説明

缶蓋

本発明は、消費者のためにタブの下への指のアクセスの仕方を改良した開けやすい缶蓋(1)である。蓋パネル(2)を有する缶蓋が開示され、蓋パネルは、タブが取り付けられた可動部分(7)を有する。指のアクセスは、可動部分が所定の第1の状態から所定の第2の状態に動くことができ、それによりタブの取っ手をずらしてこれを蓋パネルから遠ざけると共にタブの取っ手と蓋パネルとの間にユーザによる指のアクセスに適した隙間を生じさせることによって行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良型開封手段を備えた開けやすい(イージーオープン型)缶蓋又は缶端部に関する。本発明は、特に、食品や飲料のための金属包装への利用に適している。特に負圧か内部正圧かのいずれかを受ける容器に適した本発明の変形例が開示される。
【背景技術】
【0002】
例えば1995年5月9日に発行された米国特許第5413241号明細書(発明者:イェーシ‐ショウ(YEHHSI-SHOU))の図4及び図5に示されると共に説明されている開けやすい缶蓋が缶製造分野において周知である。缶蓋は、「完全開口」型端部を提供するようあらかじめ配置された開放領域を画定する切り込み線を備えた蓋パネルを備えている。タブが蓋パネルに固定され、タブのノーズが切り込み線に隣接して配置されている。缶蓋自体の輸送中における隣り合う缶蓋同士の衝突を回避するため、タブの取っ手は、蓋パネルの外面にしっかりと当てて配置される。タブの取っ手は、事実上全ての現行の開きやすい缶蓋について通常のやり方通りに、缶本体への缶蓋の取り付け後ではこの位置のままである。しかしながら、これは、缶を開けたいと思っている消費者にとっては問題となる。というのは、消費者は、まず最初に、タブの取っ手をこじ開けてこれを蓋パネルの表面から遠ざけなければならないからであり、その目的は、タブを持ち上げて切り込み線を破ることにある。タブ取っ手と蓋パネルとの間には隙間がないために、特に手の力の弱い人にとっては、これは、骨の折れる作業になる。
【0003】
2007年1月30日に発行された米国特許第7168586(B2)号明細書(クラウン・パッケージング・テクノロジー・インコーポレイテッド(CROWN PACKAGING TECHNOLOGY, INC))は、タブのアクセスに関する上述の問題の一解決策を提供している。米国特許第7,168,586(B2)号明細書は、あらかじめ配置された開放領域を定める切り込み線を備えた「完全開口」型イージーオープン缶蓋を開示している。開示された缶蓋は、タブの取っ手の下に押し潰し可能な突起を有し、押し潰し可能な突起は、2つの状態相互間で変形可能である。当初、押し潰し可能な突起は、タブの取っ手と突起との間に最小限の(又はゼロの)隙間を生じさせるよう缶蓋から上方に突き出ている。これにより、貯蔵/輸送目的で缶蓋上下の効果的な積み重ねやすさが得られると共に隣り合う缶蓋がタブの取っ手と缶蓋との間で捕捉状態になるのが回避される。突起は、タブから第2の状態に下方に変形可能であり、それにより、ユーザが自分の指を差し込むのに十分なタブ取っ手の下に凹状の指用窪みが生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5413241号明細書
【特許文献2】米国特許第7168586(B2)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、米国特許第7,168,586(B2)号明細書に示されると共に説明された突起には幾つかの問題がある。
【0006】
・米国特許第7,168,586(B2)号の発明は、大径の「完全開口」型缶蓋には適していない。この利用目的に関し、大径は、約4インチ(10.16cm)以上を意味している。この理由は、各缶蓋を別の缶蓋に対して割送る必要なく積み重ねやすさを保つためには、突起を缶蓋の中央に配置しなければならないということにある。しかしながら、完全開口型缶蓋の場合、タブのノーズを開封のために切り込み線に隣接して位置するようにするためにはタブを缶蓋の周囲の近くに配置しなければならない。これら2つの要件は、缶蓋が大径になるにつれて互いにますます相反する。その結果、缶蓋の直径が増大してもタブの取っ手の下に所与の指のアクセス量をもたらすには非常に深い突起が必要である。結局のところ、指のアクセスを可能にするのに十分深い突起をタブの下に形成することは不可能になる。
【0007】
・米国特許第7,168,586(B2)号明細書の押し潰し可能な突起は、消費者がタブの下に自分の指を差し込むことができるようにするのに十分な深さの指用窪みを形成するためには缶蓋の相当な領域を占めなければならない。
【0008】
・さらに、タブの取っ手の下にかかる指用窪みを用いた場合にタブへのアクセス具合を向上させるためには、
i.缶蓋のより広い領域を占める指用窪みを用いること、又は
ii.押し潰し可能な突起を形成するために金属を大きく引き伸ばすことのうちのいずれか一方又は両方が必要である。
【0009】
・さらに、米国特許第7,168,586(B2)号の突起は、平坦ではない表面であり、これは、ロゴ、像又は説明書きを印刷するには困難な表面となる場合がある。
【0010】
したがって、改良型タブアクセス方式を提供するよう第1の状態から第2の状態に移行可能な改良型缶蓋が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、開けやすい缶蓋であって、蓋パネル、蓋パネルに形成されていて、あらかじめ配置された開放領域を定める切り込み線及び切り込み線を切り離すタブを備え、タブは、ノーズ及び取っ手を有する、開けやすい缶蓋において、蓋パネルは、タブが取り付けられた可動部分を有し、可動部分は、所定の第1の状態から所定の第2の状態に動くことができ、それによりタブの取っ手を変位させてこれを蓋パネルから遠ざけると共にタブの取っ手と蓋パネルとの間にユーザによる指のアクセスに適した隙間を生じさせるようになっていることを特徴とする開けやすい缶蓋が提供される。
【0012】
本発明の缶蓋は、タブの取っ手の下への指のアクセスを可能にするよう米国特許第7,168,586(B2)号の仕組みとは異なる仕組みを用いている。本発明は、タブそれ自体の取っ手の下に専用の指用窪みを必要としないで、タブの取っ手の下に指のアクセス用隙間を生じさせるようタブが取り付けられた蓋パネルの部分の変形を利用している。
【0013】
本発明の実施結果として、可動部分がタブそれ自体の下に位置するよう可動部分の領域の大部分を封じ込めることが可能である。したがって、本発明により、蓋パネルの残部の大部分が全体として平坦な状態のままであり(恐らくは、幾つかの補強ビード又はパネルを除き)、それにより説明書き、ロゴ及び/又は他の文章/図形を印刷するのが容易な表面が提供される(米国特許第7,168,586(B2)号の缶蓋とは対照的に)。
【0014】
さらに、タブのアクセスは、タブの取り付け場所のずれ又は変位(即ち、可動部分)によって提供されるので、提供可能な指のアクセス量は、「完全開口」型缶蓋に関して缶蓋直径とは無関係であり、即ち、缶蓋のサイズは、タブの下への指のアクセスを可能にする本発明の作用に悪影響を及ぼさない(米国特許第7,168,586(B2)号の缶蓋とは対照的に)。
【0015】
第1の状態は、缶蓋の輸送に最も適している。というのは、第1の状態では、タブ取っ手と蓋パネルとの間の隙間は、最小限又はゼロであるからである(第2の状態に対して)。その結果、2つの状態のうちの第1の状態は、代表的には、缶蓋のための最も効果的な積み重ねやすさを提供する。
【0016】
本発明は、可動部分が「単安定」パネルの形態であり、即ち、1つの規定された安定(又はデフォルト)状態を呈することにより実施可能である。この安定(又はデフォルト)状態は、所定の第1又は第2の状態のうちのいずれかである。しかしながら、缶蓋の効果的な積み重ねを保証する目的で、安定(又はデフォルト)状態が第1の状態であることが好ましい。単安定型構成では、可動部分を安定(又はデフォルト)状態から他の状態に移行させるのに力を加えることが必要であり、力を除くと、可動部分は、安定(又はデフォルト)状態に戻る。
【0017】
しかしながら、好ましくは、可動部分は、「双安定パネル」から成る。双安定パネルという用語は、2つの規定された安定状態を呈するパネルを意味し、パネルが2つの状態相互間で変化するようにするためには力を加えることが必要である。本発明において双安定パネルを用いた場合の利点は、パネルをその第2の状態(即ち、「指のアクセス」状態)にいったん動かすと、パネルがその第1の状態に戻るようにするためには力を加えることが必要である。かかる力が存在しない場合、安定した隙間がタブの取っ手の下に維持される。
【0018】
好ましくは、タブは、第1の状態では、タブの取っ手が蓋パネルに押し付けられるように可動部分に取り付けられる。これは、タブが弾性的に変形する舌部を有することによって可能になり、タブは、タブの取っ手を第1の状態において蓋パネルに押し付けるよう舌部を介して可動部分に取り付けられている。缶蓋は、容器本体へのこれらの取り付けに先立って、代表的には、可動部分がこの第1の状態にある状態で、積み重ね体として、缶蓋が互いに上下に積み重ねられた状態で運搬される。その結果、タブの取っ手を蓋パネルに押し付けることにより、異物又は隣り合う缶蓋がタブの取っ手の下にくっつき状態又はロック状態にならないようにするという利点が得られる。
【0019】
缶蓋は、好ましくは、金属で作られ、スチール、ブリキ又はアルミニウムが多くの適当な材料の例である。
【0020】
本発明の缶蓋は、容器本体のアクセス開口部を閉鎖するよう取り付けられるようになっている。缶蓋は、金属包装業界で知られている任意の従来方法によって、例えば、二重巻締めによって容器本体に取り付けられるのが良い。
【0021】
特に好ましい実施形態では、可動部分は、蓋パネルの残部に対して高い位置に設けられたプラットホームに設けられ、第1の状態では、可動部分の最も低い箇所は、缶蓋の最も低い平面よりも下には延びないようになっており、それにより缶蓋の積み重ねやすさが向上する。
【0022】
本発明により、タブの取っ手と蓋パネルとの間の隙間を多種多様な機構又は仕組みで提供することができる。
【0023】
機構1
本発明の一観点では、第1の状態から第2の状態への移行は、可動部分の全体として下向きの動きによって行なわれる。これは、好都合には、可動部分が、
i.第1の状態では、可動部分が蓋パネルから上方に突き出ると共に、
ii.第2の状態では、可動部分が蓋パネルから下方に突き出るよう形成されていることによって可能である。
【0024】
好都合には、可動部分は、第1及び第2の状態において、それぞれ、全体として上方に突き出た凸状突起及び全体として下方に突き出た凹状突起として形成される。好ましくは、タブは、可動部分の傾斜領域に取り付けられていて、第1の「凸」状態を呈すると、タブ取っ手は、蓋パネルに向かって傾けられ、第2の「凹」状態に移行すると、タブ取っ手は、上方に傾けられて蓋パネルから遠ざけられ、それによりタブの取っ手と蓋パネルとの間にユーザによる指のアクセスに適した隙間を生じさせるようになっている。上述の傾きは、全体として缶蓋により定められた水平面に対して測定される。本発明のこの観点は、凸状/凹状突起が備える自然な曲率及びかかる突起が凸状態と凹状態との間で変化する際に受ける傾きの完全又は部分逆転を利用している。タブを可動部分の傾斜領域に取り付けると共に第1の「凸」状態から第2の「凹」状態への移行時に傾きの逆転が生じることにより、タブを変位させると共にタブの下への指のアクセスを可能にするのに効果的な機構が提供される。以上要約すると、タブをこのように取り付けることは、所与の長さのタブに関し、本発明においてタブの取っ手の下に同一の隙間を生じさせるために必要な可動部分の面積は、米国特許第7,168,586(B2)号の指用窪みの面積よりも小さいということを意味している。
【0025】
人の指を用いた押し下げにより、例えば、缶蓋を備えた充填容器の最終消費者によって下向きの動きを開始させることができる。しかしながら、可動部分は、容器が消費者に届く前にその下向きの「指のアクセス状態」にあることが好ましい。したがって、可動部分を下方に押し下げるためには機械的手段を用いるのが良い(例えば、パンチ又は他の機械的手段を用いて)。変形例として、負圧(即ち、真空)を用いて可動部分を下に吸引し(又は引っ張って)これを第2の状態にしても良い。食品向きの容器の例を考慮すると、缶蓋を加熱状態の製品で満たされた容器本体に取り付けることにより負圧を達成することができ、製品が周囲温度まで冷えると、その結果、当然のことながら、密閉容器内に負圧が生じる。容器が開封されるまで負圧が維持されるので、これにより、単安定パネルを可動部分に用いることができる。
【0026】
機構2
本発明の別の観点では、第1の状態から第2の状態への移行は、可動部分の全体として上向きの動きによって行なわれる。これは、好都合には、可動部分が、
i.第1の状態では、可動部分が蓋パネルから下方に突き出ると共に、
ii.第2の状態では、可動部分が蓋パネルから上方に突き出るよう形成されていることによって可能である。
【0027】
好都合には、可動部分は、第1及び第2の状態において、それぞれ、全体として下方に突き出た凹状突起及び全体として上方に突き出た凸状突起として形成される。好ましくは、タブは、可動部分の傾斜領域に取り付けられていて、第1の「凹」状態を呈すると、タブ取っ手は、蓋パネルに向かって傾けられ、第2の「凸」状態に移行すると、タブ取っ手は、上方に傾けられて蓋パネルから遠ざけられ、それによりタブの取っ手と蓋パネルとの間にユーザによる指のアクセスに適した隙間を生じさせるようになっている。機構1について説明したように、上述の傾きは、全体として缶蓋により定められた水平面に対して測定される。機構1について説明したように、本発明のこの観点は、凹状/凸状突起が備える自然な曲率及びかかる突起が凹状態と凸状態との間で変化する際に受ける傾きの完全又は部分逆転を利用している。タブを可動部分の傾斜領域に取り付けると共に第1の「凹」状態から第2の「凸」状態への移行時に傾きの逆転が生じることにより、タブの下への指のアクセスを可能にするのに効果的な機構が提供される。再び要約すると、タブをこのように取り付けることは、所与の長さのタブに関し、本発明においてタブの取っ手の下に同一の隙間を生じさせるために必要な可動部分の面積は、米国特許第7,168,586(B2)号の指用窪みの面積よりも小さいということを意味している。これは、製造容易性という面で利点をもたらす。というのは、必要な成形作業が少ないからである。
【0028】
米国特許第7,168,586(B2)号の缶蓋の場合、缶蓋を備えた容器内の正圧が高すぎるほど高いレベルを超えた場合、突起は、その下向き(指のアクセス)状態からその上向き状態に戻り、それによりタブへのアクセスができなくなる。これとは対照的に、本発明のこの変形実施形態の缶蓋の場合、可動部分を押圧してこれをその上向き状態にするよう働く手段であるならばどのような手段であっても有益である。というのは、本発明の上向き状態は、タブの下への指のアクセスを可能にするからである。充填及びレトルト処理中に正圧を生じさせるのが良い。変形例として、缶蓋を備えた容器の底及び/又は側壁を変形させ、それにより容器内の容積を減少させることによって正圧を生じさせても良い。別の変形例として、本発明の缶蓋が炭酸飲料向きの容器に用いられる場合、炭酸飲料からの圧力は、可動部分がその第2の(指のアクセス)状態に移行するようにするのに十分な正圧を生じさせるよう働くことができる。この正圧が容器を開封するまで維持されるので、これにより、単安定パネルを可動部分に用いることができる。
【0029】
機構3
本発明の更に別の観点では、可動部分は、第1の状態と第2の状態との間でシーソー揺動状態で変形可能であり、それにより、タブの取っ手を変位させてこれを蓋パネルから遠ざけると共にタブの取っ手と蓋パネルとの間にユーザによる指のアクセスに適した隙間を生じさせるようになっている。
【0030】
機構1又は2のいずれの場合であっても、上述の可動部分の凸状/凹状輪郭形状を達成するには、缶蓋の蓋パネルをプレス加工し又は打ち抜き加工して缶蓋の材料を塑性変形させ、それにより凸状/凹状輪郭形状を備えた可動部分を形成するのが良い。このようにすると、可動部分は、缶蓋の蓋パネルの一体部分となることができる。かかる凸状/凹状輪郭形状の利点は、それにより、固有の双安定性が得られることにある。この固有の双安定性は、或る1つの箇所から別の箇所まで可動部分の凸状/凹状表面に沿って測定された距離がこれら2つの箇所相互間の直線距離よりも長いという理由で得られる。その結果、可動部分は、第1の状態と第2の状態との間で行ったり来たりするようにするためには小さい隙間を介して「押しつぶされる」ことが必要であり、従ってこの変化を生じさせるのに力が必要になる。
【0031】
疑義が生じないようにするために、「凸」及び「凹」という用語は、可動部分が例えばカメラレンズの要素のように完全に凸状又は凹状の湾曲輪郭形状を呈する場合だけでなく、可動部分の輪郭形状により全体として定められるトレンドラインが凸状又は凹状である場合を含む。例えば、可動部分は、1つ又は2つ以上の環状ビードを有するのが良いが、可動部分により全体として定められるトレンドラインが凸状又は凹状の場合、これは、本発明の目的上、凸及び凹の意味の範囲内に依然として含まれる。
【0032】
以下において、次に説明する図面を参照して本発明の3つの好ましい実施形態について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1の実施形態としての缶蓋の平面図である。
【図2】図1のA‐A線矢視断面図であり、容器本体のアクセス開口部の上方に位置した場合の第1の「凸」状態にある缶蓋を示す図である。
【図3】図2に対応した図であるが、この場合、第2の「凹」(指のアクセス)状態で缶蓋を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施形態としての缶蓋の平面図である。
【図5】図4のA‐A線矢視断面図であり、容器本体のアクセス開口部の上方に位置した場合の第1の「凹」状態にある缶蓋を示す図である。
【図6】図5に対応した図であるが、この場合、第2の「凸」(指のアクセス)状態で缶蓋を示す図である。
【図7】本発明の第3の実施形態としての缶蓋の一部の詳細断面図であり、缶蓋を第1の状態で示す図である。
【図8】図7に対応した詳細図であるが、これとは異なり、缶蓋を第2の(指のアクセス)状態で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の第1の実施形態が図1〜図3に示されており、この第1の実施形態は、全体として、上述の「機構1」に対応している。
【0035】
缶蓋1は、切り込み線(スコアライン)3を備えた蓋パネル2を有している。切り込み線3は、あらかじめ配置された開放領域(この場合、「完全開口」)を定めるよう蓋パネル2の周囲に沿って連続して延びている。図示の実施形態では、切り込み線の内方の蓋パネル2の全体は、缶蓋1から取り去ることができる。しかしながら、変形実施形態では、切り込み線3は、連続していなくても良く、この場合、切り込み線の内方の蓋パネル2の部分は、例えば多くの飲料用缶蓋に見られるように缶蓋によって保持される(図1参照)。
【0036】
図1〜図3の実施形態に戻ってこれを参照すると、蓋パネル2は、切り込み線3の半径方向外方に配置された皿座ぐり部4を有している(図2及び図3参照)。
【0037】
チャック壁5が先ず最初に皿座ぐり部4から上方に延び、次に外方に延びて継ぎ合わせパネル6を構成している(図2及び図3参照)。継ぎ合わせパネル6により、缶蓋1を従来型巻締め法により容器本体の開口端に固定することができる。
【0038】
蓋パネル2は、双安定パネルの形態をした一体形可動部分7を有している。第1の状態(図2に示されている)では、可動部分7は、蓋パネル2から上方に突き出た全体として凸状の突起を構成する。第2の状態(図3に示されている)では、可動部分7は、蓋パネル2から下方に突き出た全体として凹状の突起を構成する。可動部分7は、タブ10の取り付け場所を提供する。
【0039】
タブ10は、ノーズ11及び取っ手12を有している(図1参照)。取っ手12は、ユーザが自分の指を掛けることができるのに適したリング部13を有する。タブ10は、ノーズ11と取っ手12との間に配置された弾性的に形成された舌部14を更に有する。タブ10は、舌部14を介してリベット20によって可動部分7に取り付けられている。タブ10は、ノーズ11が切り込み線3に隣接して配置されるよう取り付けられている。図2で理解できるように、タブ10は、第1の状態ではタブの取っ手12が蓋パネル2に押し付けられると共にこれに向かって傾けられて取っ手と蓋パネルとの間にゼロの又は最小限の隙間を生じさせるよう可動部分7の傾斜領域に取り付けられている。発明の概要の項で説明したように、容器本体40に固定される前に、缶蓋1は、図1に示された状態、即ち、上下に積み重ねられた状態で運搬される。この第1の状態では、タブ10の取っ手12を蓋パネルに押し付けることは、隣り合う缶蓋又は異物がタブの下にロック状態になるのを回避するのに役立つ。
【0040】
ユーザがタブ10の取っ手12の下に指をアクセスできるようにするため、可動部分7は、その第1の凸状態から図3に示された第2の凹状態に動かされなければならない。これには、下向きの力を可動部分7に加える必要があり、その目的は、可動部分の双安定パネル構造が一方の安定状態から他方の安定状態に変わるようにすることにある。下向きの力は、例えば、機械的パンチ(図示せず)の使用により加えられるのが良い。変形例として、可動部分7を吸引してこれを第2の凹状態にするのに負圧を用いても良い。負圧は、缶蓋1を加熱状態の製品で満たされた容器本体40に巻締めすることにより達成でき、製品が周囲温度まで冷えると、その結果、当然のことながら、密閉容器内に負圧が生じる(例えば、食品に関し)。
【0041】
可動部分7をその第2の凹状態に移行させると、可動部分(タブの取り付け場所を含む)の曲率をその第1の凸状態の曲率に対して逆にするという効果が得られる。それにより、この移行の結果として、タブの取っ手12が傾けられて蓋パネルから遠ざけられ、それにより取っ手の下に隙間Δhが生じる(図3参照)。
【0042】
図示の缶蓋は、材料規格DR550Nに準拠した0.21mmゲージの2回圧延(DR)ブリキ板で作られている。しかしながら、十分な強度/剛性をもたらす他の材料をこれに代えて用いても良い。
【0043】
本発明の第2の実施形態が図4〜図6に示されており、この第2の実施形態は、上述の「機構2」に対応している。図1〜図3の第1の実施形態と比較して、同一の特徴は、同一の参照符号で示されている。
【0044】
図1〜図3の実施形態とは対照的に、図4〜図6の缶蓋1は、可動部分7が缶蓋から下方に突き出た全体として凹状の突起を構成する第1の状態を有している。第1の実施形態の場合と同様、タブ10は、舌部14を介してリベット20によって可動部分7に取り付けられている。図5で理解できるように、タブ10は、第1の状態ではタブの取っ手12が蓋パネル2に押し付けられて取っ手と蓋パネルとの間にゼロの又は最小限の隙間を生じさせるよう可動部分7の傾斜領域に取り付けられている。缶蓋1は、図5に示された状態、即ち、上下に積み重ねられた状態で運搬される。第1の実施形態の場合と同様、タブ10の取っ手12を蓋パネルに押し付けることは、隣り合う缶蓋又は異物がタブの下にロック状態になるのを回避するのに役立つ。
【0045】
可動部分7は、この第1の凹状態では、可動部分が缶蓋1の最も低い平面の下に延びることがないよう高い位置にあるプラットホーム8に設けられている。これは、缶蓋の上下の積み重ねやすさを向上させるという利点を有する。
【0046】
ユーザがタブ10の取っ手12の下に指をアクセスできるようにするため、可動部分7は、その第1の凹状態から図3に示された第2の凸状態に動かされなければならない。このためには、上向きの力を可動部分7に加える必要がある。上向きの力は、例えば本発明の発明の概要の項で上述したように正圧を容器内に生じさせることにより達成できる。
【0047】
可動部分7をその第2の凸状態に移行させると、可動部分の曲率をその第1の凹状態の曲率に対して逆にするという効果が得られる。それにより、この移行の結果として、タブの取っ手12が傾けられて蓋パネルから遠ざけられ、それにより取っ手の下に隙間Δhが生じる(図6参照)。
【0048】
本発明の第3の実施形態が図7及び図8に示されている。第1及び第2の実施形態と共通して、同一の特徴は、同一の参照符号で示されている。図7及び図8は、可動部分7及びタブ10に関心を集中させた缶蓋1の一部の詳細断面図である。連続波形移行領域9が可動部分7を蓋パネル2の残部に結合している。図7に示されているように、缶蓋は、可動部分7が一方向に傾けられ、それによりタブ取っ手12を蓋パネル2に押し付けた第1の状態を有している。しかしながら、下向きに加えられた力Fを可動部分に加えると(図7参照)、可動部分7は、図8に示されているような第2の状態を取るよう波形移行領域9によって可能になるシーソー揺動状態ではじける。可動部分7の揺動及びはじき動作により、タブ取っ手12は、位置がずらされると共に傾けられて蓋パネル2から遠ざけられ、それにより、取っ手の下にユーザによる指のアクセスのための隙間Δhが生じる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓋パネル(2)と、前記蓋パネルに形成され且つあらかじめ配置された開放領域を定める切り込み線(3)と、前記切り込み線を切り離すタブ(10)と、を備え、前記タブが、ノーズ(11)及び取っ手(12)を有する、開けやすい缶蓋(1)において、前記蓋パネルは、前記タブが取り付けられた(20)可動部分(7)を有し、前記可動部分は、所定の第1の状態から所定の第2の状態に動くことができ、それにより前記タブの前記取っ手を変位させてこれを前記蓋パネルから遠ざけると共に前記タブの前記取っ手と前記蓋パネルとの間にユーザによる指のアクセスに適した隙間(Δh)を生じさせるようになっている、開けやすい缶蓋。
【請求項2】
前記タブは、前記第1の状態では、前記タブ(10)の前記取っ手(12)が前記蓋パネル(2)に押し付けられるように前記可動部分(7)に取り付けられている(20)、請求項1記載の開けやすい缶蓋。
【請求項3】
前記タブ(10)は、弾性的に形成された舌部(14)を有し、前記タブは、前記タブの前記取っ手(12)を前記第1の状態において前記蓋パネル(2)に押し付けるよう前記舌部を介して前記可動部分(7)に取り付けられている、請求項2記載の開けやすい缶蓋。
【請求項4】
前記可動部分(7)は、双安定パネルから成る、請求項1〜3のうちいずれか一に記載の開けやすい缶蓋。
【請求項5】
前記可動部分(7)は、前記第1の状態と前記第2の状態との間でシーソー揺動状態(9)で変形可能であり、それにより、前記タブ(10)の前記取っ手(12)を変位させてこれを前記蓋パネル(2)から遠ざけると共に前記タブの前記取っ手と前記蓋パネルとの間にユーザによる指のアクセスに適した隙間(Δh)を生じさせるようになっている、請求項1〜4のうちいずれか一に記載の開けやすい缶蓋。
【請求項6】
前記第1の状態から前記第2の状態への移行は、前記可動部分(7)の全体として下向きの動きによって行なわれる、請求項1〜4のうちいずれか一に記載の開けやすい缶蓋。
【請求項7】
前記可動部分(7)は、
i.前記第1の状態では、前記可動部分が前記蓋パネル(2)から上方に突き出ると共に、
ii.前記第2の状態では、前記可動部分が前記蓋パネルから下方に突き出るよう形成されている、請求項6記載の開けやすい缶蓋。
【請求項8】
前記可動部分(7)は、前記第1の状態及び前記第2の状態では、それぞれ、全体として凸状の突起及び全体として凹状の窪みとして形成される、請求項7記載の開けやすい缶蓋。
【請求項9】
前記タブ(10)は、前記可動部分(7)の傾斜領域に取り付けられていて(20)、前記第1の「凸」状態を呈すると、前記タブ取っ手(12)は、前記蓋パネル(2)に向かって傾けられ、前記第2の「凹」状態に移行すると、前記タブ取っ手は、上方に傾けられて前記蓋パネルから遠ざけられ、それにより前記タブの前記取っ手と前記蓋パネルとの間にユーザによる指のアクセスに適した前記隙間(Δh)を生じさせるようになっている、請求項8記載の開けやすい缶蓋。
【請求項10】
前記第1の状態から前記第2の状態への移行は、前記可動部分(7)の全体として上向きの動きによって行なわれる、請求項1〜4のうちいずれか一に記載の開けやすい缶蓋。
【請求項11】
前記可動部分(7)は、
i.前記第1の状態では、前記可動部分が前記蓋パネル(2)から下方に突き出ると共に、
ii.前記第2の状態では、前記可動部分が前記蓋パネルから上方に突き出るよう形成されている、請求項10記載の開けやすい缶蓋。
【請求項12】
前記可動部分(7)は、前記第1の状態及び前記第2の状態では、それぞれ、全体として凹状の窪み及び全体として凸状の突起として形成される、請求項11記載の開けやすい缶蓋。
【請求項13】
前記タブ(10)は、前記可動部分(7)の傾斜領域に取り付けられていて、前記第1の「凹」状態を呈すると、前記タブ取っ手(12)は、前記蓋パネル(2)に向かって傾けられ、前記第2の「凸」状態に移行すると、前記タブ取っ手は、上方に傾けられて前記蓋パネルから遠ざけられ、それにより前記タブの前記取っ手と前記蓋パネルとの間にユーザによる指のアクセスに適した前記隙間(Δh)を生じさせるようになっている、請求項12記載の開けやすい缶蓋。
【請求項14】
前記可動部分(7)は、前記蓋パネル(2)の残部に対して高い位置に設けられたプラットホーム(8)に設けられ、前記第1の状態では、前記可動部分の最も低い箇所は、前記缶蓋の最も低い平面よりも下には延びないようになっており、それにより前記缶蓋の積み重ねやすさが向上する、請求項1〜13のうちいずれか一に記載の開けやすい缶蓋。
【請求項15】
請求項1〜14のうちいずれか一に記載の缶蓋を有する容器であって、前記缶蓋(1)は、容器本体(40)のアクセス開口部を閉鎖するよう取り付けられている、容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−524699(P2012−524699A)
【公表日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−506505(P2012−506505)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際出願番号】PCT/EP2010/055366
【国際公開番号】WO2010/122111
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(506128042)クラウン パッケイジング テクノロジー インコーポレイテッド (19)
【Fターム(参考)】