説明

置換ビフェニルアニリド類を調製する方法

本発明は、式(I)〔式中、Rは保護されているアミノ基である〕で表される置換ビフェニルアニリドを調製する方法に関し、ここで、該方法は、溶媒中、塩基及びパラジウム触媒の存在下で、式(II)で表される化合物を式(III)で表される有機ホウ素化合物と反応させることを含む。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I)
【0002】
【化1】

〔式中、
Xは、水素、フッ素又は塩素であり;
は、保護されているアミノ基であり;
は、シアノ、ニトロ、ハロゲン、C−C−アルキル、C−C−アルケニル、C−C−アルキニル、C−C−アルコキシ、C−C−ハロアルキル、(C−C−アルキル)カルボニル又はフェニルであり;
nは、1、2又は3であるが、nが2又は3である場合、複数のRラジカルは異なっていてもよい〕
で表される置換ビフェニルアニリドを調製する方法に関し、ここで、該方法は、溶媒中、塩基及びパラジウム触媒〔ここで、該パラジウム触媒は、
(a) パラジウムの酸化状態がゼロであるパラジウム−トリアリールホスフィン錯体又はパラジウム−トリアルキルホスフィン錯体;
(b) 錯体リガンドとしてのトリアリールホスフィン又はトリアルキルホスフィンの存在下における、パラジウムの塩;
又は、
(c) トリアリールホスフィン又はトリアルキルホスフィンの存在下における、場合により支持体に担持されていてもよい、金属パラジウム;
からなる群から選択され、ここで、使用するトリアリールホスフィン又はトリアルキルホスフィンは、置換されていてもよい〕
の存在下で、式(II)
【0003】
【化2】

〔式中、Halは、ハロゲンであり、Xは、上記で定義されているとおりである〕
で表される化合物を、式(III)
【0004】
【化3】

で表される有機ホウ素化合物〔ここで、該有機ホウ素化合物は、以下のものからなる群から選択される:
(i) 式(III)
[式中、
mは、2であり;
pは、1であり;
Qは、ヒドロキシル基であり;
及びnは、上記で定義されているとおりである]
で表されるボロン酸又はその無水物、それらから形成された二量体若しくは三量体;
(ii) 式(III)
[式中、
mは、2であり;
pは、1であり;
各Qは、独立して、F、Cl、Br、I、C1−4−アルキル残基、C6−10−アリール残基、C1−4−アルコキシ残基及びC6−10−アリールオキシ残基から選択され;
及びnは、上記で定義されているとおりである]
で表されるボロン酸誘導体;
(iii) 式(III)
[式中、
mは、1であり;
pは、2であり;
Qは、OH、F、Cl、Br、I、C1−4−アルキル残基、C6−10−アリール残基、C1−4−アルコキシ残基及びC6−10−アリールオキシ残基から選択され;
及びnは、上記で定義されているとおりである]
で表されるボリン酸;
(iv) 式(III)
[式中、
mは、2であり;
pは、1であり;
各Qは、独立して、C1−4−アルコキシ残基から選択され、その際、該C1−4−アルコキシ残基は、それらが結合しているホウ素原子と一緒に、C1−4−アルキル残基で置換されていてもよい5員又は6員の環を形成し;
及びnは、上記で定義されているとおりである]
で表される環状ボロン酸エステル;
(v) 式(III)
[式中、
mは、3であり;
pは、1であり;
及びnは、上記で定義されているとおりであり;
各Qは、独立して、OH、F、Cl、Br、I、C1−4−アルキル残基、C6−10−アリール残基、C1−4−アルコキシ残基及びC6−10−アリールオキシ残基から選択される]
で表されるボロン酸(ここで、該ボロン酸アニオンの負電荷は、カチオンで相殺されている);
(vi) 式(III)
[式中、
mは、0であり;
pは、3であり;
及びnは、上記で定義されているとおりである]
で表されるトリアリールボラン;
(vii) 式(III)
[式中、
mは、0であり;
pは、4であり;
及びnは、上記で定義されているとおりである]
で表されるテトラアリールボレート(ここで、該ボロン酸アニオンの負電荷は、カチオンで相殺されている)〕
と反応させることを含む。
【背景技術】
【0005】
ツトム イシカワら(JOCS, Vol.65, No.26, 2000, 9143−9151)は、保護されているアリールボロン酸と2−ブロモホルムアニリドの間のスズキカップリングとそれに続くメチル化及び脱保護による、フェノール性2−アリールホルムアニリドの合成について教示している。しかしながら、本発明は、保護されているアリールボロン酸を使用しない。
【0006】
「Tetrahedron Lett. 32, page 2277(1991)」には、[1,4−ビス(ジフェニルホスフィン)−ブタン]パラジウム(II)ジクロリド触媒を使用するフェニルボロン酸とクロロベンゼンの間のカップリング反応が、僅か28%に過ぎない収率で進行することが記載されている。
【0007】
EP−A 0888261には、パラジウム触媒と塩基の存在下でクロロニトロ−ベンゼンをフェニルボロン酸と反応させることによるニトロビフェニルの調製方法が開示されている。この調製方法では、非常に高い触媒濃度が必要である。
【0008】
WO 2006/092429及びWO 2007/138089は、それぞれ、パラジウム触媒の存在下で置換ジフェニルボリン酸をジハロアリール化合物とカップリングさせることによる、置換ビフェニルの調製方法に関する。WO 2006/092429及びWO 2007/138089に記載されている該カップリング反応の収率は未だに不充分であり、脱ハロゲン化生成物、トリアリール類及びポリ塩素化ビフェニル類(PCB)などの望ましくない副生物の形成が観察され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0888261号明細書
【特許文献2】国際公開第2006/092429号
【特許文献3】国際公開第2007/138089号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】JOCS, Vol.65, No.26, 2000, 9143−9151; Tetrahedron Lett. 32, page 2277(1991)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、置換されているビフェニル−アニリド類を高い収率で選択的に調製するための、工業規模で実施可能で経済的に実用的な方法を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
従って、冒頭で定義した調製方法が見いだされた。
【0013】
驚くべきことに、アミノで置換されているハロゲン化アリールのスズキカップリングが、当該ハロゲン化アリールのアミノ基が保護基で保護されている場合に、比較的穏やかな反応条件下で実施可能であるということが分かった。従って、本発明による調製方法では、副生物の形成が低減されていることに起因して、より高い収率が達成される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
有機ホウ素化合物
本発明による調製方法において使用可能な有機ホウ素化合物。
(i) 式(III)
【0015】
【化4】

[式中、
mは、2であり;
pは、1であり;
各Qは、ヒドロキシル基であり;
及びnは、上記で定義されているとおりである]
で表されるボロン酸は、好ましくは溶媒としてのTHFの中で、トリアルキルボレートを用いてアリールマグネシウムハライドを変換することによって得ることができる。アリールボリン酸の形成を抑制するためには、「R.M.Washburn et al. Organic Syntheses Collective Vol.4, 68」又は「Boronic Acids, Edited by Dennis G.Hall, Wiley−VCH 2005, p.28ff」及びそれらの中で引用されている参考文献に記載されているように、上記試薬のいずれも過剰となることを避ける必要があり、また、当該反応を−60℃という低い温度で実施する必要がある。
【0016】
本発明に従って使用可能なボロン酸は、以下の化合物によって例証される:
(2,3−ジフルオロフェニル)ボロン酸、(3,4−ジフルオロフェニル)ボロン酸、(2,3−ジクロロ−フェニル)ボロン酸、並びに、特に、(3,4−ジクロロフェニル)ボロン酸及び(4−クロロフェニル)ボロン酸。
【0017】
(ii) 式(III)
[式中、
mは、2であり;
pは、1であり;
各Qは、独立して、F、Cl、Br、I、C1−4−アルキル残基、C6−10−アリール残基、C1−4−アルコキシ残基及びC6−10−アリールオキシ残基から選択され;
及びnは、上記で定義されているとおりである]
で表されるボロン酸誘導体。
【0018】
(iii) 式(III)
[式中、
mは、1であり;
pは、2であり;
Qは、OH、F、Cl、Br、I、C1−4−アルキル残基、C6−10−アリール残基、C1−4−アルコキシ残基及びC6−10−アリールオキシ残基から選択され、好ましい実施形態では、Qは、ヒドロキシル残基であり;
及びnは、上記で定義されているとおりである]
で表されるボリン酸は、スキーム1に記載されているように、WO 2007/138089に準じて、溶媒としてのテトラヒドロフランの中で、場合により置換されていてもよいフェニルマグネシウムクロリド(V)をホウ酸トリアルキル(好ましくは、ホウ酸トリメチル)と反応させることによって得られる。
【0019】
【化5】

ここで、
は、C−C−アルキル、好ましくは、メチルであり;
Halは、Cl、Br、Iである。
【0020】
式(iii)〔式中、mは1であり、pは2であり、QはOHであり、R及びnは上記で定義されているとおりである〕で表されるジフェニルボリン酸から出発するのが好ましい。
【0021】
さらなる出発物質は、nが1又は2、特に、2である、ジフェニルボリン酸(iii)である。特に好ましいのは、3位及び4位が置換されているジフェニルボリン酸(iii)又は4位のみが置換されているジフェニルボリン酸(iii)である。
【0022】
本発明に従って使用可能なボリン酸は、以下の化合物によって例証される:
ジ(2,3−ジフルオロフェニル)ボリン酸、ジ(3,4−ジフルオロフェニル)ボリン酸、ジ(2,3−ジ−クロロフェニル)ボリン酸、並びに、特に、ジ(3,4−ジクロロフェニル)ボリン酸及び(4−クロロフェニル)ボリン酸。
【0023】
ジフェニルボリン酸(iii)の高収率にとって不可欠なのは、使用する置換クロロベンゼン(IV)に基づいて僅かに0.7当量のみのホウ酸トリアルキルを使用することである。1.1当量のホウ酸トリアルキルを使用すると、EP−A 0888261に記載されているように、フェニルボロン酸が生じる。
【0024】
該調製方法のこの段階における反応温度は、例えば、−20から100℃、20から80℃又は40から60℃である。
【0025】
(iv) 式(III)
[式中、
mは、2であり;
pは、1であり;
各Qは、独立して、C1−4−アルコキシ残基から選択され、その際、該C1−4−アルコキシ残基は、それらが結合しているホウ素原子と一緒に、C1−4−アルキル残基で置換されていてもよい5員又は6員の環を形成し;
及びnは、上記で定義されているとおりである]
で表される環状ボロン酸エステルは、「Boronic Acids, Edited by Dennis G.Hall, Wiley−VCH 2005, p.28ff」及びその中で引用されている参考文献に記載されているようにして、得ることができる。
【0026】
環状ボロン酸エステルは、本発明に従って使用することが可能であるが、そのような環状ボロン酸エステルは、下記式(iv−1)から式(iv−3)
【0027】
【化6】

[式中、R及びnは、上記で定義されているとおりである]
で表される化合物によって例示される。
【0028】
(v) 式(III)
[式中、
mは、3であり;
pは、1であり;
及びnは、上記で定義されているとおりであり;
各Qは、独立して、OH、F、Cl、Br、I、C1−4−アルキル残基、C6−10−アリール残基、C1−4−アルコキシ残基及びC6−10−アリールオキシ残基から選択され、本発明の好ましい実施形態では、Q、Q及びQは、それぞれ、ヒドロキシル残基である]
で表されるボロン酸〔ここで、該ボロン酸アニオンの負電荷は、下記式(iv−1)
【0029】
【化7】

によって示されるように、カチオンで相殺されている〕。
【0030】
上記カチオン(M)は、例えば、アンモニウム(NH)、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のカチオン、例えば、Na、K、Li、Mg2+、Ca2+などからなる群から選択される。
【0031】
ボロン酸アニオン(v)は、「Serwatowski et al. Tetrahedron Lett. 44, 7329(2003)」に記載されているようにして、得ることができる。
【0032】
(vi) 式(III)
[式中、
mは、0であり;
pは、3であり;
及びnは、上記で定義されているとおりである]
で表されるトリアリールボラン。
【0033】
トリアリールボラン(vi)は、「H.C.Brown et al J. Organomet. Chem. 73, 1(1988)」及び「H.C.Brown et al., ”Borane reagents”, Harcourt Brace Jovanovich, Publishers, (1988)」に記載されているようにして、得ることができる。
【0034】
(vii) 式(III)
[式中、
mは、0であり;
pは、4であり;
及びnは、上記で定義されているとおりである]
で表されるテトラアリールボレート〔ここで、該ボロン酸アニオンの負電荷は、カチオン(ここで、該カチオンは、例えば、アンモニウム(NH)、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のカチオン、例えば、Na、K、Li、Mg2+、Ca2+などからなる群から選択される)で相殺されている〕。
【0035】
テトラアリールボレート(vii)は、「J.Serwatowski et al. Tetrahedron Lett. 44, 7329(2003)」に記載されているようにして、得ることができる。.
【0036】
スズキカップリング
本発明によれば、式(I)で表される置換ビフェニルアニリドは、極めて選択的に、高収率で得ることができる。
【0037】
式(II)で表されるハロゲン化アリールのアミノ基が保護基で保護されている場合、当該スズキカップリングは、比較的穏やかな反応条件下で実施可能である。従って、脱ハロゲン化生成物、トリアリール類及びポリ塩素化ビフェニル類(PCB)などの望ましくない副生物の形成が著しく低減される。
【0038】
本発明に関連して、保護基は、スズキカップリング段階の間に式(II)で表されるハロゲン化アリールのアミノ基を修飾するために使用可能で、且つ、該カップリング後に、例えば水性酸と反応させることにより、式(I)で表される置換ビフェニルアニリドから除去する(それによって、元のアミンに戻る)ことが可能な、任意の種類の化学的基を意味する。この段階は、脱保護と称される。
【0039】
アミン基を保護するために一般的に使用可能な保護基は、下記基によって例示される。
【0040】
カルボベンジルオキシ(Cbz)基: カルボベンジルオキシ(Cbz)基は、アミンをクロロギ酸ベンジル及び弱塩基と反応させることによって形成される。カルボベンジルオキシ(Cbz)基は、アミンを求電子試薬から保護するために使用される。その保護されたアミンは、接触水素化によって、又は、HBrで処理することによって、脱保護することができる。カルボベンジルオキシ(Cbz)基は、従来技術において、例えば、「Max Bergmann, Leonidas Zervas(1932). ”Uber ein allgemeines Verfahren der Peptid−Synthese”. Berichte der deutschen chemischen Gesellschaft 65(7): 1192−1201. doi: 10.1002/cber.19320650722」又は「J.Clayden, N.Greeves, S.Warren, P.Wothers, ”Organic Chemistry”, Oxford University Press, 2001」から、知られている。
【0041】
tert−ブチルオキシカルボニル(BOC)基 :tert−ブチルオキシカルボニル(BOC)基は、有機合成において広範に使用されている試薬であり、従来技術において、例えば、「Wakselman,M. ”Di−t−butyl Dicarbonate” in Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis (Ed: L.Paquette) 2004, J.Wiley & Sons, New York」から、よく知られている。この炭酸エステルは、アミンと反応して、N−tert−ブトキシカルボニル、即ち、所謂t−BOC誘導体を生成する。これらの誘導体は、アミンとしては振る舞わない。それによって、該誘導体が生成されていなければそのアミン官能基に影響を及ぼしたであろう特定のその後の変換が可能となる。そのt−BOCは、後になって、酸を用いて当該アミンから除去することができる。かくして、t−BOCは、例えば固相ペプチド合成などにおいて、保護基として機能する。t−BOCは、殆どの塩基及び求核試薬に対して安定である。該Boc基は、水性条件下、重炭酸ナトリウムなどの塩基の存在下で、二炭酸ジ−t−ブチルを用いて、アミンに付加することができる。アミンの保護は、アセトニトリル溶液中で、塩基として4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)を用いて達成することも可能である。アミノ酸内のt−BOCは、強酸(例えば、トリフルオロ酢酸)をそれのみで用いて若しくはジクロロメタン中の強酸(例えば、トリフルオロ酢酸)を用いて、又は、メタノール中のHClを用いて、除去することができる。
【0042】
9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)基: 9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)基は、広範に使用されている保護基であって、一般に、アミノ酸単位からのペプチドの反復合成においてペプチドのN末端から除去される。Fmocの有利点は、それが、極めて穏やかな塩基性条件(例えば、ピペリジン)下において切断されるが酸性条件下では安定であるということである。これにより、塩基性条件下では安定であるが弱酸(mild acid)に対して不安定な保護基、例えば、Boc及びベンジル基などを、標的ペプチドのアミノ酸残基の側鎖において使用することが可能となる。この直交する保護基(orthogonal protecting group)の戦略は、有機合成の技術分野においては一般的である。
【0043】
シッフ塩基(RR”C=N−R’): シッフ塩基(RR”C=N−R’)は、アミノ基をアルデヒド又はケトンと反応させることによって得られる。該シッフ塩基保護基は、例えば、酸性処理によって除去することができるか、又は、「J.Am.Chem.Soc. 1960, 82, 5688」に記載されているようにPd/C/水素を用いた水素化によって除去することができるか、又は、「J.Chem.Soc.C, 1969, 1758」に記載されているようにエタノール中のヒドラジンを用いて除去することができる。
【0044】
好ましくは、アセトン、ベンゾフェノン若しくはピナコロン(pinakolon)などのケトンを使用するか、又は、ホルムアルデヒド(formaldehyd)、アセトアルデヒド(acetaldehyd)若しくはベンズアルデヒド(benzaldehyd)などのアルデヒドを使用する。
【0045】
アセチルアミノ基及びアセトアセチルアミノ(acetacetylamino)基は、アミノ基を酢酸と又はアセト酢酸エステル(acetacetic acid ester)と反応させることによって得られる。これらの基は、酸性処理によって除去することができる。
【0046】
本発明の一実施形態では、式(II)で表されるハロゲン化アリールのアミノ基を、シッフ塩基、アセトアミノ基又はアセトアセチルアミノ基で保護する。
【0047】
本発明のこの好ましい実施形態では、
は、−NH(CO)R、−N=CRであり;
、R、Rは、互いに独立して、水素、−CH−(C=O)−C1−8−アルキル、C1−8−アルキル、C1−8−アルケニル、C1−8−アルキニル又はC6−18−アリールを表し;又は、ここで、
、Rは、それらが結合している炭素原子と一緒に、N、O又はSから選択される1個、2個又は3個のヘテロ原子を含んでいる5員又は6員の環を形成してもよい。
【0048】
本発明の別の実施形態では、本発明の調製方法で調製された置換されているビフェニルは、何れの場合にも単独で及び組み合わされて、以下の置換基を有している:
は、−NH(CO)CHである;
は、フッ素、塩素、臭素であり、さらに好ましくは、塩素である;
Xは、水素、フッ素、塩素、臭素であり、さらに好ましくは、フッ素である;
nは、1又は2であり、好ましくは、2である。
【0049】
続いて行う、ビアリールの均質触媒スズキクロスカップリングは、スキーム2に従って実施する。
【0050】
【化8】

【0051】
本発明に従って使用可能な式(II)で表されるハロゲン化アリールの例は、N−(2−ブロモ−4−フルオロフェニル)アセトアミド、N−(2−クロロ−4−フルオロフェニル)アセトアミド、N−(2−ブロモ−フェニル)アセトアミド、N−(2−クロロフェニル)アセトアミド、2−ブロモ−N−(プロパン−2−イリデン)アニリン、2−クロロ−N−(プロパン−2−イリデン)アニリン、2−ブロモ−4−フルオロ−N−(プロパン−2−イリデン)アニリン、2−クロロ−4−フルオロ−N−(プロパン−2−イリデン)アニリン、N−(2−クロロフェニル)−3−オキソブタンアミド、N−(2−ブロモフェニル)−3−オキソブタンアミド、N−(2−クロロ−4−フルオロフェニル)−3−オキソブタンアミド、N−(2−ブロモ−4−フルオロフェニル)−3−オキソブタンアミドである。
【0052】
式(II)で表される化合物は、式(IIa)で表されるアニリンをカルボン酸、アルデヒド又はケトンと反応させることによって調製することができる。
【0053】
【化9】

【0054】
化合物(II)は、有機ホウ素化合物(III)(ホウ素等価物)に基づいて、通常は、等モル量で使用し、好ましくは、最大で20%まで過剰な量で使用し、特に、最大で50%まで過剰な量で使用し、最も特に、最大で100%まで過剰な量で使用する。
【0055】
本発明に従う、化合物(II)と化合物(III)の組合せの例は、以下のとおりである:
化合物(II)は、N−(2−ブロモ−4−フルオロフェニル)アセトアミド又は2−ブロモ−4−フルオロ−N−(プロパン−2−イリデン)アニリンであり、化合物(III)は、ジ(3,4−ジクロロフェニル)ボリン酸である;
化合物(II)は、N−(2−ブロモフェニル)アセトアミド又は2−ブロモ−N−(プロパン−2−イリデン)アニリンであり、化合物(III)は、ジ(3,4−ジクロロフェニル)ボリン酸である;
化合物(II)は、N−(2−ブロモフェニル)アセトアミド又は2−ブロモ−N−(プロパン−2−イリデン)アニリン であり、化合物(III)は、(4−クロロフェニル)ボリン酸である。
【0056】
使用する塩基は、有機塩基、例えば、第3級アミンなどであり得る。好ましくは、例えば、トリエチルアミン又はジメチルシクロヘキシルアミンなどを使用する。使用する塩基は、好ましくは、混合された又は特に単独の、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ金属酢酸塩、アルカリ土類金属酢酸塩、アルカリ金属アルコキシド及びアルカリ土類金属アルコキシドである。特に好ましい塩基は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩及びアルカリ金属炭酸水素塩である。とりわけ好ましい塩基は、アルカリ金属水酸化物、例えば、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム、並びに、さらに、アルカリ金属炭酸塩及びアルカリ金属炭酸水素塩、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムなどである。該塩基は、本発明による調製方法において、有機ホウ素化合物(III)の量に基づいて、好ましくは、100から500mol%のフラクションで使用し、さらに好ましくは、150から400mol%のフラクションで使用する。適切なパラジウム触媒は、パラジウムの酸化状態がゼロであるパラジウム−リガンド錯体、錯体リガンドの存在下におけるパラジウムの塩、又は、好ましくは錯体リガンドの存在下における、場合により支持体に担持されていてもよい、金属パラジウムである。適切な錯体リガンドは、無電荷リガンド、例えば、トリアリールホスフィン及びトリアルキルホスフィンなどであり、これらは、アリール環において場合により置換されていてもよい〔例えば、トリフェニルホスフィン(TPP)、ジ−1−アダマンチル−n−ブチルホスフィン、トリ−tert−ブチルホスフィン(TtBP)、又は、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)ビフェニル〕。
【0057】
さらに、該文献には、以下のものを包含する、別の種類の構造に由来する特に反応性の高いさらなる錯体リガンドも記載されている:1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−4,5−H2−イミダゾリウムクロリド(cf. 例えば、G.A.Grasa et al. Organometallics 2002, 21, 2866)及びトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフィト(cf. A.Zapf et al., Chem.Eur.J. 2000, 6, 1830)。
【0058】
上記錯体リガンドの反応性は、tetra−n−ブチルアンモニウムブロミド(TBAB)などの第4級アンモニウム塩を添加することにより、増強することができる(cf. 例えば、「D.Zim et al., Tetrahedron Lett. 2000, 41, 8199」)。必用に応じて、該パラジウム錯体の水溶性は、スルホン酸基又はスルホネート塩基、カルボン酸基又はカルボキシレート塩基、ホスホン酸基、ホスホニウム基又はホスホネート塩基、ペルアルキルアンモニウム基、ヒドロキシル基及びポリエーテル基などのさまざまな置換基によって改善することができる。パラジウムの酸化状態がゼロであるパラジウム−リガンド錯体の中で、テトラキス−(トリフェニルホスフィン)パラジウムを使用するのが好ましく、さらに、テトラキス[トリ(o−トリル)ホスフィン]パラジウムを使用するのも好ましい。錯体リガンドの存在下で使用するパラジウムの塩において、当該パラジウムは、通常、2の正の酸化状態で存在している。塩化パラジウム、酢酸パラジウム又はビスアセトニトリルパラジウムクロリドを使用するのが好ましい。塩化パラジウムを使用するのが特に好ましい。
【0059】
一般に、6から60当量、好ましくは、15から25当量の上記錯体リガンド(特に、トリフェニルホスフィン及びトリ−tert−ブチルホスフィン)を1当量の上記パラジウム塩と合する。
【0060】
EP−A 0888261には、パラジウム触媒1当量当たり2から6当量のトリフェニルホスフィンを使用することが記載されている。該文献においては、大過剰量のリガンドを使用することは、触媒として活性な錯体を不活性化することになると予期されるので、一般に不利であると考えられている(cf. 例えば、J.Hassan et al., Chem.Rev. 2002, 102, 1359)。従って、少量の触媒の使用と組み合わせて上記した大量のトリフェニルホスフィンを使用することによって本発明の調製方法の全収率が増大したこと、及び、従って、経済的な実行可能性が改善されたことは、驚くべきことであった。金属パラジウムは、好ましくは、粉末化形態で使用するか、又は、支持体物質に担持された状態で、例えば、活性炭担持パラジウム、アルミナ担持パラジウム、炭酸バリウム担持パラジウム、硫酸バリウム担持パラジウム、炭酸カルシウム担持パラジウム、アルミノケイ酸パラジウム(例えば、モンモリロナイト)、SiO担持パラジウム及び炭酸カルシウム担持パラジウムなどの形態で使用する(何れの場合も、パラジウム含有量は、0.5から12重量%である)。パラジウムと支持体物質に加えて、これらの触媒は、さらなるドーパント(例えば、鉛)も含有することができる。
【0061】
場合により支持体上に担持されていてもよい金属パラジウムを使用する場合、上記錯体リガンドも使用することが特に好ましく、特に、錯体リガンドとしてのトリフェニルホスフィン(ここで、トリフェニルホスフィン内のフェニル基は、好ましくは、合計で1から3のスルホネート基で置換されている)の存在下で活性炭担持パラジウムを使用することが好ましい。本発明による調製方法においては、該パラジウム触媒は、化合物(II)の量に基づいて、0.001から1.0mol%、好ましくは、0.005から0.5mol%又は0.01から0.5mol%、特に、0.005から0.05mol%という少ないフラクションで使用する。
【0062】
大量の錯体リガンドの使用と組み合わせて少量のパラジウウム塩を使用することは、従来技術の調製方法と比較して、本発明の調製方法の顕著なコスト優位性を構成する。
【0063】
本発明による調製方法は、水相と固相(即ち、上記触媒)からなる二相系内で実施することができる。その場合、該水相は、水に加えて、水溶性有機溶媒も含有することができる。
【0064】
本発明による調製方法に適した有機溶媒は、何れの場合にも、単独の、又は、組み合わされた、エーテル類、例えば、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン及びtert−ブチルメチルエーテル、炭化水素類、例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン及びキシレン、アルコール類、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、エチレングリコール、1−ブタノール、2−ブタノール及びtert−ブタノール、ケトン類、例えば、アセトン、エチルメチルケトン及びイソブチルメチルケトン、アミド類、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド及びN−メチルピロリドンなどである。
【0065】
好ましい溶媒は、何れの場合にも、単独の、又は、組み合わされた、エーテル類、例えば、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン及びジオキサン、炭化水素類、例えば、シクロヘキサン、トルエン及びキシレン、アルコール類、例えば、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール及びtert−ブタノールなどである。本発明による調製方法の特に好ましい変形態様においては、水と1種類以上の水不溶性溶媒と1種類以上の水溶性溶媒、例えば、水とジオキサンの混合物、又は、水とテトラヒドロフランの混合物、又は、水とジオキサンとエタノールの混合物、又は、水とテトラヒドロフランとメタノールの混合物、又は、水とトルエンとテトラヒドロフランの混合物などを使用し、好ましくは、水とテトラヒドロフランの混合物、又は、水とテトラヒドロフランとメタノールの混合物を使用する。
【0066】
溶媒の総量は、化合物(II)の1モル当たり、通常、3000から500g、好ましくは、2000から700gである。
【0067】
適切には、本発明の調製方法は、水と1種類以上の不活性有機溶媒の混合物に化合物(II)と有機ホウ素化合物(III)と塩基と触媒量のパラジウム触媒を添加し、20℃から100℃の温度で、好ましくは、50℃から90℃の温度で、さらに好ましくは、60℃から80℃の温度で、1時間から50時間、好ましくは、2時間から24時間、撹拌することによって実施する。
【0068】
使用する溶媒及び温度に応じて、1バールから6バールの圧力、好ましくは、1バールから4バールの圧力とする。好ましくは、当該反応は、水とテトラヒドロフランの中で実施する。該反応は、そのような調製方法に適した慣習的な装置内で実施することができる。反応が終了したら、固体として得られるパラジウム触媒を、例えば濾過により、除去し、得られた粗製生成物から1種類又は複数種類の溶媒を除去する。水に全く溶解しない生成物の場合、当該水相を分離させることによって、水溶性のパラジウム触媒又は錯体リガンドは、当該粗製生成物から完全に除去される。次に、当業者には既知で且つ特定の生成物に適した方法によって、例えば、再結晶、蒸留、昇華、帯域融解、溶融結晶化又はクロマトグラフィーなどによって、さらなる精製を実施することができる。
【0069】
本発明の調製方法によって、例えば、以下のものを調製することができる:
3’,4’−ジクロロ−5−フルオロ−N−(プロパン−2−イリデン)ビフェニル−2−アミン、3’,4’−ジクロロ−N−(プロパン−2−イリデン)ビフェニル−2−アミン、4’−クロロ−N−(プロパン−2−イリデン)ビフェニル−2−アミン、N−(3’,4’−ジクロロ−5−フルオロビフェニル−2−イル)アセトアミド、N−(4’−クロロ−5−フルオロビフェニル−2−イル)アセトアミド、N−(3’,4’−ジクロロ−ビフェニル−2−イル)アセトアミド。
【0070】
本発明の調製方法では、化合物(I)が、非常に良好な純度で、極めて高い収率から最大で定量的な収率で得られる。本発明の調製方法によって得ることができる置換ビフェニルは、殺菌性作物保護活性成分の前駆物質として適している(cf. WO 03/070705)。殆どの場合、該アミン保護基は、そのアミンをさらに変換する前に、除去する。
【実施例】
【0071】
調製実施例
1. (3,4−ジクロロフェニル)ボロン酸の調製
窒素下、室温で、100kgのテトラヒドロフランと6kgのマグネシウム削りくずを反応容器に添加した。使用前に新たに調製した10から20kgのブロモ(3,4−ジクロロフェニル)マグネシウムを入れ、続いて、THF中の4−ブロモ−1,2−ジクロロベンゼンの18%溶液15kgを入れた。発熱が観察される場合、該温度を50℃未満に維持しながら、上記4−ブロモ−1,2−ジクロロベンゼン溶液の添加を継続した(293kg)。添加後、その反応混合物を室温で一晩撹拌した。
【0072】
該反応混合物を−10℃で冷却した後、その反応混合物に25kgのホウ酸トリメチルを添加した。撹拌後30分間経過した後、その反応混合物を20℃まで昇温させ、その温度で2時間撹拌した。
【0073】
温度を−10℃から−5℃の範囲内に維持しながら、その反応混合物に230kgの10%硫酸を添加した。添加が終了した後、その混合物を20℃まで昇温させ、2時間撹拌した。400kgの水を入れた。水層を分離させた。
【0074】
(3,4−ジクロロフェニル)ボロン酸が、収率70から80%(これは、有機相のHPLC分析によって求めた)で得られた。この有機相は、次のスズキクロスカップリング段階において直接使用することができる。
【0075】
2. ビス(3,4−ジクロロフェニル)ボリン酸の合成
乾燥フラスコに、DCM中のトリブロモボラン(13mL、13mmol、1M)を添加した。この溶液を−62℃に冷却し、その冷溶液に、ブロモ(3,4−ジクロロフェニル)マグネシウム(50mL、25mmol、THF中0.5M)を滴下して加えた。その反応混合物を室温まで昇温させ、一晩撹拌した。減圧下に溶媒を除去し、その残渣をDCMに溶解させ、1N HClをゆっくりと添加することにより加水分解させた。有機層を分離し、ブラインで洗浄し、減圧下に溶媒を除去した。得られた油状物を、溶離液として25%酢酸エチルを使用するシリカゲルクロマトグラフィーで精製した。これにより、標題化合物が固体として得られた(3.34g、10.4mmol、収率80%)。
【0076】
3. N−(3’,4’−ジクロロ−5−フルオロビフェニル−2−イル)アセトアミドの合成
アルゴン雰囲気下、8mLの水と2mLの1−ブタノールの中のN−(2−ブロモ−4−フルオロフェニル)アセトアミド(1.00g、4.27mmol)とビス(3,4−ジクロロフェニル)ボリン酸(0.685g、2.14mmol)と炭酸カリウム(1.03g、7.44mmol)と[(t−Bu)PH]BF(1.5mg、5mmol)とPd(acac)(1.6mg、55mmol)の懸濁液を、60℃まで加熱した。その反応混合物を60℃で約13時間撹拌し、室温まで冷却し、1N HClを用いて酸性化した。その混合物を酢酸エチルで2回抽出し、その有機層をMgSOで脱水した。減圧下に溶媒を除去した。乾燥後、1.22gの粗製生成物が得られた(80.5% GC−MS−純度、収率77%)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

〔式中、
Xは、水素、フッ素又は塩素であり;
は、保護されているアミノ基であり;
は、シアノ、ニトロ、ハロゲン、C−C−アルキル、C−C−アルケニル、C−C−アルキニル、C−C−アルコキシ、C−C−ハロアルキル、(C−C−アルキル)カルボニル又はフェニルであり;及び、
nは、1、2又は3であるが、nが2又は3である場合、複数のRラジカルは異なっていてもよい〕
で表される置換ビフェニルアニリドを調製する方法であって、溶媒中、塩基及びパラジウム触媒〔ここで、該パラジウム触媒は、
(a) パラジウムの酸化状態がゼロであるパラジウム−トリアリールホスフィン錯体又はパラジウム−トリアルキルホスフィン錯体;
(b) 錯体リガンドとしてのトリアリールホスフィン又はトリアルキルホスフィンの存在下における、パラジウムの塩;
又は、
(c) トリアリールホスフィン又はトリアルキルホスフィンの存在下における、場合により支持体に担持されていてもよい、金属パラジウム;
からなる群から選択され、ここで、使用するトリアリールホスフィン又はトリアルキルホスフィンは、置換されていてもよい〕
の存在下で、式(II)
【化2】

〔式中、Halは、ハロゲンであり、Xは、上記で定義されているとおりである〕
で表される化合物を、式(III)
【化3】

で表される有機ホウ素化合物〔ここで、該有機ホウ素化合物は、以下のものからなる群から選択される:
(i) 式(III)
[式中、
mは、2であり;
pは、1であり;
各Qは、ヒドロキシル基であり;
及びnは、上記で定義されているとおりである]
で表されるボロン酸又はその無水物、それらから形成された二量体若しくは三量体;
(ii) 式(III)
[式中、
mは、2であり;
pは、1であり;
各Qは、独立して、F、Cl、Br、I、C1−4−アルキル残基、C6−10−アリール残基、C1−4−アルコキシ残基及びC6−10−アリールオキシ残基から選択され;
及びnは、上記で定義されているとおりである]
で表されるボロン酸誘導体;
(iii) 式(III)
[式中、
mは、1であり;
pは、2であり;
Qは、OH、F、Cl、Br、I、C1−4−アルキル残基、C6−10−アリール残基、C1−4−アルコキシ残基及びC6−10−アリールオキシ残基から選択され;
及びnは、上記で定義されているとおりである]
で表されるボリン酸;
(iv) 式(III)
[式中、
mは、2であり;
pは、1であり;
各Qは、独立して、C1−4−アルコキシ残基から選択され、その際、該C1−4−アルコキシ残基は、それらが結合しているホウ素原子と一緒に、C1−4−アルキル残基で置換されていてもよい5員又は6員の環を形成し;
及びnは、上記で定義されているとおりである]
で表される環状ボロン酸エステル;
(v) 式(III)
[式中、
mは、3であり;
pは、1であり;
及びnは、上記で定義されているとおりであり;
各Qは、独立して、OH、F、Cl、Br、I、C1−4−アルキル残基、C6−10−アリール残基、C1−4−アルコキシ残基及びC6−10−アリールオキシ残基から選択される]
で表されるボロン酸(ここで、該ボロン酸アニオンの負電荷は、カチオンで相殺されている);
(vi) 式(III)
[式中、
mは、0であり;
pは、3であり;
及びnは、上記で定義されているとおりである]
で表されるトリアリールボラン;
(vii) 式(III)
[式中、
mは、0であり;
pは、4であり;
及びnは、上記で定義されているとおりである]
で表されるテトラアリールボレート(ここで、該ボロン酸アニオンの負電荷は、カチオンで相殺されている)〕
と反応させることを含む、前記方法。
【請求項2】
が、−NH(CO)R又は−N=CRであり;及び、
、R、Rが、互いに独立して、水素、−CH−(C=O)CH、C1−8−アルキル、C1−8−アルケニル、C1−8−アルキニル又はC6−18−アリールを表し;又は、
、Rが、それらが結合している炭素原子と一緒に、N、O又はSから選択される1個、2個又は3個のヘテロ原子を含んでいる5員又は6員の環を形成してもよい;
請求項1に記載の調製方法。
【請求項3】
化合物(II)が、N−(2−ブロモ−4−フルオロフェニル)アセトアミド、N−(2−クロロ−4−フルオロフェニル)アセトアミド、N−(2−ブロモフェニル)アセトアミド、N−(2−クロロフェニル)アセトアミド、N−(2−クロロフェニル)−3−オキソブタンアミド、N−(2−ブロモフェニル)−3−オキソブタンアミド、N−(2−クロロ−4−フルオロフェニル)−3−オキソブタンアミド、N−(2−ブロモ−4−フルオロフェニル)−3−オキソブタンアミド、2−ブロモ−N−(プロパン−2−イリデン)アニリン、2−クロロ−N−(プロパン−2−イリデン)アニリン、2−ブロモ−4−フルオロ−N−(プロパン−2−イリデン)アニリン、2−クロロ−4−フルオロ−N−(プロパン−2−イリデン)アニリンからなる群から選択される、請求項1に記載の調製方法。
【請求項4】
出発化合物(III)が、3位及び4位が置換されているジフェニルボリン酸である、請求項1から3に記載の調製方法。
【請求項5】
3位及び4位にフッ素又は塩素を有しているジフェニルボリン酸(III)を使用する、請求項1から4に記載の調製方法。
【請求項6】
出発化合物(III)が、ジ(3,4−ジクロロフェニル)ボリン酸である、請求項1から5に記載の調製方法。
【請求項7】
使用する請求項1に記載のパラジウム触媒(a)が、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム又はテトラキス(トリ−tert−ブチルホスフィン)パラジウムである、請求項1から6に記載の調製方法。
【請求項8】
請求項1に記載のパラジウム触媒(b)を使用する、請求項1から6に記載の調製方法。
【請求項9】
使用する請求項1に記載のパラジウム触媒(c)が、トリフェニルホスフィン(ここで、トリフェニルホスフィンのフェニル基は、合計で1から3のスルホネート基で置換されている)の存在下における活性炭担持金属パラジウムである、請求項1から6に記載の調製方法。
【請求項10】
使用するパラジウム触媒(b)の塩が、塩化パラジウム、酢酸パラジウム又はビスアセトニトリルパラジウムクロリドである、請求項8に記載の調製方法。
【請求項11】
パラジウム塩1当量当たり6から60当量のトリフェニルホスフィンを使用するパラジウム触媒(b)を使用する、請求項8に記載の調製方法。
【請求項12】
化合物(II)の量に基づいて、0.001から1.0mol%のパラジウム触媒を使用する、請求項1から11に記載の調製方法。
【請求項13】
反応を20から80℃の温度で実施する、請求項1から12に記載の調製方法。
【請求項14】
反応を水と有機溶媒の混合物中で実施する、請求項1から12に記載の調製方法。
【請求項15】
使用する有機溶媒がエーテルである、請求項1から14に記載の調製方法。

【公表番号】特表2011−519879(P2011−519879A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−507812(P2011−507812)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【国際出願番号】PCT/EP2009/003005
【国際公開番号】WO2009/135598
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(302063961)バイエル・クロツプサイエンス・アクチエンゲゼルシヤフト (524)
【Fターム(参考)】