説明

義歯

【課題】義歯床に強固に固着する裏装材を有する義歯の提供。
【解決手段】人口歯と、人口歯を支持しするポリメタクリル酸メチルを主成分とする義歯床2と、義歯床の人体へ固定する面に設けられる裏装材とを備えた義歯1であり、裏装材は、一般式


(m+n=50〜2000)で示されるシリコーン8にエチレンジメタクリレートを加えてゲル重合させたシリコーンゴム9である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、義歯に関するものである。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特許第3779530号公報
【0003】
従来、義歯の使用者にとって、硬い食品を咀嚼したときに生ずる衝撃は耐え難い激痛を伴い、また義歯のがたつきは食生活のみならず会話等の日常生活にも支障を来す煩わしいものであった。これは主に、口腔粘膜と密着する義歯床がポリメタクリル酸メチルからなる硬い樹脂であるため、患者の口内から起こした精巧な印象に基づいて作製したものであっても、精度的な限界により、義歯を装着した際に、義歯床と口腔粘膜との間にわずかな隙間が生ずるのは避けられないからであった。
【0004】
このような不満を解消するための対策の一つとして、患者自身が市販の義歯安定材を購入し、これを口腔粘膜に接触する面に塗った義歯を口内に装着する方法が考えられる。これにより、確かに硬い食品を痛みを感じることなく噛めたり、快適な装着感が得られたりするものの、そのような効果は長くて4〜5日程度しか続かず、また患者の手間や経済的負担も大きいため、根本的な解決には至っていない。
【0005】
このような事情から、昨今、装着後のがたつきがなく、快適に食品を咀嚼できる義歯の需要が拡大している。そこで、歯科技工の現場ではポリビニールシリコーン樹脂系の裏装材を定着させた義歯の開発が進められ、デンタックス社製モロプラストB(登録商標)等の実用化になっているものも一部ある。しかしながら、義歯床が直接口腔粘膜に触れる場合より、硬い物を噛んだときの痛みは幾分和らげられる程度であり、裏装材樹脂が比較的硬いため、痛みが完全になくなる訳ではなく、しかも裏装材の変色や変質といった経時劣化が著しいため、義歯の寿命が短い、はずれやすく安定した装着感が得られないという問題は依然としてあった。
【0006】
一方、医科分野で人体の代替用や補綴用に使用されている生体用シリコーンゴムを義歯の裏装材として用いることにより、義歯と口腔粘膜との生理的な親和性が図られるとともに、緩衝作用や義歯のがたつき防止が期待されるが、充分な接着力の確保が困難であったため、現状では生体用シリコーンゴムを裏装材に使用した義歯の開発は実現には至っていない。
【0007】
このような状況を解決するために、上記特許文献1に示される義歯が提案されている。
この発明は、メタクリル酸メチルの添加にて、義歯床の被着体に対し接着性を高めたシリコーンゴムを強固に接着してなる製品(義歯)を提供し得たものである。
そのメカニズムについて、シリコーンゴムの重合過程において、シリコーンとは均一に混ざり合わないMMA(メタクリル酸メチル)が外側にはじき出される形で重合することにより、シリコーンゴムの表面付近にPMMA(ポリメタクリル酸メチル)の薄い層が形成されるため、被着体に対する接着性が劇的に向上したものと考えられた。即ち、少量のMMAを含むシリコーンの重合に伴い、その表面近くでMMAが重合するため、重合により生成したシリコーンゴムの表面のPMMA層のメチル基と、義歯とこの材料であるPMMA樹脂のメチル基とのファンデルワールス的な相互作用によって、特に接着剤を用いなくても、シリコーンゴムが義歯床に強固に接着されるものと考えられた。
上記の義歯床と裏装材であるシリコーンゴムとの間の接着力は、上記の通りファンデルワールス的な力に頼るものであり、化学的な結合力を持つものではない。本願発明者において、義歯床と裏装材であるシリコーンゴムと間の接着力について、上記特許文献1の発明と異なるメカニズムにて、シリコーンゴムを義歯床に固定できないかとの考えが、経年生じた。
また、特許文献1の発明のように、MMAの溶剤が入ることで、シリコーンゴムに汚れが溜まりやすくなる。これは、上記のMMAの溶剤が入ることでシリコーンゴムの表面が多孔質となる(表面に多数の起伏ができる)ためである。
このため、本願発明者は、特許文献1とは異なるメガニズムにより、義歯床の裏装材であるシリコーンゴムの改善を目的として鋭意研究した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願発明は、上記特許文献1の発明と異なるメカニズムにて、義歯の接着性を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願第1の発明は、人口歯と、人口歯を支持し且つポリメタクリル酸メチルを主成分とする義歯床と、義歯床の人体へ固定する面に設けられる裏装材とを備えた義歯において、次の構成を採るものを提供する。
即ち、上記の裏装材は、一般式
【化1】

(m+n=50〜2000)で示されるシリコーンにエチレンジメタクリレートを加えてゲル重合させたシリコーンゴムであることを特徴とする。
【0010】
本願第2の発明は、上記本願第1の発明にあって、上記ゲルが架橋剤及び触媒を、更に有する義歯を提供する。
【0011】
本願第3の発明は、上記本願第1又は第2の発明にあって、シリコーンに対する上記エチレンジメタクリレートの割合が、0.05〜1容量%であることを特徴とする義歯を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本願第1〜3の発明の実施にて、MMAを添加したシリコーンゴムと異なるメカニズムにより、義歯床(レジン)と、裏装材であるシリコーンゴムとの間の接着力を著しく向上した。
また、MMAを不要とし、その溶剤を用いる必要がないので、シリコーンの表面が滑らかで、MMA(の溶剤)を用いたとき生じた表面の多孔質性が著しく改善された。このため、シリコーンゴムの汚れが大幅に低減した。
具体的には、エチレンジメタクリレートをシリコーンに加えて重合することにより、MMAを加えてSMMAをシリコーンゴムに(表面層として)偏在させた特許文献1のものと異なり、生成されたシリコーンゴムは、成分組成が均一に分散して表面がなめらかであり、また、分子間力ではなく、SMMAの義歯床に対して化学結合により、強固に固着する。
これによって、柔軟であり装着感が良好で、生体と親和性の高く、生体に対する負担が少ない、シリコーンゴムの義歯への利用を促進し、長期の義歯の使用を快適なものとした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、本願発明の好ましい実施の形態について、説明する。図1〜図4へ本願発明の義歯の製造過程を示す。
図1(A)〜(D)は、本願発明に係る義歯の製造工程の流れを説明する断面図である。図2は、本願発明に係る義歯を装着した患者の口内の様子の一例を示す断面図である。図3は、本願発明に係る義歯を装着した患者の口内の様子の一例を示す断面図である。図4は、本願発明に係る義歯を装着した患者の口内の様子の一例を示す断面図である。
【0014】
先ず、本願発明に係るシリコーンゴムの製造手順について説明する。一般式が下記の「化2」で表されるシリコーンのゲルに、架橋剤である一般式が下記の「化3」で表されるハイドロジェンポリシロキサンと、エチレンジメタクリレートとを添加してよくかき混ぜた後、直方体形状等をした重合容器内に密閉し、低温加熱若しくは室温で放置する。
上記のハイドロジェンポリシロキサンは、シリコーンのゲル100容量%に対し10容量%の比率で添加する(合計110容量%)。
上記のエチレンジメタクリレートは、シリコーンのゲル100容量%に対し0.05〜1容量%の比率で添加する(合計100.05〜101容量%/上記のハイドロジェンポリシロキサンとの総計110.05〜111容量%)。特に、エチレンジメタクリレートは、シリコーンのゲル100容量%に対し0.1〜0.6容量%の比率で添加するのが好ましい(合計100.1〜100.6容量%)。
シリコーンに対するエチレンジメタクリレートの添加量が0.05容量%に満たないと、剥離強度は極端に低下し、シリコーンゴムを義歯床に固定しておくのが困難になる。また、シリコーンに対するエチレンジメタクリレートの添加量が1.0容量%を越えると、シリコーンゴムは柔らかくなり過ぎ自立性を失い裏装材として使用することはできない。
【0015】
これにより、シリコーンに含まれる白金化合物を触媒としてシリコーンが重合(架橋)反応が進行し、表面が滑らかで弾力性のあるシリコーンゴムの試験片が得られた。
【0016】
【化2】

(m+n=50〜2000)
【化3】

(Rはメチル基又は水素、k+l=8〜98)
【0017】
次に、本願発明に係るシリコーンゴムを義歯床に裏装した義歯の製造方法について図1を参照して説明する。
図1(A)に示すように、人口歯100と、当該人口歯100が植設されたPMMA樹脂(レジン)からなる義歯床2とを備えた義歯(半製品)について、次の工程を施す。
先ず、このPMMA樹脂からなる義歯床2の人体に装着する側の面上に所定の厚みでパラフィンワックス3を塗布した義歯1を、そのパラフィンワックス3の塗布面が露出するように下フラスコ5内に石膏6で固定する。そして、図1(B)に示すように、パラフィンワックス3の塗布面を含む上方の空間に型模型となる石膏6’を流し込むとともに、予め下石膏層7を固めておいた上フラスコ4を下フラスコ5上に被せ、しばらく放置して石膏6’が完全に固まるの待つ。
【0018】
次いで、図1(C)に示すように、上下のフラスコ4,5を開輪してパラフィンワックス3を適当な溶剤で洗い流して除去する。これにより、上下のフラスコ4,5を閉じたとき、パラフィンワックス3があった部分に対応した形状のスペースが確保される。そして、義歯床2のパラフィンワックス3が取り除かれた面を乾燥させる。
【0019】
その後、架橋剤のハイドロジェンポリシロキサン(上記の通りシリコーンに対し10容量%)、エチレンジメタクリレート(上記の通りシリコーンに対し0.05〜1.0容量%)及び白金触媒を添加して混ぜ合わせたシリコーン8を義歯床2の上から注ぐ。その後、図1(D)に示すように、上フラスコ4を被せてボルト14で密閉し、圧力釜(図示せず)内に収容し、1.2〜3.5気圧の圧力下、100℃〜130℃の温度で約15〜25分加熱する。これにより、パラフィンワックス3(図1(B))のあった部分の空洞形状に合致するように、シリコーン8が重合して柔軟なゴム状に硬化する。
このとき、シリコーンゴム9が義歯床2の人体に装着する側の面に接着される。
【0020】
そして、再び上下のフラスコ4,5を開輪し、義歯1を石膏6から掘り出し、周囲のバリ等を取り除く。これにより、義歯床2の人体に装着する側の面にシリコーンゴム9が裏装された義歯1が得られる。
【0021】
図2〜図5は、上記のようにして作製された義歯を装着した患者の口内の様子を示す断面図である。図2は義歯床2の口腔粘膜10に触れる部分の全体にシリコーンゴム9が裏装されている例であり、主に下臼歯のような硬い物を噛む歯にはこのような形態の義歯とすることで、衝撃を大幅に軽減することができる。
【0022】
図3、図4は義歯床2の口腔粘膜10に触れる部分の一部(直接力が加わる部分)にシリコーンゴム9が裏装されている例であり、図3は装着される義歯が下臼歯の場合、図4は上前歯の場合を示している。これによると、口腔粘膜10に伝わる衝撃を緩和するのに、少量のシリコーンゴム9で足りるため、義歯の製造コスト削減が図られる。
【0023】
更に、図5は口蓋裂傷等により上顎洞11の一部が鼻腔12側に貫通した患者用の義歯の一例であり、患部13に挿入されるように形成された義歯床2の挿入部2aにシリコーンゴム9を局部的に周設している。これにより、患部13が柔軟なシリコーンゴム9で完全に隙間なく塞がれるため、空気漏れを防いで発音の明瞭さが確保されるとともに、飲料等が鼻腔12内へ流入するのを防止することができる。
【実施例】
【0024】
次に、本願発明に係る義歯の義歯床であるレジンと、裏装材である上記のシリコーンゴムとの間の固着について、実施例及び比較例を示す。
【0025】
(実施例1)
シリコーンゴム 100 容量%
エチレンジメタクリレート 0.05容量%
合計 100.05容量%
【0026】
(実施例2)
シリコーンゴム 100 容量%
エチレンジメタクリレート 0.1 容量%
合計 100.1 容量%
【0027】
(実施例3)
シリコーンゴム 100 容量%
エチレンジメタクリレート 0.2 容量%
合計 100.2 容量%
【0028】
(実施例4)
シリコーンゴム 100 容量%
エチレンジメタクリレート 0.5 容量%
合計 100.5 容量%
【0029】
(実施例5)
シリコーンゴム 100 容量%
エチレンジメタクリレート 0.6 容量%
合計 100.6 容量%
【0030】
(実施例6)
シリコーンゴム 100 容量%
エチレンジメタクリレート 1.0 容量%
合計 101.0 容量%
【0031】
(比較例)
シリコーンゴム 100 容量%
メタクリル酸メチル 0.3 容量%
合計 100.3 容量%
【0032】
上記の実施例及び比較例について剥離試験を行った。各実施例・比較例の試験片として、横幅を30mmとし厚みを1.5mmとするレジンにて形成した小片へ、同じく横幅を30mmとし厚みを1.5mmとする各実施例及び比較例のシリコーンゴムにて形成した小片を積層したものを用いた。即ち、これらの試験片に対して、180度剥離接着強さ試験を行った。具体的には、この試験片について、インストロン万能材料試験機5582型を用い、縦幅方向に180度の角度で、両小片の重なり合う端部を引張った。クロスヘッドスピード(引張り速度)は、200mm/分とした。試験環境の温度は23℃、湿度は50%RHである。
上記の実施例1〜6の試験片は、(義歯と形状は異なるが)上記図1に示す製造方法で作成したものであり、何れも上記の図1(D)に示す工程において、釜の気圧を3.5気圧とし、115℃で15分加熱を行った。また、比較例についても、添加剤以外の条件については、上記実施例と同様とした。
各実施例及び比較例の夫々について、次の4つのサンプルを用意し、サンプル夫々の成分配合比率を、何れも、上記の通りとし、各サンプルについて剥離試験を行なってその平均値を取り、各実施例及び比較例の試験結果とした。
即ち、レジン樹脂に株式会社ニッシンのナチュラルレジン(商品名)を用い、シリコーンゴムにファクターII社のリアルスティック A−588−2(商品名及び品番)を用いたサンプルと、レジン樹脂に株式会社CGのアクロン(商品名)を用い、シリコーンゴムに上記のリアルスティック A−588−2を用いたサンプルと、レジン樹脂にサンメディカル株式会社のメタデント(登録商標/商標権者:三井化学株式会社)を用い、シリコーンゴムに上記のダウ・コーニング社のSILASTIC MDX4−4210(登録商標及び品番)を用いたサンプルと、レジン樹脂に上記のメタデントを用い、シリコーンゴムにネオ製薬工業株式会社のエヴァタッチ スーパー(エヴァタッチ/登録商標)を用いたサンプルを用意した。
その結果(平均値)は、次の通りであった。
【0033】
(実施例1)
22.8Nの引張り力を加えたときにレジン小片とシリコーンゴム小片とが剥離し始めた。レジン小片とシリコーンゴム小片の何れも千切れは生じなかった。
【0034】
(実施例2)
30Nの引張り力を加えたときにレジン小片とシリコーンゴム小片とが剥離し始めた。レジン小片とシリコーンゴム小片の何れも千切れは生じなかった。
【0035】
(実施例3)
58.3Nの引張り力を加えたときにレジン小片とシリコーン小片とが剥離し始めた。シリコーンゴム小片側に、千切れが生じた。
【0036】
(実施例4)
64Nの引張り力を加えたときにレジン小片とシリコーンゴム小片とが剥離し始めた。シリコーンゴム小片側に、千切れが生じた。
【0037】
(実施例5)
18.2Nの引張り力を加えたときにレジン小片とシリコーン小片とが剥離し始めた。シリコーンゴム小片の軟化が生じた。
【0038】
(実施例6)
15.3Nの引張り力を加えたときにレジン小片とシリコーン小片とが剥離し始めた。シリコーンゴム小片の軟化が生じた。
【0039】
(比較例)
23Nの引張り力を加えたときにレジン小片とシリコーン小片とが剥離し始めた。両小片は、千切れなく剥離した。
【0040】
上記の通り、本願発明の実施例1〜5の何れもが、15N以上の剥離強度を確保していることが確認でき、実用に耐えるものであることが分かる。特に、実施例2〜実施例4を見れば、シリコーンゴム100容量%に対するエチレンジメタクリレート添加量0.1容量%〜0.6容量%の範囲において、剥離強度は30N以上を示しており、比較例の23Nを上回っていることが分かる。また、とりわけ、実施例3及び実施例4を見れば、シリコーンゴム100容量%に対するエチレンジメタクリレートの添加量が0.2容量%〜0.6容量%の範囲では、比較例の倍以上の剥離強度を得ていることが分かる。
【0041】
図6(A)に、実施例4の試験片表面の、走査電子顕微鏡(SEM)による1000倍の像を示す。また、図6(B)へ、比較例の試験片表面の、SEMによる1000倍の像を、更に、図7へ比較例の試験片表面の、SEMによる1500倍の像を示す。この図6及び図7の各SEM像について、表面の起伏を見易くするため、試験片表面を正面視するのではなく、斜めから俯瞰した状態を写したものを示している。
【0042】
この図6(A)と図6(B)とを比較すると、本願発明の実施例4の試験片表面(図6(A))のほうが、比較例の試験片表面(図6(B))よりも滑らかな(起伏が少ない)ことが分かる。更に1500倍にSEMの拡大倍率を上げても、図7に示す通り、比較例の試験片表面は、実施例4の試験片表面に比べて、依然表面の起伏が多数見られる。そして、図6(B)及び図7に破線で示す通り、比較例の試験片表面には、その起伏の凹みにゴミaが多数付着していることが分かる。図6(A)へ示す通り、実施例4の試験片の表面には、このようなゴミは見られない。
実施例及び比較例の各試験片は、形成後、超音波洗浄を行い、更にSEM像を得るため通常行われる表面の付着物を除く下準備を施しているが、上記の通り、形成後、観察前に付着したゴミが残留しているのである。このように、比較例においては、表面の起伏のために汚れが付きやすく、一旦付いた汚れは、簡単に落ちないことが分かる。
【0043】
図8(A)に、実施例4の試験片表面の、レジン層(レジン小片)x1とシリコンゴーム層(シリコーンゴム小片)y1の境界付近を500倍に拡大したSEM像を示し、図8(B)に、比較例の試験片表面の、レジン層(レジン小片)x2とシリコンゴーム層(シリコーンゴム小片)y2の境界付近を500倍に拡大したSEM像を示す。図8(A)及び(B)は、何れも、試験片表面を正面視したものである。
図8(B)に見られる通り、比較例の試験片表面では、レジン層x2とシリコーンゴム層y2との境界線k−kが直線的に現れ、両層の境界は明確である。これに対して、図8(A)に見られる通り、実施例4の試験片表面では、レジン層x1とシリコーンゴム層y1の境界線k−kは入り組んで両層の境界が曖昧となっている。これは、両層が化学的に結合していることを示すものである。
このようなことから、本願発明は、特許文献1の発明と異なるメカニズムにて、義歯床に裏装材を強固に固定するものであることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】(A)〜(D)は、本願発明に係る義歯の製造工程の流れを説明する断面図である。
【図2】本願発明に係る義歯を装着した患者の口内の様子の一例を示す断面図である。
【図3】本願発明に係る義歯を装着した患者の口内の様子の一例を示す断面図である。
【図4】本願発明に係る義歯を装着した患者の口内の様子の一例を示す断面図である。
【図5】本願発明に係る義歯を装着した患者の口内の様子の一例を示す断面図である。
【図6】(A)は本願発明の実施例4の試験片表面の1000倍のSEM像を示す説明図であり、(B)は比較例の試験片表面の1000倍のSEM像を示す説明図である。
【図7】上記比較例の試験片表面の1500倍のSEM像を示す説明図である。
【図8】(A)は本願発明の実施例4の試験片表面の500倍のSEM像を示す説明図であり、(B)は比較例の試験片表面の500倍のSEM像を示す説明図である。
【符号の説明】
【0045】
1 義歯
2 義歯床
3 パラフィンワックス
4 上フラスコ
5 下フラスコ
6,6’ 石膏
8 シリコーン
9 シリコーンゴム
10 口腔粘膜
11 上顎洞
12 鼻腔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人口歯と、人口歯を支持し且つポリメタクリル酸メチルを主成分とする義歯床と、義歯床の人体へ固定する面に設けられる裏装材とを備えた義歯において、
上記の裏装材は、一般式
【化1】

(m+n=50〜2000)で示されるシリコーンにエチレンジメタクリレートを加えてゲル重合させたシリコーンゴムであることを特徴とする義歯。
【請求項2】
上記ゲルが架橋剤及び触媒を、更に有する請求項1記載の義歯。
【請求項3】
シリコーンに対する上記エチレンジメタクリレートの割合が、0.05〜1容量%であることを特徴とする請求項1又は2の何れかに記載の義歯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−81479(P2008−81479A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−266778(P2006−266778)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(500314234)
【Fターム(参考)】