説明

耐久帯電防止性布帛

【課題】布帛の風合いを損なうことなく、十分な帯電防止性能を有し、かつ、長期間の使用においても帯電防止性能が低下することのない耐久帯電防止性布帛を提供する。
【解決手段】本発明は、布帛の表側の少なくとも一部に帯電防止性繊維を含む糸条Aを用い、かつ、布帛の表側の最表面に染み出さない範囲で、帯電防止剤が糸条Aの少なくとも一部と接触するように付着している耐久帯電防止性布帛に関する。前記布帛としては、織編物を用いるのが好ましく、また、前記帯電防止性繊維としては、導電性繊維および/または帯電性繊維であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は帯電防止性布帛に関する。詳しくは、長期間の使用においても帯電防止性能が低下することのない耐久性に優れた帯電防止性布帛に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、強度、堅牢性に優れることから、車両用内装材、インテリア資材、衣料などの様々な分野において合成繊維からなる布帛が使用されているが、合成繊維は繊維の水分保有率が少ないため、乾燥した状況、特に冬場などにおいては、人体との摩擦によって生じた静電気を蓄積しやすいという問題があった。このような問題を解決すべく、帯電防止剤を布帛に吸尽、塗布などの方法で付与することによって帯電防止性能を付与する方法がとられている。しかしながら、長期間の使用により付与した帯電防止剤が脱落してしまい、帯電防止性能が低下してしまうという問題があった。
【0003】
上述の問題を解決するため、帯電防止性能の耐久性を向上させる様々な手法が開示されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、特定構造を有するスルホン酸塩と、特定構造の4級アンモニウム塩と、特定構造のイミダゾニウム塩とからなる制電組成物を含有する帯電防止剤を、パディング処理などで布帛に付与し、上記三成分の相乗効果により耐久性に優れた帯電防止性能を付与する方法が開示されている。この方法によれば、布帛の風合いを損なうことなく帯電防止性能を付与することができる。しかしながら、布帛の最表面に付与した帯電防止剤は摩擦などの影響を受けて脱落しやすいため、十分な耐久性があるとはいえなかった。
【0005】
また、特許文献2には、ポリアルキレングリコール残基を含むポリカチオン化合物、エポキシ化合物および水を含む処理液を、グラビアロールで布帛表面に塗布した後、加熱処理により両化合物を架橋結合させることによって、耐久性の改善された帯電防止性能を有する布帛が開示されている。しかしながら、この方法によれば、帯電防止剤を布帛最表面に薄膜状に塗布するため、特許文献1と同様に、付与した帯電防止剤が表面の摩擦などによって脱落しやすいという問題がある。それとともに、特許文献2によれば、布帛に付与した化合物を架橋結合させるため、布帛の風合いが損なわれるという問題もある。
【0006】
また、帯電防止剤に含有される化合物は、しばしば、界面活性機能をもつ化合物(以下、界面活性剤という)としても公知である。例えば、特許文献1にはスルホン酸塩が、特許文献2にはポリエチレングリコール残基を含む化合物が含有されている。界面活性剤は洗剤の主成分であるように、水に溶けにくい汚れをつつみ込んで溶媒中に拡散させる効果などがある。そのため、帯電防止剤を布帛に用いた場合、特に濃色の布帛に用いた場合には、布帛表面に付与された帯電防止剤がもつ界面活性機能の影響により、摩擦堅牢度が悪くなる、すなわち色落ちや色移りが起こりやすいという問題がある。
【0007】
特許文献3には、極細導電性繊維を含む立毛シートの裏面を、導電性カーボンをはじめとする導電性材料をアクリルあるいはエチレン/塩ビレジンなどに分散させたものでバッキングしてなる制電性立毛シート状物が開示されている。しかしながら、この方法によれば、導電バッキング材に含まれる導電性材料などのゴワゴワした風合いが出てしまい、布帛本来の柔軟な風合いが損なわれてしまうという問題がある。
【0008】
また、特許文献4には、親水性化合物を共重合したポリエステル繊維いわゆる制電性繊維によって帯電防止性能を具備した布帛が開示されている。しかしながら、制電性繊維による帯電防止効果は一般に耐久性はあるものの初期性能が低く、所望の帯電防止性能が得られないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−325076号公報
【特許文献2】特開2000−345471号公報
【特許文献3】特許第3141566号公報
【特許文献4】特開平9−228190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような現状に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、布
帛の風合いを損なうことなく、十分な帯電防止性能を有し、かつ、長期間の使用において
も帯電防止性能が低下することのない耐久帯電防止性布帛を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、布帛の表側の少なくとも一部に帯電防止性繊維を含む糸条Aを用い、かつ、該布帛の表側の最表面に染み出さない範囲で、帯電防止剤が糸条Aの少なくとも一部と接触するように付着している耐久帯電防止性布帛に関する。
【0012】
前記布帛としては、織編物を用いるのが好ましい。
【0013】
前記帯電防止性繊維としては、導電性繊維および/または制電性繊維であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、布帛の風合いを損なうことなく、十分な帯電防止性能を有し、かつ、長期間の使用においても帯電防止性能が低下することのない、耐久帯電防止性布帛を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例12に係る織物の組織図である。
【図2】本発明の実施例14に係る丸編物の組織図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について説明する。
本発明の耐久帯電防止性布帛は、布帛の表側の少なくとも一部に帯電防止性繊維を含む糸条Aを用いた布帛であり、該布帛の表側の最表面に染み出さない範囲で、帯電防止剤が糸条Aの少なくとも一部と接触するように付着している布帛である。
【0017】
本発明において布帛とは織編物をさし、織編物の種類や形態は特に限定されない。
【0018】
布帛の表側とは、布帛が人体などの物体と接触し摩擦が生じる側をさし、例えば、布帛を車両内装材として使用した場合、室内空間と接する側をさす。一方、布帛の裏側とは、表側と相対する側をさす。
【0019】
本発明に用いられる帯電防止性繊維とは、導電性繊維および/または制電性繊維が好ましい。
【0020】
本発明に用いられる導電性繊維とは、ステンレス鋼細線などの金属繊維、合成繊維にニッケルや銅などの導電性素材をメッキした金属メッキ繊維、導電性微粒子を混練した合成樹脂を合成繊維にコーティング被覆した繊維、導電性微粒子を混練した樹脂を繊維形成性樹脂と複合紡糸した繊維、などである。導電性繊維は電気抵抗が低く、容易にコロナ放電を生じる特性があるため、摩擦によって発生した静電気を除去し、よって帯電防止機能を具備するものである。さらに、糸条の状態で導電性能を有しているため、耐久性のある帯電防止性能を得ることができる。なかでも、導電性微粒子を混練した樹脂を繊維形成性樹脂と複合紡糸した繊維を用いることが、加工安定性および耐久性などの観点から好ましい。
【0021】
導電性微粒子としては;チャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サマーブラック、カーボンナノチューブなどの導電性カーボン;銅、白金、金、銀、鉄、亜鉛、クロム、ニッケル、アルミニウムおよびこれらの合金などの金属微粒子;酸化銅、酸化亜鉛、酸化スズ、亜酸化銅、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、酸化インジニウム、酸化チタンなどの導電性金属酸化物微粒子などが挙げられる。中でも導電性金属酸化物微粒子が好ましく、さらには、着色および意匠性などの観点から、酸化チタンがより好ましい。
【0022】
本発明に用いられる制電性繊維とは、親水性化合物を共重合したり、親水性ポリマーを練りこんだりして改質した繊維である。制電性繊維は、吸湿性能により雰囲気中の水分を引き寄せ、水分保有率を向上させることにより、摩擦による静電気の発生を抑制し、よって帯電防止機能を具備するものである。さらに、糸条の状態で吸湿性を有しているため、耐久性のある帯電防止性能を付与することができる。
【0023】
本発明に用いられる帯電防止性繊維としては、帯電防止性、耐久性の観点から、導電性繊維がより好ましい。
【0024】
本発明において、糸条Aに帯電防止性繊維を混合する方法としては特に限定されないが、具体的方法として、混紡、混繊、合撚、交撚などが挙げられる。
【0025】
糸条Aにおける、帯電防止性繊維が占める割合は、3〜100重量%、さらには5〜30重量%であることが好ましい。3重量%未満の場合は、十分な帯電防止効果が得られないおそれがある。
【0026】
また、布帛の表側の最表面における、帯電防止性繊維の断面または側面が露出している割合(以下、露出度という)は、織編物の場合、0.3〜80%、さらには1〜25%であることが好ましい。0.3%未満の場合は、布帛として十分な帯電防止効果が得られないおそれがある。また、80%を超える場合は、風合いが悪くなるおそれがある。
【0027】
前記露出度は、以下のように求めた。
露出度[%]=(SA/SF)×P
ここで、SAは布帛の表側の最表面に露出した糸条Aの総面積であり、SFは布帛の表側の表面積である。また、Pは糸条A中における帯電防止性繊維の割合である。なお、糸条Aの総面積は、糸の繊度および布帛の織/編組織から算出した。
【0028】
本発明における、糸条Aを構成する帯電防止性繊維以外に用いられる繊維としては;ポリエステル、ナイロン、アクリルなどの合成繊維;レーヨンなどの再生繊維;アセテートなどの半合成繊維;綿、絹、羊毛などの天然繊維など、公知慣用の繊維が挙げられ、上述の繊維のうち1種または2種以上を用いてもよい。なかでも、強度、堅牢度の観点からポリエステル繊維が好ましい。
【0029】
本発明における、糸条A以外に用いられる糸条およびこれに用いられる繊維としては、その目的や用途に応じて、上述の糸条Aを構成する帯電防止性繊維以外に用いられる繊維と同じものを用いることができる。
【0030】
さらに本発明の布帛は、布帛の表側の最表面に染み出さない範囲で、帯電防止剤が糸条Aの少なくとも一部と接触するように付着していることが肝要である。帯電防止剤が糸条Aの少なくとも一部と接触するように付着していることにより、糸条Aだけでは不十分だった帯電防止性能の初期性能を向上させることができる。
【0031】
帯電防止剤は、布帛の厚み方向断面において、布帛の最下部からの浸透度が50〜95%の範囲に付着していることが好ましい。浸透度が50%未満の場合、十分な帯電防止の初期性能が得られないおそれがある。一方、95%を超える場合は、濃色の布帛に用いた場合に摩擦堅牢度が悪くなるおそれがあり、また、布帛が部分的に濡れてシミとなったその周辺に色素が集中する現象である「キワづき」や、布帛が金属と接することでサビが生じるおそれがある。
【0032】
本発明に用いられる帯電防止剤としては、吸湿性を向上させることにより静電気の発生を抑制するタイプ(以下、制電性帯電防止剤という)と、電気伝導性物質を付与することにより表面の導電性を増加させ、静電気を除去するタイプ(以下、導電性帯電防止剤という)がある。
【0033】
制電性帯電防止剤の例として、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤を主成分とするものが挙げられる。
各々の具体例としては、ノニオン性界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルジエタノールアマイドなどが、アニオン性界面活性剤としては、アルキルスルホン酸塩、アルキルホスフェートなどが、カチオン性界面活性剤としてはテトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩などが、両性界面活性剤としては、アルキルベタイン、アルキルイミダゾリウムベタインなどが挙げられる。
【0034】
導電性帯電防止剤の例として、イオン性液体、高分子型帯電防止剤、導電性フィラー、金属化合物を主成分とするものが挙げられる。
各々の具体例としては、イオン性液体としては、無機塩の陽イオンや陰イオンを後述する有機物の陽イオンや陰イオンに置き換えたものが挙げられ;陽イオンとして、ピリジニウムイオン、イミダゾニウムイオンといった芳香族系、トリメチルヘキシルアンモニウムイオンといった脂肪族アミン系が;陰イオンとしてNOやCHCO;BF、PF、(CFSO、CFCO、CFSOといった弗素系イオンが挙げられる。また、高分子型帯電防止剤としては、ポリエチレンオキシド、4級アンモニウム塩基含有アクリレート共重合体、ポリスチレンスルホン酸ソーダ、カルボベタイングラフト共重合体などが、導電性フィラーとしては、カーボンブラック、導電性ウィスカなどが、金属化合物としては、酸化チタン、鉄化合物、酸化亜鉛、塩化リチウムなどが挙げられる。
【0035】
本発明に用いられる帯電防止剤としては、高い帯電防止効果が付与できるという観点から、導電性帯電防止剤を用いることが好ましく、なかでも、イオン性液体を主成分とするものが好ましい。特には、着色による意匠への影響が少なく、風合いの硬化が少ないという理由から、ピリジニウムイオンを用いることが好ましい。
【0036】
帯電防止剤の付与方法は特に限定されるものではなく、例えば、リバースロール、スプレー、ロール、グラビア、キスロール、ナイフによるコーティングなど、従来公知の方法が挙げられる。なかでも加工性が良好であるという観点から、グラビアロールが好ましい。
【0037】
布帛に対する帯電防止剤の付与量は、布帛の表側の最表面に染み出さない範囲で適宜調節する。例えば、グラビアコーティングの場合、0.05〜30g/mが好ましく、さらには0.1〜15g/mが好ましい。付与量が0.05g/m未満であると湿度の低い環境下での帯電防止効果が十分に得られないおそれがある。付与量が30g/mを超えると、付着した帯電防止剤によって布帛が硬くなり、風合いが悪くなるおそれや、布帛が部分的に濡れてシミとなったその周辺に色素が集中する現象である「キワづき」や、布帛が金属と接することでサビが生じるおそれがある。
【0038】
本発明においては、帯電防止性繊維と帯電防止剤とを併用することによって、帯電防止性繊維と帯電防止剤との相乗効果により、初期性能の高い帯電防止性能を得ることができる。
【0039】
また、本発明においては、帯電防止剤が糸条Aの少なくとも一部と接触していることが肝要であり、特に帯電防止性繊維として導電性繊維を用いる場合に肝要である。導電性繊維と帯電防止剤を併用する場合、導電性繊維がコロナ放電を生じることによって静電気を除去するとともに、帯電防止剤が布帛の静電気を拡散、除去し、さらに導電性繊維と帯電防止剤とが接触していることによって、布帛に帯電した静電気が導電性繊維を通って帯電防止剤に伝わり、拡散、除去される。これらの効果の相乗作用により、帯電防止性能が向上する。
【実施例】
【0040】
[摩擦帯電圧(常態時)]
JIS L−1094に準じて測定した。幅50mm、長さ80mmの大きさの試験片をタテ方向から1枚採取し、温度20℃、湿度40%の環境下で5時間以上放置したものを用いた。摩擦布としては、JIS L−0803に規定する毛(1号)を用いた。回転ドラムを回転させて試験片を摩擦し、摩擦開始から3分後の帯電圧を測定した。
摩擦帯電圧3000V以下を合格とした。
【0041】
[摩擦帯電圧(摩耗後)]
幅70mm、長さ300mmの大きさの試験片をタテ方向から1枚採取し、裏側に幅70mm、長さ300mm、厚さ10mmの大きさのウレタンフォームを添えて、平面摩耗試験機T−TYPE(株式会社大栄科学精器製作所製)に固定した。綿帆布をかぶせた摩擦子に荷重9.8Nを掛けて試験片を摩耗した。摩擦子は試験片の表面上140mmの間を60往復/分の速さで摩耗した。摩耗回数2500回毎に綿帆布の位置を変え、合計10000回摩耗した。
摩耗後の試験片について、上記摩擦帯電圧の測定を行った。
摩擦帯電圧3000V以下を合格とした。
【0042】
[剛軟度]
JIS L1096−1999 8.19.1A法(45度カンチレバー法)に準じて
測定した。試験片としては、幅25mm、長さ200mmの大きさで、タテ方向・ヨコ方向からそれぞれ1枚採取したものを用いた。
剛軟度60mm以下を合格とした。
【0043】
[摩擦堅牢度]
JIS L−0849(摩擦試験機II型使用)に準じて測定した。乾布、酸汗布、アルカリ汗布の摩擦堅牢度試験を行い、添付白布への汚染は汚染用グレースケールにて判定した。
乾布で4級以上、酸汗布・アルカリ汗布で3級以上を合格とした。
【0044】
[実施例1]
28ゲージで4枚の筬を有するトリコット編機を用い、筬L1(バック)に75dtex/24fのポリエステルマルチフィラメント糸を、筬L2(ミドル)に75dtex/24fのポリエステルマルチフィラメント糸を、筬L3(フロント1)に167dtex/36fのポリエステルマルチフィラメント糸を、筬L4(フロント2)に56dtex/20fのホワイトベルトロンポリエステルマルチフィラメント(KBセーレン株式会社製)の双糸(糸条A:導電性繊維(導電性微粒子として酸化チタンを配合)混率20%)をそれぞれフルセットで導糸し、下記の組織に従って、編機上の密度が60コース/インチのトリコット布帛の生機を編成した。

L1:3−4/1−0
L2:1−0/1−2
L3:1−0/5−6
L4:5−6/1−0

この生機を80℃の浴中で15分間リラックス処理した後、130℃で1分間熱処理した。
次いで、布帛の表面に、パイル針布ローラー12本、カウンターパイル針布ローラー12本を有する針布起毛機を用い、針布ローラートルク2.5Mpa、布速12m/分の条件で、編終わり方向からの起毛と編始め方向からの起毛を交互に計12回行い、次いで130℃で1分間熱処理し、フルカットトリコット布帛を得た。
得られたフルカットトリコット布帛の裏側に、帯電防止剤としてイオン性液体(IL−P−14:広栄化学工業株式会社製)の15重量%水溶液を、乾燥後の付着量が15g/mとなるようにグラビアコーターを用いて塗布し、次いで130℃で1分間熱処理し、本発明の布帛を得た。
得られた布帛の最表面における糸条Aの占める割合は40%、帯電防止性繊維の露出度は8%であった。また、帯電防止剤の浸透度は75%であり、帯電防止剤が糸条Aの少なくとも一部と接触していることが認められた。
得られた布帛の評価を表1に示す。
【0045】
[実施例2]
筬L3の糸を1in7outで導糸し、帯電防止性繊維混率を100%とした糸条Aを筬L4にフルセットで導糸した以外は、実施例1と同様にして本発明の布帛を得た。得られた布帛の最表面における糸条Aの占める割合は82.7%、帯電防止性繊維の露出度は82.7%であった。また、帯電防止剤の浸透度は75%であり、帯電防止剤が糸条Aの少なくとも一部と接触していることが認められた。
得られた布帛の評価を表1に示す。
【0046】
[実施例3]
帯電防止性繊維混率を10%とした糸条Aを筬L4に1in20outで導糸した以外は、実施例1と同様にして本発明の布帛を得た。得られた布帛の最表面における糸条Aの占める割合は3.1%、帯電防止性繊維の露出度は0.3%であった。また、帯電防止剤の浸透度は75%であり、帯電防止剤が糸条Aの少なくとも一部と接触していることが認められた。
得られた布帛の評価を表1に示す。
【0047】
[実施例4]
帯電防止性繊維混率を100%とした糸条Aを筬L4にフルセットで導糸した以外は、実施例1と同様にして本発明の布帛を得た。得られた布帛の最表面における糸条Aの占める割合は100%、帯電防止性繊維の露出度は100%であった。また、帯電防止剤の浸透度は75%であり、帯電防止剤が糸条Aの少なくとも一部と接触していることが認められた。
得られた布帛の評価を表1に示す。
【0048】
[実施例5]
帯電防止性繊維混率を5%とした糸条Aを筬L4に1in20outで導糸した以外は、実施例1と同様にして本発明の布帛を得た。得られた布帛の最表面における糸条Aの占める割合は3.1%、帯電防止性繊維の露出度は0.16%であった。また、帯電防止剤の浸透度は75%であり、帯電防止剤が糸条Aの少なくとも一部と接触していることが認められた。
得られた布帛の評価を表1に示す。
【0049】
[実施例6]
帯電防止剤としてイオン性液体(IL−P−14:広栄化学工業株式会社製)の15重量%水溶液を乾燥後の付着量が30g/mとなるようにした以外は、実施例1と同様にして本発明の布帛を得た。得られた布帛の最表面における糸条Aの占める割合は40%、帯電防止性繊維の露出度は8%であった。また、帯電防止剤の浸透度は75%であり、帯電防止剤が糸条Aの少なくとも一部と接触していることが認められた。
得られた布帛の評価を表1に示す。
【0050】
[実施例7]
帯電防止剤としてイオン性液体(IL−P−14:広栄化学工業株式会社製)の15重量%水溶液を乾燥後の付着量が0.05g/mとなるようにした以外は、実施例1と同様にして本発明の布帛を得た。得られた布帛の最表面における糸条Aの占める割合は40%、帯電防止性繊維の露出度は8%であった。また、帯電防止剤の浸透度は75%であり、帯電防止剤が糸条Aの少なくとも一部と接触していることが認められた。
得られた布帛の評価を表1に示す。
【0051】
[実施例8]
帯電防止剤としてイオン性液体(IL−P−14:広栄化学工業株式会社製)の15重量%水溶液を乾燥後の付着量が40g/mとなるようにした以外は、実施例1と同様にして本発明の布帛を得た。得られた布帛の最表面における糸条Aの占める割合は40%、帯電防止性繊維の露出度は8%であった。また、帯電防止剤の浸透度は75%であり、帯電防止剤が糸条Aの少なくとも一部と接触していることが認められた。
得られた布帛の評価を表1に示す。
【0052】
[実施例9]
帯電防止剤としてイオン性液体(IL−P−14:広栄化学工業株式会社製)の15重量%水溶液を乾燥後の付着量が0.03g/mとなるようにした以外は、実施例1と同様にして本発明の布帛を得た。得られた布帛の最表面における糸条Aの占める割合は40%、帯電防止性繊維の露出度は8%であった。また、帯電防止剤の浸透度は75%であり、帯電防止剤が糸条Aの少なくとも一部と接触していることが認められた。
得られた布帛の評価を表1に示す。
【0053】
[実施例10]
糸条Aとして、84dtex/36fのSLDポリエステルマルチフィラメント(KBセーレン株式会社製)の双糸(糸条A:制電性繊維(親水性化合物としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを配合)混率:20%)を筬L4にフルセットで導糸した以外は、実施例1と同様にして本発明の布帛を得た。得られた布帛の最表面における糸条Aの占める割合は33%、帯電防止性繊維の露出度は6.7%であった。また、帯電防止剤の浸透度は75%であり、帯電防止剤が糸条Aの少なくとも一部と接触していることが認められた。
得られた布帛の評価を表1に示す。
【0054】
[実施例11]
帯電防止剤として金属化合物(塩化リチウム試薬:本荘ケミカル株式会社製)の15重量%水溶液を乾燥後の付着量が15g/mとなるようにした以外は、実施例1と同様にして本発明の布帛を得た。得られた布帛の最表面における糸条Aの占める割合は40%、帯電防止性繊維の露出度は8%であった。また、帯電防止剤の浸透度は75%であり、帯電防止剤が糸条Aの少なくとも一部と接触していることが認められた。
得られた布帛の評価を表1に示す。
【0055】
[実施例12]
180羽/インチのジャガード織機を用い、経糸として56dtex/20fのホワイトベルトロンポリエステルマルチフィラメント(KBセーレン株式会社製)の双糸(糸条A:導電性繊維(導電性微粒子として酸化チタンを配合)混率20%)を、緯糸として110dtex/48fのポリエステルマルチフィラメント糸を用い、150本/インチで図1の組織図に従って、平織物の生機を製織した。
この生機を80℃の浴中で15分間リラックス処理した後、130℃で1分間熱処理した。
次いで得られた平織物の裏側に、帯電防止剤としてイオン性液体(IL−P−14:広栄化学工業株式会社製)の15重量%水溶液を乾燥後の付着量が17g/mとなるように、グラビアコーターを用いて塗布し、次いで130℃で1分間熱処理し、本発明の布帛を得た。得られた布帛の最表面における糸条Aの占める割合は33%、帯電防止性繊維の露出度は6.6%であった。また、帯電防止剤の浸透度は85%であり、帯電防止剤が糸条Aの少なくとも一部と接触していることが認められた。
得られた布帛の評価を表1に示す。
【0056】
[実施例13]
28ゲージで4枚の筬を有するトリコット編機を用い、筬L1(バック)に75dtex/24fのポリエステルマルチフィラメント糸を、筬L2(ミドル)に75dtex/24fのポリエステルマルチフィラメント糸を、筬L3(フロント1)に167dtex/36fのポリエステルマルチフィラメント糸を、筬L4(フロント2)に56dtex/20fのホワイトベルトロンポリエステルマルチフィラメント(KBセーレン株式会社製)の双糸(糸条A:導電性繊維(導電性微粒子として酸化チタンを配合)混率20%)をそれぞれフルセットで導糸し、下記の組織に従って、編機上の密度が60コース/インチのトリコット布帛の生機を編成した。

L1:3−4/1−0
L2:1−0/1−2
L3:1−0/5−6
L4:5−6/1−0

この生機を80℃の浴中で15分間リラックス処理した後、130℃で1分間熱処理した。
次いで、布帛の表側に、パイル針布ローラー12本、カウンターパイル針布ローラー12本を有する針布起毛機を用い、針布ローラートルク3.5Mpa、布速12m/分の条件で、編終わり方向からの起毛と編始め方向からの起毛を交互に計12回行い、次いで130℃で1分間熱処理し、セミカットトリコット布帛を得た。
得られたセミカットトリコット布帛の裏側に、帯電防止剤としてイオン性液体(IL−P−14:広栄化学工業株式会社製)の15重量%水溶液を、乾燥後の付着量が14g/mとなるように、グラビアコーターを用いて塗布し、次いで130℃で1分間熱処理し、本発明の布帛を得た。得られた布帛の最表面における糸条Aの占める割合は40%、帯電防止性繊維の露出度は8%であった。また、帯電防止剤の浸透度は80%であり、帯電防止剤が糸条Aの少なくとも一部と接触していることが認められた。
得られた布帛の評価を表1に示す。
【0057】
[実施例14]
20ゲージダブルニット丸編機を用い、裏糸として167dtex/48fのポリエステルマルチフィラメント糸を、表糸として56dtex/20fのホワイトベルトロンポリエステルマルチフィラメント(KBセーレン株式会社製)を5本引き揃えた糸(糸条A:導電性繊維(導電性微粒子として酸化チタンを配合)混率20%)と、250dtex/216fのポリエステルマルチフィラメント糸を用い、図2の組織図に従って、編機上の密度が33コース/インチのダブルニットの生機を編成した。
この生機を80℃の浴中で15分間リラックス処理した後、130℃で1分間熱処理した。
得られたダブルニット布帛の裏側に、帯電防止剤としてイオン性液体(IL−P−14:広栄化学工業株式会社製)の15重量%水溶液を、乾燥後の付着量が20g/mとなるように、グラビアコーターを用いて塗布し、次いで130℃で1分間熱処理し、本発明の布帛を得た。得られた布帛の最表面における糸条Aの占める割合は50%、帯電防止性繊維の露出度は10%であった。また、帯電防止剤の浸透度は90%であり、帯電防止剤が糸条Aの少なくとも一部と接触していることが認められた。
得られた布帛の評価を表1に示す。
【0058】
[実施例15]
22ゲージで6枚の筬を有するダブルラッセル編機を用い、筬L1、L2、L5、L6に地糸として、110dtex/48fのポリエステルマルチフィラメント糸を、筬L3にパイル糸として167dtex/48fのポリエステルマルチフィラメント糸を、筬L4にパイル糸として56dtex/20fのホワイトベルトロンポリエステルマルチフィラメント糸(KBセーレン株式会社製)(糸条A:導電性繊維(導電性微粒子として酸化チタンを配合)混率20%)をそれぞれ導糸し、下記の組織に従って、編機上の密度が38コース/インチのダブルラッセル編物の生機を編成した。

L1:0−1/2−1
L2:2−1/0−1
L3:1−2/1−0/1−0
L4:1−2/1−0/1−0
L5:0−1/2−1
L6:2−1/0−1

この生機をセンターカット後、整毛処理し、次いで、80℃の浴中で15分間リラックス処理した後、130℃で1分間熱処理した。
得られたダブルラッセル布帛の裏側に、帯電防止剤としてイオン性液体(IL−P−14:広栄化学工業株式会社製)の15重量%水溶液を、乾燥後の付着量が18g/mとなるように、グラビアコーターを用いて塗布し、次いで130℃で1分間熱処理し、本発明の布帛を得た。得られた布帛の最表面における糸条Aの占める割合は25%、帯電防止性繊維の露出度は5%であった。また、帯電防止剤の浸透度は80%であり、帯電防止剤が糸条Aの少なくとも一部と接触していることが認められた。
得られた布帛の評価を表1に示す。
【0059】
[比較例1]
帯電防止剤を付与しなかった以外は実施例1と同様にして、フルカットトリコット布帛を得た。
得られた布帛の評価を表1に示す。
【0060】
[比較例2]
帯電防止性繊維を用いなかった以外は実施例1と同様にして、フルカットトリコット布帛を得た。
得られた布帛の評価を表1に示す。
【0061】
[比較例3]
実施例1のフルカットトリコット布帛の裏側に、下記処方1の樹脂組成物を固形分量で80g/mとなるようにナイフコーティングし、130℃で2分間熱処理して、導電バッキング層を有するフルカットトリコット布帛を得た。

処方1
アクリル酸エステル共重合体(ボンコートAB−782 大日本インキ化学工業株式会社製) 100部
デカブロモジフェニルエーテル(AFC−16C 丸菱油化工業株式会社製)100部
ケッチンブラック(AS−013 御国色素株式会社製) 30部
アクリル系増粘(ボンコートV−E 大日本インキ化学工業株式会社製) 10部

室温における粘度が、BM型粘度計(No.4ローター×12rpm)にて23000cpsとなるように調整した。
得られた布帛の評価を表1に示す。
【0062】
[比較例4]
帯電防止剤としてイオン性液体(IL−P−14:広栄化学工業株式会社製)の15重量%水溶液を、乾燥後の付着量が20g/mとなるようにし、帯電防止剤の浸透度を100%とした以外は、実施例1と同様にして布帛を得た。
得られた布帛の評価を表1に示す。
【0063】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
布帛の表側の少なくとも一部に帯電防止性繊維を含む糸条Aを用いた布帛であり、該布帛の表側の最表面に染み出さない範囲で、帯電防止剤が糸条Aの少なくとも一部と接触するように付着している耐久帯電防止性布帛。
【請求項2】
前記布帛が織編物である、請求項1に記載の耐久帯電防止性布帛。
【請求項3】
前記帯電防止性繊維が、導電性繊維および/または制電性繊維である、請求項1または2に記載の耐久帯電防止性布帛。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−256858(P2009−256858A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−42634(P2009−42634)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(000107907)セーレン株式会社 (462)
【Fターム(参考)】