表示・操作平面、特に、1または複数の補正係数を操作するための表示・操作平面を手動で選択するための編集要素を有する。
【0011】
請求項6による織機の実施形態は、糸送り装置の制御装置が、織機自体の制御装置に一体化された構成要素として形成されている場合に有利である。
【0012】
種々の緯糸、特に、種々の異なる色の緯糸を使用する織機において、請求項7により、緯糸用の少なくとも2つの電気駆動式糸送り装置が設けられ、それらに対応して制御手段が構成されていることが有利である。その場合、請求項8により、各糸送り装置によって異なる種類の緯糸が供給される際に、各緯糸の糸送り装置にそれぞれ異なる補正係数が設定されることが特に有利である。
【0013】
以下、本発明の実施例が図面に基づいて詳しく説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、織機、特に細幅織機の概要を示す側面図であり、図において、経糸4は、製織部2で開口装置6により開口され杼口8を形成する。緯糸10は、不図示の緯入れ装置によって開口中の杼口8に挿入され、不図示の製織筬で織り前12に筬打ちされる。
【0015】
製造された織布14は巻取り装置16によって布巻取体18に巻き取られる。
【0016】
経糸は1ないしは複数の給糸体20、20a、20b、20cから製織部2に供給される。少なくとも幾つかの給糸体に、それぞれ1つの個別制御可能な糸送り装置22a、22b、22cが付設されている。製織部2には、1ないしは複数の緯糸10が順次供給され、その都度、制御可能な糸送り装置26a、26bによって、各緯糸が、対応する給糸ボビン24a、24bから個別に制御可能な方法で引き出される。
【0017】
図2は、このような糸送り装置の例を略図で示しており、モータ28、例えばステッピングモータが伝動装置30を介して2つのローラ32、34の少なくとも一方を駆動し、送給されるべき糸4、10がローラに巻き付けられる。
【0018】
織機に装備されている制御装置36は、織機の各構成要素を製織パターンプログラムに基づいて制御する。このようなパターンプログラムは、織機自体または外部のパターン装置38で予め生成しておくことができ、このパターン装置からは、例えばデータ線またはディスク媒体40などを介して、制御装置36の読取装置42にパターンプログラムが読み込まれる。制御装置36は、パターンプログラムで設定された布パターンに相応して供給される経糸4および/または緯糸10の送り長を調整するための制御手段を含む。さらに、制御装置36は、少なくとも1本の緯糸10の送りデータ、または少なくとも1つの緯入れ用の少なくとも1本の経糸4の送りデータに、加乗算または減除算できる調整可能な補正係数KまたはKを個別に重畳するための手動操作可能な補正装置を有する。補正装置は図3を基に詳しく説明される。
【0019】
補正装置は、好ましくはタッチパネルとして形成される表示画面44を含み、この表示画面は、手動で選択可能な表示・切換平面用の一連の表示・切換要素を有する。第1切換部46では選択キー48a、48bによって任意の糸送り装置22a、22b、22c、26a、26bを選択することができ、選択された糸送り装置は表示部50に表示される。次に、第2切換部52では、補正係数KもしくはKを同様の選択キー54a、54bにより所望の値に調整でき、その値が表示部55に表示される。最後に、第3切換部56では、調整された補正係数KもしくはKが有効になる緯糸または緯糸範囲を設定できる。選択キー58a、58bによって緯糸x〜xの番号を調整でき、調整された値は逐次表示部60a、60bに表示される。調節キーXは、表示部の切替えまたは調整値の全リセットに利用可能であり、制御装置は、専ら入力されたパターンプログラムに従って構成要素を制御する。図示例では、補正装置で糸送り装置26aに対し補正係数K=102%が調整される。すなわち、パターンプログラムに基づいて制御手段によって既に設定された100%の個別的標準送り長を2%だけ高めることができる。この値は、緯糸x、xもしくはx〜xに有効となる。
【0020】
補正装置によって緯糸の標準送り量だけでなく、選択的または付加的に単一または複数本の経糸の送り量および/または巻取り装置の速度にも補正係数Kを重畳することができる。補正係数K、K、Kは各構成要素について等しくすることもできるが、構成要素毎に異なっていることが好ましい。特に、実施例で示した各糸送り装置26a、26bによって異なる種類の緯糸が供給される場合、各緯糸用の糸送り装置26a、26bにそれぞれ異なる補正係数Kを設定しておくことができる。経糸用の糸送り装置22a、22b、22cの補正係数Kにも、基本的に同じことがあてはまる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】織機の側面図である。
【図2】図1の糸送り装置の概略図である。
【図3】補正係数調整用の補正装置の表示・切換平面を示す。
【符号の説明】
【0022】
緯糸用補正係数
巻取り装置用補正係数
経糸用補正係数
X 調節キー
2 製織部
4 経糸
6 開口装置
8 杼口
10 緯糸
12 織り前
14 織布
16 巻取り装置
18 布巻取り体
20 給糸体
20a 給糸体
20b 給糸体
20c 給糸体
22a 糸送り装置
22b 糸送り装置
22c 糸送り装置
24a 給糸ボビン
24b 給糸ボビン
26a 糸送り装置
26b 糸送り装置
28 モータ
30 伝動装置
32 ローラ
34 ローラ
36 制御装置
38 パターン装置
40 ディスク媒体
42 読取装置
44 表示画面
46 第1切換部
48a 選択キー
48b 選択キー
50 表示部
52 第2切換部
54a 選択キー
54b 選択キー
55 表示部
56 第3切換部
58a 選択キー
58b 選択キー
60a 表示部
60b 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1本の緯糸(10)のための少なくとも1つの電気駆動式糸送り装置(26a、26b)と、
織布(14)のための巻取り装置(16)と、
製造すべき織布のパターンプログラムに基づいて織機を制御するための電子制御装置(36)と、を備えた織機、特に細幅織機において、
前記制御装置(36)が、供給すべき緯糸(10)の送り長を前記少なくとも1つの糸送り装置(26a、26b)で自動的に調整するための制御手段を有し、前記パターンプログラムのデータと前記巻取り装置(16)のデータと前記製造すべき織布(14)の幅データとを用いて、前記少なくとも1つの糸送り装置(26a、26b)の送り長を計算可能であることを特徴とする織機。
【請求項2】
経糸(4)のための他の電気駆動式糸送り装置(22a、22b、22c)をさらに備え、前記制御装置(36)が、前記パターンプログラムに設定されたデータに応じて、供給すべき経糸(4)の送り長を前記糸送り装置(22a、22b、22c)で自動的に調整するための制御手段をさらに有し、前記パターンプログラムのデータと前記巻取り装置(16)のデータと前記製造すべき織布(14)の幅データとを用いて、経糸(4)のための前記他の糸送り装置の送り長を計算可能であることを特徴とする請求項1記載の織機。
【請求項3】
前記制御装置(36)が、少なくとも1つの緯入れ用の緯糸(10)の少なくとも送りデータのパターン相応機能データに、調整可能な補正係数(K)を個別に重畳するための手動操作可能な補正装置を有することを特徴とする請求項1または2記載の織機。
【請求項4】
前記補正装置が、経糸(4)の送りデータおよび/または巻取り装置(16)の機能データに、調整可能な補正係数(K、K)を個別に重畳するための計算手段を有することを特徴とする請求項3記載の織機。
【請求項5】
前記補正装置が、表示画面(44)、特にタッチパネルであって、前記補正係数(K、K、K)のうちの少なくとも1つを手動調整するための表示・操作平面を有することを特徴とする請求項3または4のいずれかに記載の織機。
【請求項6】
前記少なくとも1つの糸送り装置(22a、22b、22c、26a、26b)の制御装置が、織機自体の制御装置に一体化された構成要素として形成されていることを特徴とする先行請求項のいずれか1項に記載の織機。
【請求項7】
緯糸(10)用の少なくとも2つの電気駆動式糸送り装置(26a、26b)を備えることを特徴とする先行請求項のいずれか1項に記載の織機。
【請求項8】
緯糸(10)用の前記少なくとも2つの電気駆動式糸送り装置(26a、26b)のそれぞれに異なる補正係数(K)の調整が可能であることを特徴とする請求項7記載の織機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−535526(P2009−535526A)
【公表日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−508076(P2009−508076)
【出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【国際出願番号】PCT/CH2007/000192
【国際公開番号】WO2007/128143
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(500031009)テクスティルマ・アクチェンゲゼルシャフト (22)
【Fターム(参考)】