説明

缶蓋及び缶

【課題】缶の開栓を容易にする。
【解決手段】缶蓋1は、パネル部12に刻まれたスコア線14と、開口操作に応じてスコア線14で規定された領域を押し下げて開口を形成するようにリベット18によってパネル部12の表側に固定されたタブ16とを有する。パネル部12は、リベット18の位置から見て、開口が形成される位置の反対側の位置に、パネル部12の裏側方向に窪んだ凹部20を有する。凹部20の全体領域は、タブ16の指掛け操作部16aとパネル部12の外縁との間の領域及び指掛け操作部16aの下方の領域を含み、かつ、指掛け操作部16aの方向に凸をなす曲線形状を有し、凹部20の底面20aも、指掛け操作部16aの方向に凸をなす曲線形状を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶蓋及び缶に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料入り缶製品は、缶の胴部に飲料を充填し、その胴部の開口端部に対して缶蓋を巻き締めて密閉することによって製造されうる。現在の缶蓋或いは缶は、タブの投げ捨ての防止、或いは、タブの回収の容易性の観点から、タブが缶蓋のパネルに連結されたままでの開栓が可能なステイオンタブ式が主流と成っている。
【0003】
ステイオンタブ式の缶蓋或いは缶は、パネル部に刻まれたスコア線と、開口操作に応じて前記スコア線で規定された領域を押し下げて開口を形成するようにリベットによってパネル部の表側に固定されたタブとを有する。
【0004】
特許文献1には、つまみ片(タブ)の持ち上げ端(指掛け操作部)の外周側に指掛け用凹部を有するステイオンタブ式の缶蓋が開示されている。この指掛け用凹部は、全体としてリベット方向(中心方向)に向かってやや凹をなす形状、すなわち、パネル部の外縁の円弧に沿った形状を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−233335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されたようにパネル部の外縁の円弧に沿った円弧形状を有する指掛け用凹部では、開栓のために指先を指掛け用凹部と持ち上げ端との間に差し込んで開栓操作をする際に、円弧形状の指掛け用凹部の中央部に指が誘導されにくく、円弧の左端又は右端方向に指の動きが逸れることがある。円弧の左端又は右端に指の動きが逸れると、タブが指掛け用凹部の中央からリベットの方向に向かってまっすぐに引かれず、斜め方向に引かれることがある。この場合、タブによって開口片に適正な力が加わらず、開口片が適正に缶内に向かって折れ曲がらないままでタブが缶蓋から外れてしまうことが起こりうる。
【0007】
一方、陽圧缶用の缶蓋では、持ち上げ端(指掛け操作部)が平らなタブが使用されているが、平らな持ち上げ端では、それと指掛け用凹部との間に指先を挿入し難いことから、開栓し難いことがある。
【0008】
本発明は、上記の課題認識を契機としてなされたものであり、例えば、開栓が容易な缶蓋及び缶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の側面は、パネル部に刻まれたスコア線と、開口操作に応じて前記スコア線で規定された領域を押し下げて開口を形成するようにリベットによって前記パネル部の表側に固定されたタブとを有する缶蓋を対象とするものである。ここで、前記パネル部は、前記リベットの位置から見て前記開口が形成される位置の反対側の位置に前記パネル部の裏側方向に窪んだ凹部を有する。前記凹部の全体領域は、前記タブの指掛け操作部と前記パネル部の外縁との間の領域及び前記指掛け操作部の下方の領域を含み、かつ、前記指掛け操作部の方向に凸をなす曲線形状を有する。前記凹部の底面も、前記指掛け操作部の方向に凸をなす曲線形状を有する。
【0010】
本発明の好適な実施形態によれば、前記指掛け操作部は、前記パネル部から離れる方向に凸をなす凸部を有し、前記指掛け操作部と前記リベットとを結ぶ線に直交する方向における前記凸部の幅が前記方向における前記タブの幅の40〜60%の範囲内であることが好ましい。
【0011】
本発明の好適な実施形態によれば、前記凸部の高さは、0.1〜0.5mmの範囲内であることが好ましい。
【0012】
本発明の好適な実施形態によれば、前記凹部の深さは、0.5〜1.2mmの範囲内であることが好ましい。
【0013】
本発明の好適な実施形態によれば、前記凹部の底面は、傾斜面によって全周的に囲まれていることが好ましい。
【0014】
本発明の好適な実施形態によれば、前記凹部の底面の面積は、前記凹部の全体領域の面積の10〜40%の範囲内であることが好ましい。
【0015】
本発明の好適な実施形態によれば、前記缶蓋は、陽圧缶用の蓋として構成されうる。
【0016】
本発明の第2の側面は、パネル部に刻まれたスコア線と、開口操作に応じて前記スコア線で規定された領域を押し下げて開口を形成するようにリベットによって前記パネル部の表側に固定されたタブとを有する陽圧缶用缶蓋を対象とする。ここで、前記パネル部は、前記リベットの位置から見て前記開口が形成される位置の反対側の位置に前記パネル部の裏側方向に窪んだ凹部を有する。前記凹部の全体領域は、前記タブの指掛け操作部と前記パネル部の外縁との間の領域及び前記指掛け操作部の下方の領域を含む。前記指掛け操作部は、前記パネル部から離れる方向に凸をなす凸部を有する。
【0017】
本発明の好適な実施形態によれば、前記指掛け操作部と前記リベットとを結ぶ線に直交する方向における前記凸部の幅が前記方向における前記タブの幅の40〜60%の範囲内であることが好ましい。
【0018】
本発明の第3の側面は、胴部に缶蓋を巻き締めて形成された缶を対象とする。ここで、前記缶蓋は、パネル部に刻まれたスコア線と、開口操作に応じて前記スコア線で規定された領域を押し下げて開口を形成するようにリベットによって前記パネル部の表側に固定されたタブとを有する。前記パネル部は、前記リベットの位置から見て前記開口が形成される位置の反対側の位置に前記パネル部の裏側方向に窪んだ凹部を有する。前記凹部の全体領域は、前記タブの指掛け操作部と前記パネル部の外縁との間の領域及び前記指掛け操作部の下方の領域を含み、かつ、前記指掛け操作部の方向に凸をなす曲線形状を有する。前記凹部の底面も、前記指掛け操作部の方向に凸をなす曲線形状を有する。
【0019】
本発明の第4の側面は、胴部に缶蓋を巻き締めて形成された陽圧缶を対象とする。ここで、前記缶蓋は、パネル部に刻まれたスコア線と、開口操作に応じて前記スコア線で規定された領域を押し下げて開口を形成するようにリベットによって前記パネル部の表側に固定されたタブとを有する。前記パネル部は、前記リベットの位置から見て前記開口が形成される位置の反対側の位置に前記パネル部の裏側方向に窪んだ凹部を有する。前記凹部の全体領域は、前記タブの指掛け操作部と前記パネル部の外縁との間の領域及び前記指掛け操作部の下方の領域を含む。前記指掛け操作部は、前記パネル部から離れる方向に凸をなす凸部を有する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、例えば、開栓が容易な缶蓋及び缶を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の好適な実施形態の缶蓋の構成を示す平面図である。
【図2】図2は、図1の一部を拡大した図である。
【図3】図1のA−A'線における断面図である。
【図4】図1のB−B'線における断面図である。
【図5】図1に示す缶蓋を胴部の開口端に巻き締めて形成された缶を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明する。
【0023】
図1は、本発明の好適な実施形態の缶蓋の構成を示す平面図、図2は、図1の一部を拡大した図、図3は、図1のA−A'線における断面図、図4は、図1のB−B'線における断面図、図5は、図1に示す缶蓋を胴部の開口端に巻き締めて形成された缶を示す側面図である。
【0024】
本発明の好適な実施形態の缶蓋1は、例えば、ビール、発泡酒等のアルコール飲料、又は、清涼飲料等のノンアルコール飲料等の飲料が充填された胴部の開口端部にシーマーによって巻き締められうる。図5は、このようにして製造されうる飲料入り缶を例示的に示している。缶蓋1は、例えば、陽圧缶の缶蓋として構成されうる。ここで、陽圧缶とは、缶の内部の圧力が大気圧よりも高い缶をいう。例えば、ビール、発泡酒、炭酸飲料等の発泡性飲料が充填される缶は、陽圧缶と呼ばれる。
【0025】
缶蓋1は、例えば、円盤状のパネル部12を有し、その周囲に環状溝2を有し、更にその周囲にチャックウォール7及びフランジカール部8を有する。フランジカール部8は、胴部30の開口端への巻き締めに利用される。
【0026】
パネル部12は、その裏側方向に窪んだ窪み部6を有しうる。ここで、パネル部12の表側とは、図5に例示的に示すような飲料入り缶40において外側に露出する面の側を意味し、裏側とは、内側になる面の側を意味するものとする。
【0027】
パネル部12には、スコア線14が刻まれていて、スコア線14で囲まれる部分は、開栓時に缶40の内側に折れ曲がって開口を形成する開口片15として機能する。開口片15には、補強ビード4が形成されうる。
【0028】
パネル部12の表側には、リベット18によってタブ16が固定されている。タブ16は、開口操作に応じて、スコア線14で規定された開口片15となるべき領域を押し下げて開口を形成する。リベット18は、典型的には、パネル部12のほぼ中央部に配置されうる。
【0029】
パネル部12は、リベット18の位置から見て、開栓時に開口が形成される位置(開口片15の位置)の反対側の位置に、パネル部12の裏側方向に窪んだ凹部20を有する。凹部20の全体領域は、タブ16の指掛け操作部16aとパネル部12の外縁(或いは、環状溝2)との間の領域及び指掛け操作部16aの下方の領域を含み、かつ、指掛け操作部16aの方向に凸をなす曲線形状を有する(図2において"a"を付した部分)。凹部20の底面20aもまた、指掛け操作部16aの方向に凸をなす曲線形状を有する(図2において"b)を付した部分)。凹部20の底面20aは、傾斜面20bによって全周的に囲まれている。凹部20の底面20aの面積は、凹部20の全体領域の面積の10〜40%の範囲内であることが好ましい。
【0030】
凹部20の全体領域及びその底面20aの双方を指掛け操作部16aの方向に凸をなす曲線形状とすることによって、開栓時に指先が凹部20の中央部、そして、タブ16の中央部に誘導され易くなり、開栓が容易になるとともに開栓の失敗が低減される。
【0031】
また、凹部20の全体領域及びその底面20aの双方を指掛け操作部16aの方向に凸をなす曲線形状とすることによって、少なくとも凹部20のタブ16側における傾斜面20bの傾斜角度をほぼ一定にすることができ、缶蓋1の成形(プレス加工)が容易になる。
【0032】
指掛け操作部16aとリベット18とを結ぶ線に直交する方向における凹部20とタブ16とが重なる部分の幅w1は、該方向におけるタブ16の幅w2よりも小さいことが好ましい。これにより、缶30をその高さ方向に積み重ねて配置した状態において上の缶を取り去る際に、該上の缶の低部が下の缶のタブ16における角部cに引っ掛かって誤って開栓されることが防止されうる。
【0033】
指掛け操作部16aは、図4に例示的に示すように、パネル部12から離れる方向に凸をなす凸部を有することが好ましい。指掛け操作部16aとリベット18とを結ぶ線に直交する方向における該凸部の幅w3は、該方向におけるタブ16の幅w2の40〜60%の範囲内であることが好ましい。指掛け操作部16aが凸部を含んで構成されることにより、開栓時に指掛け操作部16aの下側に指先を挿入することが容易になるとともに、該凸部の中央部に対して指先がセンタリングされ易くなり開栓の失敗が低減される。一例として、w2を約16mmとし、w3を約8mmとすることが好ましい。
【0034】
指掛け操作部16aの凸部の高さ(指掛け操作部16aの下端の窪み部6の上面との距離)は、0.1〜0.5mmの範囲内であることが好ましい。
【0035】
凹部20の深さ(パネル部12(窪み部6の外側の領域)の表面と凹部20の底面20aとの距離)dは、0.5〜1.2mmの範囲内であることが好ましい。
【符号の説明】
【0036】
1 缶蓋
2 環状溝
4 補強ビード
6 窪み部
7 チャックウォール
8 フランジカール部
12 パネル部
14 スコア線
16 タブ
16a 指掛け操作部
18 リベット
20 凹部
20a 底面
20b 傾斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネル部に刻まれたスコア線と、開口操作に応じて前記スコア線で規定された領域を押し下げて開口を形成するようにリベットによって前記パネル部の表側に固定されたタブとを有する缶蓋であって、
前記パネル部は、前記リベットの位置から見て前記開口が形成される位置の反対側の位置に前記パネル部の裏側方向に窪んだ凹部を有し、前記凹部の全体領域は、前記タブの指掛け操作部と前記パネル部の外縁との間の領域及び前記指掛け操作部の下方の領域を含み、かつ、前記指掛け操作部の方向に凸をなす曲線形状を有し、前記凹部の底面も、前記指掛け操作部の方向に凸をなす曲線形状を有する、
ことを特徴とする缶蓋。
【請求項2】
前記指掛け操作部は、前記パネル部から離れる方向に凸をなす凸部を有し、前記指掛け操作部と前記リベットとを結ぶ線に直交する方向における前記凸部の幅が前記方向における前記タブの幅の40〜60%の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の缶蓋。
【請求項3】
前記凸部の高さは、0.1〜0.5mmの範囲内であることを特徴とする請求項2に記載の缶蓋。
【請求項4】
前記凹部の深さは、0.5〜1.2mmの範囲内であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の缶蓋。
【請求項5】
前記凹部の底面は、傾斜面によって全周的に囲まれていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の缶蓋。
【請求項6】
前記凹部の底面の面積は、前記凹部の全体領域の面積の10〜40%の範囲内であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の缶蓋。
【請求項7】
陽圧缶用の蓋として構成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の缶蓋。
【請求項8】
パネル部に刻まれたスコア線と、開口操作に応じて前記スコア線で規定された領域を押し下げて開口を形成するようにリベットによって前記パネル部の表側に固定されたタブとを有する陽圧缶用缶蓋であって、
前記パネル部は、前記リベットの位置から見て前記開口が形成される位置の反対側の位置に前記パネル部の裏側方向に窪んだ凹部を有し、前記凹部の全体領域は、前記タブの指掛け操作部と前記パネル部の外縁との間の領域及び前記指掛け操作部の下方の領域を含み、前記指掛け操作部は、前記パネル部から離れる方向に凸をなす凸部を有することを特徴とする陽圧缶用缶蓋。
【請求項9】
前記指掛け操作部と前記リベットとを結ぶ線に直交する方向における前記凸部の幅が前記方向における前記タブの幅の40〜60%の範囲内であることを特徴とする請求項8に記載の陽圧缶用缶蓋。
【請求項10】
胴部に缶蓋を巻き締めて形成された缶であって、
前記缶蓋は、パネル部に刻まれたスコア線と、開口操作に応じて前記スコア線で規定された領域を押し下げて開口を形成するようにリベットによって前記パネル部の表側に固定されたタブとを有し、
前記パネル部は、前記リベットの位置から見て前記開口が形成される位置の反対側の位置に前記パネル部の裏側方向に窪んだ凹部を有し、前記凹部の全体領域は、前記タブの指掛け操作部と前記パネル部の外縁との間の領域及び前記指掛け操作部の下方の領域を含み、かつ、前記指掛け操作部の方向に凸をなす曲線形状を有し、前記凹部の底面も、前記指掛け操作部の方向に凸をなす曲線形状を有する、
ことを特徴とする缶。
【請求項11】
胴部に缶蓋を巻き締めて形成された陽圧缶であって、
前記缶蓋は、パネル部に刻まれたスコア線と、開口操作に応じて前記スコア線で規定された領域を押し下げて開口を形成するようにリベットによって前記パネル部の表側に固定されたタブとを有し、
前記パネル部は、前記リベットの位置から見て前記開口が形成される位置の反対側の位置に前記パネル部の裏側方向に窪んだ凹部を有し、前記凹部の全体領域は、前記タブの指掛け操作部と前記パネル部の外縁との間の領域及び前記指掛け操作部の下方の領域を含み、前記指掛け操作部は、前記パネル部から離れる方向に凸をなす凸部を有することを特徴とする陽圧缶。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−82019(P2012−82019A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−20287(P2012−20287)
【出願日】平成24年2月1日(2012.2.1)
【分割の表示】特願2005−376652(P2005−376652)の分割
【原出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(311007202)アサヒビール株式会社 (36)
【Fターム(参考)】