説明

置換されたシクロデキストリン化合物と活性炭との組み合わせ

本発明は、ポリマーマトリックスからの望ましくない有機物質の形成を防止するかまたはそれらを捕捉することができる組成物である。組成物は、シクロデキストリンおよび活性炭粒子を含む。組成物は、ポリマーの溶融加工中に生じ得る熱分解生成物、ポリマーに固有の汚染物質、またはそうでなければ、空気、給水、もしくは食品、薬剤、もしくは飲料などの摂取可能な物質中に流出し得る、ポリマーマトリックスからの他の種類の不純物を捕捉することができる。本発明の他の態様は、組成物とポリマー材料とのブレンド、ブレンドを作製する方法、組成物を含む物品、および組成物を含む物品を作製する方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、米国企業であるCELLRESIN TECHNOLOGIES,LLCを、米国を除くすべての指定国における出願人とし、CELLRESIN TECHNOLOGIES,LLCおよび米国国民のWillard E. Woodを米国のみにおける出願人として、PCT国際特許出願として、2008年2月15日に出願されており、この出願は、2007年2月20日に出願された、米国仮特許出願第60/890,707号の優先権を主張し、本明細書中で参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、ポリマーマトリックスとの接触からの望ましくない有機物の形成を防止できるかまたはそれを捕捉できる組成物に関する。本発明は、空気、給水、または食品、薬剤、もしくは飲料などの摂取可能な物質中に、そうでなければ流出し得る、組成物に固有の汚染物質およびポリマーマトリックスからの不純物から溶融加工中に生じた熱分解生成物を捕捉することに関する。本発明は、揮発性有機成分の放出を防止するかまたはそれを捕捉するための組成物、ポリマーと本発明の組成物とのブレンド、および本発明の組成物を含むポリマーから作製された物品を目的とする。本発明は、組成物を作製する方法、ブレンドを作製する方法、および物品を作製する方法をさらに目的とする。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
合成ポリマー樹脂は、広範な用途で使用される。いくつかの用途で、ポリマーは、大気、給水、またはポリマーのパッケージ内の摂取可能な物質中に流出し得る望ましくない有機物質と接触し得るかまたはその発生源であり得る。これらの有機物質は、加工中にポリマーの分解により形成されることもあり、またはマトリックスに可塑剤もしくは溶媒などの低分子を添加した結果であることもある。ポリマーマトリックスは、望ましくない有機物質を外部の発生源から吸収するか、またはこれらの物質をポリマーパッケージの内容物中に拡散させることもある。それに加えて、ポリマーのバリアの性質は、例えば、内部の食品が腐敗し始めたとき、パッケージ中に望ましくない有機物質の蓄積の原因となり得る。
【0004】
工業的に重要なポリマーの1つは、ポリエチレンテレフタレート(PET)である。フィルム、成形容器、ボトル、その他の形態をしたPETパッケージ材料が知られている。さらに、剛直または半剛直な熱可塑性飲料容器が予備成形品から作製されてきたが、それらは、またさらにペレットまたはチップその他から鋳造される。二軸配向ブロー成形で熱成形されたポリエステル飲料容器が、J. Agranoff (Ed)、Modern Plastics、Encyclopedia、16巻、10A号、P.(84)192〜194頁に開示されている。これらの飲料容器は通常、重縮合の生成物であるポリエステルから、作製される。ポリエステルは通常、金属触媒を用いる縮合反応において、ジヒドロキシ化合物と二価酸化合物とを反応させることにより、作製される。エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオールおよび他のジオールなどのジヒドロキシ化合物は、有機二価酸化合物またはそのような二価酸とそれらの低級ジエステルと共重合させることができる。そのような二価酸の反応体には、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、それらのメチルジエステルその他が含まれる。縮合/重合反応は、ジカルボン酸、またはそれらのジメチルエステルとグリコール物質との間の、加熱で促進される金属触媒反応で起こり、副反応生成物として水またはメタノールを放出して、高分子量のポリエステル材料を残す。原体樹脂は、その後の熱加工に適合した便利なフレーク、チップまたはペレットとして形成される。原体ポリエステル材料は、直接容器に射出ブロー成形することができる。別の方法では、ポリエステルを、中間予備成形品に成形してから、それをブロー成形機中に導入することができる。ポリエステルは加熱されて、飲料容器のために適当な形状および容積にブロー成形される。予備成形品は、単一層材料、二層または多層の予備成形品であってよい。
【0005】
金属触媒は、二価酸物質とジヒドロキシ化合物との間の重合反応を促進するために使用される。溶融段階の初めに、エチレングリコール、テレフタル酸またはそのエステル、および金属触媒が反応器に加えられる。種々の触媒が、エステル交換ステップに適していることは、当技術分野において既知である。有機酸の二価金属塩(例えば、マンガン、亜鉛、コバルトまたはカルシウムの酢酸塩)は、直接エステル化またはエステル交換触媒として、使用されるのが好ましく、それは、そのまま重縮合反応の触媒にもなる。アンチモン、ゲルマニウムおよびチタン化合物は、重縮合触媒として使用されるのが好ましい。使用され得る触媒には、ゲルマニウムおよびチタンも含む1種または複数の金属の有機および無機化合物が、単独または上記のアンチモンとの組合せで含まれる。無機酸化アンチモン、ならびに酢酸アンチモン、シュウ酸アンチモン、アンチモングリコキシド、アンチモンブトキシド、およびアンチモンジブトキシドなど、アンチモンの有機化合物を含む適当な形態のアンチモンを使用することができる。アンチモン含有化合物は、反応速度が高くかつ着色の小さい望ましい組合せを提供する触媒として、現在、工業的に広く一般に使用されている。チタンは、以下の有機チタネートおよびチタン錯体からなる群から選択することができる:シュウ酸チタン、酢酸チタン、酪酸チタン、安息香酸チタン、チタンイソプロピレート、およびシュウ酸チタニルカリウム。有機チタネートは、工業的生産で一般的に使用されてはいない。
【0006】
溶融段階の末期に、重合が完了して分子量が最大になった後、生成物はペレット化される。ペレットは、十分な強度のボトル用樹脂を得るために、固体状重縮合で処理して固有粘度を増大させる。触媒は通常、金属の二価または三価カチオンを含む。
【0007】
そのような触媒を含むポリエステル材料の処理は、副生物形成を生じ得る。そのような副生物は、アセトアルデヒドとして通常分析されるアルデヒド物質などの反応性有機物質を含むことがある。アセトアルデヒド物質の形成は、飲料において匂いまたは味を異常にし、高濃度でプラスチックに黄色みがかった色を与え得る。ポリエステル製造業者は、アセトアルデヒド形成を抑えるために、金属安定剤としてリン系添加剤を添加してきた。アルデヒド形成を抑えるための多くの試みは、問題も生じさせてきた。製造からの触媒残留物として、Sb+1、Sb+2およびSb+3としてポリエステル中に存在するアンチモンは、アルデヒド形成を防止するためまたはそのような物質を捕捉するために使用された添加剤により、アンチモン金属Sbに還元され得る。金属アンチモンの形成は、分散し微粉化した金属残留物により、プラスチックに灰色または黒色の外観を生じさせ得る。
【0008】
高分子量の熱可塑性ポリエステルは、非常に種々の比較的低分子量の化合物(すなわち、上で論じた触媒機構の結果として、または他の原因により分子量が実質的に500グラム/モル未満)を含み得る。これらの化合物は、容器内の食品、水または飲料の中に抽出され得る。これらの飲料に抽出され得る物質は通常、ポリエステルを作製するときに使用されたジオールまたは二価酸の供給流中の不純物を含む。さらに、抽出され得る物質は、重合反応、予備成形品成形工程または熱ブロー成形工程の副生物を含み得る。抽出され得る物質は、ホルムアルデヒド、ギ酸、アセトアルデヒド、酢酸、1,4−ジオキサン、2−メチル−1,3−ジオキソラン、および他の有機反応性アルデヒド、ケトンおよび酸生成物を含む反応副生物質を含み得る。さらに、抽出され得る物質は、メタノール、エチレングリコール、テレフタル酸、テレフタル酸ジメチル、2,6−ナフタレンジカルボン酸およびそれらのエステルまたはエーテルを含む、残留ジエステル、ジオールまたは二価酸物質を含み得る。1モルのエチレングリコールと1モルのテレフタル酸とを反応させることにより作製された、比較的低分子量の(ポリエステル樹脂に比較して)オリゴマー状の線状または環状ジエステル、トリエステルまたはそれより高級のエステルが存在する可能性がある。これら比較的低分子量のオリゴマーは、2モル以上の二価酸と組み合わせた2モル以上のジオールを含み得る。Schiono、Journal of Polymer Science:Polymer Chemistry Edition、17巻、4123〜4127頁(1979年)、John Wiley & Sons, Inc.では、ポリ(エチレンテレフタレート)オリゴマーを含むPET不純物のゲル浸透クロマトグラフィによる分離および同定が論じられている。Bartlら、「Supercritical Fluid Extraction and Chromatography for the Determination of Oligomers and Poly(ethylene terephthalate) Films」、Analytical Chemistry、63巻、20号、10月15日、1991年、2371〜2377頁では、ポリエチレンテレフタレートフィルムからの低級オリゴマー不純物の分離および同定のための実験的超臨界流体手順が論じられている。
【0009】
容器に由来するこれらの可溶な/抽出され得るものを含む食品または飲料は、敏感な消費者により使われたとき、異味、変化した味または、ある場合には薄くなった味さえ知覚され得る。抽出され得る化合物は、飲料物質からの芳香の特色もしくは風味の特色のいずかの知覚に付加するかまたはそれに干渉し得る。それに加えて、ヒトが消費する飲料中に抽出され得る何らかの有機物質の毒性または発癌性に関して、若干の懸念が存在する。
【0010】
飲料容器の製造に使用される組成物に関する技術は、豊富でありまた種々である。大部分において、該技術は、二酸化炭素および酸素などの気体の透過率を減少させて、その結果、貯蔵期限を増大させる、被覆されたおよび被覆されていないポリオレフィン容器ならびに被覆されたおよび被覆されていないポリエステルに関する。この技術は、製造方法ならびにボトルの形状および底部の構造にも関する。Deafら、米国特許第5,330,808号は、ボトル上に光沢のある表面を導入するために、ポリオレフィンボトルにフルオロエラストマーを付加することを教示している。Visioliら、米国特許第5,350,788号は、リサイクルされたプラスチックにおいて、臭気を減少させる方法を教示している。Visioliらは、リサイクルされたポリマーが大きな比率を占めるポリエチレン材料中で臭気捕捉剤として作用する、ポリアルキレンイミンおよびポリエチレンイミンを含む窒素化合物の使用を開示している。
【0011】
Wyethら、米国特許第3,733,309号は、ブロー成形で成形されるポリエステル層を形成させるブロー成形機を示している。Addleman、米国特許第4,127,633号は、加熱されて蒸気またはガスバリアを形成するポリ塩化ビニリデンコポリマーラテックスで被覆されたポリエチレンテレフタレート予備成形品を教示している。Halekら、米国特許第4,223,128号は、飲料容器において有用なポリエチレンテレフタレートポリマーを調製する工程を教示している。Bonnebatら、米国特許第4,385,089号は、二軸延伸およびブロー成形技法を使用する、ボトルにおける二軸配向、中空の熱可塑性成形物を調製する工程を教示している。予備成形品は、ブロー成形されて、次に、予備成形品中の内部残留応力を少なくとも部分的に減少させるために、鋳型の熱壁に接触させて保たれる。予備成形品は冷却されて、次に、第2ブロー成形過程で、適当なサイズにブロー成形され得る。Gartlandら、米国特許第4,463,121号は、対衝撃性、高温寸法安定性が向上して、鋳型剥離が改善されたポリエチレンテレフタレートポリオレフィンアロイを教示している。Ryder、米国特許第4,473,515号は、改良された射出ブロー成形装置および方法を教示している。この方法においては、パリソンすなわち予備成形品が、熱い熱可塑性材料から、冷却されたロッド上で形成される。予備成形品は冷却され、次にブロー成形位置で変形される。次に、パリソンは、延伸されて二軸配向され、冷却されて装置から取り出される。Nilsson、米国特許第4,381,277号は、予備成形品からラミネートされた熱可塑性フィルムを含む熱可塑性容器を製造する方法を教示している。予備成形品は、予備成形された形状から十分に変形されて容器に形成された熱可塑性層およびバリア層を有する。Jakobsenら、米国特許第4,374,878号は、容器を製造するために使用されるチューブ状予備成形品を教示している。この予備成形品は、ボトルに変換される。Motill、米国特許第4,368,825号;Howard Jr.、米国特許第4,850,494号;Chang、米国特許第4,342,398号;Beck、米国特許第4,780,257号;Krishnakumarら、米国特許第4,334,627号;Snyderら、米国特許第4,318,489号;およびKrishnakumarら、米国特許第4,108,324号は、各々好ましい形状または自立する底部形態を有するプラスチック容器またはボトルを教示している。Hirata、米国特許第4,370,368号は、酸素、湿気または水蒸気バリア特性を改善するために、塩化ビニリデンおよびアクリル系モノマーおよび他のビニルモノマーを含む熱可塑性樹脂を含むプラスチックボトルを教示している。ボトルは、水性ラテックスをボトル鋳型中で成形し、成形されたラテックスを乾燥することにより、またはボトル形成に先だって、予備成形品を水性ラテックスで被覆することにより作製することができる。Kuhfussら、米国特許第4,459,400号は、パッケージ材を含む種々の用途において有用なポリ(エステルアミド)組成物を教示している。Maruhashiら、米国特許第4,393,106号は、容器を製造するためのラミネートまたはプラスチック容器および方法を教示している。ラミネートは、被覆層中に成形用プラスチック材料を含む。Smithら、米国特許第4,482,586号は、ポリイソフタレートポリマーを含む、酸素および二酸化炭素バリア特性の良好な多層のポリエステル物品を教示している。Walles、米国特許第3,740,258号および第4,615,914号は、プラスチック容器は、有機物質および酸素などの気体の通過に対するバリア特性を改善するために、プラスチックのスルホン化により処理することができることを教示している。Ruleら、米国特許第6,274,212号は、アセトアルデヒドとの縮合により5または6員架橋を形成することができる、ヘテロ原子を含む隣接した官能基を有する捕捉化合物を使用して、アセトアルデヒドを捕捉することを教示している。Al−Malaika、国際特許出願公開2000/66659号およびWeignerら、国際特許出願公開2001/00724号は、アセトアルデヒド捕捉剤としてポリオール物質の使用を教示している。さらに、本発明者らは、ポリエステルは、炭酸飲料により容器壁に加わる圧力に耐える高耐破裂性を有するように開発されて作られていることを認識している。さらに、製造、充填、および貯蔵中の応力亀裂に対するポリエステル材料の耐性を改善するために、若干の実質的な研究がされている。そのような用途において使用されるポリエステル材料または配合物の改良は、形成された容器の構造上の完全性を損なうべきではない。
【0012】
飲料製造業者は、改善されたバリア材料を長らく捜し求めてきた。この研究努力は、大部分、二酸化炭素(CO)バリア、酸素(O)バリアおよび水蒸気(HO)バリアに向けられた。より最近、オリジナルのボトルの製造業者達が、樹脂または容器中の、飲料に抽出され得るかまたは飲料に可溶な物質の存在に対してかなり敏感になってきた。この努力は、透過率を減少させる透過性のより小さいポリマーのポリマー被覆またはポリマーラミネートで、原体プラスチックを改善するためにされた。
【0013】
この技術の相当の集合によってさえ、容器中の食品もしくは飲料中への反応性有機物質の流出を実質的に減少させ得るか、またはヒトによる消費を意図する飲料中に入り込む、抽出され得る物質中の透過物の通過を減少させ得る、飲料容器のための二軸配向熱可塑性ポリマー材料を開発する実質的必要が生じた。
【0014】
ポリエステル樹脂の安定化およびアセトアルデヒドなどの反応性有機物の吸収は、大きな注意を惹いてきた。この問題を解決するための案が提案されている。1つの提案は、例えば、国際特許出願公開9744376号、欧州特許第26713号および米国特許第5,874,517号および特開昭57−049620に示された、リン化合物および窒素複素環化合物を含む活性な安定剤の使用を包含する。大きい注目を惹いた別の提案は、固体状態の重縮合(SSP)処理を含む。第2重合段階後の物質を、水または脂肪族アルコールで処理して分解による残留物を減少させる。アセトアルデヒドも、キシリレンジアミン原料および低分子量脂肪族ポリアミドに基づく低分子量の部分的芳香族ポリアミドを含む反応性化学物質で捕捉することができる。
【0015】
例えば、米国特許第5,258,233号、第6,042,908号、および欧州特許第0714832号を参照されたい。市販ポリアミド、国際特許出願公開9701427号を参照されたい。ポリエチレンイミン、第5,362,784号を参照されたい。テレフタル酸のポリアミド、国際特許出願公開9728218号を参照されたい。ゼオライトなどの無機吸収剤の使用、米国特許第4,391,971号を参照されたい。
【0016】
Bagrodia、米国特許第6,042,908号は、オゾン処理水の風味を改善するために、ポリエステル/ポリアミドブレンドを使用する。Hallock、米国特許第6,007,885号は、ポリマー材料中の酸素捕捉組成物を教示している。Ebner、米国特許第5,977,212号も、ポリマー中の酸素捕捉物質を教示している。Rooney、米国特許第5,958,254号は、ポリマー材料のための、遷移触媒を含まない酸素捕捉剤を教示している。Speer、米国特許第5,942,297号は、ポリマー系中の酸素捕捉剤と組み合わされた広い生成物吸収を教示している。Palomo、米国特許第5,814,714号は、ブレンドされたモノオレフィン/ポリエン共重合体を教示している。最後に、Visioli、米国特許第5,350,788号は、リサイクルされたプラスチック中の臭気を減少させる方法を教示している。
【0017】
Woodら、米国特許第5,837,339号、第5,882,565号、第5,883,161号、第6,136,354号および他の係属出願は、ポリエステルにおけるバリア特性のための、置換されたシクロデキストリンの使用を教示している。Woodら、米国特許第7,166,671号は、ポリオレフィンにおけるバリア特性のための、シクロデキストリンをグラフトされたポリマーの使用を教示している。
【0018】
活性炭(CAS No.7440−44−0)は、気体および液体の精製、脱色、および除臭のための広範な用途で一般に使用されている、多孔質の合成固体材料である。活性炭および特に酸洗浄活性炭は、ポリマー加工中に熱分解生成物として形成される化合物など、気相および液相中の望ましくない有機分子を捕捉する目的のために、ポリマーマトリックス中に取り込ませるのに高度に望ましい材料である。バリア層用途において、炭素の封入は、そうでなければポリマーマトリックスを通って拡散するであろう物質を捕捉する性質を含むという目的にとって望ましいであろう。
【0019】
しかしながら、炭素粒子は、それらが高度に光散乱性で、ポリマー層を黒色または灰色に通常着色させ得るので、透明なポリマー層では使用されないことが多いと広く理解されている。十分大きければ、炭素が、無色透明な溶媒またはポリマーマトリックスなどの透明な媒質中に存在したときに、個々の粒子も観察することができる。多くのインク製剤は、例えば、選択する黒色顔料として、カーボンブラックを利用する。自動車タイヤは通常、高率のカーボンブラックを利用する。炭素の光散乱特性は、ある用途では望ましいが、一方、例えば、無色透明な、または不透明な、または半透明の白色ポリマーマトリックスが望ましい場合には、望ましくない。
【0020】
さらに、ポリマーマトリックス中における何らかの特別な粒子の存在は、物理的性質に有害であり得る。粒子は、周囲のポリマーマトリックスに密接にかつ強力に付着し得る。ポリマーマトリックスの引っ張り強度は、通常増大するが、それでも破断伸度は減少する。マトリックスと充填剤との相互作用が有利な場合でさえ、結果の物理的性質は、単位歪み当たりの応力増大のために、充填剤のないマトリックスが本来有するよりも低い破断伸度を反映することが多い。このことは、ある用途では、特に、ポリマーの引っ張り特性が、他の物質の存在なしで最適化されている場合に望ましくないことがある。さらに、充填剤のマトリックスに対する付着が強い場合には、全組成物の0.1容積分率以下など非常に少量の充填剤粒子の使用が、破断伸度を低下させることに加えて、引っ張り強度および衝撃強度にとって実際に有害であることが観察された(この現象の考察については、Nielsen, L. E.、Simple Theory of Stress−Strain Properties of Filled Polymers、J. Appl. Pol. Sci.10巻、97〜103頁(1966年)を参照されたい)。
【0021】
粒子とポリマーマトリックスとの間の付着が極小である場合、ポリマーマトリックスの伸度および他の引っ張り特性は、充填剤のないマトリックスと殆ど同じままであり得る。しかしながら、マトリックスが引き延ばされると、粒子とポリマーとの間の付着の欠如が、充填剤を変形させて、粒子周囲の空隙を応力の方向に伝播することにより、応力場を集中させる。ポリマーが破壊されると、空隙は1つの充填剤粒子から次の充填剤粒子へと伝わって、ポリマーの最終的破損を生じさせる。
【0022】
これら応力−歪み挙動の変化は、溶融においても同様に起こり得る。したがって、ポリマー溶融中の粒子は、粒子が非常に小さくてまたは非常に低濃度で使用されていて裸眼には見えないときでさえ、マトリックスに目に見える欠陥を生じさせ得る。空隙は、ポリマーが二軸配向され、ブロー成形され、紡糸されると、または溶融ポリマーに応力を受ける何か他の工程で、応力の方向に生じ得る。これらの空隙は、筋、泡その他として、ヒトの肉眼で見ることができる。可視的欠陥は、それだけで望ましくないことがあり、またはその欠陥は、それらが、ポリマーの物理的性質がその後の用途において損なわれ得るようなポリマーマトリックス中の弱点となるので、望ましくないことがある。例えば、欠陥は、欠陥のないポリマーと比較して比較的低い圧力でマトリックスの破損を引き起こすので、生じたポリマーマトリックスの破裂強度が不十分なことがある。衝撃強度、引っ張り強度、および破断伸度も、同様に影響される可能性があり、ポリマーマトリックスを所与の用途で使用できなくすることがある。
【0023】
さらに、炭素を含む多くの充填剤は、それらがなければ無色透明なポリエステルの濁度を増大させる傾向がある。充填剤として炭素が含まれると通常、ある用途、例えば飲料容器ボトルには望ましくない灰色を帯びるであろう。しかしながら、Ottoら、米国特許第6,358,578号は、ポリエステルマトリックス中における活性炭の使用を開示しており、その場合、平均2μm以下、好ましくは500nm以下のサイズの粒子が、変色を生ぜずにポリエステル中に混入できる。その用途で、炭素粒子は、ポリエステルのエステル交換反応における共触媒である。炭素粒子は、ポリエステル形成における使用に先だって、粒子サイズを減少させるために、粉砕される。生じたマトリックスの物理的性質は開示されておらず、変色を別にして、いかなる構造的欠陥または視覚的欠陥の存在も開示されていない。
【0024】
シクロデキストリンとともに活性炭が含まれることは、先行技術の他の組成物において見出される。例えば、Nakazima、特許文献1は、シクロデキストリンおよびジベンジリデンソルビトール型化合物を含むポリオレフィン組成物を開示している。カーボンブラックは、随意選択の添加剤として挙げられているが、特許請求はされていない。Andrewsら、特許文献2は、シクロデキストリンであってもよい多価アルコールを含むポリエステル組成物を開示している。Eisenhartら、特許文献3は、水系を可逆的に粘性化する目的で、水溶性ポリマーに可逆的に結合したシクロデキストリンの使用を開示している。カーボンブラックを含む配合物は開示されているが、特許請求はされていない。Nakamuraら、特許文献4は、シクロデキストリンを含むインク組成物を開示している。カーボンブラックは、ブランクインク配合物のための顔料として明細書中で開示されている。同様に、Miyamotoら、特許文献5およびSuzukiら、特許文献6は、シクロデキストリンおよび着色剤としてカーボンブラックを含むインク配合物を開示している。Wooら、特許文献7は、カーペットクリーニング用途に有用な、シクロデキストリンを含む非ポリマー脱臭剤組成物を開示している。炭素は随意選択の可能な添加剤の長いリスト中で開示されているが、特許請求されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】米国特許第5,001,176号明細書
【特許文献2】米国特許第6,790,499号明細書
【特許文献3】米国特許第5,137,571号明細書
【特許文献4】米国特許第5,854,320号明細書
【特許文献5】米国特許第6,827,767号明細書
【特許文献6】米国特許第6,849,111号明細書
【特許文献7】米国特許第6,833,342号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0026】
(発明の簡単な議論)
本発明者らは、ポリマー材料由来の望ましくない有機物の吸収、発生、形成を防止するように、または捕捉するように作用し得る、ポリマーとブレンドするための独特の種類の添加剤を発見した。あるいは、該添加剤は、有機低分子の、ポリマーマトリックスを通しての拡散を防止するバリア層として作用し得る。最後に、該添加剤は、材料の分解が望ましくない低分子VOCを生じ得る場合に、熱加工の副生物を捕捉することができる。
【0027】
本発明者らは、シクロデキストリンと活性炭粒子との組合せが、種々のポリマーマトリックス中に封入するために望ましい添加剤組成物であることを見出した。驚くべきことに、炭素粒子の封入は、非常に低い濃度で存在するときでさえ、シクロデキストリンと一緒に加えられると、錯体を形成していないシクロデキストリンの量を増加させることにより、シクロデキストリンの捕捉特性を助成し改善するのに非常に利益となる。低濃度活性炭の小粒子を使用して、無色透明な最終生成物を要求する用途でさえ、炭素と関連する光散乱特性が観察されないことを、本発明者らは見出した。さらに、低濃度の小粒径活性炭を使用することにより、シクロデキストリンおよび炭素粒子の両方を含む最終物品の物理的性質は、大きく変化することがなく、ポリマーマトリックスは、炭素粒子を含まないポリマーと実質的に同じ引っ張り強度、破断伸度、その他を有する。
【0028】
活性炭は、シクロデキストリンの捕捉特性を補完し、シクロデキストリン化合物のアルデヒド捕捉特性に加えて、有機酸などの有機化合物の捕捉を増強する。有機酸の捕捉は、それに次ぐシクロデキストリンを含むポリマーの熱加工において、有機酸(例えば、ギ酸、酢酸およびプロパン酸)がシクロデキストリン環内のα−D−グルコピラノース単位を脱水させて、異常な黄色の原因となるので、特に利益がある。有機酸は、多くの工業規格樹脂中に共通の不純物であり、そのため、シクロデキストリンの捕捉特性が熱可塑性物品中に望ましく導入されたときに、以前、問題が生じた。この問題は、本発明のポリマー添加剤の酸捕捉特性により取り除かれる。さらに、シクロデキストリン化合物および活性炭の両方がポリマーマトリックスに組み込まれると、アルデヒド捕捉は、シクロデキストリン化合物単独によるアルデヒド捕捉と比較して、それ自体増大する。
【0029】
封入に対する推進力は、主として、無極性のCD空洞と極性の水との間、または無極性のゲストになり得る化学物質と水との間の極性−無極性相互作用の置換である。封入に対する推進力は、ゲストとCD空洞との間の無極性−無極性相互作用でもある。錯体を形成するこの初期平衡は、非常に迅速であるが(しばしば数分以内)、最終的平衡は、達するのにもっと長くかかることがある。平衡は、解離した種と会合した種との間で確立されて、錯体安定性定数、Kにより表される。
【0030】
【化1】

ゲストは、ある条件でCD空洞から追い出すことができ、封入錯体の解離は比較的急速な過程である。種々のシクロデキストリン空洞サイズおよび誘導体化修飾により、錯体平衡の多少の制御が可能になる。追い出されたゲストが錯体を再形成できるCD分子を見つけられなければ、そのゲスト化学物質はポリマーマトリックスの自由体積中に存在することができる。平衡は絶えず変化するので、それはさらに、活性炭が残留樹脂汚染物質を捕捉して平衡を右に移動させる機会を創り出す。ポリマーマトリックス中の典型的汚染物質濃度は、低いppmまたは高いppbの内であり、それは平衡の右への移動に有利である。
【0031】
本発明の添加剤組成物は、それらの最も単純な形態で、シクロデキストリンおよび活性炭粒子を含む。添加剤組成物は、炭素をシクロデキストリンに添加することにより形成することができ、添加はドライブレンドにより、または溶媒中で行われる。特定の用途および製造工程は、特定の溶媒を要求する。シクロデキストリンは、α−、β−、またはγ−シクロデキストリンまたはそれらの混合物であってよい。本発明の技術で使用されるシクロデキストリン化合物は、置換されたβ−またはα−シクロデキストリンを含むことが好ましい。シクロデキストリン上の置換基は、メチルまたはアセチルであることが好ましい。好ましいシクロデキストリン材料およびポリマーマトリックスにおけるそれらの使用は、Woodら、米国特許第5,837,339号、第5,882,565号、第5,883,161号、および第6,136,354号、第6,709,746号、第6,878,457号、第6,974,603号、および第7,018,712号に記載されており、これらはその全体が、参照により本明細書中に組み込まれる。
【0032】
別の好ましい組成物は、ポリマーの主鎖中に組み込まれたかまたはポリマーに懸垂する完全なシクロデキストリンを含む。そのような材料の例には、シクロデキストリンが、例えば、ポリオレフィン主鎖に沿って存在する無水マレイン酸基と反応するグラフト形成反応を開示している、Woodら、米国特許第7,166,671号が挙げられるが、これに限定はされない。Iwaoら、特開昭59−227906は、官能化されたシクロデキストリンの高分子量カルボキシエステル基を含む材料との反応を記載している。Masanobu、特開平05−051402は、シクロデキストリンのハロゲンを含むかまたは他の反応性の化合物とのシクロデキストリンコポリマーを生ずる反応を記載している。Sidhuら、国際特許出願公開93/05084号は、シクロデキストリンがとりわけβ−シクロデキストリンアクリレートとして反応させられた、シクロデキストリンを含む付加ポリマーを開示している。Szejtliら、米国特許第4,547,572号および第4,274,985号は、エピクロロヒドリンとのコポリマー、シクロデキストリンを含むアルキレンオキシドポリマーが結合した懸垂シクロデキストリン基を有するセルロース、およびポリビニルアルコールコポリマーを含むシクロデキストリンの種々のコポリマーを開示している。そして、Rohrbach、欧州特許第0454910A1号は、ポリイソシアネートのシクロデキストリンとの架橋反応を開示している。米国特許公開第2004/0110901号、特開昭59−227906、特開平05−051402、国際特許出願公開93/05084、米国特許第4,547,572号、米国特許第4,274,985号および欧州特許第0454910A1号は、それらの全体が参照により本明細書中に組み込まれる。本発明は、これらポリマーの任意のものを活性炭とともに、本明細書に記載した任意の工程ならびにポリマー加工の当技術分野において既知である技法を使用して、本発明の組成物、マスターバッチ、および最終物品中に組み込むために、使用することを考慮している。
【0033】
本発明の別の好ましい実施形態は、物品をシクロデキストリンで被覆して被覆された物品に電子ビームを当てることにより、物品の表面に結合されたシクロデキストリンを含む。この工程は、その全体が参照により本明細書中に組み込まれる、Yahiaouiら、米国特許第6,613,703号に記載されている。本発明は、本発明の最終物品の電子ビーム処理のための、活性炭とともにシクロデキストリンで被覆された物品の処理を考慮している。
【0034】
シクロデキストリンは、シクロデキストリン化合物の濃度が約1.8から約60重量%であるように溶媒に溶解することができる。次に、炭素濃度が約0.001から約1.0重量%であるようにして、溶液を活性炭と接触させる。炭素は、粒子が組み込まれているポリマーマトリックスの黄化を避けるために、水中で約6から10のpHを有することが好ましい。炭素粒子の本発明の添加剤組成物中のシクロデキストリン基に対する比は、1:1,000,000から20:1の範囲であってよい。炭素のシクロデキストリンに対する比は、1:2から1:40,000であることが好ましい。シクロデキストリンおよび炭素は互いに排他的で、シクロデキストリンの内部空洞もしくは空間中にまたは炭素粒子の多孔質の本質中に実質的に侵入するようには見えない。
【0035】
溶液は、さらに約10nmから約100μmの細孔サイズを使用して濾過することができる。粒子サイズを制御するこの手段を使用すれば、活性炭は、ポリマーマトリックスに、充填剤物質としての炭素に普通伴う性質である変色を起こさない。別法として、溶液を約500から約1000rpmで遠心分離して、大きい方の粒子を除去することができる。溶媒を添加して濾過または遠心分離後、添加剤組成物は、添加剤組成物を本発明のマスターバッチまたは最終物品に組み込む前に乾燥することができる。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態においては、添加剤組成物に溶媒を使用せず、また濾過を行わない。これら実施形態においては、シクロデキストリンを含む粉末と炭素とを混合することができる。生成した粉末ブレンドは、押し出し装置に直接加えることができ、そこで熱可塑性ポリマー中にブレンドすることができる。本発明の最終物品中で最終的に大きい可視的粒子になることを防止するのに必要な小粒径の炭素を提供するために、特別の粉砕または他の調製をする必要がないことがこれら実施形態の利点である。特に二軸スクリュー押出が使用される場合、押し出し機中ではより高いせん断に遭うので、100μmまでの平均粒子サイズを有する炭素が、添加剤として利用できる。押し出しによる混入後、最終粒子サイズは、10μm以下となる。
【0037】
添加剤組成物は、それらを本発明のマスターバッチまたは最終物品に送達する目的で、油中に分散または溶解することもできる。適当な油には、ポリαオレフィン、パラフィン系、芳香族、またはナフテン系エキステンダー油ならびにシリコーン系油が含まれる。そのような材料は、ポリマーマトリックスを可塑化するために選択することができるが、単一相すなわち溶液、または2相以上すなわち分散もしくはエマルションのいずれかのポリマーマトリックスに、添加剤組成物を、少なくとも適当に送達するように機能しなければならない。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態において、熱可塑性樹脂中に高濃度のシクロデキストリンおよび炭素を含むマスターバッチを形成することができる。マスターバッチは、貯蔵して、シクロデキストリンまたは炭素を含まないポリマー樹脂にマスターバッチを添加する、後の工程で使用することができることが有利である。添加は、マスターバッチ対樹脂の比が1:1から約1:40であることが好ましく、また、目的とする用途に応じた、シクロデキストリンおよび炭素の望ましい最終濃度で到達するように調整するのが有利である。マスターバッチは、押し出し機中で、本発明の添加剤組成物を熱可塑性樹脂に添加することにより作製することができる。添加剤組成物は、粉末としてまたは油中で送達することができる。ブレンド後、処理された熱可塑性マスターバッチ樹脂は、貯蔵の便のためにペレット化されることが好ましい。マスターバッチは、熱可塑性樹脂のチップまたはペレットを、シクロデキストリンと炭素とを含む溶液で表面被覆し、その溶液は、種子被覆の当技術分野において既知の種々のスプレーコーティング装置(例えば、流動床、反転流動床、回転ディスクおよび回転ドラム)を使用して適用し、ペレットを乾燥して、表面処理されたペレットまたはチップを提供することにより作製することもできる。
【0039】
本発明のマスターバッチは、マスターバッチ組成物に対して約100から約150,000重量ppm、より好ましくはマスターバッチ組成物に対して約100から約80,000重量ppmで、シクロデキストリンを含む。マスターバッチは、マスターバッチ組成物に対して約0.005から約5000重量ppm、より好ましくはマスターバッチ組成物に対して約0.05から約2000重量ppmで炭素粒子を含む。本発明のマスターバッチ中における炭素粒子のシクロデキストリン基に対する比は、1:1,000,000から20:1の範囲であってよい。好ましくは、炭素のシクロデキストリンに対する比は、1:2から1:40,000である。
【0040】
シクロデキストリンおよび炭素を含む物品は、比較的高率のシクロデキストリンおよび炭素を含むマスターバッチと未処理熱可塑性樹脂とをブレンドし、ブレンドから物品を形成することにより形成することができる。別法として、本発明の添加剤組成物を熱可塑性樹脂中に所望の濃度で押し出してブレンドすることにより、物品を作製することもできる。本発明の物品は、任意の普通に利用される技法を使用して形成することができる。熱加工は、本発明の物品を形成するために好ましい方法である。熱加工は、押し出し、共押し出し、異形押し出し、射出成形、ブロー成形、射出ブロー成形、静電紡糸、スパンボンド法、溶融ブロー成形、一軸または二軸配向、またはそれらの組合せにより実施することができる。
【0041】
シクロデキストリンに加えて炭素粒子を含む組成物中に、追加材料を混入することもできる。これらの材料は、添加剤組成物、混入の容易さおよび効率に依存して、マスターバッチ、または本発明の最終物品中に混入することができる。混合することができる追加材料のいくつかの例には、染料、顔料、酸化防止剤、UV安定剤、熱安定剤、殺菌剤、殺かび剤、香料、可塑剤、または粘着付与剤が挙げられるが、これらに限定はされない。これらの物質は、当業者に既知の任意の手段を使用して本発明のポリマーマトリックス中に混合することができる。
【0042】
好ましくは、完成した本発明の物品は、物品の重量を基準にして、2000ppm以下の活性炭、より好ましくは約0.001から約500ppm、および最も好ましくは0.05から100ppmの活性炭粒子を含む。好ましくは、完成した本発明の物品は、完成した物品の重量を基準にして、約10から約50,000ppmのシクロデキストリン、好ましくは100から25,000ppmのシクロデキストリンを含む。本発明の物品中における、炭素粒子のシクロデキストリン基に対する比は、1:1,000,000から20:1の範囲であってよい。好ましくは、炭素のシクロデキストリンに対する比は1:2から1:40,000である。
【0043】
注目すべきことに、本発明の活性炭粒子は、添加剤組成物中またはマスターバッチ組成物中において、10nmから100ミクロンの範囲のサイズであってよい。本発明の多くの実施形態は、本発明の添加剤組成物を含むポリマーマトリックスの押し出し加工を利用すると予想され、これが該当する場合、添加剤組成物またはマスターバッチ中の炭素の粒子サイズは、比較的大きく、例えば、100ミクロンであってもよい。本発明の添加剤組成物を含むポリマーの押し出し加工は、典型的な押し出し操作、特に二軸スクリュー押し出しで起こる、物理的混練、せん断、および混合により、炭素の大きい粒子を粉砕してより小さいサイズにすることが予想される。したがって、添加剤組成物中またはマスターバッチ中いずれかの炭素の粒子サイズは、10nmから100ミクロンの範囲の上の方にあってもよい。
【0044】
しかしながら、本発明の最終物品において、活性炭の粒子サイズは、1ミクロン以下、好ましくは10nmから1ミクロン、より好ましくは10nmから750nm、さらにより好ましくは10nmから500nm、さらにより好ましくは10nmから350nm、さらにより好ましくは10nmから250nm、および最も好ましくは10nmから100nmであることが好ましい。そのような炭素粒子は、シクロデキストリンと協調して効果的に作用し、ポリマーマトリックスからの望ましくない化合物を捕捉するのに十分な細孔容積を提供し、一方、最終物品の使用者が灰色の色合いを認めずかつ個々の粒子が見えないほど十分小さい粒子サイズを有する。
【0045】
本発明の最終物品は、種々の技法を使用して作製することができる。いくつかの実施形態において、最終物品は、本発明の添加剤組成物を直接未処理ポリマーに添加して、2成分をブレンドしてから最終物品を成形することにより成形することができる。添加剤組成物は、溶媒中でポリマーマトリックスに送達するかまたは例えば押し出し機中で溶融ブレンドすることにより送達することができる。添加剤組成物は、粉末として溶媒中でまたは油中で、ポリマーマトリックスに添加することができる。油は、添加剤組成物をポリマーマトリックスに溶融ブレンド中に送達するために、例えば、可塑剤として使用することができることが、有益である。溶媒中における添加剤組成物の送達は、ポリマーと添加剤組成物との溶媒ブレンドが意図される場合に最も好ましくは使用される。ブレンドは、最も好ましくは、均質にブレンドされた最終物品組成物を得るように、二軸スクリュー押し出し機を使用して実施される。
【0046】
処理されたポリマーチップが上記のマスターバッチ材料である場合には、本発明の最終物品は、処理および未処理ポリマーチップを溶融ブレンドすることにより作製されることが好ましい。したがって、比較的高レベルのシクロデキストリンおよび炭素を含むマスターバッチチップは、いずれの添加剤組成物も含まない第2のチップと、これら2つの材料が一緒にブレンドされた後にシクロデキストリンおよび炭素の所望のレベルが実現されるような比で、溶融ブレンドすることができる。マスターバッチチップは、溶融加工されて本発明の添加剤組成物をその中にブレンドしてあってもよく、またはマスターバッチチップは、添加剤組成物で表面を被覆されていてもよい。溶融ブレンドは、任意の従来の溶融ブレンド技法を使用して実施することができるが、均質にブレンドされた最終物品を得るために、二軸スクリュー押し出しを利用することが好ましい。
【0047】
添加剤組成物中でブレンドした後、本発明の最終物品は、ポリマー組成物を成形および形成する任意の既知の技法を使用して成形される。例えば、組成物の溶融ブロー成形は、繊維を形成させるために実施することができる。静電紡糸、スパンボンド法、溶融ブロー成形、またはそれらの組合せなどの、繊維を形成する他の技法も使用することができる。それに加えて、繊維は、少なくとも1つの成分がシクロデキストリンおよび活性炭粒子を含む複合繊維として形成することができる。
【0048】
本発明の添加剤組成物が含まれる押し出し操作中に、シクロデキストリン化合物および活性炭は、高温で設定された滞留時間中に溶融ポリマーと混合する。溶融押し出し温度で、シクロデキストリン化合物は、金属触媒残留物と反応して錯体を形成するかまたは会合して、アセトアルデヒドなどのアルデヒド物質を含む、触媒的に発生する反応性有機化合物の生成を防止する。活性炭は、溶融中および形成された物品が冷却された後の両方で、残留有機化合物を捕捉する手段をさらに提供する。
【0049】
驚くことに、活性炭は、シクロデキストリン化合物とともに含まれ、続いて溶融加工されて、無色透明な、すなわち活性炭に通常伴う灰色のない完成成形ポリエステル物品を提供することができる。シクロデキストリン化合物および活性炭は、樹脂中に存在するかまたは溶融加工中に形成されるアセトアルデヒドまたは有機酸などの揮発性反応性物質と反応し、および/またはそれを捕捉することもできる。予備成形またはブロー成形滞留時間は、アルデヒド濃度を効果的に減少させるが、シクロデキストリンまたはポリマーは分解しないように選択される。そのようなアルデヒド濃度の減少は、熱可塑性ポリマー中の主要な異臭および腐臭を減少させ、または排除する。
【0050】
やはり驚くべきことであるが、本発明者らは、活性炭粒子の封入は、本明細書で記載した方法でポリマーマトリックス中に取り込まれたときには、破裂強度、破断伸度または応力などのポリマーマトリックスの物理的性質に関して、いかなる有害な効果も生じないことを見出した。
【0051】
最終物品は、引き続いて成形されて最終物品を形成する予備成形品であってもよい。そのような加工は、最終物品が、ポリエステルから形成されるボトル、キャップ、栓、または容器などの3次元形状であるとき、実施されるのが好ましい。最終物品は、一軸または二軸遠心により厚いフィルムから薄いフィルムを形成させるなど、薄いフィルムを形成させるために後で延伸される厚い部材であってもよい。
【0052】
本発明の最終物品は、ポリマーが使用され得る任意の形態であってよい。したがって、本発明の最終物品は、不織布フィルタ、ボトル、または窓ガラスなど、独立した存在であってもよい。あるいは、最終物品は、構造全体の一部、例えば、吸収性物品を覆う不織布、多層フィルム構造の単一層、または大きい物品の表面被覆であってもよい。
【0053】
最終物品の例には、容器、栓、フィルム、共押し出しフィルム、シート、ライナー、半剛直部材、剛直部材、成形された部材、鋳造された部材、エンボスされた部材、多孔質部材、繊維、糸、不織布、織布、物品上の被覆、物品上部の薄い層、物品上部の厚い層、バリア層、射出成形物品、ブロー成形物品、ロトモールド法による物品、マスターバッチペレット、連続気泡フォーム、独立気泡フォーム、粘着性物品、吸収性物品、またはそれらの一部または組合せが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0054】
本発明の第1の態様は、添加剤組成物として、シクロデキストリンと炭素粒子との混合物を含む。シクロデキストリンは、α、β、またはγ−シクロデキストリンであってよい。シクロデキストリンは、置換されていないか、メチルもしくはアセチルなどの置換基により置換されていてもよく、またはポリマーに共有結合していてもよい。共有結合でポリマーに結合している場合、シクロデキストリンの2つのヒドロキシル基をジイソシアネートと反応させてポリウレタンを形成させることにより、またはシクロデキストリンを二価酸と縮合させてポリエステルを形成させることなどにより、シクロデキストリンは、ポリマー主鎖と一体化され得る。別法で、シクロデキストリンのヒドロキシル基を、ポリマー主鎖中に存在するグリシジル基または酸無水物基と反応させることなどにより、ポリマーにシクロデキストリンをグラフトして懸垂することができる。添加剤組成物は、粉末形態であってもよく、または溶媒中もしくは油中にあってもよい。
【0055】
本発明の第2の態様は、本発明の添加剤組成物を作製する方法である。該方法は、2種の材料を単にブレンドすること、それらを溶媒中でブレンドすること、溶媒中でブレンドし続いて濾過および場合により濾過後溶媒を除去すること、またはシクロデキストリンをポリマー主鎖にグラフトさせるための、シクロデキストリンおよび炭素と反応性ポリマーとの押し出しブレンドを含むことができる。
【0056】
本発明の第3の態様は、熱可塑性ポリエステル材料および比較的濃縮されたレベルのシクロデキストリンおよび炭素を含むマスターバッチペレットまたはチップである。これらの高濃度マスターバッチは、引き続いて最終物品の作製に使用される。マスターバッチペレットまたはチップは、添加剤組成物がペレットまたはチップの実質的に外部に存在する、本発明の添加剤組成物の被覆層を含むことができる。別法で、ペレットまたはチップは、押し出し機中などで溶融ブレンドして、シクロデキストリンおよび炭素を混入した結果であることもある。これらの実施形態において、添加剤組成物は、熱可塑性ペレットまたはチップ全体に実質的に分散される。
【0057】
本発明の第4の態様は、マスターバッチペレットまたはチップを作製する方法である。それらは、予備成形された熱可塑性ペレットまたはチップを、被覆して乾燥することにより作製することができる。または、マスターバッチペレットもしくはチップは、押し出し機中などで、溶融ブレンドすることもできる。後者の場合、マスターバッチを作る方法は、シクロデキストリンが、ポリマー鎖に懸垂する無水物、塩化物、またはエポキシ基など、グラフトする反応点を有する熱可塑性ポリマーと共有結合でグラフトする結果を生ずることもある。
【0058】
本発明の第4の態様は、本発明の予備成形品から飲料容器を製造した結果として生ずる、金属触媒捕捉剤の性質および揮発性有機物バリアの性質を有する熱可塑性飲料容器を含む。
【0059】
本発明の第5の態様は、所望の終点レベルの炭素およびシクロデキストリン両方を含む最終物品を含み、この場合、シクロデキストリンは、1つまたは複数の部分で置換されているか、またはポリマーに共有結合しているかのいずれか、あるいは両方である。最終物品においても、白色または透明なポリマーマトリックス中で、粒子が可視的でないことを確実にするために、炭素粒子サイズは、500nm以下であることが好ましいが、マスターバッチまたは添加剤組成物では、それより大きい粒子サイズを有することは、望ましくないことではない。最終物品の広い範囲が想像され、当技術分野において既知の熱可塑性ポリマーのすべての一般的に有用な形状の限界によってのみ限定される。
【0060】
本発明の第6の態様は、所望の終点レベルの炭素の粒子サイズとシクロデキストリンとを有する最終物品を作成する方法である。一般的に、当技術分野において既知の加工方法が利用できる。最終物品は、マスターバッチペレットまたはチップを、ある比率の熱可塑性ポリマーペレットまたはチップと、押し出しなどの熱ブレンド工程でブレンドすることにより作製することができる。本発明の添加剤組成物を、押し出し中の添加などにより、溶融したポリマー中に直接ブレンドすることにより作製することもできる。後者の使用では、添加剤組成物は、粉末としてまたは油中で導入することができる。最終ステップにおいて、最終物品は、最終形状に成形される。そのような形成は、ポリマーを成形する既知の技術によってのみ制限される。多くの物品が中間にあり得るので、細い繊維およびIビームが本発明の最終物品であることもある。
【0061】
本発明の第5および第6の態様において、活性炭粒子が取り込まれた精製シクロデキストリン材料の使用は、ポリマーから形成された容器内で、食品材料に異臭または腐臭を生ずる有機物質を殆どまたはまったく含まない、実質的に無色透明なポリマーマトリックスを生じ得る。さらに、ポリエステルマトリックスは、二軸配向またはブロー成形などの高い歪みを後で受けるポリマーマトリックス中に粒子が混入されたときにしばしば生ずるタイプの構造的欠陥に悩まされることがない。さらに、活性炭粒子と協調したシクロデキストリン化合物の使用により賦与されたバリアおよび捕捉特性は、先行技術で見出されたものより優れている。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】α、β、およびγ−シクロデキストリンの空洞サイズを示す、シクロデキストリン環の模式図である。
【図2】本発明の組成物を含む実質的に透明な2リットル炭酸飲料容器の側面図である。
【図3】本発明の組成物を含む少なくとも1層を有する吸収性食品パッドを示す図である。
【図4】少なくとも1層が本発明の組成物を含む熱可塑性層で構築された燃料タンクを示す図である。
【図5】750rpmで30分間遠心分離した35wt%メチルβ−シクロデキストリン溶液中における炭素粒子分布を示す図である。
【図6】750rpmで30分間遠心分離したEmery 3004油中における炭素粒子分布を示す図である。
【図7】メチルβシクロデキストリンの35wt%溶液を乾燥して水を除去し、290℃に2分間加熱した、SPMEによるガスクロマトグラフにおけるヘッドスペースのクロマトグラムを示す図である。
【図8】シクロデキストリンの重量を基準にして0.1wt%の活性炭を含む、35wt%メチルβ−シクロデキストリン溶液を乾燥して水を除去し、次に290℃に2分間加熱した、SPMEによるガスクロマトグラフにおけるヘッドスペースのクロマトグラムを示す図である。
【図9】750ppmのメチルβ−シクロデキストリンを含む射出成形ポリエステル、および1.5ppmのココナツ活性炭とともに750ppmのメチルβ−シクロデキストリンを含む射出成形ポリエステルの可視波長スキャンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0063】
(発明の詳細な議論)
本発明者らは、ある量の活性炭と協調して、アルデヒドなどの有機物質の形成を防止できる、または形成された有機物質を捕捉できる濃度で、置換されたシクロデキストリン化合物を使用して、多くのポリマー材料の捕捉特性を実質的に改善できることを見出した。本発明者らは、精製されたシクロデキストリン材料および酸洗浄炭素を使用することが、ポリエステル加工にとって好ましいことをさらに見出した。本発明者らは、溶液中のシクロデキストリン化合物のある濃度範囲が活性炭との接触に対して好ましいことを、さらに見出した。本発明者らは、好ましい置換度、置換されたシクロデキストリンの濃度、活性炭の粒子サイズ、活性炭粒子の濃度、および加工条件が、高品質ポリエステルマトリックスを生成させることをさらに見出した。本発明者らは、上記の精製工程からの修飾されたシクロデキストリン材料および活性炭粒子とポリマーマトリックスとを組み合わせると、反応性有機化合物特性が改善され、ポリマー残留物(例えば、アセトアルデヒド)を放出する傾向が減少することを見出した。
【0064】
ポリマー材料
一般的に、熱可塑性樹脂は本発明の添加剤組成物とともに使用することができ、その場合シクロデキストリンおよび炭素とポリマーマトリックスとの相溶性が限定要因である。有用な熱可塑性プラスチックの例には、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリケトン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリフェニレンオキシド、ポリ(ビニル塩化物)、またはそれらのコポリマーまたはブレンドが挙げられるが、これらに限定はされない。より好ましくは、熱可塑性ポリマーは、ポリオレフィンまたはポリエステルである。
【0065】
工業的に有用なポリオレフィンには、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびそれらと1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等など他のオレフィンを含む種々のモノマーとのコポリマー、または酢酸ビニル、塩化ビニル、フッ化ビニリデン、アクリレート、メタクリレートなどの他の有用なモノマーとのコポリマーが含まれる。任意の官能性ビニルモノマーは、エチレンまたはプロピレンと共重合して有用なオレフィンコポリマーを提供することができる。
【0066】
適当なポリエステルは、少なくとも60モルパーセント、好ましくは少なくとも75モルパーセント、およびより好ましくは少なくとも85モルパーセントのテレフタル酸(TA)またはC〜Cジアルキルテレフタレートを含む二価酸またはジエステル成分と、少なくとも60モルパーセント、好ましくは少なくとも75モルパーセント、およびより好ましくは少なくとも85モルパーセントのエチレングリコール(EG)を含むジオール成分との反応から製造される。二価酸成分がTAであること、またはジアルキルテレフタレート成分がジメチルテレフタレート(DMT)であること、およびジオール成分がEGであることも好ましい。すべての二価酸/ジアルキルテレフタレート成分のモルパーセントは合計100モルパーセントであり、すべてのジオール成分のモルパーセントは合計100モルパーセントである。
【0067】
あるいは、適当なポリエステルは、少なくとも60モルパーセント、好ましくは少なくとも75モルパーセント、およびより好ましくは少なくとも85モルパーセントの2,6−ナフタレンジカルボン酸(NDA)またはC〜Cジアルキルナフタレートを含む二価酸またはジエステル成分と、少なくとも60モルパーセント、好ましくは少なくとも75モルパーセント、およびより好ましくは少なくとも85モルパーセントのエチレングリコール(EG)を含むジオール成分との反応から製造される。
【0068】
ポリエステル成分が、EG以外の1種または複数のジオール成分により改質されるとき、上記ポリエステルの適当なジオール成分は、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、および鎖中に1個または複数の酸素原子を含むジオール、例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールまたはこれらの混合物等から選択することができる。一般に、これらのジオールは、2から18個、および好ましくは2から8個の炭素原子を含む。環状脂肪族ジオールは、それらのcisまたはtrans配置で、または両形態の混合物として使用することができる。
【0069】
ポリエステル成分がTA以外の1種または複数の酸成分により改質されている場合、線状ポリエステルの適当な酸成分は、イソフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、1,12−ドデカン二酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、t−スチルベンジカルボン酸、4,4’−ビ安息香酸のクラス、またはこれらの混合物またはそれらの無水物等価体等から選択することができる。ポリエチレンナフタレートの場合、2,6−ナフタレンジカルボン酸は上のリストのテレフタル酸の代わりに使用することができる。
【0070】
飲料容器産業用の典型的PET系ポリマーは、約97モルパーセントのPETおよび3モルパーセントのイソフタレートを有し、したがってそれはポリエチレンテレフタレート/イソフタレートコポリマーである。ポリマー調製において、ジカルボン酸のジメチル、ジエチルまたはジプロピルエステルなどそれらの官能性酸誘導体を使用することが好ましいことが多い。これらの酸の無水物または酸ハロゲン化物も、実用的な場合に利用することができる。これらの酸改質剤は一般に、テレフタル酸と比較して、結晶化速度を遅らせる。
【0071】
ポリエチレンテレフタレートの従来の製造は、当技術分野において周知であり、テレフタル酸(TA)(またはジメチルテレフタレート:DMT)をエチレングリコール(EG)と、およそ200から250℃の温度で反応させて、モノマーおよび水(DMTを使用したときは、モノマーおよびメタノール)を形成させることを含む。反応は可逆的なので、水(またはメタノール)は連続的に除去され、それにより反応をモノマーの生成に駆り立てる。モノマーは、主としてBHET(ビスヒドロキシエチレンテレフタレート)、若干のMHET(モノヒドロキシエチレンテレフタレート)、および他のオリゴマー生成物および少量の未反応原料を含む。それに続いて、BHETおよびMHETは、重縮合反応を経てポリマーを形成する。TAとEGとの反応中、触媒を存在させることは必要でない。DMTとEGとの反応中は、エステル交換触媒を使用することが必要とされる。適当なエステル交換触媒には、少し名を挙げると、コバルト(Co)、亜鉛(Zn)、マンガン(Mn)、およびマグネシウム(Mg)を含む化合物が含まれる。一般的に、重縮合反応中に好ましい触媒は、アンチモン塩または化合物の形態のアンチモンである。しばしば、ボトル規格PET樹脂は、製造中に不活性な環境雰囲気で加熱されて、樹脂中の重合をさらに進めるか、またはSSP樹脂として処理される。通常、ボトル規格PET樹脂は、約0.70から約0.85dL/gの固有粘度(IV)を有する。
【0072】
シクロデキストリン
本発明の溶液および熱可塑性材料は、シクロデキストリン、または1個の置換基を、好ましくは第一級炭素原子上に有するシクロデキストリンを含むことができるシクロデキストリン化合物を含む。そのようなシクロデキストリン材料は、捕捉およびバリア特性において、熱可塑性ポリエステル材料と相溶性であることが示されている。シクロデキストリン材料は、熱可塑性プラスチックに添加されて、溶融加工中に、予備成形品におよび最終飲料容器に、捕捉特性およびバリア特性を与えることができる。シクロデキストリン材料は、時間および温度の良好な製造条件で、相溶性で、焦げず、最終容器におけるポリマーの外見において、曇りの形成または構造特性もしくは透明性の低下を生じない。
【0073】
シクロデキストリン(CD)は、α(1→4)結合により連結した、少なくとも5個、好ましくは6個のグルコピラノース単位から構成される環状オリゴ糖である。12個までのグルコース残基を有するシクロデキストリンが知られているが、6、7および8残基を有する3種の最も普通の同族体(α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリンおよびγ−シクロデキストリン)が知られており、本発明において有用である。
【0074】
シクロデキストリンは、デンプンまたはデンプン様物質から、酵素による高度に選択的な合成により製造される。それらは、普通、ドーナツ形の環に整列した6,7または8個のグルコースモノマーからなり、それらは、それぞれα、β、およびγシクロデキストリンと表示される(図1を参照されたい)。グルコースモノマーの特異的カップリングは、シクロデキストリンに、特定の容積の中空の内部を有する剛直な円錐台の分子構造を与える。無極性である(すなわち、親水性の外部と比較して、広い範囲の炭化水素材料を引きつける)この内部空洞は、シクロデキストリンの重要な構造的特徴であり、分子(例えば、芳香族、アルコール、ハロゲン化物およびハロゲン化水素、カルボン酸およびそれらのエステル、その他)と錯体を形成する能力を提供する。錯体化される分子は、シクロデキストリンの内部空洞中に少なくとも部分的にはまり込み、封入錯体を生ずるというサイズ基準を満たさなければならない。CDとゲストとの間では二次的結合が起こるだけであるのに、それらの安定性は、シクロデキストリンおよびゲストの特性に依存して極めて高くなり得るということにおいて、これら錯体は異例である。金属シクロデキストリン集合体は、単一分子系中で、すべての基本的結合様式(非特異的ファンデルワールス結合、水素結合およびリガンド金属結合)を示す。
【0075】
【数1】

オリゴ糖環は、円錐台として円環体を形成し、円環体の狭い方の端に各グルコース残基の第一級ヒドロキシル基がある。グルコピラノースの第二級ヒドロキシル基は、広い方の端に位置する。円環体内部は、メチレン(−CH−)およびエーテル(−O−)基の存在により疎水性である。
【0076】
親シクロデキストリン分子および有用な誘導体は、次式(環炭素は、従来の番号づけを示す)により表すことができ、式中、空結合(vacant bonds)は、環状分子の残余を表す。
【0077】
【化2】

ここで、n=6、7または8のグルコース部分、およびRおよびRは、それぞれ第一級または第二級ヒドロキシル基または置換基(メトキシ、アセチルその他)である。上に示したシクロデキストリン分子は、反応に利用し得る−OH基を、6位(第一級基)に、ならびに3位および2位(第二級基)に有する。アルデヒド捕捉において使用するのに好ましいシクロデキストリン化合物は、βシクロデキストリンであるが、一方、置換されたシクロデキストリンは、バリア特性を強化するために使用することができる。好ましいシクロデキストリンは、オリゴマー中の1個または複数のRの第一級ヒドロキシルで置換されている。好ましいシクロデキストリンは、第1にβ−CD、次にα−CDであり、主として6位で置換されている。
【0078】
熱可塑性ポリマーと相溶性の、官能基を有する誘導体化されたシクロデキストリン材料を製造するために好ましい調製計画は、置換されるシクロデキストリン分子の第二級ヒドロキシルが最小である、第一級ヒドロキシルにおける反応を含む。修飾されたシクロデキストリンがリガンドとして作用する配位化合物または金属錯体では、第二級ヒドロキシル基が誘導体に使われていないことが必要である。ポリマーとの相溶性および工程における熱安定性を有するために、十分な数の第一級ヒドロキシルが修飾される必要がある。本発明者らは、一般的に、広い範囲の懸垂する置換基部分が、分子上で使用され得ることを見出した。これらの誘導体化されたシクロデキストリン分子は、アシル化シクロデキストリン、アルキル化シクロデキストリン;トシレート、メシレートおよび他の関連するスルホ誘導体などのシクロデキストリンエステル;ヒドロカルビル−アミノシクロデキストリン、アルキルホスホノおよびアルキルホスファトシクロデキストリン、イミダゾイル置換されたシクロデキストリン、ピリジン置換されたシクロデキストリン、ヒドロカルビル硫黄含有官能基シクロデキストリン、ケイ素含有官能基置換シクロデキストリン、カーボネートおよびカーボネート置換されたシクロデキストリン、カルボン酸およびその関連で置換されたシクロデキストリンその他を含むことができる。置換基部分は、誘導体化された物質に相溶性を与える領域を含まなければならない。
【0079】
相溶化官能基として使用され得るアシル基は、アセチル、プロピオニル、ブチリル、トリフルオロアセチル、ベンゾイル、アクリロイルおよび他の周知の基を含む。シクロデキストリン分子の第一級または第二級環ヒドロキシルのいずれかにおけるそのような基の形成は、周知の反応を包含する。アシル化反応は、適当な酸無水物、酸塩化物、および周知の合成プロトコルを使用して実施できる。過アシル化シクロデキストリンを作製することができる。さらに、そのような基で置換された利用可能なヒドロキシルのすべて未満を有するシクロデキストリンは、利用可能なヒドロキシルの残余の1つまたは複数を他の官能基で置換して作製することができる。
【0080】
シクロデキストリン材料は、アルキル化剤と反応してアルキル化シクロデキストリン、シクロデキストリンエーテルを生成することもできる。アルキル化する基は、利用可能なヒドロキシル基をアルキル化剤と徹底的に反応させる十分な反応条件を使用して、過アルキル化シクロデキストリンを生成させることができる。さらに、アルキル化剤に依存して、その反応条件で使用されるシクロデキストリン分子は、利用可能なヒドロキシルのすべて未満で置換されたシクロデキストリンを生成させることができる。アルキル化シクロデキストリンを形成させるのに有用なアルキル基の典型的な例には、メチル、プロピル、ベンジル、イソプロピル、第三級ブチル、アリル、トリチル、アルキルベンジルおよび他の普通のアルキル基が挙げられる。そのようなアルキル基は、ヒドロキシル基を、適当な条件下でハロゲン化アルキルと、またはアルキル化硫酸アルキル反応体と反応させるなど、従来の調製方法を使用して作製することができる。好ましいシクロデキストリンは、メチル、エチル、n−プロピル、t−ブチルなどの単純な低級アルキルエーテルであり、過アルキル化されておらず、約0.3から1.8の置換度を有する。
【0081】
トシル(4−メチルベンゼンスルホニル)、メシル(メタンスルホニル)または他の関連のアルキルまたはアリールスルホニル形成試薬は、熱可塑性樹脂で使用するために相溶化されたシクロデキストリン分子の製造に使用することができる。シクロデキストリン分子の第一級OH基は、第二級基よりも容易に反応する。しかしながら、シクロデキストリン分子は、有用な組成物を形成するために、実質的に任意の位置で置換することができる
上記のスルホニルを含む官能基は、シクロデキストリン分子中の任意のグルコース部分の第二級ヒドロキシル基または第一級ヒドロキシル基のいずれかを誘導体化するために使用することができる。第一級または第二級ヒドロキシルのいずれとも効果的に反応し得る塩化スルホニル反応体を使用して、反応を実施することができる。塩化スルホニルは、分子中の置換が必要な標的ヒドロキシル基の数に応じて、適当なモル比で使用される。対称的(単一のスルホニル部分で置換された化合物について)または非対称的(スルホニル誘導体を含む基の混合物で置換された第一級および第二級ヒドロキシル)のいずれも、既知の反応条件を使用して調製することができる。スルホニル基は、一般的には実験者により選択されたアリールまたはアルキル基と組み合わせることができる。最後に、環中の単一のグルコース部分が、1と3の間のスルホニル置換基を含むモノ置換されたシクロデキストリンを作製することができる。シクロデキストリン分子の残余は、未反応のままである。
【0082】
熱可塑性ポリマーを含む懸垂部分を有するシクロデキストリンのアミノおよび他のアジド誘導体は、本発明のシート、フィルムまたは容器で使用することができる。スルホニル誘導体化されたシクロデキストリン分子は、スルホニル基で置換されたシクロデキストリン分子から、アジド(N−1)イオンによるスルホネート基の求核置換により、アミノ誘導体を生成させるために使用することができる。アジド誘導体は、それに続いて、還元により、置換されたアミノ化合物に変換される。多数のこれらアジドまたはアミノシクロデキストリン誘導体が製造されてきた。そのような誘導体は、アミン基が対称的に置換されて(2個以上のアミノまたはアジド基がシクロデキストリン骨格に対称的に配置された誘導体)、または対称的に置換されたアミンまたはアジド誘導体化されたシクロデキストリン分子として、製造することができる。求核置換反応により窒素含有基を生ずるので、6位の炭素原子上の第一級ヒドロキシル基は、窒素含有基が最も導入されやすい部位である。本発明に有用であり得る窒素含有基の例には、アセチルアミノ基(−NHAc);メチルアミノ、エチルアミノ、ブチルアミノ、イソブチルアミノ、イソプロピルアミノ、ヘキシルアミノ、および他のアルキルアミノ置換基を含むアルキルアミノが挙げられる。アミノまたはアルキルアミノ置換基は、窒素原子と反応する他の化合物とさらに反応して、アミン基をさらに誘導体化することができる。他の可能な窒素含有置換基には、ジメチルアミノ、ジエチルアミノなどのジアルキルアミノ;ピペリジノ、ピペリジノ、アルキルまたはアリール置換第四級アンモニウム塩化物置換基が含まれる。シクロデキストリンのハロゲン誘導体は、相溶化誘導体で置換されたシクロデキストリン分子の製造のための供給原料として製造することができる。そのような化合物において、第一級または第二級ヒドロキシル基は、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨードなどのハロゲン基または他の置換基で置換される。最もハロゲン置換されやすい位置は、6位にある第一級ヒドロキシルである。
【0083】
ヒドロカルビル置換されたホスホノまたはヒドロカルビル置換されたホスファト基は、シクロデキストリンに相溶性誘導体を導入するために使用することができる。シクロデキストリン分子は、第一級ヒドロキシルで、アルキルホスファト、アリールホスファト基により置換することができる。2および3位の第二級ヒドロキシルは、アルキルホスファト基を使用して分岐され得る。
【0084】
シクロデキストリン分子は、懸垂するイミダゾール基、ヒスチジン、イミダゾール基、ピリジノおよび置換されたピリジノ基を含むヘテロシクロ核で置換することができる。
【0085】
シクロデキストリン誘導体は、硫黄含有官能基で修飾して、相溶化置換基をシクロデキストリンに導入することができる。上に挙げたスルホニルアシル化基を別にして、スルフヒドリル化学により製造された硫黄含有基は、シクロデキストリンを誘導体化するために使用することができる。そのような硫黄含有基には、メチルチオ(−SMe)、プロピルチオ(−SPr)、t−ブチルチオ(−S−C(CH)、ヒドロキシエチルチオ(−S−CHCHOH)、イミダゾリルメチルチオ、フェニルチオ、置換されたフェニルチオ、アミノアルキルチオその他が含まれる。上で説明したエーテルまたはチオエーテルの化学に基づいて、末端にヒドロキシル、アルデヒド、ケトンまたはカルボン酸官能性のある置換基を有するシクロデキストリンを調製することができる。そのような基には、ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、メチロキシエチルおよび対応するオキセム異性体、ホルミルメチルおよびそのオキセム異性体、カルビルメトキシ(−O−CHCOH)およびカルビルメトキシメチルエステル(−O−CHCO−CH)が含まれる。
【0086】
シリコーンを含む相溶化官能基を有するシクロデキストリン誘導体を調製することができる。シリコーン基は一般的に、単一の置換されたケイ素原子を有する基、または置換基を有する反復するシリコーン−酸素主鎖を指す。通常、シリコーン置換基中のケイ素原子の大部分は、ヒドロカルビル(アルキルまたはアリール)置換基を担持する。シリコーンで置換された材料は、熱的および酸化安定性および化学的不活性が、一般的に強化されている。さらに、シリコーン基は、耐候性を強化し、誘電強度を加え、表面張力を改善する。シリコーン基は、シリコーン部分に、単一のケイ素原子または2から12個のケイ素原子を有することができ、線状でも分岐していてもよく、多数の反復シリコーン−酸素基を有することができ、種々の官能基でさらに置換されていてもよいので、シリコーン基の分子構造は多様であり得る。この発明の目的にとって、トリメチルシリル、メチル−フェニル混合シリル基その他を含む置換基部分を含む単純なシリコーンが好ましい。本発明者らは、ある種のβCDおよびアシル化された誘導体およびヒドロキシアルキル誘導体が市販されていることを認識している。
【0087】
本発明の技術において利用されるシクロデキストリン化合物は、修飾されたまたは置換されたβ−またはα−シクロデキストリンを含むことが好ましい。好ましいシクロデキストリン材料は、シクロデキストリン環中のグルコース部分の実質的に6−OH上で置換されている。シクロデキストリン環中のグルコース部分の3および2位にある遊離ヒドロキシル基は、金属触媒錯体形成にとって重要である。シクロデキストリン材料の置換度(D.S.)は、約0.3から2.5または0.3から2の範囲であってよく、好ましくは、置換度は、約0.5から1.8の範囲であってよい。さらに置換度は、シクロデキストリンが溶融ポリマーと相溶性であるが、シクロデキストリンが触媒残留物と錯体を形成することに関与できないほど置換されていないことを確実にするのに、重要な役割を有する。本発明者らは、金属触媒残留物を錯体化することによりアルデヒドの形成を防止するのに有用な置換されたシクロデキストリン材料の量が、揮発性有機化合物に対するバリア構造において通常使用されるシクロデキストリンの量より少ないことをさらに見出した。アルデヒド抑制のための置換されたシクロデキストリンの有効量は、全体としてのポリマー組成物を基準にして約100ppmから1400ppmの範囲、好ましくは350ppmから900ppmの範囲である。本発明者らは、置換されたシクロデキストリン材料の作用機構は、1つまたは複数の第二級ヒドロキシル基が触媒残留物と配位錯体を形成し、シクロデキストリン当たり2つ以上の金属イオンが結合しているメタロシクロデキストリンを形成することであると信じる。予備成形およびボトル製造中の有機残留物の形成を防止するのに有用なシクロデキストリンの量は、バリア用途で使用される量より少ないが、減らした量でさえ、シクロデキストリン材料は、ある程度のバリア特性を提供することができる。この用途において開示された濃度により、再生アセトアルデヒド形成は、ポリエステルにおいて実質的に減少し、ある程度のバリア特性が得られる。これらの結果を達成するためには、実質的かつ効果的なごく少量のシクロデキストリンが、本発明の目的を達成するための触媒残留物錯体化のために利用可能でなければならない。相溶性シクロデキストリン化合物は、封入錯体または封入化合物を実質的に含まない溶融熱可塑性プラスチック中に導入される。
【0088】
ポリマーに結合したシクロデキストリン
シクロデキストリンをポリマー主鎖にグラフトして側鎖シクロデキストリン基を形成させることは当技術分野において既知である。その全体が参照により本明細書に前に組み込まれたWoodら、米国特許第7,166,671号は、シクロデキストリンが、例えば、ポリオレフィン主鎖に沿って存在する無水マレイン酸基と反応するグラフト反応を開示している。グラフト反応において有用なシクロデキストリンは、置換されていなくてもよく、またはO−メチルまたはO−アセチルなどの1つまたは複数の置換基を有していてもよい。グラフトは通常、当業者に知られている任意の熱加工技法を使用して実施される。例えば、西ドイツDuisburgのBrabender GmbH and Co.KGから入手できるPlastograph(登録商標)ミキサーが、ポリマーを溶融して、シクロデキストリンおよび炭素を混入するために使用できる。大抵の場合、押し出し機が、ポリマーおよびシクロデキストリンを炭素とブレンドして、グラフトされたシクロデキストリンを形成するために使用される。二軸スクリューまたは単一スクリュー押し出しを使用することができる。
【0089】
【数2】

添加剤組成物をブレンドするために使用される押し出し機は、例えば、ニュージャージー州PawcatuckのDavis−Standard Co.から入手できる単一スクリュー押し出し機などの単一スクリュー押し出し機であってもよい。あるいは、特注の単一スクリュー押し出し機および/または単一スクリュー押し出し機用の特注スクリュー(複数)を利用することもできる。そのような設備は、ウィスコンシン州MadisonのThe Madison Groupから入手できる。いくつかの工程において、共回転および逆回転二軸スクリュー押し出し機が、本発明の組成物を押し出すために使用できる。そのような設備は、例えば、ニュージャージー州RamseyのCoperion(Krupp Warner Pfleiderer)、ニュージャージー州SomervilleのAmerican Leistritz Extruder Corp、ケンタッキー州FlorenceのBerstorff Corp.、マサチューセッツ州WalthamのHaake Thermo Fisher Scientificおよびニュージャージー州S.HackensackのCW Brabender Instrumentsから入手できる。
【0090】
グラフトの代替法は、シクロデキストリンを重合反応におけるモノマーとして特にシクロデキストリン上のヒドロキシル基を重合反応における反応性部分として使用することにより、ポリマー主鎖中にシクロデキストリンを一体化して組み込むことである。ヒドロキシル基を使用して、ポリエステルおよびポリウレタンなどの付加ポリマーは容易に作製される。例えば、参照により本明細書に前に組み込まれた米国特許公開2004/0110901号、特開昭59−227906、特開平05−051402、国際特許出願公開93/05084号、米国特許第4,547,572号、米国特許第4,274,985号、および欧州特許第0454910A1号は、シクロデキストリンをポリマー中に組み込む種々の方法を記載している。それに加えて、やはり参照により前に組み込まれた米国特許第6,613,703号は、電子ビームによりシクロデキストリンをポリマーに結合する方法を開示している。
【0091】
活性炭
活性炭(CAS No.7440−44−0)は、気体および液体の精製、脱色および除臭のために、広く多様な用途において普通に使用される多孔質合成固体材料である。活性炭は、一般的に粒子状形態で使用され、粉末および顆粒状形態で入手できる。それらは、種々の化学物質の吸着に結果として有利な大表面積を提供する開放多孔質構造により特徴づけられる。活性炭の化合物を捕捉する能力は、粒子の内部表面積に直接関係する。
【0092】
市販の活性炭(通常チャーコールと呼ばれる)において、内部表面積は、Brunauer、EmmettおよびTeller(BET)の窒素吸着等温線の方法(S. Brunauer、P. H. Emmett and E. Teller、J. Am. Chem. Soc.、1938年、60巻、309頁)を使用することにより測定され、通常500〜1500m/gである。活性炭の特定の用途が考慮されるとき、合計表面積および細孔容積/構造は極めて重要なパラメータである。細孔容積は、吸収され得る分子サイズを限定し、一方、合計表面積は、吸収され得る物質の合計量を決定する。
【0093】
活性炭中の細孔サイズは、2nm未満であるミクロポア、2nmと50nmとの間であるメソポア、および50nmを超えるマクロポアとして分類される。マクロポアの役割は、主として、炭素粒子の内部への通路の役割であり、これらのポアは、粒子の全表面積に大きくは寄与せず、または分子を効果的に閉じ込めることはない。ミクロポアは、化学物質の吸着が起こる主な場所である。
【0094】
炭素の原料、ならびに炭素を活性化する手段が、細孔サイズ分布を決定する。理論では、炭素を含む任意の物質が出発原料として使用され得る。材料は化学的または400℃〜1000℃の間の温度におけるガス活性化のいずれかにより活性化される。木材、鋸屑、および泥炭は、化学的活性化により最もよく処理される。ガス活性化は、初期炭化(すなわち焼成)ステップを最もよく使用する。したがって、木材チャーコール、ヤシ殻チャーコール、瀝青炭、および褐炭または泥炭からのコークスが、ガス活性化のために使用される典型的材料である。ヤシ殻チャーコールのガス活性化により高率のミクロポアが生じ、軟質木材チャーコールのガス活性化により、より高率のマクロポアが生ずる。化学的活性化は、ミクロポアおよびメソポア両方を高率で提供するために一般的に最も有用と考えられている。ガスおよび化学的活性化の組合せも使用される。
【0095】
化学的活性化は、最も典型的には亜鉛塩化物およびリン酸により達成されるが、炭化されていない(焼成されていない)泥炭または鋸屑を通常含む出発原料に対する、これらの化学物質の脱水作用に依存する。化学物質を炭素質の出発原料に接触させた後、400℃〜1000℃の温度で細孔が開口する。加熱後、化学物質は抽出により除去され、出発原料と同じ巨視的形態を有する最終生成物が生ずる。
【0096】
ガス活性化は、最も典型的には、酸素を含むガスを使用する。したがって、スチームまたは二酸化炭素が出発原料と800℃1000℃の温度で接触させられて、部分分解した粒子が生じ、材料が分解してなくなって細孔が形成される。
【0097】
活性炭は、有機化合物の溶液精製;家庭用および工業用給水、廃水、植物および動物性油脂、アルコール飲料、化学物質、および医薬品から味と臭気との除去;廃水処理、ガスの精製;液相回収;分離工程;ならびに触媒の支持体としてを含むいくつかの重要な用途を有する。塩素化された溶媒、非塩素化溶媒、ガソリン、殺虫剤およびトリハロメタンなど多くの有機化合物は、活性炭により吸着することができる。それは、塩素ガスの除去にも効果的であり、および幾種類かの重金属の除去にも中程度に効果的である。
【0098】
ある用途において特に好ましいのは、酸洗浄炭素である。有害な有機化合物の除去は、7未満のpHでより効果的である。DeSilva, F. J.、「The Issue of pH Adjustment in Acid−Washed Carbons」、Water Conditioning and Purification、2001年5月、40〜44頁を参照されたい。最初にpHの7を超える上昇を惹起する炭素は、水中で数回すすいでpHが下がるまでは、有機物の除去に効果的であり得ない。酸洗浄されていない任意の活性炭は通常、7を超えるpHを有する水中の溶出物を最初に生ずる。実際の初期pHは、出発原料中の灰分含有率を含むいくつかの要因に依存する。初期pHは、炭素が水中に浸漬されたときに、10.5と高くなり得る。炭素を酸中で洗浄すると、酸性化剤を炭素からすすいだ後の初期pHは低くなり、有機VOCおよび他の有害な化合物の取込みが改善される。
【0099】
シクロデキストリンの精製および活性炭粒子の取込み
本発明者らは、上記のシクロデキストリン化合物を精製し、シクロデキストリン不純物は、シクロデキストリン水溶液を活性チャーコールすなわち活性炭吸収剤と接触させるステップを含む精製技法を使用して、効果的に除去され得ることを見出した。本発明者らは、これらの技法の使用が、シクロデキストリン水溶液中の不純物濃度を、ポリエステル材料中の着色の原因にならない、望ましくない有機物質を形成しないまたはアンチモンを減少させないレベルに減少させることを見出した。
【0100】
シクロデキストリンは、ナノ濾過技法を使用して精製することもできる。ナノ濾過または逆浸透処理において、水性シクロデキストリン材料は、適当な精製設備中に送られて、シクロデキストリン材料中の不純物の大部分がフィルタまたは逆浸透膜を通過するが、シクロデキストリン材料は非浸透性水溶液中に保持されることを確実にするために、適当な圧力で適当な期間維持される。これに関して、フィルタまたは膜1平方メートル当たり約700から1,200リットルの溶液を、1時間当たり溶液約125から2,000リットルの速度で、設備を通過させる。フィルタまたは膜を通過する溶出液は、流入流の約60から98%を含む。通常、ナノ濾過または逆浸透設備は、約125から600psiの内圧で運転される。
【0101】
Dowex SD−2(第三級アミンで官能化されたマクロ多孔質スチレンジビニルベンゼンコポリマー)のような脱色樹脂が、シクロデキストリン水溶液からPET黄化物質を除去するために使用される。Dowex Monosphere 77(弱塩基性アニオン樹脂)、Dowex MAC−3(弱カチオン樹脂)、およびDowex 88(強酸カチオン)のような他の樹脂も、Dowex SD−2との組合せ(インフロント(infront))で使用できる。これら樹脂は、樹脂ft当たり毎分2から25リットルの流量で操業することができる。
【0102】
精製されたシクロデキストリンは、単に溶媒中でシクロデキストリンに活性炭を添加して、炭素が不純物を吸着することができる適当な時間の後に、炭素を濾過することによっても精製することができる。本発明者らは、シクロデキストリン濃度のある範囲では、精製工程からの大部分の活性炭が溶液から濾過で除去された後、シクロデキストリン溶液中に、ある量の活性炭吸着剤が残ることをさらに見出した。そのような精製工程において、シクロデキストリン水溶液は、水溶液中でシクロデキストリン化合物の約1.5から約50wtパーセントの濃度で調製される。そのような水溶液は、次に、吸収剤1キログラム当たり溶液約10から350リットルで炭素吸収剤と接触させる。吸収剤と接触している溶液の滞留時間は、実質的に不純物を除去するように調節することができる。しかしながら、溶液は通常、約0.5から24時間の間、吸収剤と接触するように保たれる。
【0103】
接触期間の後、溶液は、約0.1から約20μmの細孔サイズを有するフィルタを使用して濾過される。粒子サイズが10ミクロン以下のオーダーの粒子を除去するためにミクロ濾過が使用される。この工程の濾過ステップの目的は、約0.1から1.0ミクロン、好ましくは約0.2から5ミクロンのサイズを有する粒状物および/または不溶固体の液体からの除去である。適当な膜タイプの例には、セラミック、多孔質炭素、およびポリマーのものが挙げられる。適当な膜および膜濾過装置は、TAMI、Pall、WACO、Filtros Techsep、Ceramem、Koch and GE Osmonicsから入手できる。濾過は、好ましくは、約50〜80℃の温度で行われる。
【0104】
それに加えて、上で概略説明した任意の精製ステップの後、ある量の炭素を精製されたシクロデキストリンに単に添加することができる。この方法により最高レベルの錯体を形成していない炭素細孔ができて、その結果、本発明の最終用途における不純物捕捉のために最も有効な炭素細孔空間が生ずる。
【0105】
次の方法は、正常でない色を生じさせる可能性を基準にして、熱安定性について、乾燥された添加剤組成物を評価する方法である。この方法は、シクロデキストリンで被覆されたPETチップを射出成形する加工を模倣する。活性炭粒子を0.2wt%含む35wt%シクロデキストリン溶液約1.5mL(約1.7g)を、ヘッドスペースが20mLのバイアル(または同等品)中に入れる。
【0106】
実験室用ホットプレート(または同等品)を使用して、温和な温度でバイアルを加熱することにより、水を溶液から蒸発させる。加熱中、バイアルを周期的に攪拌して、凝縮物を除去するために、バイアルの内部を糸くずのないワイプで拭き取る。残留物が粘稠になって泡立ち始めたとき、バイアルを加熱からはずして、バイアルの内壁を均一に覆うように穏やかに回転させる。水をすべて除去することにより、残留物を完全に固化するように、被覆されたバイアルを60℃のオーブン中に約10分間置く。蒸発が完了したときに、透明な残留物は、泡だって僅かに曇っていてもよい。バイアルは、乾燥したら取り出して、280℃のオーブン中に正確に2分間置く。バイアルをオーブン中に入れたときに、オーブン温度が低下したならば、オーブン温度が270℃を超えたときに初めて、計時を始める。バイアルを取り出して、室温まで冷えるにまかせる。熱処理された残留物を5mLの脱イオン水中に溶解し、液体を注射器に移して、0.22μmの注射器フィルタを通して濾過する。濾液は、可視波長分光光度計により570nmで分析する。許容される残留物は、無色ないし僅かに黄味を帯びるだけにとどまるべきである。
【0107】
上の精製、溶解および濾過技法は、置換されていないかまたは置換されたα−、β−、またはγ−シクロデキストリンに適用される。シクロデキストリン精製後、シクロデキストリンは、ポリマーにグラフトされて、本発明の添加剤組成物の一実施形態を形成することができる。炭素は通常、グラフト反応の後または同時に、添加される。
【0108】
添加剤組成物およびポリマーのマスターバッチ
チップまたはペレットまたは類似の構造を、活性炭を加えた、有効量のシクロデキストリン、置換されたシクロデキストリン、またはポリマーと反応したシクロデキストリンを含む液体被覆組成物で被覆することにより、シクロデキストリン化合物を、チップまたはペレットに組み込むことができる。そのような被覆組成物は、通常、液体媒質を使用して形成される。液体媒質は、水性媒質または有機溶媒媒質を含むことができる。水性媒質は、典型的には、水を添加剤または他の成分と組み合わせて、被覆可能な水性分散液または水溶液を形成することにより形成される。溶媒系分散液は、有機溶媒を主成分としており、既知の対応する溶媒による被覆技術を使用して作製することができる。本発明の液体被覆組成物は、流し塗り、噴霧被覆、流動床被覆、静電被覆、またはペレットに、マスターバッチが未処理ポリマーペレットとブレンドされたときに、最終物品において捕捉剤もしくはバリア材料として作用する十分なシクロデキストリンおよび炭素をつけることができる任意の他の被覆法を含む、任意の普通の被覆技術を使用して、熱可塑性ペレット(「チップ」または「フレーク」とも呼ばれる)と接触させることができる。最終的被覆の量および厚さの注意深い制御により、材料が浪費されず、捕捉剤およびバリア特性が最適化されて、熱可塑性ボトルにおける透明性および色が維持され、ポリエステルの物理的性質が最適化される。被覆はペレットに普通に適用されて、溶液または分散の液体担体部分は、典型的には、加熱により除去されて、ペレット上に乾燥被覆が残る。乾燥したときに、溶液または液体媒質は、ペレット上に実質的に残されない。普通には、被覆されたペレットは、熱加工前に痕跡量の残留溶媒を除去するために、乾燥剤乾燥器中で乾燥される。通常、ペレットは、溶媒が50ppm以下になるまで乾燥される。
【0109】
あるいは、本発明の組成物のマスターバッチは、熱可塑性ポリマーをシクロデキストリン、置換されたシクロデキストリン、またはポリマーが結合したシクロデキストリンおよび炭素粒子と押し出しブレンドすることにより、形成することができる。この方法は、通常、粉末形態の添加剤ブレンドを使用する。粉末は、通常、シクロデキストリンまたは置換されたシクロデキストリンおよび炭素の混合物であるが、それは、上記の添加剤溶液の濾過または遠心分離後に、乾燥することができる。粉末は、溶融状態にある熱可塑性樹脂と接触するように、計量して押し出し機に入れる。押し出しは、単なるブレンド工程であってよく、またはシクロデキストリンもしくは置換されたシクロデキストリンのグラフトをポリマー主鎖に導入する手段であってもよい。そのようなグラフト反応は、全体が参照により前に組み込まれた米国特許第7,166,671号に記載されている。
【0110】
押し出しブレンドした後、マスターバッチ組成物は、貯蔵に便利なようにペレット化される。ペレット化は、通常、マスターバッチをストランドの形態で押し出し、ストランドを温度制御されている水浴を通して冷却し、ストランドをストランドカッターに通してペレットを形成し、ペレットの水を乾燥してから貯蔵することを包含する。
【0111】
添加剤組成物を含む物品
本発明の物品は、熱可塑性材料をブレンドしてそれらを最終形態に成形するために、当技術分野において普通に使用される任意の技法により作製することができる。本発明の物品は、熱可塑性ポリマーを、シクロデキストリン、置換されたシクロデキストリン、またはポリマーが結合したシクロデキストリンおよび炭素粒子と押し出しブレンドし、それに続く熱成形工程により形成することができることが最も好都合である。
【0112】
押し出しブレンドは、通常、粉末の形態における添加剤ブレンドを使用する。粉末は、通常、シクロデキストリンまたは置換されたシクロデキストリンと炭素との混合物であるが、上記の添加剤溶液の濾過または遠心分離後に粉末を乾燥することもできる。粉末は、溶融状態にある熱可塑性樹脂と接触するように、計量して押し出し機に入れる。押し出しは、単なるブレンド工程であってもよく、またはシクロデキストリンもしくは置換されたシクロデキストリンのグラフトをポリマー主鎖に導入する手段であってもよい。そのようなグラフト反応は、全体が参照により前に組み込まれた米国特許第7,166,671号に記載されている。
【0113】
押し出しブレンドは、マスターバッチペレットを未処理熱可塑性ペレットとブレンドするために使用することもできる。マスターバッチペレットは、上記のように、表面被覆されていても、押し出しブレンドされていてもよい。これら2つのタイプのペレットは、計量されて押し出し機に入れられ、最終物品中のシクロデキストリン基および炭素粒子の最終濃度を所望のようにする。
【0114】
押し出しブレンド後、最終物品は、熱可塑性樹脂、シクロデキストリン、および炭素粒子の溶融ブレンドから成形される。普通に利用される最終物品を成形する技法は、押し出し、共押し出し、異形押し出し、射出成形、ブロー成形、射出ブロー成形、静電紡糸;スパンボンド法、溶融ブロー成形、一軸または二軸配向、またはそれらの組合せを含む。それに加えて、物品の1つまたは複数の構成要素がシクロデキストリンおよび活性炭を含むある種の物品を提供するために、特別の技法を利用することができる。例えば、複合繊維は、1つの成分として、シクロデキストリンがグラフトされたポリオレフィンおよび炭素粒子を、ならびに第2成分としてポリエステルなどの第2の樹脂を使用して作製することができる。複合繊維およびそれらを作製する方法は、その全体が本明細書に組み込まれている、Kruegerら、米国特許第4,795,668号に開示されている。
【0115】
本発明の最終物品を作製するために使用される、特別の技法の別の例においては、ポリエステルボトルを製造するために、射出ブロー成形工程が使用される。通常、2つの製造技法が使用される。1つの方法においては、およそ使用時のサイズでボトルのネックおよびスクリューキャップ部分を有するが、最終ボトルの形状より実質的に小さい閉じたチューブ状形態をした予備成形品の本体を有する予備成形品の形状で、予備成形品が、射出成形技法により作製される。単一成分または多層予備成形品を使用することもできる。次に、予備成形品は、予備成形品が膨らまされて適当な形状にブロー成形され得るように十分加熱されているブロー成形機中に挿入される。別の方法では、鋼芯のロッド上で樹脂を射出ブロー成形することができる。ボトルのネックは栓(キャップ)を受ける適当な形状で形成され、樹脂は、ブロー成形ステップのために温度条件を調節されたロッドの周りに供給される。樹脂のついたロッドは鋳型中に割り出しされ、樹脂は鋳型壁に対してロッドから吹き離される。樹脂は、鋳型と接触している間に冷えて、透明なボトルを形成する。完成したボトルは、取り出されて、ロッドは射出成形の場所で再び作動する。この工程は単一の円筒上ボトルにとって有利である。
【0116】
最も普通の機械は、樹脂を射出し、樹脂を適当な形状にブロー成形し、形成された容器をロッドから外して、工程の繰り返しに先だって芯ロッドを再調整することができる、4つの場所のある装置を含む。そのような容器は通常、金属スクリューキャップに合わせてネジを切られたネックを含む密閉備品をつけて、製造される。ボトル底部は、典型的には、ボトルを安定な直立した姿勢で置けるように、4つまたは5つの丸い突出部のデザインなど丸い突出部のデザインを有する。製造設備は、ブロー成形場所を追加し、および処理能力を増大するように、絶えず改善されてきた。
【0117】
どの加熱成形手順で使用される原料も、チップ形態のまたはペレット化された熱可塑性ポリエステルである。熱可塑性ポリエステルは、溶融物の形態で作製されて、塊状ポリマーに変換される。溶融物は、使用可能なペレットまたは他の小径チップ、フレークまたは粒子状に容易に変形することができる。それから、ペレット、チップ、フレークまたは粒子状ポリエステルは、誘導体化されたシクロデキストリン材料と均質になるまでブレンドし、水分を除去するために乾燥して、次に修飾または誘導体化されたシクロデキストリンおよびポリエステル材料の均質な分散液または溶液を得る条件で、溶融押し出しすることができる。得られるポリエステルペレットは、通常、実質的に、透明、均質でかつ従来の寸法のものである。ペレットは、好ましくは、約0.01から約0.14wt%のシクロデキストリン化合物、より好ましくは約0.035から約0.09wt%のシクロデキストリン化合物を含み、次に、修飾シクロデキストリン材料を含むポリエステルペレットは、射出成形技法を用いて、従来の予備成形品またはパリソン中に混入することができる。これら技法の生成物は、同様な比率の材料を含む。
【0118】
予備成形品またはパリソンの製造および容器の最終製造中には、注意を払わなければならない。予備成形品の製造中およびその後の容器の製造中には、適切な捕捉を得るためおよびシクロデキストリン材料をポリマーマトリックス中に徹底的に分散するために、溶融ポリマーを設定温度に十分な時間維持することに関する十分な熱履歴が得られなければならない。しかしながら、そのステップの時間および温度は、シクロデキストリン材料が熱分解して(すなわち、シクロデキストリンの開環)、ポリマー黄化を伴う捕捉能力およびバリア特性の喪失を生じ得るほど長くするべきではない。ポリマーの曇りは、融点が予備成形品再加熱温度より低いシクロデキストリン誘導体が選択されない限り、延伸ブロー成形中に生じ得る。融点が予備成形品再加熱温度を超えるシクロデキストリン類は、二軸配向ボトル壁中に微細な空隙を生成し、ポリマーに曇った外見を与える。したがって、関与する設備に応じて、熱可塑性ポリエステルは、溶融形態で約260℃を超える温度、好ましくは約270℃から290℃に約90秒を超える、好ましくは約120±30秒の合計滞留時間の間維持されて、射出成形中の適切な金属残留物錯体化を確実にしながら、シクロデキストリン材料がアセトアルデヒド発生を防止することを確実にする。合計滞留時間は射出成形機のサイクル時間から決定される。
【0119】
図2に戻って、全体を20で示される容器は、本体22、基部24およびキャップ部分26を含む。容器の全体的形状は、熱可塑性ブロー成形作業で形成される。基部24は、ボトル製造中に形成される自立性基部である。そのようなボトルは、パリソン形成中に形成された第2の熱可塑性材料を有するパリソンから調製された第2層17を含み得るかまたは液体被覆材料から誘導された第2層17を有し得るかのいずれかである。液体被覆材料は、パリソン被覆またはボトル被覆のいずれであってもよい。
【0120】
本発明の他の好ましい実施形態は、1種または複数のフィルム、シート、または不織布層が内在し、本発明の組成物を有利に組み込むことができる吸収性物品である。熱可塑性ポリオレフィンは、吸収性物品の成分として使用されることが知られている。それらが利用される場合、本発明で開示のシクロデキストリンおよび炭素を、望ましくない臭気原因化学物質を捕捉するために組み込むことができる。有効量とは、例えば、訓練された臭気感知試験被験者の少なくとも10%が、吸収性物品または吸収性物品の構成部品から発散する臭気における減少に気づくであろう、または、シクロデキストリンおよび炭素の組成物を含まない物品と比較したときに、訓練された感知試験被験者の少なくとも30%、もしくは少なくとも50%、もしくは少なくとも70%さえ気づくであろう、ということを意味する。
【0121】
いくつかの実施形態において、布様のまたは裏打で強化されたシート層は一般に、例えば、当業者に既知の方法で製造されたポリプロピレンのスパンボンド不織布で作製することができる。スパンボンド工程で使用される通常のポリプロピレンポリマーの部分を、有効量の開示されたポリプロピレングラフトシクロデキストリンおよび炭素で置き換えることにより、吸収性物品から発散する臭気の効果的な減少が達成される。あるいは、ポリプロピレンの代わりに、不織布は、エチレンとα−オクテン、メチルアクリレート、またはエチルアクリレートとのコポリマーを含むことができる。不織布は、グラフトされたシクロデキストリン、置換されたシクロデキストリン、または置換されていないシクロデキストリンを活性炭と一緒に組み込むことができる。この目的のために使用される熱可塑性ポリオレフィンを含む任意の繊維、フィラメント、または布帛は、本開示のシクロデキストリンおよび活性炭をその中に組み込んでいてよい。
【0122】
例えば、図3は、スパンボンドまたは多孔質表面フィルム31およびスパンボンドまたは多孔質底面フィルム33およびメルトブローまたは吸収性芯32を含む食品吸収性パッド30を示す。そのような吸収性物品は、密封されたパッケージ内の料理されていない肉の下にパッドを置くことにより、食肉包装産業で使用することができる。フィルム31、フィルム33または芯32は、悪臭のある化合物の捕捉を、吸収性物品により向上させるために、本発明の組成物、例えば、置換されたシクロデキストリンおよび活性炭のブレンドを含むことができる。
【0123】
本発明の別の有用な実施形態は、燃料タンクであり、その中に、本発明のシクロデキストリンおよび炭素組成物を組み込むことができる。5層が共押し出しされた燃料タンクは、北米においては事実上産業標準である。共押し出しされたタンクは、厳格な蒸発性燃料基準に適合するように設計されて、ポリイミド(ナイロン)またはエチレン−ビニルアルコール(EVOH)コポリマーの結合層およびバリア層により接合されたHDPEの内層で構成される。結合層は、HDPEのマレイン酸との共重合またはグラフト重合により形成される接着性樹脂であり、ポリエチレン鎖のポリマーに接着する官能基を有する。追加の結合層は、「粉砕再生材料」層およびHDPEの外層により接合することができる。「粉砕再生材料」層の使用は、6層タンク壁の追加の層を加える。本発明の一実施形態において、本開示のポリマーおよび物品は、例えば、ガソリン蒸気の透過を減少させるために、燃料タンクの内側または場合により外側のHDPE層組成物としての、シクロデキストリンをグラフトされて官能化されたHDPE樹脂に、活性炭を添加することにより、市販の熱可塑性燃料タンクのバリア特性を、実質的に向上させるために使用することができる。
【0124】
したがって、実施形態において、本開示は、下記の順で層を有する剛直な構造を含む、有機液体および蒸気不透過性容器を提供する:
HDPE層などの外側のポリマー層、
ナイロンまたはEVOHなどのバリア樹脂層、
接着性樹脂層、および
ポリオレフィンと中央の空洞内に化合物を実質的に含まないシクロデキストリンを含む修飾ポリオレフィンとのブレンドおよび活性炭を含む内側のポリマー層、例えば、活性炭およびシクロデキストリンをグラフトされて官能化されたポリマー樹脂との混合物であるHDPE層。
【0125】
図4は、産業で普通に使用される多層化された燃料タンク構造40を示す。多層化された構造の一実施形態の模式図40Aは、外側のHDPE層41、接着性樹脂層42、バリア樹脂層43、別の接着性層42、および内側のHDPE層44を示す。多層化された構造の第2の実施形態40Bは、外側のHDPE層41、接着性樹脂層42、バリア樹脂層43、内側のHDPE層44を示す。バリア樹脂層は、最も一般には、エチレン−ビニルアルコールコポリマーまたはナイロンである。任意のこれらの層に、本発明のシクロデキストリンおよび炭素の組成物を組み込むことができる。例えば、HDPE層の一方または両方が、シクロデキストリンをグラフトされて炭素を組み込んでいてもよい。あるいは、バリアまたは接着性層は、シクロデキストリン、例えば置換されたシクロデキストリン、および炭素粒子を組み込むことができる。本発明の組成物の封入は、タンクの裂け目から燃料が蒸発して引火性災害を起こすことを防止するために有利である。
【0126】
本発明者らは、シクロデキストリンと活性炭との組合せが本発明の目的を達成するために重要であることも見出した。上で論じたように、シクロデキストリン材料は、水溶液の形態で、ペレットまたはチップに適用される。そのような溶液は、シクロデキストリン材料を、水性媒質中に溶解または懸濁させることにより作製される。水溶液は、痕跡の不純物も除去されたシクロデキストリン材料から調製される。これらの不純物は、線状デンプン、糖および多糖前駆体物質を生ずる、シクロデキストリン材料の酵素による製造から、またはシクロデキストリン材料と誘導体を形成するために使用された反応体との間の合成反応から生じ得る。置換されたシクロデキストリン材料中に不純物として存在する、射出成形PET中の正常でない黄色の原因となる物質には、鉄、塩化ナトリウム、酢酸、酢酸鉄、酢酸ナトリウム、フルフラール、線状デンプンおよび糖類、脱水された線状デンプン、レボグルコサン、レボグルコセノンおよびタンパク質が含まれる。
【0127】
前述の議論は、本出願の種々の実施形態ならびに本発明の材料のアセトアルデヒド減少およびバリアおよび錯体化特性を例示する。下記の実施例およびデータは、本発明をさらに例証し、最良の方式を含む。
【実施例】
【0128】
(実施例1)
35wt%メチルβシクロデキストリン(置換度1.0、ミシガン州AdrianのWacker−Chemieにより製造された)溶液を脱イオン水中で調製した。溶液の調製に先だって、乳鉢と乳棒で前以て磨砕された0.10wt%のヤシ殻チャーコールを乾燥(100℃で16時間)シクロデキストリン中にブレンドした。活性炭を含む35wt%メチルβシクロデキストリン溶液は、750rpmで30分間遠心分離した。遠心分離された溶液の上方の一定分量を、スライドガラスに加えて,次にカバーガラスで覆った。次に、4メガピクセル接眼カメラを装備した、40×対物レンズを付けた透過型光学顕微鏡(Olympus BH2、ニューヨーク州MelvilleのOlympus America Inc.から入手できる)を使用して、溶液のグレースケール(8ビット)デジタルイメージを撮った。試料の写真を6枚撮った。寸法較正のために、ステージマイクロメーターの参照写真を撮った。像をOptimas画像解析ソフトウェア(YのX Companyから入手できる)により解析した。可変閾値を使用し、バイナリーフィルオペレーション(binary fill operation)を実施して、各像からデータを抽出した。抽出した情報は、面積等価直径(AED)であった。結果は、統計パッケージRを使用してデータを解析することにより得られた。
【0129】
図5は、750rpmで30分間遠心分離した35wt%メチルβシクロデキストリン溶液中の炭素粒子の分布について、AEDをミクロンでおよび粒子の真円度をミクロンで例示する。面積等価直径および粒子真円度は、粒子の像の面積および外周から計算した。粒子真円度は、取り込んだ粒子像に相当する面積の円の外周の2乗を、取り込んだ粒子像の面積の4π倍で割ることにより得られた値である。粒子真円度は、取り込んだ粒子像が完全な円であるときに1であり、取り込んだ粒子像が、長円形であるかまたは凸凹があるときには1未満である。例えば、正六角形の粒子の真円度は0.952であり、正五角形は0.930であり、正四角形の真円度は0.886であり、および正三角形は0.777である。
【0130】
(実施例2)
オハイオ州CincinnatiのCognis Corporationにより製造されたEmery 3004合成炭化水素油に、予め乳鉢および乳棒で磨砕した0.20wt%のヤシ殻チャーコールを加えて煎じた。活性炭の分散した油は、750rpmで30分間遠心分離した。遠心分離された油の上方の一定分量をスライドガラスに加えて、次にカバーガラスで覆った。次に、4メガピクセル接眼カメラおよび40×対物レンズを装備した透過型光学顕微鏡(Olympus BH2)を使用して、油のグレースケール(8ビット)デジタルイメージを撮った。試料について2枚の写真を撮った。寸法較正のために、ステージマイクロメーターの参照写真を撮った。像をOptimas画像解析ソフトウェアにより解析した。可変閾値を使用し、バイナリーフィルオペレーションを実施して、各像からデータを抽出した。抽出した情報は、面積等価直径(AED)であった。結果は、統計パッケージRを使用してデータを解析することにより得られた。
【0131】
図6は、750rpmで30分間遠心分離したEmery 3004油中の炭素粒子の分布を示す図である。面積等価直径および粒子真円度は、粒子の像の面積および外周から計算する。
【0132】
(実施例3)
乾燥したβ−シクロデキストリンは、酢酸、ギ酸、フルフラール、線状デンプンおよび糖類、脱水線状デンプン、レボグルコサン、レボグルコセノンおよびタンパク質を含む不純物から生ずる揮発性熱分解生成物を発生させる可能性を基準にした熱安定性について分析した。この方法は、β−シクロデキストリンが無水マレイン酸で官能化されたポリオレフィンにグラフトされる反応性押し出しの加工、およびそれに続く、物品を成形する、材料の任意の変換を模倣していている。β−シクロデキストリン(ミシガン州AdrianのWacker−Chemie製造)は、乾燥(100℃で16時間)シクロデキストリンと、乳鉢中で予め磨砕した、0.01、0.10および1.0wt%のヤシ殻チャーコールとを、ドライブレンディングすることにより調製した。β−シクロデキストリン0.5グラムを、テフロン(登録商標)面セプタム式スクリューキャップ付の、ヘッドスペースが40mLのバイアル(IChem(登録商標)Corp.から入手できる)に加えた。スクリューキャップを外したバイアルを、オーブン中290℃で正確に2分間加熱した。バイアルをオーブンから取り出して、室温で40秒間放冷してから、テフロン(登録商標)面セプタムスクリューキャップを被せた。密封したバイアル内部のヘッドスペース中の、β−シクロデキストリン不純物から生じた熱分解生成物を、ガスクロマトグラフィにより測定した。
【0133】
揮発性熱分解生成物のヘッドスペース濃度を測定するために、フレームイオン化検出(FID)で作動する高分解ガスクロマトグラフィ(HRGC)を使用した。ヘッドスペース中の揮発性化合物を、試験バイアルから固相微量抽出(SPME)により定量的に捕集して、HRGC/FIDにより分析した。40mLバイアルを、40℃に15分間保ってから、ヘッドスペースの試料を採取した。85μmのCarboxen/PDMS StableFlex(登録商標)SPME繊維(ペンシルバニア州BellefonteのSupleco,Inc.)を10分間使用して、ヘッドスペースの試料を採取し、SPME繊維を表1のGC法により分析した。
【0134】
【表1】

表2は、4つのβ−シクロデキストリン試料から得られたガスクロマトグラフィの結果を示す。活性チャーコールを含むすべての試料は、分解揮発性物質の実質的減少を示した。
【0135】
【表2】

(実施例4)
メチルβ−シクロデキストリンを、酢酸、ギ酸、フルフラール、線状デンプンおよび糖類、脱水線状デンプン、レボグルコサン、レボグルコセノンおよびタンパク質を含む不純物から生ずる揮発性熱分解生成物を発生する可能性に基づいて、熱安定性について分析した。この方法は、シクロデキストリンで被覆されたPETチップを射出成形する加工を模倣する。35wt%メチルβ−シクロデキストリン(置換度1.0、ミシガン州AdrianのWacker−Chemie製造)溶液は、β−シクロデキストリンを脱イオン水に加えることにより調製した。溶液の調製に先だって、乳鉢および乳棒で予め磨砕した0.01、0.10および1.0wt%のヤシ殻チャーコールを、乾燥(100℃で16時間)シクロデキストリン中にブレンドした。3つの35wt%メチルβシクロデキストリンと活性チャーコールとの溶液の各々を750rpmで30分間遠心分離した。遠心分離した溶液の上部の一定分量、35wt%シクロデキストリン溶液の約1.5mL(1.7g)を、テフロン(登録商標)面のセプタムスクリューキャップ付のバイアルの40mLのヘッドスペース中に加えた。ヒートガンを使用してバイアルを中程度の温度で加熱することにより溶液から水を蒸発させ、乾燥窒素を流しながら穏やかに回転させてバイアルの内壁を均一に被覆した。被覆されたバイアルを75℃のオーブン中に約10分間置いて、残留する水をすべて除去することにより、シクロデキストリン残留物を完全に固化させた。いくつかの場合、蒸発が完了したとき、透明なβ−シクロデキストリン残留物が泡立ち、かすかに曇った。クリューキャップを外したバイアルを、オーブン中290℃で2分間加熱した。バイアルを取り出して、室温で40秒間放置して冷やしてから、テフロン(登録商標)面のスクリューキャップを被せた。密封されたバイアル内部のヘッドスペース中のメチルβ−シクロデキストリン不純物から生じた熱分解生成物を、表1のパラメータを使用して、ガスクロマトグラフィにより測定した。
【0136】
表3は、4つのメチルβ−シクロデキストリン試料から得られたガスクロマトグラフィの結果を示す。活性チャーコールを含むすべての試料は、分解による揮発性物質の実質的減少を示した。図7および図8は、メチルβ−シクロデキストリン、および0.1%の活性炭(β−シクロデキストリンの重量を基準にして)を含むメチルβ−シクロデキストリンの熱分解生成物のクロマトグラフィプロファイルを示す。
【0137】
【表3】

(実施例5)
46.7wt%メチルβ−シクロデキストリン(置換度1.0)溶液は、280グラムのメチルβシクロデキストリン(100℃で16時間乾燥した)を320グラムの脱イオン水に加えることにより、脱イオン水中で調製した。600グラムのメチルβ−シクロデキストリンを2つの300グラムの試料溶液AおよびBに分けた。溶液Aは、46.7wt%メチルβシクロデキストリン水溶液を含んでいた。
【0138】
予め乳鉢および乳棒で磨砕したヤシ殻チャーコール0.280グラムを、溶液B中に分散させた。次に、溶液Bを750rpmで30分間遠心分離した。遠心分離した溶液の上部の一定分量をPETチップを被覆するために使用した。
【0139】
溶液AおよびBの両方を、0.76+/−0.02dl/gの固有粘度および1.2g/cmの密度を有するPETチップ(テネシー州KingsportのEastman Chemicalsにより製造されたVoridian PET9921W)に、次の手順を使用して直接被覆した。
【0140】
PETチップを、溶液Aおよび溶液Bの両方を使用して、約0.75wt%β−シクロデキストリンで被覆した。約2.0kgのPET樹脂を、風袋を計ったTFEライニング栓付の4リットル広口ボトルに加えた。ボトルを100℃に加熱した後、8.35gの被覆溶液Aを、ガラスと接触することを避けて、ボトルの中央部に注ぐことにより加えた。PETチップを入れた広口瓶を分析天秤上に置くことにより、被覆溶液重量を、0.01グラム以内の精度で測定した。樹脂を回転ミキサー上30rpmで15分間混合して、PETチップを液で被覆した。次に、上向きに立てたボトルからキャップを外して、ボトルを115℃で真空オーブン中(0.9”Hg圧力)に置き、水を除去して被覆をPETチップに定着させた。合計4回の被覆のために、追加の被覆を3回行った。溶液Aについて、ボトル壁の被覆に伴う損失を計算に入れて、PETチップは0.75wt%の濃度で被覆されたことがわかった。真空オーブンで乾燥したPETチップを、ボトルから射出成形機のインライン乾燥機に移して、通常の条件で乾燥した後、射出成形した。ボトルを再秤量して、メチルβ−シクロデキストリン被覆損失を定量した。
【0141】
溶液「B」を同一の方法で被覆した。溶液を被覆されて乾燥されたチップの試料、チップA(溶液Aで被覆)、チップB(溶液Bで被覆)、および被覆のない対照試料チップCを、真空オーブン中105℃、<0.1”Hgで乾燥した。チップAおよびチップBは、被覆されたPET:被覆されていないPETの比1:10で、各々別に、被覆されていないPETとブレンドされて、750ppmのメチルβ−シクロデキストリン濃度を呈した。チップBは1.5ppmの活性炭も含んでいた。被覆されていないPETと1:10でブレンドされたチップAおよびB、ならびにチップCは、色分析のために射出成形されて、単一キャビティ射出成形機にドッグボーン(dog bone)を生じた。表4は、射出成形機作動パラメータを示す。ドッグボーンの色は、Color−Eye 7000A分光光度計を使用してASTM D6290−98により測定し、Hunter L、a、b標準単位で表5に報告した。
【0142】
【表4】

【0143】
【表5】

表5は、チップ被覆中に含まれる活性炭が、すべてのHunter色測定を有意に改善することを示す。図9に示した可視波長スキャンは、可視光スペクトル全体にわたる活性炭による改善を示す。小粒径活性炭の導入により、メチルβ−シクロデキストリンに見出される不純物から射出成形工程中に生ずる熱分解生成物を除去すると、PETにおける異色は有意に改善され、目視の透明性に目に見える影響はなかった。
【0144】
それに加えて、ドッグボーンの目視検査において、炭素粒子は裸眼では見えなかった。また、加工中に炭素粒子またはβ−シクロデキストリンの存在により引き起こされた物理的欠陥を示す、筋、泡などのいかなる可視的な物理的欠陥もなかった。
【0145】
上の明細書、実施例およびデータは、本発明の組成物の製造および使用の完全な説明を提供する。本発明の多くの実施形態が、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく為され得るので、本発明は、以下に添付する特許請求の範囲内に存する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)シクロデキストリン、および
(b)活性炭を含む有効量の炭素粒子
を含み、前記シクロデキストリンは、シクロデキストリン環の中央空洞内に化合物を実質的に含まないポリマー添加剤組成物。
【請求項2】
約0.001から約1.0wt%の炭素粒子を粉末で含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
活性炭粒子の単位重量部当たり約2から40,000重量部のシクロデキストリンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
溶融した反応性熱可塑性ポリマーを、
(a)シクロデキストリン、および
(b)活性炭を含む有効量の炭素粒子
を含む添加剤混合物と接触させるステップを含む、マスターバッチ組成物を作製する方法であって、前記シクロデキストリンはシクロデキストリン環の中央空洞内に化合物を実質的に含まず、前記反応性熱可塑性ポリマーはシクロデキストリンと共有結合を形成するように反応し得る反応性基を含む方法。
【請求項5】
前記接触させるステップに、
(a)マスターバッチ組成物を押し出してポリマーストランドを形成するステップ;
(b)前記ポリマーストランドを水浴に通すステップ;
(c)前記ストランドを、ストランドカッターに通してペレットまたはチップを形成するステップ;および
(d)前記ペレットまたはチップを乾燥するステップ
が続く、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
(a)置換されたシクロデキストリン化合物、および
(b)活性炭を含む有効量の炭素粒子
を含み、前記置換されたシクロデキストリンは、約0.3から2.5の置換度を有し、シクロデキストリン環の中央空洞内に化合物を実質的に含まないポリマー添加剤組成物。
【請求項7】
(a)熱可塑性ポリマー、
(b)前記組成物に対して約100重量ppmから150,000重量ppmの置換されたシクロデキストリンに相当する量の置換されたシクロデキストリン化合物、および
(c)前記組成物に対して約0.005から5,000重量ppmの炭素粒子に相当する量の活性炭を含む炭素粒子
を含み、前記置換されたシクロデキストリンは、約0.3から2.5の置換度を有し、シクロデキストリン環の中央空洞内にいかなる化合物も実質的に含まないマスターバッチ組成物。
【請求項8】
溶融した熱可塑性ポリマーを、
(a)マスターバッチ組成物に対して約100重量ppmから150,000重量ppmのシクロデキストリン基に相当する量の置換されたシクロデキストリン化合物、および
(b)マスターバッチ組成物に対して約0.005重量ppmから5000重量ppmに相当する量で存在する活性炭を含む炭素粒子
を含む添加剤混合物と接触させるステップを含み、前記置換されたシクロデキストリンは、約0.3から2.5の置換度を有し、シクロデキストリン環の中央空洞内にいかなる化合物も実質的に含まないマスターバッチ組成物を作製する方法。
【請求項9】
(a)熱可塑性ポリマー、
(b)物品に対して約10重量ppmから50,000重量ppmのシクロデキストリン基に相当する量の置換されたシクロデキストリン化合物、および
(c)活性炭を含む有効量の炭素粒子
を含み、前記置換されたシクロデキストリンは、約0.3から2.5の置換度を有し、シクロデキストリン環の中央空洞内にいかなる化合物も実質的に含まない熱可塑性ポリマー物品。
【請求項10】
(a)熱可塑性ポリマーを
(i)置換されたシクロデキストリン、および
(ii)活性炭を含む有効量の炭素粒子
を含む添加剤組成物と接触させるステップ、および
(b)前記物品を成形するステップ
を含み、前記置換されたシクロデキストリンは、約0.3から2.5の置換度を有し、シクロデキストリン環の中央空洞内にいかなる化合物も実質的に含まない熱可塑性物品を作製する方法。
【請求項11】
(a)熱可塑性ポリマー、
(b)前記組成物に対して約100重量ppmから150,000重量ppmのシクロデキストリン基に相当する量の、ポリマーに共有結合したシクロデキストリン基を含む官能化されたポリマー、および
(c)前記組成物に対して約0.005重量ppmから5,000重量ppmの炭素粒子に相当する量の活性炭を含む炭素粒子
を含み、前記シクロデキストリンは、シクロデキストリン環の中央空洞内にいかなる化合物も実質的に含まないマスターバッチ組成物。
【請求項12】
前記熱可塑性ポリマーが、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリケトン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリフェニレンオキシド、ポリ(塩化ビニル)、またはそれらのコポリマーもしくはブレンドである、請求項7に記載の組成物。
【請求項13】
(a)(i)ポリマーに共有結合したシクロデキストリン基を含む官能化されたポリマーであって、処理されたチップに対して約100重量ppmから150,000重量ppmの量で存在する、シクロデキストリンがグラフトしたポリマー、および
(ii)処理されたチップに対して0.005から5000重量ppmの量で存在する、活性炭を含む炭素粒子
を含む添加剤処理を含む、処理された熱可塑性ポリマーチップまたはペレットと、未処理熱可塑性チップまたはペレットとを溶融ブレンドするステップ、
および
(b)物品を成形するステップ
を含み、前記シクロデキストリン基は、シクロデキストリン環の中央空洞内にいかなる化合物も実質的に含まず、前記シクロデキストリン基は前記物品に対して約10から50,000重量ppmの量で存在し、前記炭素粒子は前記物品に対して約0.001から500重量ppmの量で存在する、熱可塑性ポリマー物品を作製する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−519390(P2010−519390A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−550977(P2009−550977)
【出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【国際出願番号】PCT/US2008/054281
【国際公開番号】WO2008/103657
【国際公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(509234032)セルレシン テクノロジーズ, エルエルシー (4)
【Fターム(参考)】