説明

缶蓋及びそのタブの製造方法

【課題】比較的小さな力で開缶することができ、好適な開缶性を確保することができる缶蓋及びそのタブの製造方法を提供する。
【解決手段】タブ2の一端部21は、その先端に形成された切欠201を介して両側縁部202が分離されるとともに、これら両側縁部202が裏面側に折り返されることにより、一端部21の外周面から裏面にかけてカール部26が形成され、一端部21の先端の裏面側には、切欠201により分離された両側縁部202の切欠端縁203がカール部26の表面から缶蓋本体1に向けて突出している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶体の開口端部に巻締められる缶蓋及びその缶蓋に用いられるタブの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
飲料缶の缶蓋として、特許文献1及び特許文献2に示されるように、タブを缶蓋本体に取り付けたままの状態で飲み口が開口可能なステイオンタブ方式のものが知られている。
このタブを備えた缶蓋は、タブがリベットによって取り付けられており、タブの指掛け部を引き上げることにより、リベット近傍が折れ曲がって支点となり、タブノーズ部(タブの先端)が作用点となって、パネル表面のスコアに囲まれた開口片を押圧、没入してスコアを破断させ、開口片を開口させるようになっている。この際、パネル表面は、スコア形状に沿って破断され、開口片は缶蓋と離れることなく飲料缶内部に押し入れられて開缶する。
【0003】
ところで、近年では、内容物の注ぎ性を向上させることに対する要望が高まっている。この注ぎ性を向上させるための手段として、例えば、開口片の開口面積を拡げるようにしているが、開口片の開口面積を大きくすると、開缶作業時に大きな破断力が必要となる。
そこで、特許文献1では、開缶作業時の破断力を低減するために、タブのリベットを囲んで設けられたU字状のタブ切り込み部の両先端をタブノーズ部の先端方向に延長することにより、タブの折れ曲がり位置(支点)を開缶動作の作用点であるタブノーズ部の先端(作用点)に近づけて初期開缶力を下げることが提案されている。
また、特許文献2には、半円形状に加工されたタブノーズ部の縁端のうち、終端側の四分の一の縁端部分に山状盛り上がり部を設けており、スコアを終端部まで完全に破断させるための提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−48171号公報
【特許文献2】特開2006−56550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のタブの場合、タブの折れ曲がり位置をタブノーズ部の先端に近づけることにより、初期開缶力を低下させることができるが、その低減は十分ではない。
また、特許文献2のようにタブノーズ部の縁端の一部を大きくして形成した場合、タブによる押圧力をスコア終端部に伝達させることができるが、開缶作業時における開缶力の低減については十分な対策がなされていない。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、比較的小さな力で開缶することができ、好適な開缶性を確保することができる缶蓋及びその缶蓋に用いられるタブの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の缶蓋は、缶蓋本体の上面中央部に突出して形成されるリベットと、スコアにより画成された開口片と、前記開口片の上に一端部を重ねて前記リベットに取り付けられるタブとを備え、前記タブの他端部を上方に引き上げることにより、前記一端部が前記開口片を下方に押圧して前記スコアを破断させ、前記開口片を開口させる缶蓋であって、前記タブの前記一端部は、その先端に形成された切欠を介して両側縁部が分離されるとともに、これら両側縁部が裏面側に折り返されることにより、前記一端部の外周面から裏面にかけてカール部が形成され、前記一端部の先端の裏面側には、前記切欠により分離された両側縁部の切欠端縁が前記カール部の表面から前記缶蓋本体に向けて突出していることを特徴とする。
【0008】
この缶蓋においては、タブの一端部の先端に位置する両側縁部の切欠端縁を、その周辺のカール部表面から缶蓋本体に向けて突出させて設けているので、この切欠端縁の突出部により開缶作業時の開口片とタブとの接触面積を減らすことができるとともに、その切欠端縁が開口片に当接して食い込むことにより接触点が安定し、開口片とタブとの滑りを低減させ、押圧力を確実に伝達させることができるので、開缶初期の破断力(ポップ値)を低下させることができる。
さらに、初期破断後のティア動作においても、タブの押下げ方向に突出した切欠端縁が開口片に食い込んで固定された状態となることから、作用点が安定し、開口片とタブとの滑りを低減させて、押圧力を効果的に伝達させ、開缶性を向上させることができる。
【0009】
そして、本発明のタブの製造方法は、金属板を切り抜いて成形され、一端部に外周面から裏面にかけてカール部が形成されたタブの製造方法であって、前記金属板における前記一端部の先端に相当する位置に切欠を形成し、前記切欠を介して切り抜くことにより分離状態とされた両側縁部を裏面側に折り返すとともに、その折り返す途中で両側縁部の切欠端縁同士を突き合わせることにより、前記切欠端縁の突合せ部が裏面側に隆起した前記カール部を形成することを特徴とする。
切欠を通常のものより小さく形成しておき、両側縁部を裏面側に折り返すと、カール部が完全に形成される前にその切欠端縁同士が突合せられ、その突合せ状態でさらに折り返されることにより、突合せ部がその周辺のカール部表面から隆起させられる。この場合、切欠端縁の突出量は、切欠形状を調整することにより適宜に設定することができる。
【0010】
また、本発明のタブの製造方法は、金属板を切り抜いて成形され、一端部に外周面から裏面にかけてカール部が形成されたタブの製造方法であって、前記金属板における前記一端部の先端に相当する位置に切欠を形成し、前記切欠を介して切り抜くことにより分離状態とされた両側縁部の切欠端縁を立ち上げた後、前記両側縁部を裏面側に折り返すことにより、立ち上げた前記切欠端縁が裏面側に突出した前記カール部を形成することを特徴とする。
このように、切欠端縁を立ち上げてから両側縁部を裏面側に折り返すことで、その切欠端縁が突出したカール部を形成することができる。この場合、立ち上げ高さを調整することにより、カール部表面からの突出量を適宜に設定することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、特に開缶初期の破断力を低下させて比較的小さな力で開缶することができ、好適な開缶性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の缶蓋の一実施形態を示す平面図である。
【図2】図1に示す缶蓋の断面図である。
【図3】スコア部を説明する平面部である。
【図4】タブを説明する裏面図である。
【図5】図4に示すA−A断面図である。
【図6】他の実施形態におけるタブの一端部を説明する断面図であり、(a)がカール加工前の状態であり、(b)がカール加工後の状態である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の缶蓋の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。
本実施形態の缶蓋100は、飲料用の缶に用いられる、いわゆるステイオンタブ式缶蓋であり、図1に示すように、缶蓋本体1とタブ2とにより構成され、これらの缶蓋本体1およびタブ2は、それぞれ純アルミニウムもしくはアルミニウム合金により形成されている。
【0014】
缶蓋本体1は、図1および図2に示すように、その中央部分に配置される円板状をなすパネル部10aと、パネル部10aの外周縁からコーナー部11を介して連続し下方に向けた環状凹部12を形成するカウンターシンク部13と、カウンターシンク部13の外周縁から上方に向けてほぼ拡径しながら延在するチャック壁部14と、チャック壁部14の外周縁から連なるショルダー部15と、ショルダー部15に連続するショルダーカール部16とから構成されている。
【0015】
パネル部10aの上面には、図1に示すように、パネル部10a(缶蓋本体1)の中央部に突出したリベット3が形成されており、このリベット3にタブ2が取り付けられている。また、パネル部10aの上面のリベット3から特定の半径方向に延びる部分(図1ではリベット3の左側)にスコア部4により画成される開口片5が形成され、開口片5とはリベット3を介して反対側(図1ではリベット3の右側)に指かけ凹部6が形成されており、リベット3と指かけ凹部6との間にディンプルと称される凸部7が形成されている。そして、これら開口片5、指かけ凹部6、凸部7を取り囲むように、凹状のパネルデボス10bが形成されている。
【0016】
スコア部4は、図3に示すように、始端部41と、リベット3をほぼ半分囲む円弧状の初期破断部となる円弧形状部42と、略楕円形状の中間部43と、終端部44とで構成され、始端部41と終端部44との間にパネル部10aとの接続部45を一部残して形成され、開口片5を画成している。円弧形状部42は、リベット3周囲のコイニングにより押しつぶされたリング状圧印部に形成される。
また、スコア部4は、タブ2による押圧によって破断されて開口片5を形成する主スコア4aと、主スコア4aの内側に隣接して平行に形成される補助スコア4bとを備えた二重構造とされており、スコア部4の始端部41および終端部44で、主スコア4aと補助スコア4bとが接続されている。
そして、補助スコア4bは、隣接する主スコア4aよりも浅く形成されており、タブ2の押圧によっては破断されない構成となっている。
【0017】
開口片5上には、スコア部4に沿うようにして突出させられたインナービード8が形成され、開口片5を補強している。
指かけ凹部6は、タブ2の引き上げ部22を引き上げる際に、引き上げ部22の下方に指先を配置して引き上げ易くするものであり、引き上げ部22下方近傍のパネル部10aに半径方向外方にかけて形成されている。
凸部7は、パネルデボス10bに突出し、タブ2の幅方向に間隔をおいて二つ形成されている。そして、タブ2の外縁部が凸部7に引っ掛かり、タブ2の回転移動を防止できるようになっている。
【0018】
タブ2は、アルミニウム等の金属板を切り抜いてプレス加工等により平坦に形成されており、開口片5の上方に重なって配置された一端部21と、リベット3を挟んで反対側に形成された他端部の引き上げ部22とを備え、引き上げ部22には、タブ2の厚さ方向に開口するタブホール部23が形成されている。一端部21と引き上げ部22との間には、U字状のスロット24aによりタング部24が形成され、タング部24にリベット孔25が形成されており、そのリベット孔25にリベット3が挿入されてタング部24の下面がパネルデボス10bの表面に当接した状態でタブ2が取り付けられている。
なお、リベット3は、パネル部10aの中心の周囲を上方からリング状に圧印するコイニング加工を施して、パネル部10aの中心部を上方に張り出させることにより形成される。
【0019】
次に、タブ2の一端部21について説明する。
図4において、二点鎖線は打ち抜き成形する前のブランク200の外形を示しており、斜線で示した部分は裏側に折り返されてカール部となる部分を示す。
一端部21は、図4に示すように、先端に形成された切欠201を介して両側縁部202が分離されており、これら両側縁部202が裏面側に折り返されることにより、一端部21の外周面から裏面にかけてカール部26が形成され、一端部21の先端の裏面側には、切欠201により分離された両側縁部202の切欠端縁203が相互に突合せられ、その突合せ部27が、図5に示すように、カール部26の表面から缶蓋本体1に向けて突出して設けられている。
そして、カール部26には、切欠端縁203の突合せ部27を挟んで少なくとも一対の凹部28が設けられている。凹部28は、開口片5上に設けられたインナービート8との接触を避けるとともに、カール部26を補強して、開缶時に力が加わっても切欠端縁203の突合せ部27が開いて割けるのを防止している。
【0020】
このようなタブ2を成形するには、先ず、金属板にタブホール部23等のタブ2に形成される穴を順次形成し、次に、所要幅の連結片204を除いてタブ2のブランク200を打ち抜き、そのブランク200を連結片204で連結された状態で、適宜凹凸形状等の成形を施し、且つ、外周縁にカール成形を施し、最後に連結片204を切断することによりタブ2を完成させる。
【0021】
この場合、タブ2のブランク200は、図4に示すように、一端部21の先端に相当する位置にV字状の切欠201を形成した後に、この切欠201を介してブランク200の外形を切り抜くことにより形成される。切欠201は、従来のものよりV字の開き角度が小さく形成されており、切欠201により分離状態とされた両側縁部202を裏面側に折り返す際に、そのカール加工の途中で両側縁部202の切欠端縁203が相互に突合せられた状態となり、その状態で最後までカール加工すると、切欠端縁203の突合せ部27が裏面側に隆起したカール部26が形成される。この切欠端縁203は、金属板の切断端縁であり、その切欠端縁203の板厚の一方側、つまり、図5にXで示すカール部26の内周側のエッジで両側縁部202の切欠端縁203相互が突合せられ、板厚の他方側、つまり、図5にYで示すカール部26の外周側のエッジが缶蓋本体1のパネル部10aに向けられた状態となっている。
切欠端縁203のカール部26からの突出量は、切欠形状を調整することにより適宜に設定することができる。
【0022】
なお、図6(a)に示すように、両側縁部202の切欠端縁203を予め立ち上げておき、その後、両側縁部202を裏面側に折り返すことにより、図6(b)に示すように、立ち上げた状態の切欠端縁203を突き合わせて、裏面側に突出したカール部26を形成するようにしてもよい。この場合は、切欠端縁203の大部分が、缶蓋本体1のパネル部10aに向けられた状態となる。切欠端縁203の立ち上げ高さを調整することにより、カール部26表面からの突出量を適宜に設定することができる。
【0023】
このように構成される缶蓋100において、タブ2の引き上げ部22を上方に引き上げると、まず、開口片5上のタブ2の一端部21の先端に突出した切欠端縁203が支点となってリベット3が上方に持ち上げられる。このとき、切欠端縁203により開口片5との接触面積を減らすことができるとともに、その切欠端縁203が開口片5に当接して食い込むことにより支点が安定し、開口片5とタブ2との滑りを低減させ、押圧力を確実に伝達させることができる。
これにより、主スコア4aの円弧形状部42の開口片5側がタブ2により押さえられた状態で、円弧形状部42のリベット3側が上方に持ち上げられ、円弧状形状部42にせん断力が作用して破断する(ポップ動作)。
【0024】
そして、さらにタブ2を持ち上げていくと、リベット3が支点で、作用点がタブ2の一端部21となり、スコア部4に囲まれた開口片5がタブ2により缶内に押し込まれながらスコア部4が順次破断して開口する(ティア動作)。
この際も、一端部21の切欠端縁203が開口片5に食い込んで固定された状態となることから、作用点が安定し、開口片5とタブ2との滑りを低減させて、押圧力を効果的に伝達させ、開缶性を向上させることができる。
【0025】
なお、本発明は上記実施形態の構成のものに限定されるものではなく、細部構成においては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0026】
1 缶蓋本体
2 タブ
3 リベット
4 スコア部
4a 主スコア
4b 補助スコア
5 開口片
6 指かけ凹部
7 凸部
8 インナービード
10a パネル部
10b パネルデボス
11 コーナー部
12 環状凹部
13 カウンターシンク部
14 チャック壁部
15 ショルダー部
16 ショルダーカール部
21 一端部
22 引き上げ部
23 タブホール部
24 タング部
25 リベット孔
26 カール部
27 突合せ部
28 凹部
41 始端部
42 円弧形状部
43 中間部
44 終端部
45 接続部
100 缶蓋
200 ブランク
201 切欠
202 両側縁部
203 切欠端縁
204 連結片


【特許請求の範囲】
【請求項1】
缶蓋本体の上面中央部に突出して形成されるリベットと、スコアにより画成された開口片と、前記開口片の上に一端部を重ねて前記リベットに取り付けられるタブとを備え、前記タブの他端部を上方に引き上げることにより、前記一端部が前記開口片を下方に押圧して前記スコアを破断させ、前記開口片を開口させる缶蓋であって、前記タブの前記一端部は、その先端に形成された切欠を介して両側縁部が分離されるとともに、これら両側縁部が裏面側に折り返されることにより、前記一端部の外周面から裏面にかけてカール部が形成され、前記一端部の先端の裏面側には、前記切欠により分離された両側縁部の切欠端縁が前記カール部の表面から前記缶蓋本体に向けて突出していることを特徴とする缶蓋。
【請求項2】
金属板を切り抜いて成形され、一端部に外周面から裏面にかけてカール部が形成されたタブの製造方法であって、前記金属板における前記一端部の先端に相当する位置に切欠を形成し、前記切欠を介して切り抜くことにより分離状態とされた両側縁部を裏面側に折り返すとともに、その折り返す途中で両側縁部の切欠端縁同士を突き合わせることにより、前記切欠端縁の突合せ部が裏面側に隆起した前記カール部を形成することを特徴とするタブの製造方法。
【請求項3】
金属板を切り抜いて成形され、一端部に外周面から裏面にかけてカール部が形成されたタブの製造方法であって、前記金属板における前記一端部の先端に相当する位置に切欠を形成し、前記切欠を介して切り抜くことにより分離状態とされた両側縁部の切欠端縁を立ち上げた後、前記両側縁部を裏面側に折り返すことにより、立ち上げた前記切欠端縁が裏面側に突出した前記カール部を形成することを特徴とするタブの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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