説明

耐ブリスター粘着シート

【課題】膨れや浮きなどのブリスターの発生を防止した優れた耐ブリスター粘着シートを提供すること。
【解決手段】基材と粘着剤層を有する粘着シートにおいて、前記粘着剤層が、炭素数1〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル(a)を主成分とし、官能基を有する共重合可能な単量体(b)を混合物中0.5〜20質量%含む単量体混合物を重合してなる重量平均分子量30万〜120万の(メタ)アクリル酸エステル共重合体と、同官能基と反応する置換基を有する不飽和基含有化合物(c)とを反応させてなる活性エネルギー線硬化性(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含む粘着剤組成物に活性エネルギー線を照射することによって得られる粘着剤からなる耐ブリスター粘着シートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐ブリスター粘着シートに関するものである。詳細には、各種プラスチック成形品の表面に貼付した場合、膨れや浮きなどのブリスターの発生を防止した耐ブリスター粘着シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、感圧接着剤(粘着剤)を基材に塗工した粘着シートは、押圧によって容易に被着体に貼り付けることができるという簡便さにより、多くの分野において幅広く使用されている。また近年、製品の軽量化等の要望によりプラスチック成形品が多用されるようになってきた。それに伴い、プラスチック成形品に貼り付けるための粘着シートの使用が増加している。プラスチック成形品としては、たとえば、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ABSなどの樹脂を成形したものが挙げられる。
これらのプラスチック成形品の表面に装飾等の理由でガスバリア性のある基材を用いた粘着シート(例えば、粘着ラベル)を貼付した場合、プラスチック成形品からガスが発生し、粘着シートとプラスチック成形品との間に気泡が形成され、膨れや浮き、即ち、ブリスターが生じる場合がある。このようなブリスターが発生すると、成形品の外観が損なわれ、粘着シートとしての装飾機能が著しく低下してしまう。
従来、粘着剤組成物としては、たとえば特許文献1では、(メタ)アクリル酸エステル、共重合可能なカルボキシル基含有化合物及びビニル基を有する第三級アミンをラジカル重合してなる共重合体を含むアクリル系粘着剤組成物が開示されている。
特許文献2には、炭素数4〜12のアルキル基を有するアクリル酸エステルとアクリル酸やアクリル酸−2−ヒドロキシエチルのような極性モノマー0.1〜10重量%よりなる共重合体にアジリジン系架橋剤を配合してなる粘着剤を用いた耐ブリスター性粘着シートが提案されているが、耐ブリスター粘着シートとしては充分ではない。
特許文献3では、粘着剤層を形成する成分として粘着剤成分とアクリル系モノマーまたはオリゴマーである硬化性成分を含む粘着シートが開示されているが、硬化性成分が粘着剤層の凝集力を低下させてしまったり、粘着剤成分との相溶性が悪い場合、粘着剤層が白化することがある。
また特許文献4では、炭素数1〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとカルボキシル基含有不飽和モノマーを共重合して得られた特定の分子量を有する樹脂組成物(1)と炭素数1〜20のメタクリル酸アルキルエステルもしくはメタクリル酸シクロアルキルアルキルエステル、メタクリル酸ベンジルまたはスチレンから選ばれた1種または2種以上のモノマーとアミノ基含有不飽和モノマー共重合して得られた特定のTg及び特定の分子量を有する樹脂組成物とを配合する粘着剤組成物が開示されている。
特許文献5では炭素数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とし、スチレン系単量体、カルボキシル基含有不飽和単量体およびアミノ基含有不飽和単量体を共重合して得られる特定の分子量を有する共重合体にグリシジル基を有する架橋剤を配合してなる耐ブリスター性粘着剤組成物が開示されているが、耐ブリスター性が不十分である。
特許文献6ではアセトン中で重合された分子量150万以上且つ質量平均分子量/数平均分子量が4.0以下である樹脂組成物が開示されているが、耐ブリスター性が不十分である。
【0003】
【特許文献1】特公平7−98926号公報
【特許文献2】特開平8−3521号公報
【特許文献3】特許3618192号公報
【特許文献4】特許3516035号公報
【特許文献5】特開2001−335766号公報
【特許文献6】特開2001−354745号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような背景の下、各種プラスチック成形品の表面に貼付した場合、時間が経過しても膨れや浮き、すなわち、ブリスターの発生を防止した優れた耐ブリスター粘着シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討した結果、粘着シートにおける粘着剤層に(メタ)アクリル酸エステルを主成分とし、官能基を有する共重合可能な単量体を含む単量体混合物を重合してなる(メタ)アクリル酸エステル共重合体と、同官能基と反応する置換基を有する不飽和基含有化合物とを反応させて得られる活性エネルギー線硬化性(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含む粘着剤組成物に活性エネルギー線を照射することによって得られる粘着剤を用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は、下記、
(1)基材と粘着剤層を有する粘着シートにおいて、前記粘着剤層が、炭素数1〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル(a)を主成分とし、官能基を有する共重合可能な単量体(b)を混合物中0.5〜20質量%含む単量体混合物を重合してなる重量平均分子量30万〜120万の(メタ)アクリル酸エステル共重合体と、同官能基と反応する置換基を有する不飽和基含有化合物(c)とを反応させてなる活性エネルギー線硬化性(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含む粘着剤組成物に活性エネルギー線を照射することによって得られる粘着剤からなる耐ブリスター粘着シート、
(2)前記共重合体が溶液重合されたものである上記(1)に記載の耐ブリスター粘着シート、
(3)前記官能基がヒドロキシル基および/またはカルボキシル基である上記(1)または(2)に記載の耐ブリスター粘着シート、
(4)前記置換基を有する不飽和基含有化合物が(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートである上記(1)〜(3)のいずれかに記載の耐ブリスター粘着シート、
(5)前記粘着剤組成物がさらに架橋剤を含むものである上記(1)〜(4)のいずれかに記載の耐ブリスター粘着シート、
(6)前記架橋剤がポリイソシアネート化合物である上記(5)に記載の耐ブリスター粘着シート、
(7)前記粘着剤組成物が光重合開始剤を含む上記(1)〜(6)のいずれかに記載の耐ブリスター粘着シートを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の耐ブリスター粘着シートを用いることにより、各種プラスチック成形品の表面に貼付した場合、膨れや浮きなどのブリスターの発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の耐ブリスター粘着シートに用いられる基材としては、材質としては、特に限定されず各種のものを用いることができる。たとえば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネートなどがあげられる。これらのなかでも、耐候性、強度などの点から、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルが好ましい。
基材の厚さは、特に制限されないが、薄型軽量化と加工性の点から5〜200μm程度、好ましくは10〜100μmである。
【0009】
また、基材としては、遮光性あるいは光反射性を有する基材であっても良いし、透明基材であってもよい。
基材は遮光性及び光反射性を考慮して着色基材フィルム等にする場合には、各着色に応じた顔料等が配合される。また、たとえば、顔料、バインダーおよび溶剤を含有する配合物を、基材上に塗工することにより基材上に着色層を形成することができる。バインダーとしては、着色層の形成に用いられるものを特に制限なく使用することができる。たとえば、ポリウレタン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素メラミン樹脂、ポリメタクリル酸メチルなどが例示される。溶剤は、顔料、バインダーの種類に応じて適宜に選択される。顔料は、着色層に応じた顔料が適宜に選択される。
着色層の厚さは、通常、総厚で、1〜10μm程度が好ましい。印刷法により作製される各着色層の厚さは、通常、1〜2μm程度が好ましい。なお、印刷法による着色層の形成方法は、グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷などの従来より着色層の形成に採用されている手段を特に制限なく採用できる。
【0010】
また、前記以外の着色層の形成方法としては、金属蒸着法により行なうことができる。金属蒸着層は反射性と遮光性に寄与することから、金属蒸着法により作製されたものが好ましい。金属蒸着法によって作製された層は、印刷法によって作製されたものに比較して、表面平滑性、層の緻密性がよいので反射率、遮光率をともに改良できる点で有利である。
【0011】
金属蒸着法としては、真空蒸着法、物理スパッタリング法、化学スパッタリング法等を採用することができるが、これらの中で真空蒸着法が一般に採用される。金属蒸着層の形成には、反射率の高い金属材料が好適に用いられる。金属材料としては、銀、アルミニウム、金、ロジウム、銅、チタン等があげられる。これらのなかでも銀、アルミニウムが好ましい。金属蒸着層の厚みは30〜100nm程度、好ましくは40〜70nmである。なお、金属蒸着膜は気体透過性を低下させるので、膨れやブリスターが発生し易くなる。したがって、本発明では、金属蒸着膜を施した基材を用いた場合、効果をより発揮させることができる。
【0012】
次に、本発明の耐ブリスター粘着シートにおける粘着剤層の形成に用いる粘着剤組成物について説明する。
本発明で使用する炭素数1〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル(a)としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどが挙げられる。これらの中で(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチルがより好ましい。
これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
本発明で使用する官能基を有する共重合可能な単量体(b)としては、(メタ)アクリル酸、β-カルボキシエチルアクリレート、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸および無水マレイン酸などのようなカルボキシル基を有するモノマー、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、クロロ-2-ヒドロキシプロピルアクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートおよびアリルアルコールなどの水酸基含有モノマー、アミノメチル(メタ)アクリレート、モノメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのアミノ基を含有するモノマー、アクリルアミド、メチロール(メタ)アクリルアミド、メトキシエチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有モノマー、メタクリロキシプロピルメトキシシランなどのアルコキシシラン含有モノマーおよびアセトアセトキシエチル(メタ)アクリレートなどのアセトアセチル基を有するモノマーなどを挙げることができる。
これらのモノマーの中でカルボキシル基を有するモノマーおよび水酸基含有モノマーが好ましい。これらは単独であるいは組み合わせて使用することができる。
【0014】
官能基を有する共重合可能な単量体(b)は単量体混合物中0.5〜20質量%使用され、好ましくは1〜10質量%使用される。0.5質量%未満では、後で述べる置換基を有する不飽和基含有化合物(c)の使用量を少なくする必要があり、活性エネルギー線を照射することによる粘着性の発現が不十分となる。20質量%を超えると、後で述べる不飽和基含有化合物(c)の使用量を増やした場合は粘着性が低くなり過ぎたり、溶剤への溶解性が低下するので好ましくない。また、不飽和基含有化合物(c)の使用量を減らした場合は、共重合体に残存する官能基が多くなり、粘着剤の耐水性が悪くなる場合があるので好ましくない。
【0015】
本発明における(メタ)アクリル酸エステル共重合体は前記成分(a)と(b)以外に、その他のビニル系モノマーを共重合させても良く、その他のビニル系モノマーとしては、スチレン、メチルスチレン及びビニルトルエン等の芳香族ビニルモノマー、酢酸ビニル、塩化ビニル、(メタ)アクリロニトリルなどを挙げることができる。これらは単独であるいは組み合わせて使用することができる。
【0016】
本発明においては、この(メタ)アクリル酸エステル共重合体は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明における(メタ)アクリル酸エステル共重合体の調製は、不活性な有機溶媒の存在下または不存在下、常法により行うことができる。不活性な有機溶媒としては、アセトン、酢酸エチル、トルエン等を挙げることができる。アルコールやグリコール類のような水酸基を有する有機溶媒は使用することはできない。重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド等を挙げることができる。重合条件に関しても特に限定されず、通常50〜90℃で2〜30時間の条件で行われる。
本発明における上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、その共重合形態については特に制限はなく、ランダム、ブロック、グラフト共重合体のいずれであってもよい。
上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体の重量平均分子量は30万〜120万であり、40万〜80万がより好ましい。共重合体の重量平均分子量はゲル・パーミエイション・クロマトグラフィーにより、ポリスチレンを標準試料として求めることができる。重量平均分子量が30万未満では、耐ブリスター性が低下し、120万を越えると、高粘度となり、塗工性が低下するため、多量の溶剤を使用しなければならず、生産性が低下するという製造上の問題が生じる。
【0017】
次に、官能基と反応する置換基を有する不飽和基含有化合物(c)について述べる。
成分(c)を前記共重合体の側鎖に存在する成分(b)に由来するカルボキシル基や水酸基のような官能基と反応させることにより同共重合体の側鎖に不飽和基が形成される。
成分(c)としては、(メタ)アクリロイルオキシメチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルイソシアネートのような不飽和基含有モノイソシアネート化合物やグリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートのような不飽和基含有鎖状または脂環式モノエポキシ化合物などが挙げられる。
【0018】
次に、前記共重合体の側鎖に存在する成分(b)に由来するカルボキシル基や水酸基のような官能基と成分(c)である不飽和基含有イソシアネート化合物やエポキシ化合物等の反応について述べる。
成分(c)の使用量は、化学当量基準で前記共重合体中の(b)の使用量よりあまり多くならないようにするのが好ましい。その理由は、成分(c)の使用量が多すぎると活性エネルギー線照射前では未反応の不飽和基含有イソシアネート化合物(イソシアネート基)やエポキシ化合物(エポキシ基)等が残存することになり粘着剤(粘着シート)の経時安定性が悪くなることがあるからである。特に、後で述べるように、保持力を増加させる目的で架橋剤を添加する場合は官能基が残っていた方が好ましい。
この反応後に前記共重合体中の成分(b)に由来するカルボキシル基や水酸基のような官能基が残存している場合は、後で述べる任意成分である架橋剤を添加して保持力を増大させて粘着性を向上させることもできる。
【0019】
前記共重合体の製造を有機溶媒の存在下で行なった場合(たとえば、溶液重合の場合など)、得られる共重合体の有機溶媒溶液中に成分(c)を加えて反応させることができる。前記共重合体の製造を有機溶媒の不存在下で行なった場合(たとえば、塊状重合の場合など)、通常は、共重合体を有機溶媒に溶解させて有機溶媒溶液を調製してその中に成分(c)を加えて反応させることができる。重合時の安定性の観点から前者が好ましい。
【0020】
前記のように調製された活性エネルギー線硬化性(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含む粘着剤組成物には架橋剤を添加しても良い。
架橋剤としては、アクリル系共重合体中の官能基と反応性を有する多官能化合物を用いることができる。この際用いる多官能性化合物としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、ポリエポキシ化合物、ポリアミン化合物、メラミン化合物、アジリジン化合物、ヒドラジン化合物、アルデヒド化合物、オキサゾリン化合物、金属アルコキシド化合物、金属キレート化合物、金属塩およびアンモニウム塩、反応性フェノール樹脂などの中から、アクリル系共重合体中の官能基の種類に応じて一種または二種以上を適宜選択して用いることができる。
これらの中でポリイソシアネート化合物が好ましい。このような架橋剤を粘着剤組成物に配合する場合、架橋剤の配合量は、共重合体100質量部に対して、0.1〜10質量部程度とするのが好ましい。
【0021】
本発明においては、上記の反応で得られた活性エネルギー線硬化性(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含む粘着剤組成物に活性エネルギー線を照射することによって耐ブリスター性が得られる。
活性エネルギー線としては、例えば、紫外線、電子線、レーザー光線、α線、β線、γ線、X線が挙げられるが、管理のし易さ、汎用性等の観点から紫外線が最も好ましい。
紫外線を照射する際には、光重合開始剤を添加してもよく、例えば、アセトフェノン、2,2−ジエトキシベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジフェニサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、ベンジルジメチルケタール、ジベンジル、ジアセチル、1−クロルアントラキノン、2−クロルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパノン−1,2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1,2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4,6−トリメチルベンジルジフェニル−フォスフィンオキサイド等の低分子量重合開始剤、オリゴ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン}等のオリゴマー化された重合開始剤などが挙げられる。これらを2種以上併せて用いてもよい。
このような光重合開始剤の添加量は、上記硬化性成分である活性エネルギー線硬化性(メタ)アクリル酸エステル共重合体、すなわち、分子量30万〜120万である(メタ)アクリル酸エステル共重合体と成分(c)との反応物100質量部に対し、0.01〜5質量部程度とするのが好ましく、0.1〜3質量部程度とするのがより好ましい。
【0022】
電子線照射により硬化させる場合には、前記重合開始剤の添加は不要であるが、この場合、酸素の存在により硬化反応が著しく阻害されるため、窒素等の不活性ガス雰囲気下で行う必要がある。基材に粘着剤組成物を塗工して粘着剤層を形成後、後で述べる剥離シートを貼付した状態でも、また、剥離シートを剥離して粘着シートを被着体に貼付した後に行なってもよい。
【0023】
また、上記粘着剤組成物には、上記光重合開始剤ともに、光重合促進剤を用いることもでき、このような光重合促進剤としては、例えば、4,4'−ビス(ジエチルアミン)ベンゾフェノン、N−ジメチルアミノ安息香酸エチル、ジメチルエタノールアミン、グリシン等が挙げられる。なお、このような光重合開始剤および光重合促進剤は、保存時の安定性を向上するために、マイクロカプセル化して添加することもできる。
さらに、必要に応じて他の添加剤として、例えば、紫外線吸収剤、粘着付与剤、軟化剤(可塑剤)、充填剤、老化防止剤、顔料、染料、シランカップリング剤等の各種添加剤を添加することができる。
【0024】
粘着付与剤としては、例えば、ロジンおよびその誘導体、ポリテルペン、テルペンフェノール樹脂、クマロン−インデン樹脂、石油系樹脂、スチレン樹脂、キシレン樹脂が挙げられる。
軟化剤としては、例えば、液状ポリエーテル、グリコールエステル、液状ポリテルペン、液状ポリアクリレート、フタル酸エステル、トリメリット酸エステル等が挙げられる。
【0025】
以上のような硬化性成分を主成分とする粘着剤層を基材上に形成させるためには、例えばブレードコータ、ナイフコータ、ロールコータ、リバースロールコータ、バーコータ、カーテンコータ、ダイスロットコータ、グラビアコータ、およびリップコータ等の装置を適宜に用いることができる。粘着剤層の厚さ(乾燥膜厚さ)は10〜50μm程度、好ましくは15〜35μm程度である。
【0026】
本発明の耐ブリスター粘着シートは被着体に貼着する前の段階では、粘着剤層側に剥離シートを貼付してもよい。
使用する剥離シートは、公知のいずれのものを使用してもよく、例えば、剥離シートの基材の粘着剤層との接合面に剥離剤コート層、例えばシリコーン層が形成されたものを用いることができる。剥離シートの基材としては、例えば、グラシン紙のような紙材やポリエステル等よりなる樹脂フィルムが挙げられる。
【0027】
また、本発明の耐ブリスター粘着シートは、特に用途は限定されないが、光透過性を必要とする場合は実質的に透明または半透明であることが好ましい。これにより、例えば光学機器のディスプレイや車窓等に貼着しても視認性が損なわれない。
【実施例】
【0028】
以下、本発明を実施例および比較例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
<評価方法または試験方法>
(1)保持力
JIS Z−0237により、40℃、荷重9.8Nで測定し、落下するまでの秒数を示した。
(2)耐ブリスター試験
各例で得られた耐ブリスター粘着シートおよび比較用の粘着シートから剥離シートを剥離した後、透明ポリカーボネート板(三菱ガス化学社製、ユーピロンシートNF-2000VU)にスキージを用いて接着させる。30分間放置後、90℃の熱風乾燥機中に1時間放置して加熱促進後のブリスターの発生状態を観察して下記の基準で評価した。
○:ブリスターが見られない
△:部分的にブリスターが見られる。
×:全面的にブリスターが見られる。
〔実施例1〕
【0029】
窒素雰囲気下において、攪拌機、コンデンサー、温度計、及び窒素導入管を取り付けた反応装置にn-ブチルアクリレート90質量部と、アクリル酸10質量部とアゾビスイソブチロニトリル(重合開始剤)0.25質量部とを酢酸エチル中にて60℃で24時間反応させて、重量平均分子量が40万のアクリル酸エステル共重合体溶液(固形分濃度40質量%)を得た。得られたアクリル酸エステル共重合体にメチルエチルケトンを加え、固形分濃度を35質量%とした後、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを5質量部添加し、50℃で12時間反応させて、活性エネルギー線硬化性アクリル酸エステル共重合体溶液を得た。
得られた活性エネルギー線硬化性アクリル酸エステル共重合体溶液100質量部に対して、光重合開始剤としてチバスペシャルティケミカルズ社製「イルガキュア651(固形分100質量%)」を1質量部を溶解させて、固形分濃度が30質量%になるように調整し、粘着剤層用の塗工剤(粘着剤組成物)とした。
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ:38μm)の片面に軽剥離型のシリコーン樹脂で剥離処理した剥離シート(リンテック社製、SP−PET3801)及び、基材としてポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ:50μm)の片面にアルミ蒸着処理をした蒸着フィルム(東レフィルム加工社製、メタルミー#50)の2種類のフィルムを用意した。
上記で得られた粘着剤層用塗工剤をナイフコーターによって軽剥離型剥離シートの剥離処理面に塗工して90℃で1分間乾燥させ、厚さ15μmの粘着剤層を形成し、その粘着剤層の表面に基材である蒸着フィルムの蒸着処理面を貼り合わせて粘着シートとした。
この粘着シートの剥離シート側から紫外線を照射〔リンテック(株)製、装置名Adwill RAD−2000m/8を使用、照度310mW/cm2、光量300mJ/cm2〕して耐ブリスター粘着シートを作製した。
【0030】
〔実施例2〕
光重合開始剤とともに、ポリイソシアネート化合物からなる架橋剤(東洋インキ製造社製、BHS8515、固形分濃度35質量%)1質量部を添加した以外は、実施例1と同様にして耐ブリスター粘着シートを作製した。
【0031】
〔実施例3〕
アクリル酸の替わりにアクリル酸2−ヒドロキシエチルを使用して得られた重量平均分子量40万のアクリル酸エステル共重合体の溶液以外は、実施例2と同様にして、耐ブリスター粘着シートを作製した。
【0032】
〔実施例4〕
ポリイソシアネート化合物からなる架橋剤の替わりに、エポキシ系架橋剤(綜研化学社製、E−AX、固形分5質量%)1質量部を使用した以外は実施例2と同様にして、耐ブリスター粘着シートを作製した。
【0033】
〔比較例1〕
2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート及び光重合開始剤を使用しなかった以外は、実施例2と同様にして、比較用の粘着シートを作製した。
【0034】
〔比較例2〕
重量平均分子量が20万のアクリル酸エステル共重合体を使用した以外は、実施例2と同様にして、比較用の粘着シートを作製した。
【0035】
〔比較例3〕
2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート及び光重合開始剤を使用しない以外は、実施例3と同様にして、比較用の粘着シートを作製した。
【0036】
〔比較例4〕
2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート及び光重合開始剤を使用しない以外は、実施例4と同様にして、比較用の粘着シートを作製した。
【0037】
〔比較例5〕
窒素雰囲気下において、攪拌機、コンデンサー、温度計、及び窒素導入管を取り付けた反応装置にn-ブチルアクリレート90質量部と、アクリル酸10質量部とアゾビスイソブチロニトリル(重合開始剤)0.25質量部とを酢酸エチル中にて60℃で24時間反応させて、質量平均分子量が40万のアクリル酸エステル共重合体溶液(固形分濃度40質量%)を得た。得られたアクリル酸エステル共重合体溶液100質量部に対して、ポリイソシアネート化合物からなる架橋剤(東洋インキ製造社製、BHS8515、固形分濃度35質量%)1質量部と、活性エネルギー線硬化性樹脂(共栄社化学、ライトアクリレートDCP−A、固形分濃度100質量%)10質量部とを溶解させて、固形分濃度が30質量%になるように調整し、粘着剤層用の塗工剤とし、それ以外は実施例2と同様にして比較用の粘着シートを作製した。
【0038】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0039】
膨れや浮きなどのブリスターの発生を防止した優れた耐ブリスター粘着シートとして各種プラスチック成形品の表面に貼付して用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と粘着剤層を有する粘着シートにおいて、前記粘着剤層が、炭素数1〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル(a)を主成分とし、官能基を有する共重合可能な単量体(b)を混合物中0.5〜20質量%含む単量体混合物を重合してなる重量平均分子量30万〜120万の(メタ)アクリル酸エステル共重合体と、同官能基と反応する置換基を有する不飽和基含有化合物(c)とを反応させてなる活性エネルギー線硬化性(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含む粘着剤組成物に活性エネルギー線を照射することによって得られる粘着剤からなる耐ブリスター粘着シート。
【請求項2】
前記共重合体が溶液重合されたものである請求項1に記載の耐ブリスター粘着シート。
【請求項3】
前記官能基がヒドロキシル基および/またはカルボキシル基である請求項1または2に記載の耐ブリスター粘着シート。
【請求項4】
前記置換基を有する不飽和基含有化合物が(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートである請求項1〜3のいずれかに記載の耐ブリスター粘着シート。
【請求項5】
前記粘着剤組成物がさらに架橋剤を含むものである請求項1〜4のいずれかに記載の耐ブリスター粘着シート。
【請求項6】
前記架橋剤がポリイソシアネート化合物である請求項5に記載の耐ブリスター粘着シート。
【請求項7】
前記粘着剤組成物が光重合開始剤を含む請求項1〜6のいずれかに記載の耐ブリスター粘着シート。

【公開番号】特開2009−185209(P2009−185209A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−27818(P2008−27818)
【出願日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】