説明

缶貼り付け用印刷フィルム

【課題】 金属缶の素地色を低コストに隠蔽でき、フィルムの厚さを均一化することができる缶貼り付け用印刷フィルムを提供する。
【解決手段】 印刷フィルム10は、透明なフィルム基材20の裏面側にカラー印刷層31,32と接着剤層41とが順に形成され、裏面全体に一定厚に形成された前記接着剤層41により金属缶の胴部外周面に巻回状態に貼り付けられる。カラー印刷層31,32が部分的に形成されることが要因となって生じるフィルム基材20と接着剤層41との間の層間距離の不均一を防止すべく、カラー印刷層31,32が形成されていない部分においてフィルム基材20と接着剤層41との間に白色層51を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、裏面の接着剤層によって金属缶の胴部外周面に巻回状態に貼り付けられる缶貼り付け用印刷フィルムの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に金属缶の胴部に商品名やデザイン等の装飾を施す場合には金属缶に直接印刷する手法が採られていた。それに対して、カラー印刷層を有する印刷フィルムを金属缶の胴部外周面に巻回状態に貼り付けることで金属缶の胴部に装飾性を持たせたものもある。しかしながら、カラー印刷層は、所望のデザインや文字等を得るために部分的に形成されたり色の濃淡を変えるために層の厚さを変化させたりするために、フィルム全体に亘って均一厚に形成されることは少ない。例えば、カラー印刷層が部分的に形成される場合にはカラー印刷層がある領域とない領域とでフィルムの厚さが異なることとなり、このフィルムを例えばロール状に巻回した場合にはその軸線方向(フィルム幅方向)に沿った厚さが不均一となり、厚い部分は巻き付け圧も大きくなることからブロッキングが発生しやすいという問題が生じる。この問題を解決する一案として、カラー印刷層の形成していない部分に透明インキ層を形成する案を本出願人は既に提案している(下記特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−14621号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、透明インキ層の場合には、カラー印刷層を形成していない部分やカラー印刷層の厚さの薄い部分は金属缶の素地色がその透明インキ層を介して外側から見えることとなるため、透明インキ層の裏側に更に白色層を積層することが必要となり、製造コストがその分余計にかかることになる。
【0005】
それゆえに本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされ、金属缶の素地色を低コストに隠蔽でき、フィルムの厚さを均一化することができる缶貼り付け用印刷フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決すべくなされたものであり、本発明に係る缶貼り付け用印刷フィルムは、透明なフィルム基材の裏面側にカラー印刷層と接着剤層とが順に形成され、裏面全体に一定厚に形成された前記接着剤層により金属缶の胴部外周面に巻回状態に貼り付けられる印刷フィルムであって、カラー印刷層が部分的に形成されること又はカラー印刷層の厚みが不均一であることが要因となって生じるフィルム基材と接着剤層との間の層間距離の不均一を防止するように、フィルム基材と接着剤層との間に白色層が形成されていることを特徴とする。
尚、本発明において、一定厚とは、プラスマイナス5%以内の誤差を含むものとする。また、不均一を防止するとは、金属缶に貼り付けられる一枚分の長さの印刷フィルムを、金属缶の周方向に伸びる一定幅の複数の帯状ゾーンに仮に区画した場合において、印刷フィルムの厚さを各帯状ゾーン毎に帯状ゾーンの長手方向に沿って順次測定して各帯状ゾーン毎の平均厚さを求め、この各帯状ゾーン毎の平均厚さのバラツキがプラスマイナス5%以内であるものを意味するものとする。
【発明の効果】
【0007】
このように、本発明の缶貼り付け用印刷フィルムにあっては、フィルム基材と接着剤層との間に形成した白色層によってフィルム基材と接着剤層との間の層間距離の不均一を防止しているので、フィルムの厚さが均一化され、しかも、白色層によって金属缶の素地色が隠蔽されるので、低いコストで均一厚の印刷フィルムを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明に係る缶貼り付け用印刷フィルムの一実施形態について図面を参酌しつつ説明する。
本実施形態に係る印刷フィルム10は、図8に示すような金属缶1の胴部2に巻回状態に貼り付けられるものである。この金属缶1は底部3と胴部2が一体に形成された缶本体4と該缶本体4の上部に巻き締めにより固定された上蓋5とからなる2ピース缶であるが、3ピース缶であってもよく、また、スチール缶、アルミ缶の何れでもよい。また、図8に示す金属缶1の場合には、その胴部2の上端部にネックイン加工が施されているが、このネックイン加工部6は一段(スピンフローネック加工も含む)であっても複数段であってもよい。また金属缶1の用途についても特には限定されないが、例えば、飲料缶やスプレー缶としての用途がある。
【0009】
本実施形態における印刷フィルム10は、図1に示すように所定幅を有する長尺状のものであってロール状に巻回されているものを繰り出して所定長さ毎に即ち金属缶1の胴部2の周囲長さに応じた長さ毎に切断して、図8のように胴部2の上端部にネックイン加工部6を有する金属缶1における胴部2の略全高に亘って貼り付けられる。尚、印刷フィルム10を貼り付けた後において缶本体4にネックイン加工が施されるので、印刷フィルム10はネックイン加工時の変形に追従できるように強固に缶本体4(金属缶1)の胴部2に貼り付けられることが必要である。また、缶本体4のネックイン加工後、飲料等の内容物が充填され、その後、上蓋5をネックイン加工部6の端部に巻き締めにより一体化する。尚、図8に符号11で示す部分は印刷フィルム10の重ね合わせ部である。
【0010】
図1に戻り、該印刷フィルム10は、図1(ロ)に示すように、透明なフィルム基材20の裏面側に4原色の重ね刷りによる写真印刷や各種文字、マーク、図柄等を着色インキにより印刷したカラー印刷層31,32と接着剤層41が順に形成されたものである。透明なフィルム基材20は、例えば二軸延伸ポリエステルフィルム(例えば二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム)等の耐熱性を有するものであって、例えば5乃至80μm好ましくは7乃至50μmの厚さのものが使用される。本実施形態でカラー印刷層31,32は、図1(イ)の如く幅方向一方側(金属缶1に貼り付けられた際に上側となる)に長手方向に沿って連続形成された所定幅の帯状のカラー印刷層31と、幅方向他方側(金属缶1に貼り付けられた際に下側となる)に長手方向に沿って所定ピッチで繰り返し形成された所定形状(例えば円形)のポイント状のカラー印刷層32とからなる。帯状のカラー印刷層31は、図1(ロ)の如く印刷フィルム10の幅方向一端部から所定幅に亘り一定厚にて形成されているが、例えば、幅方向一端部から所定距離おいた箇所に形成されていてもよい。また、帯状のカラー印刷層31の下端部31aは直線状でなくてもよく、例えば波形や山谷状などであってもよく、必ずしも幅一定でなくてもよく、複数本形成されていてもよい。また、ポイント状のカラー印刷層32は、一つの形状のものを一定ピッチで繰り返し形成する以外に数種類の形状、デザイン、色合い等を適宜組み合わせたり、ピッチも数種類混在させたりしてもよい。
【0011】
ここで、カラー印刷層31,32は例えばグラビア印刷等の公知の印刷手法によって形成され、使用されるインキも耐熱性を有する種々のものが使用されるが、特に、金、銀、パール等のインキを使用した印刷や濃いカラーのベタ印刷の場合にはその膜厚が厚くなるので本発明の効果が大きい。このカラー印刷層31,32の厚さは、例えば、0.5乃至5μm、好ましくは1乃至3μmである。
【0012】
一方、前記接着剤層41は印刷フィルム10の裏面全体に亘って均一厚にて形成されている。ここで、接着剤層41は例えば感熱接着剤(ポリエステル系樹脂等)の塗布により形成されるが、特に白色に着色されたものを使用することが好ましく、例えば酸化チタン等の白色顔料が使用される。この接着剤層41の厚さは、例えば1乃至15μm、好ましくは2乃至10μmである。
【0013】
このように、フィルム基材20の裏面のうちカラー印刷層31,32が形成されていない部分があるが、フィルム基材20と接着剤層41との間においてカラー印刷層31,32が形成されていない部分には、白色層51が充填されている。図1(ロ)に示すものにおいては、帯状のカラー印刷層31とポイント状のカラー印刷層32は互いに等しい厚さであって、その厚さと等しい厚さで白色層51が形成されている。従って、フィルム基材20と接着剤層41との間の層間距離は均一となり、その結果、印刷フィルム10の厚さも均一化されている。
【0014】
ここで、白色層51は、白色インキを使用して上記グラビア印刷等によって形成されるものであり、他の色に比して比較的一回の塗工で層厚を厚くできるため、カラー印刷層31,32の厚み差が大きい場合でも少ない塗工回数でフィルム基材と接着剤層との層間距離を均一にできる。また、隠蔽性に優れているので金属缶1の素地を隠蔽することができる。白色インキとしては例えば酸化チタン等の白色顔料が含まれているものを使用し、図1(ロ)の場合には一回の印刷によって、即ち一つの印刷ユニットで白色層51を形成しているが、二回以上の印刷(即ち、二つ以上の印刷ユニット)で白色層51を形成してもよい。
【0015】
以上のように形成された印刷フィルム10にあっては、カラー印刷層31,32が全体ではなく部分的に形成されているが、そのカラー印刷層31,32が形成されていない部分には白色層51が形成されているので、フィルム基材20と接着剤層41との間の層間距離が一定となり印刷フィルム10の厚さも均一化される。従って、この印刷フィルム10をロール状に巻回した際においても、幅方向の一部分が盛り上がる等することはなく、従って巻き取りによる圧力も幅方向に沿って一定となり、ブロッキングの発生を防止することができ、また印刷フィルム10を繰り出すときにも蛇行を防止できる。
【0016】
一方、印刷フィルム10を貼り付けた後に金属缶1の胴部2上端部にネックイン加工を施すが、白色層51を仮に形成しない場合には帯状のカラー印刷層31の部分における印刷フィルム10の厚さが局所的に厚くなってネックイン加工の際に印刷フィルム10が金属缶1の表面から剥離するおそれがあるが、上述したように白色層51を形成して印刷フィルム10の厚さを均一化して過度に厚さが増すことを防止しているので、ネックイン加工時における印刷フィルム10の剥がれを防止することができる。更には、透明インキ層で厚みを調節した上でさらにその裏面側に白色層を設けるということが不要になるので、透明インキ層を形成しない分、製造コストが抑制できる。
【0017】
尚、図2のように、カラー印刷層31,32と接着剤層41との間に別途白色層52を形成してもよい。この場合、例えば、カラー印刷層31,32を形成していない部分にまず上流側の印刷ユニットで白色層51を形成し、続いて下流側の印刷ユニットで更に全体に亘って白色層52を形成する。
【0018】
また、図3のように、複数のカラー印刷層31,32,34間で厚さが異なる場合には、最も厚いカラー印刷層31を基準としてその厚さに合わせて白色層51を形成する。但し、図4のように、一枚分の印刷フィルムの長さLのうちに小型のポイント状のカラー印刷層35が一箇所だけ形成されているような場合、そのポイント状のカラー印刷層35以外のカラー印刷層31,32のうち最も厚いカラー印刷層32を基準にして白色層51を形成してもよい。尚、図4の場合、ポイント状のカラー印刷層35は、金属缶の周方向に沿った長さが短く、しかも、隣のポイント状のカラー印刷層35までの距離(ピッチ)が大きいものであるから、このような場合には図4(ロ)のようにその部分のみ部分的に厚くなっても構わない。ロール状に巻回した場合にポイント状のカラー印刷層35が径方向に重なり合うことが少ないために、その部分において巻き締めが生じる可能性が低いためである。
【0019】
また、カラー印刷層は図5のように幅方向一方側に向けて厚さが徐々に増すようにグラデーション状に形成した場合にも適用可能である。即ち、このカラー印刷層33の厚さが薄い部分ほど白色層51を厚く形成してフィルム基材20と接着剤層41との間の層間距離を一定とする。これにより、印刷フィルム10の厚さを一定とすることができる。また、図6のように白色層51a,51bを二回に分けて印刷してもよく、無論三回以上に分けて印刷してもよい。また、図7のようにグラデーション状のカラー印刷層33の裏面側に別途白色層52を全体に亘って形成してもよい。
【0020】
尚、グラデーション状に形成する以外にも厚さが不均一とする種々の場合に適用可能であって、何れにしてもカラー印刷層33の厚さが不均一であることを白色層51で補填することによりフィルム基材20と接着剤層41との間の層間距離を一定とすればよい。
【0021】
無論、例えば図1の帯状のカラー印刷層31と図5のグラデーション状のカラー印刷層33とを組み合わせたような場合にも適用でき、その場合でも白色層51を形成してフィルム基材20と接着剤層41との間の層間距離を一定とすることにより印刷フィルム10の厚さを幅方向に沿って一定とすることができ、しかも、無用にフィルム全厚を厚くする必要もなくなる。
【0022】
また、白色層51,52が局所的に抜けた箇所が存在していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係る缶貼り付け用印刷フィルムを示し、(イ)は全体斜視図、(ロ)は(イ)のP−P線断面図。
【図2】本発明の他の実施形態に係る缶貼り付け用印刷フィルムを示す図1(ロ)に対応した断面図。
【図3】本発明の他の実施形態に係る缶貼り付け用印刷フィルムを示す図1(ロ)に対応した断面図。
【図4】本発明の他の実施形態に係る缶貼り付け用印刷フィルムを示し、(イ)は全体斜視図、(ロ)は(イ)のR−R線断面図。
【図5】本発明の他の実施形態に係る缶貼り付け用印刷フィルムを示し、(イ)は全体斜視図、(ロ)は(イ)のQ−Q線断面図。
【図6】本発明の他の実施形態に係る缶貼り付け用印刷フィルムを示す図5(ロ)に対応した断面図。
【図7】本発明の他の実施形態に係る缶貼り付け用印刷フィルムを示す図5(ロ)に対応した断面図。
【図8】本発明の一実施形態に係る缶貼り付け用印刷フィルムを貼り付けた金属缶の正面図。
【符号の説明】
【0024】
1…金属缶、2…胴部、3…底部、4…缶本体、5…上蓋、6…ネックイン加工部、10…印刷フィルム、11…重ね合わせ部、20…フィルム基材、31,32,33,34,35…カラー印刷層、41…接着剤層、51,51a,51b,52…白色層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明なフィルム基材の裏面側にカラー印刷層と接着剤層とが順に形成され、裏面全体に一定厚に形成された前記接着剤層により金属缶の胴部外周面に巻回状態に貼り付けられる印刷フィルムであって、
カラー印刷層が部分的に形成されること又はカラー印刷層の厚みが不均一であることが要因となって生じるフィルム基材と接着剤層との間の層間距離の不均一を防止するように、フィルム基材と接着剤層との間に白色層が形成されていることを特徴とする缶貼り付け用印刷フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−39013(P2006−39013A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−215623(P2004−215623)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(000238005)株式会社フジシールインターナショナル (641)
【Fターム(参考)】