説明

義歯の製作方法及びそれに用いる通路シール材

【課題】 適合性に優れ、人工歯の変位、欠損等の少ない良好な義歯を容易かつ安価に製作する方法を提供する。
【解決手段】 人工歯の基底部が露出した床用空洞4にレジン注入通路2とベント通路5が連通した成形型1のレジン注入通路を介して、スラリー状ないしペースト状の常温重合型の床用レジンを床用空洞内に充填するとともに各通路の所定位置にまでそれぞれ充填し、易変形性の通路シール材を、各通路にそれぞれ充填して各通路内の床用レジンの端面と密接させるとともに各通路を密封させた後、床用空洞内に充填された床用レジンを各通路内の床用レジンの重合に先立って重合させ、床用空洞内の床用レジンの重合に伴う重合収縮によって各通路内の床用レジンが各通路を床用空洞内の床用レジンに向かってそれぞれ移動するのに追従して、通路シール材が各通路内の床用レジンの端面と密接し各通路を密封したまま各通路をそれぞれ移動するようにしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、義歯の製作方法及びそれに用いる通路シール材に関するものである。さらに詳しくは、この発明は、常温重合型の床用レジンを成形型にレジン注入通路を介して充填して義歯を製作する際、床用レジンの重合収縮補償を行うことで、適合性等の良好な義歯を製作する方法およびそれに用いる通路シール材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
モノマー中にポリマー微粒子を含む重合性床用レジンを成形型に充填し、床用レジンを重合させて義歯を製作する場合、通常、床用レジンの重合収縮によって、義歯が全体的に小さくなり、そのため義歯と患者の粘膜面との適合性が得られなかったり、人工歯が成形型内で床用レジン側に引っ張られ適正な位置から移動(人工歯の変位)したり、義歯床に部分的な欠損(例えば、引け巣、気泡)が発生したりする。
【0003】
特許文献1には、適合性のある義歯を製作する方法として、補填用レジンをピストンを備えたシリンダー内に貯蔵し、シリンダーを冷却装置で冷却することで補填用レジンの重合を遅延させ、補填用レジンをピストンで加圧しながらスプルーを介して成形型内に圧入させて、床用レジンの重合中に生じる重合収縮を補填用レジンによって補うようにすることが記載されている。
【特許文献1】特開平6−30955号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の義歯の製作には、冷却装置、加圧装置等を備えた補填用レジンの自動填入装置が必要で、これは大型で複雑な構造のものとなり、高価とならざるを得ず、また、広い設置スペースを必要とし、操作性が劣り、また、一台で一つの義歯を製作することができるだけであって生産性が低い。そして、義歯の製作においては、冷却のためのエネルギーコストがかかり、また、義歯製作後にシリンダー内等に残った補填用レジンは、その都度廃棄することになり、原料の無駄が多く、廃棄物の処理コストも大きく、結局、義歯の製作コストのアップに繋がる。
この発明は、上記のような実情に鑑み鋭意研究の結果創案されたものであり、適合性に優れ、人工歯の変位、欠損等の少ない良好な義歯を、容易かつ安価に製作することのできる方法およびそれに用いる有用な材料を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、この発明の義歯の製作方法は、(1)人工歯の基底部が露出した床用空洞にレジン注入通路が連通した成形型の前記通路を介して、スラリー状ないしペースト状の常温重合型の床用レジンを前記床用空洞内に充填するとともに前記通路の所定位置にまで充填し、易変形性の通路シール材を、前記通路に充填して通路内の床用レジンの端面と密接させるとともに通路を密封させた後、前記床用空洞内に充填された床用レジンを前記通路内の床用レジンの重合に先立って重合させ、床用空洞内の床用レジンの重合に伴う重合収縮によって前記通路内の床用レジンが通路を前記床用空洞内の床用レジンに向かって移動するのに追従して、前記通路シール材が前記通路内の床用レジンの端面と密接し通路を密封したまま通路を移動するようにしたことを特徴とする。
【0006】
(2)人工歯の基底部が露出した床用空洞に更にベント通路が連通した成形型の前記レジン注入通路を介して、スラリー状ないしペースト状の常温重合型の床用レジンを前記床用空洞内に充填するとともに前記各通路の所定位置にまでそれぞれ充填し、易変形性の通路シール材を、前記各通路にそれぞれ充填して各通路内の床用レジンの端面と密接させるとともに各通路を密封させた後、前記床用空洞内に充填された床用レジンを前記各通路内の床用レジンの重合に先立って重合させ、床用空洞内の床用レジンの重合に伴う重合収縮によって前記各通路内の床用レジンが各通路を前記床用空洞内の床用レジンに向かってそれぞれ移動するのに追従して、前記通路シール材が前記各通路内の床用レジンの端面と密接し各通路を密封したまま各通路をそれぞれ移動するようにしたことを特徴としてもよい。
【0007】
(3)前記通路シール材が、スラリー状ないしペースト状の前記床用レジンの重合条件下では重合しないものであることが好ましい。
【0008】
そして、上記(3)において、(4)前記床用レジンが、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ポリマー、及び、常温重合開始剤を含有し、スラリー状ないしペースト状の組成物であり、前記通路シール材が、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ポリマー、及び、重合禁止剤を含有し、スラリー状ないしペースト状の組成物であることが好ましい。
【0009】
(5)前記成形型が石膏埋没材で形成され、スラリー状ないしペースト状の常温重合型の床用レジンが、前記レジン注入通路を介して流し込みによって充填されることが好ましい。
【0010】
(6)前記成形型は、前記床用空洞面から成形型の外面までの厚さが、前記床用空洞と前記通路の連通部から遠方部が肉薄とされたものであり、該成形型を圧力容器内に供給された温湯に浸漬し、前記圧力容器内を加圧して、前記床用空洞内に充填された床用レジンを前記通路内の床用レジンの重合に先立って重合させることが好ましい。
【0011】
この発明の義歯の製作方法に用いる通路シール材としては、(7)スラリー状ないしペースト状の前記床用レジンの重合条件下では重合しないものであることを特徴とする。
【0012】
そして、(8)前記通路シール材が、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ポリマー、及び、重合禁止剤を含有し、スラリー状ないしペースト状の組成物であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
この発明は、以上説明したように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。
すなわち、
(1)に係る発明によると、人工歯の基底部が露出した床用空洞にレジン注入通路が連通した成形型の前記通路を介して、スラリー状ないしペースト状の常温重合型の床用レジンを、前記床用空洞内に充填するとともに前記通路の所定位置にまで充填することは、特別な装置や技術を必要とせず容易である。また、易変形性の通路シール材を、前記通路に充填して、前記通路内の床用レジンの端面と密接させるとともに、通路を密封させることも特別な装置や技術を必要とせず容易であり、そして、前記床用空洞内に充填された床用レジンを通路内の床用レジンの重合に先立って重合させるだけで、重合に伴う重合収縮が床用空洞内の床用レジンに発生し、通路内の床用レジンが床用空洞内に充填された床用レジンに引っ張られて通路を床用空洞内の床用レジンに向かって移動し重合収縮の補償が行われる。その際、易変形性の通路シール材は、重合収縮補償に追従して、通路内の床用レジンの端面と密接し通路を密封したまま移動することになり、これによって、適合性に優れ、人工歯の変位、欠損等の少ない良好な義歯が得られる。
【0014】
(1)に係る発明によって、適合性に優れ、人工歯の変位、欠損等の少ない良好な義歯を得ることのできる根拠ははっきりしていないが、床用空洞内に充填された床用レジンを通路内の床用レジンに先だって重合させるだけで、前記したように重合に伴う重合収縮補償が行われるが、その際、通路内の床用レジンが易変形性の通路シール材によって外部と隔離された状態で重合収縮補償を担うことと、重合収縮補償に追従して、易変形性の通路シール材が床用レジンの端面と密接し通路を密封したまま移動することが主な要因と解される。
従って、(1)に係る発明によれば、特許文献1に記載の発明のような大型で、複雑な構造で、高価な冷却装置、加圧装置等を備えた装置を必要とせず、そのため、広いスペースを必要とせず、操作性が良好であって、生産性が高く、冷却のためのエネルギーコストを必要とせず、また、義歯製作後に廃棄する床用レジンも殆どなく、易変形性通路シール材を廃棄するとしても僅かで済むことから、原料の無駄を少なくすることができ、廃棄物の処理コストも低く、結局、適合性が優れ、欠損等の少ない良好な義歯を容易かつ安価に製造することができる。
【0015】
(2)に係る発明によると、人工歯の基底部が露出した床用空洞に更にベント通路が連通した成形型の前記レジン注入通路を介して、スラリー状ないしペースト状の常温重合型の床用レジンを、前記床用空洞内に充填するとともに前記レジン注入通路およびベント通路の所定位置にまで充填することは、特別な装置や技術を必要とせず容易であり、また、易変形性の通路シール材を、前記各通路にそれぞれ充填して、前記各通路内の床用レジンの端面と密接させるとともに、各通路を密封させることも特別な装置や技術を必要とせず容易である。そして、前記床用空洞内に充填された床用レジンを各通路内の床用レジンの重合に先立って重合させるだけで、重合に伴う重合収縮が床用空洞内の床用レジンに発生し、各通路内の床用レジンが床用空洞内に充填された床用レジンに引っ張られて各通路を床用空洞内の床用レジンに向かってそれぞれ移動し重合収縮の補償が行われる。その際、易変形性の通路シール材は、重合収縮補償に追従して、各通路内の床用レジンの端面と密接し各通路を密封したままそれぞれ移動することになり、これによって、適合性に優れ、人工歯の変位、欠損等の少ない良好な義歯が得られる。
【0016】
(3)に係る発明によると、前記通路シール材は、スラリー状ないしペースト状の前記床用レジンの重合条件下では重合しないものであることから、床用レジンが重合しても、通路シール材には影響がなく、適合性に優れ、人工歯の変位、欠損等の少ない良好な義歯が得られることになる。
【0017】
(4)に係る発明によると、重合前の前記床用レジンと前記通路シール材は、類似した組成であることから、通路内の床用レジンの端面との密接性と、通路の密封性が良好であり、また、床用レジンと異なって重合しないことから、床用空洞内に充填された床用レジンを通路内の床用レジンの重合に先立って重合させるだけで、重合に伴う重合収縮が床用空洞内の床用レジンに発生し、通路内の床用レジンが床用空洞内に充填された床用レジンに引っ張られて通路を床用空洞内の床用レジンに向かって移動して重合収縮補償が行なわれる際、通路シール材は、重合収縮補償に追従して、確実に通路内の床用レジンの端面と密接し通路を密封したまま移動することになり、これによって、適合性に優れ、人工歯の変位、欠損等の少ない良好な義歯が得られることになる。ここで使用される床用レジンと通路シール材を構成する素材は、歯科医院や歯科技工所において通常備えられているものであり、別途新たに導入する必要がない。
【0018】
(5)に係る発明によると、成形型が安価であり、成形型へのスラリー状ないしペースト状の常温重合型の床用レジンの充填が流し込み操作によって容易に行うことができ、適合性に優れ、人工歯の変位、欠損等の少ない良好な義歯を安価に製作することができる。
【0019】
(6)に係る発明によると、前記床用空洞内に充填された床用レジンを通路内の床用レジンの重合に先立って重合させることが容易であり、重合時間の短縮が可能であり、また、圧力容器内の加圧によって、床用レジンの重合時の気泡の発生を確実に抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、発明を実施するための最良の形態を示し、さらに詳しくこの発明について説明する。もちろんこの発明は以下の実施の形態によって限定されるものではない。
先ず、この発明で使用できるスラリー状ないしペースト状の常温重合型の床用レジンとしては、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ポリマー、及び、常温重合開始剤を含有する組成物、例えば、メチルメタクリレート(MMA)等の液体状のモノマーと、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等の粉末状ポリマーとを主成分とし、常温重合開始剤を含み、さらに、必要に応じ、酸化安定剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、疑似血管繊維等が添加されたものを挙げることができるが、常温重合開始剤を含有し床用レジンとして通常使用されるものであれば、特に限定されるものではない。
【0021】
この発明で使用される通路シール材としては、易変形性、すなわち、床用空洞内に充填された床用レジンを通路内の床用レジンの重合に先立って重合させ、床用空洞内の床用レジンの重合に伴う重合収縮によって前記通路内の床用レジンが通路を床用空洞内の床用レジンに向かって移動するのに追従して、通路内の床用レジンの端面と密接し通路を密封したまま通路を移動できるものであればよいが、床用レジンの重合条件下で重合等しないものであることが好ましく、更には、成形型に充填された床用レジンの組成と類似し、粘度を近似でき、断熱性があり、温湯に溶解しないことが後述するように好ましいが、これに限定されるものではない。
【0022】
そのような条件を満たすものとしては、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ポリマー、及び、重合禁止剤を含有し、スラリー状ないしペースト状の組成物、例えば、メチルメタクリレート(MMA)等の液体状のモノマーと、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等の粉末状ポリマーとを主成分とし、重合禁止剤を含むスラリー状ないしペースト状の組成物を挙げることができる。
前記した以外のものとしては、例えば、液体状モノマーがエチレングリコールジメタクリレート、粉末状ポリマーがポリメタクリル酸エチル(PEMA)を主成分とし、重合禁止剤を含むスラリー状ないしペースト状の組成物を挙げることができる。
【0023】
ここで使用できる重合禁止剤としては、6−tert−2,4−キシレノール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール等を挙げることができる。これら重合禁止剤は、単独でも、また、複数を併用してもよい。
【0024】
前記した液体状のモノマーと粉末状ポリマーとを主成分とし、重合禁止剤を含むスラリー状ないしペースト状の組成物における重合禁止剤と主成分とは、重合禁止剤が0.1〜10重量%、主成分が90〜99.9重量%であることが好ましい。重合禁止剤が0.1重量%未満では、常温重合型の床用レジンと接触する部分において、床用レジン中の重合開始剤の影響が発生し始めることから好ましくなく、10重量%を超えても重合不能性がそれ以上向上しないことから好ましくない。
通路シール材は、上記したものに限られず、例えば、寒天、ゼラチン、ペクチン、ワックス、シリコンゴム、ラテックス等が例示できる。
【0025】
以下、図面に基づきこの発明の最良の形態を更に詳細に説明する。もちろんこの発明は以下の態様によって限定されるものではない。
図1は、この発明の義歯の製作に使用する成形型の一実施の形態を示す説明図、図2は、図1に示す成形型の斜視図である。
この成形型1は、埋没材を石膏とする上顎の全部床義歯製作用であって、流し込み用に調整されたスラリー状ないしペースト状の常温重合型の床用レジンを、レジン注入通路2を介して成形型1に流し込み、重合させるのに使用するものである。成形型1は、人工歯3の歯冠部が石膏内に埋没される一方、基底部が床用空洞4に露出しており、床用空洞4にはレジン注入通路2とベント通路5が連通している。より具体的には、レジン注入通路2は、床用空洞4と右側最後臼歯より遠心側位置で連通して連通部4aを形成し、ベント通路5は、床用空洞4と左側最後臼歯より遠心側位置で連通して連通部4bを形成している。そして、レジン注入通路2とベント通路5は、いずれも成形型1の頂面において開口している。
【0026】
成形型1の底面側には前歯部の人工歯3の歯冠部が埋没されている。成形型1は、底面で縦置きできるようになっている。レジン注入通路2とベント通路5は、成形型1の前面からほぼ等距離に、裏面からもほぼ等距離に、そして、レジン注入通路2と右側面、ベント通路5と左側面もほぼ等距離に設けられている。
成形型1は、分割面によって上型1aと下型1bに分割できるようになっている。上型1aの凹部は義歯床の口腔側に対応する形状となっており、凹部に人工歯3の基底部が露出している。下型1bの凹部は粘膜面に対応する形状となっている。床用空洞4は上型1aと下型1bとを合体させることで形成されることになる。レジン注入通路2とベント通路5は、上型1aと下型1bの分割面に設けられたそれぞれ一対の対向した凹溝によって形成されることになる。
【0027】
床用空洞4と成形型1の外面との厚さは、床用空洞4とレジン注入通路2、ベント通路5の連通部4a、4bから遠方部で肉薄、すなわち、床用空洞4の前歯部と成形型の底面との厚さが最も肉薄となっている。この構造の成形型1は、前記した肉薄の部分を設けることにより、後述するように床用空洞内に充填された床用レジンを各通路内の床用レジンの重合に先立って重合させることができ、床用空洞内の床用レジンの重合に伴う重合収縮によって前記各通路内の床用レジンが各通路を床用空洞内の床用レジンに向かってそれぞれ移動するのに追従して、通路シール材が各通路内の床用レジンの端面と密接し各通路を密封したまま各通路をそれぞれ移動することになる。
【0028】
このような成形型1は、以下のようにして製作すればよい。
通法に従って作業模型8上に人工歯3が排列された蝋義歯9を、図3に示すようにゴム製のフラスコ下部10a内に設置し、石膏で一次埋没する。ここにおいて、蝋義歯9は、その前歯部とフラスコ下部10aの内側面との間隔tが最も短くなるように設置する。そして、石膏表面に分離剤を塗布した後、ワックス製のスプルー11a、11bを取り付ける(図4参照)。スプルー11aはレジン注入通路2を形成するためのものであり、スプルー11bはベント通路5を形成するためのものである。スプルーの径や長さは、床用レジンの重合収縮率、通路シール材に必要な充填量等を踏まえて適宜決定すればよい。
【0029】
次いで、蝋義歯9に排列した人工歯3、スプルー11a、11bが隠れる程度に筆、スパチュラ等を用いて石膏を盛りつけて2次埋没する。
そして、図5に示すように、フラスコ下部10aにゴム製のフラスコ上部10bを嵌合させ、フラスコ内を石膏で3次埋没する。なお、必要に応じ、3次埋没後に蝋義歯9の前歯部と成形型1の底面とが最も肉薄となるように成形型を後から削り取るようにしてもよい。
石膏が硬化した後、フラスコ上部10b、フラスコ下部10aを取り除き、流蝋することで、図1に示す成形型1が得られる。
【0030】
次に、図1に示す成形型1を用いた上顎全部床義歯の具体的製作方法を説明する。
上型1aは人工歯の基底部を除き凹部と凹溝、下型1bは凹部と凹溝に分離剤を塗布し、上型1aと下型1bを合体させ、輪ゴム13で固定する。
【0031】
スラリー状ないしペースト状の常温重合型の床用レジン14を、レジン注入通路2を介して成形型1内に流し込み、成形型1の床用空洞4に充填するとともに、レジン注入通路2とベント通路5の所定位置にまで充填する。床用レジン14の成形型1への流し込みは、ビーカー等を使用して行えばよいが、シリンジを用いて行ってもよい。レジン注入通路2とベント通路5の充填位置は、成形型1内に充填された床用レジン14の重合収縮率等を見越して安全な位置であるとともに、各通路内に充填された床用レジン14の端面と密接し通路を密封する通路シール材が、前述したようにその機能を果たすことのできる量を充填できる位置であればよい。
例えば、モノマー液成分としてMMA、ポリマー粉成分としてPMMAとを主成分とするスラリー状の常温重合型の床用レジンでは、重合収縮は、8〜9%の体積収縮率である。
【0032】
床用レジンが充填されたレジン注入通路2、ベント通路5の残りの空間には、前記した通路シール材がその機能を果たすことができる充填量を充填するだけの容積が確保されており、各通路にスラリー状の通路シール材を充填して、通路内の床用レジンの端面と密接させるとともに通路を密封した状態とする。
通路シール材のレジン注入通路2、ベント通路5への充填は、ビーカーでもシリンジでもよいが、レジン注入通路2、ベント通路5を満たしたとしても大した量ではないことからシリンジによることが好ましい。
【0033】
通路シール材としては、前記したスラリー状ないしペースト状のものは、成形型1に充填された床用レジンの組成と類似しており、粘度等を近似でき、断熱性があり、温湯に溶解しないことが好ましいが、これに限定されるものではない。
図6は、床用レジン14が、成形型1の床用空洞4に充填されるとともに、レジン注入通路2とベント通路5の所定位置にまで充填され、次いで、通路シール材15によってレジン注入通路2とベント通路5が密封された状態を示す。
【0034】
図6に示す状態において、床用レジンの重合は常温で進行するが、重合用の圧力容器内において、成形型1を温湯中に浸漬して重合を行うことが、義歯の製作時間を短縮したり、重合に伴う床用レジン中の気泡の発生を抑制したりすることができることから好ましい。
【0035】
図7は、図6に示す成形型1を圧力容器20内において、温湯中に浸漬した状態を示す。
重合用の圧力容器20は、既製のものが使用でき、容器本体21と蓋22を有し、蓋22には、加圧空気導入管23、圧力計24、安全弁25が設けられている。
【0036】
圧力容器内の温湯の水面位置は、床用空洞内に充填された床用レジンを各通路内の床用レジンの重合に先立って重合させ、床用空洞内の床用レジンの重合に伴う重合収縮によって各通路内の床用レジンが各通路を床用空洞内の床用レジンに向かってそれぞれ移動するのに追従して、各通路内の床用レジンの端面と密接し各通路を密封したまま各通路をそれぞれ移動できるように設定すればよいが、前記した成形型の構造等から、成形型を温湯中に全没しても(2点鎖線で示す水面位置参照)、床用空洞内に充填された床用レジンを各通路内の床用レジンの重合に先立って重合させ、床用空洞内の床用レジンの重合に伴う重合収縮によって各通路内の床用レジンが各通路を床用空洞内の床用レジンに向かってそれぞれ移動するのに追従して、各通路内の床用レジンの端面と密接し各通路を密封したまま各通路をそれぞれ移動できる。
【0037】
もちろん、成形型内の前歯部近傍までが温湯に浸漬される程度に成形型が浸漬されるだけでも(実線で示す水面位置参照)、床用空洞内に充填された床用レジンを各通路内の床用レジンの重合に先立って重合させ、床用空洞内の床用レジンの重合に伴う重合収縮によって各通路内の床用レジンが各通路を床用空洞内の床用レジンに向かってそれぞれ移動するのに追従して、各通路内の床用レジンの端面と密接し各通路を密封したまま各通路をそれぞれ移動できる。
【0038】
温湯の水温としては、前記した床用レジンでは、40〜55℃が好ましい。40℃未満では、残留モノマーが多くなり好ましくない。55℃を超えると、重合の進行が速く、内部歪みや、気泡が発生しやすい。
容器内への加圧は、0.1〜0.3MPaとすることが好ましい。圧力が0.1MPa未満では、上記水温での重合時に気泡が発生しやすくなり、容器の安全性から0.3MPaを超えると好ましくない。
重合時間は、容器中に収納する成形型の数、成形型内に充填する床用レジンの体積、重合開始剤等により異なるが、通常は20〜40分程度である。
【0039】
圧力容器内で成形型の床用空洞内に充填された床用レジンをレジン注入通路とベント通路内の床用レジンの重合に先立って重合させるだけで(通常、床用レジンの重合は前歯部の床から始まって口腔奥側の床へと進むことになる。)、重合に伴う重合収縮が床用空洞内の床用レジンに発生し、各通路内の床用レジンが床用空洞内に充填された床用レジンに引っ張られて各通路を床用空洞内の床用レジンに向かって移動し重合収縮の補償が行われる。その際、通路シール材は、易変形性であり、重合収縮補償に追従して、各通路内の床用レジンの端面と密接し各通路を密封したまま移動することになる。これによって、適合性に優れ、人工歯の変位、欠損等の少ない良好な義歯が得られる。圧力容器内に収納される成形型は、単数の場合もあるが、複数収納し同時に重合させることが可能であり、その場合、成形型の大きさによっては、水中に全没されるものもあるが、その場合でも、前記したように良好な義歯が製作されることから、水面位置等の調整もラフでよく、熟練を要せず容易である。
圧力容器に、複数の成形型を収納して床用レジンの重合を行わせれば、義歯の生産効率を向上させることができる。
【0040】
なお、床用空洞内に充填された床用レジンをレジン注入通路とベント通路内の床用レジンの重合に先立って重合させるのに、成形型の床用空洞と外面との厚さを調整するだけでなく、又は、厚さを調整しないでも、成形型の外面に断熱材を配設するようにしてもよい。
床用空洞内に充填された床用レジンを前記通路内の床用レジンの重合に先立って重合させるのに、成形型を温湯中に浸漬して行う方法に限られず、例えば、成形型を熱盤上に載置して行ってもよく、成形型の前歯部に熱風を吹き付けたり、赤外線を照射したりしてもよい。
【0041】
重合が完了した後、成形型1を圧力容器20から取り出し、通法に従い成形型1を徐冷する。次いで、輪ゴム13を取り外し、石膏鉗子等の道具を用いて、成形型1から義歯を取り出した後、レジン注入通路2、ベント通路5に残った床用レジンの硬化物を取り除き、仕上げ研磨する。通路シール材15は、石膏鉗子等の道具を用いて成形型1から義歯を取り出す際に除去し、廃棄すればよい。図8は、仕上げ研磨された義歯26の斜視図である。図8においては、参考のため、重合収縮補償した後でもレジン注入通路、ベント通路に残った硬化物を2点鎖線で示している。
【0042】
上記においては、フラスコとしてゴム製のものを使用したことから、フラスコを取り除いた成形型を使用したが、これに限られず、例えば、金属製のフラスコは熱伝導性が良好なことから、フラスコを取り除かないでそのまま使用してもよい。
【0043】
上記では、成形型として石膏埋没材を使用したものとして説明したが、これに限られず、成形型として、寒天、シリコンゴム、アルジネート等の埋没材を使用してもよい。成形型に、寒天、シリコンゴム等を使用する場合は、成形型は通常使用される金属製のフラスコ中において重合等させることになる。寒天、シリコンゴム等の埋没材を用いる義歯の製作は、前記した石膏埋没材を用いた義歯の製作に準じて行えばよく、詳細な説明は省略する。
【0044】
また、例えば、左側下顎部分床義歯のような場合には、ベント通路を必要とせず、レジン注入通路だけの成形型を用いて義歯を製作することもできる。これは、例えば、図9に示される成形型31となる。この成形型31では、ベント通路を形成しなくても、レジン注入通路32を介して床用レジンの注入をゆっくり行うことで、床用空洞33に空気溜まり等を生じさせることなく床用レジンを床用空洞33に充填すること等ができることから、図1に示す全部床義歯製作用の成形型1のようなベント通路を省略することができるものである。なお、レジン注入通路32の径を図1のそれより稍太くして、床用レジンの注入時に空気溜まり等を生じないようにすることが好ましい。
その他は、図1に示した成形型1と同様なことから、成形型31の構造の詳細、成形型31を用いた義歯の製作方法の詳細な説明は省略する。
【0045】
なお、部分床義歯の場合は、蝋義歯から部分床義歯に必要な部分だけを切り出し、床用空洞にレジン注入通路を連通させた成形型を製作し、該成形型を利用して義歯を製作するようにしてもよい。このような場合は、部分床義歯用の成形型は、温湯に全没した状態で重合させることになる。
【実施例】
【0046】
次に、実施例を比較例とともに示しさらに詳しく説明する。
(実施例1)
石膏埋没材を使用した上顎の全部床義歯製作用の成形型(図1参照)を用いて、前記した製作方法に従って全部床義歯を製作した。
以下、概要を示す。
通法に従って製作された上顎の全部床義歯用の蝋義歯をゴムフラスコ内で石膏埋没材で埋没して成形型を作成した。石膏埋没は1次埋没後、石膏表面に分離剤を塗布し、ワックス製のレジン注入通路用スプルー、ベント通路用スプルーを蝋義歯に接続し、2次埋没、3次埋没を行った。レジン注入通路用スプルー、ベント通路用スプルーの径は約7mm、長さは約20mmである。
【0047】
石膏の硬化後、ゴムフラスコから成形型を取り出した。得られた成形型の蝋を流蝋して、分割面で上型、下型に分離した。床用空洞の前歯部と底面の厚さは、約0.5cmである。上型の前歯部における分割面から前面までの厚さは約2cm、レジン注入通路と床用空洞との連通部に対応する箇所の分割面から前面までの厚さは約1.65cmである。また、ベント通路と床用空洞との連通部に対応する箇所の分割面から前面までの厚さは約1.65cmである。下型の前歯部における分割面から裏面までの厚さは約1cm、レジン注入通路と床用空洞との連通部に対応する箇所の分割面から裏面までの厚さは約0.65cmである。また、ベント通路と床用空洞との連通部に対応する箇所の分割面から裏面までの厚さは約0.65cmである。
【0048】
上型は人工歯の基底部を除き凹部と凹溝、下型は凹部と凹溝に分離剤を塗布し、上型と下型を合体させ、輪ゴムで固定した。
スラリー状ないしペースト状の常温重合型の床用レジンを、レジン注入通路を介して、成形型内に流し込み、成形型の床用空洞に充填するとともに、床用レジンの重合収縮率を見越してレジン注入通路とベント通路の所定位置(頂面から約0.7cmの深さを残した状態)にまで充填した。
【0049】
床用レジンは、ジメチルパラトルイジンを0.4重量%含有させたMMA40重量部、過酸化ベンゾイル(BPO)を0.5重量部含有するPMMA60重量部を混和してスラリー状となったものを使用した。この床用レジンにおける常温重合開始剤は、ジメチルパラトルイジンとBPOとの組合せからなることになる。
【0050】
次いで、別途用意した通路シール材をレジン注入通路とベント通路の残りの空間に注入して充填した。通路シール材のレジン注入通路への充填量は約0.27cmであり、ベント通路への充填量も約0.27cmである。
通路シール材は、エチレングリコールジメタクリレート75重量部、PEMA25重量部、重合禁止剤である6−tert−2,4−キシレノール1重量部からなるスラリー状のものを使用した。通路シール材のレジン注入通路、ベント通路への注入は、先に充填したスラリー状の床用レジンが稍ペースト状等に変化するまで待って行った。床用レジンが稍ペースト状等に変化したかどうかは、成形型を傾けて通路内の床用レジンの状態を確認したが、別途、ガラス板等に少量の床用レジンを載せ、床用レジンの変化を確認してもよい。
【0051】
そして、成形型を圧力容器内の温湯(55℃)に全没して、0.2MPaの圧力下において、30分床用レジンを重合させた(図7参照)。30分後の水温は50℃であった。
床用レジンの混和開始から成形型に充填し、床用レジンの圧力容器内への収納までの時間は5分と設定した。
重合完了後、23℃、湿度50%の恒温槽で30分放置して冷却した後、20℃の水中で30分冷却した。
【0052】
冷却後、水中から取り出した成形型を横方向に切断した後、義歯の適合性を以下の試験方法により評価した。
【0053】
<適合性試験方法>
成形型の上下型の石膏埋没材を除去して、作業模型上に義歯が設置された状態にし、作業模型から義歯を分離し、義歯のバリ取りをした後、義歯を作業模型に戻した際の作業模型と義歯床との間に生じたa〜eの5箇所の間隙、すなわち、浮き上がり量(図10参照)をデジタルマイクロスコープで測定する。
試験結果は、図11に示すとおりであり、適合性は良好である。
なお、義歯床には気泡等の発生もなく、人工歯の変位も確認されなかった。
【0054】
(比較例1)
比較例1は、通路シール材を使用しないで義歯を製作した。
具体的には、実施例1と同様にして製作した成形型を使用した。
すなわち、ワックス製のレジン注入通路用スプルー、ベント通路用スプルーの径は約7mm、長さは約20mmである。
石膏の硬化後、ゴムフラスコから成形型を取り出した。得られた成形型の蝋を流蝋して、分割面で上型、下型に分離した。床用空洞の前歯部と底面の厚さは、約0.5cmである。上型の前歯部における分割面から前面までの厚さは約2cm、レジン注入通路と床用空洞との連通部に対応する箇所の分割面から前面までの厚さは約1.65cmである。また、ベント通路と床用空洞との連通部に対応する箇所の分割面から前面までの厚さは約1.65cmである。下型の前歯部における分割面から裏面までの厚さは約1cm、レジン注入通路と床用空洞との連通部に対応する箇所の分割面から裏面までの厚さは約0.65cmである。また、ベント通路と床用空洞との連通部に対応する箇所の分割面から裏面までの厚さは約0.65cmである。
実施例1と同種の床用レジンをレジン注入通路を介して成形型内に流し込み、成形型の床用空洞に充填するとともに、レジン注入通路とベント通路の開口に至るまで充填した。
【0055】
成形型を図7に示す圧力容器内の温湯(55℃)に全没して、0.2MPaの圧力下において、30分床用レジンを重合させた。30分後の水温は50℃であった。
床用レジンの混和開始から成形型に充填し、床用レジンの圧力容器内への収納までの時間は5分と設定した。
重合完了後、23℃、湿度50%の恒温槽で30分放置して冷却した後、20℃の水中で30分冷却した。
【0056】
得られた義歯の適合性試験は、実施例1に記載の試験方法に従って行った。
試験結果は、図11に示すとおりであり、適合性に難があり、とりわけ、ベント通路の近傍では、適合性が劣っていた(図11のdの間隙参照)。
また、義歯床に稍気泡等の発生があり、人工歯の変位も稍認められた。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】この発明で使用する成形型の一実施の形態を示す説明図であって、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は平面図、(d)はA−A線断面図である。
【図2】図1に示す成形型の斜視図である。
【図3】図1に示す成形型の製作における一工程を示す説明図であって、(a)は正面図、(b)はB−B線断面図である。
【図4】図1に示す成形型の製作における他の工程を示す説明図である。
【図5】図1に示す成形型の製作における更に他の工程を示す説明図であって、(a)は正面図、(b)はC−C線断面図である。
【図6】図1に示す成形型を使用して義歯を製作する一工程を示す説明のための一部破断正面図である。
【図7】図1に示す成形型を使用して義歯を製作する他の工程を示す部分断面説明図である。
【図8】図1に示す成形型を使用して製作された義歯の斜視図である。
【図9】この発明で使用する成形型の他の実施の形態を示す正面図である。
【図10】この発明の成形型を使用して製作された義歯の適合性試験方法の説明図である。
【図11】この発明の成形型を使用して製作された義歯の適合性試験の結果を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
1 成形型
2 レジン注入通路
3 人工歯
4 床用空洞
5 ベント通路
8 作業模型
9 蝋義歯
10a フラスコ下部
10b フラスコ上部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工歯の基底部が露出した床用空洞にレジン注入通路が連通した成形型の前記通路を介して、スラリー状ないしペースト状の常温重合型の床用レジンを前記床用空洞内に充填するとともに前記通路の所定位置にまで充填し、
易変形性の通路シール材を、前記通路に充填して通路内の床用レジンの端面と密接させるとともに通路を密封させた後、
前記床用空洞内に充填された床用レジンを前記通路内の床用レジンの重合に先立って重合させ、床用空洞内の床用レジンの重合に伴う重合収縮によって前記通路内の床用レジンが通路を前記床用空洞内の床用レジンに向かって移動するのに追従して、前記通路シール材が前記通路内の床用レジンの端面と密接し通路を密封したまま通路を移動するようにしたことを特徴とする義歯の製作方法。
【請求項2】
人工歯の基底部が露出した床用空洞に更にベント通路が連通した成形型の前記レジン注入通路を介して、スラリー状ないしペースト状の常温重合型の床用レジンを前記床用空洞内に充填するとともに前記各通路の所定位置にまでそれぞれ充填し、
易変形性の通路シール材を、前記各通路にそれぞれ充填して各通路内の床用レジンの端面と密接させるとともに各通路を密封させた後、
前記床用空洞内に充填された床用レジンを前記各通路内の床用レジンの重合に先立って重合させ、床用空洞内の床用レジンの重合に伴う重合収縮によって前記各通路内の床用レジンが各通路を前記床用空洞内の床用レジンに向かってそれぞれ移動するのに追従して、前記通路シール材が前記各通路内の床用レジンの端面と密接し各通路を密封したまま各通路をそれぞれ移動するようにしたことを特徴とする請求項1記載の義歯の製作方法。
【請求項3】
前記通路シール材が、スラリー状ないしペースト状の前記床用レジンの重合条件下では重合しないものであることを特徴とする請求項1または2記載の義歯の製作方法。
【請求項4】
前記床用レジンが、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ポリマー、及び、常温重合開始剤を含有し、スラリー状ないしペースト状の組成物であり、
前記通路シール材が、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ポリマー、及び、重合禁止剤を含有し、スラリー状ないしペースト状の組成物であることを特徴とする請求項3記載の義歯の製作方法。
【請求項5】
前記成形型が石膏埋没材で形成され、スラリー状ないしペースト状の常温重合型の床用レジンが、前記レジン注入通路を介して流し込みによって充填されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の義歯の製作方法。
【請求項6】
前記成形型は、前記床用空洞面から成形型の外面までの厚さが、前記床用空洞と前記通路の連通部から遠方部が肉薄とされたものであり、
該成形型を圧力容器内に供給された温湯に浸漬し、前記圧力容器内を加圧して、
前記床用空洞内に充填された床用レジンを前記通路内の床用レジンの重合に先立って重合させることを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の義歯の製作方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の義歯の製作方法に使用される通路シール材が、スラリー状ないしペースト状の前記床用レジンの重合条件下では重合しないものであることを特徴とする通路シール材。
【請求項8】
前記通路シール材が、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ポリマー、及び、重合禁止剤を含有し、スラリー状ないしペースト状の組成物であることを特徴とする請求項7記載の通路シール材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−289679(P2007−289679A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−85292(P2007−85292)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000181228)株式会社ジーシーデンタルプロダクツ (15)
【Fターム(参考)】