羽ばたきロボットシステム
【課題】羽ばたきロボットの浮上の開始を発射機構によって補助する場合にも羽ばたきロボットが自律して飛行することができなくなるおそれがない羽ばたきロボットシステムを提供する。
【解決手段】羽ばたきロボットは、発射装置によって発射された後、一旦、自己の運動状態がホバリング状態になるように、羽部に羽ばたき運動をさせる。そのため、羽ばたきロボットが発射装置によって発射された後に姿勢を維持することができなくなるという不具合の発生が防止される。
【解決手段】羽ばたきロボットは、発射装置によって発射された後、一旦、自己の運動状態がホバリング状態になるように、羽部に羽ばたき運動をさせる。そのため、羽ばたきロボットが発射装置によって発射された後に姿勢を維持することができなくなるという不具合の発生が防止される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、羽ばたき運動によって浮上した状態で移動する羽ばたきロボットを有する羽ばたきロボットシステムに関し、特に、羽ばたきロボットを空中に発射する発射装置を備えた羽ばたきロボットシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
羽ばたきロボットは、羽部に羽ばたき運動をさせることによって浮上した状態で移動するものであり、既存のヘリコプタまたは固定翼機との比較において、機動性に優れている。羽ばたきロボットを備えた羽ばたきロボットシステムは、既に、特開2003−118697号公報に開示されている。この特許文献に開示された羽ばたきロボットは、小型、軽量、かつ、機動性に優れている。
【特許文献1】特開2003−118697号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
羽ばたきロボットが浮上するためには、羽ばたき運動によって生じる流体力が、羽ばたきロボットにかかる重力を上回っている必要がある。また、羽ばたきロボットが自ら生み出した流体力のみによって浮上を開始するためには、そのための駆動力を供給し得る電源を羽ばたきロボットに搭載することが必要である。羽ばたきロボットを自ら生み出した流体力のみによって浮上させるためのパワーを得ることができる電源としては、たとえば、リチウムポリマー電池が考えられる。この電源は、現段階では、羽ばたきロボットの自由な浮上移動を実現するためには、容量が小さ過ぎる。
【0004】
前述のことをより具体的に説明すると、次のようになる。
従来の羽ばたきロボットは、静止状態から羽ばたき運動を開始する。そのため、羽ばたきロボットが羽ばたき運動を開始した時点から電池が消耗し始める。一般に、羽ばたきロボットが連続して飛行し得る時間は、電池の容量に依存し、同一種類の電池であれば、小型かつ軽量になるほど、容量は小さくなる。そのため、羽ばたきロボットに搭載され得る市販のリチウムポリマー電池を用いた場合には、連続して飛行し得る時間は数秒から数十秒に制限されてしまう。また、羽ばたきロボットが飛行し得る領域も、電池の容量によって制限されてしまう。そこで、羽ばたきロボットが発射されるときに外部から羽ばたきロボットに外力を与えることによって、羽ばたきロボットの浮上開始に必要な電池の消耗量を低減することが必要である。
【0005】
そこで、羽ばたきロボットの浮上の開始を補助機構によって補助することが考えられる。たとえば、羽ばたきロボットの大きさと同程度の大きさを有する物体に外力を与える機構は既存の技術によって実現されている。しかしながら、その補助機構が羽ばたきロボットの発射のために適用されたとしても、上述の羽ばたきロボットが外力を受けることによって浮上を開始した場合に、その外力を受けた羽ばたきロボットの運動状態を制御するための手法が確立されていない。そのため、羽ばたきロボットは、発射機構から外力を受けることによって発射された後、羽ばたき運動を開始するタイミングおよびいかなる羽ばたき運動をすればよいかを把握していない。したがって、羽ばたきロボットは、発射された状態から通常の羽ばたき飛行状態へ効率的に移行することができない。その結果、発射機構を使用することにより、使用しない場合よりも電源の消費が大きくなるおそれもある。また、羽ばたきロボットは、補助機構の補助を受けて発射された後、自身の姿勢を制御するこができないために、自律して飛行することができないおそれもある。なお、本明細書において、「姿勢」とは、羽ばたきロボット100のアクチュエータ等が内蔵されている筐体の傾き、すなわち、X軸まわり、Y軸まわり、およびZ軸まわりのそれぞれの回転角によって特定される値であって、羽部の傾きをおよび方向を含むものではない。
【0006】
本発明は、上述の問題に鑑みなされたものであり、その目的は、羽ばたきロボットの浮上の開始を発射機構によって補助する場合にも羽ばたきロボットが自律して飛行することができなくなることを防止するための機能を有する羽ばたきロボットシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の局面の羽ばたきロボットシステムは、羽部の羽ばたき運動により流体が存在する空間を羽ばたき飛行し得る羽ばたきロボットと、羽ばたきロボットに外力を加えることによって、羽ばたきロボットを空中に向かって発射させ得る発射装置とを備えている。また、羽ばたきロボットが、自己の運動状態を検出し得るセンサと、自己が発射装置によって空中に発射された後、一旦、自己の運動状態がホバリング状態になるまで、羽部に自己の運動状態をホバリング状態にするための羽ばたき運動をさせる制御部とを含んでいる。
【0008】
この構成によれば、羽ばたきロボットが浮上の開始のために発射装置が用いられる。そのため、羽ばたきロボットが浮上を開始するときに必要なエネルギーが低減される。また、羽ばたきロボットは、発射装置によって発射された後、一旦、自己の運動状態がホバリング状態になるように、羽部に羽ばたき運動をさせる。そのため、羽ばたきロボットが発射装置によって発射された後に姿勢を維持することができなくなるという不具合の発生が防止される。
【0009】
なお、羽ばたきロボットは、ホバリング状態において多少振動している。そのため、羽ばたきロボットの速度は完全にはゼロになっていない。したがって、羽ばたきロボットは、センサによって検出された自己の運動状態の情報から、たとえば、ある時間内における自己の位置の変化が所定の範囲内の値になっている場合に、自己がホバリング状態になっていると判定してもよい。この所定の範囲を規定する値は、制御部内の記憶領域に予め記憶されているものである。なお、ホバリング状態の定義については様々なものが考えられる。そのため、制御部は、たとえば、その内部に予め記憶されているホバリング状態を特定するための情報と、センサによって検出された羽ばたきロボットの運動状態を特定するための情報との比較結果から、ホバリング状態が実現されていると判定されてもよい。つまり、ホバリング状態とは、x軸、y軸、およびz軸のそれぞれの方向における速度成分が実質的にゼロである状態であれば、いかなるものであってもよい。また、制御部は、羽ばたきロボットの運動状態がホバリング状態であると判定された場合に、ホバリング状態にするための制御から他の羽ばたき運動をさせるための制御へ移行することを許容する。
【0010】
前述のセンサが羽ばたきロボットの加速度を検出して加速度の情報を制御部へ送信する加速度センサであってもよい。また、制御部は、加速度の情報に基づいて羽ばたきロボットの高度を算出し、高度の低下をトリガとして、羽部に自己の運動状態をホバリング状態にするための羽ばたき運動をさせてもよい。
【0011】
この構成によれば、ホバリング状態にするための羽ばたき運動を開始するタイミングを特定するために必要な情報を簡単に取得することができる。また、羽ばたきロボットの加速度の情報から速度および高度の情報を得ることができる。したがって、制御部における情報処理を複雑化することなく、羽ばたきロボットの運動状態に関する多くの情報を得ることができる。
【0012】
また、前述のセンサが羽ばたきロボットの基準位置からの高度を検出して高度の情報を制御部へ送信する高度センサであってもよい。また、制御部は、高度の低下をトリガとして、羽部に自己の運動状態をホバリング状態にする羽ばたき運動をさせてもよい。
【0013】
この構成によれば、羽ばたきロボットは、高度の低下をトリガとして、自己の運動状態をホバリング状態にするため、制御部が演算処理を必要としない。そのため、制御部の処理を簡略化することができる。
【0014】
本発明の他の局面の羽ばたきロボットシステムは、羽部の羽ばたき運動により流体が存在する空間を羽ばたき飛行する羽ばたきロボットと、羽ばたきロボットに外力を加えることによって、羽ばたきロボットを空中に向かって発射させ得る発射装置とを備えている。また、羽ばたきロボットは、発射装置から発射された後の経過時間を計時するタイマと、経過時間が所定値になった後、一旦、自己の運動状態がホバリング状態になるまで、羽部に自己の運動状態をホバリング状態にするための羽ばたき運動をさせる制御部とを含んでいる。
【0015】
この構成によれば、羽ばたきロボットの浮上の開始のためのエネルギーの発射装置の使用よる低減と羽ばたきロボットが発射装置によって発射された後の姿勢の保持とを極めて簡単な制御によって実現することができる。
【0016】
また、前述の所定値は、発射装置から発射された後の羽ばたきロボットの高度が低下した直後であると推定されるタイミングにおいて、制御部が羽部に羽ばたきロボットの運動状態をホバリング状態にするための羽ばたき運動を開始させるように、設定されていてもよい。
【0017】
この構成によれば、制御部の制御が簡略化される。
また、前述の発射装置は、羽ばたきロボットの構成要素を弾性変形させるように構成要素を保持している状態から構成要素を保持していない状態へ変化することが可能な保持/非保持機構と、保持/非保持機構を保持している状態から保持していない状態へ変化させるスイッチとを含んでいてもよい。この場合、羽ばたきロボットは、構成要素の復元力を利用して、発射装置から空中に発射される。この構成によれば、発射装置の構造を単純化することができる。
【0018】
また、前述の構成要素が羽部であれば、羽ばたきロボットの構成要素のうちの極めて大きな弾性力を有する構成要素を羽ばたきロボットの発射のために利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(実施の形態1)
図1〜図37を用いて、本発明の一実施の形態の羽ばたきロボットを説明する。なお、本実施の形態では、左右対称の構成を有する羽ばたきロボットを説明する。したがって、説明の簡略のため、左右対称である構成要素には同一参照符号が付され、それらのうち左側のみの説明がなされる。
【0020】
(全体の構成)
まず、図1および図2を用いて、本実施の形態の羽ばたきロボットの全体構成を説明する。この項目は、全体構成を説明するためのものであるため、各構成要素の詳細な構成および動作は後述される。
【0021】
図1に示すように、羽ばたきロボット100は、本体101と、本体101に設けられた1対の羽部110とを備えている。一対の羽部110の一方は、本体101の左側の側部に設けられ、一対の羽部110の他方は、本体101の右側の側部に設けられている。
【0022】
羽ばたきロボット100は、羽部110の羽ばたき運動によって、周囲流体に流れを生じさせるとともに、周囲流体から反作用を受ける。このとき、羽ばたきロボット100は、鉛直上方に向いた、自重を超える反作用を周囲流体から受ける。それにより、羽ばたきロボット100には重力加速度を超える鉛直上方向きの加速度が生じる。その結果、羽ばたきロボット100は浮上する。
【0023】
また、図2に示すように、羽ばたきロボット100は、本発明のアクチュエータとしての上部超音波モータ120および下部超音波モータ130を有している。上部超音波モータ120および下部超音波モータ130は、本体101に搭載されている。上部超音波モータ120および下部超音波モータ130には、上部超音波モータ120および下部超音波モータ130の運動を羽部110へ伝達する羽駆動メカニズム140が接続されている。羽駆動メカニズム140には羽部110が接続されている。羽部110は、上および下部超音波モータ120および130の駆動によって、上下方向を回転中心軸とする往復回動運動(以後、「ストローク運動」と称する。)と、羽部110の前縁部を回転中心軸とする回転運動(以後、「捻り運動」と称する。)とを行なう。つまり、羽部110は、ストローク運動および捻り運動のそれぞれを独立して行なうことができる。
【0024】
上および下部超音波モータ120および130は、制御回路150によって制御される。また、制御回路150には、本体101に固定された位置姿勢検出センサ160から羽ばたきロボット100の位置情報および姿勢情報が与えられる。
【0025】
また、羽ばたきロボット100は、通信装置170を介して、羽ばたきロボット100自身の情報およびその周辺の情報を、外部のコントローラ200に送信する機能を有する。
【0026】
また、通信装置170は、図1および図2に示すように、外部のコントローラ200から送信されてきた情報を受信し、その情報を制御回路150に与える機能を有する。本実施の形態では、外部のコントローラ200は、オペレータ210により制御され、羽ばたきロボット100の運動指令を与えるものとする。
【0027】
なお、コントローラ200が前述の情報をオペレータ210に提示する方法は、いかなるものであってもよい。たとえば、外部のコントローラ200が画像表示機能を備えていれば、羽ばたきロボット100より送信された情報そのものが視覚的にオペレータ210に提示される。また、説明の簡便のために、外部のコントローラ200は、オペレータ210によって操作されるものとしたが、これは必須ではない。
【0028】
また、制御回路150、通信装置170等は、本体101に配された電源190から供給される電力によって駆動される。電源190は、本発明の駆動エネルギー源として機能するが、本発明の駆動エネルギー源は、電力を用いるもの以外のもの、たとえば、化石燃料等であってもよい。この場合、アクチュエータとしては例えば2サイクルエンジンやスターリングエンジン等、上記駆動エネルギー源に対応した物が用いられる。
【0029】
(羽部)
羽部110は、図3〜図7に示されたような形状を有し、長さが65mmであり、かつ、幅が16mmである。羽部110は、前縁部1102、羽面部1103、枠部1104、枝部1105、およびアクチュエータ接合部1106を有している。なお、羽面部1103とは、前縁部1102、枠部1104、枝部1105、およびアクチュエータ接合部1106以外の部分であって、細長板状部1107、1108、および1109とアラミドフィルム1114とからなる部分である。
【0030】
羽部110のアラミドフィルム1114以外の部分、つまり前縁部1102、枠部1104、枝部1105、アクチュエータ接合部1106、細長板状部1107、1108、1109は、厚さ20μmのCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastic)層からな
る。具体的に言えば、羽部110のアラミドフィルム1114以外の部分は、CFRPのシートから図5〜図7に示す3つの部分が切り抜かれ、その3つの部分が積層されることによって形成される。
【0031】
前縁部1102およびアクチュエータ接合部1106は、厚さ20μmのCFRP層の3層積層構造を有している。また、枠部1104、枝部1105、細長板状部1107、1108、および1109はCFRP層の1層構造である。図3に示されるX軸の正の方向を0度とすると、細長板状部1107の繊維軸の方向は−60度(+120度)であり、細長板状部1108および枠部1104のそれぞれの繊維軸の方向は、0度(180度)であり、細長板状部1109の繊維軸の方向は、+60度(+240度)であり、枝部1105の繊維軸の方向は−30度(150度)である。前縁部1102およびアクチュエータ接合部1106は、繊維軸の方向が−60度(+120度)、0度(180度)、および+60度(240度)である3つのCFRP層が重ねられて形成されている。
【0032】
前縁部1102の主要な変形は、羽部110の長手方向に平行な伸縮であるため、この方向とCFRP層の繊維軸とが一致していることが望ましい。また、アクチュエータ接合部1106には複数の方向に力が加えられ、羽ばたき運動に応じてこれらの力の方向が変化すると考えられる。したがって、あらゆる方向に極力均等な剛性を有するように、異なる方向の繊維軸を有する多数のCFRP層を積層することによって形成されていることが望ましい。なお、前縁部1102およびアクチュエータ接合部1106は、他の部分より剛性が高くなっている。これらの要件を満たす羽部の製造方法は後述される。
【0033】
また、アクチュエータ接合部1106、前縁部1102、枠部1104、および枝部1105に囲まれるように羽面部1103が設けられている。羽面部1103は、アラミドフィルム1114からなり、図4の紙面の奥行き方向に延びている。また、アクチュエータ接合部1106は、羽部110の根元に設けられ、アクチュエータに接合されており、その長さは7.5mmである。
【0034】
また、図5〜図7に示すように、複数の細長板状部1107のそれぞれは同一幅であり、複数の細長板状部1107同士は、互いに同一ピッチでかつ平行に設けられている。また、複数の細長板状部1108のそれぞれは同一幅であり、複数の細長板状部1108同士は、互いに同一ピッチでかつ平行に設けられている。さらに、複数の細長板状部1109のそれぞれは同一幅であり、複数の細長板状部1109同士は、互いに同一ピッチでかつ平行に設けられている。
【0035】
なお、本実施の形態では、説明の簡便のため、同一層の複数の細長板状部は、同一ピッチかつ平行であるものとしたが、たとえば、剛性分布を意図的に変更する場合には、前述のものに限定されない。たとえば、先端側に比較して、根元側のピッチが小さくなっており、それにより、剛性が高められている羽部110が用いられてもよい。
【0036】
<前縁部>
前縁部1102は、図4に示されるように、羽部110の長手方向に沿って延びる溝構造、すなわちコルゲーションと呼ばれる凹凸形状を有している。そのため、前縁部1102においては、長手方向を含む面内の曲げ変形に対する剛性が、長手方向を回転中心軸とする曲げ変形に対する剛性に比較して、高くなっている。なお、この前縁部1102の凹凸形状は、プリプレグと呼ばれるCFRP層の原材料のシートを、この凹凸形状に対応する金型に密着させた状態で加熱することによって容易に成形され得る。また、前縁部1102には荷重が大きくかかる。そのため、前縁部1102は、細長板状部が設けられていない構造、すなわち隙間がない密実構造であるので、羽面部1103より剛性が高くなっている。さらに、前縁部1102は、根元に近づくにしたがって、累積的に荷重が増加するため、根元が先端に比べ太くなっている。根元部分での前縁部1102の幅および高さは約2mmであり、先端部分での前縁部1102の幅および高さは約1mmである。ただし、図の記述精度の制約から、図4〜図7においては、根元部分における前縁部1102の幅と先端部分における前縁部1102の幅とは同じ幅で描かれている。
【0037】
<羽面部>
羽面部1103は、図4〜図7に示されるように、CFRP層の細長板状部1107、1108および1109、およびアラミドフィルム1114によって構成されている。羽部110と同一の外形を有するアラミドフィルム1114が、CFRP層の細長板状部によって挟まれている。
【0038】
本実施の形態においては、アラミドフィルム1114の耐熱温度がCFRP層の成形温度よりも高く、かつCFRP層の成形工程において、プリプレグとアラミドフィルムとを接触させておき、加圧および加熱処理を行なうことで、プリプレグに含まれる樹脂成分によってCFRP層とアラミドフィルムとを接着させることが可能である。したがって、CFRP層によって構成された前縁部1102、枠部1104、枝部1105、アクチュエータ接合部1106、細長板状部1107、1108、1109ならびにアラミドフィルム1114を含む原材料を上述の金型上で焼結することによって、簡単に羽面部1103を製造することが可能である。
【0039】
羽面部1103の細長板状部1107、1108、および1109は、それらが延びる方向が互いに60度ずつずれ、重ねられている。そのため、羽面部1103の表面に垂直な方向から見ると、細長板状部1107、1108、および1109によって、正三角形の枠、すなわちトラスが形成されているように見える。また、細長板状部1107、1108、および1109のそれぞれは、細長い長方形の輪郭を有しており、そのうち2つの長辺は、繊維軸に平行に延びている。これは、強度が高いCFRPの長手方向と、上記トラス構造の各ビームの力のかかる方向とを一致させ、一軸異方性材料であるCFRPの強度特性を最大限活用するための構成である。ただし、2つの長辺の一方の長辺のみが繊維軸に平行に延びていれば、繊維の強度をある程度有効に利用することが可能である。なお、上記ビームが長方形ではない場合には、応力解析などの手法を用いて、そのビームの形状に最適な繊維軸方向を決定する必要がある。
【0040】
また、本実施の形態では、細長板状部1107、1108、および1109のそれぞれの曲げ剛性は、前縁部1102の1/8であるものとする。一般に、曲げ剛性は、断面二次モーメントに比例する。つまり、曲げ剛性は、(幅:矩形の短辺の長さ)×(厚さの3乗)に比例する。
【0041】
ここで、細長板状部1107、1108、および1109のそれぞれの厚さが一定であり、細長板状部1107の幅が細長板状部1107同士の中心軸間の距離(以下、これを「ピッチ」という。)の1/a倍であり、細長板状部1108の幅が細長板状部1108同士のピッチの1/a倍であり、かつ、細長板状部1109の幅が細長板状部1109同士のピッチの1/a倍であると仮定する。この仮定の下では、細長板状部の幅が1/a倍になれば、羽面部1103の曲げ剛性も1/a倍になる。したがって、本実施の形態においては、細長板状部1107、1108、および1109のそれぞれの幅を細長板状部1107同士、細長板状部1108同士、および細長板状部1109同士のそれぞれのピッチの1/8倍にすることによって、前縁部1102の曲げ剛性の1/8倍の曲げ剛性を有する羽面部1103が実現されている。つまり、羽面部1103の厚さ、すなわち細長板状部の積層数を変化させることなく、細長板状部1107、1108、および1109のそれぞれの幅のみを変更することによって、所望の曲げ剛性分布を有する羽部110が形成されている。細長板状部の積層数は、自然数にしかならず、連続的に変化し得るものではないため、細長板状部の積層数を変化させるだけでは、羽部の曲げ剛性の分布が不連続になってしまう。しかしながら、上記細長板状部の幅とピッチとの比は、連続的に変化し得るものであるため、上記曲げ剛性分布を連続的に変更して、所望の曲げ剛性分布を得ることができる。
【0042】
なお、本実施の形態の羽部110の構造によれば、細長板状部1107の幅と細長板状部1107同士のピッチとの比、細長板状部1108の幅と細長板状部1108同士のピッチとの比、および細長板状部1109の幅と細長板状部1109同士のピッチとの比を互いに異ならせることによって、羽面部1103の曲げ剛性が異方性を有するようにすることが可能である。たとえば、羽部110の長手方向を含む面内の曲げ変形に対して高い剛性を有する羽部110を製造する場合には、細長板状部1108の幅を大きくし、細長板状部1108同士のピッチを小さくすればよい。
【0043】
一方、CFRP層が3つ積層された積層構造の一部をトラスが形成されるように切り抜く手法が用いられた場合には、各トラスの三辺に3つのCFRP層が積層されている。この手法により形成された羽面部の質量は、トラスが形成されていない羽面部1103と同一面積の3つのCFRP層の積層構造の質量の3/a倍(aは前述の値)となる。この場合、3つのCFRP層のうちの1つの層の繊維軸を含む面内の曲げ変形モードにおいては、その1つのCFRP層以外の2つのCFRP層は、樹脂程度の剛性しか有していないため、不要である。すなわち、前述の羽部110は、本段落にて説明されているような切り抜きによって形成された羽部の約1/3の質量で、その羽部とほぼ同一の剛性を有する。(具体的には下記の<羽質量>の項目に羽部の質量および剛性の数値が記載されている。)
<枠部>
羽面部1103を構成するアラミドフィルム1114は、図4に示されるように、アクチュエータ接合部1106、前縁部1102、および枠部1104の間に張られている。そのため、アラミドフィルム1114の端部の破損が防止されている。本実施の形態では、枠部1104の幅は約0.5mmである。なお、枠部1104は、図4に示されるよう
に、羽面部1103を取り囲む形状であるため、それが延びる方向は位置によって異なる。枠部1104の繊維軸の方向は、それの延びる方向に一致している。
【0044】
<枝部>
羽部110が大きくなった場合には、羽部110の先端部の回転半径も大きくなる。この場合、流体に対する相対速度が大きくなるため、羽部110の先端部には大きな流体力が生じる。羽部110の先端部に生じる流体力が大きくなっても、羽部110の先端部の制御性を維持する必要がある。そのため、前縁部1102に接続され、前縁部1102から斜め方向に延びる枝部1105が設けられている。枝部1105の幅は約0.9mmである。枝部1105は、X軸方向の羽部110の先端側を向く方向を0°とした場合に、−30°の方向に延びるように形成されている。
【0045】
なお、枝部1105とX軸との間の角度および羽面部1103に要求される剛性によっては、前述の細長板状部1107とは異なる細長板状部を有するCFRP層に枝部1105が設けられていてもよい。また、CFRP層とは別の材料を用いて形成された枝部1105がCFRP層同士の間に挟み込まれた構造の羽面部1103が用いられてもよい。
【0046】
<アクチュエータ接合部>
アクチュエータ接合部1106は、実際には、羽部110を駆動するアクチュエータとの適合性に応じて、その形状が決定される。本実施の形態のアクチュエータ接合部1106は、図3に示される形状であるものとする。また、羽ばたき運動により生じる流体力に起因する変形を防止するため、アクチュエータ接合部1106の材料としては、細長板状部を有しない、すなわち隙間がない密実な構造のCFRP層が用いられる。さらに、アクチュエータ接合部1106の前方端には溝構造が設けられている。このアクチュエータ接合部1106の溝構造と前縁部1102の溝構造とは連続するように設けられている。
【0047】
<羽質量>
CFRPの比重が1.6g/cm3であるものとして、表1に前述の羽部110の各
部位の質量が示されている。表1に示されるように、羽部110の質量は、約26.5mgである。また、アクチュエータ接合部1106の質量は約10.8mgである。
【0048】
【表1】
【0049】
一方、CFRP層が3つ積層された積層構造をトラス形状が形成されるように切り抜く手法が用いられた比較例の羽部の質量は約48mgである。
【0050】
(超音波モータ)
次に、図8〜図15を用いて、本発明のアクチュエータとしての上部超音波モータ120および下部超音波モータ130を説明する。
【0051】
<全体構成>
まず、上部超音波モータ120および下部超音波モータ130の構成を説明する。
【0052】
図8に示されるように、上部超音波モータ120は、上部超音波振動子121と、これによって駆動される上部ロータ122とを有している。また、上部ロータ122は、上部ベアリング123を介して、ロータシャフト124に、ロータシャフト124の軸周りにのみ回転可能に設けられている。ロータシャフト124は、本体101に固定されている。上部ロータ122には、上部磁化パターン125が円弧状に記されている。上部磁化パターン125は、上部磁気エンコーダ126で読み取られる。上部超音波振動子121においては、図14に示すように、支持部1214が支持シャフト127に固定され、牽引部1224が牽引ゴム129により牽引されている。また、上部超音波振動子121を駆動する電力はフィルム基板128を介して供給される。
【0053】
下部超音波モータ130は、上部超音波モータ120と上下方向において鏡面対称の構造である。すなわち、下部超音波モータ130においては、下部超音波振動子131が下部ロータ132を回転させる。下部ロータ132は、図示されない下部ベアリングを介して、ロータシャフト124に、ロータシャフト124の軸周りにのみ回転可能に設けられている。下部ロータ132には、図示されない下部磁化パターンが円弧状に記されている。下部磁化パターンは、下部磁気エンコーダ136で読み取られる。
【0054】
上部および下部超音波モータ120および130は、上下方向において鏡面対称に設けられていること以外においては、全く同様の構成を有しているため、以降においては、上部超音波モータ120の詳細構造のみの説明を行なう。
【0055】
<駆動原理>
次に、図9〜図15を用いて、上部超音波モータ120の駆動原理を説明する。
【0056】
上部超音波振動子121は、振動板1211、表面ピエゾ1212および裏面ピエゾ1213からなる。振動板1211は、厚さ0.2mmのステンレスで作製され、幅2mmかつ長さ9mmの矩形部と、矩形部の長手方向の中央部から外方に突出する支持部1214とを有している。支持部1214に対向する矩形の長手方向の中央部には、その中央部から外方に突出する牽引部1224が設けられている。振動板1211は、表面ピエゾ1212および裏面ピエゾ1213によって挟まれている。表面ピエゾ1212および裏面ピエゾ1213は、それぞれ、幅2mm、長さ8mm、および厚さ0.2mmの短冊形状を有し、厚み方向に分極するピエゾ焼結体からなる。
【0057】
表面ピエゾ1212には表面電極1216が接合され、裏面ピエゾ1213には裏面電極1217が接合される。表面電極1216に電圧を印加すると、上部超音波振動子121において、図10に示されるような2次のたわみ(屈曲)振動モードが励起される。また、裏面電極1217に電圧を印加すると、図11に示されるような、1次の縦(伸縮)の振動モードが励起される。本実施の形態における上部超音波振動子121においては、2つの振動についての共振モードの共振周波数は、いずれも250kHzであり、互いに一致している。ここで、これらの共振モードの振動の位相を±90°異ならせることによって、振動板1211の頂点は図12および図13に示される2種類の楕円運動を行なう。2種類の楕円運動は、正方向に回転する楕円運動と、逆方向に回転する楕円運動である。また、振動板1211の頂点にはアルミナ等のセラミックからなる接触部1215が設けられている。接触部1215は、前述の楕円運動に応じて、摩擦力によって、上部ロータ122をロータシャフト124の軸周りに回転させる。このとき、正方向の回転および逆方向の回転のいずれかが選択される。
【0058】
図12および図13は、表面電極1216に与えられる電位をφAとし、裏面電極1217に与えられる電位をφBとして、φAおよびφBを、それぞれ、cos(2πft)およびsin(2πft)に振幅を掛けた関数で表した場合における接触部1215の回転方向を示している。ここで、fは入力電圧の周波数を示し、tは時刻を示し、ω(=2πf)は角周波数を示す。なお、説明の簡便のため、表面電極1216および裏面電極1217のそれぞれに与えられる電位を三角関数によって表わしたが、それらの電位の位相が±90°ずれているのであれば、矩形波等によって表わされる電位が両電極に与えられてもよい。なお、上部ロータ122および下部ロータ132のそれぞれは所定の回転角の範囲内での回転往復運動を行なう。そのため、軽量化のためには、図12および13に示されるように、不要な部分が削除された、その外形が中心角180°の略扇形状である上部ロータ122および下部ロータ132が用いられることが望ましい。これによれば、羽ばたきロボット内におけるロータの占有率を低減することができる。
【0059】
なお、前述の各部位のサイズおよび振動板の共振周波数などの数値は、一例であり、浮上のための要件が満足されるのであれば、前述の値に限定されない。この浮上のための要件は、後述の浮上可能性の項において述べられている。
【0060】
また、上部ロータ122および下部ロータ132は、必要な強度が確保される範囲内において、軽量化のための中空構造を有していてもよい。更に、上部ロータ122および下部ロータ132に、上部ロータ122の回転角θ1−下部ロータ132の回転角θ2を所定の範囲内の値に制限するための機構が設けられてもいてもよい。これによれば、羽の捻り角βが一定の範囲内の値に制限される。そのため、後述する数式(7)において、解が物理的に1つに定まる。その結果、羽部の動作が安定する。なお、本発明者らの実験によれば、(θ1−θ2)の絶対値が所定値以上の値になると、後述する式(7)の解が、重解になることが分かっている。
【0061】
<予圧機構>
次に、図14を用いて、接触部1215から上部ロータ122へ予圧を与える機構を説明する。
【0062】
接触部1215から上部ロータ122へ予圧が作用しており、その反作用として、接触部1215から上部ロータ122の外周面へ向かって抗力が生じている。そのため、上部ロータ122と接触部1215との間には摩擦が生じている。したがって、接触部1215の楕円運動によって、上部ロータ122は、摩擦力を受け、回転往復運動を行なう。
【0063】
牽引ゴム129は、環状であり、その一端が、牽引部1224に引っ掛けられている。牽引ゴム129の他端は、本体補強ポール112に固定されている牽引ゴムピン113に引っ掛けられている。したがって、牽引ゴム129には張力が生じ、牽引部1224が本体補強ポール112に向かって牽引されるため、振動板1211は牽引部1224を含む振動板1211を支持している支持シャフト127の軸周りに回転運動する。この回転運動は、接触部1215が上部ロータ122に接触することによって拘束されている。したがって、接触部1215から上部ロータ122へ向かう予圧が生じる。
【0064】
なお、前述の本体補強ポール112を、その長軸周りに回転させることによって、前述の予圧の大きさを調整することが可能である。また、予圧機構は、上部ロータ122を駆動するための摩擦力を得るために設けられているものであるため、前述の予圧が得られ、かつ、羽ばたきロボット100の浮上特性が損なわれないのであれば、図14に示す構造に限定されない。
【0065】
<回転角検出>
図8に示す上部磁気エンコーダ126には、パターン周期の1/4の間隔を置いてA相およびB相のための2つの検出部が設けられている。この構成によって、一般的なエンコーダと同様に、上部ロータ122の回転方向に応じてA相およびB相の位相が異なるため、たとえば、A相のアップエッジをカウンタのトリガとして、B相のレベルの1/0をアップカウント/ダウンカウントの機能選択に割り当てれば、上部ロータ122の回転角θ1を検出することが可能である。この回転角θ1の算出は、中央演算装置151において行なわれる。
【0066】
<補足>
なお、図8〜図14において示された超音波モータは、一般的なアクチュエータの一例であり、本発明における羽ばたきロボットのアクチュエータは、前述のような構造の超音波モータに限定されない。たとえば、アクチュエータとして、電磁モータまたは内燃機関が用いられてもよい。また、回転角検出のための装置は、羽ばたき飛行を阻害するものでなければ、いかなるものであってもよい。たとえば、前述の磁気エンコーダを用いる手法の替わりに、光学式エンコーダを用いる手法が採用されてもよい。
【0067】
(羽駆動メカニズム)
次に、図15〜図18を用いて羽駆動メカニズムについて説明する。
【0068】
羽駆動メカニズム140は、図15に示されるように、上部ロータ122に固定された上部プレート141と、下部ロータ132に固定された下部プレート142とを有している。さらに、下部プレート142には第1アラミドヒンジ143を介して中間プレート144が接続されている。さらに、上部プレート141には、第2アラミドヒンジ145を介して、羽部110の根元部が接続されている。さらに、羽部110の根元部は、第3アラミドヒンジ146を介して、中間プレート144にも接続されている。したがって、上部プレート141、羽部110、中間プレート144、および下部プレート142がアラミドフィルムで接続された複合ヒンジが構成されている。この複合ヒンジは、上部ロータ122および下部ロータ132によって駆動される。
【0069】
図16〜図18には、上部プレート141、中間プレート144、および下部プレート142の形状が示されている。なお、各プレートのヒンジおよびロータに接続されない辺の近傍の部分は、補強のため、図16〜図18のハッチングで示される部位が、各プレートの主表面に対して約90°折り曲げられている。さらに、この折り曲げ部同士の干渉を避けるため、折り曲げ部の両側端のそれぞれは、折り曲げ部が延びる方向に対して45°の方向においてカットされている。
【0070】
各アラミドヒンジは、幅0.1mmであり、長さに比べてその幅が非常に小さいため、擬似的に1自由度の回転のみ運動可能なリンク、すなわち蝶板(兆番)として機能する。また、アラミドヒンジ143、145、および146のそれぞれの延長線は1点で交わり、その1点はシャフト124の中心軸上に位置し、かつ、上部ベアリング123と下部ベアリング133との間に位置する。この構成により、上部超音波モータ120の回転角の制御によって羽部110の前後方向の往復運動が制御され、上部超音波モータ120の回転角の位相と下部超音波モータ130の回転角の位相との差の制御によって、羽部110のねじり運動が制御される。
【0071】
つまり、アクチュエータは、羽軸としての前縁部1102を前後方向に往復運動(回転角α:Z軸周りの回転角)させる前後往復運動用ロータとしての上部超音波モータ120と、往復運動における運動方向の反転の前から後の所定期間において、前縁部1102を軸周りに回転(回転角β)させる捻り運動用ロータとを備えている。
【0072】
前述の羽ばたき方を、図19および図20を用いて、より具体的に説明する。図19および図20においては、羽ばたきロボット100の前後方向に沿ってY軸が延びている。また、羽ばたきロボット100の上下方向に沿ってZ軸が延びている。さらに、羽ばたきロボット100の左右方向に沿ってX軸が延びている。X軸、Y軸、およびZ軸は、互いに直交する。また、Y軸においては、後方が正であり、前方が負である。また、X軸においては、上方が正であり、下方が負である。さらに、Z軸においては、左の羽部110の位置する側が正であり、右の羽部110が位置する側が負である。また、図20に示すように、上部超音波モータ120の回転角がθ1であり、下部超音波モータ130の回転角がθ2であり、前後方向の往復運動の回転角である羽ばたきストローク角がαであり、前縁部1102の軸周りの回転角である捻り角がβであるものとする。
【0073】
また、前述の各アラミドヒンジ143、145、および146のそれぞれの延長線の交点から各アラミドヒンジ143、145、および146のそれぞれの外側端までの距離は、それぞれ、R2、R1、およびR3であるものとする。さらに、アラミドヒンジ146の端点とアラミドヒンジ145の端点の距離がL1であり、アラミドヒンジ146の端点とアラミドヒンジ143の端点の距離がL2であり、アラミドヒンジ143の端点とアラミドヒンジ145の端点と間の距離がL3であるものとする。ロータシャフト124に対する羽部110の位置を表わす角度の組み合わせ(α,β)は、上および下部超音波モータの回転角θ1およびθ2を用いて、以下のように表わされる。
【0074】
羽ばたきストローク角αは、羽軸(前縁部1102)のロータシャフト124の軸周りの回転であるため、次の式(1)に示すように、上部超音波モータ120の回転角θ1に等しい。
【0075】
α=θ1・・・(1)
また、捻り角(回転角β)は、羽部110の羽軸(前縁部1102)の軸周りの回転角であるため、次の式(2)によって示されるβの余弦値から算出される。
【0076】
cos(π−β)=−cos(β)=[L1×L1+L3×L3−L2×L2]/(2×L1×L3)・・・(2)
ただし、L3に関しては、次の式(3)が成り立つ。
【0077】
L3=sqrt(R1×R1+R2×R2−2×R1×R2×cos(θ1−θ2))・・・(3)
ここで、sqrt()は()内の値の正の平方根である。
【0078】
なお、図19および図20から明らかなように、βは、πより大きく、かつ、2πより小さい。
【0079】
π<β<2π・・・(4)
したがって、βが1つの値に決定される。
【0080】
上記の式(1)〜(4)から、所望の羽部110の位置(α,β)を得るための回転角θ1およびθ2は、次の式(5)および(6)によって表わされることが分かる。
【0081】
θ1=α・・・(5)
cos(θ1−θ2)=[R1×R1+R2×R2−L3×L3]/2×R1×R2・・・(6)
ただし、L3に関しては、次の式(7)が成立する。
【0082】
L3=L1×cos(β−π)±sqrt(L2×L2−L1×L1×sin2(β−π))・・・(7)
なお、L3の符号が、正であるか、または、負であるかは、実際の羽部110の挙動を考慮することによって、容易に決定される。
【0083】
図19および図20に示される本実施の形態の羽ばたきロボットの状態は、羽部110の主表面が鉛直な方向に延びる平面と平行である状態、すなわち、捻り角β=270°である状態である。このとき、θ1=0°、θ2=−45°R1=R2=15mm、R3=15.81mm、L1=5mm、L2=11.4mm、およびL3=11.39mmである。
【0084】
上部および下部ロータ122および132の回転角θ1およびθ2は、前述のように、磁気エンコーダ126よって得られた情報に基づいて中央演算装置151によって算出される。なお、回転角θ1およびθ2の制御方法は後述される。
【0085】
(羽ばたき方の変更による羽ばたきロボットの動作制御)
<動作の基本>
本実施の形態における羽ばたきロボット100は羽部110の羽ばたき運動が生み出す浮上力の作用点より下側の部分の質量が大きいため、重力以外の外力による影響がない状態では、自動的に、図1に示されるように、羽ばたきロボット100は、左右に羽軸が延びる姿勢になる。したがって、羽ばたきロボット100は、X軸周りの回転およびY軸周りの回転を制御することを必要としない。一方、X軸、Y軸、およびZ軸のそれぞれに沿った並進加速度、ならびにZ軸周りの回転加速度(以下、「角加速度」とも言う)は、羽ばたき方によって変更される。なお、羽ばたき運動により生じる力は羽部の運動に伴って変化するが、ここでは、羽ばたき運動の1周期平均の力を羽ばたき運動により生じる力とする。
【0086】
(コントロールパラメータ)
本実施の形態における羽ばたきロボット100においては、トルク補助機構が適正に機能するためには、上部超音波モータ120の回転角θ1すなわちストローク角αの振幅は一定であることが必要である。そこで、羽ばたきロボット100の動作を制御するために、下部超音波モータ130の回転角θ2が変更される。すなわち、羽ばたきロボット100は、捻り角βの変更によって、流体の流れを変化させ、それにより、姿勢を変化させる。
【0087】
具体的には、羽ばたき運動のストロークの両端のそれぞれにおいて羽部110の捻り運動のタイミングを変化させる。
【0088】
(上下方向における浮上力の変化)
Dickinsonらによって明らかにされているように、図22に示すように、(1)羽ばたき運動の切り返し動作の中間のタイミングよりも先、すなわち切り返しの前半に羽部110を捻る(捻り先行切り返し)と、浮上力は増加し、一方、図23に示すように、(2)羽ばたき運動の切り返し動作の中間のタイミングよりも後、すなわち切り返しの後半に羽部110を捻る(捻り遅れ切り返し)と、浮上力は減少する、という現象が起きる。
【0089】
(上下方向における浮上力が変化するときの前後方向における推進力の相殺)
さらに本発明者らは、図22に示す前述の(1)の動作によれば、切り返し動作前の羽進行方向に沿った抗力が増大し、図23に示す前述の(2)の動作によれば、その抗力が減少することを見出した。打ち上げ時に生じる前後方向の抗力と、打ち下ろし時に生じる前後方向の抗力とは、互いに逆向きである。そのため、打ち上げ動作と打ち下ろし動作とが前後方向に垂直な平面に対して鏡面対称であれば、それらの動作による抗力は相殺され、推進力はゼロとなる。このため、羽ばたきロボットは、上下方向のみにおける移動を行うことができる。
【0090】
(前後方向における推進力の変化)
逆に、打ち上げ時の切り返しと打ち下ろし時の切り返しとにおいて、図22に示す前述の(1)の動作と図23に示す前述の(2)の動作とが異なれば、その2つ動作による前後方向の抗力同士の間に差異が生じ、前方または後方のいずれかに推進力が生じる。より具体的には、図24に示されるように、打ち下ろしの後半では、遅れ切り返しによって、前方への加速度が得られ、また、打ち上げの後半では、先行切り返しによって、前方への加速度が得られる。一方、同様に、図24に示されるように、打ち下ろしの後半では、先行切り返しによって、後方への加速度が得られ、また、打ち上げの後半では、遅れ切り返しによって、後方への加速度が得られる。
【0091】
(前後方向における推進力が変化するときの上下方向における浮上力の変化の相殺)
なお、前方への加速度が得られる動作および後方への加速度が得られる動作のいずれが実行されるときにおいても、上方への加速度の変化と下方向への加速度の変化とを相殺することは可能である。このため、水平方向における加速度のみを得ることが可能である。
【0092】
(空間の3次元移動)
以上の説明のように、左および右の羽部110のそれぞれのストローク角α、すなわちθ1の振幅が固定されていても、θ2の時刻歴のみ変更し、打ち上げにおける羽部110の切り返しのタイミングと打ち下ろしにおける切り返しのタイミングとを異ならせることにより、羽部110に上下方向および前後方向における加速度を生じさせることができる。また、左の羽部110に生じる加速度と右の羽部110に生じる加速度とを異ならせることによって、羽ばたきロボット100の姿勢を左または右に傾けること、ならびに、羽ばたきロボット100が左方向または右方向へ旋回することが可能になる。
【0093】
<制御の詳細>
以下、図22に示す前述の(1)に記載の羽ばたき方を捻り先行切り返し(以下、単に、「先行切り返し」という。)と言い、図23に示す前述の(2)に記載の羽ばたき方を捻り遅れ切り返し(以下、単に、「遅れ切り返し」という。)と言い、図21に示すホバリング時の羽ばたき方を中央切り返しと言うものとする。
【0094】
また、説明の簡便のため、ホバリング、Z軸方向における並進運動、およびY軸方向における並進運動は、それぞれ、左右対称である。したがって、羽部の動作も、左右対称である。そのため、左右対称な動作のうちの左の羽部110の動作についてのみの説明がなされるものとする。
【0095】
<ホバリング>
図21には、ホバリング時の羽ばたき方が示されている。図21においては、回転角θ1およびθ2の時刻歴が、羽部110の断面の時刻歴とともに示されている。このときの浮上力は自重と釣り合っており、前後方向への推進力はゼロである。
【0096】
<Z軸方向の並進制御>
図22には、Z軸に沿った上方への移動、すなわち上昇のための羽ばたき方が示されている。図23には、Z軸に沿った下方への移動、すなわち下降のための羽ばたき方が示されている。図22および図23においては、回転角θ1およびθ2の時刻歴が、羽部110の断面の時刻歴とともに示されている。なお、左右の羽部110は、YZ平面を対称面とする鏡面対称の動作を行なう。
【0097】
図22に示す動作は、前述の(1)に記載の先行切り返し動作であり、図23に示す動作は、前述の(2)に記載の遅れ切り返し動作である。これらの動作の際の前後方向における加速度は、図24に示されるとおりゼロである。
【0098】
<Y軸方向の並進制御>
図25および図27には、前方へ移動するための羽ばたき方が示され、図26および図28には、後方へ移動するための羽ばたき方が示されている。なお、左右の羽部110は、YZ平面を対称面として、鏡面対称の動作を行なう。
【0099】
前方への移動の際には、打ち上げ終端を含む期間での切り返しにおいて、前述の(1)に記載の先行切り返し動作が行なわれ、打ち下ろし終端を含む期間での切り返しにおいて、前述の(2)に記載の遅れ切り返し動作が行なわれる。
【0100】
後方への移動の際には、打ち上げの終端を含む期間での切り返しにおいて、前述の(2)に記載の遅れ切り返し動作が行なわれ、打ち下ろしの終端を含む期間での切り返しにおいて、前述の(1)に記載の先行切り返し動作が行なわれる。
【0101】
なお、前述の通り、遅れ切り返しの際に浮上力は減少し、先行切り返しの際に浮上力は増加するため、Y軸方向の並進運動において、前述の(1)および(2)に記載の動作により生じる浮上力同士を相殺することは可能である。すなわち、羽ばたきロボット100は、高度を保ったまま、前後方向へ移動することが可能である。
【0102】
<X軸方向の並進制御>
左方への移動を行うためには、右の羽部110が上昇のための動作をし、左の羽部110が下降のための動作をすればよい。これにより、羽ばたきロボット100は左の羽部110が右の羽部110よりも下側に位置するように姿勢を変更し、それにより、浮上力のベクトルの先端が鉛直上方向きの状態から左側に傾く。これにより、羽ばたきロボット100を左方に移動させる力が生じる。
【0103】
右方への移動を行うためには、左方への移動とは逆に、右の羽部110が下降のための動作をし、左の羽部110が上昇のための動作をすればよい。これにより、羽ばたきロボット100は右の羽部110が左の羽部110よりも下側に位置するように姿勢を変更し、それにより、浮上力のベクトルの先端が鉛直上方向きの状態から右側に傾く。これにより、羽ばたきロボット100を右方に移動させる力が生じる。
【0104】
なお、このとき、浮上力の低下が起こることがあり得るため、X軸方向に沿って移動するための制御とZ軸方向の上方へ移動するための制御とを同時に実行することが望ましい。
【0105】
<Z軸周り回転制御>
Z軸周りに正方向の回転、すなわち左への旋回を行なうためには、左の羽部110が後退のための羽ばたき方で動作し、右の羽部110が前進のための羽ばたき方で動作すればよい。
【0106】
Z軸周りに負方向の回転、すなわち右への旋回を行なうためには、左の羽部110が前進のための羽ばたき方で動作し、右の羽部110が後退のための羽ばたき方で動作すればよい。
【0107】
いずれの場合においても、上述のように、左および右の羽部110による浮上力同士は相殺され得るものであるため、高度が維持されたまま、羽ばたきロボット100のZ軸周りの回転が行なわれる。
【0108】
<Y軸周り回転制御>
本実施の形態においては、姿勢は自律的に安定するため、Z軸周り以外の回転自由度は制御の必要はない。しかしながら、羽ばたきロボット100が発射装置から発射された後のブレーキ羽ばたきの場合、つまり、発射装置180から与えられた速度を実質的にゼロにし、ホバリング状態にするための羽ばたき運動を羽部にさせる場合などに、Y軸周りの回転角、すなわちロール角の変更を行なうことが望ましい。したがって、本実施の形態の羽ばたきロボット100は、Y軸回りに回転する羽ばたき運動を羽部110にさせることができるものとする。
【0109】
特開2006−232169号公報に示されるように、左の羽部110の振幅と右の羽部110の振幅とを異ならせることで、Y軸周りの回転角、すなわちロール角を変更することができる。左の羽部110の振幅と右の羽部110の振幅とを異ならせることは、図32のデューティ比を比例的に増減させることで実現され得る。このとき、羽ばたきロボット100の羽ばたき方は、図35に示されるようになる。これは、図2に示される座標系において、Y軸周りの正の回転、すなわち図2における左の羽部110が右の羽部110に対して下がり、右の羽部110が左の羽部110に対して上がるように、羽ばたきロボット100はY軸回りに正方向に回転する羽ばたき方である。Y軸回りに負方向に回転する場合には、図35において、右の羽部110のデューティ比と左の羽部110のデューティ比とを入れ替えることによって実現される。
【0110】
<制御の変更方法>
以上により、切り返しのタイミングが異なる3種類の羽ばたき方、すなわち、先行切り返し、遅れ切り返し、および中央切り返しを使い分けることによって、羽ばたきロボット100は空間を自在に移動することができる。また、左の羽部110の振幅と右の羽部110の振幅とを異ならせることにより、ロール角を変更することが可能である。
【0111】
なお、切り返しのタイミングが異なる3種類の羽ばたき方は、いずれも、羽部110の前後方向の往復運動の終端の前から後にかけての所定期間内に行なわれる。そのため、羽ばたき運動のストロークの中心の前から後にかけての所定期間、すなわちストローク角α=0°の前から後にかけての所定期間内においては、回転角θ1およびθ2の値は、その速度および加速度を含めて同一である。したがって、上記のように、回転角θ1およびθ2が共通している期間内に羽ばたき方を変更するのであれば、羽部110の動作を何ら補間することなく、機械的に次の羽ばたき方を選択するだけで、羽部110の動作に不連続性を生じさせることなく、ある羽ばたき方から他の羽ばたき方へ円滑に遷移することが可能である。
【0112】
<制御の選択>
上記のように、θ1=0°の位相において羽ばたき方を変更するのであれば、羽ばたき方の状態を示す表現方法として、打ち下ろし、打ち上げ、およびそれぞれの終端での切り返し、という区分を設けることは適切ではない。打ち下ろし後半および打ち下ろし後の切り返しおよび打ち上げの前半を前方羽ばたき運動とし、打ち上げ後半および打ち上げ後の切り返しおよび打ち下ろしの前半を後方羽ばたき運動として、羽ばたき方を二つに区分することが合理的である。
【0113】
すなわち、左および右の羽部110における前方羽ばたき運動および後方羽ばたき運動において、それぞれ、中央切り返し、先行切り返し、および遅れ切り返しの選択を行なうことによって、最も簡便に、羽ばたき方を制御することができる。前述の説明に基づいた羽ばたきロボットの羽ばたき方に対応した選択肢が、表2に示されている。
【0114】
【表2】
【0115】
前述の実施の形態の羽ばたきロボットの説明においては、制御の手法を簡単にするために、前方羽ばたきにより生じる流体力と後方羽ばたきにより生じる流体力とを相殺することによって、意図しない方向への移動または意図しない姿勢の変更が生じないものとされた。すなわち、羽ばたきロボットは、X軸、Y軸、およびZ軸のいずれか1つについての1自由度運動のみを行うものとした。しかしながら、羽ばたきロボットが上昇しながら右旋回する等の複合的な運動をすることが望ましい場合がある。この場合の複合的な運動も、左右の羽部の前方羽ばたき運動と後方羽ばたき運動との組み合わせによって実現される。
【0116】
右の羽部110および左の羽部110の羽ばたき運動のそれぞれは、3通りの前方羽ばたきと、3通りの後方羽ばたきとの組み合わせによって決定される。それらの羽ばたき運動は、独立して選択され得るものである。そのため、左の羽部110および右の羽部110のそれぞれの羽ばたき運動は、9通りである。このため、左および右の2つの羽部110の羽ばたき方の組み合わせは81通りである。この81通りの羽ばたき方が表3に示されている。
【0117】
【表3】
【0118】
表3における記号A,C,およびDは、それぞれ、先行切り返し(Advanced)、中央切り返し(Center)、および遅れ切り返し(Delayed)を意味し、こ
れらは、それぞれ、図22、図21、および図23に示される羽ばたき方である。表3の縦欄および横欄が、それぞれ、右の羽部110および左の羽部110の羽ばたき方を示し、表3の中で、大分類および小分類が、それぞれ、後方羽ばたきおよび前方羽ばたきを表している。たとえば、
左羽前方羽ばたき:先行切り返し
左羽後方羽ばたき:中央切り返し
右羽前方羽ばたき:中央切り返し
右羽後方羽ばたき:遅れ切り返し
という組み合わせが選択された場合には、表3から、(−2,−2,0,0)の値が得られる。これにより、図1に示される座標系において、羽ばたきロボットは、右前方へ移動する。
【0119】
逆に、この中で羽ばたきロボット100の浮上移動制御に用いる代表的な運動をピックアップすることによって、表4のような羽ばたき方を決定するためのテーブルが作成される。
【0120】
【表4】
【0121】
したがって、羽ばたきロボットに要求される移動の形態に基づいて、羽ばたき方を定める関数Pattern_Flapping(x、y、z、θz)を決定することができる。ここで、各引数は±4、±2、もしくは0であり、対応する各運動成分の正(+)、負(−)、ゼロ(0)、および絶対値はその引数の符号および値に対応している。
【0122】
この関数Pattern_Flapping(x、y、z、θz)の出力は、羽ばたき方を決めるパラメータ、もしくはその組み合わせ、つまり、本実施の形態では、表2または表4に示されてい
る、左羽および右羽のそれぞれの前方羽ばたきおよび後方羽ばたきの種類(先行切り返し、中央切り返し、遅れ切り返し)を特定可能な値である。なお、表2は、表4が簡略化されたものであり、一自由度のみの制御が行われる場合に用いられる。
【0123】
また、θxおよびθyは、本実施の形態においては、羽ばたきロボット100の重心が羽部の力学的作用点より下方に位置付けられているために、羽ばたきロボットが自律的に安定するので、すなわち、それらの値が0に収束するので、この関数に含まれていない。
【0124】
<補足事項>
なお、本項目においては、最も簡便に位置制御を実現する手法の一例が記載されているが、本発明の羽ばたき方は本項目の羽ばたき方に限定されるものではない。たとえば、本実施の形態においては、回転角θ1およびθ2の角速度は、切り返しの期間を除いて略一定であるものとされている。つまり、羽部110の往復運動は、図37に示すように、角速度が一定である打ち上げおよび打ち下ろしの運動と、これに連続する、角速度が変化する切り返しの運動、すなわち往復運動の運動方向を反転させるための運動とからなるものである。切り返しの運動の角速度は、打ち上げの運動の角速度および打ち下ろしの運動の角速度のそれぞれに連続するように変化する。この切り返しの運動としては、例えば1変数の三角関数等が挙げられる。しかしながら、回転角θ1およびθ2の角速度を変化させることによって、周囲流体から受ける反作用を変化させて、羽ばたきロボット100を移動させる手法が用いられてもよい。
【0125】
また、本項目においては、説明の簡便のため、3種類の羽部110の切り返しのパターンの組み合わせによって、すべての羽ばたき方が表現される手法が用いられているが、この手法は、羽ばたき方の表現の一例であり、本発明の羽ばたき方は、前述の手法によって表現される羽ばたき方に限定されない。
【0126】
たとえば、回転角θ1およびθ2のパターンが多数存在する羽ばたき方の表現手法が用いられてもよい。すなわち、先行切り返しおよび遅れ切り返しのタイミングが複数種類ある羽ばたき方、または、切り返しのタイミングを連続的に自由に変更できる羽ばたき方の表現手法が用いられてもよい。逆に、中央切り返しは、先行切り返しと遅れ切り返しとを交互に繰り返す羽ばたき方の表現手法が用いられてもよい。このような羽ばたき方の表現手法であれば、中央切り返しのパターンのためのデータをメモリに記憶しておく必要が無いため、回転角θ1およびθ2のパターン数を低減させることができる。
【0127】
また、図21〜図23および図32〜図34に示される回転角θの時刻歴は、図19および図20に表わされる構成を有する羽ばたきロボット100の回転角θの一例である。実際には、羽部110を駆動するメカニズムに応じて、そのメカニズムを制御する各種パラメータが、前述の羽部110の先行切り返しおよび遅れ切り返しを実現するように設定されるのであれば、回転角θの時刻歴は、図21〜図23に示される回転角θの時刻歴に限定されない。
【0128】
また、本実施の形態においては、羽ばたきロボット100の姿勢が自動的に所定の状態を維持されることを前提としているため、ロール角の変更のための制御は実行されていない。しかしながら、ロール角の制御については、特開2006−232169号公報にて、その制御方法が示されている。より具体的には、右の羽部の羽ばたきストロークを拡大した図35に示されるデューティを用いれば、右の羽部110が上昇し、左の羽部110が低下する。右の羽部を低下させ、左の羽部を上昇させるように、ロール角を変化させたいのであれば、図35における右の羽部110のグラフと左の羽部110のグラフとを入れ替えればよい。
【0129】
(位置姿勢検出センサ)
位置姿勢検出センサ160は、本体101に固定されている。そのため、位置姿勢検出センサ160によって計測された位置および姿勢は、羽ばたきロボット100の位置および姿勢そのものとなる。本発明では位置姿勢検出センサ160として、少なくとも3軸加速度を計測する3軸加速度センサ1601および重力加速度の方向検出による方法以外の方法によって、本体101の3軸のそれぞれについての回転角を検出する3軸回転角センサ1602の2つが搭載されている。
【0130】
位置姿勢検出センサ160は、図29に示すように、計測された位置および姿勢のデータを後述する中央演算装置151に与える。このような機能を実現するためのセンサは、技術の進展により変化するものであり、本発明の本質に関わるものではないため、いかなるものであってもよい。前述の姿勢を検出するための位置姿勢検出センサ160の一例としては、地磁気および3軸加速度の検出によって、姿勢、位置、および方向の変化を検出することができるものが市販されている。また、3軸回転角センサ1602の一例としては、回転の際に生じるコリオリ力の検出により角加速度を検出することによって回転角を検出することが可能であるジャイロセンサが市販されており、検出された角加速度の2回積分により、回転角を求めることができる。位置の検出のためには、例えばGPS(Global Positioning System)のようなセンサを用いることができる。
【0131】
(制御回路)
制御回路150は、図29および図30に示すように、中央演算装置151(Central Processing Unit)、中央演算装置151の指令により上および下部超音波モータ120および130を駆動するドライバ152、ならびに、ドライバ152に高電圧を供給する昇圧回路153等を有している。
【0132】
<制御回路の動作>
制御回路150には、オペレータ210が操作するコントローラ200から通信装置170を介して運動指令が与えられる。運転指令は、一時記憶装置(以後、「RAM(Random Access Memory)」と言う。)155に格納される。中央演算装置151は、RAM155に記憶された運動指令に基づいて、羽ばたき方のデータを固定記憶装置(以後、「ROM(Read Only Memory)」と言う。)154から得る。その後、中央演算装置151は、その羽ばたき方のデータをドライバ152に与える。それにより、羽ばたきロボット100は、前述の前後左右上下方向の並進移動または鉛直を回転軸とする回転のいずれかを行なう。
【0133】
<中央演算装置>
中央演算装置151は、前述の運動指令、ROM154およびRAM155の情報を用いて、ドライバ152にPWM(Pulse Width Modulation)信号および回転方向制御信号を出力する。これにより、コントローラ200を介してオペレータ210が与えた運動指令に応じて超音波モータ120おび130が動作する。その結果、運転指令に対応する羽ばたき方が実現される。なお、羽ばたきの往復運動の周期は、反復タイマ156を用いて決定される。
【0134】
<反復タイマ>
制御回路150は、図29および図30に示すように、反復タイマ156を内蔵している。反復タイマ156は、羽ばたき運動の位相ψとして、−0.5〜0.5の値を50Hzの繰り返し周期で、中央演算装置151に出力する。ただし、羽ばたき運動の位相ψが、−0.5からカウントアップされ、0.5になると、再度、位相ψの値が−0.5からカウントアップされるものとする。この反復タイマ156の1周期に対応して、羽部110が往復運動の中央位置よりも前方に位置する前方羽ばたき運動、および、羽部110が往復運動の中央位置よりも後方に位置する後方羽ばたき運動のそれぞれが行なわれる。すなわち、反復タイマ156の1周期が羽ばたき運動の周期の2倍に対応する。本実施の形態においては、位相ψが正であれば、羽ばたきロボット100は後方羽ばたき運動を行ない、位相ψが負であれば羽ばたきロボット100は前方羽ばたき運動を行なうものとする。近年、機器制御に用いられているマイクロコントローラの多くには、本項で説明されている反復タイマとほぼ同様の、オートリロードタイマと呼ばれる機能が含まれており、これを用いることで、最も簡便に本項の反復タイマの機能を実現することができる。
【0135】
<ROMに格納された羽ばたき方のデータ>
ROM154は、羽ばたき方のデータを格納している。羽ばたき方のデータは、ドライバ152へ送信されるPWM制御信号のデューティ比の時刻歴のデータである。なお、超音波モータ120および130には、周波数が250KHzでありデューティ比が50%に固定された駆動電圧が印加される。一方、図31に示すように、ドライバ152へ送信されるPWM制御信号のデューティ比とは、デューティ比が50%に固定された250KHzの駆動電圧のON期間とOFF期間との和に対するON期間の比率である。
【0136】
すなわち、前述の先行切り返し、遅れ切り返し、および中央切り返しの3つのモードに対応する羽ばたき方のデータは、羽ばたき運動の位相ψに対応したドライバ152へ送信されるPWM制御信号のデューティ比として、ROM154に予め格納されている。なお、ドライバ152へ送信されるPWM制御信号のデューティ比は、Duty1(ψ、MODE)およびDuty2(ψ、MODE)で示される。ただし、表2に示すように、−0.5≦ψ<0.5において、MODE=1が先行切り返しであり、MODE=0が中央切り返しであり、MODE=−1が遅れ切り返しであるものとする。
【0137】
図32〜図34には、それぞれ、後方での切り返し動作行なう場合の、中央切り返し、先行切り返し、および遅れ切り返しにおけるDuty1およびDuty2の値が示されている。ただし、Duty1およびDuty2が負の値であれば、羽部110は、往復運動の中央位置を基準にして、後方から前方へ移動する動作が行なわれていることを意味する。なお、本実施の形態においては、各Dutyの関数は、羽ばたき動作が前後方向に対して垂直な面に関して対称であるため、Duty1(−ψ)=−1×Duty1(0.5+ψ)と表現され得る。
【0138】
すなわち、符号変換のみによって、ψが負の領域での各Duty値は、ψが正の領域での各Dutyの関数を用いて算出される。そのため、上記の各Dutyの関数は、ψが正である領域のみ、ROM154に格納されている。これによれば、ROM154に格納されている各Duty関数のデータ量を半分に減らすことができる。よって、本実施の形態においては、各Duty関数のうちψが正の領域のみが示される。
【0139】
なお、右の羽部110と左の羽部110とはZ軸に対して鏡面対称であるため、前述の座標系のX軸の方向の正と負とを反転させた左手系の座標が採用されれば、右の羽部110の制御においても前述と同様のDuty1およびDuty2を用いることができる。
【0140】
<中央演算装置の動作>
中央演算装置151は、位相ψの符号に基づいて、現在の羽ばたき方が前方羽ばたき運動であるか、または、後方羽ばたき運動であるかを判断する。その後、中央演算装置151は、ROM154に格納されている表2(または表4)に示すデータに基づいて、羽ばたき方の状態を判断するとともに、通信装置170によって得られたRAM155に格納されている運動指令に応じて、前述のMODEの値を判断する。
【0141】
さらに、中央演算装置151は、前述の位相ψの値に基づいて、ROM154に格納されたDuty1およびDuty2の値を得る。この値の絶対値が、ドライバ152へ送信されるPWM制御信号のデューティ比である。また、この値の符号が、ドライバ152へ送信される、上部および下部超音波モータ120および130のそれぞれの回転方向である。前者は、例えばABS(Duty)というコマンドで表現され、後者は、例えばSIGN(Duty)というコマンドで表現される。これらのコマンドは、マイクロコントローラに内蔵されている。これらのコマンドを用いた演算は、一般的なマイクロコントローラにおいて容易に実行されるものである。
【0142】
中央演算装置151は、前述のデューティ比に基づいて、羽ばたき方に対応するPWM制御のためのON/OFF信号をドライバ152に出力するとともに、位相ψの正または負に応じた回転方向制御信号をドライバ152に出力する。
【0143】
本実施の形態では、超音波振動子121の共振周波数が250kHzであるため、たとえば、共振周波数が2.5kHzであるPWM制御が実行されれば、100段階の超音波モータの制御を行なうことが可能である。
【0144】
<ドライバの動作>
ドライバ152は、中央演算装置151から与えられたPWM制御信号のON/OFFおよび回転方向制御信号に応じて、超音波モータ120を回転/停止、および、正転/反転させる。
【0145】
超音波モータ120は自己位置保持機能を有するため、回転および停止の動作は、PWMのON/OFFに応じて後述の電力供給をON/OFFすることによって、実現される。
【0146】
また、図12および図13に示されるように、超音波振動子121において、裏面電極1217に与えられる電位φAの位相と表面電極1216に与えられる電位φBの位相との差を変更することによって、上部ロータ122の正回転と負回転との間の変更を行なうことができる。
【0147】
ドライバ152は、中央演算装置151からPWM信号を受けて、電位φAおよびφBのデータを作成する回路と、昇圧回路153から供給される高圧電力を制御して、超音波振動子121の表面電極1216および裏面電極1217に電位φAおよびφBを与える回路とからなる。前者は、一般的なタイマ回路やCPU(Central Processing Unit)を用いて容易に実現され得るものであり、後者は、たとえば、Hブリッジと呼ばれる一般的なCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)回路を用いて容易に実現され得るものである。本発明者らの実験によれば、これらの回路は、3mm×3mm×0.85mmの小型パッケージに収められ得るものであり、そのパッケージの質量は約25mgである。
【0148】
一般的に、前者のプログラムは以下のように表される。
:Label
if(PWM=ON) then
if(回転方向=正方向) then
φA=1
φB=1
φA=0
φB=0
end if
if(回転方向=逆方向) then
φB=1
φA=1
φB=0
φA=0
end if
end if
goto Label
但し、これらは簡易に前者回路の動作を表現するための一例であり、実際のプログラムにおいては、φAおよびφBのそれぞれが250kHzの矩形波となるようなタイミング調整が行われるため、ダミーの実行文の挿入等が必要になる。
【0149】
<昇圧回路>
昇圧回路153は、電源190の電圧(3V)を、超音波モータの駆動のために必要な+30Vの電圧に変更して、+30Vの電圧をドライバ152に印加する。昇圧回路153としては、一般的なDC(Direct Current)−DCコンバータが用いられ、その一例として、3mm×3mm×0.85mmという小型パッケージが市販されている。昇圧回路153の質量は約25mgである。
【0150】
<ブロック図>
前述の制御の体系のブロック図が図29に示されている。なお、4つの超音波モータの駆動方法は同一であるため、図29には左の羽部110を駆動する上部超音波モータ120の制御体系のみが示され、他の制御体系は省略されている。また、図30は、後述する図35のフローチャートにおけるデータ処理の流れを説明するための機能ブロック図である。
【0151】
<制御フローチャート>
次に、図36を用いて、羽ばたきロボットの制御のためのフローチャートの一例を説明する。なお、このフローチャートは、一例であり、羽ばたきロボット100のアプリケーションによって変更され得るものである。
【0152】
なお、以下のフローチャートにおいて、反復タイマ156は前述のオートリロードタイマを用いて恒常的に動作しており、ステップS1においては、ψ=0である状態から処理が開始されるものとする。このとき、α=0°であるものとする。
【0153】
ステップS1<羽ばたきロボット動作決定>
コントローラ200から送信されたオペレータ210の運動指令が、通信装置170を介して、RAM155に格納される。
【0154】
ステップS2<羽ばたき状況検出>
中央演算装置151は、反復タイマ156から送信されてきた位相ψの値のデータに基づいて、羽ばたきロボット100の現時刻での羽ばたき方の状態を認識する。具体的には、中央演算装置151は、位相ψの値が正であれば、羽ばたきロボット100が後方羽ばたき運動を行なっていると判断し、位相ψが負であれば、羽ばたきロボット100が前方羽ばたき運動を行なっていると判断する。
【0155】
ステップS3<羽ばたきモード決定>
中央演算装置151は、上記運動指令に応じて表2の行成分を選択し、また、上記羽ばたき方の状態に応じて表2の列成分を選択する。それにより、中央演算装置151は、中央切り返し、先行切り返し、および遅れ切り返しの中からいずれか1の羽ばたきモード、すなわちMODEの値を選択する。選択された羽ばたきモードのデータは、RAM155に格納される。
【0156】
ステップS4<デューティ比決定>
中央演算装置151は、前述の羽ばたきモードのデータに基づいて、ROM154に格納されたDuty1(ψ、MODE)およびDuty2(ψ、MODE)のデータの中からドライバ152へ送信されるPWM制御信号のデューティ比を選択する。
【0157】
ステップS5<ドライバ駆動>
中央演算装置151は、上記PWM制御信号のデューティ比の正または負に応じて、回転方向制御信号をドライバ152に出力するとともに、そのデューティ比のPWM信号をドライバ152に出力する。すなわち、ABS(A)をAの絶対値とし、SIGN(A)をAの符号とすると、回転方向制御信号はSIGN(Duty)であり、デューティ比はABS(Duty)である。なお、ここで、Dutyは、上部および下部超音波モータ120および130に応じた、Duty1(ψ、MODE)およびDuty2(ψ、MODE)を意味する。
【0158】
ステップS6<超音波モータ駆動>
ドライバ152は、上記回転方向制御信号に応じて、振幅が30Vであり、かつ、周波数が250kHzである矩形波の電圧を表面電極1216および裏面電極1217に印加する。これらの2つの矩形波は、±90°位相が異なっている。具体的には、ドライバ152は、超音波振動子121の表面電極1216に矩形波の電位φBを与え、また、超音波振動子121の裏面電極1217に矩形波の電位φAを与える。この矩形波の電位φAの位相と矩形波の電位φBの位相とが±90°ずれている。
【0159】
ステップS7<次回羽ばたきモード選択>
ψ=0またはψ=−0.5の場合には、羽ばたき方の状態が変更されたことを意味するため、再びステップS1の処理が実行され、運動指令の変更も含め、羽ばたきモードが更新される。ψ=0またはψ=−0.5以外の場合には、羽ばたきモードは更新されず、ステップS4の処理が実行され、新たな位相ψが設定される。
【0160】
<補足>
なお、上記指令の形態はあくまで説明のための一例であり、これに限定されない。たとえば、速度指令が電圧値としてアナログ信号で与えられることにより、量子化誤差のない滑らかな速度指令が得られる手法が用いられてもよい。また、超音波モータの駆動に必要な電圧は、技術の進歩によって変化し得るものである。たとえば、現行の主なTTL(Transistor Transistor Logic)−IC(Integration Circuit)やCPU(Central Processing Unit)の駆動電圧である3V以下で駆動し得る超音波モータが実現されれば、昇圧回路153は不要となる。
【0161】
また、本実施の形態では、説明の簡便のため、フィードバック制御を行なわず、単にコントローラ200の指令によって羽ばたき方が一義的に選択される手法の説明がなされたが、羽ばたきロボット100の制御手法は、前述の手法に限定されない。
【0162】
たとえば、中央演算装置151が位置姿勢検出センサ160から位置および姿勢の情報を得て、その情報に基づいて運動指令を新たに作成するフィードバック制御が用いられてもよい。
【0163】
さらに、本実施の形態では、説明の簡便のため、デューティ比に応じて超音波モータ120および130の回転速度が一義的に決定されるという仮定の下に説明がなされているが、負荷の変動などによってはこの仮定が成り立たない場合も考えられる。この場合には、上部磁気エンコーダ126の信号によって得られる上および下部超音波モータ120および130の回転角θ1およびθ2の値を参照して、デューティ比が調整されてもよい。
【0164】
なお、前述の羽ばたきロボットの制御においては、理想的には、高い機動力を得るための羽ばたき運動の制御に必要な演算時間が短いことが望ましい。また、羽ばたきロボットは軽量であることが望ましい。このため、前述の羽ばたき運動を制御するアルゴリズムも極力単純であることが望ましい。これらのことを考慮すると、高い機動力を有する羽ばたきロボットに求められる要件は、単独性、連続性、選択性、独立性、および単純性である。
【0165】
単独性とは、流体力発生機構が設置されている胴体の姿勢に関わらず、当該流体力発生機構が単独で流体力の方向を変更することができることを意味する。単独性の欠如しているロボットの例として、ロータが胴体に固定されているヘリコプタが挙げられる。
【0166】
連続性とは、羽ばたき運動の変更が、胴体に大きな加速度を生じさせずに、連続的に行われることを意味する。
【0167】
選択性とは、羽ばたき運動の変更が、過去の羽ばたき運動の履歴に関わらず、独立して行われることを意味する。選択性が欠如している羽ばたきロボットの例として、先述のRon FearingらによるMFI(Micromechanical Flying Insect)が挙げられる。これは共振によって羽部を駆動しているため、羽ばたき方を複数周期に渡って徐々に変更することしかできない。
【0168】
独立性とは、流体力発生機構が生み出す流体力が、羽ばたき運動の変更の履歴に影響されないことを意味する。独立性が欠如する具体的な場面として、以前の羽ばたき運動により生じた気流の影響を受ける現象などが挙げられる。
【0169】
単純性とは、羽ばたき運動の変更を実現するためのアルゴリズムが極力単純であることを意味する。
【0170】
(高機動力要件の検討)
<<単独性>>
本実施の形態における羽ばたきロボット100の制御は、表2に示されるように、全て、羽ばたき運動の両端における羽部の捻り動作のタイミングの選択によって行われる。これは、胴体の姿勢に拘束されないため、単独性が確保される。
【0171】
より具体的には、図24〜図26に示される先行切り返しおよび遅れ切り返しのうちの一方の羽ばたき方が選択されると、羽部110の加速度の水平方向成分を独立して制御することが可能で、羽ばたき運動の1周期における羽部110の加速度の水平方向成分の方向を前方および後方のいずれかに向けることができる。したがって、羽ばたきロボットは、本体部(胴体)101の姿勢を変化させることなく、羽部110の動作のみの変更によって、流体力の方向を変更することが可能である。
【0172】
<<連続性>>
前述の羽部110の捻り、すなわち切り返しの動作は、羽ばたき運動における羽部110の往復運動の始点または終点を含む特定期間においてのみ異なり、いずれの羽ばたき方においても、羽ばたき運動の往復運動の中心位置を含む所定期間においては、羽部110の運動は同一である。つまり、複数種類の羽ばたき運動は、往復運動の中心位置を含むタイミングにおいて、共通の動作をする。このため、羽ばたき運動中に羽ばたき方の変更がなされても、その羽ばたき方の変更が共通の動作をするタイミングにおいてなされるのであれば、1の羽ばたき方から他の羽ばたき方への変化における羽部110の挙動は、連続的なものである。つまり、羽ばたき方の変更はスムーズに行われる。
【0173】
より具体的には、本実施の形態の羽ばたきロボットは、制御回路150のROM154が、羽部110に羽ばたき運動をさせるための複数種類のデータ(表2参照)を有し、複数種類のデータに基づいてアクチュエータ(上部および下部超音波モータ120および130)を制御する。複数種類のデータのそれぞれは、羽部110の往復運動の1周期の動作を特定可能であり、複数種類のデータは、往復運動の1周期の所定期間において、羽部110に共通の羽ばたき運動をさせるものである。具体的には、複数種類のデータは、先行切り返しのためのデータ、中央切り返しのためのデータ、および遅れ切り返しのためのデータからなる3種類のデータであり、図25および図26ならびに表2によって表わされている羽ばたき方(停空、上昇、下降、前進、後退、右移動、左移動、右旋回、および左旋回)をさせるためのデータである。制御回路150は、羽部110の往復運動の中心位置を含む所定期間において、アクチュエータ(超音波モータ120,130)が複数種類のデータのうちの1のデータによって特定される羽ばたき運動を羽部110にさせる制御からアクチュエータが複数種類のデータのうちの他のデータによって特定される羽ばたき運動を羽部110にさせる制御へ切り換える。
【0174】
上記の構成によれば、羽部の運動に不連続な変化が生じることなく、羽ばたき運動の態様を変更することができる。そのため、羽ばたき運動の「連続性」が実現される。
【0175】
また、羽部は、1のデータによって特定される羽ばたき運動においては、往復運動の一周期のうちの2つの特定期間のそれぞれにおいて行われる他のデータによって特定される羽ばたき運動とは異なる軌跡を描くことが望ましい。これによれば、羽部110は、往復運動の1周期の間に最大で4種類の状態に順次変化する。そのため、羽ばたき運動のバリエーションが豊富になる。
【0176】
<<独立性>>
また、2つの特定期間は、互いに1/2周期ずれていてもよい。これによれば、1の特定期間と他の特定期間とが時間的に最も大きくずれて繰り返される。そのため、一方の特定期間における羽ばたき運動に起因して生じる気流が、他の特定期間における羽ばたき運動に起因して生じる気流に及ぼす影響が最も小さくなる。そのため、羽ばたき運動の変更における「独立性」が確保される。
【0177】
また、2つの特定期間の一方および他方は、それぞれ、羽部110の往復運動の一方端に位置するタイミングおよび羽部110の往復運動の他方端に位置するタイミングを含むことが望ましい。つまり、羽部110の切り返しは、前後方向の往復運動の端部を含む期間において行なわれることが望ましい。これによれば、1の特定期間における羽部110の位置と他の特定期間における羽部110の位置とが最も離れている。そのため、一方の特定期間における羽ばたき運動に起因して生じる気流が、他方の特定期間における羽ばたき運動に起因して生じる気流に及ぼす影響が最も小さくなる。そのため、羽ばたき運動の変更における「独立性」が確保される。
【0178】
すなわち、本実施の形態の羽ばたきロボットにおいては、羽ばたき運動の両端のそれぞれを含む特定期間においてのみ羽部110の動作が異なる複数種類の羽ばたき運動が行われる。そのため、以前の羽ばたき運動によって生じた流体の挙動が現在の羽ばたき運動に与える影響は極力低減されている。これにより、独立性が実現されている。
【0179】
<<単純性>>
また、2つの特定期間の一方の期間における羽ばたき運動により生じる流体力のうちの一の方向成分と、2つの特定期間の他方の期間における羽ばたき運動により生じる流体力のうちの一の方向成分とが、相殺される。これによれば、羽ばたき運動の変更に起因する羽ばたきロボットの姿勢の変化の態様が単純になる。そのため、羽ばたきロボットを所望の姿勢にするための制御が容易になる。したがって、羽ばたき運動の変更における「単純性」が確保される。
【0180】
より具体的には、本実施の形態の羽ばたきロボットにおいては、表2に示されるように、羽ばたきロボットの浮上移動の態様(停空、上昇、下降、前進、後退、左移動、右移動、左旋回、右旋回)と、浮上移動の態様を実現するための羽ばたき方(先行切り返し、中央切り返し、および遅れ切り返しの組み合わせ)とが一対一に対応している。そのため、羽ばたき方に対応する上部および下部超音波モータ120および130のそれぞれの駆動デューティ比のデータが変更されるだけの極めて単純なアルゴリズムによって、浮上移動態様の変更を実現することができる。したがって、本実施の形態の羽ばたきロボットにおいては単純性が実現されている。
【0181】
更に、複数のデータのうちのホバリングのためのデータによって特定される羽ばたき運動は、羽部110に上下方向および左右方向を含む平面に対して鏡面対称な前後方向の往復運動をさせるものであり、制御回路150は、前後方向の往復運動の中心位置から前後方向の往復運動の一方端まで羽部110を移動させるための基本データ(図32、図33、および図34)と、前後方向の往復運動の中心位置から前後方向の往復運動の他方端まで羽部110を移動させるように、基本データを変換するためのアルゴリズムまたは演算機能部、即ち(Duty1(−ψ)=−1×Duty1(0.5+ψ))を含んでいることが望ましい。これによれば、制御回路150は、羽ばたき運動の1周期の1/2の期間のみのためのデータを有しているだけで、所望の羽ばたき運動を羽部110にさせることができる。そのため、制御回路150のデータの記憶のためのメモリ容量を低減することができる。その結果、羽ばたきロボットを小型化かつ軽量化することができる。
【0182】
(通信装置)
通信装置170は、外部のコントローラ200および発射装置180から、それぞれ、羽ばたきロボット100に必要とされる羽ばたきロボット100の加速度および発射方向の情報を受信し、その情報を制御回路150の中央演算装置151に与える。
【0183】
(電源)
本発明の駆動エネルギー源としての電源190は、必要とされる電力を供給できる放電特性を有し、かつ、浮上を妨げない質量を有するものであれば、いかなるものであってもよい。
【0184】
本発明者らが用いた電源190は、質量0.7gのリチウムイオン電池で、本発明者らの計算によれば、約50秒にわたり0.6Wを供給することができる。電源190は、本体101の下部に設けられている。そのため、電源190は、羽部110が受ける流体反力の作用点であるベアリング123より下側に位置し、羽ばたきロボット100の姿勢を自律的に安定させている。
【0185】
この他の電源としては、燃料電池、電気二重層コンデンサなどのキャパシタ、太陽電池、および有線による供給、等が挙げられる。また、これらの電源が併用されてもよい。たとえば、リチウムイオン電池の他に、羽部110の表面に太陽電池が設けられ、これらの電力が併せて用いられてもよい。
【0186】
(本体)
本体101は、図38等に示されるように、底部プレート102、上部プレート103、背面プレート106、および、底部プレート102に設けられた3本の脚105からなる。
【0187】
底部プレート102、上部プレート103、および背面プレート106のそれぞれは、厚さ0.2mmのCFRPからなり、フレーム部104は厚さ35μmのステンレスからなる。脚105は、肉厚40μm、長さ10mm、かつ直径0.5mmのCFRPの中空パイプからなる。
【0188】
また、上部プレート103および底部プレート102は、ロータシャフト124、支持シャフト127、および本体補強ポール112によっても連結されている。背面プレート106の中心部には直径5mm、厚さ0.02mmの発射用パッド107が貼り付けてある。発射用パッド107は鉄金属の薄板によって構成される。また、発射用パッド107は電源190の充電用端子と電気的に接続されており、外部に設けられた電源から発射用パッド107に電圧を加えることで、電源190を充電することが可能になっている。
【0189】
(発射機構)
次に、図38および図39を用いて、実施の形態1の羽ばたきロボットを発射するための発射装置180を説明する。
【0190】
<原理>
発射装置180は、羽ばたきロボット100が浮上を開始する際に、羽ばたきロボット100に搭載されている電源190以外から羽ばたきロボット100へエネルギーを与えるとともに、羽ばたきロボット100の浮上開始動作および浮上移動動作を補助するためのものである。ここで、羽ばたき浮上開始動作および羽ばたき浮上移動動作の補助とは、羽ばたきロボット100の浮上方向、すなわち鉛直上方の成分を有する外力を羽ばたきロボット100に与えることを意味するものとする。
【0191】
なお、本実施の形態の説明において用いられる図38および図39ならびに以後の実施の形態の説明において用いられる図40〜図44には、説明の簡便のため、羽ばたきロボット100については、羽部110および本体101のみが示されている。また、羽ばたきロボット100は、その底面を発射装置180の側方に向けて発射装置180に装着されている。つまり、羽ばたきロボット100の背面が発射装置180に装着されている。
【0192】
図38は発射装置180の斜視図である。発射装置180は、各種の構成を内包する筺体1805と、羽ばたきロボット100に力を作用させる作用部1802を備えている。作用部1802は、発射用バネ1801によって力を与えられる。また、発射装置180は、発射用バネ1801を縮んでいる状態から伸びている状態へ変化させるときに押される発射ボタン1803を備えている。また、発射装置180は、情報を表示する表示部1804を備えている。
【0193】
図39は発射装置180の断面図である。発射装置180は、筺体1805内に、保持部1806、保持用バネ1807、回路部1808、つめ1821、および電源部1809を備えている。保持部1806は、発射ボタン1803と一体的に形成されている。また、保持用バネ1807の一方端が保持部1806に接続され、保持用バネ1807の他方端が筺体1805の内面に接続されている。つめ1821は、羽ばたきロボット100に力を与える作用部1802と一体的に形成されている。つめ1821は、保持部1806と協働して、作用部1802を保持する状態と作用部1802を保持しない状態(解放状態)とのそれぞれに変化させる。
【0194】
発射用バネ1801は、押しバネであるため、外力を受けて収縮すると、収縮長さに比例して復元力を蓄える。ただし、発射用バネ1801の代わりに、ゴムなどバネ以外の弾性体が用いられてもよい。
【0195】
図39に示される状態において、作用部1802に鉛直上方から外力を与えることによって、発射用バネ1801を収縮させる。それにより、保持部1806とつめ1821とが係合する。この状態で、発射ボタン1803が押されると、保持部1806とつめ1821との係合が外れ、作用部1802は発射用バネ1801の復元力によって図39に示される状態から鉛直上方に飛び出す。
【0196】
作用部1802は、重力によって鉛直上方の速度成分が失われるか、または、つめ1821がステージ1822の下面に接触することによって停止した後、重力によって筐体内へ戻る。
【0197】
作用部1802の上端部には電磁石1810が内蔵されている。発射ボタン1803が押されているときには、電磁石1810はオフ状態になり、一方、発射ボタン1803が押されていないときには、電磁石1810はオンの状態になっている。電磁石1810の吸着力は、発射装置180が後述される待機状態の際に、羽ばたきロボット100が発射装置180に装着された状態で、発射用バネ1801の復元力よりも大きい。
【0198】
また、電磁石1810上において、羽ばたきロボット100の発射用パッド107に設けられた充電用電極1831と接触する部分には、電極1830が設けられており、電極1830は電源部1809と電気的に接続されている。
【0199】
表示部1804には発射装置180の情報を示すための小型液晶ディスプレイが設けられており、そのディスプレイには後述の姿勢センサ1811によって得られた情報および発射装置180のバッテリー残量が表示される。
【0200】
回路部1808には、表示部1804を制御するための表示部制御回路1812、姿勢センサ1811、電磁石1810のオン/オフを切り換えるための電磁石制御回路1813、および羽ばたきロボット100と通信するための通信部1814が内蔵されている。
【0201】
姿勢センサ1811としては、市販の小型6軸電子コンパス(3軸加速度センサと3軸地磁気センサを1チップ化したもの)が搭載される。6軸電子コンパスにより、3次元空間での発射装置の姿勢を検出することが可能になる。
【0202】
電源部1809は、市販の乾電池、ボタン電池、およびリチウムイオン電池等の電池を有しており、回路部1808へ電力を供給する。
【0203】
発射ボタン1803が押されると、まず、羽ばたきロボット100の発射方向、すなわち、発射装置180の姿勢に関する情報が、通信部1814を経由して、羽ばたきロボット100に送信される。次に、電磁石1810がオフ状態になる。上述の2つのステップは、電気信号を用いる通信によってなされるため、つめ1821が保持部1806から離れてから作用部1802の拘束が解除されるまでに必要とされる時間よりも十分に短い時間で完了する。
【0204】
最後に、作用部1802の拘束が解除され、作用部1802が図38〜図44に示される状態から鉛直上方に移動する。
【0205】
図38および図39に示された発射装置180においては、発射用バネ1801が収縮され、かつ、保持部1806がつめ1821に係合された状態が発射待機状態と呼ばれ、また、オペレータ210によって発射ボタン1803が押される動作が発射動作と呼ばれる。
【0206】
(実施の形態2)
次に、図40および図41を用いて、実施の形態2の羽ばたきロボットシステムが説明される。ただし、羽ばたきロボット100の構成は、実施の形態1の羽ばたきロボット100の構成と同一であるため、特に必要がなければ、その説明は繰り返さない。以後においては、本実施の形態の羽ばたきロボットシステムと前述の実施の形態の羽ばたきロボットシステムとが異なっている点が主に説明される。
【0207】
図40は、実施の形態2の発射装置180を示す。なお、本実施の形態の発射装置180においては、上述の実施の形態1の発射装置180と同一の機能を発揮する部位には、実施の形態1の発射装置180と同一の参照符号が付されている。
【0208】
本実施の形態の発射装置180は、発射用バネ1801と、作用部1802と、発射ボタン1803と、発射待機ボタン1815と、表示部1804と、リニアモータ調整ダイアル1816と、筺体1805とを備えている。
【0209】
図41は、本実施の形態の発射装置180の断面図である。発射装置180の筺体1805内には、リニアモータ1817と、回路部1808と、電源部1809とが内蔵されている。
【0210】
リニアモータ1817は、作用部1802に接続されており、図41に示される状態から作用部1802を上下方向に移動させ得る。リニアモータ1817は、回路部1808に搭載されている後述されるリニアモータ制御回路1818によって制御される。また、リニアモータ1817の制御のための操作は、発射ボタン1803、発射待機ボタン1815、およびリニアモータ調整ダイアル1816を用いて実行される。
【0211】
オペレータ210により発射ボタン1803が押されると、発射ボタン1803に接続された後述のリニアモータ制御回路1818に発射を指示する信号と、リニアモータ調整ダイアル1816によって設定されたリニアモータ1817の駆動速度を指定した信号とが、リニアモータ1817に接続されているリニアモータ制御回路1818に入力される。それにより、リニアモータ調整ダイアル1816によって設定された速度でリニアモータ1817を上下方向に移動させるための制御信号が、リニアモータ制御回路1818からリニアモータ1817へ送信される。リニアモータ1817に取り付けられた作用部1802は、図41における上下方向、すなわち鉛直方向に移動する。
【0212】
一方、発射待機ボタン1815が押されると、発射待機を指示する信号が、発射待機ボタン1815およびリニアモータ1817に接続されているリニアモータ制御回路1818へ入力される。それにより、リニアモータ1817を鉛直方向に移動させるための制御信号が、リニアモータ制御回路1818からリニアモータ1817へ送信される。その結果、リニアモータ1817に取り付けられた作用部1802は、鉛直方向に移動する。なお、リニアモータ1817の位置情報は、リニアモータ制御回路1818にフィードバックされており、リニアモータ1817が後述されるリニアモータ可動範囲の上端または下端に到達した時点において、発射ボタン1803または発射待機ボタン1815が押された場合における作用部1802の運動は停止する。
【0213】
リニアモータ1817の可動範囲の上端は、作用部1802に接続されているリニアモータ可動部1819が図41に示されるステージ1822の下面に接触しないように設定されている。リニアモータ1817の可動範囲の下端は、作用部1802の上面がステージ1822の上面と一致する位置である。このとき、リニアモータ可動部1819または作用部1802の下面は電源部1809に接触しないように設定されている。
【0214】
なお、リニアモータ1817としては電磁式リニアモータまたは超音波リニアモータなどが構成例として考えられる。
【0215】
リニアモータの速度は、リニアモータ調整ダイアル1816を用いてリニアモータ1817に印加される電圧の値を変化させることによって制御される。
【0216】
作用部1802には電磁石1810が内蔵されている。発射ボタン1803が押されると、電磁石1810はオフ状態になり、一方、発射待機ボタン1815が押されると、電磁石1810はオンの状態になる。これは、実施の形態1と同様である。
【0217】
表示部1804には、発射装置180の情報を示すための小型液晶ディスプレイが設けられており、後述される姿勢センサ1811によって得られた情報、リニアモータ1817の情報、および発射装置180のバッテリー残量が表示される。
【0218】
回路部1808には表示部1804を駆動するための表示部制御回路1812、リニアモータ1817を制御するリニアモータ制御回路1818、姿勢センサ1811、電磁石1810を切換る電磁石制御回路1813、および羽ばたきロボット100と通信するための通信部1814が内蔵されている。
【0219】
姿勢センサ1811および電源部1809は前述の実施の形態1の発射装置180の姿勢センサ1811および電源部1809と同一である。
【0220】
発射ボタン1803が押されると、まず、羽ばたきロボット100の発射方向、すなわち、発射装置180の姿勢に関する情報が通信部1814を経由して羽ばたきロボット100に送信される。次に、電磁石1810がオフ状態になる。最後に、リニアモータ1817が動作する。
【0221】
本実施の形態の発射装置180においては、オペレータ210により発射待機ボタン1815が押され、作用部1802が下端まで下げられた状態が発射待機状態と呼ばれ、発射ボタン1803が押される動作が発射動作と呼ばれる。
【0222】
上述の発射装置180が発射待機状態である場合において、羽ばたきロボット100の発射用パッド107は、発射装置180の作用部1802に接触すると、作用部1802に内蔵されている電磁石1810によって吸着される。この状態で、オペレータ210により、上述の発射のための操作が行われると、羽ばたきロボット100は、図41に示される状態から鉛直上方向に所定の初速度で発射される。
【0223】
(実施の形態3)
次に、図42および図43を用いて、実施の形態3の羽ばたきロボットシステムが説明される。ただし、羽ばたきロボット100の構成は、実施の形態1の羽ばたきロボット100の構成と同一であるため、特に必要がなければ、その説明は繰り返さない。以後においては、本実施の形態の羽ばたきロボットシステム前述の実施の形態の羽ばたきロボットシステムとが異なっている点が主に説明される。
【0224】
図42および図43は、実施の形態3の発射装置180を示す図である。本実施の形態の発射装置180においても、実施の形態1および2のそれぞれの発射装置180と同一の機能を発揮する部位には同一の参照符号が付されている。
【0225】
図42は、発射機構が設けられた羽ばたきロボット100とそれを発射するための発射装置180とを示す。
【0226】
羽ばたきロボット100の筺体背面プレート106には、発射のための発射用バネ1801と、上述の羽ばたきロボット100と同様の発射用パッド107とが設けられている。発射装置180は、発射ボタン1803、表示部1804、電磁石1810、および筺体1805を備えている。羽ばたきロボット100に設けられている発射用バネ1801は押しバネであり、筺体1805には回路部1808および電源部1809が内蔵されている。
【0227】
発射ボタン1803が押圧されたことを示す信号は、後述される回路部1808に設けられている電磁石制御回路1813に送信される。発射ボタン1803が押されると電磁石1810はオフ状態になり、一方、発射ボタン1803が押されていない状態では、電磁石1810はオン状態になっている。電磁石1810の吸着力は、発射装置180が後述される待機状態の際に、羽ばたきロボット100が発射装置180に装着された状態で、発射用バネ1801の復元力よりも電磁石1810の吸着力が大きい。発射ボタン1803が押されると、上述の電磁石1810のオン/オフが切り換えられる前に、まず、発射装置180の姿勢情報が、通信部1814を経由して羽ばたきロボット100に送信される。姿勢情報の送信が完了した後、上述された電磁石1810オン/オフが切り換えられる。
【0228】
表示部1804には発射装置180の情報を示すための小型液晶ディスプレイが設けられており、ディスプレイには、後述される姿勢センサ1811によって得られた情報および発射装置180のバッテリー残量が表示される。
【0229】
回路部1808には、表示部1804を駆動するための表示部制御回路1812、姿勢センサ1811、電磁石1810を制御する電磁石制御回路1813、および羽ばたき浮上装置100と通信するための通信部1814が内蔵されている。
【0230】
本実施の形態においても、姿勢センサ1811および電源部1809は実施の形態1のそれと同一である。
【0231】
本実施の形態の羽ばたきロボット100と発射装置180との組み合わせにおいて、発射用バネ1801を収縮させた状態で、電磁石1810と発射用パッド107とが吸着された状態が発射待機状態と呼ばれ、また、オペレータ210により発射ボタン1803が押された状態が発射動作と呼ばれる。
【0232】
オペレータ210により上述の発射動作が行われると、電磁石1810はオフ状態になるため、発射用バネ1801が伸長し、発射用バネ1801の復元力に相当する外力が羽ばたきロボット100に加わる。そのため、外力の加わる方向に羽ばたきロボット100が発射される。
【0233】
(実施の形態4)
次に、実施の形態4の羽ばたきロボットシステムが説明される。ただし、羽ばたきロボット100の構成は、実施の形態1の羽ばたきロボット100の構成と同一であるため、特に必要がなければ、その説明は繰り返さない。以後においては、本実施の形態の羽ばたきロボットシステム前述の実施の形態の羽ばたきロボットシステムとが異なっている点が主に説明される。
【0234】
図44は、実施の形態4の発射装置180を示す。本実施の形態の発射装置180においては、実施の形態1〜3のそれぞれの発射装置180と同一の機能を発揮する部位には同一の参照符号が付されている。
【0235】
本実施の形態の発射装置180は、羽ばたきロボット100の羽部110の弾性力を利用する発射機構である。本実施の形態の発射装置180の構成は、実施の形態3の発射装置180の構成と同一であるため、その説明は繰り返さない。本実施の形態の羽ばたきロボット100の構成は、実施の形態の羽ばたきロボットの構成と同一である。この発射装置180によれば、図44に示されるように、羽ばたきロボット100の羽部110は、曲げられた状態で、羽ばたきロボット100の発射用パッド107と電磁石1810とが互いに吸着されている。この状態が発射待機状態と呼ばれる。
【0236】
オペレータ210により発射ボタン1803が押されると、電磁石1810がオフになり、羽ばたきロボット100が羽部110の弾性力によって発射される。オペレータ210により発射ボタン1803が押される動作が発射動作と呼ばれる。なお、羽部110は、弾性変形可能な程度の力で曲げられ、発射装置180に装着されているものとする。
【0237】
なお、前述の各実施の形態の発射装置180において、姿勢センサ1811によって検出される発射装置180の姿勢に関する情報は、回路部1808に設けられた表示部制御回路1812および電磁石制御回路1813にフィードバックされる。姿勢センサ1811によって検出された発射装置180の三次元姿勢の情報に基づいて、発射方向および角度に関する情報が得られる。この情報は、表示部1804に表示される。
【0238】
また、羽ばたきロボット100を発射しても、所望の初速度の鉛直上方成分が得られない場合には、すなわち、発射装置180から発射される羽ばたきロボット100の方向が下向きである場合には、オペレータ210によって発射ボタン1803が押されても、電磁石1810はオフにならず、羽ばたきロボット100は発射されない(誤発射防止機構)。
【0239】
<発射手順>
上記各実施の形態の羽ばたきロボットシステムにおける発射装置から羽ばたきロボットを発射する手順を説明する。
【0240】
次に、上述の発射装置180を用いた羽ばたきロボット100の発射の手順を説明する。図45および図46は、発射時および発射後の発射装置180の制御におけるフローチャートを示す。
【0241】
オペレータ210は、まず、羽ばたきロボット100を上述の発射待機状態にする。次に、オペレータ210は、羽ばたきロボット100を発射させたい方向と羽ばたきロボット100が発射される方向とが一致するように、発射装置180による羽ばたきロボット100の発射方向を設定する。その後、オペレータ210により発射ボタン1803がオンされる。それにより、羽ばたきロボット100は発射装置180から発射される。
【0242】
発射装置180を用いて羽ばたきロボット100の浮上開始動作を補助するためには、羽ばたきロボット100は鉛直上方の初速度成分を有する状態で発射されることが必要である。
【0243】
上述のとおり、発射装置180には姿勢センサ1811が搭載されている。姿勢センサ1811を用いて発射装置180の向きを監視することによって、羽ばたきロボット100が発射される際に、羽ばたきロボット100が上向きの初速度成分を有する状態で発射され得るかどうかを検出することが可能である。
【0244】
姿勢センサ1811から送信されてきた情報は発射装置180に設けられている表示部1804に表示される。したがって、オペレータは表示部1804から羽ばたきロボット100の発射方向が上向きの成分を有するかどうかを知ることができる。
【0245】
さらに、姿勢センサ1811から送信されてきた情報は、発射装置180の電磁石制御回路1813に入力される。また、発射装置180の姿勢が、羽ばたきロボット100が上向きの初速度成分を有する状態で発射されないようなものである場合には、オペレータ210により発射ボタン1803が押された場合であっても、電磁石1810がオフの状態にならないため、羽ばたきロボット100は発射装置180から発射されない。
【0246】
上述された発射待機状態においては、羽ばたきロボット100は、図1に示されるように、羽部110を左右方向に延ばし、羽部110の表面は、発射装置180の筺体の底面に対して垂直な状態になっている。すなわち、左および右の羽部110のいずれのアクチュエータにおいても、上部超音波モータの回転角および下部超音波モータの回転角のいずれもが同一の角度(+90度)になっている。
【0247】
また、オペレータ210により発射ボタン1803が押されると、まず、発射方向および発射ボタン1803が押されたことを示す制御信号が羽ばたきロボット100に送信される。上述の制御信号が羽ばたきロボット100に入力されると、羽ばたきロボット100は、まず、静止状態における加速度が位置姿勢検出センサ160によって検出される。このとき、検出される加速度は重力加速度であるため、その方向は重力の方向、すなわち、鉛直方向である。この静止状態の重力加速度の方向および大きさに関する情報はRAM155に格納される。
【0248】
その後、羽ばたきロボット100は位置姿勢検出センサ160により連続的に加速度を測定する。次に、発射装置の電磁石1810がオフになり、羽ばたきロボット100は発射装置180から外力を受ける、羽ばたきロボット100が発射装置180から外力を受けると、位置姿勢検出センサ160は、重力加速度および外力に起因する加速度の和の加速度が羽ばたきロボット100に生じることを検出する。その後、位置姿勢検出センサ160によって連続的に検出される加速度とRAM155に格納された重力加速度とが比較される。これにより、後述される飛行動作が検知される。
【0249】
次に、電磁石1810がオフになり、発射用パッド107が電磁石1810から離れると、発射装置180から羽ばたきロボット100への電力の供給が停止される。すなわち、発射用パッド107に電流が流れなくなる。この発射用パッド107の電流がモニタされており、その電流が流れなくなることが検出されると、羽ばたきロボット100が発射されたこをと示す情報がRAM155に格納される。
【0250】
羽ばたきロボット100に搭載されている位置姿勢検出センサ160によって、飛行中に羽ばたきロボット100の加速度が連続的に検出される。
【0251】
羽ばたきロボット100は発射待機状態において羽部に羽ばたき運動をさせないので、発射後に羽ばたきロボット100に与えられる力は重力による鉛直下向きの力と空気抵抗による抗力との和になる。重力は常に鉛直下方向に一定の値となり、空気抵抗は羽ばたきロボット100の進行方向と逆方向に加わるため、羽ばたきロボット100が鉛直上方向の速度成分を有する状態で移動していれば、空気抵抗による抗力は鉛直下向きの成分を有している。羽ばたきロボット100が鉛直下方向の速度成分を有する状態においては、空気抵抗による抗力は鉛直上向きの成分を有する。
【0252】
したがって、位置姿勢検出センサ160により重力加速度と抗力に起因して生じる加速度との和の値を検出することによって、羽ばたきロボット100が羽部110に羽ばたき運動を一切させていない状態であれば、羽ばたきロボット100が浮上(上昇)中であるのか、落下(降下)中であるのかを判断することが可能である。
【0253】
すなわち、羽ばたきロボット100が浮上(上昇)中の場合に位置姿勢検出センサ160より検出される鉛直方向の加速度は、重力加速度よりも大きな値になり、落下(降下)中の加速度は重力加速度よりも小さな値になる。
【0254】
また、羽ばたきロボット100が鉛直上方の初速度成分を有する状態で発射される場合には、浮上(上昇)から落下(降下)に変化する瞬間、つまり鉛直方向の速度がゼロになる瞬間に鉛直方向の加速度は重力加速度と同一である。
【0255】
羽ばたきロボット100が、鉛直上方向の初速度成分を有する状態で発射された後、羽部110に羽ばたき運動をさせないのであれば、鉛直方向の速度がゼロになる時点で羽ばたきロボット100が最高位置に到達することになる。
【0256】
また、発射された羽ばたきロボットの姿勢の変化が、ジャイロセンサからなる3軸回転角センサ1602を用いて検出される。すなわち、羽ばたきロボット100の発射後の加速度が検出される。その加速度とRAM155に格納された発射前の重力加速度とを比較すれば、たとえ、発射後に羽ばたきロボット100の姿勢が変化したとしても、羽ばたきロボット100は鉛直方向を認識することが可能である。
【0257】
発射後、羽ばたきロボット100が最高高さに到達した時点で、羽ばたき浮上装置100はブレーキ羽ばたき動作を行い、空中静止状態(ホバリング)になる。ブレーキ羽ばたき動作とは、発射装置180によって発射された後の羽ばたきロボット100の所定時間内の位置の変化を実質的にゼロ(ホバリング状態)にするための羽ばたき動作である。ブレーキ羽ばたき動作がなされた後、RAM155に格納されている、羽ばたきロボット100が発射装置180から発射されたことを示す情報はリセットされる。
【0258】
羽ばたきロボット100は、ホバリングをしている状態で、上述された飛行制御動作が組み合わせられた所望の飛行動作を行う。
【0259】
次に、発射から最高高さ位置でのホバリングに到るまでの羽ばたきロボット100の制御が以下に具体的に述べられる。
【0260】
発射装置180から発射された後、羽ばたきロボット100は、左の羽部110および右の羽部110の双方が発射待機状態である状態を維持している。発射された直後においては、羽部110の前縁部1102が延びる方向は羽ばたきロボット100が発射された方向にほぼ平行になっており、かつ、羽面部1103の方向は、鉛直方向にほぼ平行になっている。これによれば、羽部110が発射直後に受ける空気抵抗を最小にすることができる。また、羽ばたきロボット100が発射装置180から離れた直後から、羽ばたきロボット100は位置姿勢検出センサ160を用いた鉛直方向の加速度を連続的に検出する。
【0261】
羽ばたきロボット100が発射装置180から発射された直後においては、位置姿勢検出センサ160によって計測される鉛直方向の加速度は重力加速度よりも大きな値を示す。しかしながら、羽ばたきロボット100が発射されてから時間が経過するにつれて、鉛直方向の加速度は重力加速度に除々に近づく。位置姿勢検出センサ160によって検出された鉛直方向の加速度と重力加速度との差が予めオペレータ210によって定められた閾値、例えば、0.01%以内の範囲になると、羽ばたきロボット100は、前述のブレーキ羽ばたきを行う。それにより、X軸、Y軸、およびZ軸のそれぞれに沿った方向における速度がゼロになる。その後、羽ばたきロボット100はホバリングする。
【0262】
前述のブレーキ羽ばたきとは、上述の前進または後退のための羽ばたき動作を組み合わせることによって、発射装置180によって与えられた速度方向とは逆の方向に進行しようとする羽ばたきを方であり、空中でストップ(ホバリング=速度が実質的にゼロ)するために行われる羽ばたき方であるものとする。ブレーキ羽ばたきの詳細な制御は後述される。なお、ここで定めた0.01%という数値は、一例であり、使用環境および要求精度によってオペレータ210によって任意に設定され得る。上述のようなブレーキ羽ばたきをすることによって、発射された羽ばたきロボットは最高高さ位置に留まることが可能になる。
【0263】
羽ばたきロボット100が飛行している間の加速度の鉛直方向成分の検出アルゴリズムが説明される。羽ばたきロボット100が発射される直前の静止状態において位置姿勢検出センサ160によって検出される3軸加速度ベクトルをgとする。
【0264】
発射された後の羽ばたきロボット100の発射される前の羽ばたきロボット100に対する傾き角をθとすると、発射された後に位置姿勢検出センサ160によって検出される3軸加速度ベクトルaを−θ回転させることにより、aの座標系をgの座標系と一致させることができる。この3軸加速度ベクトルをa’とすると、a’のgの座標系への射影が、aの鉛直方向成分azになる。これによれば、本発明の制御部としての制御回路150は、azを位置姿勢検出センサ160により検出される3軸加速度aの値と、ジャイロセンサにより検出可能な傾き角とから、aの鉛直方向成分azの値を算出することができる。
【0265】
上述の例では、羽ばたきロボット100が発射装置180から発射された後に、羽ばたきロボット100は、羽部にブレーキ羽ばたきをさせた後ホバリング状態を維持するための羽ばたき運動をさせる。このブレーキ羽ばたきからホバリングへの移行のタイミングは、羽ばたきロボット100に作用する鉛直方向における加速度azの値を用いて決定されている。しかしながら、羽ばたきロボット100が発射装置180から発射された後に羽ばたきロボット100が移動する空間における風速が既知または無視できるほど小さい場合には、連続的に測定される加速度ではなく、所定の時間ごとに測定される加速度を用いて、ブレーキ羽ばたきからからホバリングへ移行するタイミングが決定される制御が行なわれてもよい。
【0266】
(実施の形態5)
次に、実施の形態5の羽ばたきロボットシステムが説明される。ただし、羽ばたきロボット100および発射装置180の構成は、実施の形態1の羽ばたきロボット100および発射装置180の構成と同一であるため、特に、必要がなければ、その説明は繰り返さない。以後においては、本実施の形態の羽ばたきロボットシステム前述の実施の形態の羽ばたきロボットシステムとが異なっている点が主に説明される。
【0267】
本実施の形態の羽ばたきロボットシステムは、羽ばたきロボット100が発射装置から発射された後の経過時間に応じて、ブレーキ羽ばたきのための制御を行うものである。
【0268】
発射装置180から離れた後に羽ばたきロボット100に加えられる力は、重力加速度および空気抵抗による抗力である。重力加速度は常に一定の値をとり、空気抵抗に起因する抗力は空気流体の方向および速度によって決定される。そのため、羽ばたきロボット180の構造情報、速度、および風速が既知であれば、空気抵抗に起因する抗力を計算することが可能になる。
【0269】
発射された直後の羽ばたきロボット100の初速度は、位置姿勢検出センサ160によって検出され得る。たとえば、初速度の検出方法として、発射された羽ばたきロボット100に与えられる加速度を積分する方法が考えられる。また、初速度の他の検出方法として、発射装置180に用いられる弾性体、羽部110の物理定数(バネ定数や弾性定数など)、およびリニアモータの特性が既知であれば、計算によって羽ばたきロボット100の初速度を算出することが可能である。発射方向は、発射装置180に搭載されている姿勢センサ1811によって検出され得る。
【0270】
したがって、発射された後に羽ばたきロボット100が移動する空間における空気の速度が既知であれば、発射された後の羽ばたきロボット100の時間的な挙動を予め羽ばたきロボット100の中央演算装置151または羽ばたきロボット100の外部に設けられた演算装置を用いて算出することができる。
【0271】
具体的には、発射を示す制御信号が発射装置180から羽ばたきロボット100へ入力されてから羽ばたきロボット100が最高高さ位置に到達するまでの時間がRAM155に格納されている。また、羽ばたきロボット100に内蔵されているタイマによってその時間をカウントダウンすれば、ブレーキ羽ばたきの開始のタイミングを自動的に決定することが可能である。なお、羽ばたきロボット100が最高高さ位置に到達したであろうと想定される時点で、前述のブレーキ羽ばたきおよびホバリングが実行されるように、タイマのカウントダウンの初期値が設定されている。
【0272】
前述の方法の他として、羽ばたきロボット100が自身の地面または海抜等の基準高さ位置からの高さを測定することができる高度センサ1630を備えている場合に、発射装置180から発射された後に連続的に自身の高度を測定する方法が用いられてもよい。この方法によっても、羽ばたきロボット100が最高高さ位置に到達した時点で、前述のブレーキ羽ばたきおよびホバリングが実行される。
【0273】
図47は、本実施の形態の羽ばたきロボットシステムの制御のフローチャートを示す。
連続的に測定された2回の高度測定結果のうち、後に測定された高度が前に測定された高度と同一であるか、または、後に測定された高度が前に測定された高度よりも低いと判定された場合に、その位置が最高高さ位置であると判定される。
【0274】
<ブレーキ羽ばたき制御>
ここで、ブレーキ羽ばたきの制御について述べる。羽ばたきロボット100は発射検知の情報がRAM155に上述のように、本羽ばたきロボット100は、図1に示すx方向の並進、y方向の並進、z方向の並進、y軸回りの回転、およびz軸回りの回転を実行することができる。
【0275】
本実施の形態においては、後述される水平姿勢とは、図1に示されるx軸、y軸、およびz軸からなる3軸座標を用いて規定される羽ばたきロボット100のx−y平面が地上の絶対座標の水平面と平行になる姿勢を言う。より具体的には、水平姿勢とは、羽ばたきロボット100の羽軸が地面と平行になる姿勢である。
【0276】
上述のとおり、羽ばたきロボット100の姿勢は、筺体下部に重心があるため、発射された後の最高高さ位置では水平姿勢になっていると考えられる。しかしながら、風の影響などにより、最高高さ位置において羽ばたきロボット100の姿勢が水平姿勢ではない場合には、すなわち、羽ばたきロボット100が傾いている場合には、羽ばたきロボット100は、x軸回りの回転およびy軸回りの回転のうちの少なくともいずれか一方を実行し、水平姿勢に戻ろうとする。この場合、羽ばたきロボット100は、図1に示されるxyz座標系において、θx=0度になるように、z軸回りに回転する。次に、羽ばたきロボット100は、図1に示されるxyz座標系において、θy=0度になるように、y軸回りに回転する。それにより、羽ばたきロボット100は水平姿勢に戻る。この状態で、z方向における並進運動のための制御が行われ、羽ばたきロボット100の高度が一定に維持される。羽ばたきロボット100は、発射された後、水平姿勢の状態で、水平方向に移動している。
【0277】
本実施の形態においては、羽ばたきロボット100は、上述のx方向における並進運動およびy方向の並進運動により、xy平面内の加速度の方向とは逆方向に加速度を生じさせるように、羽部110に羽ばたき運動をさせる。それにより、羽ばたきロボット100のxy面内における速度成分がゼロになる。xy面内における速度成分がゼロになれば、ブレーキ羽ばたきを終了するタイミングであると判定され、羽ばたきロボット100は羽部110に次の羽ばたき運動をさせる。
【0278】
なお、上述の姿勢および速度の検出は、羽ばたきロボット100の位置姿勢検出センサ160によってなされる。このとき、位置姿勢検出センサ160によって検出された羽ばたきロボット100の姿勢および速度の情報は、中央演算装置にフィードバックされる。
【0279】
また、ブレーキ羽ばたきは、羽ばたきロボット100が発射されたことを示す情報がRAM155に格納されている場合にのみ実行される。
【0280】
(浮上の可否)
<質量>
本発明者らの計算によれば、羽部1枚が生み出す浮上力は1.21gfである。よって、羽部2枚が生み出す浮上力は2.42gfである。また、各構成要素の質量が表5に示されている。表5は、上述された実施の形態1〜3の発射装置180を用いる場合における羽ばたきロボット100の質量であり、上述された実施の形態4の発射装置180、すなわち、発射用バネ1801を本体101に搭載する場合における羽ばたきロボット100の質量である。表5に示されるように、羽ばたきロボット100の総質量は、前述の浮上力2.42gfよりも小さいため、羽ばたきロボット100は、浮上することができる。
【0281】
【表5】
【0282】
<消費電力>
本発明者らの計算によれば、羽ばたきロボット100の羽部が1.2gfの浮上力を生ずるに要求される機械的パワーは上および下部超音波モータ120および130共に最大40mWである。各超音波モータのエネルギー変換効率は33%である。したがって、浮上のために要求される最大電力は超音波モータ1つにつき約120mWであり、それらの電力の合計は480mWである。ドライバ152および昇圧回路153の総合効率は約85%であるため、4つの超音波モータの駆動のために必要な電力は最大565mWである。
【0283】
中央演算装置151の消費電力は5mWである。磁気エンコーダ126の消費電力は5mWである。位置姿勢検出センサ160の消費電力は5mWである。流体センサ180の消費電力は15mWである。通信装置170の消費電力は5mWである。
【0284】
これらの電力の総計は、最大600mWであり、電源190の能力の範囲内の値である。したがって、羽ばたきロボット100は、内蔵された電源190から供給された電力のみを用いて浮上することができる。したがって、羽ばたきロボット100は、外部から電力の供給を受けることなく、独立して羽ばたき飛行することができるスタンドアロンタイプのロボットになり得るものである。
【0285】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0286】
【図1】実施の形態の羽ばたきロボットの全体構成の概略図である。
【図2】実施の形態の羽ばたきロボットの詳細構造の概略図である。
【図3】実施の形態の羽ばたきロボットの羽部の概略平面図である。
【図4】実施の形態の羽ばたきロボットの羽部の概略側面図である。
【図5】実施の形態の羽ばたきロボットの羽部の第一の層を示す図である。
【図6】実施の形態の羽ばたきロボットの羽部の第二の層を示す図である。
【図7】実施の形態の羽ばたきロボットの羽部の第三の層を示す説明図である。
【図8】実施の形態の羽ばたきロボットに用いられるアクチュエータの外観図である。
【図9】実施の形態の羽ばたきロボットに用いられる超音波モータの概略図である。
【図10】実施の形態の羽ばたきロボットに用いられる超音波モータの第一の振動モードを示す図である。
【図11】実施の形態の羽ばたきロボットに用いられる超音波モータの第二の振動モードを示す図である。
【図12】実施の形態の羽ばたきロボットに用いられる超音波モータの動作を表わす説明図である。
【図13】実施の形態の羽ばたきロボットに用いられる超音波モータの動作を表わす説明図である。
【図14】実施の形態の羽ばたきロボットに用いられる超音波モータの予圧機構の概略図である。
【図15】実施の形態の羽ばたきロボットに用いられる羽駆動メカニズムの概略図である。
【図16】実施の形態の羽ばたきロボットに用いられる羽駆動メカニズムの第一の構成部品を示す図である。
【図17】実施の形態の羽ばたきロボットに用いられる羽駆動メカニズムの第二の構成部品を示す図である。
【図18】実施の形態の羽ばたきロボットに用いられる羽駆動メカニズムの第三の構成部品を示す図である。
【図19】実施の形態の羽ばたきロボットに用いられる羽駆動メカニズムのサイズの定義を示す図である。
【図20】実施の形態の羽ばたきロボットに用いられる羽駆動メカニズムの駆動原理を説明するための図である。
【図21】実施の形態の羽ばたきロボットのホバリング時の羽ばたき方を説明するための図である。
【図22】実施の形態の羽ばたきロボットの上昇時の羽ばたき方を表わす説明図である。
【図23】実施の形態の羽ばたきロボットの下降時の羽ばたき方を表わす説明図である。
【図24】実施の形態の羽ばたきロボットの上昇・下降時の羽ばたき方により生じる水平方向の力を表す説明図である。
【図25】実施の形態の羽ばたきロボットの前進方法を表す説明図である。
【図26】実施の形態の羽ばたきロボットの後退方法を表す説明図である。
【図27】実施の形態の羽ばたきロボットの前進時の羽ばたき方を表わす説明図である。
【図28】実施の形態の羽ばたきロボットの後退時の羽ばたき方を表わす説明図である。
【図29】実施の形態の羽ばたきロボットにおける制御システムのハードウエアブロック図である。
【図30】実施の形態の羽ばたきロボットにおける制御システムの機能ブロック図である。
【図31】実施の形態の羽ばたきロボットのPWM制御信号のデューティ比を説明するための図である。
【図32】実施の形態の羽ばたきロボットの中央切り返しの制御のためのデューティ比を示すグラフである。
【図33】実施の形態の羽ばたきロボットの先行切り返しの制御のためのデューティ比を示すグラフである。
【図34】実施の形態の羽ばたきロボットの遅れ切り返しの制御のためのデューティ比を示すグラフである。
【図35】実施の形態の羽ばたきロボットの旋回のための左右の羽部のアクチュエータに印加される電圧のデューティ比を示すグラフである。
【図36】実施の形態の羽ばたきロボットの制御の流れを示すフローチャートである。
【図37】一般的なホバリングの羽ばたき方を説明するための図である。
【図38】実施の形態1の発射装置の斜視図である。
【図39】実施の形態1の発射装置の断面図である。
【図40】実施の形態2の発射装置の斜視図である。
【図41】実施の形態2の発射装置の断面図である。
【図42】実施の形態3の発射装置の斜視図である。
【図43】実施の形態3の発射装置の断面図である。
【図44】実施の形態4の発射装置の正面図である。
【図45】発射時の羽ばたきロボットの制御の流れを示すフローチャートである。
【図46】発射装置から発射された後、加速度の検出機能を用いてブレーキ羽ばたきおよびホバリングに移るまでの羽ばたきロボットの制御の流れを示すフローチャートである。
【図47】発射装置から発射された後、高度の検出機能を用いてブレーキ羽ばたきおよびホバリングに移るまでの羽ばたきロボットの制御の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0287】
100 羽ばたきロボット、101 本体、110 羽部、120,130 超音波モータ、140 駆動メカニズム、150 制御回路、160 姿勢センサ、170 通信装置、180 発射装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、羽ばたき運動によって浮上した状態で移動する羽ばたきロボットを有する羽ばたきロボットシステムに関し、特に、羽ばたきロボットを空中に発射する発射装置を備えた羽ばたきロボットシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
羽ばたきロボットは、羽部に羽ばたき運動をさせることによって浮上した状態で移動するものであり、既存のヘリコプタまたは固定翼機との比較において、機動性に優れている。羽ばたきロボットを備えた羽ばたきロボットシステムは、既に、特開2003−118697号公報に開示されている。この特許文献に開示された羽ばたきロボットは、小型、軽量、かつ、機動性に優れている。
【特許文献1】特開2003−118697号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
羽ばたきロボットが浮上するためには、羽ばたき運動によって生じる流体力が、羽ばたきロボットにかかる重力を上回っている必要がある。また、羽ばたきロボットが自ら生み出した流体力のみによって浮上を開始するためには、そのための駆動力を供給し得る電源を羽ばたきロボットに搭載することが必要である。羽ばたきロボットを自ら生み出した流体力のみによって浮上させるためのパワーを得ることができる電源としては、たとえば、リチウムポリマー電池が考えられる。この電源は、現段階では、羽ばたきロボットの自由な浮上移動を実現するためには、容量が小さ過ぎる。
【0004】
前述のことをより具体的に説明すると、次のようになる。
従来の羽ばたきロボットは、静止状態から羽ばたき運動を開始する。そのため、羽ばたきロボットが羽ばたき運動を開始した時点から電池が消耗し始める。一般に、羽ばたきロボットが連続して飛行し得る時間は、電池の容量に依存し、同一種類の電池であれば、小型かつ軽量になるほど、容量は小さくなる。そのため、羽ばたきロボットに搭載され得る市販のリチウムポリマー電池を用いた場合には、連続して飛行し得る時間は数秒から数十秒に制限されてしまう。また、羽ばたきロボットが飛行し得る領域も、電池の容量によって制限されてしまう。そこで、羽ばたきロボットが発射されるときに外部から羽ばたきロボットに外力を与えることによって、羽ばたきロボットの浮上開始に必要な電池の消耗量を低減することが必要である。
【0005】
そこで、羽ばたきロボットの浮上の開始を補助機構によって補助することが考えられる。たとえば、羽ばたきロボットの大きさと同程度の大きさを有する物体に外力を与える機構は既存の技術によって実現されている。しかしながら、その補助機構が羽ばたきロボットの発射のために適用されたとしても、上述の羽ばたきロボットが外力を受けることによって浮上を開始した場合に、その外力を受けた羽ばたきロボットの運動状態を制御するための手法が確立されていない。そのため、羽ばたきロボットは、発射機構から外力を受けることによって発射された後、羽ばたき運動を開始するタイミングおよびいかなる羽ばたき運動をすればよいかを把握していない。したがって、羽ばたきロボットは、発射された状態から通常の羽ばたき飛行状態へ効率的に移行することができない。その結果、発射機構を使用することにより、使用しない場合よりも電源の消費が大きくなるおそれもある。また、羽ばたきロボットは、補助機構の補助を受けて発射された後、自身の姿勢を制御するこができないために、自律して飛行することができないおそれもある。なお、本明細書において、「姿勢」とは、羽ばたきロボット100のアクチュエータ等が内蔵されている筐体の傾き、すなわち、X軸まわり、Y軸まわり、およびZ軸まわりのそれぞれの回転角によって特定される値であって、羽部の傾きをおよび方向を含むものではない。
【0006】
本発明は、上述の問題に鑑みなされたものであり、その目的は、羽ばたきロボットの浮上の開始を発射機構によって補助する場合にも羽ばたきロボットが自律して飛行することができなくなることを防止するための機能を有する羽ばたきロボットシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の局面の羽ばたきロボットシステムは、羽部の羽ばたき運動により流体が存在する空間を羽ばたき飛行し得る羽ばたきロボットと、羽ばたきロボットに外力を加えることによって、羽ばたきロボットを空中に向かって発射させ得る発射装置とを備えている。また、羽ばたきロボットが、自己の運動状態を検出し得るセンサと、自己が発射装置によって空中に発射された後、一旦、自己の運動状態がホバリング状態になるまで、羽部に自己の運動状態をホバリング状態にするための羽ばたき運動をさせる制御部とを含んでいる。
【0008】
この構成によれば、羽ばたきロボットが浮上の開始のために発射装置が用いられる。そのため、羽ばたきロボットが浮上を開始するときに必要なエネルギーが低減される。また、羽ばたきロボットは、発射装置によって発射された後、一旦、自己の運動状態がホバリング状態になるように、羽部に羽ばたき運動をさせる。そのため、羽ばたきロボットが発射装置によって発射された後に姿勢を維持することができなくなるという不具合の発生が防止される。
【0009】
なお、羽ばたきロボットは、ホバリング状態において多少振動している。そのため、羽ばたきロボットの速度は完全にはゼロになっていない。したがって、羽ばたきロボットは、センサによって検出された自己の運動状態の情報から、たとえば、ある時間内における自己の位置の変化が所定の範囲内の値になっている場合に、自己がホバリング状態になっていると判定してもよい。この所定の範囲を規定する値は、制御部内の記憶領域に予め記憶されているものである。なお、ホバリング状態の定義については様々なものが考えられる。そのため、制御部は、たとえば、その内部に予め記憶されているホバリング状態を特定するための情報と、センサによって検出された羽ばたきロボットの運動状態を特定するための情報との比較結果から、ホバリング状態が実現されていると判定されてもよい。つまり、ホバリング状態とは、x軸、y軸、およびz軸のそれぞれの方向における速度成分が実質的にゼロである状態であれば、いかなるものであってもよい。また、制御部は、羽ばたきロボットの運動状態がホバリング状態であると判定された場合に、ホバリング状態にするための制御から他の羽ばたき運動をさせるための制御へ移行することを許容する。
【0010】
前述のセンサが羽ばたきロボットの加速度を検出して加速度の情報を制御部へ送信する加速度センサであってもよい。また、制御部は、加速度の情報に基づいて羽ばたきロボットの高度を算出し、高度の低下をトリガとして、羽部に自己の運動状態をホバリング状態にするための羽ばたき運動をさせてもよい。
【0011】
この構成によれば、ホバリング状態にするための羽ばたき運動を開始するタイミングを特定するために必要な情報を簡単に取得することができる。また、羽ばたきロボットの加速度の情報から速度および高度の情報を得ることができる。したがって、制御部における情報処理を複雑化することなく、羽ばたきロボットの運動状態に関する多くの情報を得ることができる。
【0012】
また、前述のセンサが羽ばたきロボットの基準位置からの高度を検出して高度の情報を制御部へ送信する高度センサであってもよい。また、制御部は、高度の低下をトリガとして、羽部に自己の運動状態をホバリング状態にする羽ばたき運動をさせてもよい。
【0013】
この構成によれば、羽ばたきロボットは、高度の低下をトリガとして、自己の運動状態をホバリング状態にするため、制御部が演算処理を必要としない。そのため、制御部の処理を簡略化することができる。
【0014】
本発明の他の局面の羽ばたきロボットシステムは、羽部の羽ばたき運動により流体が存在する空間を羽ばたき飛行する羽ばたきロボットと、羽ばたきロボットに外力を加えることによって、羽ばたきロボットを空中に向かって発射させ得る発射装置とを備えている。また、羽ばたきロボットは、発射装置から発射された後の経過時間を計時するタイマと、経過時間が所定値になった後、一旦、自己の運動状態がホバリング状態になるまで、羽部に自己の運動状態をホバリング状態にするための羽ばたき運動をさせる制御部とを含んでいる。
【0015】
この構成によれば、羽ばたきロボットの浮上の開始のためのエネルギーの発射装置の使用よる低減と羽ばたきロボットが発射装置によって発射された後の姿勢の保持とを極めて簡単な制御によって実現することができる。
【0016】
また、前述の所定値は、発射装置から発射された後の羽ばたきロボットの高度が低下した直後であると推定されるタイミングにおいて、制御部が羽部に羽ばたきロボットの運動状態をホバリング状態にするための羽ばたき運動を開始させるように、設定されていてもよい。
【0017】
この構成によれば、制御部の制御が簡略化される。
また、前述の発射装置は、羽ばたきロボットの構成要素を弾性変形させるように構成要素を保持している状態から構成要素を保持していない状態へ変化することが可能な保持/非保持機構と、保持/非保持機構を保持している状態から保持していない状態へ変化させるスイッチとを含んでいてもよい。この場合、羽ばたきロボットは、構成要素の復元力を利用して、発射装置から空中に発射される。この構成によれば、発射装置の構造を単純化することができる。
【0018】
また、前述の構成要素が羽部であれば、羽ばたきロボットの構成要素のうちの極めて大きな弾性力を有する構成要素を羽ばたきロボットの発射のために利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(実施の形態1)
図1〜図37を用いて、本発明の一実施の形態の羽ばたきロボットを説明する。なお、本実施の形態では、左右対称の構成を有する羽ばたきロボットを説明する。したがって、説明の簡略のため、左右対称である構成要素には同一参照符号が付され、それらのうち左側のみの説明がなされる。
【0020】
(全体の構成)
まず、図1および図2を用いて、本実施の形態の羽ばたきロボットの全体構成を説明する。この項目は、全体構成を説明するためのものであるため、各構成要素の詳細な構成および動作は後述される。
【0021】
図1に示すように、羽ばたきロボット100は、本体101と、本体101に設けられた1対の羽部110とを備えている。一対の羽部110の一方は、本体101の左側の側部に設けられ、一対の羽部110の他方は、本体101の右側の側部に設けられている。
【0022】
羽ばたきロボット100は、羽部110の羽ばたき運動によって、周囲流体に流れを生じさせるとともに、周囲流体から反作用を受ける。このとき、羽ばたきロボット100は、鉛直上方に向いた、自重を超える反作用を周囲流体から受ける。それにより、羽ばたきロボット100には重力加速度を超える鉛直上方向きの加速度が生じる。その結果、羽ばたきロボット100は浮上する。
【0023】
また、図2に示すように、羽ばたきロボット100は、本発明のアクチュエータとしての上部超音波モータ120および下部超音波モータ130を有している。上部超音波モータ120および下部超音波モータ130は、本体101に搭載されている。上部超音波モータ120および下部超音波モータ130には、上部超音波モータ120および下部超音波モータ130の運動を羽部110へ伝達する羽駆動メカニズム140が接続されている。羽駆動メカニズム140には羽部110が接続されている。羽部110は、上および下部超音波モータ120および130の駆動によって、上下方向を回転中心軸とする往復回動運動(以後、「ストローク運動」と称する。)と、羽部110の前縁部を回転中心軸とする回転運動(以後、「捻り運動」と称する。)とを行なう。つまり、羽部110は、ストローク運動および捻り運動のそれぞれを独立して行なうことができる。
【0024】
上および下部超音波モータ120および130は、制御回路150によって制御される。また、制御回路150には、本体101に固定された位置姿勢検出センサ160から羽ばたきロボット100の位置情報および姿勢情報が与えられる。
【0025】
また、羽ばたきロボット100は、通信装置170を介して、羽ばたきロボット100自身の情報およびその周辺の情報を、外部のコントローラ200に送信する機能を有する。
【0026】
また、通信装置170は、図1および図2に示すように、外部のコントローラ200から送信されてきた情報を受信し、その情報を制御回路150に与える機能を有する。本実施の形態では、外部のコントローラ200は、オペレータ210により制御され、羽ばたきロボット100の運動指令を与えるものとする。
【0027】
なお、コントローラ200が前述の情報をオペレータ210に提示する方法は、いかなるものであってもよい。たとえば、外部のコントローラ200が画像表示機能を備えていれば、羽ばたきロボット100より送信された情報そのものが視覚的にオペレータ210に提示される。また、説明の簡便のために、外部のコントローラ200は、オペレータ210によって操作されるものとしたが、これは必須ではない。
【0028】
また、制御回路150、通信装置170等は、本体101に配された電源190から供給される電力によって駆動される。電源190は、本発明の駆動エネルギー源として機能するが、本発明の駆動エネルギー源は、電力を用いるもの以外のもの、たとえば、化石燃料等であってもよい。この場合、アクチュエータとしては例えば2サイクルエンジンやスターリングエンジン等、上記駆動エネルギー源に対応した物が用いられる。
【0029】
(羽部)
羽部110は、図3〜図7に示されたような形状を有し、長さが65mmであり、かつ、幅が16mmである。羽部110は、前縁部1102、羽面部1103、枠部1104、枝部1105、およびアクチュエータ接合部1106を有している。なお、羽面部1103とは、前縁部1102、枠部1104、枝部1105、およびアクチュエータ接合部1106以外の部分であって、細長板状部1107、1108、および1109とアラミドフィルム1114とからなる部分である。
【0030】
羽部110のアラミドフィルム1114以外の部分、つまり前縁部1102、枠部1104、枝部1105、アクチュエータ接合部1106、細長板状部1107、1108、1109は、厚さ20μmのCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastic)層からな
る。具体的に言えば、羽部110のアラミドフィルム1114以外の部分は、CFRPのシートから図5〜図7に示す3つの部分が切り抜かれ、その3つの部分が積層されることによって形成される。
【0031】
前縁部1102およびアクチュエータ接合部1106は、厚さ20μmのCFRP層の3層積層構造を有している。また、枠部1104、枝部1105、細長板状部1107、1108、および1109はCFRP層の1層構造である。図3に示されるX軸の正の方向を0度とすると、細長板状部1107の繊維軸の方向は−60度(+120度)であり、細長板状部1108および枠部1104のそれぞれの繊維軸の方向は、0度(180度)であり、細長板状部1109の繊維軸の方向は、+60度(+240度)であり、枝部1105の繊維軸の方向は−30度(150度)である。前縁部1102およびアクチュエータ接合部1106は、繊維軸の方向が−60度(+120度)、0度(180度)、および+60度(240度)である3つのCFRP層が重ねられて形成されている。
【0032】
前縁部1102の主要な変形は、羽部110の長手方向に平行な伸縮であるため、この方向とCFRP層の繊維軸とが一致していることが望ましい。また、アクチュエータ接合部1106には複数の方向に力が加えられ、羽ばたき運動に応じてこれらの力の方向が変化すると考えられる。したがって、あらゆる方向に極力均等な剛性を有するように、異なる方向の繊維軸を有する多数のCFRP層を積層することによって形成されていることが望ましい。なお、前縁部1102およびアクチュエータ接合部1106は、他の部分より剛性が高くなっている。これらの要件を満たす羽部の製造方法は後述される。
【0033】
また、アクチュエータ接合部1106、前縁部1102、枠部1104、および枝部1105に囲まれるように羽面部1103が設けられている。羽面部1103は、アラミドフィルム1114からなり、図4の紙面の奥行き方向に延びている。また、アクチュエータ接合部1106は、羽部110の根元に設けられ、アクチュエータに接合されており、その長さは7.5mmである。
【0034】
また、図5〜図7に示すように、複数の細長板状部1107のそれぞれは同一幅であり、複数の細長板状部1107同士は、互いに同一ピッチでかつ平行に設けられている。また、複数の細長板状部1108のそれぞれは同一幅であり、複数の細長板状部1108同士は、互いに同一ピッチでかつ平行に設けられている。さらに、複数の細長板状部1109のそれぞれは同一幅であり、複数の細長板状部1109同士は、互いに同一ピッチでかつ平行に設けられている。
【0035】
なお、本実施の形態では、説明の簡便のため、同一層の複数の細長板状部は、同一ピッチかつ平行であるものとしたが、たとえば、剛性分布を意図的に変更する場合には、前述のものに限定されない。たとえば、先端側に比較して、根元側のピッチが小さくなっており、それにより、剛性が高められている羽部110が用いられてもよい。
【0036】
<前縁部>
前縁部1102は、図4に示されるように、羽部110の長手方向に沿って延びる溝構造、すなわちコルゲーションと呼ばれる凹凸形状を有している。そのため、前縁部1102においては、長手方向を含む面内の曲げ変形に対する剛性が、長手方向を回転中心軸とする曲げ変形に対する剛性に比較して、高くなっている。なお、この前縁部1102の凹凸形状は、プリプレグと呼ばれるCFRP層の原材料のシートを、この凹凸形状に対応する金型に密着させた状態で加熱することによって容易に成形され得る。また、前縁部1102には荷重が大きくかかる。そのため、前縁部1102は、細長板状部が設けられていない構造、すなわち隙間がない密実構造であるので、羽面部1103より剛性が高くなっている。さらに、前縁部1102は、根元に近づくにしたがって、累積的に荷重が増加するため、根元が先端に比べ太くなっている。根元部分での前縁部1102の幅および高さは約2mmであり、先端部分での前縁部1102の幅および高さは約1mmである。ただし、図の記述精度の制約から、図4〜図7においては、根元部分における前縁部1102の幅と先端部分における前縁部1102の幅とは同じ幅で描かれている。
【0037】
<羽面部>
羽面部1103は、図4〜図7に示されるように、CFRP層の細長板状部1107、1108および1109、およびアラミドフィルム1114によって構成されている。羽部110と同一の外形を有するアラミドフィルム1114が、CFRP層の細長板状部によって挟まれている。
【0038】
本実施の形態においては、アラミドフィルム1114の耐熱温度がCFRP層の成形温度よりも高く、かつCFRP層の成形工程において、プリプレグとアラミドフィルムとを接触させておき、加圧および加熱処理を行なうことで、プリプレグに含まれる樹脂成分によってCFRP層とアラミドフィルムとを接着させることが可能である。したがって、CFRP層によって構成された前縁部1102、枠部1104、枝部1105、アクチュエータ接合部1106、細長板状部1107、1108、1109ならびにアラミドフィルム1114を含む原材料を上述の金型上で焼結することによって、簡単に羽面部1103を製造することが可能である。
【0039】
羽面部1103の細長板状部1107、1108、および1109は、それらが延びる方向が互いに60度ずつずれ、重ねられている。そのため、羽面部1103の表面に垂直な方向から見ると、細長板状部1107、1108、および1109によって、正三角形の枠、すなわちトラスが形成されているように見える。また、細長板状部1107、1108、および1109のそれぞれは、細長い長方形の輪郭を有しており、そのうち2つの長辺は、繊維軸に平行に延びている。これは、強度が高いCFRPの長手方向と、上記トラス構造の各ビームの力のかかる方向とを一致させ、一軸異方性材料であるCFRPの強度特性を最大限活用するための構成である。ただし、2つの長辺の一方の長辺のみが繊維軸に平行に延びていれば、繊維の強度をある程度有効に利用することが可能である。なお、上記ビームが長方形ではない場合には、応力解析などの手法を用いて、そのビームの形状に最適な繊維軸方向を決定する必要がある。
【0040】
また、本実施の形態では、細長板状部1107、1108、および1109のそれぞれの曲げ剛性は、前縁部1102の1/8であるものとする。一般に、曲げ剛性は、断面二次モーメントに比例する。つまり、曲げ剛性は、(幅:矩形の短辺の長さ)×(厚さの3乗)に比例する。
【0041】
ここで、細長板状部1107、1108、および1109のそれぞれの厚さが一定であり、細長板状部1107の幅が細長板状部1107同士の中心軸間の距離(以下、これを「ピッチ」という。)の1/a倍であり、細長板状部1108の幅が細長板状部1108同士のピッチの1/a倍であり、かつ、細長板状部1109の幅が細長板状部1109同士のピッチの1/a倍であると仮定する。この仮定の下では、細長板状部の幅が1/a倍になれば、羽面部1103の曲げ剛性も1/a倍になる。したがって、本実施の形態においては、細長板状部1107、1108、および1109のそれぞれの幅を細長板状部1107同士、細長板状部1108同士、および細長板状部1109同士のそれぞれのピッチの1/8倍にすることによって、前縁部1102の曲げ剛性の1/8倍の曲げ剛性を有する羽面部1103が実現されている。つまり、羽面部1103の厚さ、すなわち細長板状部の積層数を変化させることなく、細長板状部1107、1108、および1109のそれぞれの幅のみを変更することによって、所望の曲げ剛性分布を有する羽部110が形成されている。細長板状部の積層数は、自然数にしかならず、連続的に変化し得るものではないため、細長板状部の積層数を変化させるだけでは、羽部の曲げ剛性の分布が不連続になってしまう。しかしながら、上記細長板状部の幅とピッチとの比は、連続的に変化し得るものであるため、上記曲げ剛性分布を連続的に変更して、所望の曲げ剛性分布を得ることができる。
【0042】
なお、本実施の形態の羽部110の構造によれば、細長板状部1107の幅と細長板状部1107同士のピッチとの比、細長板状部1108の幅と細長板状部1108同士のピッチとの比、および細長板状部1109の幅と細長板状部1109同士のピッチとの比を互いに異ならせることによって、羽面部1103の曲げ剛性が異方性を有するようにすることが可能である。たとえば、羽部110の長手方向を含む面内の曲げ変形に対して高い剛性を有する羽部110を製造する場合には、細長板状部1108の幅を大きくし、細長板状部1108同士のピッチを小さくすればよい。
【0043】
一方、CFRP層が3つ積層された積層構造の一部をトラスが形成されるように切り抜く手法が用いられた場合には、各トラスの三辺に3つのCFRP層が積層されている。この手法により形成された羽面部の質量は、トラスが形成されていない羽面部1103と同一面積の3つのCFRP層の積層構造の質量の3/a倍(aは前述の値)となる。この場合、3つのCFRP層のうちの1つの層の繊維軸を含む面内の曲げ変形モードにおいては、その1つのCFRP層以外の2つのCFRP層は、樹脂程度の剛性しか有していないため、不要である。すなわち、前述の羽部110は、本段落にて説明されているような切り抜きによって形成された羽部の約1/3の質量で、その羽部とほぼ同一の剛性を有する。(具体的には下記の<羽質量>の項目に羽部の質量および剛性の数値が記載されている。)
<枠部>
羽面部1103を構成するアラミドフィルム1114は、図4に示されるように、アクチュエータ接合部1106、前縁部1102、および枠部1104の間に張られている。そのため、アラミドフィルム1114の端部の破損が防止されている。本実施の形態では、枠部1104の幅は約0.5mmである。なお、枠部1104は、図4に示されるよう
に、羽面部1103を取り囲む形状であるため、それが延びる方向は位置によって異なる。枠部1104の繊維軸の方向は、それの延びる方向に一致している。
【0044】
<枝部>
羽部110が大きくなった場合には、羽部110の先端部の回転半径も大きくなる。この場合、流体に対する相対速度が大きくなるため、羽部110の先端部には大きな流体力が生じる。羽部110の先端部に生じる流体力が大きくなっても、羽部110の先端部の制御性を維持する必要がある。そのため、前縁部1102に接続され、前縁部1102から斜め方向に延びる枝部1105が設けられている。枝部1105の幅は約0.9mmである。枝部1105は、X軸方向の羽部110の先端側を向く方向を0°とした場合に、−30°の方向に延びるように形成されている。
【0045】
なお、枝部1105とX軸との間の角度および羽面部1103に要求される剛性によっては、前述の細長板状部1107とは異なる細長板状部を有するCFRP層に枝部1105が設けられていてもよい。また、CFRP層とは別の材料を用いて形成された枝部1105がCFRP層同士の間に挟み込まれた構造の羽面部1103が用いられてもよい。
【0046】
<アクチュエータ接合部>
アクチュエータ接合部1106は、実際には、羽部110を駆動するアクチュエータとの適合性に応じて、その形状が決定される。本実施の形態のアクチュエータ接合部1106は、図3に示される形状であるものとする。また、羽ばたき運動により生じる流体力に起因する変形を防止するため、アクチュエータ接合部1106の材料としては、細長板状部を有しない、すなわち隙間がない密実な構造のCFRP層が用いられる。さらに、アクチュエータ接合部1106の前方端には溝構造が設けられている。このアクチュエータ接合部1106の溝構造と前縁部1102の溝構造とは連続するように設けられている。
【0047】
<羽質量>
CFRPの比重が1.6g/cm3であるものとして、表1に前述の羽部110の各
部位の質量が示されている。表1に示されるように、羽部110の質量は、約26.5mgである。また、アクチュエータ接合部1106の質量は約10.8mgである。
【0048】
【表1】
【0049】
一方、CFRP層が3つ積層された積層構造をトラス形状が形成されるように切り抜く手法が用いられた比較例の羽部の質量は約48mgである。
【0050】
(超音波モータ)
次に、図8〜図15を用いて、本発明のアクチュエータとしての上部超音波モータ120および下部超音波モータ130を説明する。
【0051】
<全体構成>
まず、上部超音波モータ120および下部超音波モータ130の構成を説明する。
【0052】
図8に示されるように、上部超音波モータ120は、上部超音波振動子121と、これによって駆動される上部ロータ122とを有している。また、上部ロータ122は、上部ベアリング123を介して、ロータシャフト124に、ロータシャフト124の軸周りにのみ回転可能に設けられている。ロータシャフト124は、本体101に固定されている。上部ロータ122には、上部磁化パターン125が円弧状に記されている。上部磁化パターン125は、上部磁気エンコーダ126で読み取られる。上部超音波振動子121においては、図14に示すように、支持部1214が支持シャフト127に固定され、牽引部1224が牽引ゴム129により牽引されている。また、上部超音波振動子121を駆動する電力はフィルム基板128を介して供給される。
【0053】
下部超音波モータ130は、上部超音波モータ120と上下方向において鏡面対称の構造である。すなわち、下部超音波モータ130においては、下部超音波振動子131が下部ロータ132を回転させる。下部ロータ132は、図示されない下部ベアリングを介して、ロータシャフト124に、ロータシャフト124の軸周りにのみ回転可能に設けられている。下部ロータ132には、図示されない下部磁化パターンが円弧状に記されている。下部磁化パターンは、下部磁気エンコーダ136で読み取られる。
【0054】
上部および下部超音波モータ120および130は、上下方向において鏡面対称に設けられていること以外においては、全く同様の構成を有しているため、以降においては、上部超音波モータ120の詳細構造のみの説明を行なう。
【0055】
<駆動原理>
次に、図9〜図15を用いて、上部超音波モータ120の駆動原理を説明する。
【0056】
上部超音波振動子121は、振動板1211、表面ピエゾ1212および裏面ピエゾ1213からなる。振動板1211は、厚さ0.2mmのステンレスで作製され、幅2mmかつ長さ9mmの矩形部と、矩形部の長手方向の中央部から外方に突出する支持部1214とを有している。支持部1214に対向する矩形の長手方向の中央部には、その中央部から外方に突出する牽引部1224が設けられている。振動板1211は、表面ピエゾ1212および裏面ピエゾ1213によって挟まれている。表面ピエゾ1212および裏面ピエゾ1213は、それぞれ、幅2mm、長さ8mm、および厚さ0.2mmの短冊形状を有し、厚み方向に分極するピエゾ焼結体からなる。
【0057】
表面ピエゾ1212には表面電極1216が接合され、裏面ピエゾ1213には裏面電極1217が接合される。表面電極1216に電圧を印加すると、上部超音波振動子121において、図10に示されるような2次のたわみ(屈曲)振動モードが励起される。また、裏面電極1217に電圧を印加すると、図11に示されるような、1次の縦(伸縮)の振動モードが励起される。本実施の形態における上部超音波振動子121においては、2つの振動についての共振モードの共振周波数は、いずれも250kHzであり、互いに一致している。ここで、これらの共振モードの振動の位相を±90°異ならせることによって、振動板1211の頂点は図12および図13に示される2種類の楕円運動を行なう。2種類の楕円運動は、正方向に回転する楕円運動と、逆方向に回転する楕円運動である。また、振動板1211の頂点にはアルミナ等のセラミックからなる接触部1215が設けられている。接触部1215は、前述の楕円運動に応じて、摩擦力によって、上部ロータ122をロータシャフト124の軸周りに回転させる。このとき、正方向の回転および逆方向の回転のいずれかが選択される。
【0058】
図12および図13は、表面電極1216に与えられる電位をφAとし、裏面電極1217に与えられる電位をφBとして、φAおよびφBを、それぞれ、cos(2πft)およびsin(2πft)に振幅を掛けた関数で表した場合における接触部1215の回転方向を示している。ここで、fは入力電圧の周波数を示し、tは時刻を示し、ω(=2πf)は角周波数を示す。なお、説明の簡便のため、表面電極1216および裏面電極1217のそれぞれに与えられる電位を三角関数によって表わしたが、それらの電位の位相が±90°ずれているのであれば、矩形波等によって表わされる電位が両電極に与えられてもよい。なお、上部ロータ122および下部ロータ132のそれぞれは所定の回転角の範囲内での回転往復運動を行なう。そのため、軽量化のためには、図12および13に示されるように、不要な部分が削除された、その外形が中心角180°の略扇形状である上部ロータ122および下部ロータ132が用いられることが望ましい。これによれば、羽ばたきロボット内におけるロータの占有率を低減することができる。
【0059】
なお、前述の各部位のサイズおよび振動板の共振周波数などの数値は、一例であり、浮上のための要件が満足されるのであれば、前述の値に限定されない。この浮上のための要件は、後述の浮上可能性の項において述べられている。
【0060】
また、上部ロータ122および下部ロータ132は、必要な強度が確保される範囲内において、軽量化のための中空構造を有していてもよい。更に、上部ロータ122および下部ロータ132に、上部ロータ122の回転角θ1−下部ロータ132の回転角θ2を所定の範囲内の値に制限するための機構が設けられてもいてもよい。これによれば、羽の捻り角βが一定の範囲内の値に制限される。そのため、後述する数式(7)において、解が物理的に1つに定まる。その結果、羽部の動作が安定する。なお、本発明者らの実験によれば、(θ1−θ2)の絶対値が所定値以上の値になると、後述する式(7)の解が、重解になることが分かっている。
【0061】
<予圧機構>
次に、図14を用いて、接触部1215から上部ロータ122へ予圧を与える機構を説明する。
【0062】
接触部1215から上部ロータ122へ予圧が作用しており、その反作用として、接触部1215から上部ロータ122の外周面へ向かって抗力が生じている。そのため、上部ロータ122と接触部1215との間には摩擦が生じている。したがって、接触部1215の楕円運動によって、上部ロータ122は、摩擦力を受け、回転往復運動を行なう。
【0063】
牽引ゴム129は、環状であり、その一端が、牽引部1224に引っ掛けられている。牽引ゴム129の他端は、本体補強ポール112に固定されている牽引ゴムピン113に引っ掛けられている。したがって、牽引ゴム129には張力が生じ、牽引部1224が本体補強ポール112に向かって牽引されるため、振動板1211は牽引部1224を含む振動板1211を支持している支持シャフト127の軸周りに回転運動する。この回転運動は、接触部1215が上部ロータ122に接触することによって拘束されている。したがって、接触部1215から上部ロータ122へ向かう予圧が生じる。
【0064】
なお、前述の本体補強ポール112を、その長軸周りに回転させることによって、前述の予圧の大きさを調整することが可能である。また、予圧機構は、上部ロータ122を駆動するための摩擦力を得るために設けられているものであるため、前述の予圧が得られ、かつ、羽ばたきロボット100の浮上特性が損なわれないのであれば、図14に示す構造に限定されない。
【0065】
<回転角検出>
図8に示す上部磁気エンコーダ126には、パターン周期の1/4の間隔を置いてA相およびB相のための2つの検出部が設けられている。この構成によって、一般的なエンコーダと同様に、上部ロータ122の回転方向に応じてA相およびB相の位相が異なるため、たとえば、A相のアップエッジをカウンタのトリガとして、B相のレベルの1/0をアップカウント/ダウンカウントの機能選択に割り当てれば、上部ロータ122の回転角θ1を検出することが可能である。この回転角θ1の算出は、中央演算装置151において行なわれる。
【0066】
<補足>
なお、図8〜図14において示された超音波モータは、一般的なアクチュエータの一例であり、本発明における羽ばたきロボットのアクチュエータは、前述のような構造の超音波モータに限定されない。たとえば、アクチュエータとして、電磁モータまたは内燃機関が用いられてもよい。また、回転角検出のための装置は、羽ばたき飛行を阻害するものでなければ、いかなるものであってもよい。たとえば、前述の磁気エンコーダを用いる手法の替わりに、光学式エンコーダを用いる手法が採用されてもよい。
【0067】
(羽駆動メカニズム)
次に、図15〜図18を用いて羽駆動メカニズムについて説明する。
【0068】
羽駆動メカニズム140は、図15に示されるように、上部ロータ122に固定された上部プレート141と、下部ロータ132に固定された下部プレート142とを有している。さらに、下部プレート142には第1アラミドヒンジ143を介して中間プレート144が接続されている。さらに、上部プレート141には、第2アラミドヒンジ145を介して、羽部110の根元部が接続されている。さらに、羽部110の根元部は、第3アラミドヒンジ146を介して、中間プレート144にも接続されている。したがって、上部プレート141、羽部110、中間プレート144、および下部プレート142がアラミドフィルムで接続された複合ヒンジが構成されている。この複合ヒンジは、上部ロータ122および下部ロータ132によって駆動される。
【0069】
図16〜図18には、上部プレート141、中間プレート144、および下部プレート142の形状が示されている。なお、各プレートのヒンジおよびロータに接続されない辺の近傍の部分は、補強のため、図16〜図18のハッチングで示される部位が、各プレートの主表面に対して約90°折り曲げられている。さらに、この折り曲げ部同士の干渉を避けるため、折り曲げ部の両側端のそれぞれは、折り曲げ部が延びる方向に対して45°の方向においてカットされている。
【0070】
各アラミドヒンジは、幅0.1mmであり、長さに比べてその幅が非常に小さいため、擬似的に1自由度の回転のみ運動可能なリンク、すなわち蝶板(兆番)として機能する。また、アラミドヒンジ143、145、および146のそれぞれの延長線は1点で交わり、その1点はシャフト124の中心軸上に位置し、かつ、上部ベアリング123と下部ベアリング133との間に位置する。この構成により、上部超音波モータ120の回転角の制御によって羽部110の前後方向の往復運動が制御され、上部超音波モータ120の回転角の位相と下部超音波モータ130の回転角の位相との差の制御によって、羽部110のねじり運動が制御される。
【0071】
つまり、アクチュエータは、羽軸としての前縁部1102を前後方向に往復運動(回転角α:Z軸周りの回転角)させる前後往復運動用ロータとしての上部超音波モータ120と、往復運動における運動方向の反転の前から後の所定期間において、前縁部1102を軸周りに回転(回転角β)させる捻り運動用ロータとを備えている。
【0072】
前述の羽ばたき方を、図19および図20を用いて、より具体的に説明する。図19および図20においては、羽ばたきロボット100の前後方向に沿ってY軸が延びている。また、羽ばたきロボット100の上下方向に沿ってZ軸が延びている。さらに、羽ばたきロボット100の左右方向に沿ってX軸が延びている。X軸、Y軸、およびZ軸は、互いに直交する。また、Y軸においては、後方が正であり、前方が負である。また、X軸においては、上方が正であり、下方が負である。さらに、Z軸においては、左の羽部110の位置する側が正であり、右の羽部110が位置する側が負である。また、図20に示すように、上部超音波モータ120の回転角がθ1であり、下部超音波モータ130の回転角がθ2であり、前後方向の往復運動の回転角である羽ばたきストローク角がαであり、前縁部1102の軸周りの回転角である捻り角がβであるものとする。
【0073】
また、前述の各アラミドヒンジ143、145、および146のそれぞれの延長線の交点から各アラミドヒンジ143、145、および146のそれぞれの外側端までの距離は、それぞれ、R2、R1、およびR3であるものとする。さらに、アラミドヒンジ146の端点とアラミドヒンジ145の端点の距離がL1であり、アラミドヒンジ146の端点とアラミドヒンジ143の端点の距離がL2であり、アラミドヒンジ143の端点とアラミドヒンジ145の端点と間の距離がL3であるものとする。ロータシャフト124に対する羽部110の位置を表わす角度の組み合わせ(α,β)は、上および下部超音波モータの回転角θ1およびθ2を用いて、以下のように表わされる。
【0074】
羽ばたきストローク角αは、羽軸(前縁部1102)のロータシャフト124の軸周りの回転であるため、次の式(1)に示すように、上部超音波モータ120の回転角θ1に等しい。
【0075】
α=θ1・・・(1)
また、捻り角(回転角β)は、羽部110の羽軸(前縁部1102)の軸周りの回転角であるため、次の式(2)によって示されるβの余弦値から算出される。
【0076】
cos(π−β)=−cos(β)=[L1×L1+L3×L3−L2×L2]/(2×L1×L3)・・・(2)
ただし、L3に関しては、次の式(3)が成り立つ。
【0077】
L3=sqrt(R1×R1+R2×R2−2×R1×R2×cos(θ1−θ2))・・・(3)
ここで、sqrt()は()内の値の正の平方根である。
【0078】
なお、図19および図20から明らかなように、βは、πより大きく、かつ、2πより小さい。
【0079】
π<β<2π・・・(4)
したがって、βが1つの値に決定される。
【0080】
上記の式(1)〜(4)から、所望の羽部110の位置(α,β)を得るための回転角θ1およびθ2は、次の式(5)および(6)によって表わされることが分かる。
【0081】
θ1=α・・・(5)
cos(θ1−θ2)=[R1×R1+R2×R2−L3×L3]/2×R1×R2・・・(6)
ただし、L3に関しては、次の式(7)が成立する。
【0082】
L3=L1×cos(β−π)±sqrt(L2×L2−L1×L1×sin2(β−π))・・・(7)
なお、L3の符号が、正であるか、または、負であるかは、実際の羽部110の挙動を考慮することによって、容易に決定される。
【0083】
図19および図20に示される本実施の形態の羽ばたきロボットの状態は、羽部110の主表面が鉛直な方向に延びる平面と平行である状態、すなわち、捻り角β=270°である状態である。このとき、θ1=0°、θ2=−45°R1=R2=15mm、R3=15.81mm、L1=5mm、L2=11.4mm、およびL3=11.39mmである。
【0084】
上部および下部ロータ122および132の回転角θ1およびθ2は、前述のように、磁気エンコーダ126よって得られた情報に基づいて中央演算装置151によって算出される。なお、回転角θ1およびθ2の制御方法は後述される。
【0085】
(羽ばたき方の変更による羽ばたきロボットの動作制御)
<動作の基本>
本実施の形態における羽ばたきロボット100は羽部110の羽ばたき運動が生み出す浮上力の作用点より下側の部分の質量が大きいため、重力以外の外力による影響がない状態では、自動的に、図1に示されるように、羽ばたきロボット100は、左右に羽軸が延びる姿勢になる。したがって、羽ばたきロボット100は、X軸周りの回転およびY軸周りの回転を制御することを必要としない。一方、X軸、Y軸、およびZ軸のそれぞれに沿った並進加速度、ならびにZ軸周りの回転加速度(以下、「角加速度」とも言う)は、羽ばたき方によって変更される。なお、羽ばたき運動により生じる力は羽部の運動に伴って変化するが、ここでは、羽ばたき運動の1周期平均の力を羽ばたき運動により生じる力とする。
【0086】
(コントロールパラメータ)
本実施の形態における羽ばたきロボット100においては、トルク補助機構が適正に機能するためには、上部超音波モータ120の回転角θ1すなわちストローク角αの振幅は一定であることが必要である。そこで、羽ばたきロボット100の動作を制御するために、下部超音波モータ130の回転角θ2が変更される。すなわち、羽ばたきロボット100は、捻り角βの変更によって、流体の流れを変化させ、それにより、姿勢を変化させる。
【0087】
具体的には、羽ばたき運動のストロークの両端のそれぞれにおいて羽部110の捻り運動のタイミングを変化させる。
【0088】
(上下方向における浮上力の変化)
Dickinsonらによって明らかにされているように、図22に示すように、(1)羽ばたき運動の切り返し動作の中間のタイミングよりも先、すなわち切り返しの前半に羽部110を捻る(捻り先行切り返し)と、浮上力は増加し、一方、図23に示すように、(2)羽ばたき運動の切り返し動作の中間のタイミングよりも後、すなわち切り返しの後半に羽部110を捻る(捻り遅れ切り返し)と、浮上力は減少する、という現象が起きる。
【0089】
(上下方向における浮上力が変化するときの前後方向における推進力の相殺)
さらに本発明者らは、図22に示す前述の(1)の動作によれば、切り返し動作前の羽進行方向に沿った抗力が増大し、図23に示す前述の(2)の動作によれば、その抗力が減少することを見出した。打ち上げ時に生じる前後方向の抗力と、打ち下ろし時に生じる前後方向の抗力とは、互いに逆向きである。そのため、打ち上げ動作と打ち下ろし動作とが前後方向に垂直な平面に対して鏡面対称であれば、それらの動作による抗力は相殺され、推進力はゼロとなる。このため、羽ばたきロボットは、上下方向のみにおける移動を行うことができる。
【0090】
(前後方向における推進力の変化)
逆に、打ち上げ時の切り返しと打ち下ろし時の切り返しとにおいて、図22に示す前述の(1)の動作と図23に示す前述の(2)の動作とが異なれば、その2つ動作による前後方向の抗力同士の間に差異が生じ、前方または後方のいずれかに推進力が生じる。より具体的には、図24に示されるように、打ち下ろしの後半では、遅れ切り返しによって、前方への加速度が得られ、また、打ち上げの後半では、先行切り返しによって、前方への加速度が得られる。一方、同様に、図24に示されるように、打ち下ろしの後半では、先行切り返しによって、後方への加速度が得られ、また、打ち上げの後半では、遅れ切り返しによって、後方への加速度が得られる。
【0091】
(前後方向における推進力が変化するときの上下方向における浮上力の変化の相殺)
なお、前方への加速度が得られる動作および後方への加速度が得られる動作のいずれが実行されるときにおいても、上方への加速度の変化と下方向への加速度の変化とを相殺することは可能である。このため、水平方向における加速度のみを得ることが可能である。
【0092】
(空間の3次元移動)
以上の説明のように、左および右の羽部110のそれぞれのストローク角α、すなわちθ1の振幅が固定されていても、θ2の時刻歴のみ変更し、打ち上げにおける羽部110の切り返しのタイミングと打ち下ろしにおける切り返しのタイミングとを異ならせることにより、羽部110に上下方向および前後方向における加速度を生じさせることができる。また、左の羽部110に生じる加速度と右の羽部110に生じる加速度とを異ならせることによって、羽ばたきロボット100の姿勢を左または右に傾けること、ならびに、羽ばたきロボット100が左方向または右方向へ旋回することが可能になる。
【0093】
<制御の詳細>
以下、図22に示す前述の(1)に記載の羽ばたき方を捻り先行切り返し(以下、単に、「先行切り返し」という。)と言い、図23に示す前述の(2)に記載の羽ばたき方を捻り遅れ切り返し(以下、単に、「遅れ切り返し」という。)と言い、図21に示すホバリング時の羽ばたき方を中央切り返しと言うものとする。
【0094】
また、説明の簡便のため、ホバリング、Z軸方向における並進運動、およびY軸方向における並進運動は、それぞれ、左右対称である。したがって、羽部の動作も、左右対称である。そのため、左右対称な動作のうちの左の羽部110の動作についてのみの説明がなされるものとする。
【0095】
<ホバリング>
図21には、ホバリング時の羽ばたき方が示されている。図21においては、回転角θ1およびθ2の時刻歴が、羽部110の断面の時刻歴とともに示されている。このときの浮上力は自重と釣り合っており、前後方向への推進力はゼロである。
【0096】
<Z軸方向の並進制御>
図22には、Z軸に沿った上方への移動、すなわち上昇のための羽ばたき方が示されている。図23には、Z軸に沿った下方への移動、すなわち下降のための羽ばたき方が示されている。図22および図23においては、回転角θ1およびθ2の時刻歴が、羽部110の断面の時刻歴とともに示されている。なお、左右の羽部110は、YZ平面を対称面とする鏡面対称の動作を行なう。
【0097】
図22に示す動作は、前述の(1)に記載の先行切り返し動作であり、図23に示す動作は、前述の(2)に記載の遅れ切り返し動作である。これらの動作の際の前後方向における加速度は、図24に示されるとおりゼロである。
【0098】
<Y軸方向の並進制御>
図25および図27には、前方へ移動するための羽ばたき方が示され、図26および図28には、後方へ移動するための羽ばたき方が示されている。なお、左右の羽部110は、YZ平面を対称面として、鏡面対称の動作を行なう。
【0099】
前方への移動の際には、打ち上げ終端を含む期間での切り返しにおいて、前述の(1)に記載の先行切り返し動作が行なわれ、打ち下ろし終端を含む期間での切り返しにおいて、前述の(2)に記載の遅れ切り返し動作が行なわれる。
【0100】
後方への移動の際には、打ち上げの終端を含む期間での切り返しにおいて、前述の(2)に記載の遅れ切り返し動作が行なわれ、打ち下ろしの終端を含む期間での切り返しにおいて、前述の(1)に記載の先行切り返し動作が行なわれる。
【0101】
なお、前述の通り、遅れ切り返しの際に浮上力は減少し、先行切り返しの際に浮上力は増加するため、Y軸方向の並進運動において、前述の(1)および(2)に記載の動作により生じる浮上力同士を相殺することは可能である。すなわち、羽ばたきロボット100は、高度を保ったまま、前後方向へ移動することが可能である。
【0102】
<X軸方向の並進制御>
左方への移動を行うためには、右の羽部110が上昇のための動作をし、左の羽部110が下降のための動作をすればよい。これにより、羽ばたきロボット100は左の羽部110が右の羽部110よりも下側に位置するように姿勢を変更し、それにより、浮上力のベクトルの先端が鉛直上方向きの状態から左側に傾く。これにより、羽ばたきロボット100を左方に移動させる力が生じる。
【0103】
右方への移動を行うためには、左方への移動とは逆に、右の羽部110が下降のための動作をし、左の羽部110が上昇のための動作をすればよい。これにより、羽ばたきロボット100は右の羽部110が左の羽部110よりも下側に位置するように姿勢を変更し、それにより、浮上力のベクトルの先端が鉛直上方向きの状態から右側に傾く。これにより、羽ばたきロボット100を右方に移動させる力が生じる。
【0104】
なお、このとき、浮上力の低下が起こることがあり得るため、X軸方向に沿って移動するための制御とZ軸方向の上方へ移動するための制御とを同時に実行することが望ましい。
【0105】
<Z軸周り回転制御>
Z軸周りに正方向の回転、すなわち左への旋回を行なうためには、左の羽部110が後退のための羽ばたき方で動作し、右の羽部110が前進のための羽ばたき方で動作すればよい。
【0106】
Z軸周りに負方向の回転、すなわち右への旋回を行なうためには、左の羽部110が前進のための羽ばたき方で動作し、右の羽部110が後退のための羽ばたき方で動作すればよい。
【0107】
いずれの場合においても、上述のように、左および右の羽部110による浮上力同士は相殺され得るものであるため、高度が維持されたまま、羽ばたきロボット100のZ軸周りの回転が行なわれる。
【0108】
<Y軸周り回転制御>
本実施の形態においては、姿勢は自律的に安定するため、Z軸周り以外の回転自由度は制御の必要はない。しかしながら、羽ばたきロボット100が発射装置から発射された後のブレーキ羽ばたきの場合、つまり、発射装置180から与えられた速度を実質的にゼロにし、ホバリング状態にするための羽ばたき運動を羽部にさせる場合などに、Y軸周りの回転角、すなわちロール角の変更を行なうことが望ましい。したがって、本実施の形態の羽ばたきロボット100は、Y軸回りに回転する羽ばたき運動を羽部110にさせることができるものとする。
【0109】
特開2006−232169号公報に示されるように、左の羽部110の振幅と右の羽部110の振幅とを異ならせることで、Y軸周りの回転角、すなわちロール角を変更することができる。左の羽部110の振幅と右の羽部110の振幅とを異ならせることは、図32のデューティ比を比例的に増減させることで実現され得る。このとき、羽ばたきロボット100の羽ばたき方は、図35に示されるようになる。これは、図2に示される座標系において、Y軸周りの正の回転、すなわち図2における左の羽部110が右の羽部110に対して下がり、右の羽部110が左の羽部110に対して上がるように、羽ばたきロボット100はY軸回りに正方向に回転する羽ばたき方である。Y軸回りに負方向に回転する場合には、図35において、右の羽部110のデューティ比と左の羽部110のデューティ比とを入れ替えることによって実現される。
【0110】
<制御の変更方法>
以上により、切り返しのタイミングが異なる3種類の羽ばたき方、すなわち、先行切り返し、遅れ切り返し、および中央切り返しを使い分けることによって、羽ばたきロボット100は空間を自在に移動することができる。また、左の羽部110の振幅と右の羽部110の振幅とを異ならせることにより、ロール角を変更することが可能である。
【0111】
なお、切り返しのタイミングが異なる3種類の羽ばたき方は、いずれも、羽部110の前後方向の往復運動の終端の前から後にかけての所定期間内に行なわれる。そのため、羽ばたき運動のストロークの中心の前から後にかけての所定期間、すなわちストローク角α=0°の前から後にかけての所定期間内においては、回転角θ1およびθ2の値は、その速度および加速度を含めて同一である。したがって、上記のように、回転角θ1およびθ2が共通している期間内に羽ばたき方を変更するのであれば、羽部110の動作を何ら補間することなく、機械的に次の羽ばたき方を選択するだけで、羽部110の動作に不連続性を生じさせることなく、ある羽ばたき方から他の羽ばたき方へ円滑に遷移することが可能である。
【0112】
<制御の選択>
上記のように、θ1=0°の位相において羽ばたき方を変更するのであれば、羽ばたき方の状態を示す表現方法として、打ち下ろし、打ち上げ、およびそれぞれの終端での切り返し、という区分を設けることは適切ではない。打ち下ろし後半および打ち下ろし後の切り返しおよび打ち上げの前半を前方羽ばたき運動とし、打ち上げ後半および打ち上げ後の切り返しおよび打ち下ろしの前半を後方羽ばたき運動として、羽ばたき方を二つに区分することが合理的である。
【0113】
すなわち、左および右の羽部110における前方羽ばたき運動および後方羽ばたき運動において、それぞれ、中央切り返し、先行切り返し、および遅れ切り返しの選択を行なうことによって、最も簡便に、羽ばたき方を制御することができる。前述の説明に基づいた羽ばたきロボットの羽ばたき方に対応した選択肢が、表2に示されている。
【0114】
【表2】
【0115】
前述の実施の形態の羽ばたきロボットの説明においては、制御の手法を簡単にするために、前方羽ばたきにより生じる流体力と後方羽ばたきにより生じる流体力とを相殺することによって、意図しない方向への移動または意図しない姿勢の変更が生じないものとされた。すなわち、羽ばたきロボットは、X軸、Y軸、およびZ軸のいずれか1つについての1自由度運動のみを行うものとした。しかしながら、羽ばたきロボットが上昇しながら右旋回する等の複合的な運動をすることが望ましい場合がある。この場合の複合的な運動も、左右の羽部の前方羽ばたき運動と後方羽ばたき運動との組み合わせによって実現される。
【0116】
右の羽部110および左の羽部110の羽ばたき運動のそれぞれは、3通りの前方羽ばたきと、3通りの後方羽ばたきとの組み合わせによって決定される。それらの羽ばたき運動は、独立して選択され得るものである。そのため、左の羽部110および右の羽部110のそれぞれの羽ばたき運動は、9通りである。このため、左および右の2つの羽部110の羽ばたき方の組み合わせは81通りである。この81通りの羽ばたき方が表3に示されている。
【0117】
【表3】
【0118】
表3における記号A,C,およびDは、それぞれ、先行切り返し(Advanced)、中央切り返し(Center)、および遅れ切り返し(Delayed)を意味し、こ
れらは、それぞれ、図22、図21、および図23に示される羽ばたき方である。表3の縦欄および横欄が、それぞれ、右の羽部110および左の羽部110の羽ばたき方を示し、表3の中で、大分類および小分類が、それぞれ、後方羽ばたきおよび前方羽ばたきを表している。たとえば、
左羽前方羽ばたき:先行切り返し
左羽後方羽ばたき:中央切り返し
右羽前方羽ばたき:中央切り返し
右羽後方羽ばたき:遅れ切り返し
という組み合わせが選択された場合には、表3から、(−2,−2,0,0)の値が得られる。これにより、図1に示される座標系において、羽ばたきロボットは、右前方へ移動する。
【0119】
逆に、この中で羽ばたきロボット100の浮上移動制御に用いる代表的な運動をピックアップすることによって、表4のような羽ばたき方を決定するためのテーブルが作成される。
【0120】
【表4】
【0121】
したがって、羽ばたきロボットに要求される移動の形態に基づいて、羽ばたき方を定める関数Pattern_Flapping(x、y、z、θz)を決定することができる。ここで、各引数は±4、±2、もしくは0であり、対応する各運動成分の正(+)、負(−)、ゼロ(0)、および絶対値はその引数の符号および値に対応している。
【0122】
この関数Pattern_Flapping(x、y、z、θz)の出力は、羽ばたき方を決めるパラメータ、もしくはその組み合わせ、つまり、本実施の形態では、表2または表4に示されてい
る、左羽および右羽のそれぞれの前方羽ばたきおよび後方羽ばたきの種類(先行切り返し、中央切り返し、遅れ切り返し)を特定可能な値である。なお、表2は、表4が簡略化されたものであり、一自由度のみの制御が行われる場合に用いられる。
【0123】
また、θxおよびθyは、本実施の形態においては、羽ばたきロボット100の重心が羽部の力学的作用点より下方に位置付けられているために、羽ばたきロボットが自律的に安定するので、すなわち、それらの値が0に収束するので、この関数に含まれていない。
【0124】
<補足事項>
なお、本項目においては、最も簡便に位置制御を実現する手法の一例が記載されているが、本発明の羽ばたき方は本項目の羽ばたき方に限定されるものではない。たとえば、本実施の形態においては、回転角θ1およびθ2の角速度は、切り返しの期間を除いて略一定であるものとされている。つまり、羽部110の往復運動は、図37に示すように、角速度が一定である打ち上げおよび打ち下ろしの運動と、これに連続する、角速度が変化する切り返しの運動、すなわち往復運動の運動方向を反転させるための運動とからなるものである。切り返しの運動の角速度は、打ち上げの運動の角速度および打ち下ろしの運動の角速度のそれぞれに連続するように変化する。この切り返しの運動としては、例えば1変数の三角関数等が挙げられる。しかしながら、回転角θ1およびθ2の角速度を変化させることによって、周囲流体から受ける反作用を変化させて、羽ばたきロボット100を移動させる手法が用いられてもよい。
【0125】
また、本項目においては、説明の簡便のため、3種類の羽部110の切り返しのパターンの組み合わせによって、すべての羽ばたき方が表現される手法が用いられているが、この手法は、羽ばたき方の表現の一例であり、本発明の羽ばたき方は、前述の手法によって表現される羽ばたき方に限定されない。
【0126】
たとえば、回転角θ1およびθ2のパターンが多数存在する羽ばたき方の表現手法が用いられてもよい。すなわち、先行切り返しおよび遅れ切り返しのタイミングが複数種類ある羽ばたき方、または、切り返しのタイミングを連続的に自由に変更できる羽ばたき方の表現手法が用いられてもよい。逆に、中央切り返しは、先行切り返しと遅れ切り返しとを交互に繰り返す羽ばたき方の表現手法が用いられてもよい。このような羽ばたき方の表現手法であれば、中央切り返しのパターンのためのデータをメモリに記憶しておく必要が無いため、回転角θ1およびθ2のパターン数を低減させることができる。
【0127】
また、図21〜図23および図32〜図34に示される回転角θの時刻歴は、図19および図20に表わされる構成を有する羽ばたきロボット100の回転角θの一例である。実際には、羽部110を駆動するメカニズムに応じて、そのメカニズムを制御する各種パラメータが、前述の羽部110の先行切り返しおよび遅れ切り返しを実現するように設定されるのであれば、回転角θの時刻歴は、図21〜図23に示される回転角θの時刻歴に限定されない。
【0128】
また、本実施の形態においては、羽ばたきロボット100の姿勢が自動的に所定の状態を維持されることを前提としているため、ロール角の変更のための制御は実行されていない。しかしながら、ロール角の制御については、特開2006−232169号公報にて、その制御方法が示されている。より具体的には、右の羽部の羽ばたきストロークを拡大した図35に示されるデューティを用いれば、右の羽部110が上昇し、左の羽部110が低下する。右の羽部を低下させ、左の羽部を上昇させるように、ロール角を変化させたいのであれば、図35における右の羽部110のグラフと左の羽部110のグラフとを入れ替えればよい。
【0129】
(位置姿勢検出センサ)
位置姿勢検出センサ160は、本体101に固定されている。そのため、位置姿勢検出センサ160によって計測された位置および姿勢は、羽ばたきロボット100の位置および姿勢そのものとなる。本発明では位置姿勢検出センサ160として、少なくとも3軸加速度を計測する3軸加速度センサ1601および重力加速度の方向検出による方法以外の方法によって、本体101の3軸のそれぞれについての回転角を検出する3軸回転角センサ1602の2つが搭載されている。
【0130】
位置姿勢検出センサ160は、図29に示すように、計測された位置および姿勢のデータを後述する中央演算装置151に与える。このような機能を実現するためのセンサは、技術の進展により変化するものであり、本発明の本質に関わるものではないため、いかなるものであってもよい。前述の姿勢を検出するための位置姿勢検出センサ160の一例としては、地磁気および3軸加速度の検出によって、姿勢、位置、および方向の変化を検出することができるものが市販されている。また、3軸回転角センサ1602の一例としては、回転の際に生じるコリオリ力の検出により角加速度を検出することによって回転角を検出することが可能であるジャイロセンサが市販されており、検出された角加速度の2回積分により、回転角を求めることができる。位置の検出のためには、例えばGPS(Global Positioning System)のようなセンサを用いることができる。
【0131】
(制御回路)
制御回路150は、図29および図30に示すように、中央演算装置151(Central Processing Unit)、中央演算装置151の指令により上および下部超音波モータ120および130を駆動するドライバ152、ならびに、ドライバ152に高電圧を供給する昇圧回路153等を有している。
【0132】
<制御回路の動作>
制御回路150には、オペレータ210が操作するコントローラ200から通信装置170を介して運動指令が与えられる。運転指令は、一時記憶装置(以後、「RAM(Random Access Memory)」と言う。)155に格納される。中央演算装置151は、RAM155に記憶された運動指令に基づいて、羽ばたき方のデータを固定記憶装置(以後、「ROM(Read Only Memory)」と言う。)154から得る。その後、中央演算装置151は、その羽ばたき方のデータをドライバ152に与える。それにより、羽ばたきロボット100は、前述の前後左右上下方向の並進移動または鉛直を回転軸とする回転のいずれかを行なう。
【0133】
<中央演算装置>
中央演算装置151は、前述の運動指令、ROM154およびRAM155の情報を用いて、ドライバ152にPWM(Pulse Width Modulation)信号および回転方向制御信号を出力する。これにより、コントローラ200を介してオペレータ210が与えた運動指令に応じて超音波モータ120おび130が動作する。その結果、運転指令に対応する羽ばたき方が実現される。なお、羽ばたきの往復運動の周期は、反復タイマ156を用いて決定される。
【0134】
<反復タイマ>
制御回路150は、図29および図30に示すように、反復タイマ156を内蔵している。反復タイマ156は、羽ばたき運動の位相ψとして、−0.5〜0.5の値を50Hzの繰り返し周期で、中央演算装置151に出力する。ただし、羽ばたき運動の位相ψが、−0.5からカウントアップされ、0.5になると、再度、位相ψの値が−0.5からカウントアップされるものとする。この反復タイマ156の1周期に対応して、羽部110が往復運動の中央位置よりも前方に位置する前方羽ばたき運動、および、羽部110が往復運動の中央位置よりも後方に位置する後方羽ばたき運動のそれぞれが行なわれる。すなわち、反復タイマ156の1周期が羽ばたき運動の周期の2倍に対応する。本実施の形態においては、位相ψが正であれば、羽ばたきロボット100は後方羽ばたき運動を行ない、位相ψが負であれば羽ばたきロボット100は前方羽ばたき運動を行なうものとする。近年、機器制御に用いられているマイクロコントローラの多くには、本項で説明されている反復タイマとほぼ同様の、オートリロードタイマと呼ばれる機能が含まれており、これを用いることで、最も簡便に本項の反復タイマの機能を実現することができる。
【0135】
<ROMに格納された羽ばたき方のデータ>
ROM154は、羽ばたき方のデータを格納している。羽ばたき方のデータは、ドライバ152へ送信されるPWM制御信号のデューティ比の時刻歴のデータである。なお、超音波モータ120および130には、周波数が250KHzでありデューティ比が50%に固定された駆動電圧が印加される。一方、図31に示すように、ドライバ152へ送信されるPWM制御信号のデューティ比とは、デューティ比が50%に固定された250KHzの駆動電圧のON期間とOFF期間との和に対するON期間の比率である。
【0136】
すなわち、前述の先行切り返し、遅れ切り返し、および中央切り返しの3つのモードに対応する羽ばたき方のデータは、羽ばたき運動の位相ψに対応したドライバ152へ送信されるPWM制御信号のデューティ比として、ROM154に予め格納されている。なお、ドライバ152へ送信されるPWM制御信号のデューティ比は、Duty1(ψ、MODE)およびDuty2(ψ、MODE)で示される。ただし、表2に示すように、−0.5≦ψ<0.5において、MODE=1が先行切り返しであり、MODE=0が中央切り返しであり、MODE=−1が遅れ切り返しであるものとする。
【0137】
図32〜図34には、それぞれ、後方での切り返し動作行なう場合の、中央切り返し、先行切り返し、および遅れ切り返しにおけるDuty1およびDuty2の値が示されている。ただし、Duty1およびDuty2が負の値であれば、羽部110は、往復運動の中央位置を基準にして、後方から前方へ移動する動作が行なわれていることを意味する。なお、本実施の形態においては、各Dutyの関数は、羽ばたき動作が前後方向に対して垂直な面に関して対称であるため、Duty1(−ψ)=−1×Duty1(0.5+ψ)と表現され得る。
【0138】
すなわち、符号変換のみによって、ψが負の領域での各Duty値は、ψが正の領域での各Dutyの関数を用いて算出される。そのため、上記の各Dutyの関数は、ψが正である領域のみ、ROM154に格納されている。これによれば、ROM154に格納されている各Duty関数のデータ量を半分に減らすことができる。よって、本実施の形態においては、各Duty関数のうちψが正の領域のみが示される。
【0139】
なお、右の羽部110と左の羽部110とはZ軸に対して鏡面対称であるため、前述の座標系のX軸の方向の正と負とを反転させた左手系の座標が採用されれば、右の羽部110の制御においても前述と同様のDuty1およびDuty2を用いることができる。
【0140】
<中央演算装置の動作>
中央演算装置151は、位相ψの符号に基づいて、現在の羽ばたき方が前方羽ばたき運動であるか、または、後方羽ばたき運動であるかを判断する。その後、中央演算装置151は、ROM154に格納されている表2(または表4)に示すデータに基づいて、羽ばたき方の状態を判断するとともに、通信装置170によって得られたRAM155に格納されている運動指令に応じて、前述のMODEの値を判断する。
【0141】
さらに、中央演算装置151は、前述の位相ψの値に基づいて、ROM154に格納されたDuty1およびDuty2の値を得る。この値の絶対値が、ドライバ152へ送信されるPWM制御信号のデューティ比である。また、この値の符号が、ドライバ152へ送信される、上部および下部超音波モータ120および130のそれぞれの回転方向である。前者は、例えばABS(Duty)というコマンドで表現され、後者は、例えばSIGN(Duty)というコマンドで表現される。これらのコマンドは、マイクロコントローラに内蔵されている。これらのコマンドを用いた演算は、一般的なマイクロコントローラにおいて容易に実行されるものである。
【0142】
中央演算装置151は、前述のデューティ比に基づいて、羽ばたき方に対応するPWM制御のためのON/OFF信号をドライバ152に出力するとともに、位相ψの正または負に応じた回転方向制御信号をドライバ152に出力する。
【0143】
本実施の形態では、超音波振動子121の共振周波数が250kHzであるため、たとえば、共振周波数が2.5kHzであるPWM制御が実行されれば、100段階の超音波モータの制御を行なうことが可能である。
【0144】
<ドライバの動作>
ドライバ152は、中央演算装置151から与えられたPWM制御信号のON/OFFおよび回転方向制御信号に応じて、超音波モータ120を回転/停止、および、正転/反転させる。
【0145】
超音波モータ120は自己位置保持機能を有するため、回転および停止の動作は、PWMのON/OFFに応じて後述の電力供給をON/OFFすることによって、実現される。
【0146】
また、図12および図13に示されるように、超音波振動子121において、裏面電極1217に与えられる電位φAの位相と表面電極1216に与えられる電位φBの位相との差を変更することによって、上部ロータ122の正回転と負回転との間の変更を行なうことができる。
【0147】
ドライバ152は、中央演算装置151からPWM信号を受けて、電位φAおよびφBのデータを作成する回路と、昇圧回路153から供給される高圧電力を制御して、超音波振動子121の表面電極1216および裏面電極1217に電位φAおよびφBを与える回路とからなる。前者は、一般的なタイマ回路やCPU(Central Processing Unit)を用いて容易に実現され得るものであり、後者は、たとえば、Hブリッジと呼ばれる一般的なCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)回路を用いて容易に実現され得るものである。本発明者らの実験によれば、これらの回路は、3mm×3mm×0.85mmの小型パッケージに収められ得るものであり、そのパッケージの質量は約25mgである。
【0148】
一般的に、前者のプログラムは以下のように表される。
:Label
if(PWM=ON) then
if(回転方向=正方向) then
φA=1
φB=1
φA=0
φB=0
end if
if(回転方向=逆方向) then
φB=1
φA=1
φB=0
φA=0
end if
end if
goto Label
但し、これらは簡易に前者回路の動作を表現するための一例であり、実際のプログラムにおいては、φAおよびφBのそれぞれが250kHzの矩形波となるようなタイミング調整が行われるため、ダミーの実行文の挿入等が必要になる。
【0149】
<昇圧回路>
昇圧回路153は、電源190の電圧(3V)を、超音波モータの駆動のために必要な+30Vの電圧に変更して、+30Vの電圧をドライバ152に印加する。昇圧回路153としては、一般的なDC(Direct Current)−DCコンバータが用いられ、その一例として、3mm×3mm×0.85mmという小型パッケージが市販されている。昇圧回路153の質量は約25mgである。
【0150】
<ブロック図>
前述の制御の体系のブロック図が図29に示されている。なお、4つの超音波モータの駆動方法は同一であるため、図29には左の羽部110を駆動する上部超音波モータ120の制御体系のみが示され、他の制御体系は省略されている。また、図30は、後述する図35のフローチャートにおけるデータ処理の流れを説明するための機能ブロック図である。
【0151】
<制御フローチャート>
次に、図36を用いて、羽ばたきロボットの制御のためのフローチャートの一例を説明する。なお、このフローチャートは、一例であり、羽ばたきロボット100のアプリケーションによって変更され得るものである。
【0152】
なお、以下のフローチャートにおいて、反復タイマ156は前述のオートリロードタイマを用いて恒常的に動作しており、ステップS1においては、ψ=0である状態から処理が開始されるものとする。このとき、α=0°であるものとする。
【0153】
ステップS1<羽ばたきロボット動作決定>
コントローラ200から送信されたオペレータ210の運動指令が、通信装置170を介して、RAM155に格納される。
【0154】
ステップS2<羽ばたき状況検出>
中央演算装置151は、反復タイマ156から送信されてきた位相ψの値のデータに基づいて、羽ばたきロボット100の現時刻での羽ばたき方の状態を認識する。具体的には、中央演算装置151は、位相ψの値が正であれば、羽ばたきロボット100が後方羽ばたき運動を行なっていると判断し、位相ψが負であれば、羽ばたきロボット100が前方羽ばたき運動を行なっていると判断する。
【0155】
ステップS3<羽ばたきモード決定>
中央演算装置151は、上記運動指令に応じて表2の行成分を選択し、また、上記羽ばたき方の状態に応じて表2の列成分を選択する。それにより、中央演算装置151は、中央切り返し、先行切り返し、および遅れ切り返しの中からいずれか1の羽ばたきモード、すなわちMODEの値を選択する。選択された羽ばたきモードのデータは、RAM155に格納される。
【0156】
ステップS4<デューティ比決定>
中央演算装置151は、前述の羽ばたきモードのデータに基づいて、ROM154に格納されたDuty1(ψ、MODE)およびDuty2(ψ、MODE)のデータの中からドライバ152へ送信されるPWM制御信号のデューティ比を選択する。
【0157】
ステップS5<ドライバ駆動>
中央演算装置151は、上記PWM制御信号のデューティ比の正または負に応じて、回転方向制御信号をドライバ152に出力するとともに、そのデューティ比のPWM信号をドライバ152に出力する。すなわち、ABS(A)をAの絶対値とし、SIGN(A)をAの符号とすると、回転方向制御信号はSIGN(Duty)であり、デューティ比はABS(Duty)である。なお、ここで、Dutyは、上部および下部超音波モータ120および130に応じた、Duty1(ψ、MODE)およびDuty2(ψ、MODE)を意味する。
【0158】
ステップS6<超音波モータ駆動>
ドライバ152は、上記回転方向制御信号に応じて、振幅が30Vであり、かつ、周波数が250kHzである矩形波の電圧を表面電極1216および裏面電極1217に印加する。これらの2つの矩形波は、±90°位相が異なっている。具体的には、ドライバ152は、超音波振動子121の表面電極1216に矩形波の電位φBを与え、また、超音波振動子121の裏面電極1217に矩形波の電位φAを与える。この矩形波の電位φAの位相と矩形波の電位φBの位相とが±90°ずれている。
【0159】
ステップS7<次回羽ばたきモード選択>
ψ=0またはψ=−0.5の場合には、羽ばたき方の状態が変更されたことを意味するため、再びステップS1の処理が実行され、運動指令の変更も含め、羽ばたきモードが更新される。ψ=0またはψ=−0.5以外の場合には、羽ばたきモードは更新されず、ステップS4の処理が実行され、新たな位相ψが設定される。
【0160】
<補足>
なお、上記指令の形態はあくまで説明のための一例であり、これに限定されない。たとえば、速度指令が電圧値としてアナログ信号で与えられることにより、量子化誤差のない滑らかな速度指令が得られる手法が用いられてもよい。また、超音波モータの駆動に必要な電圧は、技術の進歩によって変化し得るものである。たとえば、現行の主なTTL(Transistor Transistor Logic)−IC(Integration Circuit)やCPU(Central Processing Unit)の駆動電圧である3V以下で駆動し得る超音波モータが実現されれば、昇圧回路153は不要となる。
【0161】
また、本実施の形態では、説明の簡便のため、フィードバック制御を行なわず、単にコントローラ200の指令によって羽ばたき方が一義的に選択される手法の説明がなされたが、羽ばたきロボット100の制御手法は、前述の手法に限定されない。
【0162】
たとえば、中央演算装置151が位置姿勢検出センサ160から位置および姿勢の情報を得て、その情報に基づいて運動指令を新たに作成するフィードバック制御が用いられてもよい。
【0163】
さらに、本実施の形態では、説明の簡便のため、デューティ比に応じて超音波モータ120および130の回転速度が一義的に決定されるという仮定の下に説明がなされているが、負荷の変動などによってはこの仮定が成り立たない場合も考えられる。この場合には、上部磁気エンコーダ126の信号によって得られる上および下部超音波モータ120および130の回転角θ1およびθ2の値を参照して、デューティ比が調整されてもよい。
【0164】
なお、前述の羽ばたきロボットの制御においては、理想的には、高い機動力を得るための羽ばたき運動の制御に必要な演算時間が短いことが望ましい。また、羽ばたきロボットは軽量であることが望ましい。このため、前述の羽ばたき運動を制御するアルゴリズムも極力単純であることが望ましい。これらのことを考慮すると、高い機動力を有する羽ばたきロボットに求められる要件は、単独性、連続性、選択性、独立性、および単純性である。
【0165】
単独性とは、流体力発生機構が設置されている胴体の姿勢に関わらず、当該流体力発生機構が単独で流体力の方向を変更することができることを意味する。単独性の欠如しているロボットの例として、ロータが胴体に固定されているヘリコプタが挙げられる。
【0166】
連続性とは、羽ばたき運動の変更が、胴体に大きな加速度を生じさせずに、連続的に行われることを意味する。
【0167】
選択性とは、羽ばたき運動の変更が、過去の羽ばたき運動の履歴に関わらず、独立して行われることを意味する。選択性が欠如している羽ばたきロボットの例として、先述のRon FearingらによるMFI(Micromechanical Flying Insect)が挙げられる。これは共振によって羽部を駆動しているため、羽ばたき方を複数周期に渡って徐々に変更することしかできない。
【0168】
独立性とは、流体力発生機構が生み出す流体力が、羽ばたき運動の変更の履歴に影響されないことを意味する。独立性が欠如する具体的な場面として、以前の羽ばたき運動により生じた気流の影響を受ける現象などが挙げられる。
【0169】
単純性とは、羽ばたき運動の変更を実現するためのアルゴリズムが極力単純であることを意味する。
【0170】
(高機動力要件の検討)
<<単独性>>
本実施の形態における羽ばたきロボット100の制御は、表2に示されるように、全て、羽ばたき運動の両端における羽部の捻り動作のタイミングの選択によって行われる。これは、胴体の姿勢に拘束されないため、単独性が確保される。
【0171】
より具体的には、図24〜図26に示される先行切り返しおよび遅れ切り返しのうちの一方の羽ばたき方が選択されると、羽部110の加速度の水平方向成分を独立して制御することが可能で、羽ばたき運動の1周期における羽部110の加速度の水平方向成分の方向を前方および後方のいずれかに向けることができる。したがって、羽ばたきロボットは、本体部(胴体)101の姿勢を変化させることなく、羽部110の動作のみの変更によって、流体力の方向を変更することが可能である。
【0172】
<<連続性>>
前述の羽部110の捻り、すなわち切り返しの動作は、羽ばたき運動における羽部110の往復運動の始点または終点を含む特定期間においてのみ異なり、いずれの羽ばたき方においても、羽ばたき運動の往復運動の中心位置を含む所定期間においては、羽部110の運動は同一である。つまり、複数種類の羽ばたき運動は、往復運動の中心位置を含むタイミングにおいて、共通の動作をする。このため、羽ばたき運動中に羽ばたき方の変更がなされても、その羽ばたき方の変更が共通の動作をするタイミングにおいてなされるのであれば、1の羽ばたき方から他の羽ばたき方への変化における羽部110の挙動は、連続的なものである。つまり、羽ばたき方の変更はスムーズに行われる。
【0173】
より具体的には、本実施の形態の羽ばたきロボットは、制御回路150のROM154が、羽部110に羽ばたき運動をさせるための複数種類のデータ(表2参照)を有し、複数種類のデータに基づいてアクチュエータ(上部および下部超音波モータ120および130)を制御する。複数種類のデータのそれぞれは、羽部110の往復運動の1周期の動作を特定可能であり、複数種類のデータは、往復運動の1周期の所定期間において、羽部110に共通の羽ばたき運動をさせるものである。具体的には、複数種類のデータは、先行切り返しのためのデータ、中央切り返しのためのデータ、および遅れ切り返しのためのデータからなる3種類のデータであり、図25および図26ならびに表2によって表わされている羽ばたき方(停空、上昇、下降、前進、後退、右移動、左移動、右旋回、および左旋回)をさせるためのデータである。制御回路150は、羽部110の往復運動の中心位置を含む所定期間において、アクチュエータ(超音波モータ120,130)が複数種類のデータのうちの1のデータによって特定される羽ばたき運動を羽部110にさせる制御からアクチュエータが複数種類のデータのうちの他のデータによって特定される羽ばたき運動を羽部110にさせる制御へ切り換える。
【0174】
上記の構成によれば、羽部の運動に不連続な変化が生じることなく、羽ばたき運動の態様を変更することができる。そのため、羽ばたき運動の「連続性」が実現される。
【0175】
また、羽部は、1のデータによって特定される羽ばたき運動においては、往復運動の一周期のうちの2つの特定期間のそれぞれにおいて行われる他のデータによって特定される羽ばたき運動とは異なる軌跡を描くことが望ましい。これによれば、羽部110は、往復運動の1周期の間に最大で4種類の状態に順次変化する。そのため、羽ばたき運動のバリエーションが豊富になる。
【0176】
<<独立性>>
また、2つの特定期間は、互いに1/2周期ずれていてもよい。これによれば、1の特定期間と他の特定期間とが時間的に最も大きくずれて繰り返される。そのため、一方の特定期間における羽ばたき運動に起因して生じる気流が、他の特定期間における羽ばたき運動に起因して生じる気流に及ぼす影響が最も小さくなる。そのため、羽ばたき運動の変更における「独立性」が確保される。
【0177】
また、2つの特定期間の一方および他方は、それぞれ、羽部110の往復運動の一方端に位置するタイミングおよび羽部110の往復運動の他方端に位置するタイミングを含むことが望ましい。つまり、羽部110の切り返しは、前後方向の往復運動の端部を含む期間において行なわれることが望ましい。これによれば、1の特定期間における羽部110の位置と他の特定期間における羽部110の位置とが最も離れている。そのため、一方の特定期間における羽ばたき運動に起因して生じる気流が、他方の特定期間における羽ばたき運動に起因して生じる気流に及ぼす影響が最も小さくなる。そのため、羽ばたき運動の変更における「独立性」が確保される。
【0178】
すなわち、本実施の形態の羽ばたきロボットにおいては、羽ばたき運動の両端のそれぞれを含む特定期間においてのみ羽部110の動作が異なる複数種類の羽ばたき運動が行われる。そのため、以前の羽ばたき運動によって生じた流体の挙動が現在の羽ばたき運動に与える影響は極力低減されている。これにより、独立性が実現されている。
【0179】
<<単純性>>
また、2つの特定期間の一方の期間における羽ばたき運動により生じる流体力のうちの一の方向成分と、2つの特定期間の他方の期間における羽ばたき運動により生じる流体力のうちの一の方向成分とが、相殺される。これによれば、羽ばたき運動の変更に起因する羽ばたきロボットの姿勢の変化の態様が単純になる。そのため、羽ばたきロボットを所望の姿勢にするための制御が容易になる。したがって、羽ばたき運動の変更における「単純性」が確保される。
【0180】
より具体的には、本実施の形態の羽ばたきロボットにおいては、表2に示されるように、羽ばたきロボットの浮上移動の態様(停空、上昇、下降、前進、後退、左移動、右移動、左旋回、右旋回)と、浮上移動の態様を実現するための羽ばたき方(先行切り返し、中央切り返し、および遅れ切り返しの組み合わせ)とが一対一に対応している。そのため、羽ばたき方に対応する上部および下部超音波モータ120および130のそれぞれの駆動デューティ比のデータが変更されるだけの極めて単純なアルゴリズムによって、浮上移動態様の変更を実現することができる。したがって、本実施の形態の羽ばたきロボットにおいては単純性が実現されている。
【0181】
更に、複数のデータのうちのホバリングのためのデータによって特定される羽ばたき運動は、羽部110に上下方向および左右方向を含む平面に対して鏡面対称な前後方向の往復運動をさせるものであり、制御回路150は、前後方向の往復運動の中心位置から前後方向の往復運動の一方端まで羽部110を移動させるための基本データ(図32、図33、および図34)と、前後方向の往復運動の中心位置から前後方向の往復運動の他方端まで羽部110を移動させるように、基本データを変換するためのアルゴリズムまたは演算機能部、即ち(Duty1(−ψ)=−1×Duty1(0.5+ψ))を含んでいることが望ましい。これによれば、制御回路150は、羽ばたき運動の1周期の1/2の期間のみのためのデータを有しているだけで、所望の羽ばたき運動を羽部110にさせることができる。そのため、制御回路150のデータの記憶のためのメモリ容量を低減することができる。その結果、羽ばたきロボットを小型化かつ軽量化することができる。
【0182】
(通信装置)
通信装置170は、外部のコントローラ200および発射装置180から、それぞれ、羽ばたきロボット100に必要とされる羽ばたきロボット100の加速度および発射方向の情報を受信し、その情報を制御回路150の中央演算装置151に与える。
【0183】
(電源)
本発明の駆動エネルギー源としての電源190は、必要とされる電力を供給できる放電特性を有し、かつ、浮上を妨げない質量を有するものであれば、いかなるものであってもよい。
【0184】
本発明者らが用いた電源190は、質量0.7gのリチウムイオン電池で、本発明者らの計算によれば、約50秒にわたり0.6Wを供給することができる。電源190は、本体101の下部に設けられている。そのため、電源190は、羽部110が受ける流体反力の作用点であるベアリング123より下側に位置し、羽ばたきロボット100の姿勢を自律的に安定させている。
【0185】
この他の電源としては、燃料電池、電気二重層コンデンサなどのキャパシタ、太陽電池、および有線による供給、等が挙げられる。また、これらの電源が併用されてもよい。たとえば、リチウムイオン電池の他に、羽部110の表面に太陽電池が設けられ、これらの電力が併せて用いられてもよい。
【0186】
(本体)
本体101は、図38等に示されるように、底部プレート102、上部プレート103、背面プレート106、および、底部プレート102に設けられた3本の脚105からなる。
【0187】
底部プレート102、上部プレート103、および背面プレート106のそれぞれは、厚さ0.2mmのCFRPからなり、フレーム部104は厚さ35μmのステンレスからなる。脚105は、肉厚40μm、長さ10mm、かつ直径0.5mmのCFRPの中空パイプからなる。
【0188】
また、上部プレート103および底部プレート102は、ロータシャフト124、支持シャフト127、および本体補強ポール112によっても連結されている。背面プレート106の中心部には直径5mm、厚さ0.02mmの発射用パッド107が貼り付けてある。発射用パッド107は鉄金属の薄板によって構成される。また、発射用パッド107は電源190の充電用端子と電気的に接続されており、外部に設けられた電源から発射用パッド107に電圧を加えることで、電源190を充電することが可能になっている。
【0189】
(発射機構)
次に、図38および図39を用いて、実施の形態1の羽ばたきロボットを発射するための発射装置180を説明する。
【0190】
<原理>
発射装置180は、羽ばたきロボット100が浮上を開始する際に、羽ばたきロボット100に搭載されている電源190以外から羽ばたきロボット100へエネルギーを与えるとともに、羽ばたきロボット100の浮上開始動作および浮上移動動作を補助するためのものである。ここで、羽ばたき浮上開始動作および羽ばたき浮上移動動作の補助とは、羽ばたきロボット100の浮上方向、すなわち鉛直上方の成分を有する外力を羽ばたきロボット100に与えることを意味するものとする。
【0191】
なお、本実施の形態の説明において用いられる図38および図39ならびに以後の実施の形態の説明において用いられる図40〜図44には、説明の簡便のため、羽ばたきロボット100については、羽部110および本体101のみが示されている。また、羽ばたきロボット100は、その底面を発射装置180の側方に向けて発射装置180に装着されている。つまり、羽ばたきロボット100の背面が発射装置180に装着されている。
【0192】
図38は発射装置180の斜視図である。発射装置180は、各種の構成を内包する筺体1805と、羽ばたきロボット100に力を作用させる作用部1802を備えている。作用部1802は、発射用バネ1801によって力を与えられる。また、発射装置180は、発射用バネ1801を縮んでいる状態から伸びている状態へ変化させるときに押される発射ボタン1803を備えている。また、発射装置180は、情報を表示する表示部1804を備えている。
【0193】
図39は発射装置180の断面図である。発射装置180は、筺体1805内に、保持部1806、保持用バネ1807、回路部1808、つめ1821、および電源部1809を備えている。保持部1806は、発射ボタン1803と一体的に形成されている。また、保持用バネ1807の一方端が保持部1806に接続され、保持用バネ1807の他方端が筺体1805の内面に接続されている。つめ1821は、羽ばたきロボット100に力を与える作用部1802と一体的に形成されている。つめ1821は、保持部1806と協働して、作用部1802を保持する状態と作用部1802を保持しない状態(解放状態)とのそれぞれに変化させる。
【0194】
発射用バネ1801は、押しバネであるため、外力を受けて収縮すると、収縮長さに比例して復元力を蓄える。ただし、発射用バネ1801の代わりに、ゴムなどバネ以外の弾性体が用いられてもよい。
【0195】
図39に示される状態において、作用部1802に鉛直上方から外力を与えることによって、発射用バネ1801を収縮させる。それにより、保持部1806とつめ1821とが係合する。この状態で、発射ボタン1803が押されると、保持部1806とつめ1821との係合が外れ、作用部1802は発射用バネ1801の復元力によって図39に示される状態から鉛直上方に飛び出す。
【0196】
作用部1802は、重力によって鉛直上方の速度成分が失われるか、または、つめ1821がステージ1822の下面に接触することによって停止した後、重力によって筐体内へ戻る。
【0197】
作用部1802の上端部には電磁石1810が内蔵されている。発射ボタン1803が押されているときには、電磁石1810はオフ状態になり、一方、発射ボタン1803が押されていないときには、電磁石1810はオンの状態になっている。電磁石1810の吸着力は、発射装置180が後述される待機状態の際に、羽ばたきロボット100が発射装置180に装着された状態で、発射用バネ1801の復元力よりも大きい。
【0198】
また、電磁石1810上において、羽ばたきロボット100の発射用パッド107に設けられた充電用電極1831と接触する部分には、電極1830が設けられており、電極1830は電源部1809と電気的に接続されている。
【0199】
表示部1804には発射装置180の情報を示すための小型液晶ディスプレイが設けられており、そのディスプレイには後述の姿勢センサ1811によって得られた情報および発射装置180のバッテリー残量が表示される。
【0200】
回路部1808には、表示部1804を制御するための表示部制御回路1812、姿勢センサ1811、電磁石1810のオン/オフを切り換えるための電磁石制御回路1813、および羽ばたきロボット100と通信するための通信部1814が内蔵されている。
【0201】
姿勢センサ1811としては、市販の小型6軸電子コンパス(3軸加速度センサと3軸地磁気センサを1チップ化したもの)が搭載される。6軸電子コンパスにより、3次元空間での発射装置の姿勢を検出することが可能になる。
【0202】
電源部1809は、市販の乾電池、ボタン電池、およびリチウムイオン電池等の電池を有しており、回路部1808へ電力を供給する。
【0203】
発射ボタン1803が押されると、まず、羽ばたきロボット100の発射方向、すなわち、発射装置180の姿勢に関する情報が、通信部1814を経由して、羽ばたきロボット100に送信される。次に、電磁石1810がオフ状態になる。上述の2つのステップは、電気信号を用いる通信によってなされるため、つめ1821が保持部1806から離れてから作用部1802の拘束が解除されるまでに必要とされる時間よりも十分に短い時間で完了する。
【0204】
最後に、作用部1802の拘束が解除され、作用部1802が図38〜図44に示される状態から鉛直上方に移動する。
【0205】
図38および図39に示された発射装置180においては、発射用バネ1801が収縮され、かつ、保持部1806がつめ1821に係合された状態が発射待機状態と呼ばれ、また、オペレータ210によって発射ボタン1803が押される動作が発射動作と呼ばれる。
【0206】
(実施の形態2)
次に、図40および図41を用いて、実施の形態2の羽ばたきロボットシステムが説明される。ただし、羽ばたきロボット100の構成は、実施の形態1の羽ばたきロボット100の構成と同一であるため、特に必要がなければ、その説明は繰り返さない。以後においては、本実施の形態の羽ばたきロボットシステムと前述の実施の形態の羽ばたきロボットシステムとが異なっている点が主に説明される。
【0207】
図40は、実施の形態2の発射装置180を示す。なお、本実施の形態の発射装置180においては、上述の実施の形態1の発射装置180と同一の機能を発揮する部位には、実施の形態1の発射装置180と同一の参照符号が付されている。
【0208】
本実施の形態の発射装置180は、発射用バネ1801と、作用部1802と、発射ボタン1803と、発射待機ボタン1815と、表示部1804と、リニアモータ調整ダイアル1816と、筺体1805とを備えている。
【0209】
図41は、本実施の形態の発射装置180の断面図である。発射装置180の筺体1805内には、リニアモータ1817と、回路部1808と、電源部1809とが内蔵されている。
【0210】
リニアモータ1817は、作用部1802に接続されており、図41に示される状態から作用部1802を上下方向に移動させ得る。リニアモータ1817は、回路部1808に搭載されている後述されるリニアモータ制御回路1818によって制御される。また、リニアモータ1817の制御のための操作は、発射ボタン1803、発射待機ボタン1815、およびリニアモータ調整ダイアル1816を用いて実行される。
【0211】
オペレータ210により発射ボタン1803が押されると、発射ボタン1803に接続された後述のリニアモータ制御回路1818に発射を指示する信号と、リニアモータ調整ダイアル1816によって設定されたリニアモータ1817の駆動速度を指定した信号とが、リニアモータ1817に接続されているリニアモータ制御回路1818に入力される。それにより、リニアモータ調整ダイアル1816によって設定された速度でリニアモータ1817を上下方向に移動させるための制御信号が、リニアモータ制御回路1818からリニアモータ1817へ送信される。リニアモータ1817に取り付けられた作用部1802は、図41における上下方向、すなわち鉛直方向に移動する。
【0212】
一方、発射待機ボタン1815が押されると、発射待機を指示する信号が、発射待機ボタン1815およびリニアモータ1817に接続されているリニアモータ制御回路1818へ入力される。それにより、リニアモータ1817を鉛直方向に移動させるための制御信号が、リニアモータ制御回路1818からリニアモータ1817へ送信される。その結果、リニアモータ1817に取り付けられた作用部1802は、鉛直方向に移動する。なお、リニアモータ1817の位置情報は、リニアモータ制御回路1818にフィードバックされており、リニアモータ1817が後述されるリニアモータ可動範囲の上端または下端に到達した時点において、発射ボタン1803または発射待機ボタン1815が押された場合における作用部1802の運動は停止する。
【0213】
リニアモータ1817の可動範囲の上端は、作用部1802に接続されているリニアモータ可動部1819が図41に示されるステージ1822の下面に接触しないように設定されている。リニアモータ1817の可動範囲の下端は、作用部1802の上面がステージ1822の上面と一致する位置である。このとき、リニアモータ可動部1819または作用部1802の下面は電源部1809に接触しないように設定されている。
【0214】
なお、リニアモータ1817としては電磁式リニアモータまたは超音波リニアモータなどが構成例として考えられる。
【0215】
リニアモータの速度は、リニアモータ調整ダイアル1816を用いてリニアモータ1817に印加される電圧の値を変化させることによって制御される。
【0216】
作用部1802には電磁石1810が内蔵されている。発射ボタン1803が押されると、電磁石1810はオフ状態になり、一方、発射待機ボタン1815が押されると、電磁石1810はオンの状態になる。これは、実施の形態1と同様である。
【0217】
表示部1804には、発射装置180の情報を示すための小型液晶ディスプレイが設けられており、後述される姿勢センサ1811によって得られた情報、リニアモータ1817の情報、および発射装置180のバッテリー残量が表示される。
【0218】
回路部1808には表示部1804を駆動するための表示部制御回路1812、リニアモータ1817を制御するリニアモータ制御回路1818、姿勢センサ1811、電磁石1810を切換る電磁石制御回路1813、および羽ばたきロボット100と通信するための通信部1814が内蔵されている。
【0219】
姿勢センサ1811および電源部1809は前述の実施の形態1の発射装置180の姿勢センサ1811および電源部1809と同一である。
【0220】
発射ボタン1803が押されると、まず、羽ばたきロボット100の発射方向、すなわち、発射装置180の姿勢に関する情報が通信部1814を経由して羽ばたきロボット100に送信される。次に、電磁石1810がオフ状態になる。最後に、リニアモータ1817が動作する。
【0221】
本実施の形態の発射装置180においては、オペレータ210により発射待機ボタン1815が押され、作用部1802が下端まで下げられた状態が発射待機状態と呼ばれ、発射ボタン1803が押される動作が発射動作と呼ばれる。
【0222】
上述の発射装置180が発射待機状態である場合において、羽ばたきロボット100の発射用パッド107は、発射装置180の作用部1802に接触すると、作用部1802に内蔵されている電磁石1810によって吸着される。この状態で、オペレータ210により、上述の発射のための操作が行われると、羽ばたきロボット100は、図41に示される状態から鉛直上方向に所定の初速度で発射される。
【0223】
(実施の形態3)
次に、図42および図43を用いて、実施の形態3の羽ばたきロボットシステムが説明される。ただし、羽ばたきロボット100の構成は、実施の形態1の羽ばたきロボット100の構成と同一であるため、特に必要がなければ、その説明は繰り返さない。以後においては、本実施の形態の羽ばたきロボットシステム前述の実施の形態の羽ばたきロボットシステムとが異なっている点が主に説明される。
【0224】
図42および図43は、実施の形態3の発射装置180を示す図である。本実施の形態の発射装置180においても、実施の形態1および2のそれぞれの発射装置180と同一の機能を発揮する部位には同一の参照符号が付されている。
【0225】
図42は、発射機構が設けられた羽ばたきロボット100とそれを発射するための発射装置180とを示す。
【0226】
羽ばたきロボット100の筺体背面プレート106には、発射のための発射用バネ1801と、上述の羽ばたきロボット100と同様の発射用パッド107とが設けられている。発射装置180は、発射ボタン1803、表示部1804、電磁石1810、および筺体1805を備えている。羽ばたきロボット100に設けられている発射用バネ1801は押しバネであり、筺体1805には回路部1808および電源部1809が内蔵されている。
【0227】
発射ボタン1803が押圧されたことを示す信号は、後述される回路部1808に設けられている電磁石制御回路1813に送信される。発射ボタン1803が押されると電磁石1810はオフ状態になり、一方、発射ボタン1803が押されていない状態では、電磁石1810はオン状態になっている。電磁石1810の吸着力は、発射装置180が後述される待機状態の際に、羽ばたきロボット100が発射装置180に装着された状態で、発射用バネ1801の復元力よりも電磁石1810の吸着力が大きい。発射ボタン1803が押されると、上述の電磁石1810のオン/オフが切り換えられる前に、まず、発射装置180の姿勢情報が、通信部1814を経由して羽ばたきロボット100に送信される。姿勢情報の送信が完了した後、上述された電磁石1810オン/オフが切り換えられる。
【0228】
表示部1804には発射装置180の情報を示すための小型液晶ディスプレイが設けられており、ディスプレイには、後述される姿勢センサ1811によって得られた情報および発射装置180のバッテリー残量が表示される。
【0229】
回路部1808には、表示部1804を駆動するための表示部制御回路1812、姿勢センサ1811、電磁石1810を制御する電磁石制御回路1813、および羽ばたき浮上装置100と通信するための通信部1814が内蔵されている。
【0230】
本実施の形態においても、姿勢センサ1811および電源部1809は実施の形態1のそれと同一である。
【0231】
本実施の形態の羽ばたきロボット100と発射装置180との組み合わせにおいて、発射用バネ1801を収縮させた状態で、電磁石1810と発射用パッド107とが吸着された状態が発射待機状態と呼ばれ、また、オペレータ210により発射ボタン1803が押された状態が発射動作と呼ばれる。
【0232】
オペレータ210により上述の発射動作が行われると、電磁石1810はオフ状態になるため、発射用バネ1801が伸長し、発射用バネ1801の復元力に相当する外力が羽ばたきロボット100に加わる。そのため、外力の加わる方向に羽ばたきロボット100が発射される。
【0233】
(実施の形態4)
次に、実施の形態4の羽ばたきロボットシステムが説明される。ただし、羽ばたきロボット100の構成は、実施の形態1の羽ばたきロボット100の構成と同一であるため、特に必要がなければ、その説明は繰り返さない。以後においては、本実施の形態の羽ばたきロボットシステム前述の実施の形態の羽ばたきロボットシステムとが異なっている点が主に説明される。
【0234】
図44は、実施の形態4の発射装置180を示す。本実施の形態の発射装置180においては、実施の形態1〜3のそれぞれの発射装置180と同一の機能を発揮する部位には同一の参照符号が付されている。
【0235】
本実施の形態の発射装置180は、羽ばたきロボット100の羽部110の弾性力を利用する発射機構である。本実施の形態の発射装置180の構成は、実施の形態3の発射装置180の構成と同一であるため、その説明は繰り返さない。本実施の形態の羽ばたきロボット100の構成は、実施の形態の羽ばたきロボットの構成と同一である。この発射装置180によれば、図44に示されるように、羽ばたきロボット100の羽部110は、曲げられた状態で、羽ばたきロボット100の発射用パッド107と電磁石1810とが互いに吸着されている。この状態が発射待機状態と呼ばれる。
【0236】
オペレータ210により発射ボタン1803が押されると、電磁石1810がオフになり、羽ばたきロボット100が羽部110の弾性力によって発射される。オペレータ210により発射ボタン1803が押される動作が発射動作と呼ばれる。なお、羽部110は、弾性変形可能な程度の力で曲げられ、発射装置180に装着されているものとする。
【0237】
なお、前述の各実施の形態の発射装置180において、姿勢センサ1811によって検出される発射装置180の姿勢に関する情報は、回路部1808に設けられた表示部制御回路1812および電磁石制御回路1813にフィードバックされる。姿勢センサ1811によって検出された発射装置180の三次元姿勢の情報に基づいて、発射方向および角度に関する情報が得られる。この情報は、表示部1804に表示される。
【0238】
また、羽ばたきロボット100を発射しても、所望の初速度の鉛直上方成分が得られない場合には、すなわち、発射装置180から発射される羽ばたきロボット100の方向が下向きである場合には、オペレータ210によって発射ボタン1803が押されても、電磁石1810はオフにならず、羽ばたきロボット100は発射されない(誤発射防止機構)。
【0239】
<発射手順>
上記各実施の形態の羽ばたきロボットシステムにおける発射装置から羽ばたきロボットを発射する手順を説明する。
【0240】
次に、上述の発射装置180を用いた羽ばたきロボット100の発射の手順を説明する。図45および図46は、発射時および発射後の発射装置180の制御におけるフローチャートを示す。
【0241】
オペレータ210は、まず、羽ばたきロボット100を上述の発射待機状態にする。次に、オペレータ210は、羽ばたきロボット100を発射させたい方向と羽ばたきロボット100が発射される方向とが一致するように、発射装置180による羽ばたきロボット100の発射方向を設定する。その後、オペレータ210により発射ボタン1803がオンされる。それにより、羽ばたきロボット100は発射装置180から発射される。
【0242】
発射装置180を用いて羽ばたきロボット100の浮上開始動作を補助するためには、羽ばたきロボット100は鉛直上方の初速度成分を有する状態で発射されることが必要である。
【0243】
上述のとおり、発射装置180には姿勢センサ1811が搭載されている。姿勢センサ1811を用いて発射装置180の向きを監視することによって、羽ばたきロボット100が発射される際に、羽ばたきロボット100が上向きの初速度成分を有する状態で発射され得るかどうかを検出することが可能である。
【0244】
姿勢センサ1811から送信されてきた情報は発射装置180に設けられている表示部1804に表示される。したがって、オペレータは表示部1804から羽ばたきロボット100の発射方向が上向きの成分を有するかどうかを知ることができる。
【0245】
さらに、姿勢センサ1811から送信されてきた情報は、発射装置180の電磁石制御回路1813に入力される。また、発射装置180の姿勢が、羽ばたきロボット100が上向きの初速度成分を有する状態で発射されないようなものである場合には、オペレータ210により発射ボタン1803が押された場合であっても、電磁石1810がオフの状態にならないため、羽ばたきロボット100は発射装置180から発射されない。
【0246】
上述された発射待機状態においては、羽ばたきロボット100は、図1に示されるように、羽部110を左右方向に延ばし、羽部110の表面は、発射装置180の筺体の底面に対して垂直な状態になっている。すなわち、左および右の羽部110のいずれのアクチュエータにおいても、上部超音波モータの回転角および下部超音波モータの回転角のいずれもが同一の角度(+90度)になっている。
【0247】
また、オペレータ210により発射ボタン1803が押されると、まず、発射方向および発射ボタン1803が押されたことを示す制御信号が羽ばたきロボット100に送信される。上述の制御信号が羽ばたきロボット100に入力されると、羽ばたきロボット100は、まず、静止状態における加速度が位置姿勢検出センサ160によって検出される。このとき、検出される加速度は重力加速度であるため、その方向は重力の方向、すなわち、鉛直方向である。この静止状態の重力加速度の方向および大きさに関する情報はRAM155に格納される。
【0248】
その後、羽ばたきロボット100は位置姿勢検出センサ160により連続的に加速度を測定する。次に、発射装置の電磁石1810がオフになり、羽ばたきロボット100は発射装置180から外力を受ける、羽ばたきロボット100が発射装置180から外力を受けると、位置姿勢検出センサ160は、重力加速度および外力に起因する加速度の和の加速度が羽ばたきロボット100に生じることを検出する。その後、位置姿勢検出センサ160によって連続的に検出される加速度とRAM155に格納された重力加速度とが比較される。これにより、後述される飛行動作が検知される。
【0249】
次に、電磁石1810がオフになり、発射用パッド107が電磁石1810から離れると、発射装置180から羽ばたきロボット100への電力の供給が停止される。すなわち、発射用パッド107に電流が流れなくなる。この発射用パッド107の電流がモニタされており、その電流が流れなくなることが検出されると、羽ばたきロボット100が発射されたこをと示す情報がRAM155に格納される。
【0250】
羽ばたきロボット100に搭載されている位置姿勢検出センサ160によって、飛行中に羽ばたきロボット100の加速度が連続的に検出される。
【0251】
羽ばたきロボット100は発射待機状態において羽部に羽ばたき運動をさせないので、発射後に羽ばたきロボット100に与えられる力は重力による鉛直下向きの力と空気抵抗による抗力との和になる。重力は常に鉛直下方向に一定の値となり、空気抵抗は羽ばたきロボット100の進行方向と逆方向に加わるため、羽ばたきロボット100が鉛直上方向の速度成分を有する状態で移動していれば、空気抵抗による抗力は鉛直下向きの成分を有している。羽ばたきロボット100が鉛直下方向の速度成分を有する状態においては、空気抵抗による抗力は鉛直上向きの成分を有する。
【0252】
したがって、位置姿勢検出センサ160により重力加速度と抗力に起因して生じる加速度との和の値を検出することによって、羽ばたきロボット100が羽部110に羽ばたき運動を一切させていない状態であれば、羽ばたきロボット100が浮上(上昇)中であるのか、落下(降下)中であるのかを判断することが可能である。
【0253】
すなわち、羽ばたきロボット100が浮上(上昇)中の場合に位置姿勢検出センサ160より検出される鉛直方向の加速度は、重力加速度よりも大きな値になり、落下(降下)中の加速度は重力加速度よりも小さな値になる。
【0254】
また、羽ばたきロボット100が鉛直上方の初速度成分を有する状態で発射される場合には、浮上(上昇)から落下(降下)に変化する瞬間、つまり鉛直方向の速度がゼロになる瞬間に鉛直方向の加速度は重力加速度と同一である。
【0255】
羽ばたきロボット100が、鉛直上方向の初速度成分を有する状態で発射された後、羽部110に羽ばたき運動をさせないのであれば、鉛直方向の速度がゼロになる時点で羽ばたきロボット100が最高位置に到達することになる。
【0256】
また、発射された羽ばたきロボットの姿勢の変化が、ジャイロセンサからなる3軸回転角センサ1602を用いて検出される。すなわち、羽ばたきロボット100の発射後の加速度が検出される。その加速度とRAM155に格納された発射前の重力加速度とを比較すれば、たとえ、発射後に羽ばたきロボット100の姿勢が変化したとしても、羽ばたきロボット100は鉛直方向を認識することが可能である。
【0257】
発射後、羽ばたきロボット100が最高高さに到達した時点で、羽ばたき浮上装置100はブレーキ羽ばたき動作を行い、空中静止状態(ホバリング)になる。ブレーキ羽ばたき動作とは、発射装置180によって発射された後の羽ばたきロボット100の所定時間内の位置の変化を実質的にゼロ(ホバリング状態)にするための羽ばたき動作である。ブレーキ羽ばたき動作がなされた後、RAM155に格納されている、羽ばたきロボット100が発射装置180から発射されたことを示す情報はリセットされる。
【0258】
羽ばたきロボット100は、ホバリングをしている状態で、上述された飛行制御動作が組み合わせられた所望の飛行動作を行う。
【0259】
次に、発射から最高高さ位置でのホバリングに到るまでの羽ばたきロボット100の制御が以下に具体的に述べられる。
【0260】
発射装置180から発射された後、羽ばたきロボット100は、左の羽部110および右の羽部110の双方が発射待機状態である状態を維持している。発射された直後においては、羽部110の前縁部1102が延びる方向は羽ばたきロボット100が発射された方向にほぼ平行になっており、かつ、羽面部1103の方向は、鉛直方向にほぼ平行になっている。これによれば、羽部110が発射直後に受ける空気抵抗を最小にすることができる。また、羽ばたきロボット100が発射装置180から離れた直後から、羽ばたきロボット100は位置姿勢検出センサ160を用いた鉛直方向の加速度を連続的に検出する。
【0261】
羽ばたきロボット100が発射装置180から発射された直後においては、位置姿勢検出センサ160によって計測される鉛直方向の加速度は重力加速度よりも大きな値を示す。しかしながら、羽ばたきロボット100が発射されてから時間が経過するにつれて、鉛直方向の加速度は重力加速度に除々に近づく。位置姿勢検出センサ160によって検出された鉛直方向の加速度と重力加速度との差が予めオペレータ210によって定められた閾値、例えば、0.01%以内の範囲になると、羽ばたきロボット100は、前述のブレーキ羽ばたきを行う。それにより、X軸、Y軸、およびZ軸のそれぞれに沿った方向における速度がゼロになる。その後、羽ばたきロボット100はホバリングする。
【0262】
前述のブレーキ羽ばたきとは、上述の前進または後退のための羽ばたき動作を組み合わせることによって、発射装置180によって与えられた速度方向とは逆の方向に進行しようとする羽ばたきを方であり、空中でストップ(ホバリング=速度が実質的にゼロ)するために行われる羽ばたき方であるものとする。ブレーキ羽ばたきの詳細な制御は後述される。なお、ここで定めた0.01%という数値は、一例であり、使用環境および要求精度によってオペレータ210によって任意に設定され得る。上述のようなブレーキ羽ばたきをすることによって、発射された羽ばたきロボットは最高高さ位置に留まることが可能になる。
【0263】
羽ばたきロボット100が飛行している間の加速度の鉛直方向成分の検出アルゴリズムが説明される。羽ばたきロボット100が発射される直前の静止状態において位置姿勢検出センサ160によって検出される3軸加速度ベクトルをgとする。
【0264】
発射された後の羽ばたきロボット100の発射される前の羽ばたきロボット100に対する傾き角をθとすると、発射された後に位置姿勢検出センサ160によって検出される3軸加速度ベクトルaを−θ回転させることにより、aの座標系をgの座標系と一致させることができる。この3軸加速度ベクトルをa’とすると、a’のgの座標系への射影が、aの鉛直方向成分azになる。これによれば、本発明の制御部としての制御回路150は、azを位置姿勢検出センサ160により検出される3軸加速度aの値と、ジャイロセンサにより検出可能な傾き角とから、aの鉛直方向成分azの値を算出することができる。
【0265】
上述の例では、羽ばたきロボット100が発射装置180から発射された後に、羽ばたきロボット100は、羽部にブレーキ羽ばたきをさせた後ホバリング状態を維持するための羽ばたき運動をさせる。このブレーキ羽ばたきからホバリングへの移行のタイミングは、羽ばたきロボット100に作用する鉛直方向における加速度azの値を用いて決定されている。しかしながら、羽ばたきロボット100が発射装置180から発射された後に羽ばたきロボット100が移動する空間における風速が既知または無視できるほど小さい場合には、連続的に測定される加速度ではなく、所定の時間ごとに測定される加速度を用いて、ブレーキ羽ばたきからからホバリングへ移行するタイミングが決定される制御が行なわれてもよい。
【0266】
(実施の形態5)
次に、実施の形態5の羽ばたきロボットシステムが説明される。ただし、羽ばたきロボット100および発射装置180の構成は、実施の形態1の羽ばたきロボット100および発射装置180の構成と同一であるため、特に、必要がなければ、その説明は繰り返さない。以後においては、本実施の形態の羽ばたきロボットシステム前述の実施の形態の羽ばたきロボットシステムとが異なっている点が主に説明される。
【0267】
本実施の形態の羽ばたきロボットシステムは、羽ばたきロボット100が発射装置から発射された後の経過時間に応じて、ブレーキ羽ばたきのための制御を行うものである。
【0268】
発射装置180から離れた後に羽ばたきロボット100に加えられる力は、重力加速度および空気抵抗による抗力である。重力加速度は常に一定の値をとり、空気抵抗に起因する抗力は空気流体の方向および速度によって決定される。そのため、羽ばたきロボット180の構造情報、速度、および風速が既知であれば、空気抵抗に起因する抗力を計算することが可能になる。
【0269】
発射された直後の羽ばたきロボット100の初速度は、位置姿勢検出センサ160によって検出され得る。たとえば、初速度の検出方法として、発射された羽ばたきロボット100に与えられる加速度を積分する方法が考えられる。また、初速度の他の検出方法として、発射装置180に用いられる弾性体、羽部110の物理定数(バネ定数や弾性定数など)、およびリニアモータの特性が既知であれば、計算によって羽ばたきロボット100の初速度を算出することが可能である。発射方向は、発射装置180に搭載されている姿勢センサ1811によって検出され得る。
【0270】
したがって、発射された後に羽ばたきロボット100が移動する空間における空気の速度が既知であれば、発射された後の羽ばたきロボット100の時間的な挙動を予め羽ばたきロボット100の中央演算装置151または羽ばたきロボット100の外部に設けられた演算装置を用いて算出することができる。
【0271】
具体的には、発射を示す制御信号が発射装置180から羽ばたきロボット100へ入力されてから羽ばたきロボット100が最高高さ位置に到達するまでの時間がRAM155に格納されている。また、羽ばたきロボット100に内蔵されているタイマによってその時間をカウントダウンすれば、ブレーキ羽ばたきの開始のタイミングを自動的に決定することが可能である。なお、羽ばたきロボット100が最高高さ位置に到達したであろうと想定される時点で、前述のブレーキ羽ばたきおよびホバリングが実行されるように、タイマのカウントダウンの初期値が設定されている。
【0272】
前述の方法の他として、羽ばたきロボット100が自身の地面または海抜等の基準高さ位置からの高さを測定することができる高度センサ1630を備えている場合に、発射装置180から発射された後に連続的に自身の高度を測定する方法が用いられてもよい。この方法によっても、羽ばたきロボット100が最高高さ位置に到達した時点で、前述のブレーキ羽ばたきおよびホバリングが実行される。
【0273】
図47は、本実施の形態の羽ばたきロボットシステムの制御のフローチャートを示す。
連続的に測定された2回の高度測定結果のうち、後に測定された高度が前に測定された高度と同一であるか、または、後に測定された高度が前に測定された高度よりも低いと判定された場合に、その位置が最高高さ位置であると判定される。
【0274】
<ブレーキ羽ばたき制御>
ここで、ブレーキ羽ばたきの制御について述べる。羽ばたきロボット100は発射検知の情報がRAM155に上述のように、本羽ばたきロボット100は、図1に示すx方向の並進、y方向の並進、z方向の並進、y軸回りの回転、およびz軸回りの回転を実行することができる。
【0275】
本実施の形態においては、後述される水平姿勢とは、図1に示されるx軸、y軸、およびz軸からなる3軸座標を用いて規定される羽ばたきロボット100のx−y平面が地上の絶対座標の水平面と平行になる姿勢を言う。より具体的には、水平姿勢とは、羽ばたきロボット100の羽軸が地面と平行になる姿勢である。
【0276】
上述のとおり、羽ばたきロボット100の姿勢は、筺体下部に重心があるため、発射された後の最高高さ位置では水平姿勢になっていると考えられる。しかしながら、風の影響などにより、最高高さ位置において羽ばたきロボット100の姿勢が水平姿勢ではない場合には、すなわち、羽ばたきロボット100が傾いている場合には、羽ばたきロボット100は、x軸回りの回転およびy軸回りの回転のうちの少なくともいずれか一方を実行し、水平姿勢に戻ろうとする。この場合、羽ばたきロボット100は、図1に示されるxyz座標系において、θx=0度になるように、z軸回りに回転する。次に、羽ばたきロボット100は、図1に示されるxyz座標系において、θy=0度になるように、y軸回りに回転する。それにより、羽ばたきロボット100は水平姿勢に戻る。この状態で、z方向における並進運動のための制御が行われ、羽ばたきロボット100の高度が一定に維持される。羽ばたきロボット100は、発射された後、水平姿勢の状態で、水平方向に移動している。
【0277】
本実施の形態においては、羽ばたきロボット100は、上述のx方向における並進運動およびy方向の並進運動により、xy平面内の加速度の方向とは逆方向に加速度を生じさせるように、羽部110に羽ばたき運動をさせる。それにより、羽ばたきロボット100のxy面内における速度成分がゼロになる。xy面内における速度成分がゼロになれば、ブレーキ羽ばたきを終了するタイミングであると判定され、羽ばたきロボット100は羽部110に次の羽ばたき運動をさせる。
【0278】
なお、上述の姿勢および速度の検出は、羽ばたきロボット100の位置姿勢検出センサ160によってなされる。このとき、位置姿勢検出センサ160によって検出された羽ばたきロボット100の姿勢および速度の情報は、中央演算装置にフィードバックされる。
【0279】
また、ブレーキ羽ばたきは、羽ばたきロボット100が発射されたことを示す情報がRAM155に格納されている場合にのみ実行される。
【0280】
(浮上の可否)
<質量>
本発明者らの計算によれば、羽部1枚が生み出す浮上力は1.21gfである。よって、羽部2枚が生み出す浮上力は2.42gfである。また、各構成要素の質量が表5に示されている。表5は、上述された実施の形態1〜3の発射装置180を用いる場合における羽ばたきロボット100の質量であり、上述された実施の形態4の発射装置180、すなわち、発射用バネ1801を本体101に搭載する場合における羽ばたきロボット100の質量である。表5に示されるように、羽ばたきロボット100の総質量は、前述の浮上力2.42gfよりも小さいため、羽ばたきロボット100は、浮上することができる。
【0281】
【表5】
【0282】
<消費電力>
本発明者らの計算によれば、羽ばたきロボット100の羽部が1.2gfの浮上力を生ずるに要求される機械的パワーは上および下部超音波モータ120および130共に最大40mWである。各超音波モータのエネルギー変換効率は33%である。したがって、浮上のために要求される最大電力は超音波モータ1つにつき約120mWであり、それらの電力の合計は480mWである。ドライバ152および昇圧回路153の総合効率は約85%であるため、4つの超音波モータの駆動のために必要な電力は最大565mWである。
【0283】
中央演算装置151の消費電力は5mWである。磁気エンコーダ126の消費電力は5mWである。位置姿勢検出センサ160の消費電力は5mWである。流体センサ180の消費電力は15mWである。通信装置170の消費電力は5mWである。
【0284】
これらの電力の総計は、最大600mWであり、電源190の能力の範囲内の値である。したがって、羽ばたきロボット100は、内蔵された電源190から供給された電力のみを用いて浮上することができる。したがって、羽ばたきロボット100は、外部から電力の供給を受けることなく、独立して羽ばたき飛行することができるスタンドアロンタイプのロボットになり得るものである。
【0285】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0286】
【図1】実施の形態の羽ばたきロボットの全体構成の概略図である。
【図2】実施の形態の羽ばたきロボットの詳細構造の概略図である。
【図3】実施の形態の羽ばたきロボットの羽部の概略平面図である。
【図4】実施の形態の羽ばたきロボットの羽部の概略側面図である。
【図5】実施の形態の羽ばたきロボットの羽部の第一の層を示す図である。
【図6】実施の形態の羽ばたきロボットの羽部の第二の層を示す図である。
【図7】実施の形態の羽ばたきロボットの羽部の第三の層を示す説明図である。
【図8】実施の形態の羽ばたきロボットに用いられるアクチュエータの外観図である。
【図9】実施の形態の羽ばたきロボットに用いられる超音波モータの概略図である。
【図10】実施の形態の羽ばたきロボットに用いられる超音波モータの第一の振動モードを示す図である。
【図11】実施の形態の羽ばたきロボットに用いられる超音波モータの第二の振動モードを示す図である。
【図12】実施の形態の羽ばたきロボットに用いられる超音波モータの動作を表わす説明図である。
【図13】実施の形態の羽ばたきロボットに用いられる超音波モータの動作を表わす説明図である。
【図14】実施の形態の羽ばたきロボットに用いられる超音波モータの予圧機構の概略図である。
【図15】実施の形態の羽ばたきロボットに用いられる羽駆動メカニズムの概略図である。
【図16】実施の形態の羽ばたきロボットに用いられる羽駆動メカニズムの第一の構成部品を示す図である。
【図17】実施の形態の羽ばたきロボットに用いられる羽駆動メカニズムの第二の構成部品を示す図である。
【図18】実施の形態の羽ばたきロボットに用いられる羽駆動メカニズムの第三の構成部品を示す図である。
【図19】実施の形態の羽ばたきロボットに用いられる羽駆動メカニズムのサイズの定義を示す図である。
【図20】実施の形態の羽ばたきロボットに用いられる羽駆動メカニズムの駆動原理を説明するための図である。
【図21】実施の形態の羽ばたきロボットのホバリング時の羽ばたき方を説明するための図である。
【図22】実施の形態の羽ばたきロボットの上昇時の羽ばたき方を表わす説明図である。
【図23】実施の形態の羽ばたきロボットの下降時の羽ばたき方を表わす説明図である。
【図24】実施の形態の羽ばたきロボットの上昇・下降時の羽ばたき方により生じる水平方向の力を表す説明図である。
【図25】実施の形態の羽ばたきロボットの前進方法を表す説明図である。
【図26】実施の形態の羽ばたきロボットの後退方法を表す説明図である。
【図27】実施の形態の羽ばたきロボットの前進時の羽ばたき方を表わす説明図である。
【図28】実施の形態の羽ばたきロボットの後退時の羽ばたき方を表わす説明図である。
【図29】実施の形態の羽ばたきロボットにおける制御システムのハードウエアブロック図である。
【図30】実施の形態の羽ばたきロボットにおける制御システムの機能ブロック図である。
【図31】実施の形態の羽ばたきロボットのPWM制御信号のデューティ比を説明するための図である。
【図32】実施の形態の羽ばたきロボットの中央切り返しの制御のためのデューティ比を示すグラフである。
【図33】実施の形態の羽ばたきロボットの先行切り返しの制御のためのデューティ比を示すグラフである。
【図34】実施の形態の羽ばたきロボットの遅れ切り返しの制御のためのデューティ比を示すグラフである。
【図35】実施の形態の羽ばたきロボットの旋回のための左右の羽部のアクチュエータに印加される電圧のデューティ比を示すグラフである。
【図36】実施の形態の羽ばたきロボットの制御の流れを示すフローチャートである。
【図37】一般的なホバリングの羽ばたき方を説明するための図である。
【図38】実施の形態1の発射装置の斜視図である。
【図39】実施の形態1の発射装置の断面図である。
【図40】実施の形態2の発射装置の斜視図である。
【図41】実施の形態2の発射装置の断面図である。
【図42】実施の形態3の発射装置の斜視図である。
【図43】実施の形態3の発射装置の断面図である。
【図44】実施の形態4の発射装置の正面図である。
【図45】発射時の羽ばたきロボットの制御の流れを示すフローチャートである。
【図46】発射装置から発射された後、加速度の検出機能を用いてブレーキ羽ばたきおよびホバリングに移るまでの羽ばたきロボットの制御の流れを示すフローチャートである。
【図47】発射装置から発射された後、高度の検出機能を用いてブレーキ羽ばたきおよびホバリングに移るまでの羽ばたきロボットの制御の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0287】
100 羽ばたきロボット、101 本体、110 羽部、120,130 超音波モータ、140 駆動メカニズム、150 制御回路、160 姿勢センサ、170 通信装置、180 発射装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
羽部の羽ばたき運動により流体が存在する空間を羽ばたき飛行し得る羽ばたきロボットと、
前記羽ばたきロボットに外力を加えることによって、前記羽ばたきロボットを空中に向かって発射させ得る発射装置とを備え、
前記羽ばたきロボットが、
自己の運動状態を検出し得るセンサと、
自己が前記発射装置によって空中に発射された後、一旦、前記自己の運動状態がホバリング状態になるまで、前記羽部に前記自己の運動状態を前記ホバリング状態にするための羽ばたき運動をさせる制御部とを含む、羽ばたきロボットシステム。
【請求項2】
前記センサが前記羽ばたきロボットの加速度を検出して前記加速度の情報を前記制御部へ送信する加速度センサであり、
前記制御部は、前記加速度の情報に基づいて前記羽ばたきロボットの高度を算出し、前記高度の低下をトリガとして、前記羽部に前記自己の運動状態を前記ホバリング状態にするための羽ばたき運動をさせる、請求項1に記載の羽ばたきロボットシステム。
【請求項3】
前記センサが前記羽ばたきロボットの基準位置からの高度を検出して該高度の情報を前記制御部へ送信する高度センサであり、
前記制御部は、前記高度の低下をトリガとして、前記羽部に自己の運動状態を前記ホバリング状態にする羽ばたき運動をさせる、請求項1に記載の羽ばたきロボットシステム。
【請求項4】
羽部の羽ばたき運動により流体が存在する空間を羽ばたき飛行する羽ばたきロボットと、
前記羽ばたきロボットに外力を加えることによって、前記羽ばたきロボットを空中に向かって発射させ得る発射装置とを備え、
前記羽ばたきロボットは、
前記発射装置から発射された後の経過時間を計時するタイマと、
前記経過時間が所定値になった後、一旦、自己の運動状態がホバリング状態になるまで、前記羽部に前記自己の運動状態をホバリング状態にするための羽ばたき運動をさせる制御部とを含む、羽ばたきロボットシステム。
【請求項5】
前記所定値は、前記発射装置から発射された後の前記羽ばたきロボットの高度が低下した直後であると推定されるタイミングにおいて、前記制御部が前記羽部に前記羽ばたきロボットの運動状態を前記ホバリング状態にするための羽ばたき運動を開始させるように、設定された、請求項4に記載の羽ばたきロボットシステム。
【請求項6】
前記発射装置は、
前記羽ばたきロボットの構成要素を弾性変形させるように前記構成要素を保持している状態から前記構成要素を保持していない状態へ変化することが可能な保持/非保持機構と、
前記保持/非保持機構を前記保持している状態から前記保持していない状態へ変化させるスイッチとを含み、
前記羽ばたきロボットは、前記構成要素の復元力を利用して、前記発射装置から空中に発射される、請求項1〜5のいずれかに記載の羽ばたきロボットシステム。
【請求項7】
前記構成要素が前記羽部である、請求項6に記載の羽ばたきロボットシステム。
【請求項1】
羽部の羽ばたき運動により流体が存在する空間を羽ばたき飛行し得る羽ばたきロボットと、
前記羽ばたきロボットに外力を加えることによって、前記羽ばたきロボットを空中に向かって発射させ得る発射装置とを備え、
前記羽ばたきロボットが、
自己の運動状態を検出し得るセンサと、
自己が前記発射装置によって空中に発射された後、一旦、前記自己の運動状態がホバリング状態になるまで、前記羽部に前記自己の運動状態を前記ホバリング状態にするための羽ばたき運動をさせる制御部とを含む、羽ばたきロボットシステム。
【請求項2】
前記センサが前記羽ばたきロボットの加速度を検出して前記加速度の情報を前記制御部へ送信する加速度センサであり、
前記制御部は、前記加速度の情報に基づいて前記羽ばたきロボットの高度を算出し、前記高度の低下をトリガとして、前記羽部に前記自己の運動状態を前記ホバリング状態にするための羽ばたき運動をさせる、請求項1に記載の羽ばたきロボットシステム。
【請求項3】
前記センサが前記羽ばたきロボットの基準位置からの高度を検出して該高度の情報を前記制御部へ送信する高度センサであり、
前記制御部は、前記高度の低下をトリガとして、前記羽部に自己の運動状態を前記ホバリング状態にする羽ばたき運動をさせる、請求項1に記載の羽ばたきロボットシステム。
【請求項4】
羽部の羽ばたき運動により流体が存在する空間を羽ばたき飛行する羽ばたきロボットと、
前記羽ばたきロボットに外力を加えることによって、前記羽ばたきロボットを空中に向かって発射させ得る発射装置とを備え、
前記羽ばたきロボットは、
前記発射装置から発射された後の経過時間を計時するタイマと、
前記経過時間が所定値になった後、一旦、自己の運動状態がホバリング状態になるまで、前記羽部に前記自己の運動状態をホバリング状態にするための羽ばたき運動をさせる制御部とを含む、羽ばたきロボットシステム。
【請求項5】
前記所定値は、前記発射装置から発射された後の前記羽ばたきロボットの高度が低下した直後であると推定されるタイミングにおいて、前記制御部が前記羽部に前記羽ばたきロボットの運動状態を前記ホバリング状態にするための羽ばたき運動を開始させるように、設定された、請求項4に記載の羽ばたきロボットシステム。
【請求項6】
前記発射装置は、
前記羽ばたきロボットの構成要素を弾性変形させるように前記構成要素を保持している状態から前記構成要素を保持していない状態へ変化することが可能な保持/非保持機構と、
前記保持/非保持機構を前記保持している状態から前記保持していない状態へ変化させるスイッチとを含み、
前記羽ばたきロボットは、前記構成要素の復元力を利用して、前記発射装置から空中に発射される、請求項1〜5のいずれかに記載の羽ばたきロボットシステム。
【請求項7】
前記構成要素が前記羽部である、請求項6に記載の羽ばたきロボットシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図2】
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【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【公開番号】特開2009−67086(P2009−67086A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−234360(P2007−234360)
【出願日】平成19年9月10日(2007.9.10)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月10日(2007.9.10)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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