説明

耐プラズマ用シール

耐プラズマ性およびシール性の双方に優れ、しかもOリングが真空側の隙間にはみ出すのを防止することを目的とし、そのために、メインシールであるゴム状弾性材製Oリング5のプラズマ照射側に、耐プラズマ性を備えたPTFEよりなるプラズマシール6を設けることにした。両者の併設構造は、装着部材2に設けた装着溝3のプラズマ照射側にこの装着溝3よりも深さの浅い装着溝4を連続して設け、前者の装着溝3にOリング5を装着するとともに後者の装着溝4にプラズマシール6を圧縮した状態で装着したり、あるいは、装着部材に設けた装着溝にOリングを装着するとともに同じ装着溝のプラズマ照射側にプラズマシールを圧縮した状態で装着したりするのが好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、密封装置の一種である耐プラズマ用シールに係り、更に詳しくは、メインシールゴムパッキンのプラズマ側にプラズマシールを併設した構造の耐プラズマ用シールに関するものである。本発明のシールは、半導体産業、液晶産業またはセンサー産業等の電子産業等でプラズマを使用する分野に用いられる。
【背景技術】
エッチング、アッシング、プラズマCVD等の半導体を製造する装置でプラズマを使用する装置のシール部分には、従来から、第7図に示すように、プラズマに対する耐性を備えたFFKMゴムまたはFKMゴムよりなるゴム製Oリング51が使用されている。上記装置はプラズマを照射して半導体デバイスを製造するものであって、プラズマの照射が真空雰囲気で行なわれることから装置の内部を大気圧と遮断する必要があり、よってこのために耐プラズマ用シールが用いられている。
しかしながら、プラズマはそのエネルギーが非常に強いことから、このプラズマの影響を受けて上記耐性を備えたFFKMやFKM等のゴム製Oリング51であっても第8図に示すように削られ、場合によっては損失してしまい、シール機能が低下することがある。また、損失したOリング片が異物となって半導体デバイスのパーティクルの原因となることから、半導体デバイスの機能を著しく低下させることがある。特に近年は、半導体製造におけるプラズマ条件が徐々に厳しくなってきており(プラズマ周波数の上昇)、これに対応すべく耐プラズマ性およびシール性の双方に優れたシールの開発が求められている。また、上記Oリング51の単体よりなるシール構造によると、Oリング51が真空側の隙間52にはみ出すことによって損傷する虞もある。
また、プラズマに対する耐性のあるものとして、上記ゴム製Oリング51に代えて、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)よりなるシールを用いることがあるが、PTFEはFFKMやFKMより弾性体としての性能が劣るために大気圧に対するシール性が余り良くない。
また、従来、耐プラズマ性シールとして特開2002−161264号公報に記載されたものや、特開2000−34466号公報に記載されたものが知られているが、これらの従来技術は、耐プラズマ性を向上させるべくゴム製シールの組成構造に改良を加えたものであって、本発明のようにメインシールゴムパッキンのプラズマ側にプラズマシールを併設するものではない。
【特許文献1】 特開2002−161264号公報
【特許文献2】 特開2000−34466号公報
本発明は以上の点に鑑みて、耐プラズマ性およびシール性の双方に優れ、しかもパッキン/Oリングが真空側の隙間にはみ出すのを防止することができる耐プラズマ用シールを提供することを目的とする。
【発明の開示】
上記目的を達成するため、本発明の請求の範囲第1項による耐プラズマ用シールは、メインシールとしてのゴム状弾性材製Oリングのプラズマ照射側に、耐プラズマ性を備えたPTFEよりなるプラズマシールを設けたことを特徴とするものである。
また、本発明の請求の範囲第2項による耐プラズマ用シールは、メインシールとしてのゴム状弾性材製パッキンのプラズマ照射側に、耐プラズマ性を備えた材質よりなるプラズマシールを設けたことを特徴とするものである。
また、本発明の請求の範囲第3項による耐プラズマ用シールは、上記した請求の範囲第1項または第2項の耐プラズマ用シールにおいて、装着部材に設けたパッキン/Oリング装着溝のプラズマ照射側に、前記パッキン/Oリング装着溝よりも深さの浅いプラズマシール装着溝を連続して設け、前記パッキン/Oリング装着溝にパッキンまたはOリングを装着するとともに前記プラズマシール装着溝にプラズマシールを圧縮した状態で装着することを特徴とするものである。
更にまた、本発明の請求の範囲第4項による耐プラズマ用シールは、上記した請求の範囲第1項または第2項の耐プラズマ用シールにおいて、装着部材に設けたパッキン/Oリング装着溝にパッキンまたはOリングを装着するとともに同じ装着溝のプラズマ照射側にプラズマシールを圧縮した状態で装着することを特徴とするものである。
上記構成を備えた本発明の請求の範囲第1項によるシールにおいては、メインシールとしてのゴム状弾性材製Oリングのプラズマ照射側に、耐プラズマ性を備えたPTFEよりなるプラズマシールが設けられているために、メインシールであるOリングによって大気圧をシールしてその流入を抑えるとともに、プラズマシールによってプラズマをシールしてプラズマがOリングに作用するのを抑えることが可能となる。Oリングおよびプラズマシールはこのように併設されて機能を分担するために、Oリングにはシール性に適した材質、プラズマシールには耐プラズマ性に適した材質をそれぞれ選択使用することが可能となる。また、Oリングのプラズマ照射側すなわち真空側に配置されるプラズマシールがOリングに対するバックアップリングとして作用する。
また、上記構成を備えた本発明の請求の範囲第2項によるシールにおいては、メインシールとしてのゴム状弾性材製パッキンのプラズマ照射側に、耐プラズマ性を備えた材質よりなるプラズマシールが設けられているために、メインシールであるパッキンによって大気圧をシールしてその流入を抑えるとともに、プラズマシールによってプラズマをシールしてプラズマがパッキンに作用するのを抑えることが可能となる。パッキンはOリングを含むその上位概念であってその断面形状を限定しないものである。またパッキンにはシール用のリップやビード等を有しているものも含まれる。パッキンおよびプラズマシールはこのように併設されて機能を分担するために、パッキンにはシール性に適した材質、プラズマシールには耐プラズマ性に適した材質をそれぞれ選択使用することが可能となる。また、パッキンのプラズマ照射側すなわち真空側に配置されるプラズマシールがパッキンに対するバックアップリングとして作用する。
上記パッキン/Oリングとプラズマシールの組み合わせよりなるシールは、装着部材に予め設けた装着溝に装着され、パッキン/Oリングをプラズマから保護すべくパッキン/Oリングのプラズマ照射側にプラズマシールが装着される。装着の構造としては、請求の範囲第3項に記載したように、装着部材に設けたパッキン/Oリング装着溝のプラズマ照射側にこのパッキン/Oリング装着溝よりも深さの浅いプラズマシール装着溝を連続して設けて、前者のパッキン/Oリング装着溝にパッキン/Oリングを装着するとともに後者のプラズマシール装着溝にプラズマシールを装着するのが好適であり、このようにすると、パッキン/Oリングがパッキン/Oリング装着溝内面の側壁部に係合するとともにプラズマシールがプラズマシール装着溝内面の側壁部に係合するために、パッキン/Oリングまたはプラズマシールが真空側に吸引されて移動してしまうのを防止することが可能となる。また、装着の構造は、請求の範囲第4項に記載したように、装着部材に設けたパッキン/Oリング装着溝にパッキン/Oリングを装着するとともに同じ装着溝のプラズマ照射側にプラズマシールを装着するようにしても良く、何れにしても装着時にプラズマシールを装着部材と相手部材との間で圧縮するようにすると、このプラズマシールをプラズマが一層通過しにくくなるために、プラズマシールによるプラズマ遮断効果を高めることが可能となる。
尚、本件出願には、以下の技術的事項が含まれる。
すなわち、上記目的を達成するため、本件出願が提案する一の耐プラズマ用シールは以下の内容を備えている。
(1)請求の範囲第1項および第3項関連・・・
(1−1)プラズマに対して耐性のあるPTFE製プラズマシールをプラズマがくる位置に設置し、その後ろ側にゴム製Oリングを設置する。これによりPTFEがプラズマを遮断するため、Oリングがプラズマ照射エネルギーにより劣化、損失するのを抑えることができる。また、PTFEの後方(圧力的に後方)に弾性のあるゴム製Oリングが配置されるため、大気圧をシールし、真空シール性を確保することができる。
(1−2)PTFE製プラズマシールは圧縮して使用する。これによりプラズマがPTFEを通過しにくくなるため、プラズマ遮断効果を高めることができる。
(1−3)PTFE製プラズマシールはシールないし装置の径方向すなわちプラズマ照射方向に沿って長い形状とする。これによりプラズマがOリングに当たる迄の距離が長くなるため、プラズマ遮断効果を高めることができる。
(1−4)PTFE製プラズマシールは断面平板形状とする。PTFEを圧縮するには大きな荷重が必要であるところ、PTFEを平板形状とすると、圧縮代が少なく圧縮荷重を小さくすることができる。また、溝スペースを小断面化することもできる。
(1−5)また、PTFE製プラズマシールを断面丸甲型の形状としてPTFEにバネ力が発生する構造としても良い。樹脂を圧縮して使用する場合、樹脂特有の圧縮クリープの発生が懸念されるが、PTFEを丸甲型の形状としてバネ力を発生させることにより、クリープの発生を抑えることができる。
(1−6)PTFE製プラズマシールは真空側の壁に密接させる。これによりPTFEが真空側に吸引されるのを防止し、負圧下でも安定した状態に保つ。
(1−7)OリングはOリングの溝に入れる。これによりOリングが真空側に吸引されるのを防止し、負圧下でも安定した状態に保つ。
(2)請求の範囲第1項および第4項関連・・・
(2−1)プラズマに対して耐性のあるPTFE製プラズマシールをプラズマがくる位置に設置し、その後ろ側にゴム製Oリングを設置する。これによりPTFEがプラズマを遮断するため、Oリングがプラズマ照射エネルギーにより劣化、損失するのを抑えることができる。また、PTFEの後方(圧力的に後方)に弾性のあるゴム製Oリングが配置されるため、大気圧をシールし、真空シール性を確保することができる。
(2−2)PTFE製プラズマシールは圧縮して使用する。これによりプラズマがPTFEを通過しにくくなるため、プラズマ遮断効果を高めることができる。
(2−3)PTFE製プラズマシールは筒状形状とし、これをOリングとともに装着溝に装着する。これにより溝を共用化することができる。
(2−4)また、PTFE製プラズマシールを断面クサビ型の形状としてPTFEにバネ力が発生する構造としても良い。プラズマシールを圧縮して使用する場合、圧縮クリープの発生が懸念されるが、PTFEをクサビ型の形状としてバネ力を発生させることにより、クリープの発生を抑えることができる。
(2−5)PTFE製プラズマシールは真空側の壁に密接もしくは若干伸張(拡張)させる。これによりPTFEが真空側に吸引されるのを防止し、負圧下でも安定した状態に保つ。
(2−6)OリングはPTFEとともにOリングの溝に入れる。これによりOリングが真空側に吸引されるのを防止し、負圧下でも安定した状態に保つ。
(2−7)また、PTFEが断面クサビ型の場合、OリングはPTFEの凹み側に密接もしくは若干伸張(拡張)させるようにする。これによりOリングにPTFEのバネ力を支援させる。
(3)耐プラズマ性向上を目的として、パッキン/OリングにPTFEバックアップリングを付与する。パッキン/Oリングが真空シールを担当し、PTFEバックアップリングがプラズマ遮断を担当することになる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の第一実施例に係る耐プラズマ用シールの要部断面図である。
第2図は、本発明の第二実施例に係る耐プラズマ用シールの要部断面図である。
第3図は、本発明の第三実施例に係る耐プラズマ用シールの要部断面図である。
第4図は、本発明の第四実施例に係る耐プラズマ用シールの要部断面図である。
第5図は、プラズマ照射評価試験結果を示すグラフ図である。第6図は、プラズマ照射評価試験結果を示す写真図である。第7図は、従来例に係る耐プラズマ用シールの要部断面図である。第8図は、同シールの不具合発生状態を示す写真図である。
【発明を実施するための最良の形態】
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
第一実施例・・・
第1図は、本発明の第一実施例に係る耐プラズマ用シール1の断面を示している。当該実施例に係るシール1は、半導体製造装置、一層具体的には半導体用真空ポンプの排気部、吸気部もしくはチャンバー部、エッチング、アッシング、プラズマCVD装置の配管部もしくはチャンバー部等に用いられるものであって、以下のように構成されている。
すなわち先ず、当該シール1を装着する装着部材(一方のハウジング)2の端面部2aに環状のOリング装着溝3が設けられており、このOリング装着溝3のプラズマ照射側(内径側、図上左側)に、このOリング装着溝3よりも深さの浅い環状のプラズマシール装着溝4が連続して設けられている。装着溝3,4は何れも断面略四角形であって、そのプラズマ照射側の内面に、上記端面部2aに対して直角をなす側壁部3a,4aが設けられている。
上記Oリング装着溝3に当該シール1のメインシールであるOリング5が装着されており、一方、プラズマシール装着溝4にプラズマシール6が装着されている。
Oリング5は、所定のゴム状弾性材、例えばFKMゴム、一層具体的には無機成分レス耐プラズマFKMゴムによって断面円形状に形成されており、図示した状態から装着部材2が相手部材(他方のハウジング、図示せず)と組み付けられると、両部材間で図上上下方向に圧縮される。
プラズマシール6は、所定のPTFE、例えば無充填タイプPTFEによって環状の平板形状に形成されており、その断面形状をプラズマ照射方向に沿って長手方向を配置した図上横長の長方形状に形成されている。このプラズマシール6も、図示した状態から装着部材2が相手部材と組み付けられると、両部材間で図上上下方向に圧縮される。
上記構成のシール1は、上記半導体製造装置等において、外部大気圧が装置内部に流入しないようにこれをシールするものであって、上記構成により以下の作用効果を奏する点に特徴を有している。
▲1▼装着部材2および相手部材間に圧縮した状態で装着されるゴム状弾性材製のOリング5のシール作用によって、大気圧が装置内部に流入するのを防止することができる。
▲2▼Oリング5のプラズマ照射側に耐プラズマ性を備えたPTFEよりなるプラズマシール6が設けられているために、プラズマシール6が装置内部のプラズマを遮断する。したがって、Oリング5がプラズマ照射エネルギーに晒されて劣化したり損失したりするのを抑えることができる。
▲3▼プラズマシール6が装着部材2および相手部材間で圧縮した状態で装着されるために、圧縮されない場合と比較して、プラズマがプラズマシール6を一層通過しにくい。したがってプラズマ遮断効果が大きいために、Oリング5を一層有効に保護することができる。
▲4▼プラズマシール6がプラズマ照射方向に沿って長い断面長方形状に形成されているために、プラズマがOリング5に当たる迄の距離が長い。したがってプラズマ遮断効果が大きいために、Oリング5を一層有効に保護することができる。
▲5▼一般にPTFEを圧縮するには大きな荷重が必要とされるが、プラズマシール6が平板形状に薄く形成されているために、圧縮代が少なく圧縮荷重が小さくて済む。したがって、PTFEよりなるプラズマシール6を比較的容易に圧縮することができる。また、装着溝4の断面積が小さくて済むために、その形成が容易である。
▲6▼装置内部が真空状態となるとプラズマシール6およびOリング5が吸引されて移動したり傾いたり捩れたりする虞があるが、プラズマシール6が装着溝4の側壁部4aに係合するとともにOリング5が装着溝3の側壁部3aに係合してそれぞれ安定保持されるために、その虞を無くすことができる。
▲7▼Oリング5のプラズマ照射側すなわち真空側にプラズマシール6が配置されているために、このプラズマシール6がOリング5に対するバックアップリングとして作用する。したがって、Oリング5が真空側の隙間(第1図におけるプラズマシール6の図上左側に形成される装着部材2および相手部材間の隙間)にはみ出して破損するのを防止することができる。
▲8▼プラズマシール6の材質として特に無充填タイプPTFEが用いられ、この無充填タイプPTFEがパーティクルの原因となる無機成分を含まないものであるために、プラズマ照射によってプラズマシール6が損傷してもパーティクルの発生を抑えることができる。
▲9▼また、Oリング5の材質として特に無機成分レス耐プラズマFKMゴムが用いられ、この無機成分レス耐プラズマFKMゴムが無充填タイプPTFEと同様にパーティクルの原因となる無機成分を含まないものであるために、Oリング5が損傷してもパーティクルの発生を抑えることができる。
第二実施例・・・
上記第一実施例では、プラズマシール6が平板形状で断面横長の長方形状であったが、これを断面丸甲形状とすると、プラズマシール6に装着時のバネ性を持たせることができる。
すなわち、第2図に示すように、プラズマシール6は、所定のPTFE、例えば無充填タイプPTFEによって形成されており、その断面形状をプラズマ照射方向に沿って長手方向を配置した図上横長の丸甲形状に形成されている。丸甲形状はいわゆる円弧形状であって、プラズマシール6はその溝底側の面(図上下面)6aを凹状の断面円弧形、相手部材側の面(図上上面)6bを凸状の断面円弧形に形成されている。
このプラズマシール6が図示した状態から装着部材2および相手部材間に挟着されると平たく押し伸ばされように弾性変形し、その弾性復帰力によって両部材に強く押し付けられる。バネ力を備えたPTFE製プラズマシール6は、クリープの発生を有効に防止することができる。この第二実施例の他の構成および他の作用効果は、上記第一実施例と同じである。
第三実施例・・・
第3図は、本発明の第三実施例に係る耐プラズマ用シール1の断面を示している。当該実施例に係るシール1は、半導体製造装置、一層具体的には半導体用真空ポンプの排気部、吸気部もしくはチャンバー部、エッチング、アッシング、プラズマCVD装置の配管部もしくはチャンバー部等に用いられるものであって、以下のように構成されている。
すなわち先ず、当該シール1を装着する装着部材(一方のハウジング)2の端面部2aに環状のOリング装着溝3が設けられている。装着溝3は断面略四角形であって、そのプラズマ照射側の内面に、上記端面部2aに対して直角をなす側壁部3aが設けられている。
上記Oリング装着溝3に当該シール1のメインシールであるOリング5が装着されており、同じ装着溝3のプラズマ照射側(内径側、図上左側)にプラズマシール(バックアップリングとも称する)6が装着されている。
Oリング5は、所定のゴム状弾性材、例えばFKMゴム、一層具体的には無機成分レス耐プラズマFKMゴムによって断面円形状に形成されており、図示した状態から装着部材2が相手部材(他方のハウジング、図示せず)と組み付けられると、両部材間で図上上下方向に圧縮される。
プラズマシール6は、所定のPTFE、例えば無充填タイプPTFEによって円筒形状に形成されており、その断面形状をプラズマ照射方向と直交する方向に沿って長手方向を配置した図上縦長の長方形状に形成されている。このプラズマシール6も、図示した状態から装着部材2が相手部材と組み付けられると、両部材間で図上上下方向に圧縮される。
上記構成のシール1は、上記半導体製造装置等において、外部大気圧が装置内部に流入しないようにこれをシールするものであって、上記構成により以下の作用効果を奏する点に特徴を有している。
▲1▼装着部材2および相手部材間に圧縮した状態で装着されるゴム状弾性材製のOリング5のシール作用によって、大気圧が装置内部に流入するのを防止することができる。
▲2▼Oリング5のプラズマ照射側に耐プラズマ性を備えたPTFEよりなるプラズマシール6が設けられているために、プラズマシール6が装置内部のプラズマを遮断する。したがって、Oリング5がプラズマ照射エネルギーに晒されて劣化したり損失したりするのを抑えることができる。
▲3▼プラズマシール6が装着部材2および相手部材間で圧縮した状態で装着されるために、圧縮されない場合と比較して、プラズマがプラズマシール6を一層通過しにくい。したがってプラズマ遮断効果が大きいために、Oリング5を一層有効に保護することができる。
▲4▼プラズマシール6が円筒形状に形成されてOリング5と同じ装着溝3に装着されているために、装着溝3を共用化することができ、その形成が容易である。
▲5▼装置内部が真空状態となるとプラズマシール6およびOリング5が吸引されて移動したり傾いたり捩れたりする虞があるが、プラズマシール6が装着溝3の側壁部3aに係合するとともにOリング5がプラズマシール6に係合してそれぞれ安定保持されるために、その虞を無くすことができる。
▲6▼Oリング5のプラズマ照射側すなわち真空側にプラズマシール6が配置されているために、このプラズマシール6がOリング5に対するバックアップリングとして作用する。したがって、Oリング5が真空側の隙間(第3図におけるプラズマシール6の図上左側に形成される装着部材2および相手部材間の隙間)にはみ出して破損するのを防止することができる。
▲7▼プラズマシール6の材質として特に無充填タイプPTFEが用いられ、この無充填タイプPTFEがパーティクルの原因となる無機成分を含まないものであるために、プラズマ照射によってプラズマシール6が損傷してもパーティクルの発生を抑えることができる。
▲8▼また、Oリング5の材質として特に無機成分レス耐プラズマFKMゴムが用いられ、この無機成分レス耐プラズマFKMゴムが無充填タイプPTFEと同様にパーティクルの原因となる無機成分を含まないものであるために、Oリンク5が損傷してもパーティクルの発生を抑えることができる。
第四実施例・・・
上記第三実施例では、プラズマシール6が円筒形状で断面縦長の長方形状であったが、これを断面クサビ形状とすると、プラズマシール6に装着時のバネ性を持たせることができる。
すなわち、第4図に示すように、プラズマシール6は、所定のPTFE、例えば無充填タイプPTFEによって形成されており、その断面形状をプラズマ照射方向と直交する方向に沿って長手方向を配置した図上縦長のクサビ形状に形成されている。クサビ形状はいわゆるV字形状であって、プラズマシール6はそのプラズマ照射側の面(図上左面)6cを凸状の断面V字形、大気圧側の面(図上右面)6dを凹状の断面V字形に形成されている(但し、凸状V字の頂部は、側壁部3aに対してプラズマシール6の座りが良いように、端面部2aに対して直角をなす平面状とされている。また、凹状V字の谷底部は、プラズマシール6に対してOリング5が密着するように断面円弧形に形成されている)。
このプラズマシール6が図示した状態から装着部材2および相手部材間に挟着されるとV字の角度を狭めるように弾性変形し、その弾性復帰力によって両部材に強く押し付けられる。バネ力を備えたPTFE製プラズマシール6は、クリープの発生を有効に防止することができる。また、Oリング5がプラズマシール6の凹状V字の谷底部に密着するために、このOリング5によってプラズマシール6のバネ力を増大させることができ(Oリング5がプラズマシール6のV字を曲がりにくくするため)、Oリング5がプラズマシール6から飛び出すのを防止することができる。この第四実施例の他の構成および他の作用効果は、上記第三実施例と同じである。
尚、第一実施例乃至第四実施例においては、樹脂としてのPTFE製プラズマシールについて説明を行ったが、Oリングに対するバックアップリングとしての機能を有していれば、ゴムとしてのPTFE製プラズマシールであっても良い。
更に、本願発明者らは、プラズマ照射評価試験を行なったので、以下にこれを説明する。
すなわち、PTFE(10FF)と耐プラズマ性FKM(F815)とのプラズマ照射後の重量減少比較を行なったところ(プラズマガス:O,CF)、第5図のグラフ図に示す結果を得た。結果は、両ガスともにPTFE(10FF)の重量減少の方が耐プラズマFKM(F815)の重量減少よりも少なく、よって耐久性に優れていることを確認することができた。
また、PTFEに耐プラズマ性FKMを密着させてPTFE側からプラズマ照射したFKMの表面観察と、耐プラズマ性FKMに直接プラズマ照射させたFKMの表面観察とを行なったところ(プラズマガス:O,CF)、第6図の写真図に示す結果を得た。結果は、PTFEの保護膜(板)があれば、対プラズマFKMは劣化しないことを確認することができた。
発明の効果および産業上の利用可能性
本発明は、以下の効果を奏する。
すなわち、上記構成を備えた本発明の請求の範囲第1項によるシールにおいては、メインシールとしてのゴム状弾性材製Oリングのプラズマ照射側に、耐プラズマ性を備えたPTFEよりなるプラズマシールが設けられているために、メインシールであるOリングによって大気圧をシールしてその流入を抑えるとともに、プラズマシールによってプラズマをシールしてプラズマがOリングに作用するのを抑えることができる。したがって、Oリングがプラズマ照射エネルギーに晒されて劣化したり損失したりするのを有効に抑えることができ、耐プラズマ性およびシール性の双方に優れた耐プラズマ用シールを提供することができる。また、Oリングのプラズマ照射側すなわち真空側に配置されるプラズマシールがOリングに対するバックアップリングとして作用するために、Oリングが真空側の隙間にはみ出して破損するのを防止することができる。
また、上記構成を備えた本発明の請求の範囲第2項によるシールにおいては、メインシールとしてのゴム状弾性材製パッキンのプラズマ照射側に、耐プラズマ性を備えた材質よりなるプラズマシールが設けられているために、メインシールであるパッキンによって大気圧をシールしてその流入を抑えるとともに、プラズマシールによってプラズマをシールしてプラズマがパッキンに作用するのを抑えることができる。したがって、パッキンがプラズマ照射エネルギーに晒されて劣化したり損失したりするのを有効に抑えることができ、耐プラズマ性およびシール性の双方に優れた耐プラズマ用シールを提供することができる。また、パッキンのプラズマ照射側すなわち真空側に配置されるプラズマシールがパッキンに対するバックアップリングとして作用するために、パッキンが真空側の隙間にはみ出して破損するのを防止することができる。
また、上記構成を備えた本発明の請求の範囲第3項によるシールにおいては、パッキン/Oリングがパッキン/Oリング装着溝内面の側壁部に係合するとともにプラズマシールがプラズマシール装着溝内面の側壁部に係合するために、パッキン/Oリングまたはプラズマシールが真空側に吸引されるのを防止することができ、パッキン/Oリングまたはプラズマシールを負圧下でも安定した状態に保持することができる。圧縮状態で使用されるプラズマシールは、プラズマ遮断効果の高いものである。
更にまた、上記構成を備えた本発明の請求の範囲第4項によるシールにおいては、プラズマシールが装着溝の側壁部に係合するとともにパッキン/Oリングがこのプラズマシールに係合するために、パッキン/Oリングまたはプラズマシールが真空側に吸引されるのを防止することができ、パッキン/Oリングまたはプラズマシールを負圧下でも安定した状態に保持することができる。圧縮状態で使用されるプラズマシールは、プラズマ遮断効果の高いものである。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
メインシールとしてのゴム状弾性材製Oリング(5)のプラズマ照射側に、耐プラズマ性を備えたPTFEよりなるプラズマシール(6)を設けたことを特徴とする耐プラズマ用シール。
【請求項2】
メインシールとしてのゴム状弾性材製パッキンのプラズマ照射側に、耐プラズマ性を備えた材質よりなるプラズマシールを設けたことを特徴とする耐プラズマ用シール。
【請求項3】
請求の範囲第1項または第2項の耐プラズマ用シールにおいて、
装着部材(2)に設けたパッキン/Oリング装着溝(3)のプラズマ照射側に前記パッキン/Oリング装着溝(3)よりも深さの浅いプラズマシール装着溝(4)を連続して設け、前記パッキン/Oリング装着溝(3)にパッキンまたはOリング(5)を装着するとともに前記プラズマシール装着溝(4)にプラズマシール(6)を圧縮した状態で装着することを特徴とする耐プラズマ用シール。
【請求項4】
請求の範囲第1項または第2項の耐プラズマ用シールにおいて、
装着部材(2)に設けたパッキン/Oリング装着溝(3)にパッキンまたはOリング(5)を装着するとともに同じ装着溝(3)のプラズマ照射側にプラズマシール(6)を圧縮した状態で装着することを特徴とする耐プラズマ用シール。

【国際公開番号】WO2004/038781
【国際公開日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【発行日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−546392(P2004−546392)
【国際出願番号】PCT/JP2003/010088
【国際出願日】平成15年8月7日(2003.8.7)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】