説明

耐久性二成分ポリウレタンフロアコーティング

【課題】耐久性フロアコーティングを提供できる、水性、溶媒含有二成分ポリウレタンフロアコーティング系を提供する。
【解決手段】(a)少なくとも2個のヒドロキシ基を含有する第三級アミンで中和された酸基を有するポリヒドロキシポリアクリレートの水性溶液であって、有機溶媒を含む水性溶液;および(b)脂肪族ポリイソシアネートを含む二成分フロアコーティング組成物。また、床をコーティングする方法であって;請求項1に記載の二成分フロアコーティング組成物を適用することを含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性、溶媒含有耐久性二成分ポリウレタンフロアコーティング系に関する。
【背景技術】
【0002】
二成分水性、溶媒含有ポリウレタンコーティング系は、先行技術において開示されている。たとえば、米国特許第5,614,584号を参照せよ。しかしながら、先行技術において記載されているコーティングは典型的には、ポリオール成分上の酸性基のために中和剤を用いており、これによりコーティングはフロアコーティングとしての使用に不適当になる。
【0003】
【特許文献1】米国特許第5614584号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明により取り扱われる課題は、耐久性フロアコーティングを製造する水性、溶媒含有二成分ポリウレタンフロアコーティング系の需要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は二成分フロアコーティング組成物であって:(a)少なくとも2個のヒドロキシ基を含有する第三級アミンで中和された酸基を有するポリヒドロキシポリアクリレートの水性溶液であって;有機溶媒を含む水性溶液;および(b)脂肪族ポリイソシアネートを含む二成分フロアコーティング組成物を提供する。
【0006】
本発明はさらに、二成分フロアコーティング組成物を用いて床をコーティングする方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
パーセンテージは、特に他に記載しない限り、全組成物基準の重量パーセントである。本明細書において用いられる場合、「(メタ)アクリル」なる用語は、アクリルまたはメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートまたはメタクリレートを意味する。「アクリルポリマー」なる用語は、アクリルモノマー、すなわち、アクリル酸(AA)、メタクリル酸(MAA)およびそのエステルのポリマー、ならびに少なくとも40%のアクリルモノマーを含むコポリマーを意味する。AAおよびMAAのエステルとしては、これらに限定されないが、メチルメタクリレート(MMA)、エチルメタクリレート(EMA)、ブチルメタクリレート(BMA)、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、メチルアクリレート(MA)、エチルアクリレート(EA)、ブチルアクリレート(BA)、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、およびヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)、ならびにAAまたはMAAの他のアルキルエステルが挙げられる。好ましくは、アクリルポリマーは(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリレートモノマーから誘導される少なくとも45%、最も好ましくは少なくとも50%のモノマー残基を有する。「ビニルモノマー」なる用語は、付加重合に好適であり、一つの重合可能な炭素−炭素二重結合を含有するモノマーを意味する。「ビニルモノマー」としては、これらに限定されないが、アクリルモノマー、スチレン(STY)およびアルファ−メチルスチレン(AMS)が挙げられる。
【0008】
「酸官能性モノマー」はカルボン酸基を含有するモノエチレン性不飽和モノマーである。適当なカルボン酸モノマーとしては、モノカルボン酸およびジカルボン酸をはじめとするモノエチレン性不飽和(C−C)カルボン酸モノマーが挙げられる。たとえば、不飽和モノカルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、アルファ−エタクリル酸、β,β−ジメチルアクリル酸、ビニル酢酸、アリル酢酸、エチリジン酢酸、プロピリジン酢酸、クロトン酸、アクリロキシプロピオン酸およびそのアルカリおよび金属塩が挙げられる。適当なジカルボン酸モノマーとしては、たとえば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、メチレンマロン酸およびそのアルカリおよび金属塩が挙げられる。他の適当な酸性モノエチレン性不飽和モノマーとしては、不飽和脂肪族ジカルボン酸の部分エステル(アルキル半エステル);たとえば、イタコン酸、フマル酸およびマレイン酸のアルキル半エステル(ここにおいて、アルキル基は1〜6個の炭素原子を含有する(メチル酸イタコネート、ブチル酸イタコネート、エチル酸フマレート、ブチル酸フマレートおよびメチル酸マレエート))が挙げられる。好ましくは、モノエチレン性不飽和(C−C)カルボン酸モノマーは、アクリル酸およびメタクリル酸の1以上から選択される。
【0009】
「ヒドロキシ官能性モノマー」は、ヒドロキシル官能基を含有するモノエチレン性不飽和モノマーである。好ましい一具体例において、ヒドロキシ官能性モノマーはヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートである。ヒドロキシアルキル基は少なくとも1個のヒドロキシル基を含有する。これらの例としては、なかでも、HEA、HEMA、HPA、HPMA(ヒドロキシプロピルメタクリレート)およびHBA(ヒドロキシブチルアクリレート)が挙げられる。ヒドロキシ官能性モノマーの別の例は、ビニルアルコールである。
【0010】
本発明の目的に関して、コーティング組成物のポリオール成分中の酸基を中和するために少なくとも2個のヒドロキシル基を含有する第三級アミンが用いられる。この化合物は第一級または第二級アミノ基を有さない。好ましい第三級アミン化合物としては、たとえば、トリアルカノールアミン、アルキルジアルカノールアミン、および第二級ジアミンとアルキレンオキシドとの反応生成物が挙げられる。トリアルカノールアミンの例としては、トリエタノールアミンおよびトリイソプロパノールアミンが挙げられる。アルキルジアルカノールアミンの例としては、アルキルジエタノールアミン(たとえば、メチルジエタノールアミン(MDEA))およびアルキルジイソプロパノールアミンが挙げられる。好ましくは、アルキルジアルカノールアミン中のアルキル基は、C−C非置換アルキル基である。第二級ジアミンとアルキレンジオキシドとの反応生成物の例としては、1,4−ビス(2−ヒドロキシエチル)ピペラジンが挙げられる。好ましくは、コーティング組成物は第一級および第二級アミンを実質的に含まない。
【0011】
コーティング組成物のポリオール成分は、水性ポリヒドロキシポリアクリレート、すなわち、ヒドロキシル官能基を有するアクリルポリマーを含む。好ましくは、ポリマーは少なくとも30%、さらに好ましくは少なくとも35%、最も好ましくは少なくとも40%のヒドロキシ官能性モノマー由来のモノマー単位を含む。好ましくは、ポリマーは80%以下、さらに好ましくは60%以下のヒドロキシ官能性モノマー由来のモノマー単位を含む。好ましくは、ポリマーは10%以下、さらに好ましくは9%以下の酸官能性モノマー由来のモノマー単位を含む。好ましくは、ポリマーは少なくとも5%、さらに好ましくは少なくとも7%の酸官能性モノマー由来のモノマー単位を含む。本発明の一具体例において、ポリマーは少なくとも20%、さらに好ましくは少なくとも30%のスチレンまたはアルファ−メチルスチレン由来のモノマー単位を含み;好ましくはポリマーは60%以下、さらに好ましくは50%以下のスチレンまたはアルファ−メチルスチレン由来のモノマー単位を含む。好ましくは、ポリマーはスチレン由来のモノマー単位を含む。
【0012】
好ましくは、ポリヒドロキシポリアクリレートは溶液重合により調製される。溶液重合に好ましい溶媒としては、グリコールエーテルおよびカーボネートが挙げられる。これらの溶媒の例としては、ジ(プロピレングリコール)モノメチルエーテル、ジ(プロピレングリコール)ジメチルエーテル、ジ(プロピレングリコール)、プロピレングリコール、ジ(エチレングリコール)、エチレングリコール、ジ(エチレングリコール)ジエチルエーテル、ジ(エチレングリコール)ジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジ(エチレングリコール)モノエチルエーテル、ジ(エチレングリコール)モノブチルエーテル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートおよびジエチルカーボネートが挙げられる。ジ(プロピレングリコール)モノメチルエーテル(Dow Corp.からDowanol(商標)DPMの名前で入手可能)が特に好ましい。溶液重合から得られるポリヒドロキシポリアクリレートの溶液を、少なくとも2個のヒドロキシル基を含有する第三級アミンと組み合わせて、ポリマー上の酸官能基を中和し、他の成分を添加して、コーティング組成物のポリオール成分を生成させる。他の成分としては、界面活性剤(たとえば、フルオロ界面活性剤)、消泡剤(たとえば、シリコン系消泡剤)および水が挙げられる。好ましくは、有機溶媒が最終水性ポリヒドロキシポリアクリレート溶液中25%以下の量で存在し、好ましくは、最終水性ポリヒドロキシポリアクリレート溶液中少なくとも2%の有機溶媒が存在する。
【0013】
好ましくは、ゲル透過クロマトグラフィーにより測定されるポリヒドロキシポリアクリレートの数平均分子量は、20,000以下であり、さらに好ましくは10,000以下であり、最も好ましくは5,000以下である。好ましくはポリヒドロキシポリアクリレートのMは少なくとも500であり、最も好ましくは少なくとも1,000である。
【0014】
コーティング組成物のポリオールおよびイソシアネート成分を、使用前に混合して、ポリオール成分中のイソシアネート分散液を形成する。好ましくは、得られる混合物を2時間以内に床に適用する。好ましいイソシアネートは、水中に可溶性であるか、または分散可能である脂肪族イソシアネートである。特に好ましいのは、たとえば200〜320のイソシアネート当量重量を有する、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)から形成される親水的に修飾されたポリマーイソシアネートである。親水的に修飾されたポリマーイソシアネートは、親水性ポリオールから、または酸性または荷電官能基を組み入れることにより調製することができる。HDIベースのかかる親水的に修飾されたポリマーイソシアネートの商品例は、Bayer Corp.から入手可能なBayhydur(商標)302およびBayhydur(商標)XP−7148である。
【実施例】
【0015】
ポリヒドロキシポリアクリレート樹脂の調製:
重合溶媒(Dowanol(商標)DPM)を反応フラスコ中に装填し、70℃より高い温度に加熱した。開始剤チャージ(モノマーを基準として0.3重量%)およびモノマーチャージ(5%のモノマーミックス)を反応フラスコに添加し、160℃に加熱した。モノマーおよび開始剤フィードを15分後に開始し、3時間にわたって添加した。残存するモノマーレベルは追加の開始剤で減少した。ポリマーを75℃に冷却し、水性中和剤を添加した。MDEAはメチルジエタノールアミンであり、DMEAはN,N−ジメチル−2−エタノールアミンである。水性ポリマー溶液を50℃で15〜20分間保持した後、室温に冷却した。
【0016】
テトラヒドロフラン(Fisher Scientific Co.、認定等級、安定化)中のゲル透過クロマトグラフィー用サンプルを調製し、ポリマー溶液を0.45μmフィルターを用いて濾過した。Agilent(商標)1100型定組成ポンプ(Waldbronn、ドイツ)、Gilson(商標)234型自動注入装置(Villiers le Bel、フランス)、Eppendorf(商標)CH−430型カラムオーブン(Madison、WI)およびWaters(商標)410型示差屈折率計(Milford、MA)(いずれも40℃で操作)からなる液体クロマトグラフ上で分離を行った。システム制御、データ取得、およびデータ処理は、Cirrus(登録商標)ソフトウェアのバージョン2.0(Polymer Laboratories、Church Stretton、UK)を用いて行った。SEC分離をTHF(認定等級)中、1ml/分で、Polymer Laboratories(Church Stretton、UK)から購入したポリスチレン−ジビニルベンゼンゲル(ポアサイズは100Å、10Å、および10Å、粒子サイズは5μmと標識されていた)で充填された3つのPLgelカラム(300×7.5mmID)からなるSECカラムセットを用いて行った。濃度C=2mg/mLである100μLのサンプル溶液をSEC分離に付した。サンプルGPCチャートおよびPSスタンダードの較正曲線(3桁適合)を用いて分析されたサンプルの「見かけの」分子量を計算した。
【0017】
【表1】

【0018】
【表2】

【0019】
【表3】

【0020】
【表4】

【0021】
2成分透明コーティングの調製:
2成分透明コーティングのパートAは100%固形分である脂肪族ポリイソシアネートから構成されていた。好適なポリイソシアネートの例としては、Bayerから得られるBayhydur(商標)302およびBayhydur(商標)XP−4178が挙げられる。
【0022】
実施例1〜19におけるポリヒドロキシポリアクリレート樹脂を、0.05部のByk(商標)340消泡剤および0.01部のByk(商標)025フルオロ界面活性剤湿潤助剤(どちらもByk Chemieにより販売されている添加剤である)を含有する水性溶液に添加することによりパートBを調製した。パートB溶液の固形分レベルを調節して、コーティングのために35%合計固形分レベルを得た。
【0023】
オーバーヘッドミキサーを用いてパートAおよびBを10分間混合し、6mil(湿潤)の厚さのコーティングをビニル複合フロアタイル上に塗布した。フィルム性能データを表5〜8に示す。フィルムを24時間乾燥させた後に光沢測定を行った。光沢を測定する方法は、「Annual Book of ASTM Standards」、第15節、15.04巻、試験法ASTM D1455(2000)に記載されている。Gardner Byk Micro−Tri−グロスメーター(カタログ番号4520)を用いて、60°および20°光沢を記録した。フィルムの粘着性がなくなった後、および1日後に耐水性を評価した。耐水性を評価する方法は、「Annual Book of ASTM Standards」、第15節、15.04巻、試験法ASTM D1793(2000)に記載されている。水滴に1時間接触させて、ふき取った後のフィルムに次の評定を適用した:Ex=影響なし、TrWh=若干白化、Wh=白化、Hwh=重度に白化、Bl=ふくれ。表5〜8に示す鉛筆硬度データは、Annual Book of Standards、第06.01巻からのASTM D−3363(2000)を用いて測定した。表面粘着性および乾燥速度を測定するために、Zapon Tack Testerを用いて粘着時間を測定した。テストポリッシュの4.0milのコートをタイルの表面に適用し、見かけ上乾燥するまで(ポリッシュフィルムが乾燥したようにみえるまで)放置した。この時点で、粘着計{厚さ1/16インチ(1.6mm)、幅1インチ(2.54cm)および長さ3.25インチ(8.3cm)のアルミニウム片をポリッシュフィルムの表面上に1平方インチの面積がセットされるような角度で曲げる。曲げる角度は、5gの重りが乾燥平面基体上の1平方インチの面積上に置かれた場合にテスターがちょうど釣り合いがとれるように決定される}をポリッシュフィルム(1平方インチ表面積(6.5cm))上に置く。500のgの重りを粘着計の1平方インチ表面上に置き、5秒間放置し、次いで除去する。テスターの足をポリッシュフィルムから完全に引き離すのに5秒以上必要である場合、表面は粘着性なしとは見なされず、1分間隔で粘着性なしとなる時間が決定されるまで試験を繰り返す。値を適用時間からの分で記録する。ゲル時間をポリッシュ処方が非流動性ゲルになるために必要な時間とした。
【0024】
【表5】

【0025】
【表6】

【0026】
【表7】

【0027】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも2個のヒドロキシ基を含有する第三級アミンで中和された酸基を有するポリヒドロキシポリアクリレートの水性溶液であって、有機溶媒を含む溶液;および
(b)脂肪族ポリイソシアネート
を含む二成分フロアコーティング組成物。
【請求項2】
ポリヒドロキシポリアクリレートが、少なくとも30%のヒドロキシ官能性モノマー由来のモノマー単位を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ポリヒドロキシポリアクリレートが、10%以下の酸官能性モノマー由来のモノマー単位を含む請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
ポリヒドロキシポリアクリレート中の酸基が、トリアルカノールアミン、C−C非置換アルキルジアルカノールアミン、または第二級ジアミンとアルキレンオキシドとの反応生成物で中和される請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
脂肪族ポリイソシアネートが水中に可溶性または分散可能である請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
床をコーティングする方法であって;請求項1に記載の二成分フロアコーティング組成物を適用することを含む方法。
【請求項7】
ポリヒドロキシポリアクリレートが、少なくとも30%のヒドロキシ官能性モノマー由来のモノマー単位を含み、ポリヒドロキシポリアクリレートが、10%以下の酸官能性モノマー由来のモノマー単位を含む請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ポリヒドロキシポリアクリレート中の酸基が、トリアルカノールアミン、C−C非置換アルキルジアルカノールアミン、または第二級ジアミンとアルキレンオキシドとの反応生成物で中和される請求項7に記載の方法。
【請求項9】
脂肪族ポリイソシアネートが水中に可溶性または分散可能である請求項9に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリヒドロキシポリアクリレートが溶液重合により調製され、10,000以下の数平均分子量を有する請求項6に記載の方法。

【公開番号】特開2006−77247(P2006−77247A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−260478(P2005−260478)
【出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】