説明

缶胴加工装置、その内側ロール及び外側ロール並びに凹凸加工された金属缶の製造方法

【課題】本発明は、金型を有効に活用してエンボスデザインのバリエーションを増やすことを目的とする。
【解決手段】本発明は、金属缶10aの胴部41aの側壁を内側ロール11と外側ロール12との間に挟んで圧接することで、胴部41bの側壁に凸状の模様35a、35b及び凹状の模様36a−36cを形成する缶胴加工装置において、内側ロール11及び外側ロール12は、複数の割型21a、21b、22a、22c、23a、23b、23c、24a、24bに分割されてなり、内側ロール11の割型21a、21b、22a、22cの少なくとも1つは、外表面に凸状の彫刻31が形成されている凸割型21a、21bであり、外側ロール12の割型23a、23b、23c、24a、24bの少なくとも1つは、外表面に凸状の彫刻32が形成されている凸割型23a−23cであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属缶の胴部側壁に凹凸模様を形成する缶胴加工装置、当該缶胴加工装置に用いられる内側ロール及び外側ロール、並びに、凹凸加工された金属缶の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の凸状の模様又は凹状の模様のエンボスを有する金属缶を製造する際には、缶胴への加工は缶胴を内側ロールとそれに対応する外側ロールで挟んで圧接することで加工していた。外側ロールに凸金型が配置され、内側ロールに凹割型が配置されていた。又は、外側ロールに凸金型が配置され、内側ロールに外表面をゴムで被覆したゴムロールが配置されていた(例えば、特許文献1参照。)。一方、模様紙のエンボス加工装置において、受けロールにゴムロールが用いられている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】実公平02−042353号公報
【特許文献2】特開2000−127268号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のエンボスでは、金属缶のデザインごとに内側ロール及び外側ロールの金型を作製していたので、わずかなデザイン変更であっても新たな金型を別途作製する必要があった。このため、エンボスデザインのバリエーションを増やすためには金型のコストがかかった。
【0004】
本発明は、金型を有効に活用してエンボスデザインのバリエーションを増やすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、金属缶の胴部側壁を圧接する内側ロール及び外側ロールが複数の割型にて構成されており、内側ロール及び外側ロールのいずれにも凸状の彫刻が形成されている凸割型が配置されていることを特徴とする。
【0006】
具体的には、本発明に係る缶胴加工装置は、金属缶の胴部側壁を内側ロールと外側ロールとの間に挟んで圧接することで、前記胴部側壁に凸状の模様及び凹状の模様を形成する缶胴加工装置において、前記内側ロール及び外側ロールは、複数の割型に分割されてなり、前記内側ロールの割型の少なくとも1つは、外表面に凸状の彫刻が形成されている凸割型であり、前記外側ロールの割型の少なくとも1つは、外表面に凸状の彫刻が形成されている凸割型であることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る缶胴加工装置では、前記内側ロールの割型のうち、前記外側ロールの凸割型との間に前記胴部側壁を挟む割型は、前記外側ロールの凸割型との合わせ面を有する凹割型、及び/又は、外表面が弾性体で覆われた受割型であり、前記外側ロールの割型のうち、前記内側ロールの凸割型との間に前記胴部側壁を挟む割型は、前記内側ロールの凸割型との合わせ面を有する凹割型、及び/又は、外表面が弾性体で覆われた受割型であることが好ましい。内側ロールと外側ロールの対応する面が、凸割型と凹割型であることで、金属缶の胴部側壁に形成する凸状の模様又は凹状の模様を明瞭にすることができる。又、内側ロールと外側ロールの対応する面が、凸割型と受割型であることで、割型を共有化することができる。
【0008】
本発明に係る缶胴加工装置では、前記内側ロールは、凹割型及び/又は受割型を、前記外側ロールの凸割型ごとに備え、前記外側ロールは、凹割型及び/又は受割型を、前記内側ロールの凸割型ごとに備えることが好ましい。外側ロールの割型と内側ロールの割型とが組になっているので、凸割型の外表面に形成されている凸状の彫刻を最適な条件で金属缶に転写することができる。又、金属缶の胴部側壁の圧接時に金属缶の胴部側壁に形成される合わせ筋を少なくすることができる。
【0009】
本発明に係る缶胴加工装置では、前記内側ロールの割型及び前記外側ロールの割型は、前記金属缶の胴部の主軸を横断する方向に横分割されていることが好ましい。内側ロールの割型及び外側ロールの割型が横分割されていることで、金属缶の胴部側壁に形成される凸状の模様及び凹状の模様の配列及び位置を、金属缶の胴部の縦方向に沿って入れ替えることができる。
【0010】
又、前記内側ロールの割型及び前記外側ロールの割型は、或いは、前記金属缶の胴部の主軸を通る方向に縦分割されていることが好ましい。内側ロールの割型及び外側ロールの割型が縦分割されていることで、金属缶の胴部側壁に形成される凸状の模様及び凹状の模様の配列及び位置を、金属缶の胴部の胴回り方向に沿って入れ替えることができる。
【0011】
又、前記金属缶の胴部の主軸を横断する方向及び前記金属缶の胴部の主軸を通る方向に格子分割されていることが好ましい。内側ロールの割型及び外側ロールの割型が格子分割されていることで、金属缶の胴部側壁に形成される凸状の模様及び凹状の模様の配列及び位置を、割型単位で自在に入れ替えることができる。
【0012】
本発明に係る内側ロールは、金属缶の胴部側壁を内側ロールと外側ロールとの間に挟んで圧接することで、前記胴部側壁に凸状の模様及び凹状の模様を形成する缶胴加工装置の前記内側ロールにおいて、外表面に凸状の彫刻が形成されている凸割型と、外表面に凹状の彫刻が形成されている凹割型、及び/又は、外表面が弾性体で覆われた受割型と、を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る外側ロールは、金属缶の胴部側壁を内側ロールと外側ロールとの間に挟んで圧接することで、前記胴部側壁に凸状の模様及び凹状の模様を形成する缶胴加工装置の前記外側ロールにおいて、外表面に凸状の彫刻が形成されている凸割型と、外表面に凹状の彫刻が形成されている凹割型、及び/又は、外表面が弾性体で覆われた受割型と、を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る凹凸加工された金属缶の製造方法は、複数の割型に分割されてなり、該割型の少なくとも1つは、外表面に凸状の彫刻が形成されている凸割型である内側ロールを金属缶の内側に差し込み、複数の割型に分割されてなり、該割型の少なくとも1つは、外表面に凸状の彫刻が形成されている凸割型である外側ロールと、前記内側ロールとの間に前記金属缶の胴部側壁を挟んで圧接することで、前記胴部側壁に凸状の模様及び凹状の模様を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
複数の割型の組み合わせ及びその配列によってエンボスデザインが変更可能なので、金型を有効に活用してエンボスデザインのバリエーションを増やすことができる。又、金属缶の胴部の側壁に、凸状の模様と凹状の模様の両方を一度の加工で形成することができるので、エンボスデザインのバリエーションをさらに増やすことができる。又、金属缶の胴部をより立体的にできるので、金属缶の胴部を持ちやすくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
添付の図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。以下に説明する実施の形態は本発明の構成の例であり、本発明は、以下の実施の形態に制限されるものではない。図1は、缶胴加工装置の第1形態を示す模式図である。缶胴加工装置は、金属缶10aの胴部41aの側壁を内側ロール11と外側ロール12との間に挟んで圧接することで、胴部41aの側壁に凸状の模様35a、35b及び凹状の模様36a、36b、36cを形成する。金属缶10bは、金属缶10aに凸状の模様35a、35b及び凹状の模様36a、36b、36cの形成した後の状態を示す。
【0017】
金属缶10bは、炭酸飲料、清涼飲料、ビール又は発泡酒等の飲料を含む製品を収容する。金属缶10aは、例えば、アルミニウム又はスチール等の金属材料から形成されている。金属材料は、例えば、Snメッキ、Sn/Niメッキ等のメッキ鋼板、電解クロム酸処理鋼板等の表面処理鋼板である。金属缶10a又は10bの表面に、合成樹脂が被覆されていてもよい。
【0018】
金属缶10bは、例えば、ツーピース缶又はスリーピース缶である。金属缶10bがツーピース缶の場合、金属缶10aの形状は、図1に示すような円筒形状である。金属缶10bがスリーピース缶の場合は、金属缶10aの形状は、図1に示すような円筒形状であってもよいし、平板状であってもよい。
【0019】
内側ロール11及び外側ロール12は、複数の割型に分割されてなる。内側ロール11の割型の少なくとも1つは、外表面に凸状の彫刻31の形成されている凸割型21a、21bである。又、外側ロール12の割型の少なくとも1つは、外表面に凸状の彫刻32の形成されている凸割型23a、23b、23cである。図1では、内側ロール11が2つの凸割型21a、21bと3つの受割型22a、22b、22cの5つの割型に分割されてなり、外側ロール12が3つの凸割型23a、23b、23cと2つの受割型24a、24bとの5つの割型に分割されてなる例を示した。内側ロール11に配置される凸割型21a、21bの数は、図1では2個である例を示したが、1個又は3個以上であってもよい。外側ロール12に配置される凸割型23a、23b、23cの数は、図1では3個である例を示したが、2個又は4個以上であってもよい。
【0020】
内側ロール11の割型と外側ロール12の割型とは、互いに、エンボスを形成するための対応関係を有している。例えば、内側ロール11の凸割型21aには外側ロール12の受割型24aが対応し、凸割型21aと受割型24aとで金属缶10aの胴部41aの側壁を圧接することで、金属缶10aの胴部41aの側壁に凸状の模様35aを形成する。内側ロール11の凸割型21bには外側ロール12の受割型24bが対応し、凸割型21bと受割型24bとで金属缶10aの胴部41aの側壁を圧接することで、金属缶10aの胴部41aの側壁に凸状の模様35bを形成する。外側ロール12の凸割型23aには内側ロール11の受割型22aが対応し、凸割型23aと受割型22aとで金属缶10aの胴部41aの側壁を圧接することで、金属缶10aの胴部41aの側壁に凹状の模様36aを形成する。外側ロール12の凸割型23bには内側ロール11の受割型22bが対応し、凸割型23bと受割型22bとで金属缶10aの胴部41aの側壁を圧接することで、金属缶10aの胴部41aの側壁に凹状の模様36bを形成する。外側ロール12の凸割型23cには内側ロール11の受割型22cが対応し、凸割型23cと受割型22cとで金属缶10aの胴部41aの側壁を圧接することで、金属缶10aの胴部41aの側壁に凹状の模様36cを形成する。
【0021】
すなわち、内側ロール11の割型のうち、外側ロール12の凸割型23a、23b、23cとの間に金属缶10aの胴部41aの側壁を挟む割型は、例えば図1に示すように、外表面が弾性体で覆われた受割型22a、22b、22cである。内側ロール11の割型のうち、外側ロール12の凸割型23a、23b、23cとの間に金属缶10aの胴部41aの側壁を挟む割型は、外側ロール12の凸割型23a、23b、23cとの合わせ面を有する凹割型(不図示)であってもよい。例えば、外側ロール12の凸割型23aの凸状の彫刻32が凹状の模様36aを明瞭にすることが好ましい柄である場合に、凸割型23aとの合わせ面を有する凹割型(不図示)を内側ロール11が備えることで、明瞭な凹状の模様36aを形成することができる。内側ロール11の割型のうち、外側ロール12の凸割型23a、23b、23cとの間に金属缶10aの胴部41aの側壁を挟む割型は、外表面が弾性体で覆われた受割型と外側ロール12の凸割型23a、凸割型23b又は凸割型23cとの合わせ面を有する凹割型(不図示)との組み合わせであってもよい。
【0022】
さらに、内側ロール11の割型のうち、外側ロール12の受割型24a、24bとの間に金属缶10aの胴部41aの側壁を挟む割型は、例えば図1に示すように、外表面に凸状の彫刻31が形成されている凸割型21a、21bである。ここで、凸割型21a、21bの凸状の彫刻31の高さは、内側ロール11の脱型を容易にするため、外側ロール12の凸割型23a、23b、23cの凸状の彫刻32の高さよりも低いことが好ましい。凸状の彫刻31の高さは、内側ロール11を脱型できる高さとし、凸状の模様35a、35b及び凹状の模様36a、36b、36cによるが、例えば、0.1mm以上1.0mm以下であることが好ましい。微細な模様であっても明瞭に形成することができる。内側ロール11の割型のうち、外側ロール12の受割型24a、24bとの間に金属缶10aの胴部41aの側壁を挟む割型は、外表面が弾性体で覆われた受割型(不図示)であってもよい。
【0023】
なお、内側ロール11の割型のうち、外側ロール12の凸割型23a、23b、23cとの間に金属缶10aの胴部41aの側壁を挟む割型は、外表面に凸状の彫刻31が形成されている凸割型ではないことが好ましい。凸割型23a、23b、23c及び金属缶10aの胴部41aの側壁の破損を防ぐ。又、内側ロール11の割型のうち、外側ロール12の凹割型(不図示)との間に金属缶10aの胴部41aの側壁を挟む割型は、金属缶10aの胴部41aの側壁に合わせ筋が入らないよう、凹割型(不図示)ではないことが好ましい。
【0024】
外側ロール12の割型のうち、内側ロール11の凸割型21a、21bとの間に金属缶10aの胴部41aの側壁を挟む割型は、例えば図1に示すように、外表面が弾性体で覆われた受割型24a、24bである。外側ロール12の割型のうち、内側ロール11の凸割型21a、21bとの間に金属缶10aの胴部41aの側壁を挟む割型は、内側ロール11の凸割型21a、21bとの合わせ面を有する凹割型(不図示)であってもよい。例えば、内側ロール11の凸割型21aの凸状の彫刻31が凸状の模様35aを明瞭にすることが好ましい柄である場合に、凸割型21aとの合わせ面を有する凹割型(不図示)を外側ロール12が備えることで、明瞭な凸状の模様35aを形成することができる。又、外側ロール12の割型のうち、内側ロール11の凸割型21a、21bとの間に金属缶10aの胴部41aの側壁を挟む割型は、外表面が弾性体で覆われた受割型と内側ロール11の凸割型21a又は凸割型21bとの合わせ面を有する凹割型(不図示)との組み合わせであってもよい。
【0025】
さらに、外側ロール12の割型のうち、内側ロール11の受割型22a、22b、22cとの間に金属缶10aの胴部41aの側壁を挟む割型は、例えば図1に示すように、外表面に凸状の彫刻32が形成されている凸割型23a、23b、23cである。外側ロール12の割型のうち、内側ロール11の受割型22a、22b、22cとの間に金属缶10aの胴部41aの側壁を挟む割型は、外表面が弾性体で覆われた受割型(不図示)であってもよい。凸状の模様も凹状の模様も形成されない。
【0026】
なお、外側ロール12の割型のうち、内側ロール11の凸割型21a、21bとの間に金属缶10aの胴部41aの側壁を挟む割型は、外表面に凸状の彫刻32が形成されている凸割型ではないことが好ましい。凸割型21a、21b及び金属缶10aの胴部41aの側壁の破損を防ぐ。又、外側ロール12の割型のうち、内側ロール11の凹割型(不図示)との間に金属缶10aの胴部41aの側壁を挟む割型は、金属缶10aの胴部41aの側壁に合わせ筋が入らないよう、凹割型(不図示)ではないことが好ましい。
【0027】
内側ロール11は、受割型22a、22b、22cを外側ロール12の凸割型23a、23b、23cごとに備えることが好ましい。外側ロール12は、受割型24a、24bを内側ロール11の凸割型21a、21bごとに備えることが好ましい。例えば、内側ロール11は、凸割型23aと1対1で対応する受割型22aを備える。内側ロール11は1つの凸割型23aに対して2つ以上の受割型を備えていてもよいが、凸割型23aと受割型22aとが1対1で対応していれば、受割型同士の境界線が金属缶10aの胴部41aの側壁に合わせ筋となって現れる本数を少なくすることができる。又、受割型22aと凸割型21aとの境界線と、凸割型23aと受割型24aとの境界線と、が互いに対応する位置で重なることで、金属缶10aの胴部41aの側壁に表れる合わせ筋の本数を少なくすることができる。又、受割型22aを凸割型23aの専用の割型とすれば、受割型22aの外表面に覆われている弾性体の弾性材料、厚さ又は硬度を、凸割型23aの彫刻32に合わせて最適化することができる。
【0028】
内側ロール11の凸割型21a、21b及び受割型22a、22b、22cは、図1では金属缶10aの胴部41aの主軸101方向に沿って同一の高さを有しているが、この高さは互いに異なっていてもよい。又、外側ロール12の凸割型23a、23b、23c及び受割型24a、24bとは、図1では金属缶10aの胴部41aの主軸101方向に沿って同一の高さを有しているが、この高さは互いに異なっていてもよい。例えば、凸状の模様35aが文字を表現する場合には、金属缶10aの胴部41aの側壁に形成する文字の中に合わせ筋が入らないように、内側ロール11の凸割型21aは文字の全体が入る形状の割型とすることが好ましい。又、割型は、単位高さの整数倍の高さとなっていることが好ましい。例えば、凸割型21aが凸割型21bよりも高さを有している場合、凸割型21aの高さは凸割型21bの高さの整数倍であることが好ましい。組み合わせの自由度が増す。
【0029】
内側ロール11の割型及び外側ロール12の割型は、図1に示すように金属缶10aの胴部41aの主軸101を横断する方向に横分割されているか、或いは、金属缶10aの胴部41aの主軸101を通る方向に縦分割されているか、或いは、金属缶10aの胴部41aの主軸101を横断する方向及び金属缶10aの胴部41aの主軸101を通る方向に格子分割されていることが好ましい。
【0030】
図1に示すように、内側ロール11及び外側ロール12が横分割されている場合、凸状の模様35a、35bと凹状の模様36a、36b、36cとを、金属缶10aの胴部41aの主軸101方向に沿って交互に形成することができる。又、内側ロール11の凸割型21aと凸割型21bとを入れ替えれば、内側ロール11を新たに作製することなく凸状の模様35aと凸状の模様35bとを金属缶10aの胴部41aの主軸101方向に沿って交互に入れ替えたデザインの缶が作製できる。又、外側ロール12の凸割型23aと凸割型23bとを入れ替えれば、外側ロール12を新たに作製することなく凹状の模様36aと凹状の模様36bとを金属缶10aの胴部41aの主軸101方向に沿って交互に入れ替えたデザインの缶が作製できる。ここで、凸割型23aに対応する受割型22aと凸割型23bに対応する受割型22bとは、入れ替える必要はない。受割型22aが凹割型(不図示)である場合は凹割型(不図示)と受割型22bを入れ替える。内側ロール11及び外側ロール12は、例えば、金属缶10aの胴部41aの主軸101方向と垂直に分割されている。内側ロール11の割型の形状及び外側ロール12の割型の形状は、例えば図1に示すような環状である。内側ロール11の割型の周端部及び外側ロール12の割型の周端部は、隣接して配置される割型と互いに接し合う形状であることが好ましい。隣接して配置される割型同士が接し合う面は、平坦面に限られず、曲面であってもよい。
【0031】
図2は、缶胴加工装置の第2形態を示す模式図である。図2に示す缶胴加工装置では、内側ロール11の凸割型21a、21b、21c及び受割型22a、22b並びに外側ロール12の凸割型23a、23b、23c、23d、23e及び受割型24a、24b、24c、24d、24eは、金属缶10aの胴部41aの主軸101を通る方向に縦分割されている。ここで、金属缶10aの胴部41aの主軸101を通る方向とは、たとえば、金属缶10aの胴部41aの主軸101と平行な方向である。この場合、割型同士の切断面は、当該切断面内に金属缶10aの胴部41aの主軸101と平行な直線を有する。内側ロール11の割型及び外側ロール12の割型が縦分割されていることで、凸状の模様35a、35b、35cと凹状の模様36a、36b、36cとを、金属缶10aの胴部41aの胴周り方向に沿って交互に形成することができる。又、内側ロール11の凸割型21aと凸割型21bとを入れ替えれば、内側ロール11を新たに作製することなく凸状の模様35aと凸状の模様35bとを金属缶10aの胴部41aの胴周り方向に沿って交互に入れ替えたデザインの缶が作製できる。又、外側ロール12の凸割型23aと凸割型23bとを入れ替えれば、外側ロール12を新たに作製することなく凹状の模様36aと凹状の模様36bとを金属缶10aの胴部41aの胴周り方向に沿って交互に入れ替えたデザインの缶が作製できる。ここで、凸割型23aに対応する受割型22aと凸割型23bに対応する受割型22bとは、入れ替える必要はない。受割型22aが凹割型(不図示)である場合は凹割型(不図示)と受割型22bを入れ替える。内側ロール11の割型及び外側ロール12の割型の形状は、例えば図2に示すような柱状である。内側ロール11の割型の周端部及び外側ロール12の割型の周端部は、隣接して配置される割型と互いに接し合う形状であることが好ましい。隣接して配置される割型同士が接し合う面は、平坦面に限られず、曲面であってもよい。
【0032】
内側ロール11の割型及び外側ロール12の割型が金属缶10aの胴部41aの主軸101を横断する方向及び金属缶10aの胴部41aの主軸101を通る方向に格子分割されている場合、凸状の模様と凹状の模様を格子状に配列することができる。さらに、内側ロール11の割型及び外側ロール12の割型は、金属缶10aの胴部41aの位置によって分割の方向が異なっていてもよい。例えば、金属缶10aの胴部41aの上端部と下端部が横分割、金属缶10aの胴部41aの中央部が縦分割であれば、金属缶10bを持ちやすくすることができる。
【0033】
図1に示す内側ロール11の凸割型21a、21b及び外側ロール12の凸割型23a、23b、23cの外表面の材質は、硬質で耐摩耗性のあることが好ましく、例えば、凸割型21a、21b及び凸割型23a、23b、23cは金属、超硬合金、セラミックス、硬質樹脂からなることが好ましい。
【0034】
内側ロール11の受割型22a、22b、22cの弾性体の厚み及び外側ロール12の受割型24a、24bの弾性体の厚みは、0.5mm以上2.0mm以下が好ましい。微細な模様であっても明瞭に形成することができる。又、弾性体の内側に配置される芯は、硬質な金属材料が好ましく、例えば、鉄又はモリブデン、タングステン若しくはクロムと鉄との合金である。合金は、例えば、ステンレス又はダイス鋼である。
【0035】
弾性体を構成する弾性材料は、例えば、ゴム又は合成樹脂である。又、弾性材料は、発泡させたゴム又は合成樹脂を含む。ゴムとしては、例えば、汎用ゴム、特殊ゴム又は熱可塑性エラストマーがある。汎用ゴムは、例えば合成ゴム又は天然ゴムである。合成ゴムとしては、例えば、ポリイソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴムがある。特殊ゴムは、耐油性、耐薬品性などの特殊性能を備えたゴムであり、例えば、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴムがある。熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン系、オレフィン系、塩化ビニル系、ウレタン系、エステル系、ポリアミド系がある。熱可塑性エラストマーの具体例としては、スチレン−ジエン系共重合エラストマー及びその水素添加物、エチレン−炭素数3以上のα−オレフィン系共重合エラストマー、エチレン−炭素数3以上のα−オレフィン−ポリエン系共重合エラストマー及びその水素添加物、エチレン−不飽和カルボン酸−α,β−不飽和カルボン酸エステル系共重合エラストマー、アクリロニトリル系共重合エラストマーがある。耐摩耗性と弾性回復力の大きい弾性材料が好ましく、例えば、ニトリルゴムやウレタンゴムが好ましい。
【0036】
合成樹脂は、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂がある。熱可塑性樹脂としては、ポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、硬質ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、ABS樹脂、脂肪族ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリオキシメチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン又はポリフェニレンスルフィド、或いは、これらの共重合体又はブレンド体がある。熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル、ジアリルフタレート樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレア樹脂、メラミン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂又はアクリル樹脂、或いは、これらの組み合わせがある。なお、前述のゴム又は合成樹脂のうちの2種以上が含まれていてもよい。又、添加剤が含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、可塑剤、分散剤、強化剤がある。可塑剤を添加することで、弾性材料に変化させることができる。
【0037】
弾性体は、JIS K 6253:1997「加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの硬さ試験方法」の国際ゴム硬さM法に規定される硬さが60以上95以下であることが好ましい。この硬さは、ゴム又は合成樹脂に限定されず、発泡させたゴム又は合成樹脂であってもよい。金属缶10aの胴部41aの側壁に形成する凸状の模様35a、35b又は凹状の模様36a、36b、36cをより明瞭にすることができる。弾性体の硬さが60未満の場合、金属缶10aの胴部41aの側壁が破断しやすくなる。一方、弾性体の硬さが95超の場合、金属缶10aの胴部41aの側壁に凸状の模様35a、35b又は凹状の模様36a、36b、36cが形成できない場合がある。さらに、弾性体の硬さは、70以上80以下であることが好ましい。以下、弾性体の硬さは、JIS K 6253:1997「加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの硬さ試験方法」の国際ゴム硬さM法に規定される硬さをいう。
【0038】
内側ロール11の凹割型(不図示)及び外側ロール12の凹割型(不図示)は、内側ロール11の凸割型21a、21b及び外側ロール12の凸割型23a、23b、23cと同様、硬質で耐摩耗性のあることが好ましく、例えば、金属、超硬合金、セラミックス、硬質樹脂からなることが好ましい。
【0039】
凹凸加工された金属缶の製造方法について、図1を用いて説明する。金属缶10aの胴部41aの側壁に形成する模様に合わせて割型を選択する。例えば、金属缶10aの胴部41aの側壁に形成する凸状の模様35a、35bに応じて、内側ロール11の凸割型21a、21bを選択する。外側ロール12の受割型24a、24bを選択する。金属缶10aの胴部41aの側壁に形成する凹状の模様36a、36b、36cに応じて、外側ロール12の凸割型23a、23b、23cを選択する。内側ロール11の受割型22a、22b、22cを選択する。
【0040】
ここで、図3に、内側ロールの凸割型及び受割型並びに外側ロールの凸割型及び受割型の一例を示す模式図を示す。内側ロールの凸割型21aと外側ロールの受割型24a、内側ロールの凸割型21bと外側ロールの受割型24b、内側ロールの凸割型21cと外側ロールの受割型24c、外側ロールの凸割型23aと内側ロールの受割型22a、外側ロールの凸割型23bと内側ロールの受割型22b、外側ロールの凸割型23cと内側ロールの受割型22cが、それぞれ対応関係を有していて、それぞれの凸割型に対応する受割型を選択する。内側ロールの凸割型21aと外側ロールの受割型24aとの組み合わせから、内側ロールの受割型22aと外側ロールの凸割型23aとの組み合わせに入れ替えることで、金属缶の胴部の側壁に形成する模様を、凸状の模様から凹状の模様へと入れ替えることができる。又、内側ロールの凸割型21aと内側ロールの凸割型21bとが並んでいた場合に、内側ロールの凸割型21aと内側ロールの凸割型21bとの配置を入れ替えることで、金属缶の胴部の側壁に形成する模様を入れ替えることができる。又、内側ロールの凸割型21aと内側ロールの凸割型21bとの間隔を広げる場合は、内側ロールの凸割型21aと内側ロールの凸割型21bとの間に内側ロールの受割型22cを入れる。外側ロールのうち、内側ロールの受割型22cと対応する位置に配置させる割型として、外側ロールの受割型24cを選択する。内側ロールの受割型22cと外側ロールの受割型24cとを選択することで、凸状の模様も凹状の模様も形成されない領域を金属缶の胴部の側壁に設けることができる。このように、内側ロールの凸割型21a、21b、21c、内側ロールの受割型22a、22b、22c、外側ロールの凸割型23a、23b、23c、外側ロールの受割型24a、24b、24cの配列を組み合わせることで、割型を有効活用して様々なデザインを表現することができる。
【0041】
次に、図1に示すように、受割型22a、凸割型21a、受割型22b、凸割型21b、受割型22cの順に並ぶように、内側ロール11を組み立てる。凸割型23a、受割型24a、凸割型23b、受割型24b、凸割型23cの順に並ぶように外側ロール12を組み立てる。内側ロール11の割型及び外側ロール12の割型が横分割されているので、内側ロール11及び外側ロール12のそれぞれの芯を利用して簡単に組み立てることができる。
【0042】
金属缶10aの胴部41aの内側に内側ロール11を差し込み、金属缶10aの胴部41aの側壁を外側ロール12と内側ロール11との間に挟んで圧接する。内側ロール11の凸割型21a、21bと、外側ロール12の凸割型23a、23b、23cと、で金属缶10aの胴部41aの側壁を圧接するので、凸状の模様35a、35b及び凹状の模様36a、36b、36cを一度に形成することができる。金属缶10bの胴部41bをより立体的にできるので、金属缶10bの胴部41bを持ちやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】缶胴加工装置の第1形態を示す模式図である。
【図2】缶胴加工装置の第2形態を示す模式図である。
【図3】内側ロールの凸割型及び受割型並びに外側ロールの凸割型及び受割型の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0044】
10a、10b 金属缶
11 内側ロール
12 外側ロール
21a、21b 内側ロールの凸割型
22a、22b、22c 内側ロールの受割型
23a、23b、23c 外側ロールの凸割型
24a、24b 外側ロールの受割型
31 内側ロールの凸割型の外表面に形成されている凸状の彫刻
32 外側ロールの凸割型の外表面に形成されている凸状の彫刻
35a、35b 金属缶の胴部の側壁に形成された凸状の模様
36a、36b、36c 金属缶の胴部の側壁に形成された凹状の模様
41a、41b 金属缶の胴部
101 金属缶の胴部の主軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属缶の胴部側壁を内側ロールと外側ロールとの間に挟んで圧接することで、前記胴部側壁に凸状の模様及び凹状の模様を形成する缶胴加工装置において、
前記内側ロール及び外側ロールは、複数の割型に分割されてなり、
前記内側ロールの割型の少なくとも1つは、外表面に凸状の彫刻が形成されている凸割型であり、
前記外側ロールの割型の少なくとも1つは、外表面に凸状の彫刻が形成されている凸割型であることを特徴とする缶胴加工装置。
【請求項2】
前記内側ロールの割型のうち、前記外側ロールの凸割型との間に前記胴部側壁を挟む割型は、前記外側ロールの凸割型との合わせ面を有する凹割型、及び/又は、外表面が弾性体で覆われた受割型であり、
前記外側ロールの割型のうち、前記内側ロールの凸割型との間に前記胴部側壁を挟む割型は、前記内側ロールの凸割型との合わせ面を有する凹割型、及び/又は、外表面が弾性体で覆われた受割型であることを特徴とする請求項1に記載の缶胴加工装置。
【請求項3】
前記内側ロールは、凹割型及び/又は受割型を、前記外側ロールの凸割型ごとに備え、
前記外側ロールは、凹割型及び/又は受割型を、前記内側ロールの凸割型ごとに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の缶胴加工装置。
【請求項4】
前記内側ロールの割型及び前記外側ロールの割型は、
前記金属缶の胴部の主軸を横断する方向に横分割されているか、或いは、
前記金属缶の胴部の主軸を通る方向に縦分割されているか、或いは、
前記金属缶の胴部の主軸を横断する方向及び前記金属缶の胴部の主軸を通る方向に格子分割されていることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の缶胴加工装置。
【請求項5】
金属缶の胴部側壁を内側ロールと外側ロールとの間に挟んで圧接することで、前記胴部側壁に凸状の模様及び凹状の模様を形成する缶胴加工装置の前記内側ロールにおいて、
外表面に凸状の彫刻が形成されている凸割型と、
外表面に凹状の彫刻が形成されている凹割型、及び/又は、外表面が弾性体で覆われた受割型と、
を備えることを特徴とする内側ロール。
【請求項6】
金属缶の胴部側壁を内側ロールと外側ロールとの間に挟んで圧接することで、前記胴部側壁に凸状の模様及び凹状の模様を形成する缶胴加工装置の前記外側ロールにおいて、
外表面に凸状の彫刻が形成されている凸割型と、
外表面に凹状の彫刻が形成されている凹割型、及び/又は、外表面が弾性体で覆われた受割型と、
を備えることを特徴とする外側ロール。
【請求項7】
複数の割型に分割されてなり、該割型の少なくとも1つは、外表面に凸状の彫刻が形成されている凸割型である内側ロールを、金属缶の内側に差し込み、
複数の割型に分割されてなり、該割型の少なくとも1つは、外表面に凸状の彫刻が形成されている凸割型である外側ロールと、前記内側ロールとの間に前記金属缶の胴部側壁を挟んで圧接することで、前記胴部側壁に凸状の模様及び凹状の模様を形成することを特徴とする凹凸加工された金属缶の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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