説明

缶蓋及び缶蓋用タブ

【課題】タブの指掛かり性を損なうことなく、かつタブの強度低下をも生じさせずに、缶蓋同士を積み重ねた際の内面接触を回避することができる缶蓋およびその缶蓋に用いられるタブを提供する。
【解決手段】缶蓋本体1の上面中央部に突出して形成されるリベット3と、スコアにより画成された開口片5と、開口片5の上に一端部21を重ねてリベット3に取り付けられるタブ2と、タブ2の他端部側に形成される指かけ凹部6とを備え、タブ2の他端部を上方に引き上げることにより、一端部21が開口片5を下方に押圧してスコアを破断させ、開口片5を開口させる缶蓋100であって、タブ2の他端部の端縁は、タブ2の長手方向に直交するフラット部22aを有しており、そのフラット部22aの両端に位置する角部22bの上面が、下方に凹まされて低く形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶体の開口端部に巻締められる缶蓋及びその缶蓋に用いられるタブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
飲料缶の缶蓋として、特許文献1に示されるように、タブを缶蓋本体に取り付けたままの状態で飲み口が開口可能なステイオンタブ方式のものが知られている。
このタブを備えた缶蓋は、タブがリベットによって取り付けられており、タブの指かけ部を引き上げることにより、リベット近傍が折れ曲がって支点となり、タブノーズ部(タブの先端)が作用点となって、パネル表面のスコアに囲まれた開口片を押圧、没入してスコアを破断させ、開口片を開口させるようになっている。この際、パネル表面は、スコア形状に沿って破断され、開口片は缶蓋と離れることなく飲料缶内部に押し入れられて開缶する。
【0003】
そして、このような缶蓋においては、タブの指かけ部を指先で引き上げる際の指かけを容易にするため、タブの指かけ部の下方付近からパネル部の外周部にかけて指かけ時に指の一部が入る凹部が形成されている。また、特許文献1においては、タブの指かけ部の裏面に滑り止め用の凹凸部を形成し、指滑りを防止して、開缶性を向上させた缶蓋が提案されている。
また、このように形成された缶蓋は、缶体に巻き締められるまでの間に搬送される過程において、他の缶蓋と一緒に複数枚が積層状態で梱包(袋詰め)される。この積層状態においては、各缶蓋は、缶蓋のカール部の下面が、下側に位置する他の缶蓋のカール部の上面に接触し、パネル部及びタブの部分は接触しないように設計されている。
【0004】
ところで、近年では、材料の使用量を低減するために缶蓋を薄肉にするとともに、ブランク径(成形時の打ち抜き径)を小さくして形成することがなされており、これに伴い、カール部の高さ(カールハイト)を小さくした缶蓋が開発されている。しかしながら、このような缶蓋を積層状態とした際に、一つの缶蓋のタブと、他の缶蓋のパネル部の下面とが接触し易くなるという新たな問題が生じている。
特に、重ね合わせた缶蓋同士の載置方向がずれると、タブと指かけ凹部の裏面とが接触することがある。その結果、タブの成形時に使用される油が、重ねられた缶蓋のパネル裏面に付着し、この缶蓋を、内容物を充填して飲料缶とした際に、その内容物がビール等の炭酸飲料の場合には、泡立ち性が低下するおそれがある。
また、これらの缶蓋が積み重ねられて袋詰めされる際に、一部の缶蓋が袋の中で反転して袋詰めされるおそれがあり、高さの不揃いにより、各袋に入れる缶蓋の入り数不足や過多等の原因となる。
【0005】
そこで、特許文献2では、タブとパネル裏面との接触を防止するために、タブの指かけ部の厚みを薄くするとともに、その指かけ部直下に指かけ凹部よりも深さの浅い凹部を形成することで、缶蓋の積み重ね性を悪化させることなく、タブの指掛かり性を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−126157号公報
【特許文献2】特開2010−70225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2のように、タブの指かけ部の厚みを薄くした場合、その部分の折れ曲がり強度が低下して、飲料缶とした際に開缶不良が生じるというおそれがある。特に、タブの成形時にタブ同士を連結している連結片がタブの側面に設けられる構成の場合には、連結片を切断した切断面付近が折れ曲がり易くなる。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、タブの指掛かり性を損なうことなく、かつタブの強度低下をも生じさせずに、缶蓋同士を積み重ねた際の内面接触を回避することができる缶蓋およびその缶蓋に用いられる缶蓋用のタブを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の缶蓋は、缶蓋本体の上面中央部に突出して形成されるリベットと、スコアにより画成された開口片と、前記開口片の上に一端部を重ねて前記リベットに取り付けられるタブと、前記タブの他端部側に形成される指かけ凹部とを備え、前記タブの他端部を上方に引き上げることにより、前記一端部が前記開口片を下方に押圧して前記スコアを破断させ、前記開口片を開口させる缶蓋であって、前記タブの他端部の端縁は、前記タブの長手方向に直交するフラット部を有しており、そのフラット部の両端に位置する角部の上面が、下方に凹まされて低く形成されていることを特徴とする。
【0010】
この缶蓋においては、タブのリベット中心から最も遠い位置となるフラット部の角部を、下方に凹ませて形成しているので、缶蓋同士を積み重ねた際に、その角部が他の缶蓋の指かけ凹部の下方に配置された場合においても、これらの接触を確実に回避することができる。
また、タブの他端部の角部という、わずかな箇所だけを凹ませた形状とするだけで対策が行えるため、タブの強度を低下させずに構成することができる。
さらに、タブの他端部の角部だけを凹ませており、タブと指かけ凹部との隙間は従来通りに確保することができるので、タブの指掛かり性を損なうことなく形成することができる。
【0011】
また、本発明の缶蓋において、前記角部が前記フラット部よりも面方向に突出して形成されているとよい。
この場合、角部はタブの厚み方向には上面側を凹ませた形状となっているが、その分、面方向に広がって設けられる。これにより、広がって(突出して)設けられた角部がガイドとなり、角部に挟まれた他端部のフラット部に指先を案内することができ、指掛かり性を向上させることができる。
【0012】
さらに、本発明の缶蓋において、前記フラット部の中央部の下面は、上方に凹まされて引き上げ凹部が形成されているとよい。
下方に低く形成された角部を避けて、フラット部の中央部を上方に凹ませて引き上げ凹部を形成しているので、タブの他端部の強度を低下させることなく、引き上げ凹部と指かけ凹部との隙間を広げることができ、タブの指掛かり性を向上させることができる。
【0013】
そして、本発明の缶蓋用のタブは、缶蓋本体の上面中央部に突出して形成されるリベットに取り付けられ、前記缶蓋本体にスコアにより画成された開口片の上に一端部を重ねて、前記リベットを介して前記一端部と反対方向に延びる他端部とを備えた缶蓋用のタブであって、前記タブの他端部の端縁は、前記タブの長手方向に直交するフラット部を有しており、そのフラット部の両端に位置する角部の上面が、下方に凹まされて低く形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、タブの指掛かり性を損なうことなく、かつタブの強度低下をも生じさせずに、缶蓋同士を積み重ねた際の内面接触を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の缶蓋の一実施形態を示す平面図である。
【図2】図1に示すA−A断面図である。
【図3】タブの平面図である
【図4】図3に示すB−B矢視図である。
【図5】図3に示すタブの裏面図である。
【図6】缶蓋を積み重ねた状態を説明する要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の缶蓋の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。
本実施形態の缶蓋100は、飲料用の缶に用いられる、いわゆるステイオンタブ式缶蓋であり、図1に示すように、缶蓋本体1とタブ2とにより構成され、これらの缶蓋本体1およびタブ2は、それぞれアルミニウム合金により形成されている。
【0017】
缶蓋本体1は、図1および図2に示すように、その中央部分に配置される円板状をなすパネル部10aと、パネル部10aの外周縁からコーナー部11を介して連続し下方に向けた環状凹部12を形成するカウンターシンク部13と、カウンターシンク部13の外周縁から上方に向けてほぼ拡径しながら延在するチャック壁部14と、チャック壁部14の外周縁から連なるショルダー部15と、ショルダー部15に連続するカール部16とから構成されている。
【0018】
パネル部10aの上面には、図1に示すように、パネル部10a(缶蓋本体1)の中央部に突出したリベット3が形成されており、このリベット3にタブ2が取り付けられている。また、パネル部10aの上面のリベット3から特定の半径方向に延びる部分(図1ではリベット3の左側)にスコア部4により画成される開口片5が形成され、開口片5とはリベット3を介して反対側(図1ではリベット3の右側)に指かけ凹部6が形成されており、リベット3と指かけ凹部6との間にディンプルと称される凸部7が形成されている。そして、これら開口片5、指かけ凹部6、凸部7を取り囲むように、凹状のパネルデボス10bが形成されている。
【0019】
スコア部4は、図1に示すように、始端部41と、リベット3をほぼ半分囲む円弧状の初期破断部となる円弧形状部42と、略楕円形状の中間部43と、終端部44とで構成され、始端部41と終端部44との間にパネル部10aとの接続部45を一部残して形成され、開口片5を画成している。円弧形状部42は、リベット3周囲のコイニングにより押しつぶされたリング状圧印部に形成される。
また、スコア部4は、タブ2による押圧によって破断されて開口片5を形成する主スコア4aと、主スコア4aの内側に隣接して平行に形成される補助スコア4bとを備えた二重構造とされており、スコア部4の始端部41および終端部44で、主スコア4aと補助スコア4bとが接続されている。
そして、補助スコア4bは、隣接する主スコア4aよりも浅く形成されており、タブ2の押圧によっては破断されない構成となっている。
なお、ここでいう本実施形態の主スコアが、本発明におけるスコアに対応する。
【0020】
開口片5上には、スコア部4に沿うようにして突出させられたインナービード8が形成され、開口片5を補強している。
指かけ凹部6は、タブ2の他端部22を引き上げる際に、その他端部22の下方に指先を配置して引き上げ易くするものであり、他端部22下方近傍のパネル部10aに半径方向外方にかけて形成されている。
凸部7は、パネルデボス10bに突出し、タブ2の幅方向に間隔をおいて二つ形成されている。そして、タブ2の外縁部が凸部7に引っ掛かり、タブ2の回転移動を防止できるようになっている。
リベット3は、パネル部10aの中心の周囲を上方からリング状に圧印するコイニング加工を施して、パネル部10aの中心部を上方に張り出させることにより形成されている。
【0021】
タブ2は、アルミニウム等の金属板を切り抜いてプレス加工等により平坦に形成されており、開口片5の上方に重なって配置された一端部21と、リベット3を挟んで反対側に形成された他端部22とを備え、他端部22には、タブ2の厚さ方向に開口するタブホール部23が形成されている。一端部21と他端部22との間には、U字状のスロット24aによりタング部24が形成され、タング部24にリベット孔25が形成されており、そのリベット孔25にリベット3が挿入されてタング部24の下面がパネルデボス10bの表面に当接した状態でタブ2が取り付けられている。
【0022】
また、タブ2は、全体の外周縁やタブホール部23の内周縁で金属板が下面側に折り曲げられてカール成形が施されており、全体の剛性が高められている。
タブ2の他端部22は、図5に示すように、外周縁を折り曲げられて形成されるとともに、その端縁にタブ2の長手方向に直交するフラット部22aが形成されている。そして、そのフラット部22aを有する部分には、下面側を厚さ方向に押しつぶされ凹まされて、引き上げ凹部22cが形成されていることにより、その厚さt1は、図4に示すように、タブ2の他の外周部分の厚さよりも薄く設けられている。
【0023】
フラット部22aの両端に位置する角部22bの上面は、タブ2の厚さ方向に押しつぶされて凹まされており、これら角部22bは、図3に示すように、フラット部22aよりも面方向に突出して(広がって)形成されている。角部22bは、タブ2の他端部22において、少なくともリベット3の中心から指かけ凹部6までの最短距離を半径とした円周内に収まりきらない範囲に形成されている。
図6は、実線で示した缶蓋100に対して、二点鎖線で示すように缶蓋100を円周方向にずらして重ね合わせた状態を表している。また、図2に二点鎖線で示す缶蓋100は、図6の二点鎖線で示す缶蓋100に対応しており、缶蓋100同士を円周方向にずらして重ね合わせた状態を表している。そして、図2及び図6に示すように、角部22bは、缶蓋100同士をずらして積み重ねた際に、他の缶蓋の指かけ凹部6と重なる範囲を含むように設けられている。
また、上述したように、角部22bの上面は下方に凹まされて低く形成されており、その厚さt2は他の外周部分の厚さよりも薄く設けられ、角部22bの下面はタブ2の下面とほぼ同一面に形成されている。
【0024】
また、このようなタブ2は、先ず、金属板にタブホール部23等のタブ2に形成される穴を順次形成し、次に、所要幅の連結片204を除いてタブ2のブランクを打ち抜き、そのブランクを連結片204で連結された状態で、適宜凹凸形状等の成形を施し、且つ、外周縁にカール成形を施し、その後に引き上げ凹部22c及び角部22bを押しつぶして、最後に連結片204を切断することにより成形される。
図5に示す本実施形態のタブ2のように、成形時にタブ2同士を連結している連結片204がタブ2の側面に設けられる場合には、タブ2の連結片204付近にはカール成形を施すことができないので、他の外周部に比べて、この連結片204を切断した切断面付近の剛性が弱くなっている。
【0025】
本実施形態のタブ2においては、この連結片204の切断面付近を避けて、わずかな箇所だけを凹ませた形状とするだけで角部22bを形成しているので、タブ2の強度を低下させずに缶蓋同士の内面接触を回避することができる。
また、タブ2の角部22bは、面方向に広がって設けられるとともに、フラット部22aの下方には、両角部22bから中央部にかけて凹状に形成された引き上げ凹部22cが設けられているので、この角部22bがガイドとなり、角部22bに挟まれたフラット部22aに指先を案内することができ、指掛かり性を向上させることができる。
さらに、凹まされて形成された角部22bを避けて、フラット部22a付近を下方から凹ませて引き上げ凹部22cを形成しているので、タブ2の強度を低下させることなく、引き上げ凹部22cと指かけ凹部6との隙間を広げることができ、タブ2の指掛かり性を向上させることができる。
【0026】
なお、本発明は上記実施形態の構成のものに限定されるものではなく、細部構成においては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 缶蓋本体
2 タブ
3 リベット
4 スコア部
4a 主スコア
4b 補助スコア
5 開口片
6 指かけ凹部
7 凸部
8 インナービード
10a パネル部
10b パネルデボス
11 コーナー部
12 環状凹部
13 カウンターシンク部
14 チャック壁部
15 ショルダー部
16 カール部
21 一端部
22 他端部
22a フラット部
22b 角部
22c 引き上げ凹部
23 タブホール部
24 タング部
24a スロット
25 リベット孔
41 始端部
42 円弧形状部
43 中間部
44 終端部
45 接続部
100 缶蓋
204 連結片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
缶蓋本体の上面中央部に突出して形成されるリベットと、スコアにより画成された開口片と、前記開口片の上に一端部を重ねて前記リベットに取り付けられるタブと、前記タブの他端部側に形成される指かけ凹部とを備え、前記タブの他端部を上方に引き上げることにより、前記一端部が前記開口片を下方に押圧して前記スコアを破断させ、前記開口片を開口させる缶蓋であって、前記タブの他端部の端縁は、前記タブの長手方向に直交するフラット部を有しており、そのフラット部の両端に位置する角部の上面が、下方に凹まされて低く形成されていることを特徴とする缶蓋。
【請求項2】
前記角部が前記フラット部よりも面方向に突出して形成されていることを特徴とする請求項1記載の缶蓋。
【請求項3】
前記フラット部の中央部の下面は、上方に凹まされて引き上げ凹部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の缶蓋。
【請求項4】
缶蓋本体の上面中央部に突出して形成されるリベットに取り付けられ、前記缶蓋本体にスコアにより画成された開口片の上に一端部を重ねて、前記リベットを介して前記一端部と反対方向に延びる他端部とを備えた缶蓋用のタブであって、前記タブの他端部の端縁は、前記タブの長手方向に直交するフラット部を有しており、そのフラット部の両端に位置する角部の上面が、下方に凹まされて低く形成されていることを特徴とする缶蓋用のタブ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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