説明

缶容器

【課題】内容物を1個ずつ取り出すための取出穴を形成した中栓を利用して、原価の上昇を抑えながら蓋体との密封性を確保して缶本体に収容された内容物の品質低下を防止する。
【解決手段】缶容器1は、底板部21、周壁部22を有し、周壁部22の開口端内周縁にカーリング部2aが形成された缶本体2と、天板部31、周壁部32を有し、周壁部32の開口端外周縁にカーリング部3aが形成されて缶本体2の周壁部22の外周面に嵌合可能な蓋体3と、取出穴41aが形成された本体41、該本体41の下面側外周縁近傍に垂設された周壁42を有し、缶本体2のカーリング部2aに嵌合可能な樹脂製中栓4とから構成される。そして、中栓4の本体41の上面側外周縁部に上方に突出するシール部4xが全周にわたって形成され、缶本体2に嵌合された蓋体3の天板部32の内面側外周縁部が中栓4のシール部4xに接触し、蓋体3と中栓4との間を密封する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、喉飴や錠剤などの缶容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、喉飴などの缶容器を缶本体および該缶本体の開口端側外周面に嵌合される蓋体から構成することが提案され、実施されている。この場合、砂糖の潮解性により喉飴などが湿気を吸収して溶け出し、品質が低下するのを防止するため、缶本体と蓋体との密封性を確保する必要がある。例えば、蓋体の内面側外周縁部にシールパッキンを設け、缶本体に蓋体を嵌合した際に、蓋体のシールパッキンを缶本体の開口端内周縁に形成されたカーリング部に接触させ、缶本体と蓋体との密封性を確保するようにしている。また、缶本体および蓋体に相互にねじ結合可能な雄ねじ部および雌ねじ部を形成し、缶本体に対して蓋体をねじ結合することで両者の密封性を確保することも実施されている。
【0003】
一方、缶本体のカーリング部に樹脂製の中栓を嵌合し、中栓に形成された取出穴を通して喉飴などを1個ずつ取り出すようにした缶容器も提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような缶容器においても、中栓はシール機能を備えていないことから、内容物によっては、前述したように、缶本体と蓋体との間を密封しなければならないことに変わりはなく、例えば、缶本体と蓋体との嵌合部にわたってテープを巻いたり、シュリンクフィルムで覆うことが実施されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公昭58−34028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、蓋体にシールパッキンを設けるものでは、蓋体の原価が上昇する欠点がある。また、缶本体に対して蓋体をねじ結合するものでは、気密性を高めるためにしっかりと閉鎖する必要があり、その結果として、蓋体が固く、非常に開けにくいという欠点がある。
【0006】
一方、中栓を設けるものでは、内容物を取り出すためにテープを剥離すると、缶本体と蓋体との密封性は確保されないことから、時間の経過によって缶本体と蓋体とのわずかな隙間および中栓の取出穴を通して湿気が内部に浸入し、内容物が潮解性を有するときには、潮解性成分の溶け出しによる品質低下を防止できないものである。また、シュリンクフィルムによって缶容器を覆うものでは、シュリンクフィルムのみでは密封性が不十分であり、しかも、内容物を取り出すためにシュリンクフィルムを破れば、缶本体と蓋体との密封性を確保できないことは前述した通りである。
【0007】
なお、喉飴などの内容物を1個ずつ個別に包装して缶本体に収容することも考えられるが、製造工程が複雑になるとともに、原価が大きく上昇するものとなる。
【0008】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、喉飴などの内容物を1個ずつ取り出すための取出穴を形成した中栓を利用して、原価の上昇を抑えながら蓋体との密封性を確保して缶本体に収容された内容物の品質低下を防止することのできる缶容器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、底板部および周壁部を有し、周壁部の開口端内周縁にカーリング部が形成された缶本体と、天板部および周壁部を有し、周壁部の開口端外周縁にカーリング部が形成されて缶本体の周壁部外周面に嵌合可能な蓋体と、取出穴が形成された本体および該本体の下面外周縁近傍に垂設された周壁を有し、缶本体のカーリング部に嵌合可能な樹脂製中栓とから構成され、中栓の本体上面側外周縁部に上方に突出するシール部が全周にわたって形成され、缶本体に嵌合された蓋体の天板部内面側外周縁部が中栓のシール部に接触して蓋体と中栓との間を密封することを特徴とするものである。
【0010】
本発明によれば、缶容器は、缶本体に内容物が充填され、缶本体に中栓が嵌合されるとともに、缶本体に蓋体を嵌合されて形成される。ここで、缶本体に蓋体を嵌め込むと、蓋体が中栓に被さることにより、蓋体の天板部の内面側外周縁部が中栓の本体の上面側外周縁部に上方に突出して全周にわたって形成されたシール部に接触し、蓋体と中栓との間を密封する。
【0011】
この結果、缶本体と蓋体との間に形成されたはめあいによるわずかな隙間を通して空気が缶本体の内部に浸入しようとしても、中栓のシール部が蓋体の天板部との間を全周にわたって密封し、空気の浸入を防止することができる。したがって、内容物が潮解性を有する成分を含んでいる場合であっても、内容物の溶け出しに伴う品質の低下を確実に防止することができる。また、中栓の形状を一部変更することで対応できることから、原価を上昇させることもない。
【0012】
本発明において、中栓のシール部が、外周縁近傍から外周縁部に向かって上り勾配の傾斜面を有することが好ましい。これにより、中栓の自動装着に際して、向きを一定に揃えるために下方から噴出する圧縮空気を利用する場合において、シール部が下方に位置している時には、圧縮空気が傾斜面に沿って外部に漏出するため、中栓の上下反転を防止できる。なお、周壁が下方に位置しているときには、周壁によって区画された空間に圧縮空気が噴出されることにより、中栓を上下反転させる。つまり、中栓をシール部が下方に位置するように揃えることが可能となる。
【0013】
本発明において、中栓が、その本体の下面に周壁の内周面間にわたって周壁の高さよりも高さが低く、かつ、直径方向に延びる複数本の補強リブを有することが好ましい。これにより、円板状の本体および周壁を補強することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、喉飴などの内容物を1個ずつ取り出すための取出穴を形成した中栓を利用して、原価の上昇を抑えながら蓋体との密封性を確保して缶本体に収容された内容物の品質低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の缶容器の一実施形態を示す断面図である。
【図2】図1のA部拡大図である。
【図3】図1の中栓を示す平面図、一部破断して示す正面図、底面図である。
【図4】図3の中栓のB部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1および図2には、本発明の缶容器1の一実施形態が示されている。
【0018】
この缶容器1は、浅い円筒状の缶本体2と、缶本体2の外周面に嵌合可能な蓋体3と、缶本体2の内周面に嵌合可能な略円板状の中栓4とから構成されている。
【0019】
缶本体2は、鋼板などのプレス成形、具体的には、絞り加工によって底板部21および周壁部22を有する浅い円筒状に成形されている。そして、缶本体2の周壁部22には、高さ方向略中間部に段部221が形成され、段部221よりも上方の略半部の直径が下方の略半部の直径よりも若干小径に形成されている。また、缶本体2の周壁部22には、その開口端の内周縁にカーリング部2aが全周にわたって形成されている。
【0020】
蓋体3も、鋼板などの絞り加工によって天板部31および周壁部32を有する偏平な円筒状に成形されており、その周壁部32には、開口端の外周縁にカーリング部3aが全周にわたって形成されている。
【0021】
ここで、蓋体3の周壁部32の内径は、蓋体3の周壁部32を缶本体2の周壁部22の略上半部の外周面に容易に装着し、離脱するはめあいを確保するように、缶本体2の周壁部22の略上半部の外径よりもわずかに大きく設定されている。
【0022】
中栓4は、ポリエチレンなどの合成樹脂によって成形され、図3および図4に示すように、円板状の本体41と、本体41の下面側外周縁近傍に垂設された周壁42と、本体41の下面に垂設されるとともに、周壁42の内周面の直径方向に延びる2本の直交する補強リブ43とを一体に備えている。そして、中栓4の本体41には、補強リブ43から離れるとともに、やや外周側に位置して喉飴などの内容物の外径に対応する内径の取出穴41aが形成されている。また、中栓4の本体41の上面外周縁部には、断面略鋭角三角形状のシール部4xが上方に突出して全周にわたって形成されている。すなわち、中栓4の本体41は、中心部に比較して外周縁部が若干上方に突出して高く形成されており、その外周縁部に形成された頂点に向かって緩やかに傾斜する上り勾配の傾斜面411が外周縁近傍に形成されている。また、中栓4の周壁42には、その外周面側下端部に外方に向けて略台形状に突出する凸条421が全周にわたって形成されている。
【0023】
なお、中栓4の本体41は、その外周面上端縁が蓋体3の天板部31と周壁部32との湾曲隅角部に干渉しないように面取り加工されている。また、中栓4の周壁42の外周面下端縁は、缶本体2のカーリング部2aに対応して容易に嵌合できるように面取り加工されている。さらに、中栓4の補強リブ43は、その高さが周壁42の高さよりも低く形成されており、本体41を補強するとともに、周壁42が倒れ込まないように補強している。
【0024】
ここで、中栓4の外径は、缶本体2の周壁部22の略上半部の外径よりも若干小径に形成され、その周縁部がカーリング部2aから外方に突出することなく載置されるように設定されている。また、中栓4の周壁42の外径は、缶本体2のカーリング部2aの内径よりも若干大きく設定されるとともに、突条421を除く周壁42の外径は、缶本体2のカーリング部2aの内径にほぼ等しく設定されている。さらに、中栓4の周壁42の高さは、本体41の下面と突条421との間で缶本体2のカーリング部2aをほぼ挟み込むように設定されている。
【0025】
このように構成された缶容器1は、缶本体2に適数個の喉飴などの内容物を充填した後、その開口端内周面側に中栓4を嵌め込むとともに、缶本体2の開口端外周面側に蓋体3を嵌め込み、適宜包装して出荷される。
【0026】
ここで、中栓4を缶本体2の開口端に嵌め込む際、その周壁42の外周面下端縁が面取りされて缶本体2のカーリング部2aに半ば入り込んだ状態で載置されることにより、中栓4を上方より押し込むことで簡単に装着することができる。この際、中栓4の周壁42の突条421が内方に弾性変形することで、缶本体2のカーリング部2aを乗り越えることができる。この際、中栓4の本体41の下面側外周縁が缶本体2のカーリング部2aに載置され、周壁42の外周面がカーリング部2aの内面と接触するとともに、突条421がカーリング部2aの下面に接触して中栓4の離脱を防止する。
【0027】
さらに、缶本体2に蓋体3を装着すると、蓋体3の周壁部32の内周面が缶本体2の周壁部22の略上半部外周面に嵌合する。この際、蓋体3の天板部31が中栓4の本体41に被さることにより、その内面側外周縁部が中栓4の本体41の外周縁部に形成されたシール部4xに接触し、蓋体3と中栓4との間を全周にわたって密封する。これにより、缶本体2と蓋体3との間に形成されたはめあいによるわずかな隙間を通して空気が缶本体2の内部に浸入しようとしても、中栓4のシール部4xが空気の浸入を防止することができる。したがって、内容物に潮解性を有する成分が含まれているとしても、湿気によって内容物が溶け出して品質が低下することを確実に防止できる。また、中栓4の形状を一部変更することで対応でき、蓋体3にシールパッキンを設ける場合などのように、原価を上昇させることもない。
【0028】
一方、内容物を取り出すときは、缶本体2に対して蓋体3をつかんで上方に持ち上げることにより、缶本体2から蓋体3を容易に離脱させることができ、その状態で缶本体2を斜めに傾ければ、取出穴41aを通して内容物を1個ずつ取り出すことができる。内容物の取り出しが終了すれば、蓋体3を缶本体2に嵌め込むことにより、内容物の脱落を防止するとともに、中栓4との間で空気の浸入を防止することができる。この場合、缶本体2の周壁部22の略上半部の外周面と蓋体3の周壁部32の外周面との間には、一定のはめあいのためのわずかな隙間が形成されることにより、缶本体2から蓋体3が簡単に脱落することを防止するとともに、缶本体2に蓋体3を容易に嵌め込んで装着することができる。
【0029】
なお、前述した実施形態においては、内容物として喉飴を例示したが、喉飴に限定するものではなく、錠剤や粒体などであっても構わない。
【0030】
また、中栓4の本体41の上面側外周縁部に形成されたシール部4xとして、断面ほぼ鋭角三角形状に形成されたものを例示したが、断面三角形状に限らず、台形を含む方形状や半円状であってもよく、その形状を限定するものではない。
【0031】
さらに、中栓4の周壁42に全周にわたって外方に向けて突出する凸条421を形成した場合を例示したが、周方向に間隔をおいて設定長さの複数個の突条部を間欠的に形成してもよい。
【0032】
さらにまた、缶容器1としては、円筒状の容器を例示したが、角筒状や略半球状であっても構わない。
【0033】
ところで、前述した実施形態においては、中栓4の本体41の上面側外周縁部に形成されたシール部4xは、断面ほぼ鋭角三角形状に形成されて外周縁近傍に緩やかな上り勾配の傾斜面411を有している。これにより、中栓4を自動的に缶本体2に嵌め込むに際して、中栓4を設定された面を上方に向くように揃えることができる。すなわち、中栓4を供給する生産ラインにおいて、下方から圧縮空気を中栓4の下面側に噴出すると、仮に、周壁42が下方に位置して中栓4が搬送される場合には、周壁42によって区画された空間に圧縮空気が噴出されることにより、中栓4は上下反転するように持ち上げられるのに対し、シール部4xが下方に位置して中栓4が搬送される場合には、その下面に向けて噴出された圧縮空気は、中栓4を若干持ち上げるものの、持ち上げられた部分の傾斜面411を経て外部に速やかに漏出し、中栓4を上下反転させることはない。つまり、中栓4を缶本体2に装着する際、中栓4を常に設定された面であるシール部4xを下方に向けた状態で搬送することができ、自動的に中栓4の装着作業を行うことができる。
【0034】
この場合、実施例においては、傾斜面411の角度は20度に設定されているが、必ずしも20度に限定されるものではなく、周壁42が下方に位置した場合の周壁42によって形成される空間容積とシール部4xが下方に位置した場合の傾斜面によって形成される空間容積との関係、供給する空気量や圧力、中栓4の質量、さらには、周壁42の角度との関係などを考慮して傾斜角度を決定すればよい。
【符号の説明】
【0035】
1 缶容器
2 缶本体
2a カーリング部
21 底板部
22 周壁部
3 蓋体
3a カーリング部
31 天板部
32 周壁部
4 蓋体
4x シール部
41 本体
41a 取出穴
411 傾斜面
42 周壁
43 補強リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板部および周壁部を有し、周壁部の開口端内周縁にカーリング部が形成された缶本体と、天板部および周壁部を有し、周壁部の開口端外周縁にカーリング部が形成されて缶本体の周壁部外周面に嵌合可能な蓋体と、取出穴が形成された本体および該本体の下面外周縁近傍に垂設された周壁を有し、缶本体のカーリング部に嵌合可能な樹脂製中栓とから構成され、中栓の本体上面側外周縁部に上方に突出するシール部が全周にわたって形成され、缶本体に嵌合された蓋体の天板部内面側外周縁部が中栓のシール部に接触して蓋体と中栓との間を密封することを特徴とする缶容器。
【請求項2】
請求項1に記載の缶容器において、中栓のシール部が、外周縁近傍から外周縁部に向かって上り勾配の傾斜面を有することを特徴とする缶容器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の缶容器において、中栓が、その本体の下面に周壁の内周面間にわたって周壁の高さよりも高さが低く、かつ、直径方向に延びる複数本の補強リブを有することを特徴とする缶容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−230792(P2011−230792A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102063(P2010−102063)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(591074231)常盤薬品工業株式会社 (20)
【Fターム(参考)】