説明

置換5,12−ジアザ−ベンゾアントラセン類縁体

式I:


で表される置換5,12−ジアザ−ベンゾアントラセン類縁体(式中、可変基は明細書に記載の通りである)を提供する。 このような化合物は、インビボ又はインビトロで特異的な受容体活性を調節するために使用できるリガンドであり、そしてヒト、ペット及び家畜における病理学的受容体活性に関連する疾患の治療に有用である。このような疾患を治療するために、これら化合物を用いる医薬組成物及び方法、更に受容体の局在化の研究にこのようなリガンドを用いる方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、有用な薬理学的特性を有する置換5,12−ジアザ−ベンゾアントラセン類縁体に関する。本発明は更に、カプサイシン受容体の活性に関連する疾患の治療に、カプサイシン受容体に結合するその他の薬剤を同定するために、そしてカプサイシン受容体の検出及び局在化のためのプローブとして、当該化合物を使用することに関する。
【背景技術】
【0002】
疼痛知覚、又は痛覚(侵害受容)には、「侵害受容体」という特化した知覚神経群の末梢ターミナルが介在している。多岐に亘る物理的及び化学的な刺激は、哺乳動物のこのような神経を活性化させるものであり、潜在的に有害な刺激の認知へとつながる。しかしながら、侵害受容体の不適切な又は過剰な活性化は、衰弱性の急性又は慢性の疼痛を生じさせる。
【0003】
神経性疼痛は、刺激がなくても疼痛シグナルの伝達を生じ、主として神経系の損傷に起因している。ほとんどの場合、このような疼痛は末梢系の初期の損傷(例えば、直接の損傷又は全身性疾患を介して)後の末梢及び中枢神経系の鋭敏化によって生じるものと考えられている。神経性疼痛は、一般にその強さにより、灼熱痛(burning)、疼くような痛み(shooting)及び強烈な間断のない(unrelenting)痛みであり、時には、その誘引となった初期の損傷又は病気を凌ぐほどのものである。
【0004】
既存の神経性疼痛の治療法は、ほとんどが効果がない。モルヒネのような麻薬は強力な鎮痛薬であるが、その実用性は、身体的嗜癖、退薬性のような、更には呼吸障害、情緒変調、並びに付随性便秘、悪心、嘔吐、及び内分泌及び自律神経系の変化に伴う腸運動の低下のような、副作用のために限定されている。更に、神経性疼痛は従来のオピオイド鎮痛薬による治療に対して多くの場合は反応しないか又は部分的に反応するのみである。N−メチル−D−アスパラテート拮抗薬ケタミン又はアルファ−(2)−アドレナリン作動薬クロニジンを用いる治療法は急性又は慢性の疼痛を緩和することができ、オピオイド消費の減少を可能にするが、これらの薬剤は副作用のために症状を悪化させる場合がある。
【0005】
カプサイシンを用いる局所療法が、神経性疼痛を含む慢性及び急性疼痛の治療に用いられている。カプサイシンはなす科(辛いチリ・ペパーを含む)植物から得られる刺激的な物質であり、痛みに介在するとされる小さな直径を有する求心性神経線維(A−デルタ及びC繊維)上で特異的に作用するものとされており、カプサイシンに対する応答は、末梢組織の侵害受容体の持続的な活性化に続いて、1つ又はそれ以上の刺激に対して次第に末梢の侵害受容体が脱感作されるものと特徴付けられている。動物を用いた研究により、カプサイシンは、カルシウム及びナトリウムに対してカチオン選択性チャネルを開くことにより、C繊維膜の脱分極化を誘発するものと思われる。
【0006】
同様の応答が、バニロイド部位を共通にするカプサイシンの構造的な類縁体によっても引き起こされる。そのような類縁体の1つは、ユーホルビア(Euphorbia)植物の天然生成物であるレシニフェラトキシン(resiniferatoxin:RTX)である。バニロイド受容体(VR)という用語は、カプサイシン及びこれに関連する刺激性物質の神経膜認識部位を表すために造られた用語である。カプサイシンの応答はその他の類縁体、カプサゼピンによって競合的に阻害され(従って拮抗され)、また非選択的カチオンチャネルブロッカー、ルテニウムレッドによっても阻害される。これらの拮抗薬は中等度未満の親和性(一般に140μM以上のK値で)でVRと結合する。
【0007】
ラット及びヒトのバニロイド受容体は、脊髄後根神経節細胞(dorsal root ganglion cells)からクローン化されている。最初に同定されたバニロイド受容体の型は、バニロイド受容体1型(VR1)として知られているが、「VR1」及び「カプサイシン受容体」という用語は、哺乳動物の同属体のものと同様にラット及び/又はヒトのこのような型の受容体を意味するもので、本明細書では同義的に用いられる。痛覚におけるVR1の役割は、バニロイドが誘発する疼痛症状を示さず、熱及び炎症に対して応答障害を示すような、当該受容体が欠如しているマウスを用いて確認された。VR1は、高温、低pH、及びカプサイシン受容体作動薬に応答してチャネルを開く閾値が低くなる、非選択的なカチオンチャネルである。例えば、このチャネルは通常約45℃以上の温度で開く。カプサイシン受容体チャンネルの開放は、一般に、この受容体を発現している神経細胞及び隣接する神経細胞からの炎症ペプチドの放出に引き続いて起こり、疼痛応答を増強させる。カプサイシンによる初期活性化の後に、カプサイシン受容体は、cAMP依存プロテインキナーゼによるリン酸化によって急速に脱感作を受ける。
【0008】
末梢組織の侵害受容体を脱感作するこれらの能力により、VR1作動薬であるバニロイド化合物は局所麻酔薬として使用されている。しかしながら、作動薬の投与自体が灼熱痛を引き起こす場合があるため、治療への使用が制限されている。
最近、非バニロイド化合物を含むVR1拮抗薬も疼痛の治療に有用であることが報告されている(2002年1月31日公開のPCT国際出願公開第WO02/08221号公報及び2003年7月31日公開の同第WO03/062209号公報を参照のこと)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、VR1と相互に作用するが、VR1作動薬であるバニロイド化合物のように初期疼痛を誘発しない化合物が、神経性疼痛を含む、慢性及び急性の疼痛の治療には望ましい。この受容体の拮抗薬は、疼痛、更に催涙ガス及びその他の刺激物への暴露、痒み、並びに尿失禁及び過活動膀胱のような尿路疾患、の治療に対して特に望ましい。本発明はこの要求を満たし、更に関連する効果を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、式I:
【化003】

【0011】
(式中、
Vは、C(R)(R)、NR、O又はSであり;
は、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、アミノ、C−Cアルキル、又はRと一緒になって、オキソ基を形成し;
は、水素、C−Cアルキル、又はRと一緒になって、オキソ基を形成し;
は、水素又はC−Cアルキルであり;
W、X及びZは、それぞれ独立してN又はCRであり;
は、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、アミノ、C−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cハロアルコキシ、並びにモノ−及びジ−(C−Cアルキル)アミノからそれぞれ独立して選ばれ;
【0012】
は、
(i)水素、ハロゲン、シアノ若しくは−COOHであるか;
(ii)炭素原子の各々は、ヒドロキシ及びC−Cアルキルからそれぞれ独立して選ばれる0〜2個の置換基で置換されている、C−Cアミノアルキルであるか;又は
(iii)式:−R−M−A−Rで表される基であり;
上記式において、
は、C−Cアルキレンであるか、又はR若しくはRと結合して、置換されていてもよい、好ましくはRからそれぞれ独立して選ばれる0〜2個の置換基で置換されていてもよい、4〜10員の炭素環若しくは複素環を形成し、
Mは、単共有結合、O、S、SO、C(=O)、OC(=O)、C(=O)O、OC(=O)O、C(=O)N(R)、OC(=O)N(R)、N(R)C(=O)、N(R)SO、SON(R)又はN(R)であり、
Aは、単共有結合、又はRからそれぞれ独立して選ばれる0〜4個の置換基で置換されている、C−Cアルキレンであり、そして
及びRは、存在するならば、
(a)それぞれ独立して、水素、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cアルカノン、C−Cアルキルエーテル又は4〜10員の炭素環若しくは複素環であるか、又はRと一緒になって、4〜10員の炭素環若しくは複素環を形成する(ここにおいて、R及びRの各々は置換されていてもよく、好ましくはR及びRの各々は、Rからそれぞれ独立して選ばれる0〜6個の置換基で置換されている)か、又は
(b)結合して、置換されていてもよい、好ましくはRからそれぞれ独立して選ばれる0〜6個の置換基で置換されている、4〜10員の炭素環若しくは複素環を形成する。
【0013】
Arは、置換されていてもよい、好ましくは式:LRで表される基からそれぞれ独立して選ばれる0〜3個の置換基で置換されている、5〜10員の炭素環又は複素環であり;
、A、A及びAは、それぞれ独立してN又はCRであり;
の各々は、
(i)式:LRで表される基からそれぞれ独立して選ばれるか、又は
(ii)隣接するRと一緒になって、置換されていてもよい、好ましくは式:LRで表される基からそれぞれ独立して選ばれる0〜3個の置換基で置換されている、縮合した5〜7員の炭素環若しくは複素環を形成し;
Lは、単共有結合、O、C(=O)、OC(=O)、C(=O)O、OC(=O)O、S(O)、N(R)、C(=O)N(R)、N(R)C(=O)、N(R)S(O)、S(O)N(R)及びN[S(O)]S(O) からそれぞれ独立して選ばれ(これらの式に於ける、mは0、1及び2からそれぞれ独立して選ばれ、Rは、水素及びC−Cアルキルからそれぞれ独立して選ばれる);
は、次の(i)及び(ii)からそれぞれ独立して選ばれ;
(i)は、水素、ハロゲン、シアノ及びニトロであり、そして
(ii)は、Rからそれぞれ独立して選ばれる0〜6個の置換基で置換されている、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cハロアルキル、C−Cアルキルエーテル、3〜10員の複素環、モノ−及びジ−(C−Cアルキル)アミノ及び(3〜10員の複素環)C−Cアルキルであり;そして
は、次の(i)及び(ii)からそれぞれ独立して選ばれ;
(i)は、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、アミノカルボニル、シアノ、ニトロ、オキソ及びCOOHであり;そして
(ii)は、各々が置換されていてもよい、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cアルコキシ、C−Cアルキルチオ、C−Cアルキルエーテル、C−Cアルカノイル、C−Cアルカノン、C−Cアルカノイルオキシ、C−Cアルコキシカルボニル、C−Cヒドロキシアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cシアノアルキル、フェニルC−Cアルキル、モノ−及びジ−(C−Cアルキル)アミノC−Cアルキル、C−Cアルキルスルホニル、モノ−及びジ−(C−Cアルキル)アミノスルホニル並びに(5〜7員の複素環)C−Cアルキルである。)
で表される、置換5,12−ジアザ−ベンゾアントラセン類縁体、更にこのような化合物の薬学的に許容される塩を提供する。
【0014】
ある態様に於いて、式Iで表される化合物はVR1調節剤であり、カプサイシン受容体の結合試験に於いて、1マイクロモル、100ナノモル、50ナノモル、10ナノモル又は1ナノモル以下のK値を示し、及び/又はカプサイシン受容体の作動薬若しくは拮抗薬の活性の測定試験に於いて、1マイクロモル、100ナノモル、50ナノモル、10ナノモル又は1ナノモル以下のEC50値又はIC50値を有している。
【0015】
ある態様に於いて、本明細書に記載されているようなVR1調節剤は、VR1拮抗薬であり、そしてカプサイシン受容体活性化のインビトロ試験に於いて、検出可能な程の作動活性を示さない。
【0016】
ある態様に於いて、本明細書で記載されているような化合物は、検出可能な標識(例えば、放射性標識又は蛍光結合)で標識されている。
【0017】
その他の態様によると、本発明は更に本明細書で記載されているような、少なくとも1つの化合物(つまり、本明細書で提供される化合物又はその薬学的に許容される塩)を、生理的に許容される担体又は賦形剤と共に含有してなる医薬組成物を提供する。
【0018】
更なる態様に於いて、カプサイシン受容体を発現している細胞(例えば、神経細胞)を、本明細書に記載されているような、少なくとも1つのVR1調節剤の治療有効量と接触させることからなる、細胞のカプサイシン受容体のカルシウム伝導性(calcium conductance)を減少させる方法を提供する。このような接触はインビボ又はインビトロで実施してもよい。
【0019】
バニロイドリガンドのカプサイシン受容体との結合を阻害する方法も更に提供される。このような態様に於いては、この阻害がインビトロで行われる。このような方法は、カプサイシン受容体を、バニロイドリガンドのカプサイシン受容体との結合を検出可能な程阻害する条件下及び量の、本明細書に記載されているような少なくとも1つのVR1調節剤と接触させることよりなる。他のこのような態様によると、カプサイシン受容体は患者の体内にある。このような方法は、患者体内のカプサイシン受容体を発現している細胞を、インビトロでバニロイドリガンドのクローンのカプサイシン受容体を発現する細胞との結合を検出可能な程阻害するのに十分な量の、本明細書に記載されているような少なくとも1つのVR1調節剤と接触させ、これにより患者におけるバニロイドリガンドのカプサイシン受容体との結合を阻害することからなる。
【0020】
本発明は更に、本明細書に記載されているような少なくとも1つのVR1調節剤の治療有効量を患者に投与することからなる、患者のカプサイシン受容体調節の応答に関連する疾患を治療する方法を提供する。
【0021】
他の態様に於いて、本明細書に記載されているような少なくとも1つのVR1調節剤の治療有効量を疼痛に罹っている患者に投与することからなる、患者の疼痛を治療する方法を提供する。
【0022】
痒み、尿失禁、過活動膀胱、咳及び/又はしゃっくりの1つ又はそれ以上に罹っている患者に、本明細書に記載されているような少なくとも1つのVR1調節剤の治療有効量を投与することからなる、患者における痒み、尿失禁、過活動膀胱、咳及び/又はしゃっくりを治療する方法が更に提供される。
【0023】
本発明は更に、本明細書に記載されているような少なくとも1つVR1調節剤の治療有効量を、肥満患者に投与することからなる、肥満患者の減量を促進する方法を提供する。
【0024】
更に、カプサイシン受容体に結合する薬剤を同定するための方法として:
(a)VR1調節剤がカプサイシン受容体と結合できる条件下に、カプサイシン受容体を本明細書に記載のような標識されたVR1調節剤と接触させて、これにより結合した標識されたVR1調節剤を生成する;
(b)試験試料の非存在下の、結合した標識されたVR1調節剤の量に相当するシグナルを検出する;
(c)結合した標識されたVR1調節剤を試験試料と接触させる;
(d)試験試料の存在下の、結合した標識されたVR1調節剤の量に対応するシグナルを検出する;及び
(e)工程(b)で検出されるシグナルと比較して、工程(d)で検出されるシグナルの減少を測定する;
ことからなる方法が提供される。
【0025】
更なる態様によれば、本発明は
(a)VR1調節剤がカプサイシン受容体と結合することが可能な条件で、試料を本明細書に記載されているようなVR1調節剤と接触させる;そして
(b)VR1調節剤がカプサイシン受容体と結合するレベルを検出する;
ことからなる、試料に於けるカプサイシン受容体の有無を決定する方法を提供する。
【0026】
本発明はまた、
(a)容器中の本明細書に記載されているような医薬組成物;及び
(b)疼痛、痒み、尿失禁、過活動膀胱、咳、しゃっくり及び/又は肥満のような、カプサイシン受容体調節に応答に関連する1つ又はそれ以上の疾患の治療に、当該組成物を使用するための使用説明書;
を含有してなる、包装された医薬組成物を提供する。
【0027】
更に他の態様によれば、本発明は中間体を含め、本明細書に開示されている化合物の製造方法を提供する。
本発明のこれら及びその他の態様は、以下の詳細な説明を参照することにより明瞭となるであろう。
【0028】
(発明の詳細な説明)
上で述べたように、本発明は置換5,12−ジアザ−ベンゾアントラセン類縁体を提供する。このような調節剤はインビトロ又はインビボでカプサイシン受容体の活性を調節するために様々な状況下で使用できる。
【0029】
(用語)
化合物は一般に、本明細書には標準の命名法を用いて記載されている。不斉中心を有する化合物については、特定される以外は、全ての光学異性体及びこれらの混合物は範囲内であることを理解すべきである。更に、炭素−炭素2重結合を有する化合物はZ体及びE体を生じ、特定される以外は、全ての異性体が本発明に含まれる。多種の互変異性体の形態で存在する化合物に於いては、表示されている化合物は一つの特定の互変異性体に限定されず、むしろ全ての互変異性体の形態を含むように意図されている。本明細書には、化合物は可変基(例えば、R、Ar、V)を含む一般式を用いて記載されている。そのような式の可変基の各々は、特に定められていない限り、その他の可変基からそれぞれ独立して定義されており、式中に1回以上現れる何れの可変基も、その都度それぞれ独立して定義される。
【0030】
本明細書で用いられる「置換5,12−ジアザ−ベンゾアントラセン類縁体」という用語は、式Iで表される全ての化合物、さらに本明細書で提供されるその他の式の化合物及びそれらの薬学的に許容される塩を包含する。すなわち、核になる環系:
【0031】
【化004】

が、
【化005】

又は1つ又はそれ以上の追加のヘテロ原子を含む(つまり、本明細書で述べられているような置換基で置換されていてもよい、
【化006】

のような環系を含む)化合物が、5,12−ジアザ−ベンゾアントラセン類縁体の定義に具体的に包含される。
【0032】
ある特定の態様に於いては、次のような核になる環系が好ましい。
【0033】
【化007】

【0034】
本明細書で示されている化合物の「薬学的に許容される塩」は、化合物の酸又は塩基の塩形態であり、この塩形態は過度な毒性、刺激、アレルギー反応、又はその他の問題もしくは合併症をもたらさずに、ヒト又は動物の組織に接触させて用いるのに適していると、当該技術分野で一般に認められているものである。このような塩は、アミンのような塩基残基の無機及び有機酸塩を、またカルボン酸のような酸残基のアルカリ又は有機塩を包含する。具体的な薬学的に許容される塩は、これに限定されないが、塩酸、リン酸、臭化水素酸、リンゴ酸、グリコール酸、フマル酸、硫酸、スルファミン酸、スルファニル酸、ギ酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、エタンジスルホン酸、2−ヒドロキシエチルスルホン酸、硝酸、安息香酸、2−アセトキシ安息香酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、ステアリン酸、サリチル酸、グルタミン酸、アスコルビン酸、パモン酸、コハク酸、フマール酸、マレイン酸、プロピオン酸、ヒドロキシマレイン酸、ヨウ化水素酸、フェニル酢酸、酢酸のようなアルカノイル酸、HOOC−(CH−COOH(nは0−4である)等のような酸の塩を包含する。同様に薬学的に許容されるカチオンは、これに限定されないが、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アルミニウム、リチウム及びアンモニウムを包含する。当業者は、本発明で提供される化合物のための更なる薬学的に許容される塩が、「Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed., Mack Publishing Company, Easton, PA, p.1418 (1985)」に記載されているものを包含していることを認識するであろう。
【0035】
一般的に、薬学的に許容される酸又は塩基の塩は、塩基又は酸の部位を含んでいる親化合物からいくつかの慣用の化学的方法により合成することができる。つまり、このような塩は、これらの化合物の遊離の酸又は塩基形態を水、有機溶媒又はこれらの混合物中で、化学量論的な量の適当な塩又は酸と反応させることによって調製でき;一般的に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール又はアセトニトリルのような非水溶媒の使用が好ましい。
【0036】
式Iで表される化合物の各々は、水和物、溶媒和物又は非共有結合錯体の形態とすることができるが、必ずしも必要というわけではない。更に、多種の結晶形及び多形体は、本発明の範囲内である。式Iの化合物のプロドラッグも本明細書で提供される。
「プロドラッグ」は、本明細書で提供される化合物の構造的な要求を完全に充たすものではないが、患者へ投与した後に、インビボで修飾されて、本明細書に示される式I又はその他の式で表される化合物を生成するものである。例えば、プロドラッグは本発明の化合物のアシル化誘導体であってよい。プロドラッグは、哺乳動物に投与した後に開裂してそれぞれ遊離のヒドロキシ、アミン又はメルカプト基を形成する、ヒドロキシ、アミノ又はメルカプト基と任意の基とが結合する化合物を包含している。プロドラッグの例は、これに限定されないが、本発明の化合物中のアルコール及びアミン官能基の酢酸、ギ酸、リン酸及び安息香酸の誘導体を包含する。本発明の化合物のプロドラッグは、化合物中に存在する官能基を、修飾体が開裂して親化合物をなるような方法で、修飾することによって調製することができる。
【0037】
本明細書で用いられる「アルキル」という用語は、直鎖又は分枝鎖の飽和脂肪族炭化水素を示す。アルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、2−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル、3−メチルペンチル、シクロプロピル、シクロプロピルメチル、シクロペンチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びノルボルニルのような、1〜8個の炭素原子(C−Cアルキル)、1〜6個の炭素原子(C−Cアルキル)及び1〜4個の炭素原子(C−Cアルキル)を有する基を包含する。「C−Cアルキル」は、単共有結合又はC−Cアルキル基を示し;「C−Cアルキル」は、単共有結合又はC−Cアルキル基を示し;「C−Cアルキル」は、単共有結合又はC−Cアルキル基を示す。本発明の例では、アルキル基の置換基は具体的に指示されている。例えば、C−Cヒドロキシアルキルは、少なくとも1つの−OH置換基を有するC−Cアルキル基を示す。同様に、「C−Cシアノアルキル」は、少なくとも1つのCN置換基を有するC−Cアルキル基を示す。代表的な分枝シアノアルキル基は−C(CHCNである。「C−Cアミノアルキル」は、−HH基で置換されているC−Cアルキル基である。
【0038】
「アルキレン」は、上記で定義されるような2価のアルキル基を示す。C−Cアルキレンは、単共有結合又は1〜4個の炭素原子を有するアルキレン基であり;そして、C−Cアルキレンは、単共有結合又は1〜3個の炭素原子を有するアルキレン基(C−Cアルキレン)である。
【0039】
「アルケニル」は、少なくとも1つの不飽和の炭素−炭素の二重結合が存在する、直鎖又は分枝鎖のアルケン基を示す。アルケニル基は、エテニル、アリル又はイソプロペニルのような、それぞれ2〜8個、2〜6個又は2〜4個の炭素原子を有する、C−Cアケニル、C−Cアルケニル及びC−Cアルケニル基を包含する。
「アルキニル」は、1つ又はそれ以上の不飽和の炭素−炭素結合を有し、それらの少なくとも1つは三重結合である、直鎖、分枝鎖又は環状のアルキン基を示す。アルキニル基は、それぞれ2〜8個、2〜6個又は2〜4個の炭素原子を有する、C−Cアルキニル、C−Cアルキニル及びC−Cアルキニル基を包含する。
【0040】
「シクロアルキル」は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、アダマンチル、デカヒドロ−ナフタレニル、オクタヒドロ−インデニル、及びシクロヘキセニルのようなこれらの部分飽和変異体のような、全ての環員が炭素である、1つ又はそれ以上の飽和及び/又は部分飽和の環を含有する基である。ある特定のシクロアルキル基は、環が3〜7個の環員原子を有するC−Cシクロアルキルで、。
【0041】
本明細書で用いられる「アルコキシ」は、酸素結合を介して結合している上記のようなアルキル基を意味する。アルコキシ基は、それぞれ1〜6個又は1〜4個の炭素原子を有する、C−Cアルコキシ及びC−Cアルコキシ基を包含する。メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、n−ペントキシ、2−ペントキシ、3−ペントキシ、イソペントキシ、ネオペントキシ、ヘキソキシ、2−ヘキソキシ、3−ヘキソキシ、及び3−メチルペントキシが具体的なアルコキシ基である。同様に、「アルキルチオ」は、硫黄結合を介して結合している上記のアルキル、アルケニル又はアルキニル基を示す。
【0042】
本明細書で用いられる「オキソ」という用語は、ケト(C=O)基を示す。非芳香族炭素原子の置換基であるオキソ基は、−CH−を−C(=O)−に変換することにより生成する。
【0043】
「アルコキシカルボニル」という用語は、カルボニルを介して結合しているアルコキシ基(すなわち、一般構造:−C(=O)−O−アルキルを有する基)を示す。アルコキシカルボニル基は、その基のアルキル部にそれぞれ1〜8個、6個又は4個の炭素原子を有する、C−C、C−C及びC−Cアルコキシカルボニル基を包含する。
【0044】
「アルカノイル」という用語は、直鎖又は分枝鎖状に配列しているアシル基(例えば、−(C=O)−アルキル)を示す。アルカノイル基は、それぞれ2〜8個、2〜6個又は2〜4個の炭素原子を有する、C−Cアルカノイル、C−Cアルカノイル及びC−Cアルカノイル基を包含する。「Cアルカノイル」は−(C=O)−Hを示し、これは(C−Cアルカノイルと共に)「C−Cアルカノイル」という用語によって包含される。エタノイルはCアルカノイルである。
【0045】
本明細書で用いられる「アルカノイルオキシ」は、酸素結合を介して結合しているアルカノイル基(すなわち、一般構造:−O−C(=O)−アルキルを有する基)を示す。アルカノイルオキシ基は、その基のアルキル部分にそれぞれ1〜8個、6個又は4個の炭素原子を有する、C−C、C−C及びC−Cアルカノイルオキシ基を包含する。
【0046】
「アルカノン」は、炭素原子が直鎖又は分枝鎖状にアルキル配列しているケトン基である。「C−Cアルカノン」、「C−Cアルカノン」及び「C−Cアルカノン」は、それぞれ3〜8個、6個又は4個の炭素原子を有するアルカノン基を示す。例を挙げると、Cアルカノン基は、構造:−CH−(C=O)−CHを有する。
【0047】
同様に、「アルキルエーテル」は、直鎖又は分枝鎖状のエーテル置換基を示す。アルキルエーテル基は、それぞれ2〜8個、6個又は4個の炭素原子を有する、C−Cアルキルエーテル、C−Cアルキルエーテル及びC−Cアルキルエーテル基を包含する。例を挙げると、Cアルキルエーテル基は、構造:−CH−O−CHを有する。
【0048】
「アルキルスルホニル」は、式:−(SO)−アルキルで表される基を示し、ここでは硫黄原子が結合点である。アルキルスルホニル基は、それぞれ1〜6個又は1〜4個の炭素原子を有するC−Cアルキルスルホニル及びC−Cアルキルスルホニル基を包含する。メチルスルホニルはアルキルスルホニル基の一具体例である。
【0049】
「アミノスルホニル」は、式:−(SO)−NHで表される基を示し、ここでは硫黄原子が結合点である。「モノ−又はジ−(C−Cアルキル)アミノスルホニル」という用語は、式:−(SO)−N(R)で表される基を示し、ここでは硫黄原子が結合点であり、そして一方のRがC−Cアルキルであり、他のRが水素又は独立して選ばれるC−Cアルキルである。
【0050】
「アルキルアミノ」は、一般構造:−NH−アルキル又は −N(アルキル)(アルキル)を有する2級又は3級アミンを示し、ここにおいて、アルキルの各々は同一でも異なっていてもよい。このような基は、例えば、モノ−及びジ−(C−Cアルキル)アミノ基を包含し、ここにおいて、アルキル基の各々は同一でも異なっていてもよく、そして1〜8個の炭素原子を含み、更にモノ−及びジ−(C−Cアルキル)アミノ基並びにモノ−及びジ−(C−Cアルキル)アミノ基も包含する。
【0051】
「アルキルアミノアルキル」は、アルキレン基を介して結合しているアルキルアミノ基(すなわち、一般構造 −アルキル−NH−アルキル又は−アルキル−N(アルキル)(アルキル)を有する基)を示し、アルキルの各々はそれぞれ独立して選ばれる。このような基は、例えば、モノ−及びジ−(C−Cアルキル)アミノC−Cアルキル、モノ−及びジ−(C−Cアルキル)アミノC−Cアルキル並びにモノ−及びジ−(C−Cアルキル)アミノC−Cアルキルを包含し、ここにおいて、アルキルの各々は同一でも異なっていてもよい。「モノ−又はジ−(C−Cアルキル)アミノC−Cアルキル」は、単共有結合又はC−Cアルキレン基を介して結合しているモノ−若しくはジ−(C−Cアルキル)アミノ基を示す。以下は代表的アルキルアミノアルキル基である。
【0052】
【化008】

【0053】
「アミノカルボニル」という用語は、アミド基(すなわち、−(C=O)NH)を示す。「モノ−又はジ−(C−Cアルキル)アミノカルボニル」は、一方又は両方の水素原子がC−Cアルキルで置換されているアミノカルボニル基である。両方の水素原子がこのように置換されている場合には、このC−Cアルキル基は同一でも異なっていてもよい。
【0054】
「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素を示す。
【0055】
「ハロアルキル」は、1つ又はそれ以上のハロゲン原子で置換されたアルキル基(例えば、「C−Cハロアルキル」基は1〜8個の炭素原子を有し、「C−Cハロアルキル」基は1〜6個の炭素原子を有する)である。ハロアルキル基の例は、これに限定されないが、モノ−、ジ−又はトリ−フルオロメチル;モノ−、ジ−又はトリ−クロロメチル;モノ−、ジ−、トリ−、テトラ−又はペンタ−フルオロエチル;モノ−、ジ−、トリ−、テトラ−又はペンタ−クロロエチル;及び1,2,2,2−テトラフルオロ−1−トリフルオロメチル−エチルを包含する。代表的なハロアルキル基はトリフルオロメチル及びジフルオロメチルである。「ハロアルコキシ」という用語は、酸素結合を介して結合している、上記で定義したハロアルキル基を示す。「C−Cハロアルコキシ」基は、1〜8個の炭素原子を有する
【0056】
2つの文字又は記号の間にない、ダッシュ(「−」)は置換基の結合位置を示すために用いられている。例えば、−CONHは炭素原子を介して結合している。
【0057】
本明細書で用いられる「ヘテロ原子」は酸素、硫黄又は窒素である。
【0058】
「炭素環」又は「炭素環基」は、全てが炭素−炭素結合で形成されている環(本明細書では炭素環として示す)を少なくとも1つ含有しており、複素環を含んでいない。特定する以外は、炭素環基中の炭素環の各々は飽和、部分飽和又は芳香族であってもよい。炭素環は一般に1〜3個の縮合、懸吊又はスピロ環を有し;ある態様における炭素環は1個の環又は2個の縮合環を有している。通常は、環の各々は3〜8個の環員原子を含み(すなわち、C−C);4〜10員の炭素環は合計4〜10員の1又は2個の環を有している。5〜7員の炭素環は、通常5、6又は7個の環員の1個の環を有している。縮合、懸吊又はスピロ環よりなる炭素環は、9〜14個の環員原子を含有している。ある代表的な炭素環は、上記のようなシクロアルキルである。他の炭素環はアリール(すなわち、少なくとも1つの芳香族炭素環を含有している)である。このような炭素環は、例えば、フェニル、ナフチル、フルオレニル、インダニル及び1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフチルを包含する。直接結合又はアルキル基を介して結合するフェニル基は、フェニルC−Cアルキル(例えば、ベンジル、1−フェニル−エチル、1−フェニル−プロピル及び2−フェニル−エチル)と示すことができる。
【0059】
「複素環」又は「複素環基」は、1〜3個の縮合、懸吊又はスピロ環を有し、それらの環の少なくとも1つが複素環(すなわち、1つ又はそれ以上の環員原子がヘテロ原子で、残りの環員原子が炭素原子である)である。一般に、複素環は1、2、3又は4個のヘテロ原子からなり;ある態様によれば、複素環の各々は、環当り1又は2個のヘテロ原子を有する。複素環の各々は、一般に3〜8個の環員原子を含み(ある態様では、4又は5〜7個の環員原子を有する環が列記されている)、そして縮合、懸吊又はスピロ環からなる複素環は、一般に9〜14個の環員原子を含んでいる。ある複素環は環員原子として硫黄を含有してなり;ある態様においては、この硫黄原子はSO又はSOに酸化されている。複素環は、上記で示されたような多種の置換基で置換されていてもよい。特定しない限り、複素環は、ヘテロシクロアルキル基(すなわち、環の各々が飽和又は部分飽和である)又はヘテロアリール基(すなわち、基の少なくとも1つの環が芳香族である)であってもよい。複素環基は一般に、安定な化合物が得られるなら、何れの環又は置換基の原子を介しても結合できる。
【0060】
複素環基は、例えば、アゼパニル、アゾシニル、ベンズイミダゾリル、ベンズイミダゾリニル、ベンズイソチアゾリル、ベンズイソキサゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフラニル、ベンゾキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンズテトラゾリル、クロマニル、クロメニル、シンノリニル、デカヒドロキノリニル、ジヒドロフロ[2,3−b]テトラヒドロフラニル、ジヒドロイソキノリニル、ジヒドロテトラヒドロフラニル、1,4−ジオキサ−8−アザ−スピロ[4.5]デシル、ジチアジニル、フラニル、フラザニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、イミダゾリル、インダゾリル、インドレニル、インドリニル、インドリジニル、インドリル、イソベンゾフラニル、イソクロマニル、イソインダゾリル、イソインドリニル、イソインドリル、イソチアゾリル、イソキサゾリル、イソキノリニル、モルホリニル、ナフチリジニル、オクタヒドロイソキノリニル、オキサジアゾリル、オキサゾリジニル、オキサゾリル、フタラジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピペリジニル、ピペリドニル、プテリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドイミダゾリル、ピリドオキサゾリル、ピリドチアゾリル、ピリジル、ピリミジル、ピロリジニル、ピロリドニル、ピロリニル、ピロリル、キナゾリニル、キノリニル、キノキサリニル、キヌクリジニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラゾリル、チアジアジニル、チアジアゾリル、チアゾリル、チエノチアゾリル、チエノオキサゾリル、チエノイミダゾリル、チエニル、チオフェニル、チオモルホリニル及び硫黄原子が酸化されたこの変異体、トリアジニル、及び前述のような1〜4個の置換基で置換されている前記のものを包含する。
【0061】
「複素環C−Cアルキル」は、直接結合又はC−Cアルキル基を介して結合している複素環基である。(3〜10員の複素環)C−Cアルキルは、直接結合又は1〜8個の炭素原子を有するアルキル基を介して結合している、3〜10員の複素環基である。(5〜7員の複素環)C−Cアルキルは、単共有結合又はC−Cアルキル基を介して結合している、5〜7員の複素環である。
【0062】
ある特定の複素環基は、置換されていてもよい、1個の複素環、又は2個の縮合若しくはスピロ環を含有する、4〜10員又は5〜7員の基である。5〜8員の複素環基は、例えばピペリジニル、ピペラジニル、ピロリジニル、アゼパニル、モルホリノ、チオモルホリノ及び1,1−ジオキソ−チオモルホリン−4−イルを包含する。このような基は、指示されているように置換されていてもよい。代表的な芳香族複素環は、アゾシニル、ピリジル、ピリミジル、イミダゾリル、テトラゾリル及び3,4−ジヒドロ−1H−イソキノリン−2−イルである。
【0063】
本明細書で用いられる「置換基」は、対象の分子中の原子に共有結合している分子の残基を示す。例えば、「環置換基」は、環員である原子(好ましくは炭素又は窒素原子)に共有結合しているハロゲン、アルキル基、ハロアルキル基又は本明細書で検討されているその他の基のような残基であってよい。「置換」という用語は、分子構造中の水素原子を上記の置換基で、指定された原子の原子化が過剰にならないように、かつ置換の結果化学的に安定な化合物(すなわち、単離でき、特定化でき、生物活性を試験することができる化合物)が得られるように、置き換えることを示す。
【0064】
「置換されていてもよい」基は、非置換か、又は水素以外のもので1つ又はそれ以上の可能な位置、具体的には1、2、3、4又は5位を、1つ又はそれ以上の適当な基(これは同一でも異なっていてもよい)で置換されている。置換されていてもよいは、「0〜X個の置換基で置換されている」(ここにおいて、Xは置換可能な最大数である)という語句でも表される。ある置換されていてもよい基は、0〜2、3又は4個のそれぞれ独立して選ばれる置換基で置換されている(すなわち、これらは非置換であるか又は挙げられている置換基の最大数まで置換されている)。
【0065】
「VR1」及び「カプサイシン受容体」という用語は、本明細書ではどちらもバニロイド受容体1型を示す同義語として用いられている。他に特定されない限り、これらの用語はラット及びヒトのVR1受容体の両方(例えば、GenBankの受託番号AF327067、AJ277028及びNM 018727;特定のヒトVR1のcDNA配列表は米国特許第6,482,611号の配列番号1〜3に示されており、そのコードするアミノ酸配列は配列番号4及び5に示されている)を含み、更にその他の種で見出されるこれらの同族体をも含む。
【0066】
「VR1調節剤」(本明細書では「調節剤」とも示される)は、VR1活性化及び/又はVR1が介在するシグナル伝達を調節する化合物である。本明細書で具体的に提供されるVR1調節剤は、式Iの化合物及び式Iの化合物の薬学的に許容される塩である。VR1調節剤は、VR1の作動薬又は拮抗薬であってもよい。調節剤は、VR1におけるK値が1マイクロモル未満、好ましくは100ナノモル、10ナノモル又は1ナノモル未満であれば、「高い親和性」で結合する。VR1におけるK値を測定する代表的な試験は、本明細書の実施例5に提供されている。
【0067】
調節剤は、バニロイドリガンドのVR1との結合及び/又はVR1が介在するシグナル伝達(例えば、実施例6で提供されている代表的な試験を用いて)を検出可能な程阻害するならば、「拮抗薬」と考えられ;一般に、このような拮抗薬はVR1活性化を、実施例6に提供されている試験に於いて、1マイクロモル未満の、好ましくは100ナノモル未満の、より好ましくは10ナノモル又は1ナノモル未満のIC50値で阻害する。VR1拮抗薬は、ニュートラルアンタゴニスト及びインバースアゴニスト(逆作動薬)を包含する。ある態様に於いて、本明細書にはバニロイド以外のカプサイシン受容体拮抗薬も提供されている。
【0068】
VR1の「逆作動薬」は、追加のバニロイドリガンドの非存在下で、VR1の活性をその基礎活性レベル以下に減少させる化合物である。VR1の逆作動薬は、VR1におけるバニロイドリガンドの活性も阻害でき、及び/又はバニロイドリガンドのVR1との結合も阻害できる。化合物のバニロイドリガンドのVR1との結合を阻害する能力は、実施例5の結合試験のような、結合試験で測定できる。VR1の基礎活性、更にVR1拮抗薬の存在に因るVR1活性の減少は、実施例6の試験のような、カルシウム非固定化試験により測定できる。
【0069】
VR1の「ニュートラルアンタゴニスト」とは、VR1におけるバニロイドリガンドの活性を阻害するが、この受容体の基礎活性を有意に変化させない(すなわち、バニロイドリガンドの非存在下で行われる実施例6に記載のカルシウム非固定化試験に於いて、VR1活性が、10%未満、より好ましくは5%未満、更に好ましくは2%未満減少し、最も好ましくは検出可能な活性低下を示さない)化合物である。VR1のニュートラルアンタゴニストはバニロイドリガンドがVR1に結合するのを阻害することができる。
【0070】
本発明の「カプサイシン受容体作動薬」又は「VR1作動薬」は、受容体の活性を受容体の基礎活性より上に上昇させる(すなわち、VR1活性及び/又はVR1が介在するシグナル伝達を増強する)化合物である。カプサイシン受容体作動薬の活性は、実施例6で提供されている代表的な試験を用いて確認できる。一般に、このような作動薬は、実施例6で提供されている試験に於いて、1マイクロモル未満、好ましくは100ナノモル未満、より好ましくは10ナノモル以下のEC50値を有する。ある態様に於いて、本明細書にはバニロイド以外のカプサイシン受容体の作動薬も提供されている。
【0071】
「バニロイド」とは、カプサイシン又は、隣接する環の炭素原子(この炭素原子のうちの1つは、フェニル環に結合している第3の残基が結合している位置とパラ位にある)に結合した2つの酸素原子を有するフェニル環を含有してなるカプサイシン類縁体である。バニロイドは、10μM未満のK値(本明細書に記載されているようにして測定された)でVR1と結合するならば、「バニロイドリガンド」である。バニロイドリガンドの作動薬はカプサイシン、オルバニル(olvanil)、N−アラキドノイル−ドーパミン及びレシニフェラトキシン(resiniferatoxin:RTX)を包含する。バニロイドリガンドの拮抗薬はカプサゼピン及びヨード−レシニフェラトキシンを包含する。
【0072】
「治療有効量」(又は用量)とは、患者に投与することにより、患者に認識できる程の利点(例えば、治療中の疾患を検出可能な程軽減する)をもたらすのに十分な量である。このような軽減は、痛みのような1つ又はそれ以上の症状の緩和を含む、適当な基準により検出可能である。治療有効量又は用量とは一般に、結果として(血液、血漿、血清、脳脊髄液(CSF)、滑液、リンパ液、細胞間質液、涙液又は尿のような)体液中に、インビトロでバニロイドリガンドのVR1との結合(実施例5で提供されている試験を用いての測定)及び/又はVR1が介在するシグナル伝達(実施例6で提供されている試験を用いての測定)を変化させるのに十分な量である、ある濃度の化合物を存在させることである。
【0073】
「患者」とは、本発明の化合物で治療される個人であり、患者には、ヒト、更にペット(例えば、イヌ及びネコ)及び家畜のようなその他の動物も包含する。患者は、カプサイシン受容体調節応答に関連する疾患の1つ又はそれ以上の症状(例えば、疼痛、バニロイドリガンドへの暴露、痒み、尿失禁、過活動膀胱、呼吸器疾患、咳及び/又はしゃっくり)を呈していてもよいし、又はそのような症状を呈していなくてもよい(即ち、治療とは予防的な治療であってもよい)。
【0074】
(置換5,12−ジアザ−ベンゾアントラセン類縁体)
上記のように、本発明は、疼痛(例えば神経性又は末梢神経を介する疼痛);カプサイシンへの暴露;酸、熱、光、催涙ガス、大気汚染(例えば、タバコの煙)、感染性物質(ウィルス、バクテリア及びイーストを含む)、唐辛子スプレー又は関連する薬剤への暴露;喘息又は慢性閉塞性肺疾患のような呼吸器疾患;痒み;尿失禁又は過活動膀胱;咳又はしゃっくり;及び/又は肥満の治療を含む、多岐にわたる状況下で使用できる、置換5,12−ジアザ−ベンゾアントラセン類縁体を提供する。このような化合物は、インビトロ試験(例えば、受容体活性の試験)に於いて、VR1の検出及び局在性のためのプローブとして、並びにリガンド結合及びVR1が介在するシグナル伝達試験における標準としても使用できる。
【0075】
本発明のある特定の化合物は、カプサイシンのVR1との結合を、ナノモル(すなわち、サブマイクロモル)濃度で、好ましくはサブナノモルの濃度で、より好ましくは100ピコモル、20ピコモル、10ピコモル又は5ピコモル未満の濃度で、検出可能な程調節する。このような調節剤は、バニロイドでないことが好ましい。ある好ましい調節剤はVR1拮抗薬であり、実施例6に記載されている試験に於いて検出可能な作動薬活性を有していない。好ましいVR1調節剤は、更に高い選択性でVR1と結合し、ヒトEGF受容体であるチロシンキナーゼの活性を実質的に阻害しない。
【0076】
式Iのある特定の化合物に於けるArは、式:LRで表される基からそれぞれ独立して選ばれる0〜3個の置換基で置換されている、フェニル又は5若しくは6員の芳香族複素環(例えば、ピリジル又はピリミジル)である。
上記のように、Lは、単共有結合、
単共有結合、
【0077】
【化009】

下記のものからそれぞれ独立して選ばれる。
【0078】
ある態様に於いて、Arは結合位置に対してオルト位(すなわち、Arが置換フェニルのときは2位、Arが置換2−ピリジルのときは3位)にて1個の置換基で置換されている。Arの代表的な置換基は、例えばハロゲン(例えば、フルオロ、クロロ)、シアノ、COOH、C−Cアルキル(例えば、メチル)、C−Cハロアルキル(例えば、トリフルオロメチル)、C−Cアルコキシ及びC−Cハロアルコキシを包含する。
式Iに於いて、
【0079】
【化010】

【0080】
で表される基は一般に、5〜7員の炭素環又は複素環と縮合していてもよい6員の芳香族炭素環又は複素環(すなわち、縮合環はAとA、AとA又はAとAを含むことができる)である。このような基は、上記に示すように置換されていてもよい。あるこのような基に於いて、AはCH又はN、好ましくはAはCHである。代表的なこのような基は、例えば、
【0081】
【化011】

【0082】
であり、ここに於けるRは上記のようなものである。
ある態様に於いて、Rは水素、ハロゲン、シアノ、アミノ、COOH、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cハロアルキル、C−Cヒドロキシアルキル、C−Cアルキルエーテル、C−Cアルカノイル、モノ−及びジ−(C−Cアルキル)アミノ、C−Cアルキルスルホニル並びにモノ−及びジ−(C−Cアルキル)アミノスルホニルからそれぞれ独立して選ばれ、更なるこのような態様に於いて、Rは、ハロゲン、シアノ、C−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cアルキルスルホニル、又はモノ−若しくはジ−(C−Cアルキル)アミノスルホニルである。
【0083】
ある特定の化合物に於いて、式Iの可変基Vは、C(=O)、C(H)OH又はOである。
あるR基は、本明細書で式:−R−M−A−Rを用いて記載されている。この式中の各用語は、互いにそれぞれ独立して選ばれることは明瞭であろう。Mは、単共有結合、又は少なくとも1個のヘテロ原子を含む結合残基である。適当なM基は、
【0084】
【化012】

を包含する。
【0085】
ある態様に於いて、Mは、単共有結合、O、OC(=O)、C(=O)O、C(=O)N(R)、N(R)C(=O)又はN(C−Cアルキル)であり、ここにおけるC−CアルキルはRと結合して、Rからそれぞれ独立して選ばれる0〜3個の置換基で置換されている、5〜7員の炭素環又は複素環を形成していてもよい。式:−R−M−A−Rで表される基に於いて、2つの隣接する可変基が結合するならば、2つの可変基は一緒になって単結合を形成することは明瞭であろう。例えば、RがCで、M及びAが共に単結合ならば、Rは−Rである。
【0086】
ある特定の化合物に於ける、式IのRは、
(i)水素若しくはハロゲン;又は
(ii)ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、モノ−及びジ−(C−Cアルキル)アミノ、C−Cアルキル並びにC−Cハロアルキルから、それぞれ独立して選ばれる0〜4個の置換基で置換されている、C−Cアルキル、−(CHNH、−(CHNH(C−Cアルキル)、−(CHN(C−Cアルキル)、−(CH(5〜8員のヘテロシクロアルキル)、−(CHOH、又は−(CHO(C−Cアルキル)である(ここにおいて、nの各々は0、1.2又は3である)。
【0087】
代表的なこのような基は、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、モノ−及びジ−(C−Cアルキル)アミノ、C−Cアルキル並びにC−Cハロアルキルから、それぞれ独立して選ばれる0〜4個の置換基で置換されている、ハロゲン、C−Cアルキル、C−Cアルキルエーテル、モノ−又はジ−(C−Cアルキル)アミノメチル、モルホリニルメチル、ピペラジニルメチル及びピペリジニルメチルを包含する。
式Iのある特定の化合物は、更に式II:
【0088】
【化013】

【0089】
(式中、
Y、Z及びBは、それぞれ独立してCH又はNであり(ある態様に於いて、B及び/又はZはNであり、そしてYはCHである);
は、ハロゲン、シアノ、COOH、C−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cアルコキシ又はC−Cハロアルコキシであり;
及びAのうちの1つはCHであり、そして他のものはCRであり;
は、ハロゲン、シアノ、COOH、C−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cシアノアルキル、C−Cアルキルスルホニル又はモノ−若しくはジ−(C−Cアルキル)アミノスルホニルであり;
Vは、(C=O)、C(H)OH又はOであり;そして
【0090】
は、
(i)水素若しくはハロゲン;又は
(ii)ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、モノ−及びジ−(C−Cアルキル)アミノ、C−Cアルキル並びにC−Cハロアルキルから、それぞれ独立して選ばれる0〜4個の置換基で置換されている、C−Cアルキル、−(CHNH、−(CHNH(C−Cアルキル)、−(CHN(C−Cアルキル)、−(CH(5〜8員のヘテロシクロアルキル)、−(CHOH、又は−(CHO(C−Cアルキル)である(ここにおいて、nの各々は0、1.2又は3である)。)
で表される化学式を満足するか、又はその薬学的に許容される塩である。
【0091】
このようなある特定の化合物に於いて、Rは、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、モノ−及びジ−(C−Cアルキル)アミノ、C−Cアルキル並びにC−Cハロアルキルから、それぞれ独立して選ばれる0〜4個の置換基で置換されている、ハロゲン、C−Cアルキル、C−Cアルキルエーテル、モノ−若しくはジ−(C−Cアルキル)アミノメチル、モルホリニルメチル、ピペラジニルメチル、又はピペリジニルメチルである。更なるこのような化合物に於いて、BはNであり、そしてRは、メチル、トリフルオロメチル、フルオロ、クロロ又はシアノである。
【0092】
式IIのある特定の化合物は、更に式III:
【0093】
【化014】

【0094】
(式中、
B及びZは、N又はCHであり;
は、ハロゲン、シアノ、COOH、C−Cアルキル又はC−Cハロアルキルであり;
3aは、ハロゲン、シアノ、COOH、C−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cシアノアルキル、C−Cアルキルスルホニル、又はモノ若しくはジ−(C−Cアルキル)アミノスルホニルであり;
Vは、C(C=O)、C(H)OH又はOであり;そして
は、上に記載の通りであり、好ましくは、Rは、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、モノ−及びジ−(C−Cアルキル)アミノ、C−Cアルキル並びにC−Cハロアルキルから、それぞれ独立して選ばれる0〜4個の置換基で置換されている、ハロゲン、C−Cアルキル、C−Cアルキルエーテル、モノ−若しくはジ−(C−Cアルキル)アミノメチル、モルホリニルメチル、ピペラジニルメチル又はピペリジニルメチルである。)
で表される化学式を満足するか、又はその薬学的に許容される塩である。
【0095】
本発明の代表的な化合物は、実施例1〜3に具体的に記載されているものを包含するが、これに限定はされない。本明細書に示されている具体的な化合物は代表例に過ぎず、本発明の範囲を限定するように意図されたものではないということは明らかである。更に、上記のように、本発明の全ての化合物は、遊離の塩基として、又は薬学的に許容される塩として存在することができる。
【0096】
ある態様に於いて、本発明で提供される置換5,12−ジアザ−ベンゾアントラセン類縁体は、カルシウム非固定化試験、脊髄後根神経節試験又はインビボ疼痛緩和試験のような、インビトロVR1結合試験及び/又は機能試験を用いて測定すると、VR1活性を検出可能な程度変化させる(調節する)。このような活性のための初期選別として、VR1リガンド結合試験が適用される。本明細書に於ける「VR1リガンド結合試験」とは、実施例5で挙げられているような標準インビトロ受容体結合試験を参照することを意図しており、そして「カルシウム非固定化試験」(本明細書では「シグナル伝達試験」とも言う)は、実施例6に記載されているように実施することができる。つまり、VR1との結合を評価するために、VR1調合液をVR1(例えば、RTXのようなカプサイシン受容体作動薬)と結合する(例えば、125I又はHで)標識された化合物及び標識されていない試験化合物と共に培養して、競合試験を行うことができる。本明細書に示される試験において、使用されるVR1は哺乳動物のVR1が好ましく、より好ましくはヒト又はラットのVR1である。受容体は組み換え技術で発現させたもの又は天然に発現しているものを用いてもよい。VR1調合液は、例えば、ヒトVR1を組み換え技術で発現するHEK293又はCHO細胞からの膜調合液であってよい。バニロイドリガンドがVR1に結合するのを検出可能な程度調節する化合物と培養すると、当該化合物を添加していない場合の結合した標識の量に比べて、VR1調合液と結合する標識の量が減少又は増加する。この様な増減は、本明細書に記載されているように、VR1におけるK値の測定に用いられる。一般には、このような試験に於いてVR1調合液と結合する標識の量を減少させる化合物が好ましい。
【0097】
上記のように、VR1拮抗薬である化合物が、ある態様に於いては好ましい。このような化合物のIC50値は、実施例6で示されているような、標準のインビトロでのVR1が介在するカルシウム非固定化試験を用いて測定できる。つまり、カプサイシン受容体を発現する細胞を目的の化合物及び細胞内カルシウム濃度の指示薬(例えば、Fluo−3又はFura−2のような膜透過性カルシウム感受性染料 [両方とも、例えば、Molecular Probes社(Eugene, OR)から購入可能]で、共にカルシウムイオンと結合すると蛍光シグナルを生成する)と接触させる。このような接触は、溶液中に当該化合物及び指示薬の一方又は両方を含有する緩衝液又は培養液中で、細胞を1回又はそれ以上培養することにより実施することが好ましい。染料が細胞に入るのに十分な時間(例えば、1〜2時間)接触を保持させる。過剰な染料を除去するために細胞を洗浄又はろ過し、次いでバニロイド受容体の作動薬(例えば、カプサイシン、RTX又はオルバニル)と、一般にはEC50値と等しい濃度で接触させて、蛍光応答を測定する。作動薬と接触させた細胞をVR1拮抗薬である化合物と接触させると、蛍光応答は一般に、試験化合物を添加していない作動薬と接触させた細胞と比較して、少なくとも20%、好ましくは少なくとも50%そしてより好ましくは少なくとも80%減少する。本発明のVR1拮抗薬のIC50値は、1マイクロモル未満、100nM未満、10nM未満又は1nM未満が好ましい。
【0098】
その他の態様においては、カプサイシン受容体の作動薬である化合物が好ましい。カプサイシン受容体の作動薬活性は一般に実施例6に記載されているようにして測定できる。細胞をVR1作動薬である化合物1マイクロモルと接触させると、蛍光応答は一般に、細胞を100nMのカプサイシンと接触させて観測される増加の少なくとも30%の量で増加する。本発明のVR1作動薬のEC50値は、1マイクロモル未満、100nM未満又は10nM未満が好ましい。
【0099】
VR1調節活性も同様に、また一方では、実施例9に提供されているような培養脊髄後根神経節試験及び/又は実施例10に提供されているようなインビボ疼痛緩和試験を用いて評価できる。本発明の化合物は好ましくは、本明細書で提供されている1つ又はそれ以上の機能試験でVR1活性について統計的に有意な特異的効果を有している。
【0100】
ある態様に於いては、本発明のVR1調節剤は、EGF受容体チロシンキナーゼ又はニコチン性アセチルコリン受容体のような、その他の細胞表面受容体とのリガンド結合を実質的に調節しない。すなわち、このような調節剤は、ヒト上皮細胞増殖因子(EGF)受容体チロシンキナーゼ又はニコチン性アセチルコリン受容体のような細胞表面受容体の活性を実質的に阻害しない(例えば、このような受容体におけるIC50値又はIC40値は、1マイクロモルより大きいことが好ましく、10マイクロモルより大きいことが、最も好ましい)。好ましくは、調節剤は0.5マイクロモル、1マイクロモル又はより好ましくは10マイクロモルの濃度でEGF受容体の活性又はニコチン性アセチルコリン受容体の活性を検出可能な程阻害しない。細胞表面受容体の活性を測定する試験は、パンベラ社(Panvera: Madison, WI)から入手できる、チロシンキナーゼ試験キットを含め、市販されている。
【0101】
本発明の好ましいVR1調節剤は非鎮静剤である。すなわち、疼痛緩和測定の動物モデル(本明細書の実施例10に示されているモデルのような)において無痛覚を十分にもたらす最小用量の2倍であるVR1調節剤用量は、鎮静動物モデル試験(Fitsgerald et al. (1988) Toxicology 49 (2-3): 433-9 に記載の方法を用いて)において、一時的(すなわち、疼痛緩和持続時間の1/2以下持続する)又は好ましくは、統計的に有意性のない鎮静のみを引き起こす。好ましくは、無痛覚をもたらすのに十分な最小用量の5倍の用量が統計的に有意な鎮静を引き起こさない。より好ましくは、本発明のVR1調節剤は、25mg/kg未満(好ましくは10mg/kg未満)の静脈内用量、又は140mg/kg未満(好ましくは、50mg/kg未満、より好ましくは、30mg/kg未満)の経口用量で鎮静を引き起こさない。
【0102】
必要に応じて、本発明のVR1調節剤は幾つかの薬理学的性質を評価することができ、この性質は、これに限定されないが、経口バイオアベイラビリティー(好ましい化合物は、140mg/kg未満、好ましくは50mg/kg未満、より好ましくは30mg/kg未満、更に好ましくは10mg/kg未満、更により好ましくは1mg/kg未満そして最も好ましくは0.1mg/kg未満の経口用量で、この化合物の治療有効濃度が達成される程度まで経口で体内に吸収され利用され得る)、毒性(好ましいVR1調節剤は、治療有効量を患者に投与したときに非毒性である)、副作用(好ましいVR1調節剤は、化合物の治療有効量を患者に投与したとき、プラセーボと同等の副作用を生ずる)、血清蛋白との結合性並びにインビトロ及びインビボ半減期(好ましいVR1調節剤は、1日4回(Q.I.D.)の投与、好ましくは1日3回(T.I.D.)の投与、より好ましくは1日2回(B.I.D.)の投与、そして最も好ましくは1日1回の投与を容認する程のインビボ半減期を示す)を包含する。
【0103】
更に、上述の1日の総経口投与量が治療効果のある調節をするといった、中枢神経系(CNS)のVR1活性を調節することによる疼痛の治療に用いるVR1調節剤には、血液脳関門の差別化された透過(differential penetration)が望ましいが、一方、末梢神経が介在する疼痛の治療には、VR1調節剤の脳レベルが低い方が好ましい(すなわち、化合物の脳(例えばCSF)レベルは、VR1活性を有意に調節するのに十分ではない用量である)。当該技術分野でよく知られた通常の試験は、これらの性質を評価し、そして特定の使用のための優れた化合物を確認するために用いられる。例えば、バイオアベイラビリティーを予測するために用いられる試験はCaco−2細胞単層を含む、ヒト腸細胞単層間の輸送試験を含む。ヒトにおける化合物の血液脳関門の透過は、化合物を投与(例えば、静脈内投与)した実験動物の脳内レベルから予測できる。血清蛋白結合性はアルブミン結合試験から予測できる。化合物の半減期は、化合物の投与頻度に反比例する。化合物のインビトロ半減期は、本明細書の実施例7で記載されているようなミクロソーム半減期の試験から予測できる。
【0104】
上記のように、本発明の好ましいVR1調節剤は非毒性である。一般に、本明細書で用いられている「非毒性」という用語は、相対的に理解すべきであり、米国食品医薬品局(「FDA」)によって哺乳動物(好ましくはヒト)への投与が承認されたか又は、判定基準を保持している、FDAによって哺乳動物(好ましくはヒト)への投与が承認される可能性のある幾つかの物質を参照することを意図している。更に、非常に好ましい非毒性の化合物は一般的に、以下の判定基準(1)細胞のATP生成を実質的に阻害しない;(2)心臓のQT間隔を有意に延長しない;(3)実質的な肝肥大を引き起こさない;及び(4)肝酵素の実質的な放出を引き起こさない;の1つ又はそれ以上を充たすものである。
【0105】
本発明で用いられている、細胞のATP生成を実質的に阻害しない化合物は、本明細書の実施例8で示されている判定基準を充たしている化合物である。つまり、実施例8で述べられているように100μMのこのような化合物で処理された細胞は、非処理の細胞で検出されたATPレベルの少なくとも50%のATPレベルを示す。更に非常に好ましい態様によると、このような細胞は非処理の細胞で検出されたATPレベルの少なくとも80%のATPレベルを示す。
【0106】
心臓のQT間隔を有意に延長しない化合物とは、当該化合物のEC50値又はIC50値に等しい血清濃度を生ずる用量を投与したモルモット、ミニブタ又はイヌにおいて、心臓のQT間隔を統計的有意に延長しない(心電図記録で測定して)化合物のことである。ある好ましい態様に於いては、0.01、0.05、0.1、0.5、1、5、10、40又は50mg/kgの注射又は経口用量は、心臓のQT間隔の統計的に有意な延長をもたらさない。「統計学的に有意に」とは、スチューデントT検定のような統計的有意性の標準パラメーター試験を用いて測定した、対照との差異で表され、有意性のレベルがp<0.1又はそれ以上、より好ましくはp<0.05となることを意味する。
【0107】
実験用齧歯動物(例えば、マウス又はラット)に、当該化合物のEC50値又はIC50値に等しい血清濃度を生ずる用量を、5〜10日間毎日投与する治療を施しても、対応する対照と比較した場合の、肝臓の対体重比の増加が100%未満であれば、化合物は、実質的な肝肥大をもたらさない。更に極めて好ましい態様に於いては、このような用量は、対応する対照と比較して75%を越える又は50%を越える肝肥大をもたらさない。非齧歯動物(例えば、イヌ)を用いると、このような用量は、対応する治療を施していない対照に対して50%を超える、好ましくは25%を超える、そしてより好ましくは10%を超える肝臓の対体重比の増加をもたらさない。このような試験における好ましい用量は、0.01、0.05、0.1、0.5、1、5、10、40又は50mg/kgの注射又は経口投与を包含する。
【0108】
同様に、実験用齧歯動物に、当該化合物のEC50値又はIC50値に等しい血清濃度を生じる最小用量の2倍量を投与しても、ALT、LDH又はASTの血清レベルを、偽治療を施した対照の100%を越えて上昇させないならば、化合物は肝酵素の実質的な放出を促進しない。更に極めて好ましい態様に於いては、このような用量は、これらの血清レベルを対応する対照と較べて75%を越えて又は50%を越えて上昇させない。また、インビトロ肝細胞試験において、当該化合物のEC50値又はIC50値に等しい濃度(インビトロで肝細胞と接触させて培養する培養液又は溶液中の濃度)が、培養液中にこのような肝酵素を、対応する偽治療を施した対照細胞の培養液中で見られる基礎レベルを超えて、検出可能な程の放出を引き起こさないなら、この化合物は肝酵素の実質的な放出を促進しない。更に極めて好ましい態様に於いては、このような化合物の濃度が、当該化合物のEC50値又はIC50値の5倍及び好ましくは10倍であっても、基礎レベル以上に、このような肝酵素を培養液に検出可能な程放出しない
【0109】
他の態様に於いて、ある好ましい化合物は、当該化合物のEC50値又はIC50値と等しい濃度で、CYP1A2活性、CYP2A6活性、CYP2C9活性、CYP2C19活性、CYP2D6活性、CYP2E1活性又はCYP3A4活性のような、ミクロソームチトクロームP450酵素活性を阻害又は誘発しない。
【0110】
ある好ましい化合物は、当該化合物のEC50値又はIC50値と等しい濃度では、(例えば、マウス赤血球前駆細胞小核試験、エームス小核試験、らせん小核試験などを用いて測定されるように)染色体異常を誘発しない。他の態様に於いて、ある好ましいVR1調節剤は、このような濃度では(例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞において)姉妹染色分体交換を誘発しない。
【0111】
以下で更に詳細に考察されるように、本発明のVR1調節剤は、検出を目的とする同位体標識又は放射性標識が可能である。例えば、化合物は、一般に自然界で見出される原子量又は質量数とは異なる原子量又は質量数を有する同じ元素の原子で置き換えられえた1つ又はそれ以上の原子を有することができる。本発明の化合物に存在させることができる同位体の例は、H、H、11C、13C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18F及び36Clのような、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素及び塩素の同位体を包含する。更に、重水素(すなわち、H)のような重同位体は、例えばインビボ半減期の増加又は必要用量の減少のような代謝安定性がより大きいことに起因する治療効果をもたらすので、特定の状況においては好ましい。
【0112】
(置換5,12−ジアザ−ベンゾアントラセン類縁体の製造)
置換5,12−ジアザ−ベンゾアントラセン類縁体は一般的に、標準的な合成法を用いて製造できる。出発物質は、シグマ−アルドリッチ社[Sigma-Aldrich Corp. (St. Louis, MO)]のような供給業者から購入できるか、又は市販の前駆物質から確立された方法(PCT国際出願公開第WO03/062209号公報、37〜51頁、65〜82頁、106〜122頁及び171〜187頁に記載のような方法;これにより4−アミノキナゾリン類縁体を製造する合成方法を教示する参照として本明細書に組み入れられる)で合成することできる。例として、以下のスキームの何れかに示されているのと同様な合成経路は、有機化学合成の技術において知られている合成方法、又は当業者によって評価されているこれらの変法、と共に使用することができる。下記スキーム中の各可変基は、本明細書に於ける化合物の記載に一致した基を示す。
【0113】
以下のスキーム及び本明細書中の他の箇所で使用される特定の定義は下記の通りである。
CDCl 重水素クロロホルム
δ ケミカルシフト
DMA N,N−ジメチルアセトアミド
EDCI 1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−
エチルカルボジイミド塩酸
EtOAc 酢酸エチル
EtOH エタノール
H NMR プロトン核磁気共鳴
HPLC 高圧液体クロマトグラフィー
Hz ヘルツ
i−Pr イソプロピル
i−PrOH イソプロパノール
KHMDS カリウム ビス(トリメチルシリル)アミド
LCMS 液体クロマトグラフィー/質量分析
MS 質量分析
Me メチル
MeOH メタノール
(M+1) 質量+1
Ph フェニル
PhMe トルエン
PPA ポリリン酸
Pd(PPh テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)
KOt−Bu カリウム tert−ブトキシド
THF テトラヒドロフラン
TLC 薄層クロマトグラフィー
【0114】
【化015】

【0115】
【化016】

【0116】
【化017】

【0117】
【化018】

【0118】
ある態様に於いて、化合物は1つ又はそれ以上の不斉炭素原子を含有することができるので、この化合物は異なった立体異性形態で存在することができる。このような形態は、例えば、ラセミ体又は光学活性体の形態になる。上で述べたように、全ての立体異性体は本発明の範囲に入る。それにもかかわらず、一つの鏡像異性体(すなわち、光学活性体)を得ることが望ましい。一つの鏡像異性体を製造する標準的な方法は、不斉合成及びラセミ分割方法を包含する。ラセミ分割は、例えば、分割剤の存在下での再結晶、又は例えばキラルHPLCカラムを用いるクロマトグラフィーのような通常の方法によって達成される。
【0119】
化合物は、放射性同位体である原子を少なくとも1つ含有する前駆物質を用いる合成を行うことにより放射性標識できる。放射性同位体の各々は、炭素(例えば、14C)、水素(例えば、H)、硫黄(例えば、35S)、又はヨウ素(例えば、125I)が好ましい。トリチウム標識化合物も、基質として当該化合物を用いて、トリチウム化酢酸中での白金触媒交換、トリチウム化トリフルオロ酢酸中での酸触媒交換、又はトリチウムガスとの不均一系触媒交換、を介する触媒作用によって調製することができる。更に、ある特定の前駆体は、必要に応じて、トリチウムガスとトリチウム−ハロゲン交換、不飽和結合のトリチウムガス還元、又はナトリウムボロトリタイドを用いる還元に付すことができる。放射性標識化合物は、プローブとして用いる放射性標識化合物の受注合成を専門とする放射性同位体供給業者によって容易に調製することができる。
【0120】
(医薬組成物)
本発明は、1つ又はそれ以上の本発明の化合物を少なくとも1つの生理的に許容される担体又は賦形剤と共に含有してなる医薬組成物も提供する。医薬組成物は、例えば、水、緩衝液(例えば、中性に緩衝された食塩水、又はリン酸緩衝食塩水)、エタノール、鉱物油、植物油、ジメチルスルホキシド、糖質(例えば、ブドウ糖、マンノース、蔗糖又はデキストラン)、マンニトール、タンパク質、アジュバント、ポリペプチド若しくはグリシンのようなアミノ酸、抗酸化剤、EDTA若しくはグルタチオンのようなキレート剤及び/又は保存剤を、1つ又はそれ以上含有していてもよい。更に、その他の有効成分を本発明の医薬組成物に含有させてもよい(が、必ずしも必要ではない)。
【0121】
医薬組成物は、例えば、局所、経口、経鼻、直腸内又は非経口投与を含む、適切な投与方法のために製剤化できる。本明細書で用いられる非経口という用語は、皮下、皮内、血管内(例えば、静脈内)、筋肉内、脊髄、頭蓋内、鞘内及び腹腔内注射を、また同様な注射又は注入法も包含する。ある態様に於いては、経口使用に適する組成物が好ましい。このような組成物は、例えば、錠剤、トローチ、ロゼンジ(薬用キャンディー)、水性若しくは油性懸濁液、分散性の粉末若しくは顆粒、乳剤、硬若しくは軟カプセル、又はシロップ若しくはエリキシルを包含する。更なる他の態様に於いては、本発明の組成物は凍結乾燥物として製剤化できる。局所投与用の製剤は、ある状況(例えば、火傷や痒みのような皮膚の症状を治療する場合)では好ましい。膀胱に直接投与する製剤 [膀胱内投与(intravesicular administratin)] は尿失禁及び過活動膀胱の治療に好ましい。
【0122】
経口使用のための組成物は更に、魅力的かつ味の良い製剤を提供するために、甘味剤、着香剤、着色剤及び/又は保存剤のような成分を1つ又はそれ以上含有していても良い。錠剤は有効成分を、錠剤の製造に適当な生理的に許容される賦形剤と共に含有している。このような賦形剤は、例えば、不活性希釈剤(例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、乳酸、リン酸カルシウム又はリン酸ナトリウム)、顆粒化及び崩壊剤(例えば、トウモロコシ澱粉又はアルギン酸)、結合剤(例えば、澱粉、ゼラチン又はアラビアゴム)及び滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又はタルク)を包含する。錠剤は非−被覆であるか又は胃腸管における崩壊及び吸収を遅らせて長期間にわたる除放作用を示すようにする公知の技術によって被覆することができる。例えば、モノステアリン酸グリセリン又はジステアリン酸グリセリンのような時間遅延物質を使用できる。
【0123】
経口使用のための製剤は、有効成分を不活性固体希釈剤(例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム又はカオリン)と混合した硬カプセル、又は有効成分を水若しくは油性媒体(例えば、ピーナッツオイル、流動パラフィン又はオリーブオイル)と混合した軟ゼラチンカプセルとして提供されてもよい。
【0124】
水性懸濁剤は、水性懸濁剤を製造するのに適している賦形剤と共に活性物質を含有している。このような賦形剤は、懸濁化剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム及びアラビアゴム);及び分散又は湿潤剤(例えば、レクチンのような自然界にあるリン脂質、ステアリン酸ポリオキシエチレンのようなアルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物、ヘプタデカエチレンオキシセタノールのようなエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトールのようなエチレンオキシドと脂肪酸及びヘキシトールから誘導される部分エステルとの縮合生成物、又はモノオレイン酸ポリエチレンソルビタンのようなエチレンオキシドと脂肪酸及びヘキシトール無水物から誘導される部分エステルとの縮合生成物)を包含する。水性懸濁剤は、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸エチル又はn−プロピルのような1つ又はそれ以上の保存剤、1つ又はそれ以上の着色剤、1つ又はそれ以上の着香剤、及び蔗糖又はサッカリンのような1つ又はそれ以上の甘味剤を含有していてもよい。
【0125】
油性懸濁剤は、有効成分を植物油(例えば、ラッカセイ油、オリーブオイル、ごま油又はココナッツ油)又は流動パラフィンのよう鉱物油に懸濁させることによって製剤化できる。油性懸濁剤は蜜蝋、固形パラフィン又はセチルアルコールのような増粘剤を含有することができる。味の良い経口用製剤を提供するために、上記のような甘味剤及び/又は着香剤を添加することができる。このような懸濁剤は、アスコルビン酸のような抗酸化剤の添加により保存されてもよい。
【0126】
水を加えて水性懸濁剤を調製するのに適当な分散性の粉末又は顆粒は、分散剤又は湿潤剤、懸濁化剤、及び1つ又はそれ以上の保存剤と混合して、有効成分を提供する。適当な分散又は湿潤剤及び懸濁化剤は、既に上に例示されているが、甘味、着香及び着色剤のような追加の賦形剤も存在させることができる。
【0127】
医薬組成物は、水中油型乳剤として製剤化してもよい。油層は植物油(例えば、オリーブオイル又はラッカセイ油)、鉱物油(例えば、流動パラフィン)又はこれらの混合物であってよい。適当な乳化剤は、自然界に存在するガム(例えば、アラビアゴム又はトラガカントゴム)、自然界に存在するリン脂質(例えば、大豆レシチン、及び脂肪酸及びヘキシトールから誘導されるエステル又は部分エステル)、酸無水物(例えば、モノオレイン酸ソルビタン)及び脂肪酸とヘキシトールから誘導される部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物(例えば、モノオレイン酸ポリエチレンソルビタン)を包含する。乳剤は1つ又はそれ以上の甘味剤及び/又は着香剤を含有していてもよい。
【0128】
シロップ及びエリキシルは、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール又は蔗糖のような甘味剤と製剤化できる。このような製剤は、1つ又はそれ以上の粘滑剤、保存剤、着香剤及び/又は着色剤を含有していてもよい。
【0129】
局所投与用の製剤は、一般的に、活性剤を加えた局所用賦形剤を、追加の任意成分と共に又はこれなしで含有している。適当な局所用賦形剤及び追加の成分は、当該技術分野ではよく知られており、賦形剤の選択は、特殊な物理的形態及び送達方法によって決まるものと考えられる。局所用賦形剤は、水;アルコール(例えばエタノール又はイソプロピルアルコール)又はグリセリンのような有機溶媒;グリコール(例えば、ブチレン、イソプレン又はプロピレングリコール);脂肪族アルコール(例えば、ラノリン);水と有機溶媒との混合物及びアルコールのような有機溶媒とグリセリンの混合物;脂肪酸、アシルグリセロール(鉱物油のような油、及び天然又は合成の脂肪を含む)、ホスホグリセリド、スフィンゴリピド及びワックスのような脂肪をベースとする物質;コラーゲン及びゼラチンのようなタンパク質をベースとする物質;シリコンをベースとする物質(不揮発性と揮発性の両方);及びマイクロスポンジ及び高分子物質のような炭化水素をベースとする物質を包含する。組成物は、更に用いる製剤の安定性又は効果を高めるのに適した、1つ又はそれ以上の成分を含有していてもよく、この成分は安定化剤、懸濁化剤、乳化剤、粘度調節剤、ゲル化剤、保存剤、抗酸化剤、皮膚浸透増強剤、保湿剤及び徐放物質のようなものである。このような成分の例は、「Martindale- The Extra Pharmacopoeia (Pharmaceutical Press, London 1993)」及び「Martin (ed.), Remington's Pharamceutical Sciences」に記載されている。製剤は、ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン−マイクロカプセルのようなマイクロカプセル、リポソーム、アルブミン小球体、マイクロエマルジョン、ナノ粒子又はナノカプセルを含有していてもよい。
【0130】
局所製剤は例えば、固体、ペースト、クリーム、フォーム(泡)、ローション、ゲル、パウダー、水性液及び乳剤を包含する多種の物理的な形態に製剤化することができる。このような薬学的に許容される形態の物理的な外観及び粘度は、この製剤に存在する乳化剤及び粘度調節剤の有無及び量によって規定できる。固体製剤は、硬質で非注入性であって、一般に棒状若しくはスティック状、又は特定な形態で製剤化され;固定製剤は不透明又は透明で、溶媒、乳化剤、保湿剤、皮膚軟化剤、香料、染料/着色剤、保存剤及び最終物の効能を増加若しくは増強させる、その他の有効成分を任意に含有していてもよい。クリーム及びローションは互いに同様なものであることが多く、主にこれらの粘度が異なる。ローションとクリームの両者は、不透明、透明又は透明感があり、乳化剤、溶媒、及び粘度調節剤を、更に保湿剤、皮膚軟化剤、香料、染料/着色剤、保存剤及び最終物の効能を増加又は増強させる、その他の有効成分をも含むことが多い。ゲルは高粘度から低粘度の範囲の粘度で調製できる。これらの製剤は、ローション及びクリームと同様に、溶媒、乳化剤、保湿剤、皮膚軟化剤、香料、染料/着色剤、保存剤及び最終物の効能を増加又は増強させる、その他の有効成分を含有していてもよい。液剤は、クリーム、ローション、又はゲルよりも薄く、乳化剤を含まないことが多い。液状の局所用製品は、溶媒、乳化剤、保湿剤、皮膚軟化剤、香料、染料/着色剤、保存剤及び最終物の効能を増加又は増強させる、その他の有効成分を含有していることが多い。
【0131】
局所製剤中で使用するのに適している乳化剤は、イオン性乳化剤、セテアリルアルコール、ポリオキシエチレンオレイルエーテルのような非イオン性乳化剤、ステアリン酸PEG−40、セテアレス−12、セテアレス−20、セテアレス−30、セテアレスアルコール、ステアリン酸PEG−100及びステアリン酸グリセリルを包含するが、これに限定されない。
適当な粘度調節剤は、これに限定されないが、保護コロイド、又はヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、マグネシウムアルミニウムシリケート、シリカ、微結晶性ワックス、蜜蝋、パラフィン、及びパルミチン酸セチルのような非イオン性のゴムを包含する。ゲル組成物は、キトサン、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリクオタニウム(polyquaterniums)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボマー(carbomer)又はグリチルリチン酸アンモニウム(ammoniated glycyrrhizinate)のようなゲル化剤の添加によって形成できる。
適当な界面活性剤は、これに限定されないが、非イオン、両性、イオン性及び陰イオン性界面活性剤を包含する。例えば、ジメチコンコポリオール(dimethicone copolyol)、ポリソルベート(polysorbate)20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、ラウラミドDEA,コカミドDEA、及びコカミドMEA、オレイルベタイン、コカミドプロピルホスファチジルPG−ジモニウムクロライド(PG-dimonium chloride)、及びラウリル硫酸アンモニウムの1つ又はそれ以上を局所製剤中に用いることができる。
好ましい保存剤は、これに限定されないが、メチルパラベン、プロピルパラベン、ソルビン酸、安息香酸及びホルムアルデヒドのような抗菌薬を、また物理的安定剤、及びビタミンE、アスコルビン酸ナトリウム/アスコルビン酸及び没食子酸プロピルのような抗酸化剤をも包含する。
適当な保湿剤は、これに限定されないが、乳酸及びその他のヒドロキシ酸及びこれの塩、グリセリン、プロピレングリコール、及びブチレングリコールを包含する。
適当な皮膚軟化剤は、ラノリンアルコール、ラノリン、ラノリン誘導体、コレステロール、ワセリン、ネオペンタン酸イソステアリル及び鉱油を包含する。
適当な香料及び着色剤は、これに限定されないが、FD&C Red No.40及びFD&C Yellow No.5を包含する。
局所製剤に包含できるその他の好ましい更なる成分は、これに限定されないが、研磨剤、吸湿剤、固結防止剤、消泡剤、帯電防止剤、収れん剤(例えば、ヘーゼル、アルコール及びカモミールエキスのようなハーブエキス)、結合剤/賦形剤、緩衝剤、キレート化剤、フィルム形成剤、品質改良剤、高圧ガス、不透明化剤、pH調節剤及び保護剤を包含する。
【0132】
ゲルの製剤化のために適した局所賦形剤の例は:ヒドロキシプロピルセルロース(2.1%);70/30のイソプロピルアルコール/水(90.9%);プロピレングリコール(5.1%);及びポリソルベート80(1.9%)である。フォーム(泡)として製剤化するための適当な局所賦形剤の例は:セチルアルコール(1.1%);ステアリルアルコール(0.5%); クオタニウム52(Quaternium 52)(1.0%);プロピレングリコール(2.0%);エタノール95PGF3(61.05%)、脱イオン水(30.05%);P75炭化水素高圧ガス(4.30%)である。全てのパーセントは重量によるものである。
【0133】
局所用組成物の局所送達方法は、指を使用する塗布;布、ティッシュー、綿棒、スティック又はブラシのような物理的な塗布具を用いる塗布;スプレー(霧、エアゾール又は泡のスプレーを包含する);点滴投与、散布;浸漬;及びすすぎ;を包含する。放出制御賦形剤も使用できる。
【0134】
医薬組成物は、無菌注射用の水溶液又は油性懸濁液として調製することができる。調節剤は、使用する賦形剤及び濃度に応じて、賦形剤に懸濁させても溶解させてもよい。このような組成物は、上記のように適した分散、湿潤剤及び/又は懸濁剤を用いて、公知の技術に従って製剤化することができる。許容される賦形剤及び溶媒のうち使用し得るものは、水、1,3−ブタンジオール、リンゲル液及び生理食塩液である。更に、無菌の不揮発性油を溶媒又は懸濁媒体として使用できる。この目的のために、合成モノ−又はジグリセライドを含む、幾つかの無菌の不揮発性油を使用することができる。更に、オレイン酸のような脂肪酸は、注射用組成物の調製において使用できると考えられ、局所麻酔剤、保存剤及び/又は緩衝剤のようなアジュバントを賦形剤に溶解することができる。
【0135】
調節剤は、坐薬(例えば、直腸内投与用)としても製剤化できる。このような組成物は薬剤を、常温では固体であるが、直腸の温度では液体であるので直腸内で溶けて薬剤を放出する、適当な非刺激性の賦形剤と混合することによって調製できる。適当な賦形剤は、例えば、ココアバター又はポリエチレグリコールを包含する。
【0136】
医薬組成物は、徐放製剤(すなわち、投与後に調節剤の徐放をもたらすカプセルのような製剤)として製剤化することができる。このような製剤は一般に、公知の技術で調製され、例えば、経口、直腸若しくは皮下移植によって、又は目的の標的部位に移植することによって投与される。このような製剤に用いられる担体は生体適合性があり、生体分解性でもあるようなもので;好ましくは、この製剤は比較的一定のレベルで調節剤を放出する。徐放製剤中に含有する調節剤の量は、例えば、移植部位、放出の速度及び期待される時間、並びに治療又は予防する疾患の性質によって決まる。
【0137】
更に又は上記投与方法と共に、調節剤は、(例えば、(イヌ又はネコのような)ペット及び家畜を含むヒト以外の動物への投与用に)簡便に食物又は飲料水に添加することができる。動物用の餌及び飲料水の組成物は、動物が食事と共に組成物の適当量を摂取できるように処方することができる。組成物を餌又は飲料水に添加するための、プレミックスとしても簡便に提供できる。
【0138】
化合物は一般に治療有効量、好ましくは治療有効量、を投与する。好ましい全身用量は1日に体重1kg当り50mg未満(例えば、1日に体重1kg当り約0.001mgから約50mgの範囲)であり、経口では一般に、静脈内投与の約5〜20倍高い(例えば、1日に体重1kg当り約0.01mgから約40mgの範囲)。
【0139】
単回投与単位を調製するために、担体物質と混合する有効成分の量は、例えば、治療する患者及び特定の投与方法によって変わる。投与単位は一般に、約10μgから約500mgの有効成分を含有している。最適投与量は、日常の検査、及びこの分野でよく知られている手順によって決めることができる。
医薬組成物は、VR1調節の応答に関連する疾患の治療(例えば、バニロイドリガンド又はその他の刺激物への暴露、疼痛、痒み、肥満又は尿失禁の治療)用に包装することができる。包装された医薬組成物とは、本明細書に記載されている少なくとも1つのVR1調節剤の治療有効量を入れた容器、及び容器内の組成物はVR1調節の応答に関連する疾患に罹っている患者を治療するために使用するものであることを示す使用説明書(例えば、ラベル)を包含するものである。
【0140】
(使用方法)
本発明のVR1調節剤は、インビトロ及びインビボの両方での様々な状況下で、カプサイシン受容体の活性及び/又は活性化を変化させるために使用できる。ある態様に於いては、VR1拮抗薬はインビトロ又はインビボにおいて、(カプサイシン及び/又はRTXのような)バニロイドリガンド作動薬がカプサイシン受容体に結合するのを、阻害するために用いることができる。一般に、このような方法は、水溶液中でバニロイドリガンドの存在下に、このリガンドがカプサイシン受容体と結合するその他の好ましい条件下に、本発明の1つ又はそれ以上のVR1調節剤を、カプサイシン受容体に接触させる工程を含有してなる。VR1調節剤は一般に、インビトロでバニロイドリガンドのVR1との結合(実施例5で提供される試験を用いて)及び/又はVR1が介在するシグナル伝達(実施例6で提供される試験を用いて)を、変化させるのに十分な濃度で存在している。カプサイシン受容体は、溶液若しくは懸濁液中に(例えば、単離した膜又は細胞の調合液中)、又は培養された若しくは単離された細胞中に存在する。ある態様に於いて、カプサイシン受容体は患者の神経細胞に発現し、当該水溶液は体液である。好ましくは、1つ又はそれ以上のVR1調節剤は、このVR1調節剤が動物の少なくとも1つの体液中に、1マイクロモル以下、好ましくは500ナノモル以下、更に好ましくは100ナノモル以下、50ナノモル以下、20ナノモル以下、又は10ナノモル以下の治療有効濃度で存在する量で、動物に投与される。例えば、このような化合物は、20mg/体重kg未満、好ましくは5mg/体重kg、ある場合では、1mg/体重kg未満の投与が可能である。
【0141】
細胞カプサイシン受容体のシグナル伝達活性(すなわち、カルシウム伝導性)を調節する、好ましくは低減する方法も本発明で提供される。このような調節は、カプサイシン受容体を(インビトロ又はインビボのどちらかで)、本発明の1つ又はそれ以上のVR1調節剤と、調節剤が受容体と結合するのに適当な条件下で、接触させることによって達成することができる。VR1調節剤は一般に、本明細書で記載されるようなインビトロでバニロイドリガンドのVR1との結合及び/又はVR1が介在するシグナル伝達を、変化させるのに十分な濃度で存在する。この受容体は、溶液又は懸濁液中に、培養又は単離した細胞の調合液中に、又は患者の細胞内に存在する。例えば、この細胞は動物のインビボで接触している神経細胞であってもよい。また、この細胞は、動物のインビボで接触している、膀胱上皮細胞(尿路上皮細胞)又は気道上皮細胞のような、上皮細胞であってもよい。シグナル伝達活性の調節は、カルシウムイオンの伝導性(カルシウム非固定化又は流動化とも言える)を検出することによって評価することができる。シグナル伝達活性の調節は、また本発明の1つ又はそれ以上のVR1調節剤で治療されている患者の症状(例えば、疼痛、灼熱感、気管支収縮、炎症、咳、しゃっくり、痒み、尿失禁又は過活動膀胱)の変化を検出することによっても評価することができる。
【0142】
本発明のVR1調節剤は、患者(例えば、ヒト)に経口で又は局所に投与され、VR1シグナル伝達活性を調節している間、動物の少なくとも1つの体液中に存在させることが好ましい。このような方法に用いられる好ましいVR1調節剤は、VR1シグナル伝達活性を、インビトロでは1ナノモル以下の、好ましくは100ピコモル以下の、より好ましくは20ピコモル以下の濃度で、インビボでは血液のような体液中で1マイクロモル以下の、500ナノモル以下の又は100ナノモル以下の濃度で、調節する。
【0143】
本発明は更に、VR1調節の応答に関連する疾患を治療する方法を提供する。本発明の文脈においては、「治療」という用語は、予防維持療法及び対症療法の両方、このどちらかは予防(すなわち、症状の発現前に、阻止し、遅らせ、症状の重症度を減少させるために)又は治療(すなわち、症状の発現後に、症状の重症度及び/又は期間を減少させるために)であるが、を含んでいる。局所的に存在するバニロイドリガンドの量に関係なく、カプサイシン受容体の不適切な活性によって特徴付けられるものであり、且つ/又はカプサイシン受容体活性の調節がこれらの疾患又は症状の緩和をもたらすものであれば、疾患は「VR1調節に応答性である」と言える。このような疾患とは例えば、以下で更に詳細に説明されるように、VR1を活性化する刺激への暴露からくる症状、疼痛、喘息及び慢性閉塞性肺疾患のような呼吸器疾患、痒み、尿失禁、過活動膀胱、咳、しゃっくり、及び肥満を包含する。これらの疾患は、当該技術分野で確立されている評価基準を用いて診断及びモニターすることができる。上記の用量で治療される患者は、ヒト、ペット及び家畜を含む。
【0144】
治療する上での投薬計画は、使用する化合物、及び治療すべき特定の疾患に応じて変わるが、殆どの病気の治療には、1日4回以下の投与が望ましい。一般に、1日2回の投与が更に望ましく、1日1回が特に望ましい。急性の疼痛治療には、直ちに有効濃度に到達することが可能な単回投与が望ましい。しかし、それぞれ個別の患者に於ける投与量レベル及び投薬計画は、使用される特定の化合物の活性、年齢、体重、健康状況、性別、治療食、投与期間、投与経路、そして排出速度、薬剤の組合せ及び治療中の特定の病気の重症度を含む、種々の要因によって異なるものであることは理解されたい。一般に、効果的な治療を提供できる最少の投与量が望ましい。患者の治療効果は、通常、疾患の治療又は予防される疾患に適した、医療又は獣医学上の判断基準を用いて観察(モニター)される。
【0145】
カプサイシン受容体を活性化する刺激への暴露による症状を呈している患者には、熱、光、催涙ガス又は酸による火傷を負った者、及び彼らの粘膜がカプサイシン(例えば、唐辛子又は唐辛子スプレーから)又は酸、催涙ガス、感染性物質若しくは空気汚染のような関連刺激に(例えば、摂食、吸入又は目からの接触を介して)曝されている者が含まれる。結果として生じる症状(本発明のVR1調節剤、特に拮抗薬を用いて治療される)には例えば、疼痛、気管支収縮及び炎症が含まれる。
【0146】
本発明のVR1調節剤を用いて治療できる疼痛は、慢性又は急性のものであり、末梢神経が介在する疼痛(特に、神経性疼痛)を含むが、これらに限定されるものではない。本発明の化合物は、例えば、乳房切除後疼痛症候群、断端痛、幻肢痛、口腔内神経性疼痛、歯痛、義歯痛、ヘルペス後神経痛、糖尿病性神経障害、反射性交感神経性ジストトロフィー、三叉神経痛、変形性関節症、関節リウマチ、線維筋痛、ギラン−バーレ症候群、知覚異常性大腿神経痛、口内焼灼感症候群及び/又は両側末梢神経障害の治療に用いることができる。更なる神経障害性疼痛は、灼熱痛(反射性交感神経性ジストロフィーRSD、末梢神経損傷に続発する)、神経炎(例えば、坐骨神経炎、末梢神経炎、多発性神経炎、視神経炎、発熱後神経炎、移動性神経炎、分節性神経炎及びゴンボール神経炎(Gombault's neuritis)を含む)、ニューロン炎、神経痛(例えば、上で述べたもの、 頸腕神経痛、頭蓋神経痛、膝神経痛、舌咽神経痛、群発頭痛、特発性神経痛、肋間神経痛、乳房神経痛、顎関節神経痛、モートン神経痛(Morton's neuralgia)、鼻毛様体神経痛、後頭神経痛、紅神経痛、スラダー神経痛(Sluder's neuralgia)、スプレノパラチン(splenopalatine)神経痛、上部眼窩点神経痛及びヴィディウス神経痛)、手術関連疼痛、筋骨格痛、エイズ関連神経性疼痛、MS関連神経性疼痛、及び脊髄損傷に関連する疼痛を包含する。膿瘻、クラスター(すなわち、群発頭痛)のような末梢神経活性及びある種の緊張性頭痛を含む頭痛及び片頭痛を包含する頭痛も、本明細書に記載されているように治療することができる。例えば、片頭痛は、患者が片頭痛の前兆を感じたら直ちに本発明の化合物を投与することによって阻止することができる。本明細書に記載されているように治療することが可能な更なる疼痛は、「口内焼灼感症候群」、労働痛、シャルコー疼痛、腸内ガスによる疼痛、生理痛、急性及び慢性の背痛(例えば、腰痛)、痔痛、消化不良性疼痛、狭心症、神経根痛、同所痛及び異所痛、例えば、癌関連疼痛(例えば、骨癌患者における)、毒への暴露による疼痛(及び炎症)(例えば、蛇、くもに咬まれたり昆虫に刺されたことによる)及び外傷性疼痛(例えば、手術後疼痛、切り傷、打撲及び骨折からの痛み、及び火傷の痛み)
を含む−を包含する。本明細書に記載されているように治療することが可能な更なる疼痛は、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群及び又は炎症性腸疾患に関連する疼痛を包含する。
【0147】
ある態様に於いて、本発明のVR1調節剤は機械的疼痛の治療に用いることができる。本明細書で用いられる「機械的疼痛」という用語は、神経性ではない頭痛、又は熱、寒冷若しくは外からの化学的な刺激への暴露によるもの以外の疼痛を示す。機械的疼痛は、術後疼痛及び切り傷、打撲及び骨折からの痛み;歯痛;神経根痛、変形性関節症;間接リウマチ;線維筋痛;知覚異常性大腿神経痛;背痛;癌関連疼痛;狭心症;カーペルトンネル症候群(carpel tunnel syndrome);及び骨折、労働、痔、腸内ガス、消化不良、及び生理からくる疼痛のような物理的な外傷(熱的若しくは化学的な火傷又はその他の刺激及び/又は有毒な化学物質への有痛性の暴露以外の)を包含する。
【0148】
治療できる掻痒症は、乾癬性掻痒、血液透析による痒み、水性掻痒、並びに膣前庭炎、接触皮膚炎、昆虫に咬まれる及び皮膚アレルギーに関連する痒みを包含する。本明細書に記載されているように治療することができる尿路疾患は、尿失禁(溢流性尿失禁、急迫性尿失禁及びストレス性尿失禁を包含する)、更に過活動又は不安定膀胱症(脊髄因性排尿筋過反射及び膀胱過敏症を包含する)を包含する。このようなある治療方法においては、VR1調節剤を直接膀胱に注射できるように、カテーテルまたは同様な器具を介してVR1調節剤を投与する。本発明の化合物は鎮該薬(咳を阻止し、緩和し又は抑える)として、及びしゃっくりの治療及び肥満患者の減量を促進するためにも使用することができる。
【0149】
他の態様に於いて、本発明のVR1調節剤は、炎症要素を含む疾患の治療のための併用療法で使用することができる。このような疾患には、例えば、自己免疫疾患、及びこれに限定されないが、関節炎(特に関節リウマチ)、乾癬、クローン病、紅斑性狼瘡、過敏性腸症候群、組織移植不適合、及び移植臓器の超急性拒絶を包含する炎症要素を有するものと知られている病的自己免疫反応を包含する。その他のこのような疾患は外傷(例えば、頭部又は骨髄の損傷)、心臓及び脳血管疾患並びにある種の感染症を包含する。
【0150】
このような併用療法に於いて、VR1調節剤は抗炎症剤とともに患者に投与される。このVR1調節剤と抗炎症剤は、同じ医薬組成物中に存在させても、いずれかの順序で別々に投与されてもよい。抗炎症剤は、例えば、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID類)、非特異的及びシクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)特異的シクロオキシゲナーゼ酵素阻害剤、金化合物、コルチコステロイド、メトトレキセート、腫瘍壊死因子(TNF)受容体拮抗薬、抗TNFアルファー抗体、抗C5抗体、及びインターロイキン−1(IL−1)受容体拮抗薬を包含する。NSAID類の例は、これに限定されないが、イブプロフェン(例えば、ADVIL(登録商標)、MOTRIN(登録商標))、フルビプロフェン(ANSAID(登録商標))、ナプロキセン又はナプロキセンナトリウム(例えば、NAPROSYN、ANAPROX、ALEVE(登録商標))、ジクロフェナク(例えば、CATAFLAM(登録商標)、VOLTAREN(登録商標))、ジクロフェナクナトリウムとミソプロストールの合剤(例えば、ARTHROTEC(登録商標))、スリンダック(CLINORIL(登録商標))、オキサプロジン(DAYPRO(登録商標))、ジフルニサール(DOLOBID(登録商標))、ピロキシカム(FELDENE(登録商標))、インドメタシン(INDOCIN(登録商標))、エトドラック(LODINE(登録商標))、フェノプロフェンカルシウム(NALFON(登録商標))、ケトプロフェン(例えば、ORUDIS(登録商標)、ORUVAIL(登録商標))、ナトリウムナブメトン(RELAFEN(登録商標))、スルファサラジン(AZULFIDINE(登録商標))、トルメチンナトリウム(TOLECTIN(登録商標))、及びヒドロキシクロロキン(PLAQUENIL(登録商標))を包含する。ある特定の種類のNSAID類は、シクロオキシゲナーゼ(COX)酵素を阻害する化合物からなっている。NSAID類は更に、アセチルサリチル酸又はアスピリン、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸コリン及びマグネシウム(TRILISATE(登録商標))、及びサルサラーテ(DISALCID(登録商標))のようなサリチル酸塩を、またコーチゾン(CORTONE(登録商標)アセテート)、デキサメサゾン(例えば、DECADRON(登録商標))、メチルプレドニゾロン(MEDROL(登録商標))、プレドニゾロン(PRELONE(登録商標))、プレドニゾロン・リン酸ナトリウム(PEDIAPRED(登録商標))、及びプレドニゾン(例えば、PREDNICEN−M(登録商標)、DELTASONE(登録商標)、STERAPRED(登録商標))のような副腎皮質ステロイドを包含する。
【0151】
このような併用療法におけるVR1調節剤の適切な用量は、一般に上記のようである。抗炎症剤の用量及び投与方法は、例えば「Physician's Desk Reference」中の製造会社の説明書に見出すことができる。ある態様に於いて、VR1調節剤と抗炎症剤との併用投与は、治療効果を生ずるのに必要な抗炎症剤の用量の減少をもたらす(つまり、最小治療有効量の減少させる)。従って、好ましくは、本発明の併用又は併用療法における抗炎症剤の用量は、VR1拮抗薬の併用投与なしで、抗炎症剤を投与する際の製造会社が助言している最大用量未満である。より好ましくは、この用量はこの最大用量の3/4未満、更に好ましくは1/2未満、非常に好ましくは1/4未満であり、更に最も好ましい用量は、VR1拮抗薬と併用投与しないで投与するときの抗炎症剤の投与に対して製造会社が助言する最大量の10%未満である。望ましい効果を達成するのに必要な併用薬のVR1拮抗薬成分の用量は、併用薬の抗炎症剤成分の用量及び効力によって影響されることは明らかであろう。
【0152】
ある好ましい態様に於いて、VR1調節剤と抗炎症剤との併用投与は、1つ又はそれ以上のVR1調節剤及び1つ又はそれ以上の抗炎症剤を、パッケージ内の別の容器に入れるか、又は1つ又はそれ以上のVR1調節剤及び1つ又はそれ以上の抗炎症剤の混合物として同じ容器に入れるかして、同じパッケージに包装することによって遂行できる。好ましい混合物は経口投与用(例えば、ピル、カプセル、錠剤など)に製剤化される。ある態様に於いては、このパッケージは、炎症性の疼痛を治療するためには、1つ又はそれ以上のVR1調節剤及び1つ又はそれ以上の抗炎症剤を一緒に用いることを、指示するしるし付きのラベルを含有する。
【0153】
更なる態様に於いて、本発明のVR1調節剤は、1つ又はそれ以上の更なる疼痛緩和薬剤と併用して用いることができる。このような薬剤のあるものは抗炎症剤で、上に記載されている。その他のこのような薬剤は麻薬性鎮痛薬で、これは通常1つ又はそれ以上のオピオイド受容体のサブタイプ(例えば、μ、κ及び/又はδ)上で、好ましくは作動薬又は部分作動薬として作用する。このような薬剤は、アヘン剤、アヘン誘導体及びオピオイドを、またこれらの薬学的に許容される塩及び水和物を包含する。麻薬性鎮痛薬の具体的な例は、好ましい態様に於いて、アルフェンタニル、アルファプロジン、アニレリジン、ベジトラマイド、ブプレノルフィン、コデイン、ジアセチルジヒドロモルフィン、ジアセチルモルフィン、ジヒドロコデイン、ジフェノキシレート、エチルモルフィネ、フェンタニル、ヘロイン、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、イソメタドン、レボメトルファン、レボルファン、レボルファノール、メペリジン、メタゾシン、メタドン、メトルファン、メトポン、モルヒネ、アヘン抽出物、アヘン流エキス剤、粉末化アヘン、顆粒化アヘン、原料アヘン、アヘンチンキ、オキシコドン、オキシモルホン、パレゴリック、ペンタゾシン、ペチジン、フェナゾシン、ピミノジン、プロポキシフェン、ラセメトルファン、ラセモルファン、テバイン及びこれ薬剤の薬学的に許容される塩及び水和物を包含する。
【0154】
麻薬性鎮痛薬のその他の例は、アセトルフィン、アセチルジヒドロコデイン、アセチルメタドール、アリルプロジン、アルファアセチルメタドール、アルファメプロジン、アルファメタドール、ベンゼチジン、ベンジルモルヒネ、ベータアセチルメタドール、ベータメプロジン、ベータメタドール、ベータプロジン、ブトルファノール、クロニタゼン、コデインメチルブロマイド、コデイン−N−オキシド、シプレノルフィン(cyprenorphine)、デソモルヒネ、デキストロモルアミド、ジアンプロミド、ジエチルチアンブテン、ジヒドロモルヒネ、ジメノキサドール、ジメフェプタノール、ジメチルチアンブテン、ジオキサフェチルブチレート、ジピパノン、ドロテバノール、エタノール、エチルメチルチアンブテン、エトニタゼン、エトルフィン、エトキセリジン、フレチジン、ヒドロモルヒノール、ヒドロキシペチジン、ケトベミドン、レボモラミド、レボフェナシルモルファン、メチルデソルフィン、メチルジヒドロモルヒネ、モルフェリジン、モルヒネメチルプロミド、モルヒネメチルスルホネート、モルヒネ−N−オキシド、ミロフィン、ナロキソン、ナルブイフィン、ナルチヘキソン、ニココデイン、ニコモルヒネ、ノルアシメタドール、ノルレボルファノール、ノルメタドン、ノルモルヒネ、ノルピパノン、ペンタゾカイン、フェナドキソン、フェナムプロミド、フェノモルファン、フェノペリジン、ピリトラミド、フォルコジン、プロヘプタゾイン、プロペリジン、プロピラン、ラセモラミド、テバコン、トリメペリジン及びこれらの薬学的に許容される塩及び水和物を包含する。
【0155】
更に特定的な代表的鎮痛剤は、例えば、TALWIN(登録商標)Nx及びDEMEROL(登録商標)(両者は Sanofi Winthrop Pharmaceuticals; New York, NY より入手可能);LEVO−DROMORAN(登録商標)、BUPRENEX(登録商標)(Reckitt & Coleman Pharmaceuticals, Inc.; Richmond, VA);MSIR(登録商標)(Purdue Pharma L. P.; Norwalk, CT);DILAUDID(登録商標)(Knoll Pharmaceutical Co.; Mount Olive, NJ);SUBLIMAZE(登録商標);SUFENTA(登録商標)(Janssen Pharmaceutical Inc.; Titusville, NJ);PERCOCET(登録商標)、NUBAIN(登録商標)及びNUMORPHAN(登録商標)(全てが Endo Pharmaceuticals Inc.; Chadds Ford, PA から入手可能);HYDROSTAT(登録商標)IR、MS/S及びMS/L(全てが Richwood Pharmaceutical Co. Inc; Florence, KY);ORAMORPH(登録商標)SR及びROXICODONE(登録商標)(両者は Roxanne Laboratories; Columbus, OH から入手可能)及びSTADOL(登録商標)(Bristol-Myers Squibb; New York, NY)を包含する。更なる鎮痛剤は、AM1241のようなCB2受容体作動薬、及びNeurontin(Gabapentin)及びプレガバリン(pregabalin)のようなα2δサブユニットに結合する化合物を包含する。
【0156】
更なる態様に於いて、本発明のVR1調節剤は、1つ又はそれ以上のロイコトリエン受容体拮抗薬(例えば、システイニルロイコトリエン CysKT受容体を阻害する薬剤)と併用して使用することができる。CysLT拮抗剤は、モンテルカスト(Montelukast:SINGULAIR(登録商標);Merck & C0., Inc.)を包含する。このような併用は喘息のような肺疾患の治療に使用できることが見出されている。
【0157】
本発明は更に、尿失禁の治療についての併用療法を提供する。このような態様に於いて、本発明のVR1調節剤は、トルテロジン(DETROL(登録商標);Pharmacia Corporation)のようなムスカリン性受容体拮抗剤と又はオキシブチニン(DITROPAN(登録商標);Ortho-McNeil Pharmaceutical, Inc., Raritan, NJ)のような抗コリン剤との併用で用いることができる。
【0158】
このような併用療法でのVR1調節剤の好ましい用量は、一般に上記のようである。その他の疼痛緩和薬剤の用量及び投与方法は、例えば「Physician's Desk Reference」中の製造会社の説明書に見出すことができる。ある態様に於いて、VR1調節剤と1つ又はそれ以上の追加の疼痛緩和薬剤との併用投与は、それぞれの治療薬が治療効果を示すのに必要な用量を減少させる(例えば、片方又は両方の薬剤の用量は、上で示した又は製造会社が助言している最大容量の3/4未満、1/2未満、1/4未満又は10%未満であろう)。ある好ましい態様に於いて、VR1調節剤と1つ又はそれ以上の追加の疼痛緩和薬剤との併用投与は、1つ又はそれ以上のVR1調節剤と1つ又はそれ以上の追加の疼痛緩和薬剤を、上記のように同じパッケージに包装することによって遂行できる。
【0159】
VR1作動薬である化合物は、例えば、群衆整理で(催涙ガスの代用品として)若しくは身辺警護で(例えばスプレー製剤中に)又はカプサイシン受容体の脱感作による疼痛、痒み尿失禁若しくは過活動膀胱の治療用の薬剤として、更に使用できるであろう。一般に、群集整理又は個人警護で用いられる化合物は、通常の催涙ガス又は唐辛子スプレー技術に従って製剤化及び使用される。
【0160】
別の態様では、本発明は、本発明の化合物についての多種のインビトロ及びインビボでの非医薬用途を提供する。例えば、このような化合物は標識されて、カプサイシン受容体の検出及び局在化(細胞調合液又は組織片、これらの調合液又は分画のような試料中の)のためのプローブとして使用できる。更に、適当な反応性の基(アリールカルボニル、ニトロ又はアジド基のような)からなる、本発明の化合物は、受容体結合部位の光親和性標識の研究に使用できる。更に、本発明の化合物は、受容体活性試験において陽性対照として、候補薬剤のカプサイシン受容体との結合能力を測定するための標準として、又は陽電子放出断層撮影(PET)用若しくは単光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)用の放射性追跡子としても使用できる。これらの方法は対象生物のカプサイシン受容体を特徴付けるために使用することができる。例えば、VR1調節剤を多種のよく知られた技術を用いて標識し(例えば、本明細書に記載されているように、トリチウムのような放射性核種で放射性標識し)、そして試料と共に適当な培養時間(例えば、まず最初に結合時間についてアッセイして決定された時間)培養する。培養に続いて、結合しなかった化合物を除去し(例えば、洗浄によって)、結合した化合物を使用した標識に適した幾つかの方法(例えば、放射性標識された化合物は、オートラジオグラフィー又はシンチレーションカウントで;発光性の基及び蛍光性の基を検出するためには分光方法が使用できる)により検出する。対照として、標識された化合物及び大量の(例えば10倍以上の)標識されていない化合物を含む対応の試料を同様の方法で処理する。試験試料の中に、対照中よりも多い量の検出可能な標識が残っていれば、試験試料中にカプサイシン受容体が存在することを示す。培養細胞又は組織試料中のカプサイシン受容体の受容体オートラジオグラフィー(受容体マッピング)を含む検出試験は、Kuharによる記載(Current Protocols in Pharmacology (1988) John Wiley & Sons, New York の section 8.1.1〜8.1.9)のようにして行うことができる。
【0161】
本発明の化合物は、周知の各種細胞分離方法にも使用できる。例えば、調節剤を、固定化のための親和性リガンドとして用いるために、組織培養のプレート又はその他の支持体の内部表面に結合させ、それによりインビトロでカプサイシン受容体を分離(例えば、カプサイシン受容体を発現する細胞を分離する)させてもよい。一つの好ましい態様では、フルオレセインのような蛍光マーカーに結合させた調節剤を細胞に接触させ、次いでこれを蛍光活性化細胞選別(FACS)によって分析(又は単離)する。
【0162】
本発明のVR1調節剤は更に、カプサイシン受容体に結合するその他の試薬を同定するための試験に使用できる。一般に、このような試験は、標識されたVR1調節剤の結合が、試験化合物によって置き換えられる、標準の競合結合試験である。つまり、このような試験は:(a)VR1調節剤がカプサイシン受容体と結合可能な条件下に、カプサイシン受容体を本明細書に記載のような放射性標識したVR1調節剤と接触させて、これにより標識されたVR1調節剤を結合させる;(b)試験薬の非存在下での、標識されたVR1調節剤の結合量に相当するシグナルを検出する;(c)標識されたVR1調節剤の結合したものを試験薬と接触させる;(d)試験薬の存在下での、標識されたVR1調節剤の結合量に相当するシグナルを検出する;そして(e)工程(b)で検出されるシグナルと比較して、工程(d)で検出されるシグナルの減少を測定する;ことによって実施され、これによりカプサイシン受容体に結合している薬剤を同定する。
【0163】
以下の実施例は説明の目的で提供されているものであり、それによって本発明は何ら制限されるものではない。特に明記されない限り、全ての試薬及び溶媒は標準の商用等級であり、更に精製せずに使用した。通常の改変方法で、出発物質を変えてもよく、追加の工程を採用して本明細書で提供されるその他の化合物を製造することができる。
(実施例)
【実施例1】
【0164】
代表的な置換5,12−ジアザ−ベンゾアントラセン類似体の調製
この実施例は、代表的な置換5,12−ジアザ−ベンゾアントラセン類似体のスキーム1及び2に従った調製を説明している。
【0165】
A. 6−メトキシメチル−9−トリフルオロメチル−3−(3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル)−12H−7−オキサ−4,5,12−トリアザ−ベンゾ[A]アントラセン
1. 6−アミノ−3’−トリフルオロメチル−[2,2’]ビピリジニル−5−カルボン酸
【0166】
【化019】

【0167】
6−アミノ−3’−トリフルオロメチル−[2,2’]ビピリジニル−5−カルボニトリルを、原則的にPCT国際出願公開第WO 03/062209号公報(例えば、76ページに2−アミノ−4−(3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル)−ベンゾニトリルの合成、及び184ページに
【0168】
【化020】

で表される化合物の合成があり、これらの合成方法が、参考として本明細書に組み込まれている)で説明されているように調製する。
【0169】
6−アミノ−3’−トリフルオロメチル−[2,2’]ビピリジニル−5−カルボニトリル(2.33g、8.82mmol)を12MのHCl溶液(50ml)に溶解し、110℃で一晩加熱する。減圧下で蒸発させて、標題の化合物を塩酸塩として得る。
【0170】
2. 6−アミノ−3’−トリフルオロメチル−[2,2’]ビピリジニル−5−カルボン酸2,5−ジオキソ−ピロリジン−1−イルエステル
【0171】
【化021】

【0172】
6−アミノ−3’−トリフルオロメチル−[2,2’]ビピリジニル−5−カルボン酸塩酸塩(11.33g、35.44mmol)、N−ヒドロキシ−スクシンイミド(8.15g、70.9mmol)、ヒューニッヒ塩基(16.12g、125mmol)、及びEDCI(10.19g、53.16mmol)のTHF溶液(100mL)を撹拌する。16時間後、EtOAc(200mL)を加え、水(100mLx3)と塩水(100mL)で洗浄する。有機抽出液をNaSOで乾燥させ、溶媒を減圧下で取り除いて、標題の化合物を茶色の泡状物として得る。
【0173】
3. 4−ヒドロキシ−2−メトキシメチル−7−(3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル)−[1,8]ナフチリジン−3−カルボン酸メチルエステル
【0174】
【化022】

【0175】
6−アミノ−3’−トリフルオロメチル−[2,2’]ビピリジニル−5−カルボン酸2,5−ジオキソ−ピロリジン−1−イルエステル(10.4g、27.3mmol)の50mLの無水THF溶液をカリウムtert−ブトキシド(7.36g、65.6mmol)及びメチル4−メトキシ−アセトアセテ−ト(8.77g、60.7mmol)の無水THF溶液(100mL)に加える。反応液を室温で一晩撹拌する。水(30mL)を加えて、濃縮する。混合液をエーテル(50mLx2)で抽出する。水層を濃塩酸で酸性化し、CHCl(100mLx4)で抽出する。合わせた有機抽出液をNaSOで乾燥させ、溶媒を減圧下で取り除く。標題の化合物を、放置して、固体化した薄茶色のオイルとして得る。
【0176】
4. 2−メトキシメチル−7−(3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル)−[1,8]ナフチリジン−4−オール
【0177】
【化023】

【0178】
4−ヒドロキシ−2−メトキシメチル−7−(3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル)−[1,8]ナフチリジン−3−カルボン酸メチルエステル(200mg、0.508mmol)を12MのHCl(20mL)に溶解し、110℃で6時間加熱する。反応混合液を氷(100g)上に注ぎ、CHCl(150mLx4)で抽出する。合わせた有機抽出液をNaSOで乾燥させ、溶媒を減圧下で取り除く。シリカゲル分取TLC処理し、ヘキサン/アセトン(3:1)で溶出して、標題の化合物を白色固体として得る。
【0179】
5. 2−メトキシメチル−3−ニトロ−7−(3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル)−[1,8]ナフチリジン−4−オール
【0180】
【化024】

【0181】
2−メトキシメチル−7−(3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル)−[1,8]ナフチリジン−4−オール(1.95g、5.82mmol)を濃硫酸(60mL)に溶解する。混合液を0℃に冷却し、発煙硝酸(14mL)に加える。混合液を室温で一晩撹拌する。混合液を60℃で3時間加熱する。混合液を室温まで冷却し、氷(200g)上に注ぐ。酸性の混合液を10NのNaOHで(pH4〜5に)処理して、生成物を沈殿させる。沈殿物を濾過して採取し、真空オーブンで一晩乾燥させて、標題の化合物を得る。
MS 381.08(M+1)
【0182】
6. 4−クロロ−2−メトキシメチル−3−ニトロ−7−(3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル)−[1,8]ナフチリジン
【0183】
【化025】

【0184】
2−メトキシメチル−3−ニトロ−7−(3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル)−[1,8]ナフチリジン−4−オール(1.80g、4.74mmol)をCHCl溶液(50mL)に溶解する。オキシ塩化リン(1.76mL、18.9mmol)、及び2,6−ルチジン(2.13mL、18.9mmol)を溶液に加える。混合液を一晩加熱還流する。混合液を室温まで冷却し、氷(50g)溶液と飽和重炭酸ナトリウム(50mL)上に注ぐ。 混合液を1時間撹拌する。混合液をCHCl(100mLx2)で抽出する。合わせた有機抽出液をNaSOで乾燥し、溶媒を減圧下で取り除く。粗生成物をシリカゲルのクロマトグラフィー処理し、EtOAc/ヘキサン(1:1)で溶出して、標題の化合物を得る。
MS 399.06(M+1)
【0185】
7. 2−[2−メトキシメチル−3−ニトロ−7−(3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル)−[1,8]ナフチリジン−4−イルアミノ]−5−トリフルオロメチル−フェノール塩酸塩
【0186】
【化026】

【0187】
4−クロロ−2−メトキシメチル−3−ニトロ−7(3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル)−[1,8]ナフチリジン(1.60g、4.01mmol)をアセトニトリル(35mL)に溶解し、この溶液に3−ヒドロキシ−4−トリフルオロメチル−アニリン(0.782g、4.41mmol)を加える。混合液を室温で4時間撹拌する(黄色の沈殿物が形成される)。この溶液を氷浴で冷却し、沈殿物を濾過する。この沈殿物を冷たいアセトニトリルで洗浄する。黄色固形物を真空オーブンで乾燥させ、標題の化合物を得る。
MS 540.12(M+1)
【0188】
8. 6−メトキシメチル−9−トリフルオロメチル−3−(3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル)−12H−7−オキサ−4,5,12−トリアザ−ベンゾ[a]アントラセン
【0189】
【化027】

【0190】
2−[2−メトキシメチル−3−ニトロ−7−(3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル)−[1,8]ナフチリジン−4−イルアミノ]−5−トリフルオロメチル−フェノール(2.15g、3.99mmol)をDMA(25mL)及びKCO(1.65g、12.0mmol)の混合液に溶解する。混合液を130℃で10分間加熱する。混合液を氷浴で冷却し、EtOAc(150mL)で希釈する。混合液を水(150mLx3)と塩水(100mL)で抽出する。有機抽出液をNaSOで乾燥させ、溶媒を減圧下で取り除く。粗生成物をシリカ・ゲルのクロマトグラフィー処理し、CHCl/MeOH(95:5)で溶出して、標題の化合物をオレンジ色の固体として得る。
MS 493.16(M+1);1HNMR(CD3OD)δ8.88(d,1H),8.52(d,1H),8.33 (d,1H),7.73(m,2H),7.13(d,1H),6.97(d,1H),6.82 (d,1H),4.64(s,2H),3.50 (s,3H)
【0191】
B. 6−(2,6−シス−ジメチル−モルホリン−4−イルメチル)−9−トリフルオロメチル−3−(3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル)−12H−7−オキサ−4,5,12−トリアザ−ベンゾ[A]アントラセン
1. [9−トリフルオロメチル−3−(3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル)−12H−7−オキサ−4,5,12−トリアザ−ベンゾ[a]アントラセン−6−イル]−メタノール
【0192】
【化028】

【0193】
6−メトキシメチル−9−トリフルオロメチル−3−(3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル)−12H−7−オキサ−4,5,12−トリアザ−ベンゾ[a]アントラセン(265mg、0.538mmol)を、CHCl(15mL)溶液に溶解し、0℃に冷却する。BBr(1.61mL、1.61mmol、1.0MのCHCl溶液)を先の溶液に滴下し、溶液を室温で5時間撹拌する。反応をNaHCO(10mL)の飽和溶液で停止する。混合液をCHCl/i−PrOH(90:10;50mLx3)で抽出する。合わせた有機抽出液をNaSOで乾燥し、溶媒を減圧下で取り除き、標題の化合物を得る。
MS 479.05(M+1)
【0194】
2. 6−クロロメチル−9−トリフルオロメチル−3−(3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル)−12H−7−オキサ−4,5,12−トリアザ−ベンゾ[a]アントラセン塩酸塩
【0195】
【化029】

【0196】
[9−トリフルオロメチル−3−(3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル)−12H−7−オキサ−4,5,12−トリアザ−ベンゾ[a]アントラセン−6−イル]−メタノール(132mg、0.276mmol)をCHCl(10mL)溶液に溶解し、0℃に冷却する。SOCl(2mL)を加え、室温で1時間撹拌する。減圧下で溶媒を取り除き、残留物にEtOを滴下して粉砕し、標題の生成物を得る。
MS 497.07(M+1)
【0197】
3. 6−イソブトキシメチル−9−トリフルオロメチル−3−(3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル)−12H−7−オキサ−4,5,12−トリアザ−ベンゾ[a]アントラセン
【0198】
【化030】

【0199】
6−クロロメチル−9−トリフルオロメチル−3−(3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル)−12H−7−オキサ−4,5,12−トリアザ−ベンゾ[a]アントラセン(25mg、0.05mmol)を2−メチル−プロパノール(2mL)に溶解し、0℃に冷却する。NaH(35mg)を少量ずつ加える。混合液を室温で一晩撹拌する。EtOAc(25mL)、水(25mL)、及び塩水(25mL)で抽出する。有機層をNaSOで乾燥させ、減圧下で溶媒を取り除く。残留物を分取薄層クロマトグラフィー処理し、ヘキサン/アセトン/トリエチルアミン(50:50:1)で溶出して、標題の化合物を薄赤色固体として得る。
MS 535.11(M+1)
【0200】
4. 6−(2,6−シス−ジメチル−モルホリン−4−イルメチル)−9−トリフルオロメチル−3−(3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル)−12H−7−オキサ−4,5,12−トリアザ−ベンゾ[a]アントラセン
【0201】
【化031】

【0202】
6−クロロメチル−9−トリフルオロメチル−3−(3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル)−12H−7−オキサ−4,5,12−トリアザ−ベンゾ[a]アントラセン(25mg、0.005mmol)をDMA(0.5mL)に溶解し、シス−3,5−ジメチル−モルホリン(0.15mL)を加える。混合液を室温で一晩撹拌する。EtOAc(25mL)で希釈して、水(25mLx3)で抽出する。有機層をNaSOで乾燥させ、減圧下で溶媒を取り除き、標題の化合物を赤色固体として得る。
MS 576.14(M+1)
【実施例2】
【0203】
追加の代表的な置換5,12−ジアザ−ベンゾアントラセン類似体の合成
A. 9−ブロモ−6−メトキシメチル−3−(3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル)−7,12−ジヒドロ4,5,12−トリアザ−ベンゾ[A]アントラセン−7−オール
【0204】
1. 5−ブロモ−2−[2−メトキシメチル−7−(3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル)−[1,8]ナフチリジン−4−イルアミノ]−安息香酸
【0205】
【化032】

【0206】
4−クロロ−2−メトキシメチル−7−(3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル)−[1,8]ナフチリジン(250mg、0.708mmol)をi−PrOH(5mL)に溶解する。塩酸(2.0Mのエーテル溶液)を10滴加え、室温で4時間撹拌する。黄色沈殿物を濾過して取り、真空のオーブンで乾燥させて標題の化合物を得る。
MS 533.05(M+1)
【0207】
2. 9−ブロモ−6−メトキシメチル−3−(3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル)−12H−4,5,12−トリアザ−ベンゾ[a]アントラセン−7−オン
【0208】
【化033】

【0209】
5−ブロモ−2−[2−メトキシメチル−7−(3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル)−[1,8]ナフチリジン−4−イルアミノ]−安息香酸(150mg、0.281mmol)をPPA(約3g)に溶解し、120℃で加熱する。2時間後、熱した混合液を氷水に注ぎ、1時間撹拌する。混合液をNaOHで中和し、EtOAc(100mLx3)で抽出する。合わせた有機抽出物をNaSOで乾燥させ、溶媒を減圧下で取り除く。粗生成物を分取TLC処理し、ヘキサン/アセトン(1:1)で溶出して、標題の化合物を得る。
MS 515.03(M+1)
【0210】
3. 9−ブロモ−6−メトキシメチル−3−(3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル)−7,12−ジヒドロ4,5,12−トリアザ−ベンゾ[a]アントラセン−7−オール
【0211】
【化034】

【0212】
9−ブロモ−6−メトキシメチル−3−(3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル)−12H−4,5,12−トリアザ−ベンゾ[a]アントラセン−7−オン(34mg、0.066mmol)をi−PrOH(2mL)に溶解し、NaBH(7.5mg、0.198mmol)を加える。混合液を室温で一晩撹拌する。1NのNaOH(10mL)で反応を停止して、EtOAc(20mLx2)で抽出する。合わせた有機抽出液をNaSOで乾燥させ、減圧下で溶媒を取り除く。粗生成物を分取TLC処理し、ヘキサン/アセトン(1:1)で溶出して、標題の化合物を得る。
MS 517.06(M+1)
【0213】
B. 6−メチル−9−トリフルオロメチル−3−(3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル)−12H−7−オキサ−4,5,12−トリアザ−ベンゾ[A]アントラセン、及び9−トリフルオロメチル−3−(3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル)−12H−7−オキサ−4,5,12−トリアザ−ベンゾ[A]アントラセン
1. 6−アミノ−3’−トリフルオロメチル−[2,2’]ビピリジニル−5−カルボン酸メチルエステル
【0214】
【化035】

【0215】
(6−アミノ−3’−トリフルオロメチル−[2,2’]ビピリジニル)−5−カルボン酸(5g)のメタノール(100mL)溶液に塩化水素ガスを飽和させる。混合液を4日間加熱還流し、蒸発させて乾燥する。混合物をEtOAcと飽和重炭酸ナトリウム溶液に分配する。層を分離し、水層を更にEtOAcで抽出する。合わせた有機抽出液を塩水で洗浄し、MgSOで乾燥させ、そして蒸発させて、標題の化合物を得る。
2. 4−ヒドロキシ−7−(3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル)−1H−[1,8]ナフチリジン−2−オン
【0216】
【化036】

【0217】
(6−アミノ−3’−トリフルオロメチル−[2,2’]ビピリジニル)−5−カルボン酸メチルエステル(297mg、1.0mmol)及び酢酸(1mL)のジオキサン(2mL)溶液を60℃で3時間加熱する。混合液を冷却し、水(1mL)を加え、蒸発させて乾燥させる。この固体をTHF(4mL)に溶解し、−78℃にてカリウムビス(トリメチルシリル)アミド(600mg、3.0mmol)のトルエン(6mL)溶液に滴下する。反応を一晩で室温に戻す。水(10mL)を加え、EtOAcで抽出する。水層を塩酸で酸性化し、濾過して沈殿物を採取する。風乾して標題の化合物を得る。
【0218】
3. 3−ニトロ−4−ヒドロキシ−7−(3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル)−1H−[1,8]ナフチリジン−2−オン
【0219】
【化037】

【0220】
発煙硝酸(1mL)及び濃硫酸(10mL)の0℃の溶液に、4−ヒドロキシ−7−(3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル)−1H−[1,8]ナフチリジン−2−オン(307mg)を加える。混合液を一時間かけて室温に戻す。反応混合液を氷/水(20mL)に注ぎ、10Mの水酸化ナトリウム溶液を沈殿物が形成されるまで加える。沈殿物を濾過によって採取し、風乾して標題の化合物を得る。
4. 2,4−ジクロロ−3−ニトロ−7−(3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル)−[1,8]ナフチリジン
【0221】
【化038】

【0222】
3−ニトロ−4−ヒドロキシ−7−(3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル)−1H−[1,8]ナフチリジン−2−オン(70mg)を、POCl(2mL)中で18時間還流する。溶媒を真空下で蒸発させ、飽和重炭酸水素ナトリウムで慎重に中和して、EtOAcで抽出する。NaSOで乾燥させ、真空下で濃縮し、標題の化合物を得る。
【0223】
5. 2−[2−クロロ−3−ニトロ−7−(3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル)−[1,8]ナフチリジン−4−イルアミノ]−5−トリフルオロメチル−1−フェノール
【0224】
【化039】

【0225】
2,4−ジクロロ−3−ニトロ−7−(3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル)−[1,8]ナフチリジン(65mg)、2−アミノ−5−(トリフルオロメチル)−フェニル(30mg)、酢酸ナトリウム(17mg)のエタノール(2mL)溶液を1時間加熱還流する。冷却し、水(2mL)を加え、沈殿物を濾過して採取し、そして風乾して、標題の化合物を得る。
【0226】
6. 6−クロロ−9−トリフルオロメチル−3−(3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル)−12H−7−オキサ−4,5,12−トリアザ−ベンゾ[a]アントラセン
【0227】
【化040】

【0228】
2−[2−クロロ−3−ニトロ−7−(3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル)−[1,8]ナフチリジン−4−イルアミノ]−5−トリフルオロメチル−1−フェノール(50mg)、及び炭酸カリウム(27mg)のDMA(2mL)溶液を、130℃で1時間加熱する。混合液を冷却し、EtOAcと水に分配する。層を分離して、水層を更にEtOAcで抽出する。合わせた有機抽出物を塩水で洗浄し、MgSOで乾燥させて蒸発させる。分取TLCで(溶離剤:EtOAc)精製して、標題の化合物を得る。
MS 483(M+1).
400MHz H NMR(CDCl):6.62(d,1H),7.05(brs,2H),7.45 (m,2H),7.65(d,1H),8.12(d,1H),8.25(d,1H),8.80(s,1H).
【0229】
7. 6−メチル−9−トリフルオロメチル−3−(3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル)−12H−7−オキサ−4,5,12−トリアザ−ベンゾ[a]アントラセン、及び9−トリフルオロメチル−3−(3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル)−12H−7−オキサ−4,5,12−トリアザ−ベンゾ[a]アントラセン
【0230】
【化041】

【0231】
6−クロロ−9−トリフルオロメチル−3−(3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル)−12H−7−オキサ−4,5,12−トリアザ−ベンゾ[a]アントラセン(96mg)、メチルボロン酸(60mg)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(15mg)、及び2Mの炭酸カリウム(1mL)のトルエン(4mL)溶液の脱ガスした混合液を窒素雰囲気下、90℃で8時間加熱する。反応混合液を冷却し、層を分配する。EtOAcで抽出し、合わせた有機物を4Mの水酸化ナトリウム、水、及び塩水で洗浄し、そしてMgSOで乾燥させて、減圧下で濃縮する。生成したオイルをMS誘発の分取HPLC/MS(MS triggered preparative HPLC/MS)で処理し、6−メチル−9−トリフルオロメチル−3−(3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル)−12H−7−オキサ−4,5,12−トリアザ−ベンゾ[a]アントラセン:
MS 463(M+1)、
400MHz H NMR(CD3OD):2.45(s,3H),6.75(d,1H),6.90(s,1H),7.18(d,1H),7.65(d,1H),7.70(m,1H),8.34(d,1H),8.42(d,1H),8.90(d,1H);及び9−トリフルオロメチル−3−(3−トリフルオロメチル−ピリジン−2イル)−12H−7−オキサ−4,5,12−トリアザ−ベンゾ[a]アントラセン:
MS 449(M+1)、
400MHz H NMR(d−アセトン):6.92(m,2H),7.15(d,1H),7.75(m,1H),7.85(brs,1H),8.38 (m,2H),8.42(d,1H),8.95(d,1H);
を得る。
【実施例3】
【0232】
追加の代表的な置換5,12−ジアザ−ベンゾアントラセン類似体
出発物質を変更すること、また、追加の工程を導入することによる通常の修正方法を用いて、本明細書のその他の化合物を調製することができる。表1に記載された化合物は、このような方法により調製される。「IC50」と表示されている欄の星印(*)は、この化合物が実施例6に示されているようにして測定された化合物のIC50値が、1マイクロモル以下であることを示している(すなわち、あるIC50値を有するカプサイシンに曝された場合に、細胞の蛍光応答を50%減少させる化合物の濃度が、1マイクロモル以下であることを意味する)。「MS」と表示されている欄に於ける質量分析の値は、Waters600ポンプ、Waters996フォトダイオード配列検出器、Gilson215オートサンプラー、及びGilson841マイクロインジェクターを取り付けたMicromass Time−of−Flight LCTを用い、コーン電圧15V又は30Vの陽イオンモードによって得られるエレクトロスプレーMSである。MassLynx(Adcanced Chemistry Development, Inc; Toronto, Canada)のバージョン4.0 ソフトウェアをデータ収集及び分析に用いる。1マイクロリッター量の試料を、50x4.6mmの Chromolith SpeedROD C18 カラム上に注入し、6ml/minの速度で、2相線形グラジエントを用いて溶出する。試料は、220〜340nmのUV範囲における総吸収量を用いて検出する。
溶出条件は、
移動相A: 95/5/0.05 水/メタノール/TFA
移動相B: 5/95/0.025 水/メタノール/TFA
グラジエント: 時間(分) %B
0 10
0.5 100
1.2 100
1.21 10
総ランタイムは、注入から注入まで2分である。
【0233】
【表1】





【実施例4】
【0234】
VR1導入細胞及び膜調合液
当該実施例は、カプサイシン結合試験(実施例5)で用いるためのVR1導入細胞及びVR1含有膜調合液の調製を説明している。
【0235】
ヒトカプサイシン受容体(米国特許第6,482,611号の配列番号1、2又は3)の全長をコードするcDNAを、哺乳動物の細胞中で組み換え体を発現させるために、プラスミドpBK−CMV(Stratagene、 La Jolla, CA)にサブクローンする。
【0236】
ヒト胎児腎細胞(HEK293)に、標準の方法を用いて、ヒトカプサイシン受容体の全長をコードするコンストラクトを発現するpBK−CMVを導入する。導入された細胞をG418(400μg/ml)を含有する培地で2週間培養して選択し、安定に導入された細胞の集合(pool)を得る。この集合から独立したクローンを限界希釈法によって単離して、次の実験に用いる、安定にクローン化された細胞系を得る。
【0237】
放射性リガンド結合試験のために、細胞をT175細胞培養フラスコ中の抗生物質を含有しない培地に播種して約90%になるまで増殖させる。次いで、フラスコをPBSで洗浄し、5mMのEDTAを含有するPBS中に細胞を集める。細胞は緩やかに遠心分離してペレット状にし、試験まで−80℃で保管する。
【0238】
先の凍結した細胞を、組織ホモジナイザーを用いて氷冷したHEPESホモジナイズ緩衝液(5mMのKCl5、5.8mMのNaCl、0.75mMのCaCl、2mMのMgCl、320mMの蔗糖、及び10mMのHEPES;pH7.4)中でバラバラにする。組織のホモジネートはまず1000×g(4℃)で10分間遠心分離して核画分及び破片を除去し、次いで最初の遠心分離の上澄液をさらに35,000×g(4℃)で30分遠心分離して、部分的に精製された膜画分を得る。膜は試験前に再度HEPESホモジナイズ緩衝液に懸濁する。この膜ホモジネートの1アリコートを、ブラッドフォード法[Bradford method (BIO-RAD Protein Assay Kit, #500-0001, BIO-RAD, Hercules, CA)]による蛋白濃度測定に用いる。
【実施例5】
【0239】
カプサイシン受容体結合試験
当該実施例は、化合物のカプサイシン(VR1)受容体に対する結合親和性を測定するために用いることができる、代表的なカプサイシン受容体結合試験を説明するものである。
H]レジニフェラトキシン(RTX)を用いる結合の検討は、実質的には、「Szallasi and Blumberg (1992) J. Pharmacol. Exp. Ter. 262: 883-888」に記載されているように実施される。この手順では、結合反応の終了後にウシα酸性糖タンパク(1管あたり100μg)を添加することによって非特異的なRTX結合を減少させる。
【0240】
H]RTX(37Ci/mmol)は「Chemical Synthesis and Analysis Laboratory, National Cancer Institute-Fredrick Cancer Research and Development Center, Fredric, MD」で合成され、ここから入手した。また、[H]RTXは、一般業者からも入手できる(例えば、Amersham Pharmacia Biotech, Inc.; Piscataway, NJ )。
【0241】
実施例4の膜ホモジネートを前述のように遠心分離して、蛋白濃度が333μg/mlになるように、ホモジネート緩衝液に再懸濁する。結合試験用の混合物は氷の上に備え付け、[H]RTX(比活性:2200mCi/ml)、2μlの非放射性の試験化合物、0.25mg/mlのウシ血清アルブミン(コーンフラクションV)、及び5×10〜1×10個のVR1導入細胞を含有している。上記の氷冷HEPESホモジネート緩衝液(pH7.4)で、最終容量を500μl(競合結合試験用)又は1,000μl(飽和結合試験用)に調整する。非特異的結合は、1μMの非放射性のRTX(ALexis Corp.; San Diego, CA)が存在する時に生じるものであると定義する。結合を飽和させるために、[H]RTXを、1から2倍希釈にて、7〜1,000pMの濃度範囲で添加する。一般に、飽和結合曲線当り11個の濃度ポイントが収集される。
【0242】
競合結合試験は、60pMの[H]RTX及び各種の濃度の試験化合物の存在下で実施される。結合反応は、試験混合物を37℃の水浴に移したときに始まり、60分間培養した後、管を氷の上で冷却して終了する。膜に結合したRTXは、使用する2時間前に1.0%のPEI(ポリエチレンイミン)に予備浸漬したWALLACグラスファイバーフィルター(PERKIN-ELMER, Gaithersburg, MD)でろ過して非結合物から分離し、同様にα酸性糖タンパクに結合したRTXからも分離する。フィルターを一晩乾燥して、WALLAC BETA SCINTシンチレーション液を添加した後に、WALLAC 1205 BETA PLATEカウンターでカウントする。
【0243】
平衡結合変数は、Szallasiら(J. Pharmacol. Exp. Ter. 266: 678-683 (1993))によって記載されているように、コンピュータプログラムFIT P(Biosoft, Ferguson, MO)を用いて、アロステリックのヒルの式を測定値に当てはめて算出する。本発明の化合物は、この試験において、一般にカプサイシン受容体に対して1μM、100nM、50nM、25nM、10nM又は1nM未満のK値を示す。
【実施例6】
【0244】
カルシウム非固定化試験
本実施例は、試験化合物の作動薬及び拮抗薬活性を評価するために、用いる代表的なカルシウム非固定化試験を説明するものである。
【0245】
発現プラスミドを導入してヒトカプサイシン受容体を発現している細胞(実施例4に記載のような)をFALCONの壁が黒く、底が透明な、96ウェルプレート(#3904, BECTON-DICKINSON, Franklin Lakes, NJ)に播種し、70〜90%集密になるまで増殖させる。96ウェルプレートから培養液をとり除き、FLUO−3 AMカルシウム感受性染料(Molecular Probes, Eugene, OR)をそれぞれのウェルに加える(染料溶液:FLUO−3 AM(1mg)、DMSO(440μl)及び20%のプルロン酸のDMSO溶液(440μl)を、クレブス−リンガーHEPES(KRH)緩衝液(25mMのHEPES、5mMのKCl、0.96mMのNaHPO、1mMのMgSO、2mMのCaCl、5mMのグルコース、1mMのプロベネシド、pH7.4)で1:250に希釈し、希釈液をウェル当たり50μl加える)。プレートをアルミニウムホイルで覆って、5%のCOを含有する環境下、37℃にて1〜2時間培養する。培養後、プレートから染料を除き、細胞をKRH緩衝液で一回洗浄して、KRH緩衝液に再懸濁する。
【0246】
(カプサイシンEC50値の算出)
カプサイシン受容体を発現している細胞において、カプサイシン又はその他のバニロイド作動薬に対するカルシウム非固定化の応答を作動させる又は拮抗させる、試料化合物の能力を調べるために、先ず作動カプサイシンのEC50値を測定する。上記のようにして調製した、各ウェルの細胞に追加の20μlのKRH緩衝液及び1μlのDMSOを加える。KRH緩衝液中の100μlのカプサイシンを、FLIPR装置により各ウェルに自動的に移す。カプサイシンが誘導するカルシウムの非固定化は、FLUOROSKAN ASCENT(Labsystems; Franklin, MA)又はFLIPR(蛍光イメージングプレートリーダーシステム;Molecular Devices, Sunnyvale, CA)装置の何れかを用いて観察する。作動薬を適用してから30秒〜60秒後に得られたデータを用いて、カプサイシンの最終濃度が1nM〜3μMに於ける、8点の濃度応答曲線を作成する。KALEIDAGRAPHソフトウェア(Synergy Software, Reading, PA)を使用して、このデータを式:
y=a(1/(1+(b/x)))
に当てはめ、応答に対して50%の反応率を示す濃度(EC50値)を算出する。この式において、yは最大蛍光シグナルであり、xは作動薬又は拮抗薬(この場合は、カプサイシン)の濃度であり、aはEmaxで、bはEC50値に対応し、そしてcはヒル(Hill)係数である。
【0247】
(作動活性の測定)
試験化合物をDMSOに溶解し、KRH緩衝液で希釈し、直ちに、上記のように調製した細胞に加える。100nMのカプサイシン(おおよそEC90値の濃度)を、陽性対照として同様の96ウェルプレート中の細胞に加える。試験ウェル中の試験化合物の最終濃度は0.1nM〜5μMである。
【0248】
試験化合物のカプサイシン受容体の作動薬として作用する能力は、カプサイシン受容体を発現している細胞に於ける、化合物が誘発する蛍光応答を測定することにより、化合物濃度の関数として決定する。このデータを上記のように当てはめて、EC50値を得る。一般に、このEC50値は、1マイクロモル未満、好ましくは100nM未満、より好ましくは10nM未満である。各試験化合物の有効性の程度も、100nMのカプサイシンが誘発する応答に対する、特定の濃度(通常、1μM)の試験化合物が誘発する応答の割合を算定することにより決定される。
POS=100試験化合物による応答/100nMカプサイシンによる応答
【0249】
この分析は、試験化合物のヒトカプサイシン受容体作動薬としての能力及び有効性の両方の定量的な評価を提供する。ヒトカプサイシン受容体の作動薬は一般に、100μM未満の濃度で、又は好ましくは1μM未満の濃度で、最も好ましくは10nM未満の濃度で検出可能な応答を誘発する。ヒトカプサイシン受容体に対する有効性の範囲は、1μMの濃度で、好ましくは30POSより大きく、より好ましくは80POSより大きい。ある作動薬は、以下に記載される試験において、化合物の4nM未満の濃度で、より好ましくは10μM未満の濃度で、最も好ましくは100μM以下の濃度で、検出可能な拮抗薬活性がないことが示されるように、実質的に拮抗薬活性がない。
【0250】
(拮抗薬活性の測定)
試験化合物をDMSOに溶解し、試験ウェル中の試験化合物の最終濃度が1μM〜5μMになるように、20μlのKRH緩衝液で希釈して、上記のように調製した細胞に加える。調製細胞及び試験化合物を含有する96ウェルプレートを、暗所において室温で0.5〜6時間培養する。6時間を越えて培養を続けないことが重要である。蛍光応答を測定する直前に、上記のように測定したEC50値の2倍濃度の、KRH緩衝液中のカプサイシン100μlを、96ウェルプレートの各ウェルに、最終試験容量が200μlそしてカプサイシン濃度がEC50値と等しくなるように、FLIPR装置により自動的に加える。試験ウェル中の試験化合物の最終濃度は、1μM〜5μMである。カプサイシン受容体の拮抗薬は、対応する対照(すなわち、試験化合物の非存在下に、カプサイシンのEC50値の2倍濃度で処理した細胞)と比べて、10マイクモル以下の濃度で、好ましくは1マイクモル以下の濃度で、この応答を少なくとも約20%、好ましくは少なくとも約50%、最も好ましくは少なくとも約80%減少する。カプサイシンの存在下で、拮抗薬なしで観測される応答に対して、50%の減少を示すのに必要な拮抗薬の濃度が、拮抗薬のIC50値であり、この値は1マイクロモル、100ナノモル、10ナノモル又は1ナノモル未満が好ましい。
【0251】
ある好ましいVR1調節剤は、上記試験において、化合物の4nM未満の濃度で、より好ましくは10μM未満の濃度で、最も好ましくは100μM以下の濃度で、検出可能な作動薬活性がないことが示されるように、実質的に作動薬活性がない拮抗薬である
【実施例7】
【0252】
ミクロソームインビトロ半減期
当該実施例は、代表的な肝ミクロソーム半減期試験を用いる、化合物の半減期(t1/2値)の評価を説明する。
【0253】
プールされたヒト肝ミクロソームは、「XenoTech LLC,(Kansas City, KS)」から入手する。このような肝ミクロソームは、「In Vitro Technologies (Baltimore, MD)」 又は「Tissue Transformation Technologies (Edison, NJ)」からも入手できる。それぞれがミクロソームを25μl、試験化合物の100μM溶液を5μl及び0.1Mのリン酸緩衝液(0.1MのNaHPO19ml、0.1MのNaHPO81ml、HPOでpH7.4に調整)を399μl含有する、6つの試験反応物を調製する。ミクロソームを25μl、0.1Mリン酸緩衝液を399μl、及び既知の代謝特性を有する化合物(例えば、DIAZEPAM又はCLOZAPINE)の100μM溶液を5μl含有する、陽性対照としての7番目の反応物を調製する。反応物は39℃で10分間予備培養する。
【0254】
NADP(16.2mg)及びグルコース−6−リン酸(45.4mg)を100mMのMgCl(4ml)に希釈して、コファクター混合物を調製する。グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ懸濁液(Roche Molecular Biochemicals, Indianapolis, IN)の214.3μlを蒸留水(1285.7μl)に希釈して、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ溶液を調製する。出発反応混合物(コファクター混合物3mL;グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ溶液1.2mL)の71μlを6つの試験反応物のうちの5つ及び陽性対照に加える。100mMのMgCl(71μl)を6番目の試験反応物に加え、これを陰性対照として用いる。各時点(0、1、3、5、及び10分)での各試験反応物75μlを、氷冷アセトニトリル(75μl)を含有しているディープウェルを有する96ウェルプレートのウェルに、ピペットで添加する。試料をボルテックス撹拌及び遠心分離を3500rpmで10分行う(Sorval T 6000D centrifuge, H1000B rotor)。各反応物から75μlの上澄液を、それぞれのウェルに既知のLCMSプロファイルを有する化合物(内部標準)の0.5μM溶液150μlを含有させた96ウェルプレートのウェルに移す。各試料のLCMS分析を行い、代謝されなかった試験化合物をAUCとして測定し、化合物の濃度対時間をプロットして試験化合物のt1/2値を外挿する。
本発明の好ましい化合物は、ヒト肝ミクロソームにおいて、10分超4時間未満の、好ましくは30分〜1時間のインビトロt1/2値を示す。
【実施例8】
【0255】
MDCK毒性試験
当該実施例は、Madin Darbyイヌ腎(MDCK)細胞の細胞毒性試験を用いる化合物の毒性の評価を説明する。
【0256】
1μlの試験化合物を透明底の96ウェルプレート(PACKARD, Meriden, CT)の各ウェルに、試験における化合物の最終濃度が10マイクロモル、100マイクロモル又は200マイクロモルになるように加える。試験化合物を含まない溶媒を、対照のウェルに加える。
【0257】
MDCK細胞、つまりATCC no.CCL−34(American Type Culture Collection, Manassas, VA)を、ATCC製品情報紙の指示に従って無菌条件下に保つ。集密になったMDCK細胞をトリプシン処理し、採取し、そして温めた(37℃)培地(VITACELLイーグル最小必須培地、ATCCカタログ#30−2003)で、細胞0.1×10個/mlの濃度に希釈する。細胞を含まない100μlの温培地を含む標準曲線用の対照である5個のウェルを除いた各ウェルに、希釈した細胞100μlを加えた。ウェルプレートを37℃で、95%O及び5%COの雰囲気下で、振盪しながら2時間培養する。培養後、哺乳動物細胞溶解溶液(PACKARD(Meriden, CT)ATP−LITE−M発光ATP検出キットから)50μLを各ウェルに加え、ウェルをPACKARD TOPSEALステッカーで覆い、ウェルプレートを約700rpmで適当な振盪器上で2分間振盪する。
【0258】
毒性を生じる化合物は、非処理の細胞に比べて、ATPの産生を減少させる。処理及び非処理のMDCK細胞に於けるATPの産生を測定するためには、一般に、ATP−LITE−M発光ATP検出キットを製造会社の説明書に従って使用する。PACKARD ATP−LITE−M試薬は、室温にて平衡化させる。平衡化したら、凍結乾燥した基質溶液を基質緩衝液(キットから)5.5mL中で解凍する。凍結乾燥したATP標準溶液を、脱イオン水中で解凍して10mMのストックを得る。5個の対照ウェルについては、連続的に希釈したPACKARD標準10μlを、それぞれの標準曲線用の対照ウェルに、各ウェルの最終濃度が順次200nM、100nM、50nM、25nM及び12.5nMになるように加える。PACKARD基質溶液(50μL)を全てのウェルに加え、ウェルを覆い、プレートを約700rpmで適当な振盪器上で2分間振盪する。白色のPACKARDステッカーを各プレートの底に貼り、フォイルでプレートを包んで暗所に10分置くことによって試料を暗順応させる。次いで、発光計測器(例えば、PACKARD TOPCOUNT Microplate Scintillation and Luminescence Counter 又は TECAN SPECTRAFLUOR PLUS)を用いて22℃で発光を測定して、標準曲線からATPレベルを算出する。試験化合物で処理した細胞中のATPレベルを、非処理の細胞について測定したレベルと比較する。好ましい試験化合物の10μMで処理した細胞は、非処理の細胞の少なくとも80%、好ましくは90%のATPレベルを示した。試験化合物の100μM濃度を使用したときは、好ましい試験化合物で処理した細胞は、非処理の細胞において検出されたATPレベルの少なくとも50%、好ましくは少なくとも80%のATPレベルを示した。
【実施例9】
【0259】
脊髄後根神経節細胞試験
当該実施例は、化合物のVR1拮抗薬又は作動薬活性を評価するための代表的な脊髄後根神経節細胞試験について説明する。
DRG(脊髄後根神経節)は新生児ラットから解剖して得、解離して、標準的な方法(Aguayo and White (1992) Brain Research 570: 61-67)を用いて培養する。細胞を48時間培養した後、一回洗浄し、カルシウム感受性染料Fluo4AM(2.5〜10ug/ml;TefLabs, Austin, TX)と共に30〜60分間培養する。次いで細胞を一回洗浄する。細胞にカプサイシンを加えることにより、VR1に依存して細胞内のカルシウムレベルが増加するが、これは蛍光光度計によるFluo−4の蛍光の変化として監視する。
60〜180秒のデータを集めて最大蛍光シグナルを算定する。
【0260】
拮抗薬試験については、種々の濃度の化合物を細胞に加える。発光シグナルを化合物濃度の関数としてプロットして、カプサイシン活性化応答を50%阻害するのに必要な濃度、又はIC50値を決定する。カプサイシン受容体の拮抗薬は、好ましくは1マイクロモル、100ナノモル、10ナノモル又は1ナノモル未満のIC50値を有している。作動薬試験については、種々の濃度の化合物を、カプサイシンを添加しないで細胞に加える。カプサイシン受容体の作動薬である化合物は、VR1に依存する細胞内のカルシウムレベルが増加するが、これは蛍光光度計によるFluo−4の蛍光の変化として監視する。EC50値又はカプサイシン活性化応答の最大シグナルの50%を達成する濃度は、1マイクロモル未満、100ナノモル未満又は10ナノモル未満が好ましい。
【実施例10】
【0261】
疼痛緩和確認のための動物実験
当該実施例は、化合物がもたらす疼痛緩和の程度を評価する代表的な方法について説明している。
【0262】
A.疼痛緩和試験
以下の方法は疼痛緩和を評価するために使用される。
【0263】
(機械的異痛)
機械的異痛(無害の刺激に対する異常な応答)は本質的に、Chaplanら(J. Newrosci. Methods 53: 55-63(1994))並びに Tal及びEliav(Pain 64 (3): 511-518 (1998))らの記載のように評価する。各種硬度を有する一組のフォン・フライのフィラメント(von Frey filaments:一般に、1組に8〜14本のフィラメント)を、後足の足底面にフィラメントが曲がるのに十分な力で適用する。フィラメントを、この位置で3秒以内、又はラットが陽性の異痛応答を示すまで保持する。陽性の異痛応答とは、ラットが刺激された足を上げ、直ちに足を舐めるか振ることである。個々のフィラメントを適用する順序及び頻度は、ディクソンのアップダウン法を用いて決定する。試験は一組の内の中程度のヘアーから始め、最初に適用されたフィラメントでそれぞれ陰性又は陽性応答のどちらが得られたかによって、上行性又は下行性の連続法で次のフィラメントを適用する。
【0264】
このような化合物で処置されたラットが陽性の異痛応答を示すのに、非処置の又は賦形剤で処置された対照のラットに比べて、より硬い強度のフォン・フライのフィラメントでの刺激が必要であれば、化合物は機械的異痛様の症状の改善又は予防に有効であると言える。また更には、化合物を前投与又は後投与して、動物の慢性疼痛の試験を実施することができる。このような試験において有効な化合物とは、化合物で処置する前に応答を引き起こす、又は、慢性疼痛であるが未処置のままか賦形剤で処置されている動物に応答を引き起こす場合と較べて、化合物で処置した後に応答を引き起こすのに、より硬度の高いフィラメントを要するものである。試験化合物は疼痛が発現する前又は後に投与する。疼痛発現の後に試験化合物を投与する場合は、投与して10分から3時間経過した後に試験を実施する。
【0265】
(機械的痛覚過敏)
機械的痛覚過敏(疼痛刺激に対する誇張された応答)は実質的に、Kochら(Analgesia 2 (3): 157-164(1996))の記載のように評価する。ラットを温められた、穴の開いた金属の床でできているオリの個室に入れる。両後足の足底面に中程度に針を刺してから、後足を引っ込めている状態が持続している時間(すなわち、動物が足を床に戻す前の足を抱えている時間の量)を測定する。
【0266】
後足を引っ込める時間を統計学的に有意に減少させるならば、化合物は機械的痛覚過敏を減弱させると言える。試験化合物は、疼痛発現の前又は後で投与してもよい。疼痛発現の後に投与する化合物については、試験は投与して10分から3時間後に実施する。
【0267】
(熱的痛覚過敏)
熱的痛覚過敏(有害な熱刺激に対する誇張された応答)は本質的に、Hargreavesら(Pain. 32 (1): 77-88 (1988))の記載のように測定する。つまり、一定の放射熱源を動物の一方の後足の足底面 に当てる。引っ込める時間(すなわち、熱が当てられてから動物が足を動かすまでの時間の量)、又は熱閾値(thermal threshold or latency)と記述される、が動物の後足の熱に対する感受性を決定する。
【0268】
後足を引っ込める時間に於いて統計学的に有意な増加が認められれば(すなわち、反応に対する熱閾値が増加すれば)、化合物は熱的痛覚過敏を減弱させると言える。試験化合物は疼痛発現の前又は後で投与してもよい。疼痛発現の後に投与する化合物については、試験は投与して10分から3時間後に実施する。
【0269】
B.疼痛モデル
化合物の鎮痛効果を試験するために、疼痛を下記の方法を用いて導入することができる。一般に、本発明の化合物は、雄性SDラット及び少なくとも1つの下記モデルを用いて、先に述べた少なくとも1つの試験方法によって確認されるように、統計的に有意に疼痛を減弱させる。
【0270】
(急性炎症性疼痛モデル)
急性炎症性疼痛モデルはカラギナンモデルを用いて、本質的に、Fieldら(Br. J. Pharmacol. 121 (8): 1513-1522 (1997))の記載のように導入する。1〜2%のカラギニン溶液100〜200μlをラットの後足に注射する。注射して3〜4時間後に、熱及び機械刺激に対する動物の感応性を上記の方法を用いて試験する。試験化合物(0.01〜50mg/kg)を試験前又はカラギニン注射前に、動物に投与する。化合物は経口又は何れかの非経口経路を介して、又は足に局所的に投与することができる。当該モデルにおいて疼痛を緩和する化合物は、機械的異痛及び/又は熱的痛覚過敏を統計的に有意に減弱させる。
【0271】
(慢性炎症性疼痛モデル)
慢性炎症性疼痛モデルは下記の手順のうちの1つを用いて導入される。
1.本質的に、Bertorelliら(Br. J. Pharmacol. 128 (6): 1252-1258 (1999))及びSteinら(Pharmacol. Biochem. Behav. 31 (2): 455-51 (1998))による記載のように、完全フロインドアジュバント(CFA:加熱死させ乾燥した M.Tuberculosis 0.1mg)をラットの後足に注射する(100μlを背面に、100μlを足底面に)。
2.本質的に、Abbadieら(J. Neurosci. 14 (10): 5865-5871 (1994))による記載のように、150μlのCFA(1.5mg)をラットの脛骨足根骨関節に注射する。
どちらの手順においてもCFAの注射前に、動物の後足の機械的及び熱的刺激に対する個々の基準感受性を、各実験動物に対して求める。
【0272】
CFAの注射に続いて、ラットに上記のような熱的痛覚過敏、機械的異痛及び機械的痛覚過敏の試験を行う。症状の進展を確認するために、CFAの注射から5,6、7日目にラットを試験する。7日目に、動物を試験化合物、モルヒネ又は賦形剤で処置する。モルヒネ(1〜5mg/kg)の経口投与が、陽性対照として適当である。一般に、試験化合物の0.01〜50mg/kgの用量が用いられる。化合物は試験の前に単回ボーラス投与か、又は試験前の数日間、1日当たり1回、2回又は3回投与することができる。薬剤は経口若しくは何れかの非経口経路を介して、又は動物に局所的に投与する。
【0273】
結果は最大潜在的有効性に対する割合(Percent Maximum Potential Efficacy; MPE)として表す。0%MPEを賦形剤の鎮痛効果と定義し、100%MPEを動物がCFA投与前の基準感受性に戻ることと定義する。当該モデルに於いて疼痛を緩和する化合物は、少なくとも30%のMPEをもたらす。
【0274】
(慢性神経性疼痛モデル)
慢性神経性疼痛は本質的に、Bennett及びXie(Pain 33: 87-107 (1988))によって記載のように、ラットの坐骨神経に対する慢性の狭窄損傷(CCI)を用いて導入される。ラットを麻酔する(例えば、ペントバルビタール50〜65mg/kgの腹腔内投与で、必要により追加用量を投与して)。各後肢の外側面の毛をそり、消毒する。無菌法を用いて、後肢の外側面を大腿の真ん中あたりで切断する。大腿二頭筋をずばり切り開き、坐骨神経を露出する。各動物の一方の後肢上に、坐骨神経の周りに1〜2mm離して4つのゆるく結ぶ結紮を行う。他方の坐骨神経は結紮せず、処理しない。筋肉を連続法で閉じ、皮膚を創傷クリップ又は縫合糸で閉じる。ラットを上記のように、機械的異痛、機械的痛覚過敏及び熱的痛覚過敏について評価する。
【0275】
当該モデルに於いて疼痛を緩和する化合物は、試験の直前に単回ボーラス投与、又は試験前の数日間(1日当たり1回、2回又は3回)投与(0.01〜50mg/kg経口、注射又は局所投与)すると、機械的異痛、機械的痛覚過敏及び/又は熱的痛覚過敏を統計的に有意に緩和する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化001】

[式中、
Vは、C(R)(R)、NR、O又はSであり;
は、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、アミノ、C−Cアルキル、又はRと一緒になってオキソ基を形成し;
は、水素、C−Cアルキル、又はRと一緒になってオキソ基を形成し;
は、水素又はC−Cアルキルであり;
W、Y及びZは、それぞれ独立してN又はCRであり;
は、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、アミノ、C−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cハロアルコキシ、並びにモノ−及びジ−(C−Cアルキル)アミノからそれぞれ独立して選ばれ;
は、
(i)水素、ハロゲン、シアノ若しくは−COOHであるか;
(ii)炭素原子の各々が、ヒドロキシ及びC−Cアルキルからそれぞれ独立して選ばれる0〜2個の置換基で置換されている、C−Cアミノアルキルであるか;又は
(iii)式:−R−M−A−Rで表される基であり、
(式中、
は、C−Cアルキレンであるか、又はR若しくはRと結合して、Rからそれぞれ独立して選ばれる0〜2個の置換基で置換されている、4〜10員の炭素環若しくは複素環を形成し;
Mは、単共有結合、O、S、SO、C(=O)、OC(=O)、C(=O)O、OC(=O)O、C(=O)N(R)、OC(=O)N(R)、N(R)C(=O)、N(R)SO、SON(R)又はN(R)であり;
Aは、単共有結合、又はRからそれぞれ独立して選ばれる0〜3個の置換基で置換されている、C−Cアルキレンであり;そして
及びRは、存在するならば、
(a)R及びRの各々は、Rからそれぞれ独立して選ばれる0〜6個の置換基で置換されている、水素、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cアルカノン、C−Cアルキルエーテル、C−Cアルケニル、4〜10員の炭素環若しくは複素環であるか、又はRと一緒になって、4〜10員の炭素環若しくは複素環を形成するか;又は
(b)結合して、Rからそれぞれ独立して選ばれる0〜6個の置換基で置換されている、4〜10員の炭素環若しくは複素環を形成する)
Arは、式:LRで表される基からそれぞれ独立して選ばれる0〜3個の置換基で置換されている、5〜10員の炭素環又は複素環であり;
、A、A及びAは、それぞれ独立してN又はCRであり;
の各々は、
(i)式:LRで表される基からそれぞれ独立して選ばれるか;又は
(ii)隣接するRと一緒になって、式:LRで表される基からそれぞれ独立して選ばれる0〜3個の置換基で置換されている、縮合した5〜7員の炭素環若しくは複素環を形成し;
Lは、単共有結合、O、C(=O)、OC(=O)、C(=O)O、OC(=O)O、S(O)、N(R)、C(=O)N(R)、N(R)C(=O)、N(R)S(O)、S(O)N(R)及びN[S(O)]S(O)からそれぞれ独立して選ばれ(これらの式に於ける、mは0、1.及び2からそれぞれ独立して選ばれ、Rは、水素及びC−Cアルキルからそれぞれ独立して選ばれる);
は、次の(i)及び(ii)からそれぞれ独立して選ばれ;
(i)は、水素、ハロゲン、シアノ及びニトロであり;そして
(ii)は、Rからそれぞれ独立して選ばれる0〜6個の置換基で置換されている、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cハロアルキル、C−Cアルキルエーテル、3〜10員の複素環、モノ−及びジ−(C−Cアルキル)アミノ並びに(3〜10員の複素環)C−Cアルキルであり;そして
は、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、アミノカルボニル、シアノ、ニトロ、オキソ、COOH、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cアルコキシ、C−Cアルキルチオ、C−Cアルキルエーテル、C−Cアルカノイル、C−Cアルカノン、C−Cアルカノイルオキシ、C−Cアルコキシカルボニル、C−Cヒドロキシアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cシアノアルキル、フェニルC−Cアルキル、モノ−及びジ−(C−Cアルキル)アミノC−Cアルキル、C−Cアルキルスルホニル、モノ−及びジ−(C−Cアルキル)アミノスルホニル並びに(5〜7員の複素環)C−Cアルキルからそれぞれ独立して選ばれる]
で表される化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
WがCHであり、そしてY及びZのうちの少なくとも1つがNである、請求項1に記載の化合物又は塩。
【請求項3】
Arが、式:LRで表される基からそれぞれ独立して選ばれる0〜3個の置換基で置換されている、フェニル又は5若しくは6員の芳香族複素環である、請求項1に記載の化合物又は塩。
【請求項4】
Arが、ハロゲン、シアノ、COOH、C−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cアルコキシ又はC−Cハロアルコキシで置換されていてもよい、フェニル又はピリジルである、請求項1に記載の化合物又は塩。
【請求項5】
Arが、メチル、トリフルオロメチル、シアノ、フルオロ又はクロロで、3位が置換されている2−ピリジルである、請求項4に記載の化合物又は塩。
【請求項6】
がCH又はNである、請求項1に記載の化合物又は塩。
【請求項7】
、A及びAが、CR(ここに於いて、Rの各々が、水素、ハロゲン、シアノ、アミノ、COOH、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cハロアルキル、C−Cヒドロキシアルキル、C−Cアルキルエーテル、C−Cアルカノイル、モノ−及びジ−(C−Cアルキル)アミノ、C−Cアルキルスルホニル並びにモノ−及びジ−(C−Cアルキル)アミノスルホニルからそれぞれ独立して選ばれる)である、請求項6に記載の化合物又は塩。
【請求項8】
がCHであり;
及びAのうちの1つがCHで、他方がCRであり;そして
が、ハロゲン、シアノ、C−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cアルキルスルホニル又はモノ−若しくはジ−(C−Cアルキル)アミノスルホニルである、
請求項7に記載の化合物又は塩。
【請求項9】
がCHである、請求項8に記載の化合物又は塩。
【請求項10】
Vが、C(=O)、C(H)OH又はOである、請求項1に記載の化合物又は塩。
【請求項11】
が、
(i)水素若しくはハロゲン;又は
(ii)ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、モノ−及びジ−(C−Cアルキル)アミノ、C−Cアルキル及びC−Cハロアルキルから、それぞれ独立して選ばれる0〜4個の置換基で置換されている、C−Cアルキル、−(CHNH、−(CHNH(C−Cアルキル)、−(CHN(C−Cアルキル)、−(CH(5〜8員のヘテロシクロアルキル)、−(CHOH、又は−(CHO(C−Cアルキル)(ここにおいて、nの各々は0、1.2又は3である)である、請求項1に記載の化合物又は塩。
【請求項12】
が、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、モノ−及びジ−(C−Cアルキル)アミノ、C−Cアルキル及びC−Cハロアルキルから、それぞれ独立して選ばれる0〜4個の置換基で置換されている、ハロゲン、C−Cアルキル、C−Cアルキルエーテル、モノ−若しくはジ−(C−Cアルキル)アミノメチル、モルホリニルメチル、ピペラジニルメチル又はピペリジニルメチルである、請求項11に記載の化合物又は塩。
【請求項13】
式:
【化002】

(式中、
Y、Z及びBは、それぞれ独立してCH又はNであり;
は、ハロゲン、シアノ、C−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cアルコキシ又はC−Cハロアルコキシであり;
及びAのうちの1つはCHであり、そして他方はCRであり;
は、ハロゲン、シアノ、COOH、C−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cシアノアルキル、C−Cアルキルスルホニル又はモノ−若しくはジ−(C−Cアルキル)アミノスルホニルであり;
Vは(C=O)、C(H)H又はOであり;そして
は、
(i)水素若しくはハロゲン;又は
(ii)ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、モノ−及びジ−(C−Cアルキル)アミノ、C−Cアルキル並びにC−Cハロアルキルから、それぞれ独立して選ばれる0〜4個の置換基で置換されている、C−Cアルキル、−(CHNH、−(CHNH(C−Cアルキル)、−(CHN(C−Cアルキル)、−(CH(5〜8員のヘテロシクロアルキル)、−(CHOH、又は−(CHO(C−Cアルキル)(ここにおいて、nの各々は0、1.2又は3である)である)
で表される、請求項1に記載の化合物又は塩。
【請求項14】
ZがNである、請求項13に記載の化合物又は塩。
【請求項15】
が、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、モノ−及びジ−(C−Cアルキル)アミノ、C−Cアルキル並びにC−Cハロアルキルから、それぞれ独立して選ばれる0〜4個の置換基で置換されている、ハロゲン、C−Cアルキル、C−Cアルキルエーテル、モノ−若しくはジ−(C−Cアルキル)アミノメチル、モルホリニルメチル、ピペラジニルメチル又はピペリジニルメチルである、請求項13に記載の化合物又は塩。
【請求項16】
BがNであり、そしてRがメチル、トリフルオロメチル、フルオロ、クロロ又はシアノである、請求項13に記載の化合物又は塩。
【請求項17】
カプサイシン受容体作動のインビトロ試験に於いて、検出可能な程作動活性を示さない、請求項1に記載の化合物又は塩。
【請求項18】
カプサイシン受容体のカルシウム非固定化試験において、1マイクロモル以下のIC50値を有する、請求項1に記載の化合物又は塩。
【請求項19】
カプサイシン受容体のカルシウム非固定化試験において、100ナノモル以下のIC50値を有する、請求項1に記載の化合物又は塩。
【請求項20】
請求項1に記載の化合物又は薬学的に許容される塩の少なくとも1つを、生理学的に許容される担体又は賦形剤と共に包含する、医薬組成物。
【請求項21】
請求項1に記載の化合物又は塩の少なくとも1つを、カプサイシン受容体を発現する細胞と接触させ、これによりカプサイシン受容体のカルシウム伝導性を低減させる、細胞のカプサイシン受容体のカルシウム伝導性を低減する方法。
【請求項22】
細胞を動物体内でインビボ接触させる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
細胞が神経細胞である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
細胞が尿路上皮細胞である、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
接触中に化合物を動物の体液中に存在させる、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
化合物を1マイクロモル以下の濃度で動物の血液中に存在させる、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
動物がヒトである、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
化合物を経口で投与する、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
請求項1に記載の化合物又は塩の少なくとも1つを、バニロイドリガンドがカプサイシン受容体に結合するのを検出可能な程阻害するのに十分な条件下及び量で、カプサイシン受容体と接触させて、バニロイドリガンドがインビトロでカプサイシン受容体に結合するのを阻害する方法。
【請求項30】
請求項1に記載の化合物又は塩の少なくとも1つを、バニロイドリガンドがインビトロでクローンのカプサイシン受容体を発現する細胞に結合するのを検出可能な程阻害するのに十分な量で、カプサイシン受容体を発現する細胞と接触させて、これにより患者におけるバニロイドリガンドがカプサイシン受容体に結合するのを阻害する方法。
【請求項31】
患者がヒトである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
化合物を1マイクロモル以下の濃度で患者の血液中に存在させる、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
請求項1に記載の化合物又は塩の少なくとも1つの治療有効量を患者に投与し、これにより患者の疾患を軽減して、患者のカプサイシン受容体調節の応答に関連する疾患を治療する方法。
【請求項34】
患者が、(i)カプサイシンへの暴露、(ii)熱への暴露による火傷若しくは炎症、(iii)光への暴露による火傷若しくは炎症、(iv)催涙ガス、大気汚染若しくは唐辛子スプレーへの暴露による火傷、気管支収縮若しくは炎症、又は(v)酸への暴露による火傷若しくは炎症に罹っている、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
疾患が喘息又は慢性閉塞性肺疾患である、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
請求項1に記載の化合物又は塩の少なくとも1つの治療有効量を、疼痛に罹っている患者に投与し、これにより患者の疼痛を軽減して、患者の疼痛を治療する方法。
【請求項37】
化合物を1マイクロモル以下の濃度で患者の血液中に存在させる、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
患者が神経性疼痛に罹っている、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
疼痛が、乳房切除後疼痛症候群、切断痛、幻肢痛、口腔内神経性疼痛、歯痛、ヘルペス後神経痛、糖尿病性神経障害、反射交感神経性ジストロフィー、三叉神経痛、変形性関節症、関節リウマチ、繊維筋痛、ギラン・バーレ症候群、知覚異常性大腿神経痛、口内焼灼感症候群、両側性末梢神経障害、灼熱痛、神経炎、ニューロン炎、神経痛、AIDS関連神経障害、MS関連神経障害、脊髄損傷関連の疼痛、手術関連の疼痛、筋骨格の疼痛、背中の疼痛、頭痛、片頭痛、狭心症、陣痛、痔、消化不良、シャルコー痛、腸内ガス、生理、ガン、毒汚染、過敏性腸症候群、炎症性大腸炎及び外傷から選ばれる病気に関連しているものである、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
患者がヒトである、請求項36に記載の方法。
【請求項41】
請求項1に記載の化合物又は塩の少なくとも1つの治療有効量を、患者に投与し、これにより患者の痒みを軽減して、患者の痒みを治療する方法。
【請求項42】
請求項1に記載の化合物又は塩の少なくとも1つの治療有効量を、患者に投与し、これにより患者の咳又はしゃっくりを軽減して、患者の咳又はしゃっくりを治療する方法。
【請求項43】
請求項1に記載の化合物又は塩の少なくとも1つの治療有効量を、患者に投与し、これにより患者の尿失禁又は過活動膀胱を軽減して、患者の尿失禁又は過活動膀胱を治療する方法。
【請求項44】
請求項1に記載の化合物又は塩の少なくとも1つの治療有効量を、患者に投与し、これにより患者の減量を促進して、肥満患者の減量を促進する方法。
【請求項45】
化合物又は塩が放射性標識されている、請求項1に記載の化合物又は塩。
【請求項46】
(a)化合物がカプサイシン受容体と結合することが可能な条件下で、請求項1に記載の化合物又は塩と、試料を接触させること;及び
(b)カプサイシン受容体に結合した化合物の量を検出し、それにより試料中のカプサイシン受容体の有無を決定すること;
の工程からなる、試料中のカプサイシン受容体の有無を決定する方法。
【請求項47】
化合物が、請求項45に記載の放射性標識されている化合物であり、検出の工程が、
(i)結合した化合物から結合していない化合物を分離すること;及び
(ii)試料中の結合した化合物の有無を検出すること;
の工程からなる、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
(a)容器中の請求項20に記載の医薬組成物;及び
(b)当該組成物を疼痛の治療に用いるための説明書;
を含有する、包装された医薬製剤。
【請求項49】
(a)容器中の請求項20に記載の医薬組成物;及び
(b)当該組成物を咳又はしゃっくりの治療に用いるための説明書;
を含有する、包装された医薬製剤。
【請求項50】
(a)容器中の請求項20に記載の医薬組成物;及び
(b)当該組成物を肥満の治療に用いるための説明書;
を含有する、包装された医薬製剤。
【請求項51】
(a)容器中の請求項20に記載の医薬組成物;及び
(b)当該組成物を尿失禁又は過活動膀胱の治療に用いるための説明書;
を含有する、包装された医薬製剤。
【請求項52】
カプサイシン受容体調節の応答に関連する疾患を治療する薬剤を製造するための、請求項1〜20の何れか一項に記載の化合物又は塩の使用。
【請求項53】
病気が疼痛、喘息、慢性閉塞性肺疾患、咳、しゃっくり、肥満症、尿失禁、過活動膀胱、カプサイシンへの暴露、熱への暴露による火傷若しくは炎症、光への暴露による火傷若しくは炎症、催涙ガス、病原菌、大気汚染若しくは唐辛子スプレーへの暴露による火傷、気管支収縮若しくは炎症、又は酸への暴露による火傷若しくは炎症である、請求項52に記載の使用。

【公表番号】特表2007−528419(P2007−528419A)
【公表日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−503071(P2007−503071)
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【国際出願番号】PCT/US2005/008272
【国際公開番号】WO2005/086968
【国際公開日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(500015456)ニューロジェン・コーポレーション (48)
【Fターム(参考)】